説明

環境活性コンクリート

【課題】コンクリート内部に残って無駄になる生物誘引物の量を少なくし、また該生物誘引物が長期間に亘って徐々に流出させるために、コンクリートの空気量と流動性を高め、長期間に亘って魚介類の蝟集・育成効果及び藻の付着・育成効果を維持し、該生物誘引物の臭気により高い誘引効果を得ることができる構造の環境活性・保全・修復用ブロックを提供する。
【解決手段】少なくとも3本以上の脚体を有してなる環境活性・保全・修復用ブロックにおいて、臭気を有する生物誘引物質を混練してなる高空気量、高流動のコンクリートで形成した環境活性・保全・修復用ブロック。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は環境活性コンクリートに関するものであり、特に、漁港、港湾、海岸、河川等の護岸としての使用、あるは魚礁として海洋捨て込み等して使用されるコンクリート製の環境活性用ブロックにおける環境活性コンクリートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、漁港、港湾、海岸、河川等において、外海等から来襲する波浪を遮り、静穏な水面保持を図ることを目的として、岸近くに消波ブロックを敷き並べて堤防を構築することが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
前記特許文献2に示される消波ブロックは、少なくとも3本以上の脚体を有してなるコンクリートブロックを使用している。
【0004】
ところで、漁港、海岸、河川等の護岸としての使用、あるは魚礁として海洋捨て込みして使用するブロックは、生体類の蝟集・付着・育成効果、特に魚類の蝟集・育成効果に優れるものが要求されている。
【0005】
上述の生体類の蝟集・付着・育成効果を得るために、コンクリート表面を粗化、あるいは微細構造を作ることに海藻類を付着させる(特許文献1)、コンクリートブロックの表面にアミノ酸を塗布する(特許文献2)、コンクリートブロックの製造時にアミノ酸をコンクリート中に混練する(特許文献3)、コンクリートブロックの製造時に焼酎廃液を混練する(特許文献5,6,7)ことによって、生体類の蝟集・付着・育成効果を有するコンクリートブロックが得られるは知られている。
【0006】
このように、コンクリートブロックの表面を粗化するか、あるいは表面上に微細構造を作る手法、生物誘引物質を塗布する手法、あるいはコンクリートブロック中に生物誘引物質を混練する手法は、膨大な設備と手間を必要としないという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−215532号公報
【特許文献2】特開2000−336630号公報。
【特許文献3】特開2008−295441号公報。
【特許文献4】特開平10−1352号公報。
【特許文献5】特開2005−348717号公報
【特許文献6】特開2007−181457号公報
【特許文献7】特開2009−171932号公報
【非特許文献8】「水産学シリーズ37 魚類の化学感覚と摂餌促進物質」日本水産学会編
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載されるコンクリートブロックは生体類の付着のみを促すのみであり、育成効果は期待できず、発生した海藻類に対しての間接的な効果はあるものの、魚類の蝟集、育成効果は原理的に難しい。特許文献2に記載されるコンクリートブロックのように、表面に生物誘引物質を塗布したコンクリートブロックの構造は、生体誘引物質を環境中に流出させることにより、生体類の蝟集・付着・育成効果は期待されるが、水中に捨て込みした場合に表面が河川の流れや波によって洗われるので、生物誘引物質が直ぐに剥がれて流失し、長期間に亘って維持することができない。このため、長い期間に亘って魚介類を一箇所に集める蝟集・育成効果、及び、藻の付着・育成効果を維持できないという問題点があった。
【0009】
