説明

球状アルミナ粉末、その製造方法及びそれを用いた組成物

【課題】本発明は、樹脂に高充填した場合にも低粘度・高流動性かつ低バリ特性を有する樹脂組成物を調整することのできる球状アルミナ粉末、その製造方法及びそれら含有してなる樹脂組成物を提供する。
【解決手段】平均粒径が3〜70μm、平均球形度が0.85以上の球状アルミナ粉末99.00〜99.99質量%と平均粒径0.01〜1.00μmのシリカ粉末0.01〜1.00質量%からなり、球状アルミナ粒子表面にシリカ粒子が0.01〜1.00質量%付着している球状アルミナ粉末。平均粒径が5〜50μm、平均球形度が0.90以上の球状アルミナ粉末99.00〜99.99質量%と平均粒径0.05〜0.80μmのシリカ粉末0.01〜1.00質量%からなり、球状アルミナ粒子表面にシリカ粒子が0.01〜1.00質量%付着している球状アルミナ粉末。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、球状アルミナ粉末及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ICの高機能化及び高速化の進展に伴い、その発熱量は増大傾向にあり、封止材等の電子部品に用いられる樹脂に対しても高熱放散性の要求が高まっており、さらに高充填されても流動性・成形性に優れた封止材料が求められている。従来、高熱伝導性無機粉末として、高充填可能な球状アルミナが知られているが、球状アルミナ粉末単独では高流動性及びバリ特性が不十分なため、樹脂組成物の特性を十分に満足する効果が得られていない。
これらの特性を改善する手法として、アルミナ粉末とシリカ粉末を併用することが知られている。例えば、特許文献1では、球状アルミナ粉末に、粒度を適正化した超微粉の球状シリカ粉末を適正量混合する方法が提案されており、この方法を取ることで、高流動性及びバリ特性を向上させることができるが、超微粉の球状シリカ粉末は凝集し易い為、このシリカ粉末を球状アルミナ粉末中に均一に分散させるのには、高度な技術を要するという問題があった。また特許文献2では、アルミナ粉末の表面をシリカコーティング層が形成された粉末について提案されている。本発明によれば、アルミナ粒子内のソーダ分を密封することで、耐湿信頼性の向上は見られたものの、樹脂等に混合した際の流動性・粘度特性の向上には影響を及ぼしていない。これらの特許文献では、球状アルミナ粉末を用いることによる低粘度・高流動性の発現が不十分である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−244491号公報
【特許文献2】特開2007−15884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、樹脂に高充填した場合にも低粘度・高流動性かつ低バリ特性を有する樹脂組成物を調整することのできる球状アルミナ粉末、その製造方法及びそれら含有してなる樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)平均粒径が3〜70μm、平均球形度が0.85以上の球状アルミナ粉末99.00〜99.99質量%と平均粒径0.01〜1.00μmのシリカ粉末0.01〜1.00質量%からなり、球状アルミナ粒子表面にシリカ粒子が0.01〜1.00質量%付着していることを特徴とする球状アルミナ粉末。
(2)平均粒径が5〜50μm、平均球形度が0.90以上の球状アルミナ粉末99.00〜99.99質量%と平均粒径0.05〜0.80μmのシリカ粉末0.01〜1.00質量%からなり、球状アルミナ粒子表面にシリカ粒子が0.01〜1.00質量%付着していることを特徴とする球状アルミナ粉末。
(3)平均粒径が3〜70μmのアルミナ原料粉末に金属シリコン粉末を二酸化ケイ素換算で0.01〜1.00質量%含有させた、アルミナ原料粉末と金属シリコン粉末の混合粉末を、炉内に形成された火炎中に投入することを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の球状アルミナ粉末の製造方法。
(4)前記(1)又は(2)に記載の球状アルミナ粉末を含有してなる球状アルミナフィラー。
(5)前記(4)に記載の球状アルミナフィラーを含有してなる樹脂組成物。
