説明

特定日に服用する1回分の薬剤を収納するための包装体

【課題】服用日が特定される薬剤、特に服用間隔が長い薬剤について、服用管理を的確に行い、且つ使用者が容易に薬剤の取り出しを行うことが可能となる包装体を提供する。
【解決手段】包装体Pは、薬剤31が収納された薬剤収納部32を有するPTPシート30を保持するトレー10と、トレー10を収容しトレー10に対してスライドする外函20と、を備えている。トレー10は、薬剤収納部32と重なる位置に薬剤31が挿通可能な取出し孔11a,12aが形成され、外函20は、薬剤収納部32が目視可能となる位置に窓部21bを有し、薬剤収納部32には、一回に服用される薬剤31が収納されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定日に服用する1回分の薬剤を収納するための包装体に係り、特に服用間隔が長い薬剤の服用管理を的確且つ容易に行うために用いられる包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医薬品の包装においては、プレススルーパッケージ(PTP)シートが広く用いられている。PTPシートは、容器に被包装物を収容した後、破れやすい蓋材によってシールする形態の包装体であり、容器側から蓋材側に向かって押圧することにより蓋材が破れ、被包装物が取り出される。このようなPTPシートは、気密性、取り扱い性、携帯性、生産性に優れ、且つ省資源化できることから、医薬品の包装体として、今後の需要はさらに高くなると予想される。
【0003】
しかしながら、PTPシートで包装された薬剤は、複数個が連続して1枚のPTPシートに包装された状態が一般的であり、服用時、患者が一回分の服用個数(服用量)を誤る可能性がある。
【0004】
そして、薬剤の服用量だけでなく、服用頻度や、その他の使用上の注意事項を的確に使用者に伝達するために、特許文献1では、服用上の留意事項を記載したカード型包装材に、PTPシートを封止する技術が開示されている。このように、服用上の注意、服用履歴等が記載されたカード型包装体にPTPシートが保持されることにより、適切な服用管理の下、患者が薬剤を服用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3172679号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1には、PTPシートを狭持するカード型包装材において、PTPシートの凸部(薬剤が収納された部分)に対応する位置に、それぞれ孔が形成されたカード型包装体が開示されている。そして、そのカード型包装材には、薬剤についての情報や注意事項等が印刷されており、複数の服用回数分(例えば、一週間分)の薬剤が包装されている。
【0007】
このように、PTPシートの薬剤が収納された部分において台紙に孔を設ける構成とすることにより、患者は、PTPシートの薬剤が収納された部分を押圧するだけで薬剤を取り出すことができる。そして、台紙には薬剤についての情報、服用日等が印刷可能であることから、服用管理を的確に行うことができる。
【0008】
一方、医薬品の使用・服用頻度に関し、患者の利便性や安全性の向上のため、服用間隔が長い、すなわち、服用頻度が低くても効果を発揮する事ができる医薬品が求められている。このような服用間隔が長い医薬品の例として、例えば、ビスホスホネート製剤が挙げられる。
【0009】
ビスホスホネート製剤は、骨粗鬆症等の治療に有用な骨吸収抑制剤である。ビスホスホネート製剤は、服用方法が厳しく設定されており、より服用間隔を長くした製剤が求められているため、1日1回の服用に代わるものとして、週1回、さらには月1回という服用間隔が長い製剤が開発されている。
【0010】
しかしながら、このような週1回、月1回という服用頻度が低い薬剤は一般的でなく、特に、複数の服用回数分の薬剤が連続して包装されていると、1日に1〜3回という服薬頻度に慣れた患者が誤ってより高い頻度で服用してしまう可能性がある。さらに、薬剤の服用間隔が長いため、患者が服用し忘れ、本来服用すべき日に服用せず、服用時期が正しく守られない可能性も否定できない。
【0011】
特許文献1に開示された技術では、カード型包装材において薬剤の情報、服用日等が印刷可能であるものの、複数の服用回数分の薬剤が連続して包装されているため、週1回、月2回、或いは月1回等のように、服用間隔が極めて長い薬剤に適用すると、患者が服用し忘れる可能性がある。
したがって、週1回、月2回、2週に1回、4週に1回、月1回或いは2ヶ月に1回等の服用間隔が長い薬剤の服用管理を適正に行い、患者が正しい服用日に忘れずに薬剤を服用することを可能とする包装体が望まれていた。
【0012】
また、薬剤が収納されたPTPシートは、複数の服用回数分が連続して包装されており、さらに、そのPTPシートは、紙またはアルミ素材を含む袋等に包装されている。そして、病院等において薬剤が取り扱われる際には、薬剤師が紙箱、紙袋等を一度開封し、内部の薬剤の状態を確認してから患者に手渡される。さらに、薬剤師が患者に薬剤を手渡す際においても、内部の薬剤の状態を薬剤師と患者が目視し、確認する必要がある。したがって、薬剤が患者に手渡される際には、内部に収納された薬剤の確認作業において開封する作業が必要となり、確認作業が煩雑となるという不都合があった。
【0013】
本発明の目的は、服用日が特定される薬剤、例えば服用頻度が低い、すなわち服用間隔が長い薬剤について、適度な剛性を備え、被包装体を物理的に保護することが可能である包装体を提供することにある。また、本発明の他の目的は、内部に収納された薬剤が視認可能であり、薬剤師や患者によって容易に薬剤の確認を行うことが可能な包装体を提供することにある。さらにまた、本発明の他の目的は、服用日が特定される薬剤、例えば服用間隔が長い薬剤について、服用管理を的確に行い、且つ使用者が容易に薬剤の取り出しを行うことが可能となる包装体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記課題は、本発明に係る包装体によれば、薬剤が収納された薬剤収納部を有するPTPシートを保持するトレーと、該トレーを収容し前記トレーに対してスライドする外函と、を備えた包装体であって、前記トレーは、前記薬剤収納部と重なる位置に前記薬剤が挿通可能な取出し孔が形成され、前記外函は、前記薬剤収納部が目視可能となる位置に窓部を有し、前記薬剤収納部には、一回に服用される薬剤が収納されること、により解決される。
【0015】
このように、本発明の包装体は、一回に服用される薬剤のみが包装体に収められている。したがって、使用者が一回の服用量を誤ることを防止でき、服用管理を的確に行うことができる。
