説明

物品検出装置

【課題】多量の物品の万引行為の発生を低コストで防止することができる物品検出装置を提供すること。
【解決手段】複数の物品3と、物品3を配置する物品配置部4と、各物品3に取り付けられた共振タグ14と、共振タグ14が誘起するタグの減衰振動波を検出するために物品配置部4に設けられた配置部アンテナ6と、配置部アンテナ6を用いて検出されるタグの減衰振動波の増大または減少に基づいて、物品配置部4に対して物品3が近接または離間されたことを判定する物品配置判定手段23と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、店舗等に設置されて商品を陳列する商品陳列装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、商品陳列棚から商品が取り出された際に報知を行うことで、万引きを事前に止めさせる商品管理装置があり、この商品管理装置では、各商品に取り付けられたRFIDタグを検出するためのアンテナを商品陳列棚に設け、検出されたRFIDタグの数を計数し、RFIDタグの数の計数がされる毎に、その計数値と前回のタグ検出動作に応じて計数された記憶値とを比較して、計数値が記憶値よりも少ない場合に、商品陳列棚から商品が万引きされたものとして報知器を鳴らすようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2007−79615号公報(第4頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の商品管理装置(物品検出装置)にあっては、商品情報を記憶したRFIDタグを用いて商品(物品)の販売登録処理を行うPOS端末を設置している店舗等において、万引行為の発生を防止するためのものであり、RFIDタグを用いるPOS端末を設置していない店舗等において、商品管理装置を用いて万引対策する際には、製造コストが嵩むRFIDタグを全ての商品に取り付けなければならず、万引対策のための費用が嵩んでしまうという問題がある。また、近年、多量の商品を複数人で万引きする悪質な窃盗団が横行しており、このような多量の商品の万引きに備えて、簡易的で低コストな万引防止装置を設置したいという店舗側の要望がある。
【0005】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、多量の物品の万引行為の発生を低コストで防止することができる物品検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明の請求項1に記載の物品検出装置は、
複数の物品と、該物品を配置する物品配置部と、前記各物品に取り付けられた共振タグと、該共振タグが誘起するタグの減衰振動波を検出するために前記物品配置部に設けられた配置部アンテナと、該配置部アンテナを用いて検出される前記タグの減衰振動波の増大または減少に基づいて、前記物品配置部に対して前記物品が近接または離間されたことを判定する物品配置判定手段と、を備えることを特徴としている。
この特徴によれば、大量の物品が物品配置部から取られたときには、タグ検出波形が大きく変化するため、物品配置判定手段は、タグの減衰振動波の増大または減少に基づいて、大量の物品が物品配置部に対して近接または離間されることを把握できるようになり、タグ検出波形を比較するだけの簡素な構成で物品配置判定手段を備えることができ、かつ低コストで製造できる共振タグを使用することで、万引きを防止できる物品検出装置の設置コストを低減することができる。
【0007】
本発明の請求項2に記載の物品検出装置は、請求項1に記載の物品検出装置であって、
前記物品配置判定手段にて、記憶されているタグ検出前のベース波形と、前記配置部アンテナによるタグ検出時のタグ減衰振動波形と、に基づいて差分波形が生成され、前記物品配置判定手段は、前記差分波形を用いて前記判定を行うことを特徴としている。
この特徴によれば、物品配置判定手段は、差分波形の大きさの変化を把握することで、一度に大量の物品が物品配置部から取り除かれる万引き等の異常事態を把握できる。
【0008】