(6)前記(5)に記載の樹脂組成物を用いた半導体封止材。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、樹脂に高充填した場合にも低粘度・高流動性かつ低バリ特性を有する樹脂組成物を調整することのできる球状アルミナ粉末を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の球状アルミナ粉末は、球状アルミナ粒子に超微粉のシリカ粒子が付着したものである。付着とは主に、粒子が物理的に吸着している状態である。
【0008】
本発明の球状アルミナ粉末は、平均粒径が3〜70μmであり、且つ、平均球形度が0.85以上である。さらに好ましくは、平均粒径が5〜50μmであり、且つ、平均球形度が0.90以上である。球状アルミナ粉末の平均粒径が3μmより小さいと熱伝導率が低下し、70μmよりも大きいと、極端に流動性が低下するだけでなく、粗粉粒子が多すぎるため金型等の摩耗が著しく増加する。また、球状アルミナ粉末の平均球形度は0.85以上、好ましくは0.90以上である。平均球形度が0.85よりも小さいと、樹脂と混合した際の粒子の転がり抵抗が大きくなり、流動性が低下する。
【0009】
本発明の球状アルミナ粉末はその表面に平均粒径0.01〜1.00μmのシリカ粒子が付着したものである。シリカ粒子の平均粒径が0.01μmよりも小さいと樹脂と混ぜ合わせた際の粘度の増大と樹脂組成物を金型等に注入する際の流動性が低下し、1.00μmより大きいと低バリ特性が得られ難くなる。
更に、付着率が0.01質量%より少ないと樹脂と混ぜ合わせた際の低粘度化効果と樹脂組成物を金型等に注入する際の高流動化効果が得られ難く、1.00質量%よりも大きいと粘度が増大する。付着率の測定方法については後述する。
【0010】
本発明に用いるアルミナ原料粉末は、平均粒径が3〜70μmのアルミナ粉末又は水酸化アルミニウム粉末であり、好ましくは平均粒径が5〜50μmである。平均粒径が3μmよりも小さいと粉末が凝集しやすくなり、火炎中に投入する際に安定供給が困難となる。また、平均粒径が70μmよりも大きいとフィードノズル、輸送配管等の磨耗が著しく大きくなる。
【0011】
本発明に用いる金属シリコン粉末は、平均粒径が0.5〜20.0μmの範囲内であることが好ましく、1.0〜10.0μmであることが更に好ましい。平均粒径が0.5μmよりも小さいと凝集しやすくなりアルミナ原料粉末と混合した際、均一な混合粉末を調整するのが困難となる。平均粒径が20.0μmよりも大きいと火炎中に投入した際に未反応の金属シリコンが生成し易くなる。また、Si純度が99.0質量%以上であることが好ましく、99.5質量%以上であることが更に好ましい。
【0012】
本発明において、アルミナ原料粉末と金属シリコン粉末の混合粉末中の金属シリコン粉末の含有率が二酸化ケイ素換算で0.01質量%未満であると、金属シリコンの蒸発により発生する気相成分(SiO含有ガス)が少なくなるため、シリカ粉末の含有率が0.01質量%未満となる。一方、アルミナ原料粉末と金属シリコン粉末の混合粉末中の金属シリコン粉末の含有率が二酸化ケイ素換算で1.00質量%を超えると、SiO含有ガスの発生が多くなるために、球状アルミナ粒子に付着するシリカ粒子の含有率が1.00質量%を超え、さらに表面に付着されなかったシリカ粒子同士が凝集粉を形成し、樹脂等に混合して樹脂組成物を形成した際に著しく特性を低下させる要因となり、いずれの場合も本発明の球状アルミナ粉末を製造することができない。
【0013】
次いで、本発明の樹脂組成物について説明する。本発明の樹脂組成物は本発明の球状アルミナ質粉末をゴム及び/又は樹脂の少なくとも一方に10〜99質量%含有させてなるものである。特に、樹脂がエポキシ樹脂である樹脂組成物は半導体封止材として好適である。
樹脂組成物に用いるゴムを例示すれば、シリコーンゴム、ウレタンゴム、アクリルゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレン酢酸ビニル共重合体などである。 また、樹脂組成物に用いる樹脂を例示すれば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、不飽和ポリエステル、フッ素樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド等のポリアミド、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリフェニレンスルフィド、全芳香族ポリエステル、ポリスルホン、液晶ポリマー、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネイト、マレイミド変成樹脂、ABS樹脂、AAS(アクリロニトリルーアクリルゴム・スチレン)樹脂、AES(アクリロニトリル・エチレン・プロピレン・ジエンゴム−スチレン)樹脂などである。