さらに、本発明の包装体は、内部に収納されるトレーにPTPシートが固定される構成であるが、トレー上の薬剤収納部と重なる位置において、薬剤が挿通可能な取出し孔を備えているため、PTPシートの薬剤収納部(凸部)を押圧するだけで薬剤を取り出し可能である。また、PTPシートを押圧するには、スライドオープン式の外函からトレーを引き出すだけでよい。したがって、高齢者等、指先を自由に動かすことが難しい使用者にとっても容易に薬剤を取り出すことができる。
一方、一回に服用される薬剤のみが収納されるPTPシートは、薬剤収納部の数が1〜2個程度であり、複数の服用回数分の薬剤が収納されたPTPシートと比較して、薬剤収納部の数が少ない。したがって、薬剤収納部の数が1〜2個程度のトレーのみを備えた場合には、薬剤収納部は外力を受けやすい。しかし、トレーを外函内に収納することにより、薬剤収納部を外力から保護し、薬剤収納部の破損を防止することが可能となり、さらに、取出し孔から薬剤が誤って押し出されるのを防ぐことができる。
また、外函には、PTPシートの薬剤収納部を目視可能な位置に窓部が形成されている。この窓部により、使用者は、薬剤の状態を容易に確認することができる。そして、この窓部は、外函において薬剤収納部の数に依存して形成されるため、1〜2箇所程度設けられるだけでよい。したがって、外函の剛性も良好に保持することができる。
【0016】
また、前記トレーは、前記PTPシートを狭持する表片と裏片とを備え、前記取出し孔は、前記表片及び前記裏片に形成され、前記表片の前記取出し孔には、前記薬剤収納部が挿通されてなると好適である。
このように、本発明の包装体は、表片と裏片の板片によってトレーを構成し、これら表片と裏片とにPTPシートを狭持させる構成とすると良い。そして、薬剤収納部を取出し孔に挿通することにより、PTPシートは、トレーに対してより強固に固定される。したがって、PTPシートの薬剤収納部を押圧する際、トレーに対してPTPシートの位置ずれを防止することができ、薬剤を容易に取り出すことができる。
【0017】
このとき、前記トレーは、前記外函から引き出される側に把持部を有し、該把持部は、前記表片から前記薬剤収納部が突出した側に凸設されると共に、押圧された際に略平面状に変形可能であると好適である。
このように、スライドオープン式の包装体において、内部に収納されるトレーに把持部が備えられていると、使用者は容易にトレーを引き出すことができる。そして、使用者に保持されて押圧されることにより、把持部が平面状に変形するため、高齢者のように、指先の力が弱い使用者であっても、容易にトレーを外函から引き出すことができる。したがって、容易に薬剤を取り出すことができる。
【0018】
さらに、前記外函は、前記把持部と重なる部分が切り欠かれた切り欠き部を備えてなると好ましい。
トレーと外函が完全に重なる形状ではなく、このように、外函において、把持部と重なる位置に切り欠きが設けられていることにより、使用者は、容易に把持部を保持することが可能となる。
【0019】
また、前記把持部は、前記表片から立ち上がる内側側面と、該内側側面から延設される上面と、該上面から延設される外側側面と、を有する中空体であると好適である。
このように、連続する面からなる中空体によって把持部を構成すると、上方からの外力によって、把持部は容易に平面状となる。したがって、使用者はより確実に把持部を保持することが可能となり、容易にトレーを外函から引き出すことができる。
【0020】
さらに、前記トレーは、前記外函のスライド方向に沿う縁辺において誘導片が延設されてなると好ましい。
トレーのスライド方向に沿って誘導片が設けられていることにより、トレーと外函とのスライドを容易に行うことが可能となる。例えば、トレーを外函に挿入する際、誘導片の端部を外函の開口内部に当接させることにより、トレーが外函に押し込みやすくなる。また、トレーを外函から引き抜く際、安定してトレーが外函の内部をスライドする。したがって、使用者は、容易に包装体の開閉を行うことができる。
【0021】
また、前記トレーには、前記把持部に隣接する位置に前記薬剤の服用を促す表示部材が貼付され、該表示部材は、前記表片に貼付される接着部と、該接着部から鉤状に折曲されると共に前記把持部に沿って配設された折曲部と、を有し、前記接着部は、前記表片から剥がされた後、他の物品に再度貼付可能に形成されてなると好適である。
このように、包装体のトレーには、使用者に対して薬剤の服用を促す表示部材が備えられていても良い。そして、その表示部材は、包装体とは異なる物品に再度貼付可能であるため、例えば、カレンダー等の日付管理が可能な物品に表示部材を貼付することができる。これにより、使用者はカレンダー等を見るたびに薬剤の服用日を確認できることから、服用日を認識することができ、薬剤を服用し忘れるのを防止することができる。したがって、週1回、月2回、2週間に1回、4週間に1回、月1回或いは2ヶ月に1回等の、服薬間隔が長い薬剤について、適切な服用管理をすることができる。
さらに、表示部材の接着部以外の箇所を、把持部に沿わせるように折り曲げて配設することにより、使用者は容易に表示部材を保持しやすくなる。その結果、表示部材を容易にトレーから剥がすことができ、別の物品に貼り替えることができる。
【0022】
さらに、前記表片又は前記裏片は、前記表片と前記裏片とを引き剥がすための剥離起点部を備えてなると好ましい。
このように、表片と裏片とを引き剥がしやすくするため、剥離起点部を備えることにより、使用者は、表片と裏片とをそれぞれ独立に保持し、接着された表片と裏片とを引き剥がしやすくなる。その結果、薬剤をPTPシートから取りだした後、表片と裏片とに狭持されたPTPシートを分別廃棄する際、容易に表片と裏片との間に狭持されたPTPシートを取り外すことができる。
【0023】
さらにまた、前記トレーには、前記外函のスライド方向に沿って押罫が形成されてなると好適である。
このように、トレーにおいてスライド方向に沿った押罫(エンボス)が形成されることにより、トレーの剛性が向上する。PTPシートの薬剤収納部を押圧すると、トレーに上方からの力が加わり、トレー自体が撓む可能性があるが、押罫を設けることにより、トレーの剛性が向上するので、トレーを撓みにくくすることができる。したがって、薬剤を押し出しやすくなり、容易に薬剤を取り出すことができる。
【0024】
また、前記薬剤がビスホスホネート製剤であるとき、本発明の包装体は、特に好適に用いられる。
