説明

特殊消防車両

【課題】二次災害を防止し高効率のシステムを提供する。
【解決手段】放水具1を用いて放水を行うとともに、液圧アクチュエータ3〜8によって駆動される機器を搭載する特殊消防車両であって、動力源(エンジン20)によって駆動される非容積ポンプ21及び容積ポンプ22と、水を貯留するリザーバタンク30と、リザーバタンク30の水を非容積ポンプ21の吸込口に導く消防水吸込通路31と、非容積ポンプ21から吐出される水を放水具1に供給する消防水供給通路41と、リザーバタンク30の水を容積ポンプ22の吸込口に導く作動水吸込通路32と、容積ポンプ22から吐出される水を液圧アクチュエータ3〜8に供給する作動水供給通路42と、液圧アクチュエータ3〜8から出る水をリザーバタンク30に導く作動水排出通路52とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放水を行うとともに、液圧アクチュエータによって駆動される機器を搭載する特殊消防車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、火災現場や災害現場では、消防車と救急車とがそれぞれ使用されているが、現場に導入される車両台数を減らすために、消防車と救急車の機能を一元化した特殊消防車両を使用することが望まれている。
【0003】
特許文献1に開示された特殊消防車両は、火災現場にて放水を行う消防車の機能と、救急患者を搬送する救急車の機能を併せ持つものである。
【0004】
この特殊消防車両は、救急患者を載せるストレッチャを油圧アクチュエータによって駆動するようになっている。
【特許文献1】特開2005−200016号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような従来の特殊消防車両にあっては、機器を駆動するのに油圧アクチュエータを用いているため、油圧アクチュエータに加圧作動油を供給する油圧源を車両に搭載する必要があり、車両の重量増大や余剰スペースの減少を来すという問題点があった。
【0006】
また、油圧アクチュエータに用いられる油が漏れ出した場合に、油に引火して二次災害を招く心配があった。
【0007】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、特殊消防車両において、二次災害を防止し高効率のシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、放水具を用いて放水を行うとともに、放水用の流体を作動流体として使用する液圧アクチュエータによって駆動される機器を搭載する特殊消防車両であって、動力源によって駆動される非容積ポンプ及び容積ポンプと、水を貯留するリザーバタンクと、リザーバタンクの水を非容積ポンプの吸込口に導く消防水吸込通路と、非容積ポンプから吐出される水を放水具に供給する消防水供給通路と、リザーバタンクの水を容積ポンプの吸込口に導く作動水吸込通路と、容積ポンプから吐出される水を液圧アクチュエータに供給する作動水供給通路と、液圧アクチュエータから出る水をリザーバタンクに導く作動水排出通路と、水をリザーバタンクに導入する給水口とを備えることを特徴とするものとした。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、消火栓等の給水設備が設けられていない火災現場でも、非容積ポンプがリザーバタンクに貯留された水を吸い上げ、非容積ポンプから吐出される低圧大流量の水を放水具から放つ消防機能を果たすことができる。
【0010】
そして、容積ポンプがリザーバタンクに貯留された水を吸い上げ、容積ポンプから吐出される高圧の水によって液圧アクチュエータを作動させ、液圧アクチュエータによって駆動される機器を介して患者搬送機能や救出作業を行う救出機能を果たすことができる。
【0011】
液圧アクチュエータは、放水具に供給される消防用水と同じ水を用いて作動するため、特殊消防車両に油圧源や空気圧源を搭載する必要がなく、車両の軽量化がはかれるととともに、省スペース化がはかれる。また、油圧アクチュエータに用いられる油のように引火することがなく、二次災害を防止し高効率のシステムを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0013】