【0014】
半導体封止材用の樹脂としては、1分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ樹脂が好ましい。例示すれば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂;オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂;フェノール類とアルデヒド類のノボラック樹脂をエポキシ化したもの;ビスフェノールA、ビスフェノールF及びビスフェノールSなどのグリシジルエーテル、フタル酸やダイマー酸などの多塩基酸とエポクロルヒドリンとの反応により得られるグリシジルエステル酸エポキシ樹脂;線状脂肪族エポキシ樹脂;脂環式エポキシ樹脂;複素環式エポキシ樹脂;アルキル変性多官能エポキシ樹脂;β−ナフトールノボラック型エポキシ樹脂;1,6−ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂;2,7−ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂;ビスヒドロキシビフェニル型エポキシ樹脂;難燃性を付与するために臭素などのハロゲンを導入したエポキシ樹脂などである。中でも、耐湿性や耐ハンダリフロー性の観点から、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスヒドロキシビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格のエポキシ樹脂等が最適である。
エポキシ樹脂の硬化剤は、エポキシ樹脂と反応して硬化させるものであれば特に限定されない。例示すれば、フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシノール、クロロフェノール、t−ブチルフェノール、ノニルフェノール、イソプロピルフェノール、及びオクチルフェノールからなる群から選ばれた1種以上の混合物をホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド又はパラキシレンとともに酸化触媒下で反応させて得られるノボラック型樹脂;ポリパラヒドロキシスチレン樹脂;ビスフェノールAやビスフェノールS等のビスフェノール化合物;ピロガロールやフロログルシノール等の3官能フェノール類;無水マレイン酸、無水フタル酸や無水ピロメリット酸等の酸無水物;メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン等の芳香族アミンなどである。
エポキシ樹脂と硬化剤との反応を促進させるために硬化促進剤を配合することができる。硬化促進剤としては、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、トリフェニルホスフィン、ベンジルジメチルアミン、2−メチルイミダゾール等がある。
【0015】
本発明の樹脂組成物には、次の成分を必要に応じて配合することができる。
すなわち、低応力化剤としては、シリコーンゴム、ポリサルファイドゴム、アクリル系ゴム、ブタジエン系ゴム、スチレン系ブロックコポリマー、飽和型エラストマー等のゴム状物質;各種熱可塑性樹脂、シリコーン樹脂等の樹脂状物質;エポキシ樹脂、フェノール樹脂の一部又は全部をアミノシリコーン、エポキシシリコーン、アルコキシシリコーンなどで変性した樹脂などが挙げられる。
シランカップリング剤としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシシラン;アミノプロピルトリエトキシシラン、ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン;フェニルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン等の疎水性シラン化合物;メルカプトシランなどが挙げられる。
