説明

環状ベンズアミジン誘導体の製造方法

本発明に係る含フッ素環状ベンズアミジン誘導体(A)またはその塩の製造方法は、特定の新規化合物と、アンモニアまたはイミドとを反応させる工程を含むことを特徴としている。
本発明に係るモルホリン置換フェナシル誘導体(B)またはその塩の製造方法は、特定の新規化合物とモルホリンとの反応、該生成物とハロゲン化試薬との反応、該生成物の脱ケタール反応を含むことを特徴としている。
本発明の環状ベンズアミジン誘導体(C)またはその塩の製造方法は、化合物(A)またはその塩と化合物(B)またはその塩とを、エーテル類または炭化水素類の存在下にカップリングすることを特徴としている。
本発明の環状ベンズアミジン誘導体(C)またはその塩の再結晶方法は、化合物(C)またはその塩を、アルコール類と水との混合溶媒またはエーテル類と水との混合溶媒に溶解させ、溶解後、さらに水を添加して、化合物(C)またはその塩の結晶を析出させることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、環状ベンズアミジン誘導体の製造方法、その再結晶方法、その中間体、および該中間体の製造方法に関する。
【背景技術】
抗血栓症に対するアプローチの一つとして、トロンビンへの酵素活性を阻害する方法が挙げられる。最近、トロンビンレセプターに拮抗作用を有する化合物が、トロンビンが関与する疾患の治療や予防において優れた作用効果を発揮するものと期待されており、例えば、血栓症、血管再狭窄、深部静脈血栓症、肺塞栓症、脳梗塞、心疾患、播種性血管内血液凝固症候群、高血圧、炎症性疾患、リウマチ、喘息、糸球体腎炎、骨粗鬆症、神経疾患、悪性腫瘍等の治療や予防に有効であると期待することができる。それゆえ、薬理活性、トロンビン受容体に対する受容体特異性、安全性、投与量、経口有用性等の点を満足させるトロンビン受容体拮抗剤が望まれていた。
本発明者らは、既に、2−イミノピロリジン誘導体およびその塩が、優れたトロンビン受容体阻害活性を有し、トロンビン受容体拮抗剤として有用であることを見出している(特許文献1:WO 02/085855)。特許文献1に開示されている2−イミノピロリジン誘導体およびその塩のうち、下記式(XIII)

で表される1−(3−tert−ブチル−4−メトキシ−5−モルホリノ−フェニル)−2−(5,6−ジエトキシ−7−フルオロ−1−イミノ−1,3−ジヒドロ−2−イソインドール−2−イル)−エタノン(以下「環状ベンズアミジン誘導体(C)」ということがある。)またはその塩に関して、その製造方法が特許文献1に記載されている。
すなわち、前記環状ベンズアミジン誘導体(C)の製造方法としては、例えば、下記式

で表される5,6−ジエトキシ−7−フルオロ−3H−イソインドール−1−イルアミン、または

で表される5,6−ジエトキシ−7−フルオロ−1,2−ジヒドロイソインドール−1−イルイミン(以下これらを「含フッ素環状ベンズアミジン誘導体(A)」ということがある。)と、下記式

で表される2−ブロモ−1−(3−tert−ブチル−4−メトキシ−5−モルホリノフェニル)エタノン(以下「モルホリン置換フェナシル誘導体(B)」ということがある。)とを、溶媒としてN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)の存在下にカップリングさせる方法が特許文献1に開示されている。
このうち、含フッ素環状ベンズアミジン誘導体(A)の製造方法としては、下記式