図1は、特殊消防車両に設けられるシステムの水圧回路図である。この特殊消防車両は、火災現場にて放水を行う消防車の消防機能と、救急患者を搬送する救急車の患者搬送機能と、災害現場にて救出作業を行う救出機能とを果たす。
【0014】
図中、1は消防ホース及び放水ノズルによって構成される放水具であり、放水ノズルから火災現場に放水を行うことによって消防機能を果たす。放水具1は放水ノズルを開閉する遮断弁を備える。
【0015】
図中、2はホース及び噴霧ノズルによって構成される噴霧具であり、火災状況に応じて高圧水を霧状にして噴出することにより気化熱を吸収し、消防機能を果たす。噴霧具2は噴霧ノズルを開閉する遮断弁を備える。
【0016】
図中、3〜8は特殊消防車両に搭載され、放水用の流体を作動流体として使用する液圧アクチュエータである。
【0017】
放水用の流体を作動流体として使用する液圧アクチュエータ5は、ホース巻き取りドラム(図示せず)を回転駆動する水圧モータであり、消防機能を果たす。
【0018】
放水用の流体を作動流体として使用する液圧アクチュエータ3は、救急患者を載せる図示しないストレッチャ(患者搬送機器)を昇降させる水圧シリンダであり、患者搬送機能を果たす。
【0019】
液圧アクチュエータ4は、車両のドア(図示せず)を開閉駆動する水圧シリンダであり、車両設備として設けられる。
【0020】
液圧アクチュエータ6〜8とは、特殊消防車両の仕様等に応じて増設されるものである。
【0021】
液圧アクチュエータ6は、救出作業時に用いられる図示しないカッタ(救出作業機器)を回転駆動する水圧モータであり、救出機能を果たす。
【0022】
液圧アクチュエータ7、8は、車両に搭載される各種設備を駆動する水圧シリンダ、または救出作業時に用いられる救出作業機器を駆動する水圧シリンダである。
【0023】
液圧アクチュエータ3〜8は、第一作動水通路3a〜8a、第二作動水通路3b〜8bを介して方向切換弁13〜18が接続され、コントローラ(図示せず)からの指令に基づいて方向切換弁13〜18のポジションa、b、cが切り換わることによって作動水の流れがそれぞれ切り換えられる。
【0024】
第一作動水通路3a〜8aには流量調整弁73〜78とチェック弁83〜88とが並列に介装され、流量調整弁73〜78によって液圧アクチュエータ3〜8の作動速度がそれぞれ調節される。
【0025】
液圧アクチュエータ3は、方向切換弁13がポジションaに切り換えられると伸張作動し、方向切換弁13がポジションbに切り換えられると収縮作動し、方向切換弁13が中立ポジションcに切り換えられると伸縮作動を停止するようになっている。また、液圧アクチュエータ4、7、8も同様に方向切換弁14、17、18を介してそれぞれ伸縮作動する。
【0026】
液圧アクチュエータ5は、方向切換弁15がポジションaに切り換えられると正転作動し、方向切換弁15がポジションbに切り換えられると逆転作動し、方向切換弁15が中立ポジションcに切り換えられるとその回転作動が停止するようになっている。また、液圧アクチュエータ6も同様に方向切換弁16を介して回転作動する。
【0027】
水圧源として、非容積ポンプ21及び容積ポンプ22が設けられる。この非容積ポンプ21と容積ポンプ22とは、車両に搭載されるエンジン(内燃機関)20によって駆動される。
【0028】
なお、非容積ポンプ21と容積ポンプ22とを駆動する動力源は、エンジン20に限らず、電動モータ等を用いても良い。
【0029】
非容積ポンプ21の吐出口には消防水供給通路41が接続され、この消防水供給通路41を介して放水具1に加圧された消火水が供給される。放水具1に設けられる遮断弁が開かれることにより、放水具1の放水ノズルから放水が行われる。
【0030】
非容積ポンプ21は、図示しない羽根状の回転子がケーシング内で回転し、遠心力によって水に圧力を与えるものであり、容積ポンプ22に比べて低圧大流量の水を吐出し、放水具1に要求される放水量が確保される。
【0031】
容積ポンプ22の吐出口には作動水供給通路42が接続され、容積ポンプ22から吐出される作動水が作動水供給通路42を通して噴霧具2と液圧アクチュエータ3〜8とに供給される。
【0032】
容積ポンプ22は、図示しないピストンがシリンダ内で往復運動し、シリンダ内の容積変化によって水に圧力を与えるものであり、非容積ポンプ21に比べて高圧小流量の水を吐出する。