表面処理剤としては、Zrキレート、チタネートカップリング剤、アルミニウム系カップリング剤などが挙げられる。
難燃助剤としては、Sb、Sb、Sbなどが挙げられ、難燃剤としては、ハロゲン化エポキシ樹脂やリン化合物などが挙げられ、着色剤としては、カーボンブラック、酸化鉄、染料、顔料などが挙げられる。
さらには、ワックス等の離型剤を添加することができる。その具体例を挙げれば、天然ワックス類、合成ワックス類、直鎖脂肪酸塩の金属塩、酸アミド類、エステル類、パラフィンなどである。
とくに、高い耐湿信頼性や高温放置安定性が要求される場合には、各種イオントラップ剤の添加が有効である。イオントラップ剤の具体例としては、協和化学社製の商品名「DHF−4A」、「KW−2000」、「KW−2100」や東亜合成化学工業社製の商品名「IXE−600」などである。
【0016】
本発明の樹脂組成物は、上記各材料の所定量をブレンダーやヘンシェルミキサー等によりブレンドした後、加熱ロール、ニーダー、一軸又は二軸押し出し機等によって混練したものを冷却後、粉砕することによって製造することができる。
【0017】
本発明の半導体封止材は、本発明の樹脂組成物において、樹脂がエポキシ樹脂であることが好ましい。
【0018】
アルミナ原料粉末は、既存の溶射技術( 例えば「製綱窯炉に対する溶射捕集技術について」製鉄研究1982第310号」を基本とし、水素、天然ガス、アセチレンガス、プロパンガス、ブタン等の燃料ガスとで形成された高温火炎中に原料粉末を投入し、溶融球状化させることによって製造することができる。
本発明の球状アルミナ粉末は、原料としてアルミナ原料粉末と金属シリコン粉末の混合粉末が用いられ、その混合粉末を火炎中に投入して製造されるが、アルミナ原料粉末と金属シリコン粉末をそれぞれ別々に同一の高温場に投入して溶融・燃焼させてもよい。
また、アルミナ原料粉末と金属シリコン粉末の混合粉末を火炎中に投入するときの供給方法は、キャリアガスに酸素、空気、窒素、アルゴン等を用いた乾式または、水、メタノール、エタノール等を分散媒としたスラリーを用いた湿式でもよい。
その製造装置の一例は、球状化炉と、その炉に接続された捕集装置とを基本構成としているものである。球状化炉で製造された球状アルミナ粉末は、ブロワー等にて空気輸送され捕集装置で回収される。球状化炉本体と輸送配管等は水冷ジャケット方式で水冷されていることが好ましい。捕集装置としては、サイクロン、重力沈降、ルーバー、バグフィルター等が用いられる。捕集温度は、可燃ガスの量による発熱量とブロワーの吸引量によって決定され、その調整は冷却水量や、ライン内に設けられた外気の取り入れ量等で行われる。
【0019】
本発明の球状アルミナ粉末は、前述の製造方法によって製造することができ、球状アルミナ粉末の粒度分布、平均球形度は、炉内温度アルミナ原料粉末の粒径、投入量を制御することにより調製することができる。またシリカ超微粉末の粒度は炉内温度、混合粉末の投入量と火炎を形成するガス量を制御することにより調整することができる。
本発明の製造方法は、燃焼バーナーから可燃性ガスと酸素ガスを噴射して、炉内温度が2000℃以上である高温場を形成し、そこにアルミナ原料粉末に金属シリコン粉末を二酸化ケイ素換算で0.01〜1.00質量%含有させた、アルミナ原料粉末と金属シリコン粉末の混合粉末を投入するものである。
球状アルミナ粉末とシリカ粉末をそれぞれ単独で製造した後に機械的に混合して、シリカ粉末を0.01〜1.00質量%含有する球状アルミナ粉末を製造するよりも、本発明のようにアルミナ原料粉末と金属シリコン粉末を予め混合し、高温場に投入したほうが、発生したシリカ粒子同士の凝集を防止し、球状アルミナ粒子の表面に付着させることができるので、特性を著しく向上させることができる。
なお、球状アルミナ粒子の表面に付着するシリカ粒子の付着量は、アルミナ原料粉末に混合させる金属シリコン粉末の添加量により調整することができる。
【0020】
(付着率の測定方法)
本発明において、球状アルミナ粒子に付着したシリカ粒子の含有率は下記のようにして測定することができる。まず、目開き5μmのナイロン網を使用した篩に球状アルミナ粉末200gを乗せ30分間振動させ、球状アルミナ粒子に付着していないシリカ粒子を篩下に通過させることにより除去する。次に、篩上に残った粉末と純水を混合し10質量%のスラリーを作成した後、200W出力の超音波ホモジナイザーに3分間かけて分散処理を行い、それを目開き1.0μmのフィルター上に流下させフィルターを通過した粉末量を測定し、それを球状アルミナ粉末中の百分率とすることによって算出した。