本発明の請求項3に記載の物品検出装置は、請求項1または2に記載の物品検出装置であって、
複数の前記配置部アンテナが前記物品配置部に設けられており、前記タグの減衰振動波の減少が検出される配置部アンテナが所定時間内に所定数以上あることを条件に作動する報知手段を備えることを特徴としている。
この特徴によれば、複数の配置部アンテナがタグ検出波形の減少を検出することで、一度に大量の物品が物品配置部から取り除かれる万引き等の異常事態を把握でき、この異常事態の発生時に報知手段を作動させて万引き等を防ぐことができる。
【0009】
本発明の請求項4に記載の物品検出装置は、請求項1ないし3のいずれかに記載の物品検出装置であって、
前記共振タグが受信する送信電磁波を送信する送信部と、前記タグ減衰振動波を受信する受信部と、前記送信部と前記受信部とに対して複数の前記配置部アンテナを切り換えながら接続するアンテナ切換手段と、を備えることを特徴としている。
この特徴によれば、複数の配置部アンテナを設置しても、配置部アンテナをアンテナ切換手段によって切り換えながら送信部と受信部とに接続できるため、配置部アンテナの設置数を増やしても送信部と受信部の設置数を増やす必要がなくなる。
【0010】
本発明の請求項5に記載の物品検出装置は、請求項1ないし4のいずれかに記載の物品検出装置であって、
前記共振タグが共振する共振周波数を有する送信電磁波を送信する送信部と、前記タグの減衰振動波を受信する受信部と、前記配置部アンテナに対して前記送信部及び前記受信部を交互に切り換えながら接続する送受信部切換手段と、を備え、
前記共振タグが、前記送信電磁波に共振されることにより減衰振動波を誘起するようになっていることを特徴としている。
この特徴によれば、送信部による送信電磁波の送信と受信部によるタグ減衰振動波の受信とが、送受信部切換手段により交互に行われるため、送信用と受信用の配置部アンテナを兼用させることができ、かつ共振タグは、送信電磁波を受信することでタグの減衰振動波を誘起するため、受信部は、送信電磁波とタグ減衰振動波とを混信させずにタグの減衰振動のみを受信することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明に係る物品検出装置を実施するための最良の形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例】
【0012】
本発明の実施例を図面に基づいて説明すると、先ず図1は、本発明の物品検出装置が適用された商品陳列棚を示す斜視図であり、図2は、商品陳列棚の棚板を示す縦断側面図であり、図3は、商品陳列棚の棚板を示す横断平面図であり、図4は、商品の底面に取り付けられた共振タグを示す斜視図であり、図5は、物品検出装置の構成を示すブロック図であり、図6は、棚制御回路で行われる大量万引監視処理のフローチャートであり、図7は、棚制御回路で処理される各電磁波の波形を示す図である。以下、図2の紙面左側を商品陳列棚の正面側(前方側)とし、図3の紙面下側を商品陳列棚の正面側(前方側)として説明する。
【0013】
図1の符号1は、本発明の物品検出装置を構成する商品陳列棚である。この商品陳列棚1は、管理コンピュータ2に接続されている。この商品陳列棚1及び管理コンピュータ2は、主にスーパーマーケットやコンビニエンスストア等の商品販売店舗等に設置され、商品陳列棚1に陳列された加工食品や生鮮食品等の本実施例における物品としての商品3が、大量万引きされないよう監視するようになっている。
【0014】
図1に示すように、商品陳列棚1の上下方向には、複数段(本実施例では5段)の本実施例における物品配置部としての棚板4が取り付けられている。この棚板4は、木材や樹脂材等により形成されている。また、棚板4の左右に取り付けられる側板5も木材や樹脂材等により形成されている。
【0015】
図2及び図3に示すように、棚板4は、上面が平坦な平面視で長方形状に形成されており、棚板4の上面に複数の商品3を陳列可能となっている。更に、棚板4の上面には、複数の本実施例における配置部アンテナとしての棚アンテナ6が、棚板4の上面と面一となるように設けられている。
【0016】