本発明の包装体は、上記のように、服用管理を適切に行うことができ、且つ高齢者のように、指先を自由に動かすことが難しい使用者にとっても薬剤の取り出しを簡単に行うことができる。ビスホスホネート製剤は、主に骨粗鬆症患者が服用する薬剤であるが、骨粗鬆症患者は高齢者に多く、高齢者は、指先を自由に動かすことができない場合がある。したがって、本発明の包装体は、上記構成により、容易に薬剤を取り出すことができるため、ビスホスホネート製剤を服用する患者(多くは高齢者)の薬剤の取り扱いを容易にする。
また、近年開発された服用間隔が極めて長いビスホスホネート製剤に対し、上記各構成を備えることにより、服用管理が適切に行いやすいため、本発明の包装体は特に有効である。
【0025】
前記薬剤が、2週間に1回以下の投与頻度である製剤であるとき、本発明の包装体は、好適に用いられる。
本発明の包装体は、一回服用分の薬剤を収納するための包装体であり、特に上記のような服用間隔の長い薬剤の服用管理を適切に行うことが可能である。一回の服用分の薬剤が、一組のトレー及び外函によって包装されており、服用数(服用量)を使用者が誤認しにくくすることができるため、複数の服用回数分の薬剤が収納されたPTPシートと明確に区別することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の包装体によれば、一回に服用される量の薬剤のみが一つの包装体に包装されるため、複数の服用回数分の薬剤が収納されたPTPシートと明確に区別することができ、薬剤師の調剤を容易にし、使用者が服用量を誤ることが防止され、薬剤の服用量を的確に管理することができる。そして、このように一回に服用される量の薬剤のみが包装される場合、薬剤の数が少ないために、PTPシートの薬剤収納部に外力が加わりやすくなるが、外函を備えることによって、薬剤を保護することができる。したがって、本発明の包装体は、特に服用間隔の長い薬剤の服用管理を適切に行うことができ、さらに薬剤を物理的に保護可能であることから、薬剤の保存を好適に行うことができる。
また、包装体のトレーには、取出し孔が形成されているため、薬剤の取り出しを容易に行うことができる。
そして、外函には、PTPシートの薬剤収納部を目視可能な窓部が形成されているため、使用者は、薬剤の状態を容易に確認することができる。したがって、例えば、薬剤師が薬剤について確認を行う際や、患者に対して薬剤の説明をする際等、容易に薬剤の外観を目視でき、状態を確認することができる。したがって、薬剤の服用管理をより的確、且つ容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施形態に係る包装体の概略斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る包装体の概略斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るトレーの概略斜視図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る包装体の正面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係るトレーの正面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る図2のA−A線に相当する断面図である。
【図7】本発明の一実施形態に係るトレーの把持部に関する説明図である。
【図8】本発明の一実施形態に係るトレーの展開図である。
【図9】本発明の一実施形態に係る外函の展開図である。
【図10】本発明の他の実施形態に係る包装体の概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の一実施形態について、図を参照して説明する。なお、以下に説明する部材、配置等は、本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨に沿って各種改変することができることはもちろんである。
【0029】
図1乃至図9は本発明の一実施形態に係るもので、図1及び図2は包装体の概略斜視図、図3はトレーの概略斜視図、図4は包装体の正面図、図5はトレーの正面図、図6は図2のA−A線に相当する断面図、図7はトレーの把持部に関する説明図、図8はトレーの展開図、図9は外函の展開図であり、図10は本発明の他の実施形態に係る包装体の概略斜視図である。なお、各図において、説明のため、トレー10及び外函20を構成する台紙の厚みは誇張して示している。
【0030】
(包装体Pの構成)
本発明の一実施形態に係る包装体Pは、図1及び図2で示すように、PTPシート30を狭持するトレー10と、トレー10とPTPシート30とを収納する外函20を備えている。
PTPシート30には、薬剤31が収納された薬剤収納部32が備えられており、PTPシート30は、トレー10の表片11と裏片12との間に狭持されている(図6を参照)。そして、トレー10は、PTPシート30を伴って外函20に収容され、トレー10と外函20とはスライドするように構成されている。また、トレー10と外函20のスライド方向(長手方向)の長さは、互いに略同じ長さに形成されている。
【0031】
トレー10及び外函20は、後述するように、それぞれ1枚の厚紙を適宜折り畳むことによって形成されている。したがって、トレー10及び外函20を構成する材料は、適度な強度を備えた厚紙とすると、安価に包装体Pを製造できるため好ましい。また、厚紙以外でも、適当な剛性を備えていれば、プラスチックフィルム等を用いてもよい。トレー10及び外函20は、図8、図9に示される1枚の板片を折り曲げることにより形成されることで、複数の板片を貼合せて形成されるよりも、製造作業時の作業が簡素化されるため、折曲可能な材料を用いるとよい。
【0032】
図4に示すように、包装体Pに収容されるPTPシート30には、一回に取り出される薬剤31、すなわち一回分の服用量の薬剤31が収納されている。本発明における薬剤31は、週1回、月2回、2週に1回、4週に1回、月1回或いは2ヶ月に1回という服用間隔が極めて長い製剤を対象としている。したがって、薬剤31の例として、たとえば、ビスホスホネート製剤が挙げられる。
【0033】
一般に、複数の服用回数分の薬剤が連続して包装されるPTP包装体においては、薬剤収納部を互いに噛み合わせるように、二枚のPTP包装体を重ねて保存することにより、薬剤収納部が保護される。しかし、本発明の包装体Pは、一回に服用される薬剤31が収納されるため、薬剤収納部32の数が少なく、上記の複数の服用回数分の薬剤が包装されたPTP包装体のように、重ね合わせて保護することができない。したがって、外函20を備えることにより、外力から薬剤収納部32を保護することができる。
【0034】