球状アルミナ粉末中のシリカ粉末の含有率(%)=(フィルター通過粉末量/測定に供した粉末量)×100
上澄み液に含まれる粉末を、棚型乾燥機を用いて120℃で10hr乾燥した後に得られた粉末を、走査型蛍光X線分析装置(例えばRIGAKU社製商品名「ZSX−PrimusII」)を用い、X線回折分析を行い、108〜110degreeのピーク位置における回折ピークの強度からSiOの定量値が98.0%以上であることを確認することによってシリカ粉末であると判断した。
【0021】
(平均粒径の測定方法)
本発明において球状アルミナ粉末の平均粒径は、レーザー回折散乱法(ベックマン・コールター社製商品名「モデルLS−230」)によって測定した。この装置は、0.04〜2000μmの粒径範囲を116分割(log(μm)=0.04の幅)して粒度分布を測定する機器である。詳細は、「レーザー回折・散乱法粒度分布測定装置LSシリーズ」(ベックマン・コールター株式会社)、 豊田 真弓著「粒度分布を測定する」(ベックマン・コールター株式会社 粒子物性本部 学術チーム)、に記載されている。測定溶液は純水にサンプルを加えてスラリーを作製し、200Wの出力のホモジナイザーで1分間分散処理を行い、PIDS(Polarization Intensity Differential Scattering)濃度を45〜55質量%に調整した。水の屈折率としては1.33、アルミナ粉末の屈折率としては1.76を用いた。
また、球状アルミナ粉末に付着しているシリカ粉末の平均粒径は、動的光散乱式粒度分布測定機(「Nanotrac150」、日機装社製)にて測定した。測定溶液は純水にサンプルを加えて10質量%のスラリーを作製し、それを1000G、20℃で3分間遠心分離し、1μm以上のアルミナの粗大粒子を沈降させ、その上澄み液を用いた。粒度分布の解析は、0.003〜6.5μmの粒径範囲を43分割して行った。水の屈折率としては1.33、シリカ粉末の屈折率としては1.46を用いた。
【0022】
(平均球形度の測定方法)
本発明において球状アルミナ粉末の平均球形度は次のようにして測定した。球状アルミナ粉末のSEM写真から粒子の投影面積(A)と周囲長(PM)を測定し、周囲長(PM)に対応する真円の面積を(B) とすると、その粒子の球形度はA/Bとして表される。そこで、試料粒子の周囲長(PM)と同一の周囲長を持つ真円を想定すると、PM=2πr、B=πrであるから、B=π×(PM/2π)となり、この粒子の球形度は、球形度=A/B=A×4π/(PM)として算出される。本発明ではSEM写真1枚当たり約50個の粒子が写るように撮影された粒径3〜100μmの任意の粒子100個について球形度を測定し、得られた球形度をその粒子の質量比率で按分することでその平均値を平均球形度とした。粒子の質量は、前述した試料粒子の周囲長(PM)と同一の周囲長を持つ真球を仮定し、その体積(V)とアルミナの真比重4.0から、粒子の質量=V×4.0として算出した。
上記以外の真円度の測定法としては、粒子像分析装置(例えば、モデルFPIA−1000;シスメックス社製など)が用いられる。定量的に自動計測された個々の粒子の円形度から、球形度=(円形度)により換算して求めることもできる。
【実施例】
【0023】
実施例1〜14、比較例1〜12
表1に示すアルミナ原料粉末と平均粒径10μmの金属シリコン粉末の混合粉末を、表1の製造条件で、LPGと酸素ガスによって形成された2300℃の高温火炎中に投入して球状化処理を行い、表2に示す平均粒径及び球形度を有する、シリカ粒子が付着した球状アルミナ粉末(A−1〜A−26)を製造した。
実施例15
表2に示すA−2とA−11の球状アルミナ粉末を、3:7の配合(質量比)で混合した球状アルミナ粉末を作製した。
比較例13、14
アルミナ原料粉末を単独でLPGと酸素ガスによって形成された2300℃の高温火炎中に投入し球状化処理を行い得られた球状アルミナ粉末(A−27、A−28)に、平均粒径0.5μmの球状シリカ粉末を混合することによって、球状アルミナ粉末とシリカ粉末の混合粉末()を作製した。
比較例15
金属シリコン粉末の代わりに平均粒径0.5μmのシリカ粉末を原料に用いたこと以外は、実施例11と同様にして球状アルミナ粉末(A−29)を製造した。
