説明

環状エノンの還元方法

【課題】環状エノンを出発原料とする、環状飽和アルコールを簡便に合成する製造方法を提供する。
【解決手段】式2で表わされる化合物を式3で表わされる化合物(例えばマロン酸ジアルキル)、または式4で表わされる化合物(例えばピリジン)の存在下、水素化ホウ素ナトリウム試薬で還元して、式1で表わされる化合物を製造することが出来る。


(式中、R、RおよびRは、同一または異なっていてもよく、ヒドロキシ基の保護基であり、Rが同一分子内に複数存在する場合は、各々のRは、同一または異なっていてもよく、nは、1〜4の整数である)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環状エノンを出発原料とする、環状飽和アルコールを簡便に合成する製造方法に関する。本発明の製造方法により、医薬品の中間体として有用な環状飽和アルコールを簡便に合成することができる。
【背景技術】
【0002】
グルコース型シクロヘキサノール誘導体(5−ヒドロキシメチル−2,3,4−トリヒドロキシシクロヘキサノールおよびヒドロキシル基の保護基を有する5−ヒドロキシメチル−2,3,4−トリヒドロキシシクロヘキサノール)は、グルコース型酸素官能基配置シクロヘキセノン誘導体(3−ヒドロキシメチル−4,5,6−トリヒドロキシ−2−シクロヘキセノンおよびヒドロキシル基の保護基を有する3−ヒドロキシメチル−4,5,6−トリヒドロキシ−2−シクロヘキセノン)を還元することにより得られることが報告されている(非特許文献1)。しかし、この方法は、多段階反応を要し、効率的でない。また、不飽和ケトンの還元方法としては、3−メチルシクロヘキセノン、カルベノン、およびコレステノンを水素化ホウ素ナトリウムで還元する際に、ピリジンを溶媒として用いることで、1,4−還元体(飽和アルコール体)が選択的に得られることが報告されているが、グルコース型酸素官能基配置シクロヘキセノン誘導体を水素化ホウ素ナトリウムで還元することについての報告はなされていない(非特許文献2)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Liebigs Ann. Chem., 1987, 125-131
【非特許文献2】J. Chem. Soc., 1965, 5280-5287
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の通り、グルコース型酸素官能基配置シクロヘキセノン誘導体から、環状飽和アルコールであるグルコース型シクロヘキサノール誘導体を、収率良く製造することは困難であるという問題があった。そこで本発明者らは、グルコース型酸素官能基配置シクロヘキセノン誘導体を水素化ホウ素ナトリウムで還元する方法を試みたが、その際にピリジンを添加したところ、目的物である1,4−還元体(飽和アルコール)よりも、芳香族化した副生成物が多く生成するという問題があることを発見した。これら問題点を解決するために、さらに検討を進めた結果、特定の活性メチレン化合物または活性メチン化合物の存在下で還元反応を行うことにより、芳香族化した副生成物の生成を抑え、環状飽和アルコールを高収率で簡便に製造できることを見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち本発明の目的は、環状エノンを出発原料とする環状飽和アルコール誘導体の簡便な製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、式1
【化1】


(式中、R、RおよびRは、同一または異なっていてもよく、ヒドロキシ基の保護基であり、Rが同一分子内に複数存在する場合は、各々のRは、同一または異なっていてもよく、nは、1〜4の整数である)で表わされる化合物の製造方法であって、式2
【化2】


(式中、R、R、Rおよびnは、上記の通りである)で表わされる化合物を式3
【化3】


(式中、RおよびRは、同一もしくは異なっていてもよく、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、またはエステル基である)
で表わされる化合物、または式4
【化4】