PTPシート30は、公知の形態のものを用いることができ、薬剤収納部32から押圧することにより、フィルム部33から薬剤31を取り出すことができれば、その形状は限定されない。なお、フィルム部33は、凸状に形成された薬剤収納部32以外の平滑な部分を指す。
PTPシート30の態様として、例えば、複数(たとえば、10錠程度)の薬剤収納部32が連続して形成されたシートから、個々のPTPシート30を適度な大きさ(たとえば、25mm×15mm程度)で打ち抜き、フィルム部33の各頂点(角)を丸めて面取りした状態とすると好適である。フィルム部33の頂点を丸めた状態とすると、包装体Pを分解し、分別して廃棄する際、使用者がフィルム部33の頂点部分によって怪我をすることを防止できる。
【0035】
そして、PTPシート30は、図5及び図6に示すように、トレー10の表片11及び裏片12に狭持される。より詳細には、PTPシート30のフィルム部33がトレー10の表片11及び裏片12に狭持される。
【0036】
トレー10の上面に配設される表片11には、PTPシート30の薬剤収納部32が挿通され、固定される取出し孔11aが形成されている。また、トレー10の下面に配設される裏片12には、PTPシート30を上方から押圧した際に、薬剤31が挿通可能な取出し孔12aが形成されている。したがって、表片11に形成される取出し孔11aと、裏片12に形成される取出し孔12aとは、略重なる位置に、略同形・同大で形成されていると好ましい。
【0037】
取出し孔11a及び取出し孔12aの形状及び大きさは、薬剤31と、PTPシート30の薬剤収納部32との形状及び大きさに対応して決定される。図3で示すように、本実施形態では取出し孔11aと、取出し孔12aは長孔状に形成されているが、その他、円形、矩形、菱形等、様々な形状とすることができる。
【0038】
ただし、取出し孔11a及び取出し孔12aの大きさは、PTPシート30のフィルム部33の外径よりも小さく形成される。この構成により、PTPシート30は、表片11及び裏片12において狭持される。また、取出し孔11a及び取出し孔12aの大きさが大きすぎると、トレー10の剛性が低下し、PTPシート30を押圧する際、トレー10が変形して薬剤31を取り出しにくくなるため、取出し孔11a及び取出し孔12aの大きさは、薬剤収納部32よりも若干大きい程度とすると良い。
【0039】
このように、取出し孔11a及び取出し孔12aが備えられたトレー10にPTPシート30を狭持させ、そのトレー10が外函20に対してスライド式で収納される構成とすることにより、使用者は、薬剤31を取り出す際、トレー10をスライドさせ、PTPシート30の薬剤収納部32を押圧するだけでよい。したがって、使用者は薬剤31の服用時、容易に薬剤31を取り出すことができる。
【0040】
また、トレー10を外函20から引き出していない状態では、外函20の底面22によって取出し孔12aが塞がれるため、PTPシート30から薬剤31を押し出すことができなくなる。したがって、使用者以外が、薬剤31を誤って押し出すのを防止することができる。
【0041】
取出し孔11a及び取出し孔12aの位置は、表片11及び裏片12の略中央に形成されている。また、取出し孔11a及び取出し孔12aは、トレー10において、トレー10がスライドする方向(すなわち、トレー10の長手方向)を3分割した時(図5のX,Y線)、その3分の2(図5のX線)よりも把持部13側に形成されていると好ましい。なお、把持部13の構成については後述する。
【0042】
取出し孔11a及び取出し孔12aが、トレー10の長手方向においてトレー10を3分割した際、把持部13側の端部から3分の2の位置よりも把持部13が設けられた側に形成されていると、PTPシート30の薬剤31を押し出す際、トレー10が撓みにくく、薬剤31が取り出しやすい。
【0043】
PTPシート30を表片11及び裏片12に狭持する際、PTPシート30と重ならない位置において、表片11及び裏片12に接着剤が塗布される。接着剤は、ホットメルト系、常温硬化性樹脂系、熱硬化性樹脂系、エラストマー系、熱可塑性樹脂系等、公知のものを用いることができ、種類は限定されないが、ホットメルト接着剤を用いると、トレー10の成形が容易になるため好ましい。なお、接着剤の接着強度は、PTPシート30とトレー10とを分別廃棄する際に剥がれやすく、且つトレー10の形状を維持できる程度の接着強度とすると良い。
【0044】
トレー10は、少なくとも一端が開口した中空の外函20内に収容され、外函20の内部をスライド可能である。外函20は、トレー10及びトレー10に狭持されたPTPシート30を保護するため、トレー10と略同じ大きさに形成されている。
【0045】
そして、図2に示されるように、外函20には、使用者及び薬剤師が薬剤収納部32に収納された薬剤31を目視するため、外函20にトレー10が完全に収納された状態で、薬剤収納部32を臨む位置、すなわち目視可能な位置に窓部21bが形成されている。
窓部21bは、トレー10の取出し孔11aと略重なる位置に形成されており、取出し孔11aと略同形・同大に形成されている(図6を参照)。
【0046】
本実施形態において、窓部21bは長孔状に形成されているが、その他、円形、矩形、菱形等、様々な形状とすることができる。ただし、窓部21bの大きさは、PTPシート30の薬剤収納部32と略同形・同大とするとよい。窓部21bが大きすぎると、外函20の剛性が低下するほか、外函20の内部に異物が侵入する可能性がある。また、窓部21bが小さすぎると、薬剤収納部32が目視しにくくなるため、適当でない。なお、窓部21bは、異物の侵入を防止する目的で、透明なフィルムが架設されていても良い。
【0047】
本発明の包装体Pは、複数の服用回数分の薬剤が連続して包装される態様ではないため、薬剤収納部32の数は1個〜数個程度であり、この数に依存して、外函20の窓部21bの数が設定されるため、窓部21bの数もまた、1個〜数個程度である。したがって、外函20の剛性が低下することがない。
【0048】
トレー10には、使用者が外函20からトレー10を引き出しやすくするため、或いはトレー10を外函20に挿入しやすくするため、図3に示すように、トレー10には誘導片14,15がスライド方向に沿って形成されている。また、誘導片14,15は、誘導片14,15の内側に備えられる薬剤収納部32を外力から保護する機能も有する。
【0049】
誘導片14,15は、裏片12においてスライド方向に沿う縁辺から薬剤収納部32が突出した側に延設されている。すなわち、誘導片14,15は、裏片12の側方から上方に延設されている。誘導片14,15は、外函20の側面23,24よりも若干低くなるように形成されている。
【0050】