一方、特許文献4に記載されるコンクリートブロックのように、生物誘引物質を混練したコンクリートブロックでは、混練した生物誘引物質がコンクリートブロックから徐々に流出することになるので、長期間に亘って生体類の蝟集・付着・育成効果を維持することができる。しかしながら特許文献4においては生物誘引のための著効物質の量が少ないために、藻類や貝類の若干の付着は見られるものの、魚類等の誘引は認められない。さらに特許文献5、6、7に記載される固形化材料は生物誘引物質を焼酎廃液としたために、当該焼酎廃液を高濃度で配合できないということ、および生体誘引物質としては有効であったとしてもコンクリートの強度を保つための阻害物質を含有してしまっているという欠点がある。
さらにこれら混練型のコンクリートブロックでは生物誘引物質が水中に流出する量が少なく、流出しないでコンクリートブロックの中に閉じ込められ、該コンクリートブロックの中にそのまま残って無駄になるのも多いという問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記課題を克服し、生物類の蝟集・付着・育成効果、特に魚類の蝟集・育成効果のある環境活性コンクリート及び環境活性用ブロックを提供することにある
生物類の蝟集・付着・育成効果、特に魚類の蝟集育成効果に効果がある環境活性コンクリート組成物に必要とされる用件は、第一に著効性のある生物誘引物質を組成物中に大量に混練されることであり、第二に効率よく水中に流出させるために例えば微細構造を組成物が有することであり、第三に組成物が環境活性コンクリートを形成するに十分な強度を持つことであり、第四に組成物から得られる環境活性用コンクリートブロックがコンクリート内部に残らないような構造を有することである。
【0011】
混練形のコンクリートブロックについて、多くのコンクリート中に滞留している生体誘引物質が徐々に環境中に放出されることにより効果を発するものであるが、原理上流出量は制限され、必然的に著効性のある生体誘引物質を選び、高濃度でコンクリート中に配合する必要がある。
【0012】
これら生体誘引物質に関しては特に制限されないが、例えばアミノ酸、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、シスチン、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン等があげられ、例えば核酸としてイノシン、グアニン、アデノシン、ウリジン、チミジン等が挙げられる。
【0013】
これらアミノ酸、核酸については形態に制限はなく、純粋な単体でも混合物でもよく、また発酵廃液のように当該アミノ酸あるいは核酸を含有していてもよい。さらにタンパク室やペプチド、DNAやRNAなどアミノ酸や核酸を含有している高分子であってもかまわないが、後述するように当該生体誘引物質は環境への効率的な流出、形成するコンクリートの強度に影響を与えない程度で選ばれる必要がある。
【0014】
またこれらのアミノ酸、核酸についての環境活性用ブロック組成物に対する添加量は上述したとおり、多ければ多いほど環境への流出という目的に合っているものであるが、2%以上、望ましくは3%以上添加すれば本発明の効果が発揮される。
【0015】
さらに本発明の環境活性用ブロック組成物においてブロックを形成させるために他の添加剤を加えても問題はない。そのような添加剤としてAE剤、減水剤があげられる。
【0016】
本発明は著効性のある生物誘引物質として塩基性アミノ酸、特にアルギニンに注目した。当該アミノ酸の魚類の効果に関して非特許文献7に記載されるとおり、魚類の味覚器に対して感受性を有している。
【0017】
本塩基性アミノ酸を混練したコンクリート組成物は例えば特許文献3に記載されている通りであるが、これらのアミノ酸の流出について検討を行った結果、3%以上の配合で有意にアルギニンが流出していることが官能検査から明らかとなった。
【0018】
さらに通常特許文献4から6に示されるごとく誘引物質に関しては高配合を行うとコンクリートの強度が得られず、構造体が得られないことが問題となる。
【0019】