で表される4,5−ジエトキシ−3−フルオロフタロニトリルを酢酸エチル−エタノール−メタノールに溶解し、酸化白金を加える方法が記載されている。しかしながら、該方法は目的化合物の収率が低収率で副生成物も多く発生し、また生成物の安定性がよくないため反応後直ちに精製する必要があった。さらに、生成物が白金触媒と高い吸着性を有するため、触媒の濾過後も、白金触媒の残存による発火の危険を回避するための処理が必要であるなど、精製が煩雑になるという課題があった。また、特許文献1では、公知の化合物である1,2−ジエトキシ−3−フルオロベンゼンを前記含フッ素環状ベンズアミジン誘導体(A)を製造するための原料化合物として用いているが、通し収率が低いという課題もあった。
このため、通し収率が高く、反応操作が簡便で、工業規模での製造においても有利な含フッ素環状ベンズアミジン誘導体(A)またはその塩の製造方法が望まれていた。
また、特許文献1においては、原料化合物として2−tert−ブチルフェノールを用いる、前記モルホリン置換フェナシル誘導体(B)の製造方法が開示されている。しかし、この方法の場合、反応工程中でニトロ化合物を使用するため安全性確保のための操作が必要になる、2−ブロモエチルエーテルなどの高価な試薬を必要とする、通し収率が低い等の課題があった。
このため、反応操作が簡便で、安価で、より通し収率の高い、工業的により有利なモルホリン置換フェナシル誘導体(B)またはその塩の製造方法が望まれていた。
さらに、含フッ素環状ベンズアミジン誘導体(A)またはその塩とモルホリン置換フェナシル誘導体(B)とをカップリングさせて、環状ベンズアミジン誘導体(C)またはその塩を得る反応に関しても、精製工程が煩雑であるという課題があった。
このため前記化合物(A)および化合物(B)といった原料化合物の合成を含む、トータルでの工業的により有利な環状ベンズアミジン誘導体(C)またはその塩の製造方法が望まれていた。
【発明の開示】
すなわち本発明の終局の目的は、環状ベンズアミジン誘導体(C)またはその塩の有効な製造方法を提供することにある。このため、まず該環状ベンズアミジン誘導体(C)の合成原料となる含フッ素環状ベンズアミジン誘導体(A)またはその塩、モルホリン置換フェナシル誘導体(B)またはその塩について、それぞれの有効な製造方法を提供するとともに、その前駆体を提供することを目的とする。さらに、含フッ素環状ベンズアミジン誘導体(A)またはその塩とモルホリン置換フェナシル誘導体(B)またはその塩とのより有効なカップリング方法を提供するとともに、環状ベンズアミジン誘導体(C)またはその塩の有効な再結晶方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、下記式(I)

(式中、Xは、脱離基を示す。)で表される新規な化合物(I)を合成原料として用いることにより、含フッ素環状ベンズアミジン誘導体(A)またはその塩を簡便な操作で収率良く容易に合成することに成功した。
また、下記式(IX)

(式中、2つのRはそれぞれ炭素原子数1〜4のアルキル基を示し、2つのRは互いに結合して−(CH−(式中、nは2〜4の整数を示す。)で示される基により環を形成してもよく、Hal’’’はハロゲン原子を示す。)で表される新規な化合物を合成原料として用いることにより、モルホリン置換フェナシル誘導体(B)またはその塩を簡便な操作で容易に合成することに成功した。
更に、該含フッ素環状ベンズアミジン誘導体(A)またはその塩とモルホリン置換フェナシル誘導体(B)またはその塩とのカップリング反応において、反応溶媒としてエーテル類(好適にはテトラヒドロフラン(THF))または炭化水素類を用いると、目的とする環状ベンズアミジン誘導体(C)またはその塩を容易に結晶化でき、極めて簡便に目的化合物を精製できることを見出した。
またさらに、環状ベンズアミジン誘導体(C)を、アルコール類と水との混合溶媒またはエーテル類と水との混合溶媒を用いて溶解させ、水を添加して結晶を析出させると、該環状ベンズアミジン誘導体(C)を低温で容易に溶解させることができるとともに、容易に再結晶が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は下記のとおりである:
〔1〕 下記式(I)

(式中、Xは脱離基を示す。)で表される化合物と、アンモニアまたはイミドとを反応させる工程を含む、下記式(II)