(式中、RおよびRは、同一もしくは異なっていてもよく、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、またはエステル基であり、Rは、置換されていてもよい直鎖もしくは分岐鎖状のアルキル基であるか、あるいはRは、RおよびRのいずれか一方と一緒になってそれらが結合する炭素原子とともに置換されていてもよいオキソシクロアルキル基または環状エステル基を形成し、RおよびRのうち他方は、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、またはエステル基である)
で表わされる化合物の存在下、水素化ホウ素ナトリウム試薬で還元することを特徴とする方法に関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明においては、式3で表わされる化合物または式4で表わされる化合物の存在下、入手容易で取り扱いやすい還元剤である水素化ホウ素ナトリウム試薬を用いることにより、環状エノンから環状飽和アルコール、特にグルコース型酸素官能基配置シクロヘキサノール誘導体を高収率で簡便に製造できる。さらに6員環系、すなわちnが2であるシクロヘキセノン誘導体を還元する場合においては、反応生成物が芳香族化することを抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本明細書においては、「ヒドロキシ基の保護基」とは、ヒドロキシ基を化学反応から保護するための基であって、反応終了後は除去等により再びヒドロキシ基に変換できる基を意味する。具体的には“Protective groups in organic synthesis, Theodora Greene(著), 1999, Wiley-Interscience”などの文献に記載された保護基を挙げることができる。より具体的には、tert−ブチルジフェニルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、トリエチルシリル基、トリメチルシリル基、テトラヒドロピラニル基、メトキシメチル基、p−メトキシベンジル基、o−ニトロベンジル基、p−ニトロベンジル基、ベンジル基、アセチル基、ベンゾイル基などを用いることができ、好ましくは、ベンジル基を用いることができる。
【0008】
本明細書において、「アルキル基」とは、直鎖または分岐鎖状の炭化水素基であり、その炭素数は、好ましくは、1〜10であり、より好ましくは、1〜6であり、特に好ましくは、1〜4である。アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチルなどがあげられる。
【0009】
本明細書において、「アリール基」とは、環を構成する炭素原子6〜10個を有する単環または二環の1価の芳香族炭化水素環基である。アリール基としては、例えば、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチルなどがあげられる。
【0010】
本明細書において、「アルキルカルボニル基」とは、−C(O)Rで表わされる基であって、ここでRは、置換されていてもよい上記で定義したアルキル基である。その炭素数は、好ましくは、1〜10であり、より好ましくは、1〜6であり、特に好ましくは、1〜4である。アルキルカルボニル基としては、例えば、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソプロピルカルボニル、ブチルカルボニル、tert−ブチルカルボニルなどがあげられる。
【0011】
本明細書において、「アリールカルボニル基」とは、−C(O)Rで表わされる基であって、ここでRは、置換されていてもよい上記で定義したアリール基である。アリールカルボニルとしては、例えば、フェニルカルボニル、p−トリルカルボニル、1−メシチルカルボニル、4−メトキシフェニルカルボニル、4−ニトロフェニルカルボニル、4−フルオロフェニルカルボニル、2,3,4−トリフルオロフェニルカルボニル、2,4,6−トリクロロフェニルカルボニルなどがあげられる。
【0012】
本明細書において、「エステル基」とは、−C(O)OR10で表わされる基であって、ここでR10は、置換されていてもよい上記で定義したアルキル基またはアリール基である。エステル基としては、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、イソブトキシカルボニル、tert−ブトキシカルボニル、フェニルオキシカルボニル、p−トリルオキシカルボニル、1−メシチルオキシカルボニル、4−メトキシフェニルオキシカルボニル、4−ニトロフェニルオキシカルボニル、4−フルオロフェニルオキシカルボニル、2,3,4−トリフルオロフェニルオキシカルボニル、2,4,6−トリクロロフェニルオキシカルボニルなどがあげられる。
【0013】
本明細書において、「オキソシクロアルキル基」とは、オキソ基で置換された環状炭化水素基であり、その炭素数は、好ましくは、3〜10であり、より好ましくは、5〜8であり、特に好ましくは、6である。
【0014】
本明細書において、「環状エステル基」とは、環員として−C(O)O−を含む環状炭化水素基であり、その環を構成する炭素数は、好ましくは、2〜10であり、より好ましくは、3〜6である。
【0015】
本明細書において、「置換されていてもよい」と付されている場合の置換基としては、例えば、直鎖もしくは分岐鎖状のアルキル基、直鎖もしくは分岐鎖状のアルコシキ基、直鎖もしくは分岐鎖状のアルケニル基、直鎖もしくは分岐鎖状のアルケニルオキシ基、直鎖もしくは分岐鎖状のアルキニル基、直鎖もしくは分岐鎖状のアルキニルオキシ基、シクロアルキル基、シクロアルキルオキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されたアルキル基、ハロゲン原子で置換されたアルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、ヘテロアリール基、ヘテロアリールオキシ基、ニトロ基、アミノ基(直鎖もしくは分岐鎖状のアルキル基でモノまたはジ置換されていてもよい)、直鎖もしくは分岐鎖状のアルキルチオ基などがあげられる。
【0016】
本願明細書において、「アルコキシ基」とは、先に定義したアルキル基が酸素原子を介して結合している基である。アルコキシ基としては、例えば、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、イソブトキシ、tert-ブトキシなどがあげられる。
【0017】
本願明細書において、「アルケニル基」とは、二重結合を少なくも1個有する、直鎖または分岐鎖状の炭化水素基であり、その炭素数は、好ましくは、2〜10であり、より好ましくは、2〜6である。アルケニル基としては、例えば、エテニル、1−プロペニル、2−プロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、ペンテニル、ヘキセニルなどがあげられる。
【0018】
本願明細書において、「アルケニルオキシ基」とは、先に定義したアルケニル基が酸素原子を介して結合している基である。アルケニルオキシ基としては、例えば、エテニルオキシ、2−プロペニルオキシなどがあげられる。
【0019】
本願明細書において、「アルキニル基」とは、三重結合を少なくも1個有する、直鎖または分岐鎖状の炭化水素基であり、その炭素数は、好ましくは、2〜10であり、より好ましくは、2〜6である。アルキニル基としては、例えば、エチニル、1−プロピニル、2−プロピニル、3−ブチニルなどがあげられる。
【0020】
本願明細書において、「アルキニルオキシ基」とは、先に定義したアルキニル基が酸素原子を介して結合している基である。アルキニルオキシ基としては、例えば、エチニルオキシ、1−プロピニルオキシ、2−プロピニルオキシ、3−ブチニルオキシなどがあげられる。
【0021】
本願明細書において、「シクロアルキル基」とは、環状の脂肪族炭化水素基であり、その炭素数は、好ましくは、3〜10であり、より好ましくは、5〜8である。シクロアルキニル基としては、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチルなどが挙げられる。
【0022】
本願明細書において、「シクロアルキルオキシ基」とは、先に定義したシクロアルキル基が酸素原子を介して結合している基である。シクロアルキルオキシ基としては、例えば、シクロプロピルオキシ、シクロブチルオキシ、シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシ、シクロヘプチルオキシ、シクロオクチルオキシなどがあげられる。
【0023】
本願明細書において、「ハロゲン原子」とは、例えば、塩素、フッ素、臭素、およびヨウ素があげられる。
【0024】
本願明細書において、「ハロゲン原子で置換されたアルキル基」とは、先に定義したアルキル基の水素原子の少なくとも1個が、ハロゲン原子で置換されている、先に定義したアルキル基である。ハロゲン原子で置換されたアルキル基としては、例えば、モノフルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、トリクロロメチルなどがあげられる。
【0025】
本願明細書において、「ハロゲン原子で置換されたアルコキシ基」とは、先に定義したハロゲン原子で置換されたアルキル基が酸素原子を介して結合している基である。ハロゲン原子で置換されたアルコキシ基としては、例えば、モノフルオロメチルオキシ、ジフルオロメチルオキシ、トリフルオロメチルオキシ、トリクロロメチルオキシなどがあげられる。
【0026】
本願明細書において、「アリールオキシ基」とは、先に定義したアリール基が酸素原子を介して結合している基である。アリールオキシ基としては、例えば、フェニルオキシ、1−ナフチルオキシ、2−ナフチルオキシなどがあげられる。
【0027】
本明細書において、「ヘテロアリール基」とは、環を構成する原子5〜10個中に1または複数個の窒素原子、酸素原子、および硫黄原子から選択されるヘテロ原子を有する芳香族炭化水素環基である。環は、単環ヘテロアリール環、または単環ヘテロアリール環がベンゼン環もしくは単環へテロアリール環と縮合した二環式ヘテロアリール基であってもよい。具体的には、たとえば、フリル、チエニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピリジル、ピリミジル、ピリダジニル、ピラジニル、トリアジニル、ベンゾフラニル、ベンゾチエニル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾオキサジアゾリル、ベンゾイミダゾリル、インドリル、イソインドリル、インダゾリル、キノリル、イソキノリル、シンノリニル、キナゾリニル、キノキサリニル、ベンゾジオキソリル、インドリジニル、イミダゾピリジルなどがあげられる。
【0028】
本願明細書において、「ヘテロアリールオキシ基」とは、先に定義したヘテロアリール基が酸素原子を介して結合している基である。ヘテロアリールオキシ基としては、例えば、ピリジン−2−オキシなどがあげられる。
【0029】
本願明細書において、「アルキルチオ基」とは、先に定義したアルキル基が硫黄原子を介して結合している基である。アルキルチオ基としては、例えば、メチルチオ、エチルチオ、n−プロピルチオ、イソプロピルチオ、n−ブチルチオ、イソブチルチオ、tert-ブチルチオなどがあげられる。
【0030】
本発明の方法を以下に詳細に述べる。
【0031】
本発明の方法において出発化合物として使用する式2
【化5】


で表わされる化合物において、R、RおよびRは、同一または異なっていてもよく、ヒドロキシ基の保護基である。このような保護基としては、例えば、tert−ブチルジフェニルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、トリエチルシリル基、トリメチルシリル基、テトラヒドロピラニル基、メトキシメチル基、p−メトキシベンジル基、o−ニトロベンジル基、p−ニトロベンジル基、ベンジル基、アセチル基、ベンゾイル基などを用いることができ、好ましくは、ベンジル基を用いることができる。また、nは、1〜4の整数であり、好ましくは、1または2であり、より好ましくは、2である。
【0032】
本発明の方法において使用する式3
【化6】


で表わされる活性メチレン化合物においては、RおよびRは、同一もしくは異なっていてもよく、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、またはエステル基であるが、同一であるのが好ましい。このような活性メチレン化合物としては、マロン酸エステル類(例えば、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジtert−ブチルなどのマロン酸ジアルキルエステル;マロン酸メチルフェニル、マロン酸エチルフェニルなどのマロン酸アルキルフェニルエステル;マロン酸ジフェニル、マロン酸ビス(4−ニトロフェニル)、マロン酸ビス(2,3,4−トリフルオロフェニル)、マロン酸ビス(2,4,6−トリクロロフェニル)などのマロン酸ジフェニルエステル)、ケトエステル類(例えば、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、プロピオニル酢酸エチルなど)、または1,3−ジオン類(例えば、1−フェニルブタン−1,3−ジオン、1−p−トリルブタン−1,3−ジオン、1−メシチルブタン−1,3−ジオン、1−フェニルペンタン−1,3−ジオン、1−(4−ニトロフェニル)ブタン−1,3−ジオン、1−メシチル−3−フェニルプロパン−1,3−ジオン、1,3−ジフェニルプロパン−1,3−ジオン、1,3−ビス(4−ニトロフェニル)プロパン−1,3−ジオン、1,3−ビス(4−フルオロフェニル)プロパン−1,3−ジオンなど)を用いることができる。式3で表わされる活性メチレン化合物としては、マロン酸ジエチルおよびマロン酸ジtert−ブチルが好ましい。
【0033】
また、本発明の方法において使用する式4
【化7】


で表わされる活性メチン化合物においては、RおよびRは、同一もしくは異なっていてもよく、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、またはエステル基であり、Rは、置換されていてもよい直鎖もしくは分岐鎖状のアルキル基であるか、あるいはRは、RおよびRのいずれか一方と一緒になってそれらが結合する炭素原子とともに置換されていてもよいオキソシクロアルキル基または環状エステル基を形成し、RおよびRのうち他方は、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、またはエステル基である。
が、RおよびRのいずれか一方と一緒になってそれらが結合する炭素原子とともに置換されていてもよいオキソシクロアルキル基または環状エステル基を形成する場合、好ましくは、活性メチン炭素に隣接する炭素原子上にオキソ基を有するオキソシクロアルキル基または環状エステル基を形成する。オキソシクロアルキル基におけるシクロアルキル基としては、好ましくは、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、より好ましくは、シクロヘキシルをあげることができる。または環状エステル基としては、α-アセトラクトン、β-プロピオラクトン、γ-ブチロラクトンおよびδ-バレロラクトンから誘導される基をあげることができる。
【0034】
このような活性メチン化合物としては、置換マロン酸エステル類(例えば、メチルマロン酸ジエチル、エチルマロン酸ジエチル、メチルマロン酸エチルフェニル、メチルマロン酸tert-ブチルフェニル、メチルマロン酸ジフェニル、ベンジルマロン酸ジフェニル、またはブチルマロン酸ビス(2,4,6−トリクロロフェニル)など)、ケトエステル類(例えば、2−メトキシカルボニルシクロヘキサノン、2−エトキシカルボニルシクロヘキサノン、または2−メチルアセト酢酸エチルなど)、環状エステル類(例えば、6,6−ジメチル−2−オキソテトラヒドロ−2H−ピラン−3−カルボン酸エチル、4−メチル−2−オキソテトラヒドロ−2H−ピラン−3−カルボン酸エチル、4,6−ジメチル−2−オキソテトラヒドロ−2H−ピラン−3−カルボン酸エチルなど)、あるいは1,3−ジオン類(例えば、2−メチル−1−フェニルブタン−1,3−ジオン、2−メチル−1,3−ジ−p−トリルプロパン−1,3−ジオン、2−メチル−1−(3−ニトロフェニル)−3−フェニルプロパン−1,3−ジオン、2−メチル−1−フェニルペンタン−1,3−ジオン、1,3−ビス(4−メトキシフェニル)−2−メチルプロパン−1,3−ジオン、2−エチル−1−(4−メトキシフェニル)ブタン−1,3−ジオン、または2−メチル−1,3−ジフェニルプロパン−1,3−ジオンなど)を用いることができる。式4で表わされる活性メチン化合物としては、2−エトキシカルボニルシクロヘキサノンが好ましい。
【0035】
本発明の方法においては、好ましくは、式3の活性メチレン化合物を用いることができ、さらに好ましくは、マロン酸ジエチルを用いることができる。
【0036】
本発明の方法においては、水素化ホウ素ナトリウム試薬としては、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH)、シアノ水素化ホウ素ナトリウム(NaBHCN)、水素化トリアセトキシホウ素ナトリウム(NaBH(OAc))を用いることができ、好ましくは、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH)を用いることができる。
【0037】
本発明の方法は、上述のとおりであるが、その一態様によると、水素化ホウ素ナトリウム試薬、および所望であれば塩基を含む溶液に、式2
【化8】


(式中、R、R、Rおよびnは、上記の通りである)
で表わされる化合物、および式3
【化9】


(式中、RおよびRは、上記の通りである)
で表わされる化合物、または式4
【化10】


(式中、R、RおよびR7は、上記の通りである)
で表わされる化合物を加えて、還元反応に付すことにより、式1
【化11】


(式中、R、R、Rおよびnは、上記の通りである)
の化合物を得ることができる。
【0038】
本発明の方法においては、活性メチレン化合物または活性メチン化合物に加えて、塩基の存在下で還元することが好ましい。塩基の存在下で還元反応を行うことによって、1,2−部分還元体である、式5
【化12】


(式中、R、R、Rおよびnは、前記の通りである)
で表わされる副生成物の発生を抑制することができる。
【0039】
塩基としては、トリエチルアミン、エチルジイソプロピルアミン、ピリジン、ルチジンなどを用いることができ、好ましくは、ピリジンを用いることができる。
【0040】
本発明の方法においては、反応で用いる溶媒としては、アミン類(例えば、トリエチルアミン、ピリジンなど)、エーテル類(例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、tert−ブチルメチルエーテルなど)、炭化水素類(例えば、ヘキサン、トルエンなど)、およびこれらの混合溶媒を用いることができ、好ましくは、1,2−ジメトキシエタンなどを用いることができる。
【0041】
本発明の方法においては、式3で表わされる化合物または式4で表わされる化合物の当量は、式2で表わされる化合物に対して、例えば、1〜10当量、好ましくは、1〜5当量、好ましくは、3当量である。
【0042】
本発明の方法においては、水素化ホウ素ナトリウム試薬の当量は、式2で表わされる化合物に対して、例えば、1〜10当量、好ましくは、1〜5当量、さらに好ましくは、2当量である。
【0043】
本発明の方法においては、反応溶媒量は、式2で表わされる化合物に対して、例えば、5(v/w)倍量から50(v/w)倍量であり、好ましくは、10(v/w)倍量である。
【0044】
本発明の方法においては、反応は、例えば、−40℃から30℃の間の温度、好ましくは、−5℃から5℃で行われる。
【0045】
本発明の方法においては、反応時間は、反応温度等により異なるが、通常1分間から10時間であり、好ましくは、2時間である。
【0046】
本発明の方法において出発化合物として用いられる式2の化合物の合成方法について、以下に詳細に記載する。
【0047】
n=1である式2の化合物については、市販されている化合物(Hangzhou Chempro Tech Co., Inc.製、nが1であり、R、RおよびRがいずれも水素原子である式2の化合物)に、Protective groups in organic synthesis, Theodora Greene(著), 1999, Wiley-Interscienceなどの文献に記載された水酸基の保護基を導入することによって、n=1である式2の化合物を得ることができる。
【0048】
n=2である式2の化合物については、例えば、下記反応スキームIに示すように、市販されている化合物(SIGMA製、式6−1の化合物)をCarbohydr. Res., 1984, 130, 261-269に記載の条件に従い、式6−2の化合物に変換し、さらに式6−2の化合物をTetrahedron, 2000, 56, 7109-7122に記載の条件に従い、式6−5の化合物に変換し、更にピリジン中メタンスルホニルクロリドと反応させることにより、式2−1(R=R=R=Bn)の化合物を得ることができる(スキームI)。
【0049】
【化13】

【0050】
ベンジル基以外の保護基で保護された水酸基を有する式2の化合物を得るには、上記の方法により得られた式2−1(R=R=R=Bn)の化合物をProtective groups in organic synthesis, Theodora Greene(著), 1999, Wiley-Interscienceなどの文献に記載された適切な条件で脱保護し、Protective groups in organic synthesis, Theodora Greene (著), 1999, Wiley-Interscienceなどの文献に記載された水酸基の保護基を導入することによって、式2の化合物を得ることができる。
【0051】
また、n=3またはn=4である式2の化合物については、シクロヘキセノン誘導体(nが2である式2の化合物)を適切な増炭反応に付すことにより得ることができる。
【実施例】
【0052】
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0053】
なお、実施例ならびに比較例で得られた化合物ならびに収率を下記スキームIIならびに表Iにまとめて記載した。
【0054】
機器分析条件
H−NMRは、JEOL製JNM-ECP 500型により、重水素化クロロホルム中テトラメチルシランを内部標準として測定した。収率は、1,2,4,5−テトラメチルベンゼン(Durene)を内部標準としたH−NMRスペクトル分析により算出した。
【0055】
質量分析(MS)は、Waters 製 LCT Premier XEにより測定した。
赤外スペクトル(IR)は、JASCO製FT/IR-480plusにより、KBr法を用いて測定した。
【0056】
【化14】

【0057】
【表1】

【0058】
(実施例1):窒素気流下、1,2−ジメトキシエタン(0.5mL)中の水素化ホウ素ナトリウム(14.3mg、0.37mmol)およびピリジン(45μL、0.56mmol)の溶液を0℃に冷却し、1,2−ジメトキシエタン(0.5mL)中の(4R,5S,6R)−4,5,6−トリス(ベンジルオキシ)−3−(ベンジルオキシメチル)シクロヘキサ−2−エノン(100mg、0.19mmol)およびマロン酸ジエチル(85μL、0.56mmol)の溶液を滴下した。滴下終了後、0℃で2時間撹拌した。1M塩酸(0.5mL)を滴下し、ジエチルエーテル(2mL)で抽出し、抽出した有機層をさらに1M塩酸(0.5mL)で洗浄した。水層を合わせ、ジエチルエーテル(2mL)で抽出した。抽出した有機層を合わせ、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(1mL)で洗浄し、得られた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下、溶媒を留去した。得られた油状物に、内部標準として1,2,4,5−テトラメチルベンゼン(19.81mg)を加え、重クロロホルムに溶解し、H−NMRを測定し、定量したところ、式1−1の化合物の収率は、13%であり、式1−2の化合物の収率は、77%であった。
【0059】
式1−1の化合物
H−NMR:非特許文献 Liebigs Ann., 1995, 267-277 と一致した。
MS:found:561.2594 (M++Na+), calc:561.2617 (M++Na+)
IR:3436 cm-1 (OH)
【0060】
式1−2の化合物
H−NMR:非特許文献 Liebigs Ann., 1995, 267-277 と一致した。
MS:found:561.2602 (M++Na+), calc:561.2617 (M++Na+)
IR:3463 cm-1 (OH)
【0061】
(実施例2):窒素気流下、水素化ホウ素ナトリウム(14.3mg、0.37mmol)をジメトキシエタン(0.5mL)に懸濁させ、0℃に冷却し、1,2−ジメトキシエタン(0.5mL)中の(4R,5S,6R)−4,5,6−トリス(ベンジルオキシ)−3−(ベンジルオキシメチル)シクロヘキサ−2−エノン(100mg、0.19mmol)およびマロン酸ジエチル(85μL、0.56mmol)の溶液を滴下した。滴下終了後、0℃で2時間撹拌した。1M塩酸(0.5mL)を滴下し、ジエチルエーテル(2mL)で抽出し、抽出した有機層をさらに1M塩酸(0.5mL)で洗浄した。水層を合わせ、ジエチルエーテル(2mL)で抽出した。抽出した有機層を合わせ、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(1mL)で洗浄し、得られた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下溶媒を留去した。得られた油状物に、内部標準として1,2,4,5−テトラメチルベンゼン(22.46mg)を加え、重クロロホルムに溶解し、H−NMRを測定し、定量したところ、式1−1の化合物の収率は、28%であり、式1−2の化合物の収率は、15%であった。
【0062】
(実施例3):窒素気流下、水素化ホウ素ナトリウム(35.4mg、0.94mmol)およびピリジン(113μL、1.40mmol)を1,2−ジメトキシエタン(0.5mL)に懸濁させ、0℃に冷却した。1,2−ジメトキシエタン(0.5mL)中の(4R,5S,6R)−4,5,6−トリス(ベンジルオキシ)−3−(ベンジルオキシメチル)シクロヘキサ−2−エノン(100mg、0.19mmol)および2−(エトキシカルボニル)シクロヘキサノン(95.5mg、0.56mmol)の溶液を滴下した。滴下終了後、0℃で2時間撹拌した。1M塩酸(1mL)を滴下し、ジエチルエーテル(2mL)で抽出し、抽出した有機層をさらに1M塩酸(0.5mL)で洗浄した。水層を合わせ、ジエチルエーテル(2mL)で抽出した。抽出した有機層を合わせ、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(1mL)で洗浄し、得られた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下溶媒を留去した。得られた油状物に、内部標準として1,2,4,5−テトラメチルベンゼン(16.76mg)を加え、重クロロホルムに溶解し、H−NMRを測定し、定量したところ、式1−1の化合物の収率は、7%であり、式1−2の化合物の収率は、46%であった。
【0063】
(実施例4):窒素気流下、1,2−ジメトキシエタン(0.5mL)中の水素化ホウ素ナトリウム(14.2mg、0.37mmol)およびピリジン(45μL、0.56mmol)の溶液を0℃に冷却した。1,2−ジメトキシエタン(0.5mL)中の(4R,5S,6R)−4,5,6−トリス(ベンジルオキシ)−3−(ベンジルオキシメチル)シクロヘキサ−2−エノン(100mg、0.19mmol)およびマロン酸ジ−t−ブチルエステル(121.4mg、0.56mmol)の溶液を滴下した。滴下終了後、0℃で2時間撹拌した。1M塩酸(0.5mL)を滴下し、ジエチルエーテル(2mL)で抽出し、抽出した有機層をさらに1M塩酸(0.5mL)で洗浄した。水層を合わせ、ジエチルエーテル(2mL)で抽出した。抽出した有機層を合わせ、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(1mL)で洗浄し、得られた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下溶媒を留去した。得られた油状物に内部標準として、1,2,4,5−テトラメチルベンゼン(17.24mg)を加え、重クロロホルムに溶解し、H−NMRを測定し、定量したところ、式1−1の化合物の収率は、15%であり、式1−2の化合物の収率は、62%であった。
【0064】
(比較例1):窒素気流下、1,2−ジメトキシエタン(0.5mL)中の水素化ホウ素ナトリウム(14.3mg、0.37mmol)およびピリジン(45μL、0.56mmol)の溶液を0℃に冷却し、(4R,5S,6R)−4,5,6−トリス(ベンジルオキシ)−3−(ベンジルオキシメチル)シクロヘキサ−2−エノン(100mg、0.19mmol)の1,2−ジメトキシエタン(0.5mL)溶液を滴下した。滴下終了後、0℃で2時間撹拌した。1M塩酸(0.5mL)を滴下し、ジエチルエーテル(2mL)で抽出し、抽出した有機層をさらに1M塩酸(0.5mL)で洗浄した。水層を合わせ、ジエチルエーテル(2mL)で抽出した。抽出した有機層を合わせ、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(1mL)で洗浄し、得られた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下溶媒を留去した。得られた油状物に内部標準として、1,2,4,5−テトラメチルベンゼン(36.64mg)を加え、重クロロホルムに溶解し、H−NMRを測定し、定量したところ、式1−1の化合物の収率は、6%であり、式1−2の化合物の収率は、27%であった。また、芳香族化した式7の化合物の収率は、62%であった。
【0065】
(比較例2):窒素気流下、水素化ホウ素ナトリウム(14.3mg、0.37mmol)を1,2−ジメトキシエタン(0.5mL)に懸濁させ、0℃に冷却し、(4R,5S,6R)−4,5,6−トリス(ベンジルオキシ)−3−(ベンジルオキシメチル)シクロヘキサ−2−エノン(100mg、0.19mmol)の1,2−ジメトキシエタン(0.5mL)溶液を滴下した。滴下終了後、0℃で2時間撹拌した。1M塩酸(0.5mL)を滴下し、ジエチルエーテル(2mL)で抽出し、抽出した有機層をさらに1M塩酸(0.5mL)で洗浄した。水層を合わせ、ジエチルエーテル(2mL)で抽出した。抽出した有機層を合わせ、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(1mL)で洗浄し、得られた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下溶媒を留去した。得られた油状物に内部標準として、1,2,4,5−テトラメチルベンゼン(22.17mg)を加え、重クロロホルムに溶解し、H−NMRを測定し、定量したところ、式1−1の化合物の収率は、14%であり、式1−2の化合物の収率は、11%であった。
【0066】
(比較例3):窒素気流下、水素化アルミニウムリチウム(14.2mg、0.37mmol)を1,2−ジメトキシエタン(0.5mL)に懸濁させ、0℃に冷却し、(4R,5S,6R)−4,5,6−トリス(ベンジルオキシ)−3−(ベンジルオキシメチル)シクロヘキサ−2−エノン(100mg、0.19mmol)の1,2−ジメトキシエタン(0.5mL)溶液を滴下した。滴下終了後、0℃で2時間撹拌した。1M塩酸(0.5mL)を滴下し、ジエチルエーテル(2mL)で抽出し、抽出した有機層をさらに1M塩酸(0.5mL)で洗浄した。水層を合わせ、ジエチルエーテル(2mL)で抽出した。抽出した有機層を合わせ、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液1mLで洗浄し、得られた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下溶媒を留去した。得られた油状物に内部標準として、1,2,4,5−テトラメチルベンゼン(16.10mg)を加え、重クロロホルムに溶解し、H−NMRを測定し、定量したところ、式1−1の化合物の収率は、0%であり、式1−2の化合物の収率は、3%であった。
【0067】
(比較例4):窒素気流下、水素化ホウ素ナトリウム(14.3mg、0.37mmol)のエタノール(0.5mL)溶液を0℃に冷却し、(4R,5S,6R)−4,5,6−トリス(ベンジルオキシ)−3−(ベンジルオキシメチル)シクロヘキサ−2−エノン(100mg、0.19mmol)のエタノール(0.5mL)/1,2−ジメトキシエタン(0.1mL)溶液を滴下した。滴下終了後、0℃で2時間撹拌した。1M塩酸(0.5mL)を滴下し、ジエチルエーテル(2mL)で抽出し、抽出した有機層をさらに1M塩酸(0.5mL)で洗浄した。水層を合わせ、ジエチルエーテル(2mL)で抽出した。抽出した有機層を合わせ、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(1mL)で洗浄し、得られた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下溶媒を留去した。得られた油状物に、内部標準として、1,2,4,5−テトラメチルベンゼン(21.61mg)を加え、重クロロホルムに溶解し、H−NMRを測定し、定量したところ、式1−1の化合物の収率は、0%であり、式1−2の化合物の収率は、4%であった。
【0068】
(比較例5):窒素気流下、1,2−ジメトキシエタン(0.5mL)中の水素化ホウ素ナトリウム(14.2mg、0.37mmol)およびピリジン(45μL、0.56mmol)の溶液を、0℃に冷却し、1,2−ジメトキシエタン(0.5mL)中の(4R,5S,6R)−4,5,6−トリス(ベンジルオキシ)−3−(ベンジルオキシメチル)シクロヘキサ−2−エノン(100mg、0.19mmol)およびマロノニトリル(37.1mg、0.56mmol)の溶液を滴下した。滴下終了後0℃で2時間撹拌した。1M塩酸(0.5mL)を滴下し、ジエチルエーテル(2mL)で抽出し、抽出した有機層をさらに1M塩酸(0.5mL)で洗浄した。水層を合わせ、ジエチルエーテル(2mL)で抽出した。抽出した有機層を合わせ、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(1mL)で洗浄し、得られた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下溶媒を留去した。得られた油状物に内部標準として、1,2,4,5−テトラメチルベンゼン(11.78mg)を加え、重クロロホルムに溶解し、H−NMRで定量したところ、式1−1の化合物の収率は、6%であり、式1−2の化合物の収率は、12%であった。
【0069】
(式6−5の化合物から、式2−1の化合物の合成)
(1S)−(1(OH),2,4/1,3)−2,3,4−トリ−O−ベンジル−1−C−[(ベンジルオキシ)メチル]−5−オキソ−1,2,3,4−シクロヘキサンテトロール(式6−5、3.0g、5.43mmol)をピリジン(30 mL)に溶解し、室温にてメタンスルホニルクロリド(4.2mL、54.28mmol)を滴下した。滴下終了後、室温で24時間撹拌し、1M塩酸(30mL)を室温にて加えた後、酢酸エチル(30mL)で抽出した。抽出した有機層を1M塩酸(20mL×2)、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(20mL)で順次洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下溶媒を留去した。得られた油状物をカラムクロマトグラフィーにて精製して、(4R,5S,6R)−4,5,6−トリス(ベンジルオキシ)−3−(ベンジルオキシメチル)シクロヘキサ−2−エノン(式2−1)を油状物として2.64g得た(収率91%)。
【0070】
式2−1の化合物
H−NMR:非特許文献 J. Chem. Soc. PERKIN TRANS I, 1991, 3287-3290 と一致した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式1
【化15】


(式中、R、RおよびRは、同一または異なっていてもよく、ヒドロキシ基の保護基であり、Rが同一分子内に複数存在する場合は、各々のRは、同一または異なっていてもよく、nは、1〜4の整数である)で表わされる化合物の製造方法であって、式2
【化16】


(式中、R、R、Rおよびnは、上記の通りである)で表わされる化合物を式3
【化17】


(式中、RおよびRは、同一もしくは異なっていてもよく、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、またはエステル基である)
で表わされる化合物、または式4
【化18】


(式中、RおよびRは、同一もしくは異なっていてもよく、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、またはエステル基であり、Rは、置換されていてもよい直鎖もしくは分岐鎖状のアルキル基であるか、あるいはRは、RおよびRのいずれか一方と一緒になってそれらが結合する炭素原子とともに置換されていてもよいオキソシクロアルキル基または環状エステル基を形成し、RおよびRのうち他方は、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、またはエステル基である)
で表わされる化合物の存在下、水素化ホウ素ナトリウム試薬で還元することを特徴とする製造方法。
【請求項2】
式3の化合物が、マロン酸ジアルキルである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
マロン酸ジアルキルが、マロン酸ジエチルである、請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
さらに塩基の存在下、還元する、請求項1から3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
塩基が、ピリジンである、請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
水素化ホウ素ナトリウム試薬が、水素化ホウ素ナトリウムである、請求項1から5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
R、RおよびRが、ベンジルである、請求項1から6のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
nが、1または2である、請求項1から7のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項9】
nが、2である、請求項8に記載の製造方法。

【公開番号】特開2012−224558(P2012−224558A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−91150(P2011−91150)
【出願日】平成23年4月15日(2011.4.15)
【出願人】(000003311)中外製薬株式会社 (228)
【Fターム(参考)】