本発明における環境活性用ブロック組成物において、該アルギニンを高配合しても、該ブロック構造体を得るに十分な強度を得ることができ、かつ得られた構造体の比重が非配合のコンクリートに対して低いことが明らかとなった。このことはアルギニンを含有するコンクリート組成物は多孔質であることを示すものであり、水中での当該物質を容易に流出させることを意味する。
【0020】
次に上述のコンクリート組成物の沈設実験の結果を説明する。沈設実験は海中および河川中の二ヶ所、大阪湾南部および山口県河川での実験を行った。沈設二ヶ月の観察では海中において優位にアルギニン混練コンクリートは藻類の発生が見られ、魚類が蝟集していることが観察された。また河川での沈設実験ではアルギニン混練コンクリートにおいてアユのハミ跡、及びウナギがブロック内に成育していることが確認された。
【0021】
次に上述に説明した環境活性用ブロック組成物により成形した環境活性用ブロックについて説明する。請求項5記載の環境活性用ブロックは3本以上の脚体で形成されて、各脚体の表面がそれぞれ水と接触されることになるので、コンクリートブロックの水と接触する表面積が多く確保される。また、同時に、多孔質のコンクリートにより形成されているので水と接触している表面積がさらに多く確保され、さらにコンクリートブロックの内部に水も染み込みやすく、この染み込んだ水を通して内部の生物誘引物質が表面から徐々ににじみ出ることになるので、コンクリート全体から水中ににじみ出る生物誘引物質の量を多くすることができる。また、多数の脚体を設けて多くの表面積を確保することによってコンクリートブロック自体の肉厚を全体的に薄くすることが可能になるので、生体誘引物質を効率よく環境に流出させることができる。
【0022】
請求項5記載の発明における上述の脚体は、少なくとも3本以上の脚体を有してなる環境活性用ブロックを提供する。
【0023】
この構成によれば、各脚体を設けて形成しているので、水と接触するコンクリートブロックの表面積が増大し、生物誘引物質がコンクリート表面から水中ににじみ出る量を多くすることができる。
【0024】
請求項6記載の発明は、上記脚体が、該脚体の長さ方向に沿って設けられている複数本の稜線部と該稜線の間に各々設けられている平面部を有して多面柱に形成されている環境活性・保全・修復用ブロックを提供する。
【0025】
この構成によれば、各脚体を多面体の柱として形成されているので、水と接触するコンクリートブロックの表面積がさらに増大し、生物誘引物質がコンクリート表面から水中ににじみ出る量をさらに多くすることができる。
【0026】
請求項7記載の発明は、請求項1〜6に記載のコンクリート、または環境活性・保全・修復用ブロックを用いた、生体類の蝟集、付着、育成する方法を提供する。
【0027】
この方法では、請求項1〜6に記載のコンクリート、または環境活性・保全・修復用ブロックを用いた、生体類の蝟集、付着、育成を行うことができる。
【0028】
請求項8記載の発明は、請求項7に記載の方法を用いて、魚介類の蝟集、付着、育成を行うことができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明は生体類の蝟集、付着、育成効果、特に魚類の蝟集、育成効果に優れた環境活性コンクリートおよび環境活性用ブロックを提供するものである。
【0030】
そして、本発明は請求項1,2、3及び4に記載の通り、著効性のある生体誘引物質を環境活性コンクリートに高配合することにより、当該ブロックから効率流出させることをできる。
【0031】
また、本発明は請求項3及び4に記載の通り、生体誘引物質をアルギニンを高濃度に添加させることにより、コンクリートの強度を低下させることなく、多孔質のコンクリートを得ることができる。このため生体誘引物質を環境中に流出させる量を増やすことが可能となり、生体類の蝟集、付着、育成効果、特に魚類の蝟集、育成効果に優れた環境活性コンクリートを得ることができる。
【0032】
本発明は請求項5に記載の通り、水と接触しているコンクリート表面積を多く確保し、該コンクリートに混練された生物誘引物質が該コンクリート表面から適量ずつ徐々ににじみ出るようにしているので、該生物誘引物が長期間に亘って効率良く徐々に流出し、魚介類の蝟集・育成効果、及び、藻の付着・育成の効果を長期間に亘って維持することができる。また、コンクリートブロック自体の肉厚を全体的に薄くすることが可能になり、生体誘引物質を効率よく環境に流出させることができる。
【0033】
本発明は請求項6に記載の通り、各脚体を多面体の柱として、生物誘引物質がコンクリート表面から水中ににじみ出る量をさらに多くすることができるので、魚介類の蝟集・育成効果、及び、藻の付着・育成効果がより一層長期間に亘って得られる。
【0034】
本発明は請求項7及び8に記載の通り、魚介類等の生体類の蝟集、付着、育成を効率よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明を一実施形態として示す消波ブロックの正面図。
【図2】同上消波ブロックの背面図。
【図3】同上消波ブロックの右側面図。
【図4】同上消波ブロックの左側面図。
【図5】同上消波ブロックの平面図。
【図6】同上消波ブロックの底面図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
本発明は、コンクリート内部に残って無駄になる生物誘引物の量を少なくし、また該生物誘引物が長期間に亘って徐々に流出し、長期間に亘って魚介類の蝟集・育成効果、及び藻の付着・育成効果が維持できる構造とするという目的を達成するために、少なくとも3本以上の脚体を有してなる環境活性用ブロックにおいて、生物誘引物質を混練してなる多孔質のコンクリートで形成したことにより実現した。
【0037】
以下、本発明の環境活性コンクリートおよび環境活性用ブロックについて、好適な実施例を添付図面を参照して説明する。
【0038】
図1〜図6は本発明を適用した環境活性用ブロックを示すもので、消波ブロックを一例としている。同図において、消波ブロック1は、同一形状をした4個の脚体2a,2b,2c,2dを有するコンクリートブロックであり、例えば型枠(図示せず)にコンクリートを流し込んで一体的に成形される。また、成形時、各脚体2a,2b,2c,2dは、その各基端部3a,3a,3a,3aを互いに結合させるとともに、各脚体2a,2b,2c,2dの軸線4,4,4,4を該消波ブロック1の中心O(重心)に合致させて、該4個の脚体2a,2b,2c,2dが中心Oから略120°間隔で放射状に延設された状態にして形成される。
【0039】
なお、ここでの成形処理では、例えば砂利、セメント、水からなる基準混練物(以下、「生コンクリート」という)を混練する時に、生物誘引物質としてアミノ酸、核酸に代表される生体誘引物質が該生コンクリート内に該生コンクリート全体比で3%から7%またはそれ以上添加され、該生体誘引物質が混練された生コンクリートを前記型枠に流し込んで固化させ、所定の形状に成形する。
【0040】
前述したようにアミノ酸、核酸に代表される生体誘引物質が混練された生コンクリートでは、特に選ばれたアミノ酸、核酸において、該生コンクリートが固まるまでの少しの間、生コンクリートの粘り気を緩くする。これにより該生コンクリートが型枠の隅々まで入り易くなり、成形を容易にする。一方、固まった後はコンクリート表面及び内部に多孔状の透きが形成されて多孔質のコンクリートとなり、水に触れる表面積が多くなり、かつ、水の浸透を容易にし、コンクリート全体から当該生体誘引物質が環境中に流出しやすくする。
【0041】
さらに本発明のコンクリートを用い、消波ブロック1の表面積を多く設けた形状にすると生体誘引物質の流出をさらに多くすることができる。
【0042】
そこで、本実施例においては、消波ブロック1の表面積をさらに増やすことができるようにするために、前記4個の脚体2a,2b,2c,2dを、該脚体2a,2b,2c,2dの長さ方向に沿って設けられている6本の稜線部22,22…と該稜線部22,22…の間に各々設けられている平面部23,23…を有するようにして、横断面が正六角形をした六面柱として形成している。また、各脚体2a,2b,2c,2dは、横断面の面積が基端部3a側から先端部3bに向かって徐々に小さくなる先細りをした六角錐状に形成するとともに、先端部3bの端面24もカットして平坦面に形成している。
【0043】
さらに、4個の脚体2a,2b,2c,2dのうちの、3個の前記脚体(図1の場合では脚体2a,2b,2c)の基端部3a,3a,3aが各々集合されている4つの各部位はそれぞれ略水平面を成し、該水平面の中央部位にはそれぞれ凹陥部5,5,5,5を設けている。該各凹陥部5,5,5,5は、不連続に離間して形成された3個の第1凹陥部5a,5a,5aと該3個の第1凹陥部5a,5a,5aで囲まれた内側部位に設けられた1個の第2凹陥部5bとからなる。
【0044】
そして、前記第1凹陥部5a,5a,5aは、3個の前記脚体(図1の場合では脚体2a,2b,2c)のうち、相互に隣接している脚体間(図1の場合では脚体2aと2b、2bと2c、2cと2a)に形成されている。なお、各第1凹陥部5a,5a,5aにそれぞれ設けられている切り欠き部6,6,6は、第1凹陥部5a,5a,5a内に入り込んだ水を外部に排出し易くする。
【0045】
他方、前記第2凹陥部5bは、3個の第1凹陥部5a,5a,5aで囲まれた内側部位に、前記第1凹陥部5aの内方に段設部を設けた状態にして、平面視角形に形成されている。また、第2凹陥部5bの底面8には、図示しない微小な縞状の凹凸が形成してある。
【0046】
このように構成された消波ブロック1は、漁港、海岸、河川等の岸近くの水中及び堤防に並べて配置され、魚礁や消波堤を構築する。なお、魚礁及び消波堤の構築においては、消波ブロック1は一段配列とは限らず、数段とすることもある。
【0047】
そして、水中に設置された消波ブロック1は、水と接触しているコンクリート表面積が多く確保されているので、該コンクリートに混練された生物誘引物質が該コンクリート表面から適量ずつ徐々に時間を掛けてにじみ出るようにしているので、長期間に亘って魚介類の蝟集・育成効果、及び、藻の付着・育成の効果を維持する。
【0048】
また、消波堤として使用された場合は、凹陥部5が波の衝撃を緩和する。この際、第1凹陥部(上段)5a,5a,5aはブロック1の外面近くに設けられているので水が溜まりにくいが、第2凹陥部(下段)5bは第1凹陥部5a,5a,5aよりも奥まった内側に設けられているので水が溜まり易く、該第2凹陥部5bに海藻等の胞子が捕捉されて藻や魚介類等の多様な生息環境を形成する。さらに、底面8には縞状の微小の凹凸面を設けているので、該微小の凹凸面が藻類及びアワビ等の貝類の付着をし易くする。
【実施例】
【0049】
(アルギニン添加したコンクリートの強度試験)
本発明における環境活性用コンクリートの強度を試験するため、表1に示すような組成に調整し、Φ12.5×25の枠に詰めたのち、28日間養生した。得られた試供体の強度試験を実施した。
【0050】
【表1】

【0051】
※1:対セメント重量に対する添加率、※2:呼び強度
その結果アルギニンを対セメント重量に対して7%添加してもそのコンクリートの圧縮強度を低下させないことが明らかになった。
【0052】
(アルギニンを添加したコンクリートの密度および臭気の官能評価試験)
次に表2に示すような組成で試供体を調製し、Φ12.5×25の枠に詰めたのち、7日間養生した。得られた試供体の密度を調べた。結果を表2に示す
【0053】
【表2】

【0054】
※1:対セメント重量に対する添加率
その結果アルギニンを添加したものはコンクリート密度の値が小さく、また空気量、スランプ値が高い傾向にあることがわかる。このことからアルギニンを添加したコンクリートは多孔質の構造を持つことがわかる。
次に比較例2、実施例3、4、及び5の試供体について官能評価を実施した。評価はパネラー7名により、試供体より発生する臭気を表3に基づき、評価を行った。結果を表4に示す。
【0055】
【表3】

【0056】
【表4】

【0057】
表4が示すとおり、アルギニン添加量3%以上を添加した試供体で有意にアルギニンの臭気が認められた。
(河川での沈設実験)
比較例2、実施例5の組成によるブロックを調整し、山口県河川での沈設実験を行った。当河川において主として鮎の繁殖状況を確認し、ブロック表面の藻類の繁殖状況と鮎の食み跡を目視にて観測した。
その結果を表5に示す。
【0058】
【表5】

【0059】
*:古い食み跡と推測
その結果アルギニンを添加したブロックにおいて、鮎のはみ跡、藻類の生育状況で有意に鮎の誘引効果が認められた。
【0060】
(海中での沈設実験)
比較例2、実施例5の組成によるコンクリートブロックを製作し、大阪湾南部の港湾部に沈設し、主として藻類の繁殖状況を目視で観測した。沈設一ヶ月目で主としてアオサ属の藻類が表面に生息し、実施例5組成のコンクリートブロックに有意に藻類の生息が確認された。その結果を表6に示す。
【0061】
【表6】

【0062】
さらに特筆すべき事例として、実施例5組成のコンクリートブロックにおいて、ブロック周辺に多くのメジナが蝟集していることが観測された。
【0063】
なお、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【産業上の利用可能性】
【0064】
以上説明したように、本発明は消波ブロックに適用した場合について説明したが、消波ブロックに限ることなく、一般的なコンクリートブロックにも応用できる。
【符号の説明】
【0065】
1 消波ブロック
2a,2b,2c,2d 脚体
3a 基端部
3b 先端部
4 軸線
5 凹陥部
5a 第1凹陥部
5b 第2凹陥部
6 切り欠き部
8 底面
10 消波ブロック
11 貯留部
12 管状連結部
22 稜線部
23 平面部
24 端面
O 中心(重心)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体類の蝟集、付着、育成効果、特に魚介類の蝟集、育成効果に優れる生体誘引物質を混練してなる環境活性・保全・修復用コンクリートにおいて、生体誘引物質を効果的に河川、海岸・海洋、および湖沼中に長期間に亘って徐々に流出させるために、当該組成物中に生体誘引物質を高濃度で配合し、かつ形成された組成物が高い空気含有量と流動性を有し、かつ環境活性・保全・修復用コンクリートを形成するために十分な強度を有し、流出した生体誘引物質の「臭気」により誘引効果を高めたことを特徴とする環境活性・保全・修復用コンクリート組成物および該環境活性・保全・修復用ブロックを用いた各種土木構築物。
【請求項2】
請求項1記載の生体誘引物質がアミノ酸又は核酸から1種または2種以上から選ばれることを特徴とする環境活性・保全・修復用コンクリート
【請求項3】
請求項1記載の生体誘引物質がアルギニンであることを特徴とする環境活性・保全・修復用コンクリート
【請求項4】
請求項3記載のアルギニンが組成物中に3wt%以上含有することを特徴とする環境活性・保全・修復用コンクリート
【請求項5】
少なくとも3本以上の脚体を有してなる環境活性・保全・修復用ブロックにおいて、請求項1,2,3または4記載環境活性・保全・修復用コンクリートで形成したことを特徴とする環境活性・保全・修復用ブロック。
【請求項6】
請求項5記載の脚体が、該脚体の長さ方向に沿って設けられている複数本の稜線部と該稜線の間に各々設けられている平面部を有して多面柱に形成されていることを特徴とする請求項5記載の環境活性・保全・修復用ブロック。
【請求項7】
請求項1〜6に記載のコンクリート、または環境活性・保全・修復用ブロックを用いた、生体類の蝟集、付着、育成する方法。
【請求項8】
生体類が魚介類である請求項7に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−142877(P2011−142877A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−7456(P2010−7456)
【出願日】平成22年1月15日(2010.1.15)
【出願人】(000226356)日建工学株式会社 (24)
【出願人】(000000066)味の素株式会社 (887)
【Fターム(参考)】