トレー10においてこのような誘導片14,15を備える構成とすると、誘導片14,15を外函20の側面23,24に当接させながらトレー10を外函20に挿入したり、引き出したりすることができる。その結果、外函20に対してトレー10を容易に出し入れすることができ、例えば、高齢者等、指先を自由に動かすことが難しい使用者であっても、容易に薬剤31を服用することができる。
【0051】
なお、本実施形態では、誘導片14,15は、裏片12から延設された構成としたが、表片11から延設されていても良い。また、誘導片14,15は、表片11又は裏片12の縁辺全体から延設された構成を例示したが、縁辺の一部から延設された構成としても良い。
【0052】
さらに、図3に示すように、トレー10には、使用者が外函20からトレー10を引き出しやすくするため、スライド方向の一端において把持部13が形成されている。すなわち、表片11において、スライド方向の一端には把持部13が形成されている。
【0053】
把持部13は、図6に示すように、表片11から立ち上がる内側側面13aと、内側側面13aから延設されると共に、外函20の天面21に当接する上面13bと、さらに上面13bから延設され、裏片12に連続する外側側面13cとを有している。そして、内側側面13aと、上面13bと、外側側面13cとは、誘導片14,15とは固定されておらず、裏片12を底面とした中空の略直方体を形成する。
【0054】
このとき、表片11、内側側面13a、上面13b、外側側面13c、裏片12は、図8に示す連続した一枚の台紙が折り曲げられることにより形成されている。そして、内側側面13a及び外側側面13cが、表片11及び裏片12に対して略垂直に立ち上がるように折り曲げられ、さらに上面13bが略水平になるように折り曲げられた状態で、上述のように、一回の服用分の薬剤31が収められたPTPシート30を狭持させた後、表片11と裏片12が接着される。
【0055】
把持部13は、表片11から、PTPシート30の薬剤収納部32が突出した側に凸設されており、内側側面13a及び外側側面13cの高さは、少なくともPTPシート30の薬剤収納部32の高さよりも高くなるように形成されている。したがって、把持部13は、常時においてはPTPシート30の薬剤収納部32よりも上方に突出した構成であるため、外函20の天面21から外力が加わった場合であっても、薬剤収納部32を保護することができる。
【0056】
本発明の包装体Pにおいては、一回に服用する分量の薬剤31のみが包装されるため、通常用いられるPTPシート等と比較して、薬剤収納部32の数が極めて少ない。したがって、薬剤収納部32が多く備えられた包装形態と比較して、本発明の包装体Pの薬剤収納部32は、外力を受けやすくなるが、把持部13、誘導片14,15、さらには外函20により、薬剤収納部32が保護される。
【0057】
そして、把持部13の上面13bが、外函20の天面21に対し、その一部が当接するように形成される。上記構成とすることにより、外函20と把持部13によってPTPシート30の薬剤収納部32が保護され、好適である。一方、外函20の天面21には、把持部13と重なる部分の一部が切り欠かれており、切り欠き部21aを備えている。切り欠き部21aは、円弧状に形成された例を図示しているが、V字形状、U字形状等、様々な形状で形成されうる。
【0058】
したがって、使用者は、切り欠き部21aから把持部13の上面13bを押圧可能である。このように、把持部13の上面13bが上方から押圧されることにより、内側側面13a及び外側側面13cが傾倒し、その結果、常時は上方に突出した把持部13が平面状に変形する(図7参照)。
【0059】
このように、トレー10の一端に把持部13を設けることにより、使用者が薬剤31を取り出す際、把持部13を指先で保持することが容易になる。把持部13を備えることにより、トレー10と外函20とが略同じ大きさに形成されていても、トレー10が外函20から引き出しにくくなることがない。さらに、把持部13は、保持されることにより平面状に潰れるため、高齢者等、指先の力が弱い使用者であっても、把持部13を確実に保持し、トレー10を引き出すことができる。
【0060】
表片11上であって、把持部13に隣接する位置には、表示部材40が貼付される。表示部材40は、使用者が薬剤31を服用し忘れることがないように服用を促すために備えられるラベル部材である。このような表示部材40は、トレー10の表片11から剥がされた後、例えばカレンダー、手帳等の日付を確認することができる他の物品に再度貼付可能な接着剤が塗布される。
【0061】
表示部材40の表面には、例えば、製剤名、服用日等が記載されている。そして、薬剤31を処方された際、使用者はトレー10を外函20から引き出し、表示部材40を剥がした後、カレンダー等の日付が確認できるものに再び貼付する。このように、カレンダー上の服用日に表示部材40を貼付することにより、服用日が近づくと、使用者は薬剤31を服用すべき日を認識することができる。
【0062】
上記表示部材40を備えることにより、包装体Pは、使用者に対し、服用日に関する意識を喚起することができる。特に服用間隔が長い薬剤31は、使用者が服用日を忘れてしまう可能性があるが、このように、表示部材40をカレンダーや手帳等に貼り付けることによっても服用日を使用者に確認させることができる。したがって、包装体Pは、例えば服用間隔が長く、服用日の注意喚起が有用な薬剤31について、服用管理を的確に且つ容易に行うことができる。
【0063】
なお、表示部材40だけでなく、トレー10及び外函20においても、製剤名、服用日、服用方法、服用頻度(例えば、「月1回1錠のむお薬です」)に関する注意喚起の文章、服用時の注意事項等が記載されていると好ましい。トレー10及び外函20にこのような表示を行うことにより、薬剤31の服用管理をさらに的確に行うことが可能になる。
【0064】
表示部材40は、具体的には、接着剤層を介して表片11に貼付される接着部41と、接着部41から鉤状(L字状)に折曲され、把持部13の内側側面13aに沿って配設された非接着性の折曲部42と、を備えている。そして、接着部41と、折曲部42との境界部分は、表片11と、把持部13の内側側面13aとの境界線(すなわち、折り目部分)と重なるようにして表示部材40が配設される。
【0065】
表示部材40の折曲部42は、接着剤が塗布されていないため、図6に示すように、内側側面13aから若干離間して配設される。そして、図7に示すように、把持部13が使用者によって保持され、トレー10が外函20から引き出された際、把持部13は略平面状になるため、折曲部42が上方に立ち上がった状態となる。したがって使用者は、折曲部42を保持することによって表示部材40を表片11から容易に剥がすことができる。