尚、各棚板4の先端側の下部には、商品陳列棚1の正面に居る買物客を検出する近接センサ7が取り付けられている。この近接センサ7は、例えば、赤外線等の光を被検出体に向かって照射してその反射光によって被検出体を検出する焦電型赤外線センサ等で構成されている。本実施例の商品陳列棚1は、これら近接センサ7により検出がなされたときのみ大量万引きの監視を行うことで、誤報を抑えるようになっている。
【0017】
また、図1及び図2に示すように、背板11の上端部には、本実施例における報知手段としてのアラーム8が設けられている。また、このアラーム8には、本実施例における報知手段としてのLEDランプ9が取り付けられている。後述するように、大量万引きが発生した際には、アラーム8が報知音を鳴らすとともに、LEDランプ9を点滅させて周囲に大量万引きを報知するようになっている。
【0018】
更に、商品陳列棚1の最下段の棚板4内部が中空に形成されており、その内部には、各棚アンテナ6を制御することで大量万引きの監視処理を行う制御部10が設けられている。尚、商品陳列棚1の背板11は内部が中空に形成されており、その内部には、制御部10に接続された接続ケーブル12が各棚板4に向かって延設されている。
【0019】
そして、制御部10は、接続ケーブル12を介して各棚アンテナ6と接続されており、この接続ケーブル12を介して、制御部10は棚アンテナ6と電磁波の送受信を行ったり、電力を供給したりするようになっている。また、制御部10は、前述した近接センサ7及びアラーム8、LEDランプ9とも接続されている。
【0020】
尚、制御部10は、図1に示すように、商品陳列棚1の外方に延設される接続ケーブル13を介して管理コンピュータ2と接続されるとともに、図示しない電源ケーブルを介して屋内のコンセント等の外部電源から電力を供給されている。
【0021】
図3に示すように、棚アンテナ6は、棚板4上面において行方向及び列方向に並んで配置されている。また、棚アンテナ6の上面には、棚板4上面と同じく商品3を載置できるようになっており、1つの棚アンテナ6に対して複数の商品3を載置できるようになっている。尚、1つの商品3が2つの棚アンテナ6にまたがって載置できるようになっている。
【0022】
図4に示すように、商品3の底面には、共振タグ14が貼り付けられている。この共振タグ14は、商品販売店舗において、商品3を商品陳列棚1に陳列する際に商品に貼り付けられる。更に、この共振タグ14は、コンデンサ15と、磁束の変化により誘導起電力を得るためのコイル16と、が並列に接続された共振回路17を内蔵している(図5参照)。
【0023】
そして、制御部10は、前述した共振タグ14を棚アンテナ6によって検出することで、商品陳列棚1に陳列されている商品3を監視している。具体的には、図7に示すように、棚アンテナ6は、制御部10の送信イネーブル(送信部有効)に応じて高周波の電磁波である送信電磁波を断続的に出力するようになっている。この送信電磁波は共振回路17内のコイル16が共振する共振周波数を有している。このとき、共振回路17では、棚アンテナ6から送信された送信電磁波によりコイル16とコンデンサ15が共振されることで、電磁誘導により結合される。
【0024】
更に、送信電磁波の送信が停止されると、コイル16とコンデンサ15の共振現象により、タグの減衰振動波が誘起される。棚アンテナ6は、このタグの減衰振動波を制御部10の受信イネーブル(受信部有効)に応じて受信可能となっており、受信したタグ検出波形に基づいて、後述する監視処理を行うことで大量万引きの監視を行う。制御部10の送信イネーブルと受信イネーブルとは交互に繰り返されるようになっており、棚アンテナ6による送信と受信が交互に繰り返される。
【0025】
尚、棚アンテナ6の検出距離は、本実施例では送信電磁波を微弱出力で用いるため、棚アンテナ6の上方10cm前後となっている。この棚アンテナ6の検出距離は、送信電磁波の出力を調整することで変更することができる。尚、本実施例では、商品3の底面に共振タグ14を貼り付けて、商品3の底面に当接する棚アンテナ6によって共振タグ14を検出するようになっているが、2つの商品3が積み重ねられていても、その上方の商品3の共振タグ14が棚アンテナ6の検出距離内であれば検出することができる。また、本実施例における棚アンテナ6で受信されるタグ検出波形は、各共振タグ14で発生したタグ検出波形が複数重ね合わさることで増幅された合成波とすることもできる。
