説明

物理量センサ及び物理量センサの製造方法

【課題】簡易な手順で、可動電極と固定電極との固着を抑制した上で、陽極接合を実現する。
【解決手段】それぞれ貫通穴を有する一対の絶縁性基板と、梁部に片持支持され一対の絶縁性基板との間に隙間を有し梁部の弾性によって揺動可能である可動電極を含み、一対の絶縁性基板の内面に接合された、絶縁性基板よりも導電性が高い中央基板と、一対の絶縁性基板の外面に接合され絶縁性基板よりも導電性が高い外側基板と、一対の絶縁性基板のそれぞれの可動電極に対向する内面に形成された電極膜と電極膜から貫通穴を通って一対の絶縁性基板の外面の外側基板へ延伸する導電路とを含む金属層と、を備える物理量センサであって、外側基板は、貫通穴の幅より広い間隔で貫通穴を挟む位置に少なくとも絶縁性基板に達する深さで形成された複数の溝状の間隙と、間隙に挟まれ導電路に接触される第1帯状部と、間隙によって第1帯状部と絶縁された第2帯状部とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、陽極接合にて作成される物理量センサ関する。
【背景技術】
【0002】
静電容量型物理量センサは、加速度あるいは振動等を受けて変位する可動電極(ダイヤフラム)と、可動電極に間隙を隔てて対向する固定電極を有する。可動電極は、シリコンなどの基板に形成される。固定電極は、通常、絶縁材料に金属を成膜して形成されている。静電容量型物理量センサでは、可動電極を形成した基板と、固定電極の金属薄膜を形成した絶縁物を陽極接合して、素子を形成する。
【0003】
陽極接合では、可動電極を形成した基板と固定電極の金属薄膜を形成した絶縁物とを所定の温度に加熱した状態で接合部分を挟んで電圧を加える。その場合に、電圧の分布等に依存して、可動電極と固定電極との間の静電引力が発生し、可動状態を維持すべき可動電極が固定電極に固着してしまうことがあった。
【0004】
一方、従来、固定電極と可動電極との間の放電を生じないようにするため、固定電極と可動電極を短絡線で短絡して、これらを同電位とすることが提案されている(例えば、下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−194771号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、この技術を適用して、固定電極と可動電極とを同電位とすれば、可動電極と固定電極との間の静電引力を抑制でき、可動電極が固定電極に固着してしまうという現象の発生を低減できる可能性もある。しかし、上記従来の技術では、固定電極と可動電極を短絡した短絡線を陽極接合の後で切断、除去する必要があり、工程が複雑となる。本発明の課題は、簡易な手順で、可動電極と固定電極との固着を抑制した上で、陽極接合を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は前記課題を解決するために、以下の手段を採用した。すなわち、本発明は、それぞれ貫通穴を有する一対の絶縁性基板と、
一対の絶縁性基板に挟まれた内面空間で梁部に片持支持され一対の絶縁性基板との間に隙間を有し梁部の弾性によって揺動可能である可動電極を含み、一対の絶縁性基板の内面に接合された、絶縁性基板よりも導電性が高い中央基板と、
一対の絶縁性基板の外面に接合され絶縁性基板よりも導電性が高い外側基板と、
一対の絶縁性基板のそれぞれの可動電極に対向する内面に形成された電極膜と電極膜から貫通穴を通って一対の絶縁性基板の外面の外側基板へ延伸する導電路とを含む金属層と、を備え、
外側基板は、それぞれ、貫通穴の幅より広い間隔で貫通穴を挟む位置に少なくとも絶縁性基板に達する深さで形成された複数の溝状の間隙と、
間隙に挟まれ導電路に接触される第1帯状部と、
間隙によって第1帯状部と絶縁された第2帯状部とを有する。
【0008】
また、本発明は、一対の絶縁性基板と、
一対の絶縁性基板に挟まれ、絶縁性基板よりも導電性が高い中央基板と、
一対の絶縁性基板の外面にある絶縁性基板よりも導電性が高い外側基板とを備える物理量センサの製造方法であって、
中央基板を貫通する穴状空間に、梁部と、梁部に片持支持され梁部の弾性によって揺動可能な中央基板の厚みよりも薄い可動電極とを形成するステップと、
一対の絶縁性基板のそれぞれに貫通穴を形成するステップと、
一対の絶縁性基板のそれぞれの内面に電極膜と電極膜から貫通穴を通って絶縁性基板の外面へ延伸する導電路とを形成するステップと、
一対の絶縁性基板のそれぞれの外面に外側基板を接合して一対の接合基板を形成するステップと、
一対の接合基板の外側基板に、それぞれ、絶縁性基板の貫通穴の幅より広い間隔で貫通穴を挟み込む位置に少なくとも絶縁性基板に達する深さの複数の溝状の間隙を形成し、間隙に挟まれ導電路に接触する第1帯状部と間隙によって第1帯状部と絶縁された第2帯状部とを形成するステップと、
中央基板と一対の接合基板の絶縁性基板側とを、可動電極と電極膜とが対向し、貫通穴が中央基板の梁部近傍に位置するように重ね合わせ、第2帯状部の裏側の絶縁性基板と中央基板の可動電極の周囲の部分とを接触させるステップと、