【0066】
このとき、折曲部42は、そのスライド方向の長さ(上方に立ち上がった際の高さ)が、把持部13の内側側面13aよりも短く(上面13bよりも低く)形成されているとよい。折曲部42が把持部13よりも高くなるように形成されていると、トレー10を外函20に出し入れする際、折曲部42に引っ掛かり、出し入れしにくくなる。
【0067】
一方、折曲部42は、その長さ(上方に立ち上がった際の高さ)が少なくとも5mm以上であると好ましい。これよりも短いと、使用者が保持しにくくなり、接着部41を表片11から剥がしにくくなる。
【0068】
このように、包装体Pに服用日が記載されているだけでなく、表示部材40をカレンダー等に貼り付けることにより、服用日の注意喚起を促すことができる。したがって、本発明の包装体Pは、例えば服用間隔が長く、服用日の注意喚起が有用な薬剤31に対して好適に用いられ、的確、且つ容易に服用管理を行うことができる。
【0069】
表片11は、把持部13と対向する縁辺の両端部において、剥離起点部11bが形成されている。剥離起点部11bは、表片11において把持部13が形成された側と対向する縁辺を斜めに切り欠くように形成された切除部であり、使用者がトレー10を廃棄する際、表片11と裏片12とを引き剥がしやすくするために形成される。したがって、剥離起点部11bは、表片11と、裏片12とを重ね合わせてPTPシート30を保持した際に完全に重ならないように、表片11と、裏片12とは、形状・大きさが異なるように形成されている。
【0070】
剥離起点部11bは、使用者が薬剤31を服用した後、PTPシート30とトレー10とを分離し、廃棄する際に、表片11と裏片12とが剥がしやすくなるように備えられており、本実施形態では、表片11において、把持部13と対向する縁辺において、一部が切除されて形成されている。
【0071】
剥離起点部11bを設けることにより、表片11と貼り合わせられた裏片12は、剥離起点部11bと重なる位置近傍が露出する。そして、裏片12は、この露出した部分から下方に向かって容易に押し下げられる。したがって、表片11と裏片12とを容易に剥がすことができ、その結果、トレー10からPTPシート30を容易に分離することができる。
【0072】
通常、トレー10は厚紙で形成され、PTPシート30はプラスチック等の樹脂及びアルミニウムフィルム等で構成されるため、廃棄の際、分別する必要がある。これに対し、上記のように、表片11に剥離起点部11bを設けることにより、裏片12において表片11側に露出する部分が形成されるため、表片11と裏片12とを容易に剥がすことができ、その結果、分別作業を簡素化することができる。
【0073】
そして、剥離起点部11bは、把持部13と対向する縁辺において形成されている。把持部13に対向する縁辺において剥離起点部11bが形成された構成とすると、把持部13の近傍で剥離起点部11bが形成された構成と比較して、把持部13の強度が損なわれることなく、使用者が確実に把持部13を保持することができるため好適である。
【0074】
また、剥離起点部11bは、本実施形態のように斜めに切除された形状に限定されるものではなく、例えば、表片11の把持部13と対向する縁辺において、円弧状に切除されていても良い。さらに、剥離起点部は、使用者が保持しやすいように、表片11の表面に略垂直に起こされた小片によって構成されていても良い。
【0075】
なお、剥離起点部は、裏片12に設けられていても良い。ただし、裏片12に剥離起点部を設ける構成とすると、表面側から使用者が剥離起点部を認識しにくくなるため、表片11において剥離起点部11bが設けられる構成が好ましい。
【0076】
さらに、表片11と裏片12とを剥がし易くするために、表片11は、裏片12と貼り合わせた際、裏片12よりもスライド方向(長手方向)において短く形成されている。また、裏片12から延設される誘導片14,15の厚みを吸収するため、その幅が若干裏片12よりも小さくなるように形成されている。
【0077】
表片11においては、裏片12と接着されない未接着部が備えられており、少なくとも、剥離起点部11bが形成された縁辺から2mm幅(スライド方向の長さ)の部分が未接着部となるように接着剤が塗布される。これにより、表片11と裏片12とがより剥がれやすくなる。さらに、未接着部の長さ(スライド方向に対して垂直な方向の長さ)は少なくとも4mmであると好ましい。上記寸法の未接着部を設けることにより、より確実に表片11と裏片12を引き剥がすことが可能となる。
【0078】
また、図5に示すように、表片11には、スライド方向(長手方向)に沿って、直線状の押罫11cが形成されている。押罫11cは、使用者がPTPシート30の薬剤収納部32を押圧する際に、トレー10が折れ曲がるのを防止する補強部であり、表片11の平面に対して溝のように凹んだ部分、或いは表片11の平面に対して突出した部分であり、主としてエンボス加工を施すことにより形成される。そして、押罫11cは、トレー10(より詳細には、表片11)の剛性を向上させるため、取出し孔11aを避けた位置に設けられている。本実施形態では、押罫11cは3本形成された例を示しているが、その数はこれに限定されない。PTPシート30が押圧された際、表片11が、変形しない程度の剛性を備えていれば、押罫11cは1本としても良い。ある態様としては、押罫11cは1〜6本である。ただし、均等に力を分散させるため、押罫11cは、取出し孔11aを通り、トレー10のスライド方向に伸びる直線を軸として、対称に形成された構成とすると良い。なお、押罫11cは、直線状に形成された例を示したが、波状、ジグザグ状等、その他の形状に形成されていても良い。
【0079】
なお、本実施形態において、押罫11cは、表片11に形成された例を示したが、裏片12において形成されていても良い。さらに、表片11及び裏片12の両方に形成されていても良い。押罫11cの数が多いほど、トレー10の剛性を向上させることができる。
また、押罫11cは、表側(薬剤収納部32が突出した側)に突出していても良いし、凹設されていても良い。
【0080】
そして、トレー10の剛性をより向上させるため、トレー10を構成する台紙の紙目(繊維が並んでいる方向)がトレー10の長手方向(スライド方向)に沿うようにしてトレー10が形成されていると好ましい。すなわち、トレー10の紙目は、押罫11cと同じ方向になるようにトレー10が形成される。
上記構成とすることにより、トレー10の剛性がさらに向上し、トレー10が折れ曲がりにくくなるため、薬剤31の取り出しを容易に行うことができる。