【0026】
次に、本実施例における物品検出装置のシステム構成を説明する。図5に示すように、制御部10は、共振タグ14に送信する送信電磁波を生成する送信部18と、共振タグ14から受信したタグの減衰振動波の増幅及び復調を行う受信部19と、棚アンテナ6に対して送信部18及び受信部19を交互に切り換えながら接続する本実施例における送受信部切換手段としてのスイッチング部20と、送信部18及び受信部19とに対して複数の棚アンテナ6を切り換えながら接続する本実施例におけるアンテナ切換手段としてのアンテナ切換器21と、棚アンテナ6で受信したタグ検出波形であるタグ波形をデジタル信号として記憶する記憶部22と、これら商品陳列棚1の各装置類を制御するための本実施例における物品配置判定手段としての棚制御回路23と、を有している。
【0027】
また、制御部10には、棚アンテナ6の送信電磁波の出力や、近接センサ7の感度の設定等のメンテナンス等を行うための管理コンピュータ2と、大量万引きの報知を行うアラーム8及びLEDランプ9と、各棚板4に取り付けられた近接センサ7及び棚アンテナ6が接続されている。尚、管理コンピュータ2と制御部10とは、常時接続している必要はなく、管理コンピュータ2によるメンテナンスが完了した後に、制御部10との接続を解除して商品陳列棚1を使用してもよい。
【0028】
尚、送信部18には、特に図示しないが、高周波の電磁波を発生させる高周波発生装置と、高周波発生装置で発生した送信電磁波の周波数を変調させるダイレクト・ディジタル・シンセサイザーと、送信電磁波が所定の送出電力を得るための電力増幅器と、が設けられている。
【0029】
加えて、受信部19には、特に図示しないが、棚アンテナ6で受信した複数種類の電磁波からタグの減衰振動波のみを抽出する同調回路と、同調回路で抽出されたタグの減衰振動波を増幅する高周波増幅器と、高周波増幅器で増幅されたタグの減衰振動波を周波数に関係なく一定の低い周波数に変換する周波数変換器と、周波数変換器で周波数変換されたタグの減衰振動波を復調可能なレベルまで増幅する中間周波数増幅器と、が設けられている。
【0030】
更に、棚制御回路23には、特に図示しないが、受信部19で復調されたタグの減衰振動波を絶対値変換する絶対値変換器と、絶対値変換されたタグの減衰振動波をAD変換(アナログ/デジタル変換)するAD変換器と、AD変換によりデジタル信号に変換されたタグの減衰振動波のタグ波形を演算処理するデジタルシグナルプロセッサと、が設けられている。そのため棚制御回路23では、タグの減衰振動波のタグ波形をデジタル信号として取り扱うことができるようになっている。尚、棚制御回路23は、後述する差分波形(ad)の大きさを顕著化させるために、タグ波形の後半部(ad1,ad2)のみをAD変換するようになっている(図7参照)。
【0031】
次に、本実施例における制御部10の棚制御回路23が実行する大量万引監視処理について図6のフローチャートに基づいて説明する。
【0032】
図6に示すように、先ずSa01のステップにおいては、棚制御回路23は、商品陳列棚1の各棚板4に取り付けた近接センサ7を作動させて、複数の近接センサ7の内、いずれかの近接センサ7で、買物客の存在を検出したか否かを判定する。近接センサ7で買物客を検出した場合には、Sa02のステップに進み、近接センサ7で買物客を検出しない場合には、処理を終了してSa01のステップに戻る。すなわち棚制御回路23は、買物客の存在を近接センサ7で検出するまでSa01のステップで待機(ループ)する。尚、近接センサ7の作動、つまりSa01のステップは、約1秒毎に繰り返されるようになっている。
【0033】
Sa02のステップにおいて、棚制御回路23は、各棚アンテナ6を用いて送信電磁波を、各棚アンテナ6の送信電磁波の出力範囲に配置されている各共振タグ14に向けて送信する。具体的には、棚制御回路23は、送信部18をスイッチング部20に接続するとともに、アンテナ切換器21によってスイッチング部20を所定の棚アンテナ6に接続する。そして、送信部18で生成された送信電磁波を、前記所定の棚アンテナ6から送信する。