【0033】
なお、容積ポンプ22は、これに限らず、ケーシングに偏心して取り付けられた回転子に取り付けられた可動ベーンを介して水を輸送するベーンポンプ、歯車のかみ合わせによって水を輸送するギヤポンプ等を用いてもよい。
【0034】
容積ポンプ22は、非容積ポンプ21に比べて高圧低流量の水を吐出し、液圧アクチュエータ3〜8と噴霧具2に必要な水圧が確保される。
【0035】
噴霧具2に設けられる遮断弁が開かれると、加圧作動水が噴霧具2の噴霧ノズルから適度に微粒化された水が霧状に噴出する。この噴霧によって火災現場の気化熱を吸収し、消防機能が有効に果たされる。
【0036】
図中、52は液圧アクチュエータ3〜8から出る作動水を導く作動水排出通路である。この作動水排出通路52と容積ポンプ22の作動水供給通路42とが方向切換弁13〜18を介して液圧アクチュエータ3〜8の第一、第二作動水通路3a〜8a、3b〜8bに対して選択的に接続される。
【0037】
方向切換弁13〜18がポジションa、bに切り換わることによって加圧作動水が液圧アクチュエータ3〜8に供給され、液圧アクチュエータ3〜8が作動し、ポジションcに切り換わることによって液圧アクチュエータ3〜8の作動が停止する。
【0038】
作動水供給通路42と作動水排出通路52とを連通するバイパス通路25が設けられ、このバイパス通路25に開閉弁26が介装され、この開閉弁26はコントローラの指令に基づき開閉作動する。
【0039】
コントローラは、方向切換弁13〜18が全て中立ポジションcに切り換えられるとともに、噴霧具2からの作動水の噴出が遮断された作動水供給通路42の閉鎖状態を判定し、この閉鎖状態にて開閉弁26を開弁作動させ、容積ポンプ22から吐出される作動水が作動水供給通路42からバイパス通路25を通って作動水排出通路52へと逃がされる。
【0040】
また、コントローラは、方向切換弁13〜18の少なくとも一つが作動ポジションa、bに切り換えられるか、噴霧具2から作動水が噴出される作動水供給通路42の開通状態と判定し、この開通状態にて開閉弁26を閉弁作動させ、容積ポンプ22から吐出される作動水が作動水供給通路42から液圧アクチュエータ3〜8または噴霧具2へと供給される。
【0041】
バイパス通路25には開閉弁26と並列にリリーフ弁27が介装される。リリーフ弁27は作動水供給通路42の圧力が所定値を越えて上昇すると開弁作動して、容積ポンプ22から吐出される作動水を作動水供給通路42からバイパス通路25を通って作動水排出通路52へと逃がし、作動水供給通路42の圧力が過度に上昇しないようになっている。
【0042】
非容積ポンプ21の吸込口には消防水吸込通路31が接続され、非容積ポンプ21はこの消防水吸込通路31を通して消防水を吸い込む。
【0043】
容積ポンプ22の吸込口には作動水吸込通路32が接続され、容積ポンプ22はこの作動水吸込通路32を通して作動水を吸い込む。
【0044】
図中、30は車両に搭載されるリザーバタンクであり、このリザーバタンク30は所定量の作動水を貯留する。
【0045】
図中、99は現場に設けられる消火栓である。この消火栓99は加圧された消防用水を供給するものである。
【0046】
リザーバタンク30に給水する手段として、消火栓99からの消防用水をリザーバタンク30に導入する給水口98を備える。消火栓99がホース97を介して給水口98に接続された状態で、消火栓99が開かれることにより、消火栓99からの消防用水がリザーバタンク30に導入される。
【0047】
非容積ポンプ21の消防水吸込通路31と、容積ポンプ22の作動水吸込通路32と、作動水排出通路52とは、それぞれリザーバタンク30に接続される。
【0048】
なお、作動水排出通路52は、リザーバタンク30に戻す構成に限らず、液圧アクチュエータ3〜8から排出される作動水を外部に排出する構成としてもよい。
【0049】
作動水吸込通路32には、フィルタ33が介装される。このフィルタ33によってリザーバタンク30から吸い上げられる作動水が濾過され、容積ポンプ22、噴霧具2、液圧アクチュエータ3〜8等の作動性が損なわれないようにしている。
【0050】
以上のように本実施の形態では、放水具1を用いて放水を行うとともに、放水用の流体を作動流体として使用する液圧アクチュエータ3〜8によって駆動される機器を搭載する特殊消防車両であって、動力源(エンジン20)によって駆動される非容積ポンプ21及び容積ポンプ22と、水を貯留するリザーバタンク30と、リザーバタンク30の水を非容積ポンプ21の吸込口に導く消防水吸込通路31と、非容積ポンプ21から吐出される水を放水具1に供給する消防水供給通路41と、リザーバタンク30の水を容積ポンプ22の吸込口に導く作動水吸込通路32と、容積ポンプ22から吐出される水を液圧アクチュエータ3〜8に供給する作動水供給通路42と、液圧アクチュエータ3〜8から出る水をリザーバタンク30に導く作動水排出通路52と、水をリザーバタンク30に導入する給水口98とを備えることを特徴とする。
【0051】
これにより、消火栓99が設けられていない火災現場でも、非容積ポンプ21がリザーバタンク30に貯留された水を吸い上げ、非容積ポンプ21から吐出される低圧大流量の水を放水具1から放つ消防機能を果たすことができる。
【0052】
そして、容積ポンプ22がリザーバタンク30に貯留された水を吸い上げ、容積ポンプ22から吐出される高圧の水によって液圧アクチュエータ3〜8を作動させ、液圧アクチュエータ3によって駆動される機器を介して救急患者を搬送する救急車の患者搬送機能と、液圧アクチュエータ6〜8によって駆動される機器を介して災害現場にて救出作業を行う救出機能とを果たすことができる。
【0053】
液圧アクチュエータ3〜8は、放水具1に供給される消防用水と同じ水を用いて作動するため、油圧アクチュエータに用いられる油のように引火することがなく、二次災害を招く心配がない。
【0054】
上記消防機能と患者搬送機能と救出機能とを果たすエネルギ源を非容積ポンプ21と容積ポンプ22とから吐出される水圧に一元化することにより、特殊消防車両に油圧源や空気圧源を搭載する必要がなく、車両の軽量化がはかれるととともに、省スペース化がはかれる。
【0055】
また、液圧アクチュエータ3〜8を用いることにより、空気圧アクチュエータに比べてエネルギロスが少ない、高効率のシステムを提供できる。
【0056】
本実施の形態では、作動水供給通路42に接続される噴霧具2を備え、この噴霧具2から水を霧状にして噴出することを特徴とする。
【0057】
これにより、火災状況に応じて噴霧具2から高圧水を霧状にして噴出することにより気化熱を吸収し、幅広い消火活動を行うことができる。
【0058】
本発明は上記の実施の形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の実施の形態を示す特殊消防車両に設けられるシステムの水圧回路図。
【符号の説明】
【0060】
1 放水具
2 噴霧具
3〜8液圧アクチュエータ
13〜18方向切換弁
20 エンジン
21 非容積ポンプ
22 容積ポンプ
30 リザーバタンク
31 消防水吸込通路
32 作動水吸込通路
41 消防水供給通路
42 作動水供給通路
52 作動水排出通路
98 給水口
99 消火栓

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放水具を用いて放水を行うとともに、放水用の流体を作動流体として使用する液圧アクチュエータによって駆動される機器を搭載する特殊消防車両であって、
動力源によって駆動される非容積ポンプ及び容積ポンプと、
水を貯留するリザーバタンクと、
このリザーバタンクの水を前記非容積ポンプの吸込口に導く消防水吸込通路と、
前記非容積ポンプから吐出される水を前記放水具に供給する消防水供給通路と、
前記リザーバタンクの水を前記容積ポンプの吸込口に導く作動水吸込通路と、
前記容積ポンプから吐出される水を前記液圧アクチュエータに供給する作動水供給通路と、
液圧アクチュエータから出る水をリザーバタンクに導く作動水排出通路と、
水をリザーバタンクに導入する給水口とを備えたことを特徴とする特殊消防車両。
【請求項2】
前記液圧アクチュエータは、患者を搬送する患者搬送機器または救出作業を行う救出機器を駆動することを特徴とする請求項1に記載の特殊消防車両。
【請求項3】
前記作動水供給通路に接続される噴霧具を備え、
この噴霧具から水を霧状にして噴出することを特徴とする請求項1または2に記載の特殊消防車両。

【図1】
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