第1帯状部と中央基板とを接地し、間隙によって第1帯状部から絶縁された第2帯状部に接合電圧を印加して、第2帯状部の裏側の絶縁性基板と中央基板の可動電極の周囲の部分とを接合するステップとを含む。 本発明の物理量センサは、外側基板に間隙を備えることによって、間隙に挟まれた第1帯状部と中央基板とを接地した場合に、第1帯状部と接触する金属層と可動電極とを同電位にすることができる。金属層(金属膜)と可動電極とを同電位にすることによって、第2帯状部に接合電圧を付加して中央基板と第2帯状部の裏側の絶縁性基板とを接合する場合でも、金属層(金属膜)に可動電極が固着する現象の発生を抑制できる。接合終了後には、そのまま、物理量センサの素子を切り出せばよい。すなわち、陽極接合時に、金属膜と可動電極とを同電位としたことに伴う、更なる付加的な工程を要しない。本発明の物理量センサ製造方法では、外側基板に溝状の間隙を形成し、第1帯状部と第2帯状部とを絶縁させることによって、簡易な手順で、可動電極と金属層(金属膜)とを固着させることなく、物理量センサを製造することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、簡易な手順で、可動電極と固定電極との固着を抑制した上で、陽極接合を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1A】物理量センサの斜視図の例である。
【図1B】物理量センサの断面図の例である。
【図2】複数の可動電極を構成したダイヤグラム基板の平面図を模式的に例示する図である。
【図3】加工対象の基盤を外側から見た平面図の例である。
【図4】物理量センサの製造工程の例を説明する図(その1)である。
【図5】物理量センサの製造工程の例を説明する図(その2)である。
【図6】陽極接合工程の概念を例示する図である。
【図7】加工装置の斜視図の例である。
【図8】接合ベースおよび端子の接触状態を例示する拡大図である。
【図9】架橋部に取り付けられた端子が、シリコン基板の帯状部に接触した状態を示す斜視図である。
【図10】ばね内蔵突起ねじの外観図である。
【図11】ばね内蔵突起ねじの正面図である。
【図12】ばね内蔵突起ねじの断面図である
【図13】突起部が外殻部から最も長く延びた状態を示す図である。
【図14】突起部が外殻部の中に押し込まれた状態を示す図である。
【図15A】加工装置から架橋部を一部省略した側面図である。
【図15B】加工装置から架橋部を一部省略した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態(以下、実施形態という)に係る静電容量型物理量センサ(以下、単に物理量センサという)の加工装置について説明する。以下の実施形態の構成は例示であり、本発明は実施形態の構成には限定されない。
【0012】
<物理量センサの概要>
図1Aに物理量センサの斜視図と、図1Bに、図1Aにて、ラインL1をA1矢印方向に移動して物理量センサを切断したときの物理量センサの断面図とを例示する。この物理量センサは、シリコンの基板(以下、ダイヤフラム基板6といい、本発明の「中央基板」に相当)と、ダイヤフラム基板6を両面から挟み込んで設けられ、ダイヤフラム基板6に接合されるガラス基板7A,7B(本発明の「一対の絶縁性基板」に相当)と、ガラス基板7A,7Bを外側両面から挟み込んで設けられ、ガラス基板7A,7Bにそれぞれ接合されるシリコンの外側基板8A,8B(本発明の「外側基板」に相当)とを有する。
【0013】
ダイヤフラム基板6は、水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液(以下、TMAHという)を用いてウェットエッチングして形成される梁部4(カンチレバーともいう)と、可動電極1を有する。可動電極1は、梁部4によってダイヤフラム基板6の基部16に片持ち状態で支持され、梁部4の弾性によって揺動可能である。図1Bに示されるように、可動電極1の上下の表面には、ガラス基板7A,7Bの内面との間の間隙を維持するための絶縁物の突起3が設けられている。ただし、物理量センサに加速度等の外力が加わらず、梁部4が撓んでいない状態、すなわち、可動電極1がガラス基板7A,7Bに対して平行に維持された通常の状態では、突起3は、ガラス基板7A,7B、あるいは、ガラス基板7A,7B上に形成された固定電極2A,2Bから離間している。また、梁部4が突き出しているダイヤフラム基板6の基部16には、外部回路へのリード線を接続する金属の可動電極用パッド10が形成されている。
【0014】
ガラス基板7A,7Bは、接合面20A−20Dにおいて、ダイヤフラム基板6と接合される。また、ガラス基板7A,7Bの可動電極1の上下の表面との間には、間隙11A,11Bが存在する。間隙11A,11Bを挟んで可動電極1の上下の表面と対向するガラス基板7A,7Bの内面には、固定電極2A,2B(本発明の「金属膜」に相当)が形成されている。固定電極2A,2Bは、通常、ガラス基板7A,7Bの表面にスパッタ等にて金属を成膜することで形成する。固定電極2A,2Bが可動電極1の上下の表面との間で間隙を形成することで、可動電極1は、固定電極2A,2Bに挟まれた内面空間で変位する。その変位によって、固定電極2A,2Bと可動電極1とが構成する静電容量が変化し、物理量が検出される。なお、可動電極1の表面に形成された突起3は、可動電極1が極度に変位しても、直接固定電極に接触すること抑制する。
【0015】
また、ガラス基板7A,7Bの梁部4に対向する部分には、フィードスルー構造5が形成されている。フィードスルー構造5は、ガラス基板7A,7Bに貫通穴を開けて形成される。フィードスルー構造5を通じて、固定電極2A,2Bの一部である金属薄膜がガラス基板7A,7Bから外部方向、すなわち、外側基板外側基板8A,8B方向に引き出される。この外側基板8A、8B方向に引き出される金属を固定電極引き出し金属(本発明の「導電路」に相当)と呼ぶ。なお、外側基板8A,8Bには、固定電極用パッド9A,9Bが設けられており、固定電極用パッド9A,9Bは、フィードスルー構造5によって
引き出される固定電極引き出し金属に接続される。
【0016】