【0034】
このとき、スイッチング部20は、所定の棚アンテナ6に送信電磁波が出力された後に、受信部19をスイッチング部20に接続し、前記所定の棚アンテナ6と受信部19とが接続された状態にする。そして、前記所定の棚アンテナ6が各共振タグ14からタグの減衰振動波を受信すると、棚制御回路23は、タグの減衰振動波を受信部19で復調した後、タグの減衰振動波の波形であるタグ波形をデジタル信号に変換して、今回(棚アンテナ6による検出時)のタグ波形として、該タグ波形と前記所定の棚アンテナ6とを対応づけて記憶部22に記憶する。
【0035】
棚制御回路23は、Sa02のステップにて、スイッチング部20とアンテナ切換器21との接続状態を適宜切り換えることにより、全ての棚アンテナ6を用いて送信電磁波の送信とタグの減衰振動波の受信とを繰り返し、各棚アンテナ6により今回受信したタグ波形を記憶部22に記憶する。尚、各棚アンテナ6での送信電磁波の送信及びタグ減衰振動波の受信は、約10ミリ秒程度の時間で行なわれ、1秒未満で全ての棚板4の棚アンテナ6の送受信が完了する。
【0036】
Sa03のステップにおいて、棚制御回路23は、記憶部22に記憶された今回受信しタグ波形のデジタル信号と、前回(1秒前)に受信して既に記憶部22に記憶されている前回受信したタグ波形のデジタル信号と、を比較する。そして、それぞれの棚アンテナ6において、今回受信したタグ波形が前回受信したタグ波形よりも減少したものがあるか否かを判定する。
【0037】
今回受信したタグ波形が前回受信したタグ波形よりも減少した棚アンテナ6が1つでもあれば、棚板4に陳列された商品3が、買物客により取られたものと判断されるため、Sa04のステップに進む。今回受信したタグ波形が前回受信したタグ波形よりも減少したものが無ければ、棚板4に陳列された商品3は、買物客により1つも取られていないものと判断されるため、Sa07のステップに進む。
【0038】
尚、店員が商品3を棚板4に陳列するときなど、商品3が棚板4に近接(当接)された際には、今回受信したタグ波形が前回受信したタグ波形よりも増大されるため、棚板4に陳列される商品3が増えたもの判断されるため、Sa07のステップに進む。
【0039】
Sa04のステップにおいて、棚制御回路23は、それぞれの棚アンテナ6毎に前回受信したタグ波形(ベース波形)のデジタル信号から今回受信したタグ波形のデジタル信号を減算処理し、本実施例における差分波形としてのタグ差分波形を生成する(図7参照)。尚、タグ差分波形はデジタル信号として生成される。
【0040】
Sa05のステップにおいて、棚制御回路23は、それぞれの棚アンテナ6毎にタグ差分波形の大きさを測定し、タグ差分波形の大きさが所定量よりも大きくなった棚アンテナ6が2つ以上あるか否かを判定する。尚、複数個の商品3が棚板4から買物客により取られた場合のタグ差分波形の大きさを前記所定量として設定している。その所定量の設定は商品3の大きさや種類、商品3が取られた個数等を予めにテストしておき、適宜設定変更することができる。また、1個の商品3が棚板4から買物客により取られた場合には、通常の買物行為であると判断されるため、そのとき検出されるタグ差分波形の大きさよりも、前記所定量は大きくなるように設定されている。
【0041】
そして、タグ差分波形の大きさが所定量よりも大きくなった棚アンテナ6が2つ以上ある場合は、棚板4上の複数の商品3が多量に取られる大量万引きと判断されるため、Sa06のステップに進む。タグ差分波形の大きさが所定量よりも大きくなった棚アンテナ6が1つ以下の場合には、大量万引きであるとは判断されないため、Sa07のステップに進む。
【0042】
Sa06のステップにおいて、棚制御回路23は、商品陳列棚1から多数の商品3が離間した異常事態、すなわち大量万引きであると判断されるため、アラーム8により報知音を鳴らすとともに、LEDランプ9の点灯を行う。尚、これらアラーム8の報知とLEDランプ9の点灯は、30秒程度の報知時間が経過することで自動的に停止するようになっている。
【0043】