【0081】
図8及び図9は、それぞれ、トレー10及び外函20の展開図である。このように、トレー10及び外函20は、それぞれ1枚の台紙を折り曲げることによって形成される。
まず、トレー10について、図8に基づいて説明する。
【0082】
トレー10を構成する台紙は、それぞれ略矩形状に形成された表片11、把持部13の内側側面13a、上面13b、外側側面13c、裏片12が連続して備えられている。そして、表片11、内側側面13a、上面13b、外側側面13c、裏片12は、それぞれ折れ線f1,f2,f3,f4を介して一列に連設して形成されている。また、裏片12には、外函20に対するスライド方向に沿う縁辺において、折れ線f5,f6を介して誘導片14,15がそれぞれ延出されている。
【0083】
表片11、内側側面13a、上面13b、外側側面13c、裏片12、誘導片14,15は、それぞれ略矩形状に形成されている。そして、表片11は、上記のように、内側側面13aに対向する縁辺において、剥離起点部11bが形成されている。
【0084】
トレー10は、表片11に形成された取出し孔11aにPTPシート30の薬剤収納部32が挿入された状態で、表片11と裏片12とがホットメルト接着剤等により接着されることにより形成される。このとき、予め把持部13を形成しておくと良い。把持部13は、裏片12と外側側面13cとの境界線(折れ線f4)、外側側面13cと上面13bとの境界線(折れ線f3)、上面13bと内側側面13aとの境界線(折れ線f2)、内側側面13aと表片11との境界線(折れ線f1)を折り曲げることにより形成される。
【0085】
より詳細には、内側側面13aと外側側面13cとが略平行であり、且つ、薬剤収納部32が突出する方向に把持部13が突出するように、折れ線f1が谷折り、折れ線f2,f3が山折りに折り曲げられる。このとき、上面13bは、表片11と略平行となる。
そして、裏片12は、表片11と平行になるように折れ線f4が山折りに折り曲げられる。このとき、表片11に形成された取出し孔11aと、裏片12に形成された取出し孔12aとは、互いに重なって薬剤31が挿通可能となるように、表片11と裏片12とが貼り合わされる。
【0086】
このようにして、折れ線f1〜f4が折り曲げられることにより、トレー10の表片11及び裏片12にPTPシート30が狭持される状態となる。なお、このとき、表片11に設けられた押罫11cは、薬剤収納部32が突出する方向(表面側)に突出していても良いし、裏片12が配設される側(裏面側)に突出していても良い。
【0087】
なお、厚紙を折り曲げやすくするため、表片11と把持部13(内側側面13a)との境界線(折れ線f1)上には、切り込み13dが適宜設けられていると好ましい。このような切り込み13dを形成することにより、表片11と内側側面13aとの境界線(折れ線f1)においてしっかりと折り目を付けることができる。その結果、把持部13を表片11から突出させることができ、略直方体状に保持することができる。
【0088】
表片11と裏片12とを貼り合わせる際、薬剤31を容易に取り出し可能とするため、取出し孔11aと取出し孔12aとが略重なる位置で貼り合わされる。このようにして、把持部13は裏片12、外側側面13c、上面13b、内側側面13aによって略直方体状に形成される。
【0089】
さらに、裏片12の側方には、折れ線f5,f6を介して誘導片14,15が設けられている。誘導片14,15は、薬剤収納部32が突出する方向、すなわち把持部13が表片11から突出する方向に折り曲げられる。誘導片14,15の厚みを吸収するため、また、表片11と裏片12とを引き剥がしやすくするため、表片11は裏片12よりも若干幅が小さくなるように形成されている。そして、裏片12と表片11の幅が異なるため、把持部13の内側側面13aは、表片11側の幅が若干小さくなるように傾斜して形成されている。すなわち、内側側面13aの対向する縁辺は、略同一角度で斜線状に切断されている。
なお、誘導片14,15は、裏片12に備えられた例を示したが、表片11の長手方向に沿って備えられていても良い。
【0090】
次に、外函20について、図9に基づいて説明する。
外函20を構成する台紙は、それぞれ略矩形状に形成された底面22、側面23、天面21、側面24、貼着板26が連続して備えられている。そして、底面22、側面23、天面21、側面24、貼着板26は、それぞれ折れ線f11,f12,f13,f14を介して一列に連設して形成されている。また、天面21、底面22には、折れ線f15,f16を介して側面25、貼着板27がそれぞれ延出されている。
【0091】
天面21、底面22、側面23、側面24,25、貼着板26,27は、それぞれ略矩形状に形成されている。そして、天面21において、側面25が形成された縁辺(折れ線f15)に対向する縁辺が切り欠かれており、切り欠き部21aが形成されている。さらに、天面21の略中央には、薬剤31を目視するための窓部21bが切り抜かれて形成されている。また、側面25、貼着板26,27は、それぞれ開放端が若干幅狭となるように形成されている。
【0092】
外函20は、天面21及び底面22が対向するように折れ線f11,f12,f13,f14が折り曲げられた状態で、貼着板26と底面22が貼り合わせられる。このとき、貼着板26は、外函20の内側、すなわち天面21側に配設される。
【0093】
また、天面21の折れ線f12から延設される側面23、折れ線f13から延設される側面24、天面21の切り欠き部21aと対向する縁辺(折れ線f15)から延設される側面25は外函20の厚みを構成する。底面22には、側面25に貼付される貼着板27が備えられている。なお、天面21と側面25との境界線(折れ線f15)、及び底面22と貼着板27との境界線(折れ線f16)には、適宜切り込み25a,27aがそれぞれ形成されていると好ましい。切り込み25a,27aを備えることにより、外函20の作成が容易になると共に、形状を安定して保持することができる。
【0094】
外函20は、上記のように、貼着板26を底面22に、貼着板27を側面25に貼り合わせることにより、中空の略直方体状に形成される。より詳細には、天面21と底面22とが平行になるように折れ線f11,f12,f13,f14がすべて山折り(又は全て谷折り)に折り曲げられる。
【0095】
そして、外函20の内側へ向かって側面25及び貼着板27が延設されるように、折れ線f15,f16が折り曲げられる。その後、側面25と貼着板27とが重ねられて接合される。これにより、略矩形断面の筒状の外函20を形成することができる。
【0096】
(製剤例)