外側基板8A,8Bは、それぞれガラス基板7A,7Bに接合されている。以下、接合された外側基板8A(8B)とガラス基板7A(7B)をキャップ層17A(17B)という。外側基板8A,8Bの固定電極用パッド9A,9Bを挟む位置には、絶縁用溝12A,12B,13A,13B(本発明の「溝状の間隙」に相当)が形成されている。例えば、絶縁用溝12A,12Bは、固定電極用パッド9Aおよび固定電極用パッド9Aが形成された外側基板8Aの山状部分14A(本発明の「第1帯状部」に相当)を外側基板8Aの他の部分15A(以下、帯状部分15Aともいい、本発明の「第2帯状部」に相当する)と電気的に分離している。すなわち、絶縁用溝12A,12Bは、深さ方向にガラス
基板7A,7Bに達するまで形成されている。したがって、山状部分14A,14Bと帯
状部分15A,15Bとは、ガラス基板7A,7Bの表面を介して接触するが、電気的には絶縁される。なお、外側基板8Aの山状部分14A,14Bに接触するガラス基板7A,7Bには、フィードスルー構造5の貫通穴が形成されるため、絶縁用溝12A,12B
は、フィードスルー構造5の貫通穴の直径よりも広い間隔で形成される。絶縁用溝13A,13Bも同様である。
【0017】
したがって、固定電極2A、固定電極2A引き出し金属、および固定電極用パッド9Aは、外側基板8Aの帯状部分15Aから絶縁されている。同様に、絶縁用溝13A,13Bは、固定電極用パッド9Bおよび固定電極用パッド9Bが形成された外側基板8Bの山状部分14Bを外側基板8Bの他の部分15B(以下、帯状部分15Bともいう)から電気的に分離している。
【0018】
このように、本実施形態に係る物理量センサの特徴は、絶縁用溝12A,12B,13A,13Bにより、固定電極2A,2B引き出し金属、および固定電極用パッド9A,9Bが、外側基板8A,8Bの帯状部分15A,15Bから分離していることにある。そのため、ダイヤフラム基板6と、両側のキャップ層17A,17Bを陽極接合する際、外側基板8A,8Bの帯状部分15A,15Bとは切り離して、固定電極2A,2B、引き出し金属、および固定電極用パッド9A,9Bを接地することが可能となる。
【0019】
すなわち、ダイヤフラム基板6と、両側のキャップ層17A,17Bとの陽極接合では、ダイヤフラム基板6を接地し、一方、両側のキャップ層17A,17Bは、マイナス数百ボルト程度まで電圧を加える。そのとき、固定電極2A,2B、引き出し金属、および固定電極用パッド9A,9Bが接地されていると、固定電極2A,2Bと、ダイヤフラム基板6の可動電極1とが同電位となる。したがって、可動電極1が固定電極2Aまたは2Bに静電引力で引き付けられるという現象を抑制できる。なお、この工程は、陽極接合時に、固定電極用パッド9A,9Bを接地すれば実現できるため、極めて簡易かつ安定して物理量センサを製造できる。
【0020】
図2に、複数の可動電極を構成したダイヤフラム基板6の平面図を模式的に例示する。図1A,1Bは、最終的には、1つの物理量センサの素子となる素子部分21の構成図である。一方、図2のダイヤフラム基板6は、そのような素子21の可動電極1の部分を複数含む。図2の例では、梁部4は、一対形成されて、側方から矩形状の可動電極を保持する。ただし、梁部4は、このような構造に限定されるわけではなく、例えば、1本の柱状部材で形成してもよいし、3本以上の柱状部材で形成してもよい。なお、図2では、素子部分21を模式的に3×4の配列で示したが、実際のダイヤフラム基板6は、さらに多数の素子部分21を含む。
【0021】
図3に、図2のダイヤフラム基板と陽極接合されるキャップ層17Aの基板を外側(ダイヤフラム基板との接合面との反対側の外側基板8A)から見た平面図である。図3のよ
うに、外側基板8Aには、絶縁用溝12A,12Bによって、狭い帯状の山状部分14Aが形成される。また、山状部分14Aよりも広い帯状部分15Aは、絶縁用溝12Aによって、山状部分14Aと電気的に分離される。なお、図3では、広い帯状部分15Aと、狭い帯状の山状部分14Aの組を3組模式的に例示したが、実際の外側基板では、さらに、多くの帯状部分15Aと、山状部分14Aの組が形成される。また、本実施形態の構成では、山状部分14Aよりも帯状部分15Aを構成したが、可動電極1およびフィードスルー構造5の寸法に依存して、山状部分14Aよりも帯状部分15Aが狭くなることがありえる。その意味で、山状部分14Aを第1帯状部といい、帯状部分15Aを第2帯状部のように呼ぶ。
【0022】
<物理量センサ製造工程の例>
図4および図5に、物理量センサ製造工程を例示する。以下の(1)〜(10)の番号は、図4および図5の(1)〜(10)に対応する。(0)は、加工前のシリコン基板を示している。
【0023】
(0)必要な材料
ダイヤフラム基板6として、例えば、低抵抗、厚さ300μm、両面研磨済みのシリコンウェハを用いる。ガラス基板7A,7Bとして、例えば、厚さ300μm、両面研磨済みのガラスを用いる。ガラス基板7A,7Bとして用いるガラスには、ナトリウムイオンなどのアルカリイオンを含んだガラスが好ましい。例えば、パイレックスガラスやテンパックスガラスである。外側基板8A,8Bとして、例えば、低抵抗、厚さ500μm程度、片面研磨済みのシリコンウェハを用いる。固定電極2A,2Bを形成する材料として、例えば、金(元素記号Au)、白金(元素記号Pt)、チタン(元素記号Ti)を用いる。
【0024】
(1)間隙(ギャップともいう)の形成
ダイヤフラム基板6としてのシリコンウェハを熱酸化して酸化膜を形成する。フォトリソグラフィによりフォトレジストにパターン転写後、フォトレジストをマスクにして酸化膜をパターンニングする。このとき、ダイヤフラム基板6としてのシリコンウェハの可動電極1と梁部4とに該当する箇所を囲む部分(図2の周縁部6A)に相当する箇所をマスクしてパターニングする。この工程をダイヤフラム基板6としての可動電極形成用シリコンウェハの両面について実施する。その後、TMAH(Tetra Methyl Ammonium Hydroxide)によりフォトレジストにマスクされていない部分のシリコンをエッチングする。このとき、フォトレジストにマスクされていない部分のシリコンのエッチング量が可動電極1と固定電極2A,2Bとの間の間隙となる。この工程により、ダイヤフラム基板6の周縁部6A以外のシリコンウェハがエッチングされる。
【0025】
(2)突部3(ストッパ)の形成
ダイヤフラム基板6としてのシリコンウェハをさらに熱酸化し、酸化膜100(例えば、厚さ1.5μm)を形成する。フォトリソグラフィによりフォトレジストのパターン転写後、フォトレジストをマスクにして酸化膜100をパターンニングする。このとき、ダイヤフラム基板6としてのシリコンウェハの突起3に該当する箇所をマスクしてパターニングする。この工程により、可動電極1(ダイヤフラム)形成時のストッパとなる突起3が形成される。
【0026】
(3)可動電極1のパターン形成
ダイヤフラム基板6としてのシリコンウェハをフォトリソグラフィによりフォトレジストのパターン転写後、フォトレジストをマスクにして、酸化膜100をパターニングする。このとき、ダイヤフラム基板6としてのシリコンウェハの周縁部6Aと可動電極1とに相当する箇所をマスクしてパターニングする。この工程により、可動電極1のパターンが
形成される。
【0027】
(4)梁部4のパターン形成
さらに、ダイヤフラム基板6としてのシリコンウェハをフォトリソグラフィによりフォトレジストのパターン転写後、酸化膜100をパターンニングする。このとき、ダイヤフラム基板6としてのシリコンウェハの周縁部6Aと可動電極1と梁部4とに該当する箇所をマスクしてパターニングする。(2)から(4)の工程をダイヤフラム基板6の両面に実施する。その後、TMAHにより、フォトレジストで被覆(マスク)されていない部分のシリコンをエッチングし、梁部4(ビームともいう)を形成する。この工程により、周縁部6Aと可動電極1と梁部4とに相当する箇所以外のシリコンがエッチングされ始め、梁部4のパターンが形成される。
【0028】
(5)可動電極1、梁部4の形成
さらに、ダイヤフラム基板6としてのシリコンウェハをフォトリソグラフィによりフォトレジストのパターン転写後、酸化膜100をパターンニングする。このとき、ダイヤフラム基板6としての周縁部6Aと可動電極1に該当する箇所をマスクしてパターニングする。この処理をダイヤフラム基板6としてのシリコンウェハの両面に施す。その後、TMAHにより、フォトレジストで被覆(マスク)されていない部分のシリコンをエッチングする。このTMAHのウェットエッチングにより、周縁部6Aと可動電極1と梁部4とに該当する箇所以外のシリコンが貫通する。梁部4に該当する箇所は、シリコンがエッチングされ梁部4が形成される。工程(1)から(5)により、ダイヤフラム基板6の可動電極1、絶縁性の突起3、及び梁部4が形成される。
【0029】
(6)両側キャップ層の製作、陽極接合
外側基板8A(8B)としてのシリコンウェハの研磨されていない面にチップ識別用のマーキングを行う(ここでは図示しない)。マークは、例えば、DRIE(Deep Reactive Ion Etching)で形成する。次に、外側基板8A(8B)としてのシリコンウェハの研磨済みの面と、ガラス基板7A(7B)としてのガラスの研磨済みの面とを合わせて、陽極接合する。このとき、例えば、350度程度に加熱した状態でガラス基板7A(7B)側に接合電圧として数百ボルトから1キロボルトの負電圧を印加することにより陽極接合を行う。図5では、図1A及び図1Bにおける、外側基板8Bとガラス基板7Bとを例示している。以下、図5は、シリコン基板8Bとガラス基板7Bとの部分を例示する。
【0030】
(7)電極取り出し穴(フィードスルー構造5)の形成
ガラス基板7A(7B)としてのガラスの研磨済みの面(工程(6)でシリコンウェハと陽極接合されていない面)にサンドブラスト用のドライフィルムレジストを貼り付け、フォトリソグラフィによるレジストパターンを形成する。レジストパターンに従って、サンドブラストでガラス基板7A(7B)としてのガラスを貫通させ、外側基板8A(8B)としてのシリコンウェハに到達したところで停止し、ガラス基板7A(7B)としてのガラスに穴(フィードスルー構造5)を形成する。フィードスルー構造5は、固定電極2A,2Bを引き込める位置であれば、ガラス基板7A,7Bのどの位置に形成されてもよい。図1A及び図1Bでは、ダイヤフラム基板6の梁部4の対の中心付近にフィードスルー構造5を形成する。
【0031】
(8)固定電極(2A,2B)形成
固定電極2A(2B)の材料、例えば、金、白金、チタンをガラス基板7A(7B)としてのガラスの研磨済みの面にスパッタし、リフトオフにより固定電極2A(2B)をパターニングする。例えば、ガラス基板7A(7B)としてのガラス上で、金属膜が不要な部分をレジストで保護し、その上に金属を成膜する。レジストを除去すると必要な部分に
パターンが残り、固定電極2A(2B)が形成される。固定電極2A(2B)を形成する金属膜がフィードスルー構造5の内部に引き込まれ、外側基板8A(8B)に接続される。
【0032】
(9)電極の分離
外側基板8A(8B)としてのシリコンウェハの研磨されていない面(ガラスと陽極接合していない面)に、ダイシングにより絶縁用溝(12A,12B,13A,13B)を形成する。絶縁用溝12A(12B,13A,13B)は、外側基板8A(8B)としてのシリコンウェハの表面から少なくともシリコンウェハの厚さ分の切り込みを入れて形成する。例えば、外側基板8A(8B)としてのシリコンウェハの厚さが50μmであるならば、50μmから50数μmの切込みを入れて絶縁用溝12A(12B,13A,13B)を形成する。さらに、絶縁用溝12A(12B,13A,13B)は、ガラス基板17A及び17Bのフィードスルー構造5の貫通穴を挟むように、少なくとも2本形成する。絶縁用溝12A(12B,13A,13B)は、梁部4と垂直方向及び水平方向のどちらの方向に形成されてもよい(図1A,図1B,及び図3では梁部4と垂直方向に絶縁用溝12を形成する)。このように絶縁用溝12A(12B,13A,13B)を形成することにより、固定電極2A(2B)にからフィードスルー構造5に引き込まれた金属部分を周囲の外側基板8A(8B)から電気的に分離することができる。工程(6)から(9)により、素子両側のキャップ層17A,17Bが形成される。
【0033】
(10)陽極接合、ダイシング、チップ化
ダイヤフラム基板6とキャップ層17A,17Bのガラス基板7A,7B側とを重ね合わせる。このとき、可動電極1の対面に固定電極2A,2Bが位置付けられるように位置合わせをする。梁部4の近傍にフィードスルー構造5が位置付けられるようにするのが好ましい。位置合わせには、加工工程の中でシリコンウェハにアライメントマークをつけておいたり、シリコンウェハのオリエンテーションフラット等を利用したりしてもよい。上側のキャップ層17Aの外側基板8Aとしてのシリコン層にサンドブラスト等で位置合わせ時にダイヤフラム基板6の可動電極1が見えるような位置合わせ用の窓を形成し、位置合わせ時に位置ずれ等を確認できるようにしてもよい。
【0034】
次に、ダイヤフラム基板6と外側基板8A,8Bの山状部分14A,14Bとを接地し、外側基板8A,8Bの帯状部分15A,15Bに接合電圧として数百ボルトから1キロボルトの負電圧を印加して、接合面20Aから20Dを陽極接合する。外側基板8A,8Bの山状部分14A,14Bを接地することにより、固定電極2A,2Bと可動電極1とが同電位になるため、可動電極1が固定電極2A,2Bに静電引力で引き付けられるという現象が発生しないようにすることができる。
【0035】
ダイシングにより、物理量センサの素子をチップ化する。さらに、図1に示した電極パッド(可動電極用パッド10、固定電極用パッド9等)を素子側面に形成する。
【0036】
<ダイヤグラム基板とキャップ層との陽極接合に用いる加工装置>
ダイヤフラム基板6と、両側のキャップ層17A,17Bとの陽極接合を行う際には、例えば、以下のような加工装置を使用する。
【0037】
図6は、陽極接合工程の概念を例示する図である。図6のように、陽極接合前、ダイヤフラム基板6と、その両側のキャップ層17A,17Bとを重ね合わせた基板は、接合ベース30に搭載される。ダイヤフラム基板6の梁部4の位置と、キャップ層17A,17Bのフィードスルー構造5とが重なるように位置合わせして、ダイヤフラム基板6とキャップ層17A,17Bと重ね合わせ、接合ベース30に搭載する。以下、本加工装置の加工対象であるダイヤフラム基板6とキャップ層17A,17Bとを重ね合わせたものを基
板Wという。
【0038】
接合ベース30は、土台部50との絶縁を確保するガラス基板32と、ガラス基板32に接合(例えば、陽極接合)されたシリコン基板31を含む。シリコン基板31には、キャップ層17Bに含まれる外側基板8Bに形成された絶縁用溝13A,13Bと同様の絶縁用溝43A,43Bが、略同一の間隙幅、略同一の間隔(ピッチ)で形成されている。絶縁用溝43A,43Bが山状部分54を形成し、山状部分54は、絶縁用溝43Aによって、シリコン基板31の他の部分(以下、帯状部分55という)と電気的に分離されている。
【0039】
したがって、外側基板8Bに形成された絶縁用溝13A,13Bと、シリコン基板31の絶縁用溝43A,43Bとが重複するようにキャップ層17Bを接合ベース30に搭載することで、外側基板8Bの山状部分14Bと帯状部分15Bとの絶縁を維持して、山状部分14Bと帯状部分15Bをそれぞれシリコン基板31の山状部分54と帯状部分55に接触させることができる。すなわち、山状部分14Bをシリコン基板31の帯状部分55から絶縁した状態で山状部分54に接触させるとともに、帯状部分15Bをシリコン基板31の山状部分54から絶縁した状態で帯状部分55に接触させ、外側基板8Bを含むキャップ層17Bを接合ベース30に搭載できる。
【0040】
この状態で、端子144により外側基板8Aの山状部分14Aを接地することで、固定電極2Aを含む金属部分を接地できる。同様に、端子141によりシリコン基板31の山状部分54を接地することで、外側基板8Bの山状部分14Bを通じて固定電極2Bを含む金属部分を接地できる。
【0041】
そして、端子47を通じて、ダイヤフラム基板6を接地するとともに、端子143により、外側基板8Aの帯状部分15Aにマイナス数百ボルトからマイナス1000ボルト(例えば、マイナス500ボルト)程度の電圧を加える。端子143は、複数の帯状部分15Aに対応して複数配列されるので、複数の端子143を区別する場合には、143−1,143−2のように呼ぶことにする。端子144についても、同様とする。
【0042】
同様に、端子142によりシリコン基板31の帯状部分55にマイナス数百ボルトからマイナス1000ボルト程度の電圧を加える。端子142は、複数の帯状部分55に対応して複数配列されるので、複数の端子142を区別する場合には、142−1,142−2のように呼ぶことにする。端子141についても、同様とする。
【0043】
以上のように、外側基板8A,8Bの帯状部分15A,15Bにマイナス数百ボルトからマイナス1000ボルト程度の電圧を加えるとともに、ダイヤフラム基板6を接地することで、外側基板8A,8Bに隣接するガラス基板7A,7Bとダイヤフラム基板6との間にも同程度の電圧を加える結果となり、外側基板8A,8Bがダイヤフラム基板6と陽極接合される。この過程で、固定電極2A,2Bは、接地されている。
【0044】
なお、図6では、省略しているが、陽極接合の過程では、加熱手段によって、加工対象のダイヤフラム基板6とキャップ層17A,17Bに含まれるガラス基板7A,7Bとの陽極接合部分は、加熱される。加熱手段は、例えば、接合ベース30の下方に接地され、接合ベース30を通じて陽極接合部分を加熱するヒータである。また、加熱手段は、加工対象のダイヤフラム基板6とキャップ層17A,17Bに放射熱を発する加熱ランプでもよい。
【0045】
図7は、加工装置の斜視図の例である。本加工装置は、土台部50の上に構築される。土台部50の上には、接合ベース30が搭載される。接合ベース30は、図6に示したよ
うにガラス基板32により土台から絶縁されている。さらに、接合ベース30の上には、基板W(ダイヤフラム基板6、およびその両側のキャップ層17A,17Bを含む)が搭載される。
【0046】
そして、接合ベース30の上側に、橋梁状の架橋部材71,72が配置される。架橋部材71,72は、例えば、ステンレス製で、所定の厚みの板材を切り出した角材の形状である。架橋部材71は、両端を固定具161によって土台部50に固定されている。固定具161は、円盤上の押さえ構造161Aと、押さえ構造161A上のワッシャ161Bと、ワッシャ上のねじ部161Cを含む。なお、固定具161および架橋部材71を下方から支持する支持部161D(図15A,15B参照)は、いずれも、例えば、ステンレス製である。また、固定具161および支持部161Dの少なくとも表面をステンレスよりもさらに導電性の高い材料で被覆してもよい。なお、ワッシャ161Bは必須ではなく、省略しても構わない。
【0047】
すなわち、ねじ部161Cがワッシャ161Bを介して押さえ構造161Aを押圧し、押さえ構造161Aが架橋部材71を、支持部161Dを介して接合ベース30に押圧する。図7の例では、ねじ部161Cは、雄ねじであり、土台部50に設けたねじ孔にねじ着されている。ただし、ねじ部161Cを雌ねじとしてもよい。その場合には、土台部50から上方に、雄ねじを立てればよい。このようにして架橋部材71は、固定具161と接触し、土台部50を通じて接地されている。
【0048】
一方、架橋部材72は、絶縁物の支持部162D(図15B参照)を介して土台部50に搭載され、固定具162によって土台部50に固定される。固定具162も、固定具161と同様、円盤上の押さえ構造162Aと、押さえ構造162A上のワッシャ162Bと、ワッシャ上のねじ部162Cを含む。ねじ部162Cの構造は、ねじ部161Cと同様である。ただし、押さえ構造162Aは、絶縁物であり、架橋部材72は、ねじ部161C、ワッシャ161Bおよび土台部50から絶縁されている(図15B参照)。さらに、固定具162は、高圧導電板65を架橋部材72に押圧している。高圧導電板65には、図示しない高圧電源からマイナス数百ボルトからマイナス1000ボルトの電圧を投入可能となっている。
【0049】
そして、架橋部材71には、突起状の端子141が配置され、シリコン基板31の山状部分54を接地可能となっている。また、架橋部材72には、端子142が配置され、シリコン基板31の帯状部分55に、マイナス数百ボルトからマイナス1000ボルトの電圧を伝達可能となっている。
【0050】
同様に、基板Wの上側に、橋梁状の架橋部材73,74が配置される。架橋部材73の構造および作用は、架橋部材72と同様である。すなわち、架橋部材73は、絶縁物を介して土台部50に搭載され、固定具163によって、高圧導電板65とともに、土台部50に固定されている。固定具163の構造は、固定具162と同様であるので、その説明を省略する。
【0051】
また、架橋部材74は、土台部50に搭載され、固定具164によって、土台部50に固定されている。固定具164の構造は、固定具161と同様であるので、その説明を省略する。
【0052】
さらに、土台部50には、接地電極86を支持する金属製の支持部85が設けられている。支持部85は、L字アングル状であり、接合ベース30の上方を架橋し、接地電極86を基板W内のダイヤフラム基板6の端子位置までガイドする。接地電極86は、支持部85および土台部50を通じて、ダイヤフラム基板6を接地する。
【0053】
オリエンテーションフラット検出部81,82は、基板Wのオリエンテーションフラットを検出する。基板Wと接合ベースとを位置合わせする際には、オリエンテーションフラット検出部81,82に対して基板Wのオリエンテーションフラットを合わせて行う。
【0054】
図8に、接合ベース30、端子141、および端子142の接触状態を例示する拡大図を示す。図8は、図7のA2矢印方向から、加工装置を見た拡大図である。図8では、接合ベース30上のシリコン基板31の帯状部分55に、高圧(マイナス数百ボルトからマイナス1000ボルト)につながる端子142が接触している。また、接地電位につながる端子141は、山状部分54(帯状部分55よりも狭い帯状の部分)に接触している。
【0055】
図9−図14により、端子141,142,143,144の構造の詳細を例示する。図9は、架橋部材72に取り付けられた端子142が、シリコン基板31の帯状部分55に接触した状態を示す斜視図である。ここでは、端子142を例に詳細構造を説明するが、端子141,143,144についても、その構造は同様である。
【0056】
図10は、端子141,142,143,144を構成するばね内蔵突起ねじ100の外観図である。図11は、ばね内蔵突起ねじ100の正面図である。また、図12は、正面図に示された平面P1にて、ばね内蔵突起ねじ100を切断した断面をA3矢印方向に見た断面図である。図12のように、ばね内蔵突起ねじ100は、外面にねじ山(雄ねじ)が形成された筒状の外殻部101と、外殻部101内にて、外殻部101の円筒長さ方向に伸縮可能なばね102と、ばね102によって、端面を外殻部101の円筒長さ方向に弾性的に押圧される突起部104を含む。突起部104のばね102と接触する端面には、円盤状のつば部103が形成され、ばね102の押圧力を受けている。突起部104は、つば部103から延伸し、つば部103より、半径の小さい軸部を含む。なお、図12では、ばね102は、つる巻き状のばねであるが、本発明の実施は、このようなばねの形状には限定されない。例えば、ばね102が板ばねであってもよい。
【0057】
外殻部101は、円筒形状であり、円筒形状の内部空間を有する。円筒長手方向の一端は、閉じられており、他端には、円筒形状の内部空間の内面半径より小さい穴部106が設けられている。穴部106を通じて、突起部104の軸部が突き出している。そして、ばね部102は、つば部103を突起部104の軸部が延伸する方向に付勢し、内壁空間の側壁に押圧している。
【0058】
外部から、突起部104をばね102の弾性力に抗する方向に付勢すると、突起部104を外殻部101に弾性的に押し込むことができる。そして、突起部104へのばね102の弾性力に抗する方向の付勢をやめると、再び、突起部104が外殻部101から円筒長さ方向に突き出す。このときの突起部104が外殻部101から外側に突き出す弾性力は、ばね102の縮んだ長さに比例にして強くなる。図13は、突起部104が外殻部101から最も長く延びた状態(弾性力が最小の状態)を示し、図14は、突起部104が外殻部101の中に押し込まれた状態(弾性力が最大の状態)を示している。
【0059】
端子142を構成するばね内蔵突起ねじ100は、図9に示すように、架橋部材71に形成されたねじ穴(雌ねじ)にねじ着されている。なお、図には、明示しないが、内蔵突起ねじ100の外面のねじ山には、ゆるみ止め防止の接着剤を塗布するようにしてもよい。そして、架橋部材72をシリコン基板31に押圧し、固定具162で固定すると、ばね102の弾性力によって、突起部104が弾性的に、シリコン基板31を押圧することになる。この構造は、端子141と架橋部材71、端子143と架橋部材73、端子144と架橋部材74についても同様である。
【0060】
図15Aは、図7のA2矢印方向から見た側面図(ただし、架橋部材71、72の中央右側は省略している)である。図15Bは、架橋部材71部を取り外した状態で、図7のA2矢印方向から見た側面図(ただし、架橋部材72の中央右側は省略している)である。
【0061】
図15Aに示すように、架橋部材71(74)は、固定具161(164)、および土台部50を通じて接地されている。一方、図15Bに示すように、架橋部材72は、絶縁性の押さえ構造162Aおよび支持部162Dによって電気的には、土台部50から絶縁された状態で固定されている。この構造は、架橋部材72についても同様である。このように、架橋部材71(74)は、土台部50によって接地されている。また、架橋部材72(73)には、高圧導電板65から高電圧の供給が可能となっている。
【0062】
さらに、土台部50には、接地電極86を支持する金属製の支持部85が設けられている。また、土台部50の側方には、基板Wのオリエンテーションフラットを検出するオリエンテーションフラット検出部81,82が設けられている。
【0063】
さらに、土台部50の下方には、加熱手段90が設けられている。加熱手段90は、例えば、内部に電熱線を含むヒータである。
【0064】
以上の構成により、本加工装置は、土台部50に、接合ベース30を搭載し、さらに、基板Wを搭載する。本加工装置は、加熱手段90により、基板Wが所定温度に加熱されている。以下の工程は、この加熱状態で実行される。
【0065】
基板Wの外側基板8Bの絶縁用溝13A,13Bと、接合ベース30のシリコン基板31の絶縁用溝43A,43Bとを位置合わせして、基板Wを接合ベース30に搭載する。このとき、オリエンテーションフラット検出部81,82に対して、基板Wのオリエンテーションフラットを合わせることで、位置合わせが容易、かつ、確実となる。
【0066】
そして、架橋部材71を端子141が接合ベース30のシリコン基板31の山状部分54に接触するように載置し、固定具161にて、ねじ止めする。これによって、ばね102の弾性力により、端子141が安定して山状部分54に押圧される。その結果、固定電極2Bが確実に接地される。
【0067】
また、架橋部材72を端子142が接合ベース30のシリコン基板31の帯状部分55に接触するように載置し、固定具162にて、ねじ止めする。これによって、ばね102の弾性力により、端子142が安定して帯状部分55に押圧される。
【0068】
さらに、架橋部材74を端子144が基板Wの外側基板8Aの山状部分14Aに接触するように載置し、固定具164にて、ねじ止めする。これによって、ばね102の弾性力により、端子144が安定して山状部分14Aに押圧される。その結果、固定電極2Aが確実に接地される。
【0069】
また、架橋部材73を端子143が基板Wの外側基板8Aの帯状部分15Aに接触するように載置し、固定具163にて、ねじ止めする。これによって、ばね102の弾性力により、端子143が安定して帯状部分15Aに押圧される。
【0070】
また、支持部85を通じて、接地電極86をダイヤフラム基板6のパッド10に押圧する。これによって、ダイヤフラム基板6は、接地電極86を通じて接地される。
【0071】
そして、高圧導電板65、架橋部材72,73、およびシリコン基板31の帯状部分5
5を通じてキャップ層17A,17Bの帯状部15A,15Bに、高圧電源から例えば、マイナス数百ボルトからマイナス1000ボルト程度の電圧を投入することで、陽極接合を実行する。このとき、ダイヤフラム基板6およびダイヤフラム基板6の可動電極1に対向する固定電極2A,2Bがともに接地されているので、ダイヤフラム基板6に作用する静電引力は、ほとんど存在しないか、極めて微弱なレベルに抑制できる。したがって、可動電極1の固定電極2A,2Bへの固着を抑制した状態で、陽極接合を実行できる。さらに、陽極接合実行後は、電源から高圧導電板65への高電圧を遮断し、基板Wを加工装置から取り外し、基板Wをダイシング工程にて切断し、個々の素子21(図1,図2参照)を形成すればよい。したがって、陽極接合後の特別の工程を追加することなく、安定して陽極接合を実行できる。
【0072】
<物理量センサ及び物理量センサの製造方法の作用効果>
本実施形態の物理量センサは、外側基板8A(8B)に絶縁用溝12A,12B(13A,13B)を設け、絶縁用溝12A,12B(13A,13B)で挟まれる山状部分14A(14B)とダイヤフラム基板6とを接地することによって、固定電極2A(2B)とダイヤフラム基板6(可動電極1)とを同電位にすることができる。固定電極2A,2Bとダイヤフラム基板6(可動電極1)とを同電位にすることによって、陽極接合を行う際にも、可動電極1が固定電極2A,2Bに静電引力で引き付けられるという現象の発生を防ぐことができる。
【0073】
本実施形態の物理量センサの製造方法では、ダイヤフラム基板6とキャップ層17A,17Bとの陽極接合の前に、キャップ層17A,17Bの外側基板8A,8Bに絶縁用溝12A,12B,13A,13Bを形成する。このことによって、陽極接合の際に固定電極2A,2Bに可動電極1が静電引力で引きつけられ張り付いてしまう現象を防ぐことができる。さらに、陽極接合後には、従来のような、短絡線を切断、除去するというような特別な処理を必要としない。従って、本実施形態の物理量センサの製造方法によれば、簡易な手順で、可動電極が固定電極に張り付くことなく、物理量センサを製造することができる。
【符号の説明】
【0074】
1 可動電極
2 固定電極
4 梁部
6 ダイヤフラム基板
7A,7B ガラス基板
8A,8B 外側基板
17A,17B キャップ層
21 素子
30 接合ベース
50 土台
65 高圧導電板
71,72,73,74 架橋部
141,142,143,144 端子
161,162,163,164 固定部
161C (導電性の)押さえ構造
161D (導電性の)支持部
162C (絶縁性の)押さえ構造
162D (絶縁性の)支持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ貫通穴を有する一対の絶縁性基板と、
前記一対の絶縁性基板に挟まれた内面空間で梁部に片持支持され前記一対の絶縁性基板との間に隙間を有し前記梁部の弾性によって揺動可能である可動電極を含み、前記一対の絶縁性基板の内面に接合された、前記絶縁性基板よりも導電性が高い中央基板と、
前記一対の絶縁性基板の外面に接合され前記絶縁性基板よりも導電性が高い外側基板と、
前記一対の絶縁性基板のそれぞれの前記可動電極に対向する内面に形成された電極膜と前記電極膜から前記貫通穴を通って前記一対の絶縁性基板の外面の前記外側基板へ延伸する導電路とを含む金属層と、を備え、
前記外側基板は、それぞれ、前記貫通穴の幅より広い間隔で前記貫通穴を挟む位置に少なくとも前記絶縁性基板に達する深さで形成された複数の溝状の間隙と、
前記間隙に挟まれ前記導電路に接触される第1帯状部と、
前記間隙によって前記第1帯状部と絶縁された第2帯状部と
を有する物理量センサ。
【請求項2】
一対の絶縁性基板と、
前記一対の絶縁性基板に挟まれ、前記絶縁性基板よりも導電性が高い中央基板と、
前記一対の絶縁性基板の外面にある前記絶縁性基板よりも導電性が高い外側基板とを備える物理量センサの製造方法であって、
前記中央基板を貫通する穴状空間に、梁部と、前記梁部に片持支持され前記梁部の弾性によって揺動可能な前記中央基板の厚みよりも薄い可動電極とを形成するステップと、
前記一対の絶縁性基板のそれぞれに貫通穴を形成するステップと、
前記一対の絶縁性基板のそれぞれの内面に電極膜と前記電極膜から前記貫通穴を通って前記絶縁性基板の外面へ延伸する導電路とを形成するステップと、
前記一対の絶縁性基板のそれぞれの外面に前記外側基板を接合して一対の接合基板を形成するステップと、
前記一対の接合基板の外側基板に、それぞれ、前記絶縁性基板の前記貫通穴の幅より広い間隔で前記貫通穴を挟み込む位置に少なくとも前記絶縁性基板に達する深さの複数の溝状の間隙を形成し、前記間隙に挟まれ前記導電路に接触する第1帯状部と前記間隙によって前記第1帯状部と絶縁された第2帯状部とを形成するステップと、
前記中央基板と前記一対の接合基板の絶縁性基板側とを、前記可動電極と前記電極膜とが対向し、前記貫通穴が前記中央基板の梁部近傍に位置するように重ね合わせ、前記第2帯状部の裏側の前記絶縁性基板と前記中央基板の前記可動電極の周囲の部分とを接触させるステップと、
前記第1帯状部と前記中央基板とを接地し、前記間隙によって前記第1帯状部から絶縁された前記第2帯状部に接合電圧を印加して、前記第2帯状部の裏側の前記絶縁性基板と前記中央基板の前記可動電極の周囲の部分とを接合するステップと
を含む物理量センサ製造方法。

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15A】
image rotate

【図15B】
image rotate


【公開番号】特開2010−169535(P2010−169535A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−12334(P2009−12334)
【出願日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.パイレックス
【出願人】(000000516)曙ブレーキ工業株式会社 (621)
【出願人】(504117958)独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構 (101)