Sa07のステップにおいて、棚制御回路23は、記憶部22から前回受信したタグ波形を消去するとともに、今回受信したタグの減衰振動波のタグ波形を各棚アンテナ6に対応させた状態で、記憶部22に記憶させて処理を終了してSa01のステップに戻る。
【0044】
以上、本実施例における商品陳列棚1においては、複数の商品3と、商品3を配置する棚板4と、各商品3に取り付けられた共振タグ14と、共振タグ14が発するタグの減衰振動波を検出するために棚板4に設けられた棚アンテナ6と、棚アンテナ6を用いて検出されるタグの減衰振動波の増大または減少に基づいて、棚板4に対して商品3が近接または離間されたことを判定する棚制御回路23と、を備えることで、大量の商品3が棚板4から取られたときには、タグ検出波形が大きく変化するため、棚制御回路23は、タグ検出波形の増大または減少に基づいて、大量の商品3が棚板4に対して近接または離間されることを把握できるようになり、タグ検出波形を比較するだけの簡素な構成で棚制御回路23を備えることができ、かつ低コストで製造できる共振タグ14を使用することで、万引きを防止できる商品陳列棚1の設置コストを低減することができる。
【0045】
また、棚制御回路23にて、記憶されている検出前のベース波形と、棚アンテナ6による検出時のタグの減衰振動波のタグ波形と、に基づいて差分波形が生成され、棚制御回路23は、差分波形を用いて判定を行うことで、棚制御回路23は、差分波形の大きさの変化を把握することで、一度に大量の物品が棚板4から取り除かれる万引き等の異常事態を把握できる。
【0046】
また、複数の棚アンテナ6が棚板4に設けられており、タグ検出波形の減少が検出される棚アンテナ6が所定時間内に所定数以上あることを条件に作動するアラーム8とLEDランプ9を備えることで、複数の棚アンテナ6がタグ検出波形の減少を検出することで、一度に大量の物品が棚板4から取り除かれる万引き等の異常事態を把握でき、この異常事態の発生時にアラーム8とLEDランプ9を作動させて万引き等を防ぐことができる。
【0047】
また、共振タグ14が受信する送信電磁波を送信する送信部18と、タグの減衰振動波を受信する受信部19と、送信部18と受信部19とに対して複数の棚アンテナ6を切り換えながら接続するアンテナ切換器21と、を備えることで、複数の棚アンテナ6を設置しても、棚アンテナ6をアンテナ切換器21によって切り換えながら送信部18と受信部19とに接続できるため、棚アンテナ6の設置数を増やしても送信部18と受信部19の設置数を増やす必要がなくなる。
【0048】
また、共振タグ14が共振する共振周波数を有する送信電磁波を送信する送信部18と、タグの減衰振動波を受信する受信部19と、棚アンテナ6に対して送信部18及び受信部19を交互に切り換えながら接続するスイッチング部20と、を備え、共振タグ14は、送信電磁波に共振されることにより減衰振動波を誘起するようになっていることで、送信部18による送信電磁波の送信と受信部19によるタグの減衰振動波の受信とが、スイッチング部20により交互に行われるため、送信用と受信用の棚アンテナ6を兼用させることができ、かつ共振タグ14は、送信電磁波を受けることでタグの減衰振動波を誘起するため、受信部19は、送信電磁波とタグの減衰振動波とを混信させずにタグの減衰振動波のみを受信することができる。
【0049】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0050】
例えば、前記実施例では、棚板4の上面に、共振タグ14が底面に貼り付けられた商品3を陳列し、棚板4の上面に配置された棚アンテナ6によって共振タグ14を検出することで大量万引きを監視していたが、例えば、物品配置部を吊り下げ式の横棒とし、この横棒に共振タグ14を取り付けたハンガーを介して商品としての衣料品等を吊り下げられるようにし、前記横棒に吊り下げられた配置部アンテナを配置することで、衣料品等の大量万引きを防止するようにしてもよい。
【0051】
また、前記実施例では、棚制御回路23は、商品陳列棚1から多数の商品3が離間したと判断すると、アラーム8による報知及びLEDランプ9の点灯を行ったが、管理コンピュータ2で常時商品陳列棚1の監視状態を参照できるようにし、商品陳列棚1から多数の商品3が離間したと判断した際には、管理コンピュータ2上で、その管理者のみに報知を行うようにしてもよい。