本発明の包装体Pが好適に使用される薬剤31は、服用日が特定される薬剤であり、例えば1週間に1回以下の低頻度で投与される服用間隔が長い薬剤である。服用頻度の具体的な例としては、週1回、月2回、2週間に1回、4週間に1回、月1回或いは2ヶ月に1回等が挙げられる。また、本発明の包装体Pが好適に使用される薬剤31は、特定された日に1回のみ服用する必要がある薬剤である。特に、2週間に1回以下の低頻度で投与される薬剤、別の態様としては、4週間に1回若しくは月1回服用されるビスホスホネート製剤が挙げられる。ある態様としては、これらの薬剤は経口投与用の固形製剤であり、また、ある態様としては、錠剤或いはカプセル剤である。
なお、ビスホスホネート製剤としては、ミノドロン酸、アレンドロネート、インカドロネート、クロドロネート、チルドロネート、エチドロネート、イバンドロネート、リセドロネート、ピリドロネート、パミドロネート、ゾレドロネート、オルパドロネート、ネリドロネート等の少なくとも1種を有効成分として包含する製剤が挙げられる。好ましくは、月1回若しくは4週間に1回投与用のミノドロン酸製剤である。
【0097】
(他の実施形態)
他の実施形態に係る包装体P’について、図10を参照して説明する。包装体P’は、取出し孔(不図示)、窓部121bを複数備えていることを特徴とする。これ以外の構成は、上記の実施形態で説明した包装体Pと同様であるため、その説明を省略する。
【0098】
包装体P’は、トレー110において、複数の薬剤収納部132が挿通される複数の取出し孔を備え、さらに外函120において、複数の窓部121bを備えていることを特徴とする。ただし、PTPシート内に収められる薬剤131は、一つの包装体P’につき一回に服用される分量である。
【0099】
取出し孔及び窓部121bは、トレー110が外函120に対してスライドする方向に互いに隣り合って形成されている。このとき、複数形成された全ての取出し孔は、トレー110において、トレー110がスライドする方向(すなわち、トレー110の長手方向)に3分割した時、把持部113側の端部からの3分の2の位置よりも把持部113側に形成されていると好ましい。このような構成とすることにより、PTPシート130を押圧する際、トレー110が撓みにくく、薬剤131が取り出しやすくなる。
【0100】
このように、本発明の包装体P’において、包装される薬剤131の数は、1錠だけでなく、2錠以上にすることも可能である。
【符号の説明】
【0101】
P,P’ 包装体
10,110 トレー
11 表片
11a 取出し孔
11b 剥離起点部
11c 押罫
12 裏片
12a 取出し孔
13,113 把持部
13a 内側側面
13b 上面
13c 外側側面
13d 切り込み
14,15 誘導片
20,120 外函
21 天面
21a 切り欠き部
21b,121b 窓部
22 底面
23,24,25 側面
25a 切り込み
26,27 貼着板
27a 切り込み
30,130 PTPシート
31,131 薬剤
32,132 薬剤収納部
33 フィルム部
40 表示部材
41 接着部
42 折曲部
f1〜f6,f11〜f16 折れ線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤が収納された薬剤収納部を有するPTPシートを保持するトレーと、該トレーを収容し前記トレーに対してスライドする外函と、を備えた包装体であって、
前記トレーは、前記薬剤収納部と重なる位置に前記薬剤が挿通可能な取出し孔が形成され、
前記外函は、前記薬剤収納部が目視可能となる位置に窓部を有し、
前記薬剤収納部には、一回に服用される薬剤が収納されることを特徴とする包装体。
【請求項2】
前記トレーは、前記PTPシートを狭持する表片と裏片とを備え、
前記取出し孔は、前記表片及び前記裏片に形成され、
前記表片の前記取出し孔には、前記薬剤収納部が挿通されてなることを特徴とする請求項1に記載の包装体。
【請求項3】
前記トレーは、前記外函から引き出される側に把持部を有し、
該把持部は、前記表片から前記薬剤収納部が突出した側に凸設されると共に、押圧された際に略平面状に変形可能であることを特徴とする請求項2に記載の包装体。
【請求項4】
前記外函は、前記把持部と重なる部分が切り欠かれた切り欠き部を備えてなることを特徴とする請求項3に記載の包装体。
【請求項5】
前記把持部は、前記表片から立ち上がる内側側面と、該内側側面から延設される上面と、該上面から延設される外側側面と、を有する中空体であることを特徴とする請求項3又は4に記載の包装体。
【請求項6】
前記トレーは、前記外函のスライド方向に沿う縁辺において誘導片が延設されてなることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の包装体。
【請求項7】
前記トレーには、前記把持部に隣接する位置に前記薬剤の服用を促す表示部材が貼付され、
該表示部材は、前記表片に貼付される接着部と、該接着部から鉤状に折曲されると共に前記把持部に沿って配設された折曲部と、を有し、
前記接着部は、前記表片から剥がされた後、他の物品に再度貼付可能に形成されてなることを特徴とする請求項3乃至6のいずれか一項に記載の包装体。
【請求項8】
前記表片又は前記裏片は、前記表片と前記裏片とを引き剥がすための剥離起点部を備えてなることを特徴とする請求項2乃至7のいずれか一項に記載の包装体。
【請求項9】
前記トレーには、前記外函のスライド方向に沿って押罫が形成されてなることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の包装体。
【請求項10】
前記薬剤は、ビスホスホネート製剤であることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の包装体。
【請求項11】
前記薬剤は、2週間に1回以下の投与頻度である製剤であることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか一項に記載の包装体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−143308(P2012−143308A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−2226(P2011−2226)
【出願日】平成23年1月7日(2011.1.7)
【特許番号】特許第4961499号(P4961499)
【特許公報発行日】平成24年6月27日(2012.6.27)
【出願人】(391019500)朝日印刷株式会社 (70)
【出願人】(000006677)アステラス製薬株式会社 (274)
【Fターム(参考)】