本発明の球状アルミナ粉末の半導体封止材としての特性を評価するため、質量基準で球状アルミナ粉末を89%に、4,4’−ビス(2,3−エポキシプロポキシ)−3,3’、5,5’−テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂4.6%、フェノール樹脂4.7%、トリフェニルホスフィン0.2%、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン0.6%、カーボンブラック0.3%,及びカルナバワックス0.6%(合計100%)を加え、ヘンシェルミキサーにてドライブレンドした後、得られた配合物を同方向噛み合い二軸押出混練機(スクリュー径D=25mm、ニーディングディスク長10Dmm、パドル回転数120〜160rpm、吐出量4kg/hr、ヒーター温度95〜100℃)で加熱混練した。吐出物を冷却プレス機にて冷却した後、粉砕して半導体封止材とし、流動性及びバリ長さを以下の方法に従って評価した。
(流動性)
スパイラルフロー金型を用い、EMMI−66(EpoxyMolding Material Institute;Society of Plastic Industry)に準拠して行った。金型温度は175℃、成型圧力7.4MPa、保圧時間90秒とした。
(バリ長さ)
2μm、5μm、10μm、30μmのスリットを持つバリ測定用金型を用い、成形温度は175℃、成形圧力は7.4MPaで成型した際にスリットに流れ出た樹脂をノギスで測定し、それぞれのスリットで測定された値を平均しバリ特性とした。
(粘度)
E型粘度計型(東京計器社製「EHD粘度計」)を用い、温度30℃、10rpmの回転数により樹脂組成物の粘度測定を行った。樹脂組成物はビスフェノールF型液状エポキシ樹脂20質量%、本発明の球状アルミナ質粉末80質量%を混合することにより作製した。
【0024】
【表1】



【0025】
【表2】



【0026】
【表3】



【0027】
表3の実施例と比較例から明らかなように、本発明の球状アルミナ粉末を用いた半導体封止材は、スパイラルフロー値が高く、粘度が低いので流動性に優れ、かつバリの長さが短いので低バリ特性を有している。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明の球状アルミナ粉末は、自動車、携帯電子機器、家庭電化製品等のモールディングコンパウンドなどの樹脂成形部品、更にはパテ、シーリング材、船舶用浮力材、合成木材、強化セメント外壁材、軽量外壁材、封止材などの充填材として使用できる。また、本発明の樹脂組成物は、ガラス織布、ガラス不織布、その他有機基材に含浸硬化させてなる、例えばプリント基板用のプリプレグ、プリプレグの1枚又は複数枚を銅箔等と共に加熱成形された電子部品、更には電線被覆材、封止材、ワニスなどの製造に使用できる。また、本発明の半導体封止材は、小型、薄型、狭ピッチの半導体パッケージへの成形が容易な封止材として使用できる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒径が3〜70μm、平均球形度が0.85以上の球状アルミナ粉末99.00〜99.99質量%と平均粒径0.01〜1.00μmのシリカ粉末0.01〜1.00質量%からなり、球状アルミナ粒子表面にシリカ粒子が0.01〜1.00質量%付着していることを特徴とする球状アルミナ粉末。
【請求項2】
平均粒径が5〜50μm、平均球形度が0.90以上の球状アルミナ粉末99.00〜99.99質量%と平均粒径0.05〜0.80μmのシリカ粉末0.01〜1.00質量%からなり、球状アルミナ粒子表面にシリカ粒子が0.01〜1.00質量%付着していることを特徴とする球状アルミナ粉末。
【請求項3】
平均粒径が3〜70μmのアルミナ原料粉末に金属シリコン粉末を二酸化ケイ素換算で0.01〜1.00質量%含有させた、アルミナ原料粉末と金属シリコン粉末の混合粉末を、炉内に形成された火炎中に投入することを特徴とする請求項1又は2に記載の球状アルミナ粉末の製造方法。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の球状アルミナ粉末を含有してなる球状アルミナフィラー。
【請求項5】
請求項4に記載の球状アルミナフィラーを含有してなる樹脂組成物。
【請求項6】
請求項5に記載の樹脂組成物を用いた半導体封止材。