【0052】
また、前記実施例では、棚制御回路23は、大量万引監視処理のSa05のステップにおいて、タグ差分波形の大きさが所定量よりも大きくなることと、その棚アンテナ6が2つ以上あること、の2つの条件に基づいて、大量万引きであると判断しているが、大量万引きの判断の条件を、タグ差分波形の大きさが所定量よりも大きくなることの1つの条件に基づいて、大量万引きであると判断してもよい。
【0053】
また、前記実施例では、棚アンテナ6の検出距離が10cm前後で、1つの棚アンテナ6の上方に配置される商品3の検出しか行えないが、棚アンテナ6の検出距離を大きくすれば、1つの棚アンテナ6によって、その棚アンテナ6の上方の複数段の棚板4に載置される商品3の検出も行えるようになり、このようにすれば、棚アンテナ6を各棚板4に設けなくても済むようになる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の物品検出装置が適用された商品陳列棚を示す斜視図である。
【図2】商品陳列棚の棚板を示す縦断側面図である。
【図3】商品陳列棚の棚板を示す横断平面図である。
【図4】商品の底面に取り付けられた共振タグを示す斜視図である。
【図5】物品検出装置の構成を示すブロック図である。
【図6】棚制御回路で行われる大量万引監視処理のフローチャートである。
【図7】棚制御回路で処理される各電磁波の波形を示す図である。
【符号の説明】
【0055】
1 商品陳列棚(物品検出装置)
3 商品(物品)
4 棚板(物品配置部)
6 棚アンテナ(配置部アンテナ)
7 近接センサ
8 アラーム(報知手段)
9 LEDランプ(報知手段)
10 制御部
14 共振タグ
17 共振回路
18 送信部
19 受信部
20 スイッチング部(送受信部切換手段)
21 アンテナ切換器(アンテナ切換手段)
23 棚制御回路(物品配置判定手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の物品と、該物品を配置する物品配置部と、前記各物品に取り付けられた共振タグと、該共振タグが誘起するタグの減衰振動波を検出するために前記物品配置部に設けられた配置部アンテナと、該配置部アンテナを用いて検出される前記タグの減衰振動波の増大または減少に基づいて、前記物品配置部に対して前記物品が近接または離間されたことを判定する物品配置判定手段と、を備えることを特徴とする物品検出装置。
【請求項2】
前記物品配置判定手段にて、記憶されているタグ検出前のベース波形と、前記配置部アンテナによるタグ検出時のタグ減衰振動波形と、に基づいて差分波形が生成され、前記物品配置判定手段は、前記差分波形を用いて前記判定を行うことを特徴とする請求項1に記載の物品検出装置。
【請求項3】
複数の前記配置部アンテナが前記物品配置部に設けられており、前記タグの減衰振動波の減少が検出される配置部アンテナが所定時間内に所定数以上あることを条件に作動する報知手段を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の物品検出装置。
【請求項4】
前記共振タグが受信する送信電磁波を送信する送信部と、前記タグ減衰振動波を受信する受信部と、前記送信部と前記受信部とに対して複数の前記配置部アンテナを切り換えながら接続するアンテナ切換手段と、を備えることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の物品検出装置。
【請求項5】
前記共振タグが共振する共振周波数を有する送信電磁波を送信する送信部と、前記タグの減衰振動波を受信する受信部と、前記配置部アンテナに対して前記送信部及び前記受信部を交互に切り換えながら接続する送受信部切換手段と、を備え、
前記共振タグが、前記送信電磁波に共振されることにより減衰振動波を誘起するようになっていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の物品検出装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate