説明

物干し器

【課題】フレームに対するフックの取り付け作業を容易かつ効率的に行うことができ、フレームの各辺部おけるフックの取り付け部が十分な強度を有する物干し器を提供する。
【解決手段】多数のピンチを有するフレームにおける相対向する一対の辺部の中央部7aにはフック9を該フックの基部9aを回動中心として該フレームの内外方向に回動自在に備えさせた物干し器において、前記フックの基部には該フックと直交する回動軸11を備えさせ、前記フレームの前記各辺部には両縁に壁部13を設け、該壁部と壁部との間には該フックの回動軸の各端を受ける軸受部15を相対向させて配設し、該軸受部と軸受部との間には底板19を配設し、各壁部における該軸受部と軸受部との間には該フックを受ける凹部21を形成し、該フックにおける回動軸の各端を該フレームの上方より各軸受部に回動自在に挿嵌する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物干し器に関するものであり、特に、フレームにおける相対向する一対の辺部の中央部に備えさせたフックを介して物干し竿、物干しロープ等(以下単に「物干し竿」という。)に係止するようにした物干し器に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来より広く使用されている物干し器(以下「従来の物干し器(A)」という。)においては、フレームに多数のピンチ(洗濯ばさみ)を備えさせ、単一の中央フックをチェーン、ワイヤ等の連結手段により該フレームに連結し、該中央フックを物干し竿に係止することにより該物干し器を該物干し竿に吊り下げるようにしている。
【0003】
従来の物干し器(A)においては、中央フックがチェーン、ワイヤ等の連結手段を介してフレームに連結されているため、中央フックはフレームから離れた上方に位置する。換言すれば、物干し竿からフレームまでの上下方向の距離が大きい。したがって、例えばマンションの如き高層住宅等においては、一般に物干し竿とベランダ表面との間の上下方向の距離が小さいため、丈の長い洗濯物をベランダに干す場合には、該洗濯物の下端がベランダ表面に接触して汚れるおそれがある。
【0004】
また、従来の物干し器(A)においては、単一の中央フックを物干し竿に係止しているため、物干し器全体が水平方向に回動して物干し器ないし洗濯物が建物の外壁、窓ガラス等に当接するおそれがある。
【0005】
このような状況に鑑み、特許第3380477号公報は、多数のピンチを有するフレームにおける相対向する一対の辺部の中央部にはフックを該フックの基部を回動中心として該フレームの内外方向に回動自在に備えさせてなる物干し器を開示している。以下、特許第3380477号公報に開示されている物干し器を「従来の物干し器(B)」という。
【0006】
従来の物干し器(B)においては、フックをチェーン、ワイヤ等の連結手段を介することなく、直接フレームに取り付けているため、物干し竿からフレームまでの上下方向の距離が小さい。したがって、物干し竿とベランダ表面との間の上下方向の距離が相対的に大きくなる。その結果、従来の物干し器(B)においては、丈の長い洗濯物をベランダに干す場合でも、該洗濯物の下端がベランダ表面に接触するおそれが小さくなるという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3380477号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかるに、従来の物干し器(B)においては、下記の如き問題がある。
【0009】
(イ)物干し器のフレームは、下面を開口したチャンネル状の断面形状を有し、該フレームにおける相対向する辺部の上壁部に屈曲方向に沿って帯状に開口したフック突出用開口部が形成されており、フックはフレームの下面開口部から該フック突出用開口部に差し込み、該フック突出用開口部より上方に突出させるように構成されている。
【0010】
したがって、フレームに対するフックの取り付け作業は、面倒であり、効率が悪いという謗りを免れ得ない。
【0011】
(ロ)すべての洗濯物の荷重は、2個のフック取り付け部にかかるのであるが、該フレームの各辺部おけるフックの取り付け部は、下面が開口しているのみならず、上壁部に屈曲方向に沿って帯状に開口したフック突出用開口部が形成されているため、もともと強度が小さい。したがって、フレームを形成する合成樹脂の劣化に伴い、該フレームおけるフックの取り付け部が破損するおそれがある。
【0012】
(ハ)フレームの両端に取り付けられた各フックは、水平方向に回動不能であるため、例えば物干し器を室内で収納する際に、該物干し器を鴨居、カーテンレール等に係止することができない。
【0013】
本発明は、従来の物干し器(B)における上述の如き問題を解決し、フレームに対するフックの取り付け作業を容易かつ効率的に行うことができ、フレームの各辺部おけるフックの取り付け部が十分な強度を有し、更に、物干し器を室内で収納する際に、該物干し器を鴨居、カーテンレール等に係止することができるようにした物干し器を提供しようとしてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本発明は、下記の物干し器を提供するものである。
【0015】
(1)多数のピンチを有するフレームにおける相対向する一対の辺部の中央部にはフックを該フックの基部を回動中心として該フレームの内外方向に回動自在に備えさせた物干し器において、
前記フックの基部には該フックと直交する回動軸を備えさせ、
前記フレームの前記各辺部には両縁に壁部を設け、該壁部と壁部との間には該フックの回動軸の各端を受ける軸受部を相対向させて配設し、該軸受部と軸受部との間には底板を配設し、各壁部における該軸受部と軸受部との間には該フックを受ける凹部を形成し、該フックにおける回動軸の各端を該フレームの上方より各軸受部に回動自在に挿嵌してなることを特徴とする物干し器(請求項1)。
【0016】
(2)前記フレームにおける前記各辺部の中央部には、該辺部よりフレームの外方に膨出する膨出部を設ける(請求項2)。
【0017】
(3)前記回動軸の各端には該回動軸よりも小径の突起を設け、各突起を各軸受部に回動自在に挿嵌する(請求項3)。
【0018】
(4)前記フックは該フックの前記基部に対し水平方向に回動自在である(請求項4)。
【発明の効果】
【0019】
[請求項1の発明]
フックをフレームに取り付ける際には、フックにおける回動軸の各端をフレームの上方より各軸受部に回動自在に挿嵌すればよいため、フレームに対するフックの取り付け作業を容易かつ効率的に行うことができる。
【0020】
フックが取り付けられるフレームの前記各辺部には両縁に壁部を設け、更に軸受部と軸受部との間には底板を配設しているため、フレームおけるフックの取り付け部は十分な強度を有しており、破損するおそれがない。
【0021】
[請求項2の発明]
フレームにおける前記各辺部の中央部には、該辺部よりフレームの外方に膨出する膨出部を設けているため、該フレームおけるフックの取り付け部は更に十分な強度を有しており、破損するおそれがない。
【0022】
[請求項3の発明]
フックをフレームに取り付ける際には、フックの回動軸よりも小径の各突起を各軸受部に挿嵌すればよいため、フレームに対するフックの取り付け作業を一層容易かつ効率的に行うことができる。
【0023】
[請求項4の発明]
フックはその基部に対し水平方向に回動自在であるため、例えば物干し器を室内で収納する際に、該フックを適宜回動させることにより、該物干し器を鴨居、カーテンレール等に係止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、フックとフックが取り付けられるフレームの辺部とを示す斜視図である。
【図2】図2は、フックとフックが取り付けられるフレームの辺部とを示す側面図である。
【図3】図3は、フックをフレームの辺部に取り付けた状態を示す側面図である。
【図4】図4は、物干し器の側面図である。
【図5】図5は、物干し器の正面図である。
【図6】図6は、フレームの平面図である。
【図7】図7は、図6のVII−VII線における断面図である。
【図8】図8は、フレームの底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
符号1に示すものは物干し器のフレームである。フレーム1は例えば合成樹脂により形成する。フレーム1の全体形状は、略長方形、略正方形その他如何なるものであっても差し支えない。フレーム1は、一例として、断面略逆U字状部材により形成する。
【0026】
フレーム1に多数のピンチ(洗濯ばさみ)3、3・・・を備えさせる。符号5に示すものは、ピンチ3を係止するための係止孔である。
【0027】
フレーム1における相対向する一対の辺部7、7の中央部7a、7aにはフック9、9を備えさせる。物干し器の使用時には、図4、図5に示すように、フック9、9は物干し竿10に係止する。
【0028】
各フック9は、該フック9の基部9aを回動中心としてフレーム1の内外方向に回動自在となす。すなわち、各フック9は、図5に示すように、フレーム1の内側に略水平に倒れた内側水平状態(図6参照)から直立状態を経てフレーム1の外側に略水平に倒れた外側水平状態までの範囲内において、回動自在である。
【0029】
各フック9の基部9aには該フック9と直交する水平方向の回動軸11を備
えさせる。
【0030】
次に、フレーム1おけるフック9の取り付け部について説明する。
【0031】
フレーム1の前記各辺部7における少なくとも中央部7aには両縁に壁部13、13を設ける。壁部13と壁部13との間にはフック9の回動軸11の各端を受ける軸受部15、15を相対向させて配設する。各軸受け部15は、一例として、所定の間隔をおいて相対向させて配設した断面略逆U字状部17の端部により形成される。
【0032】
フレーム1の各辺部7における少なくとも中央部7aにおいて、軸受部15と軸受部15との間には底板19を配設する。
【0033】
各壁部13における軸受部15と軸受部15との間にはフック9を受ける凹部21を形成する。因みに、フック9がフレーム1の内側に略水平に倒れたときに、該フック9は一方の凹部21に支持され、フック9がフレーム1の外側に略水平に倒れたときに、該フック9は他方の凹部21に支持される。
【0034】
フック9における回動軸11の各端をフレーム1の上方より各軸受部15に回動自在に挿嵌する。
【0035】
フレーム1における前記各辺部7の中央部7aには、好ましくは、該辺部7よりフレーム1の外方に膨出する膨出部23を設ける。膨出部23は、フレーム1の把持部をなすものであり、図示の事例においては、膨出部23の表面に滑り止めの突条25を多数本設けている。
【0036】
フック9における前記回動軸11の各端には該回動軸11よりも小径の突起27、27を設け、各突起27を各軸受部15に回動自在に挿嵌する。
【0037】
フック9は、好ましくは、該フック9の基部9aに対し水平方向に回動自在である。
【0038】
なお、前述の如くフレーム1における相対向する一対の辺部7、7の中央部7a、7aにはフック9、9を備えさせる他、単一の中央フック(図示せず。)をチェーン、ワイヤ等の連結手段により該フレーム1に連結してもよい。この場合には、該中央フックを物干し竿10に係止することにより該物干し器を該物干し竿10に吊り下げる。
【符号の説明】
【0039】
1 フレーム
3 ピンチ
5 係止孔
7 辺部
7a 中央部
9 フック
9a 基部
10 物干し竿
11 回動軸
13 壁部
15 軸受部
17 断面略逆U字状部
19 底板
21 凹部
23 膨出部
25 突条
27 突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数のピンチを有するフレームにおける相対向する一対の辺部の中央部にはフックを該フックの基部を回動中心として該フレームの内外方向に回動自在に備えさせた物干し器において、
前記フックの基部には該フックと直交する回動軸を備えさせ、
前記フレームの前記各辺部には両縁に壁部を設け、該壁部と壁部との間には該フックの回動軸の各端を受ける軸受部を相対向させて配設し、該軸受部と軸受部との間には底板を配設し、各壁部における該軸受部と軸受部との間には該フックを受ける凹部を形成し、該フックにおける回動軸の各端を該フレームの上方より各軸受部に回動自在に挿嵌してなることを特徴とする物干し器。
【請求項2】
前記フレームにおける前記各辺部の中央部には、該辺部よりフレームの外方に膨出する膨出部を設けたことを特徴とする請求項1に記載の物干し器。
【請求項3】
前記回動軸の各端には該回動軸よりも小径の突起を設け、各突起を各軸受部に回動自在に挿嵌したことを特徴とする請求項1又は2に記載の物干し器。
【請求項4】
前記フックは該フックの前記基部に対し水平方向に回動自在であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の物干し器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−200483(P2011−200483A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−71548(P2010−71548)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000110756)ニシダ株式会社 (5)