(式中、Etはエチル基を示す。)で表される含フッ素環状ベンズアミジン誘導体(A)またはその塩の製造方法。
〔2〕 前記式(I)中Xが−OSO(式中、Rは、C1−6アルキル基、ハロゲン化C1−6アルキル基、C6−10アリール基またはハロゲン化C6−10アリール基を示す。)で表される化合物と、アンモニアとを反応させる工程を含むことを特徴とする〔1〕に記載の方法。
〔3〕 前記式(I)中Xが−OSO(式中、Rは、C1−6アルキル基、ハロゲン化C1−6アルキル基、C6−10アリール基またはハロゲン化C6−10アリール基を示す。)で表される化合物と、フタルイミドもしくはスクシンイミドまたはこれらの金属塩とを反応させる工程を含み、
該Xが−OSO(式中、Rは、前記と同じ。)で表される化合物と、前記フタルイミドもしくはスクシンイミドまたはこれらの金属塩とを反応させた後、得られる化合物をアミン誘導体へ変換する工程を含むことを特徴とする〔1〕に記載の方法。
〔4〕 前記式(I)中Xがハロゲン原子で表される化合物と、アンモニアとを反応させる工程を含むことを特徴とする〔1〕に記載の方法。
〔5〕 前記式(I)中Xがハロゲン原子で表される化合物と、フタルイミドもしくはスクシンイミドまたはこれらの金属塩とを反応させる工程を含み、
該Xがハロゲン原子で表される化合物と、前記フタルイミドもしくはスクシンイミドまたはこれらの金属塩とを反応させた後、得られる化合物をアミン誘導体へ変換する工程を含むことを特徴とする〔1〕に記載の方法。
〔6〕 式(I’)

(式中、Rは、C1−6アルキル基、ハロゲン化C1−6アルキル基、C6−10アリール基またはハロゲン化C6−10アリール基を示す。)で表される化合物が、下記式(III)

で表される化合物(式中、Etはエチル基を示す。)と、RSOYまたは(RSOO(式中、Rは、C1−6アルキル基、ハロゲン化C1−6アルキル基、C6−10アリール基またはハロゲン化C6−10アリール基を示し、Yはハロゲン原子を示す。)とを反応させて得られることを特徴とする〔2〕または〔3〕に記載の方法。
〔7〕 式(I’’)

(式中、Halは、ハロゲン原子を示す。)で表される化合物が、下記式(III)

で表される化合物(式中、Etはエチル基を示す。)と、ハロゲン化試薬とを反応させて得られることを特徴とする〔4〕または〔5〕に記載の方法。
〔8〕 式(I’’)

(式中、Halは、ハロゲン原子を示す。)で表される化合物が、下記式(IV)

で表される化合物(式中、Etはエチル基を示す。)と、ハロゲン化試薬とを反応させて得られることを特徴とする〔4〕または〔5〕に記載の方法。
〔9〕 前記式(III)で表される化合物が、下記(1)〜(3)を含む工程により得られることを特徴とする〔6〕または〔7〕に記載の方法:
(1)下記式(V)

(式中、Hal’はハロゲン原子を示す。)で表される化合物とシアン化試薬とを反応させ、下記式(VI)

で表される化合物を得る工程、
(2)該式(VI)で表される化合物からホルミル化反応を経て、下記式(VII)

で表される化合物を得る工程、
(3)該(VII)で表される化合物を還元して、下記式(III)

で表される化合物を得る工程(式中、Etはエチル基を示す。)。
〔10〕 式(I’’)

(式中、Halは、ハロゲン原子を示す。)で表される化合物が、下記(1’)〜(3’)を含む工程により得られることを特徴とする〔4〕または〔5〕に記載の方法:
(1’)下記式(V)

(式中、Hal’はハロゲン原子を示す。)で表される化合物とシアン化試薬とを反応させ、下記式(VI)

で表される化合物を得る工程、
(2’)該式(VI)で表される化合物からメチル化反応を経て、下記式(IV)

で表される化合物を得る工程、
(3’)該式(IV)で表される化合物とハロゲン化試薬とを反応させて、前記式(I’’)で表される化合物を得る工程(式中、Etはエチル基を示す。)。
〔11〕 下記(1’’)〜(3’’)の工程を含む、下記式(VIII)

(式中、Hal’’はハロゲン原子を示す。)で表されるモルホリン置換フェナシル誘導体(B)またはその塩の製造方法:
(1’’)下記式(IX)

(式中、2つのRはそれぞれC1−4アルキル基を示し、2つのRは互いに結合して−(CH−(式中、nは2〜4の整数を示す。)で示される基により環を形成してもよく、Hal’’’はハロゲン原子を示す。)で表される化合物と、モルホリンとを反応させて、下記式(X)

(式中、Rは式(IX)と同じ基を示す。)で表される化合物を得る工程、
(2’’)該式(X)で表される化合物とハロゲン化試薬とを反応させて、下記式(XI)

(式中、Rは式(IX)と同じ基を示し、Hal’’はハロゲン原子を示す。)で表される化合物を得る工程、
(3’’)該式(XI)で表される化合物に脱ケタール化反応を行って、前記式(VIII)で表されるモルホリン置換フェナシル誘導体(B)を得る工程(式中、Meはメチル基を示す。)。
〔12〕 下記式(IX)

(式中、2つのRはそれぞれC1−4アルキル基を示し、2つのRは互いに結合して−(CH−(式中、nは2〜4の整数を示し、Meはメチル基を示す。)で示される基により環を形成してもよく、Hal’’’はハロゲン原子を示す。)で表される化合物が、下記式(XII)

(式中、Hal’’’’はハロゲン原子を示す。)で表される化合物と、ROH、HC(OR(式中、RはC1−4アルキル基を示す。)またはHO−(CH−OH(式中、nは2〜4の整数を示す。)とを反応させてケタール化する工程および前記式(XII)で表される化合物の水酸基をメトキシ化する工程を経て得られることを特徴とする〔11〕に記載の方法。
〔13〕 下記式(II)

で表される含フッ素環状ベンズアミジン誘導体(A)またはその塩と、下記式(VIII)

(式中、Hal’’はハロゲン原子を示す。)で表されるモルホリン置換フェナシル誘導体(B)またはその塩とを、エーテル類および炭化水素類からなる群から選ばれる少なくとも1種の溶媒の存在下に反応させて、下記式(XIII)

で表される化合物またはその塩を得ることを特徴とする環状ベンズアミジン誘導体(C)の製造方法(式中、Meはメチル基を示し、Etはエチル基を示す。)。
〔14〕 前記溶媒がエーテル類であることを特徴とする〔13〕に記載の方法。
〔15〕 前記エーテル類がテトラヒドロフランであることを特徴とする〔14〕に記載の方法。
〔16〕 下記式(II)

で表される含フッ素環状ベンズアミジン誘導体(A)またはその塩と、下記式(VIII)

(式中、Hal’’はハロゲン原子を示す。)で表されるモルホリン置換フェナシル誘導体(B)またはその塩とを反応させて、下記式(XIII)

で表される化合物またはその塩を生成させる工程、および
前記式(XIII)で表される化合物またはその塩を、アルコール類と水との混合溶媒またはエーテル類と水との混合溶媒に溶解させ、溶解後、さらに水を添加して前記式(XIII)で表される化合物またはその塩の結晶を析出させる工程
(式中、Meはメチル基を示し、Etはエチル基を示す。)を含むことを特徴とする環状ベンズアミジン誘導体(C)の製造方法。
〔17〕 下記式(XIII)

(式中、Meはメチル基を示し、Etはエチル基を示す。)で表される化合物またはその塩を、アルコール類と水との混合溶媒またはエーテル類と水との混合溶媒に溶解させ、
溶解後、さらに水を添加して前記式(XIII)で表される化合物またはその塩の結晶を析出させることを特徴とする環状ベンズアミジン誘導体(C)の再結晶方法。
〔18〕 前記混合溶媒が、アルコール類と水との混合溶媒であることを特徴とする〔17〕に記載の再結晶方法。
〔19〕 下記式(XIV)

(式中、Rは、ハロゲン原子またはCNを示し、Rは、水素原子、メチル基、−CHO、−CHOH、−CHHal(式中、Halはハロゲン原子を示す。)、−CH−OSO(式中、Rは、C1−6アルキル基、ハロゲン化C1−6アルキル基、C6−10アリール基またはハロゲン化C6−10アリール基を示す。)、フタルイミドメチル基またはスクシンイミドメチル基を示し、Etはエチル基を示す。)
で表される化合物。
〔20〕 下記式(XV)

(式中、2つのRはそれぞれC1−4アルキル基を示し、2つのRは互いに結合して−(CH−(式中、nは2〜4の整数を示す。)で示される基により環を形成してもよく、Rは、水素原子またはハロゲン原子を示し、Rは、ハロゲン原子またはモルホリノ基を示し、Meはメチル基を示す。)で表される化合物またはその塩。
〔21〕 前記〔1〕〜〔10〕のいずれかに記載の方法により下記式(II)

で表される含フッ素環状ベンズアミジン誘導体(A)またはその塩を製造し、
さらに得られた含フッ素環状ベンズアミジン誘導体(A)またはその塩と、下記式(VIII)

(式中、Hal’’はハロゲン原子を示す。)で表されるモルホリン置換フェナシル誘導体(B)またはその塩とを反応させて、下記式(XIII)

で表される化合物またはその塩を得る、環状ベンズアミジン誘導体(C)の製造方法(式中、Etはエチル基、Meはメチル基を示す。)。
〔22〕 前記〔11〕または〔12〕に記載の方法により下記式(VIII)

(式中、Hal’’はハロゲン原子を示す。)で表されるモルホリン置換フェナシル誘導体(B)またはその塩を製造し、
さらに得られたモルホリン置換フェナシル誘導体(B)またはその塩と、下記式(II)

で表される含フッ素環状ベンズアミジン誘導体(A)またはその塩とを反応させて、下記式(XIII)

で表される化合物またはその塩を得る、環状ベンズアミジン誘導体(C)の製造方法(式中、Etはエチル基、Meはメチル基を示す。)。
〔23〕 前記〔1〕〜〔10〕のいずれかに記載の方法により下記式(II)

で表される含フッ素環状ベンズアミジン誘導体(A)またはその塩を製造し、
前記〔11〕または〔12〕に記載の方法により下記式(VIII)

(式中、Hal’’はハロゲン原子を示す。)で表されるモルホリン置換フェナシル誘導体(B)またはその塩を製造し、
さらに、該含フッ素環状ベンズアミジン誘導体(A)またはその塩と該モルホリン置換フェナシル誘導体(B)またはその塩とを反応させて、下記式(XIII)

で表される化合物またはその塩を得る、環状ベンズアミジン誘導体(C)の製造方法(式中、Etはエチル基、Meはメチル基を示す。)。
なお、本明細書において特に断りがない場合「Me」はメチル基を示し、「Et」はエチル基を示す。
本発明に係る環状ベンズアミジン誘導体(C)の製造方法は、含フッ素環状ベンズアミジン誘導体(A)とモルホリン置換フェナシル誘導体(B)とのカップリング反応による。以下、含フッ素環状ベンズアミジン誘導体(A)、モルホリン置換フェナシル誘導体(B)のそれぞれの製造方法およびこれらのカップリング反応について詳説する。
<含フッ素環状ベンズアミジン誘導体(A)>
含フッ素環状ベンズアミジン誘導体(A)の製造
本発明に係る下記式(II)

で表される含フッ素ベンズアミジン誘導体(A)(以下「化合物(II)」ということがある。)またはその塩の製造方法は、下記式(I)

で表される化合物(以下「化合物(I)」ということがある。)と、アンモニアまたはイミドとを反応させる工程を含む。
前記含フッ素ベンズアミジン誘導体(A)は、2つの構造を含む互変異性体として存在しうる。
この含フッ素ベンズアミジン誘導体(A)(化合物(II))は、その塩であってもよい。
本明細書において塩とは、本発明にかかる化合物と塩を形成し、且つ薬理学的に許容されるものであれば特に限定されない。このような塩としては、好ましくはハロゲン化水素酸塩(例えばフッ化水素酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩等)、無機酸塩(例えば硫酸塩、硝酸塩、過塩素酸塩、リン酸塩、炭酸塩、重炭酸塩等)有機カルボン酸塩(例えば酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、シュウ酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩等)、有機スルホン酸塩(例えばメタンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、カンファースルホン酸塩等)、アミノ酸塩(例えばアスパラギン酸塩、グルタミン酸塩等)等があげられ、より好ましくは塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩、メタンスルホン酸塩等である。
以下式(I)、(I’)、(I’’)、(III)〜(XVII)で表される化合物において、該化合物が塩を形成する場合、これらの塩としては、前記含フッ素ベンズアミジン誘導体(A)と同様の塩が挙げられる。
また、本明細書において「化合物またはその塩」と明示しない場合でも、式(I)、(I’)、(I’’)、(II)〜(XVII)で表される化合物、または化合物(I)、(I’)、(I’’)、(II)〜(XVII)は、該化合物の塩を含むことがある。
式(I)中、Xは、脱離基を示し、脱離基としては、例えば、−OSO、ハロゲン原子などが挙げられる。
は、C1−6アルキル基、ハロゲン化C1−6アルキル基、C6−10アリール基、またはハロゲン化C6−10アリール基を示す。
明細書中「C1−6アルキル基」とは、炭素原子数1〜6個の脂肪族炭化水素から任意の水素原子を1個除いて誘導される一価の基である、炭素原子数1〜6個の直鎖状または分枝鎖状のアルキル基を意味する。具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、2−メチルブチル基、ネオペンチル基、1−エチルプロピル基、ヘキシル基、4−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、1−メチルペンチル基、3,3−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、2−エチルブチル基等があげられる。これらのうち好ましくは炭素原子数1〜4のアルキル基(C1−4アルキル基)であり、さらに好ましくはメチル基、エチル基が挙げられる。
明細書中「C6−10アリール基」とは、炭素原子数6〜10の芳香族性の炭化水素環式基をいう。具体的には、例えば、フェニル基、トリル基、ナフチル基などが挙げられる。これらのうち、好ましくはトリル基、より好ましくはp−トリル基が挙げられる。
明細書中「ハロゲン化C1−6アルキル基」とは、前記定義「C1−6アルキル基」中の任意の水素原子を、ハロゲン原子で置換した基を意味する。具体的には、例えば、トリフルオロメチル基が挙げられる。
明細書中「ハロゲン化C6−10アリール基」とは、前記定義「C6−10アリール基」中の任意の水素原子を、ハロゲン原子で置換した基を意味する。具体的には、例えばp−ブロモフェニル基などが挙げられる。
明細書中、「ハロゲン原子」としては、臭素原子、塩素原子、ヨウ素原子が挙げられる。前記脱離基Xにおけるハロゲン原子としては臭素原子が好ましい。
このようなRを含む−SOとしては、より具体的には、例えば、メタンスルホニル基(メシル基またはMs基)、トリフルオロメタンスルホニル基(トリフィル基またはTf基)、p−トルエンスルホニル基(トシル基またはTs基)、p−ブロモベンゼンスルホニル基(ブロシル基またはBs基)などが挙げられる。これらのうち、好ましくはメタンスルホニル基またはp−トルエンスルホニル基、より好ましくはメタンスルホニル基が挙げられる。
「イミド」とは、アンモニアの水素2原子を、アシル基で置換した化合物をいい、「−CONHCO−」で表される構造を含む化合物である。好ましくは環状イミドが挙げられ、環状イミドのうち好ましくはフタルイミドまたはスクシンイミドが挙げられる。
「アンモニア」としては、反応条件により気体アンモニア、液体アンモニアまたはこれらを任意の濃度で水、アルコール等の有機溶媒に溶かしたアンモニア溶液などが挙げられる。これらのうち好ましくは気体アンモニア、液体アンモニアが挙げられる。以下、より詳細に説明する。
(Xが−OSOまたはハロゲン原子であり、アンモニアを用いる場合の(A)またはその塩の製法)
前記化合物(I)とアンモニア(NH)との反応による、含フッ素ベンズアミジン誘導体(A)(化合物(II))またはその塩の好ましい製造方法としては、より具体的には、例えば、
下記式(I’)で表される、化合物(I)のXが−OSOである化合物(以下「化合物(I’)」ということがある。)とNHとの反応;または
下記式(I’’)で表される、化合物(I)のXがハロゲン原子である化合物(以下「化合物(I’’)」ということがある。)とNHとの反応
による方法が挙げられる。式(I’)および式(I’’)中、Halはハロゲン原子であり、Rは前述の通りである。

この場合、通常、溶媒中、気体アンモニアまたは液体アンモニアの存在下に反応を行う。該溶媒としては、該反応を阻害しない溶媒であればよく特に限定されない。例えば、トルエン、テトラヒドロフラン(THF)、ジエチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、ジオキサン、メタノール、エタノール、塩化メチレン、1,2−ジメトキシエタンなどを好ましく用いることができ、より好ましくはトルエン、1,2−ジメトキシエタンである。これらの溶媒は1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
前記アンモニアは、前記化合物(I’)または前記化合物(I’’)に対して、好ましくは1当量以上、さらに好ましくは1当量以上10当量以下の範囲で用いる。
反応温度は、気体アンモニアを用いる場合は、好ましくは−20℃〜50℃、さらに好ましくは0℃〜30℃の範囲である。また液体アンモニアを用いる場合は、好ましくは−20℃〜30℃、さらに好ましくは0℃〜20℃の範囲である。
反応時間は、好ましくは10分〜24時間、さらに好ましくは30分〜12時間である。
(Xが−OSOまたはハロゲン原子であり、イミドを用いる場合の(A)またはその塩の製法)
前記化合物(I)とイミドとの反応による含フッ素ベンズアミジン誘導体(A)(化合物(II))またはその塩の好ましい製造方法としては、具体的には、例えば、前記化合物(I’)または化合物(I’’)と、イミドまたはその金属塩とを反応させる方法が挙げられる。
イミドとしてフタルイミドまたはスクシンイミドなどが挙げられるが、以下フタルイミドを用いる例を示す。
この反応方法による場合は、さらに前記化合物(I’)または化合物(I’’)と、フタルイミドまたはその金属塩とを反応させた後、得られる下記式(XVI)で表される3,4−ジエトキシ−2−フルオロ−6−(フタルイミドメチル)ベンゾニトリル(以下「化合物(XVI)」ということがある。)をアミン誘導体へ変換する工程を含む。HalおよびRは前記と同義である。

フタルイミドと、前記化合物(I’)または化合物(I’’)との反応は、通常、溶媒中、塩基の存在下に行う。
溶媒としては、該反応を阻害しない溶媒であればよい。例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド類、THF、ジエチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、ジオキサンなどのエーテル類を好ましく用いることができる。
これらの溶媒は1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができ、アミド類とエーテル類の混合系であることがより好ましい。混合系とすることにより、副生成物の生成を抑制するとともに、反応収率を向上させることができる。
塩基としては、例えば、カリウムtert−ブトキシド、ナトリウムtert−ブトキシドなどのアルカリ金属のtert−ブトキシド、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシドなどのアルカリ金属C1−4アルコキシドなどが挙げられる。これらのうちでは、好ましくはアルカリ金属のtert−ブトキシド、さらに好ましくはカリウムtert−ブトキシドを用いる。フタルイミドの金属塩としては、これらの塩基に由来する金属塩が挙げられる。
フタルイミドは、前記化合物(I’)または化合物(I’’)に対して、好ましくは1当量以上、さらに好ましくは1当量以上1.3当量以下の範囲で用いる。塩基は、前記化合物(I’)または化合物(I’’)に対して、好ましくは1当量以上、さらに好ましくは1当量以上1.5当量以下の範囲で用いる。
反応温度は、好ましくは0℃〜溶媒の沸点、さらに好ましくは室温〜溶媒の沸点の範囲である。反応時間は、好ましくは10分〜24時間、さらに好ましくは30分〜10時間である。
化合物(XVI)のアミン誘導体への変換は、具体的には、例えば、ヒドラジン分解することにより行うことができる。
該ヒドラジン分解は、通常、溶媒中、ヒドラジンまたはヒドラジン水和物と化合物(XVI)との反応により行い、必要に応じて酸処理を続けて行う。
溶媒としては、該反応を阻害しない溶媒であればよい。例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、tert−ブチルメチルエーテル、ジオキサンなどのエーテル類、メタノール、エタノールなどのアルコール類を好ましく用いることができる。
これらの溶媒は1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
前記酸処理には、塩酸、硫酸などを用いることができる。
ヒドラジンまたはヒドラジン水和物の使用量は、前記化合物(XVI)に対して、好ましくは1当量以上、さらに好ましくは1当量以上3当量以下の量である。
反応温度は、好ましくは−20℃〜溶媒の沸点、さらに好ましくは室温〜溶媒の沸点の範囲である。反応時間は、好ましくは10分〜24時間、さらに好ましくは30分〜10時間である。
このようにして、化合物(XVI)をアミン誘導体へ変換した後、必要に応じて水酸化ナトリウムなどの塩基で中和操作を行い、分子内で閉環させることにより含フッ素環状ベンズアミジン誘導体(A)(化合物(II))またはその塩を得ることができる。
化合物(I’)の製造
前記式(I’)

(式中、Rは、C1−6アルキル基、ハロゲン化C1−6アルキル基、C6−10アリール基またはハロゲン化C6−10アリール基を示す。)で表される化合物(I’)は、下記式(III)

で表される化合物(以下「化合物(III)」ということがある。)と、RSOYまたは(RSOOとを反応させて得ることができる。
式(I’)中、Rは、前記と同じである。また、化合物(I’)の原料化合物となるRSOYまたは(RSOO中のRは、該化合物(I’)のRと同じであり、Yはハロゲン原子である。ハロゲン原子としては、例えば、臭素原子、塩素原子、ヨウ素原子が挙げられる。これらのうちでは塩素原子が好ましい。
前記RSOYとしては、具体的には、例えば、塩化メタンスルホニル(MsCl)、塩化p−トルエンスルホニル(TsCl)、塩化トリフィル(TfCl)、塩化ブロシル(BsCl)などが挙げられる。
前記(RSOOとしては、具体的には、これらメシル基、トシル基、トリフィル基またはブロシル基を含有する、例えば、トリフルオロメタンスルホン酸無水物などのスルホン酸無水物が挙げられる。
前記化合物(III)と、前記RSOYまたは(RSOOとの反応は、通常、溶媒中、塩基の存在下に行う。
溶媒としては、該反応を阻害しないものであれば特に制限はない。例えば、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、塩化メチレンなどのハロゲン化炭化水素類などが挙げられ、好ましくは1,2−ジメトキシエタンである。
塩基としては、トリエチルアミン、ピリジン、ジイソプロピルエチルアミンなどを好ましく用いることができ、より好ましくはトリエチルアミンである。
SOYまたは(RSOOは、化合物(III)に対して、好ましくは1当量以上、さらに好ましくは1当量以上1.3当量以下の量である。
反応温度は、好ましくは−20℃〜40℃、さらに好ましくは0℃〜30℃の範囲である。反応時間は、好ましくは10分〜24時間、さらに好ましくは30分〜10時間である。
化合物(I’’)の製造
前記式(I’’)

で表される化合物(I’’)(式中、Halはハロゲン原子を示す。)は、下記式(III)

で表される化合物(III)と、ハロゲン化試薬とを反応させて得ることができる。
式(I’’)中、Halはハロゲン原子であり、例えば、臭素原子、塩素原子、ヨウ素原子が挙げられ、これらのうちでは臭素原子が好ましい。
前記ハロゲン化試薬としては、水酸基のハロゲン化に用いることのできる試薬であればよい。このようなハロゲン化試薬としては、例えば、N−クロロスクシンイミド、N−ブロモスクシンイミド、N−ヨードスクシンイミド、塩素、臭素、ヨウ素、塩化チオニル、臭化チオニル、塩化スルフリル、塩化オキザリル、オキシ塩化リン、オキシ臭化リン、五塩化リン、三臭化リン、塩化メタンスルホニル、塩化p−トルエンスルホニルなどが挙げられる。また、N−クロロスクシンイミド、N−ブロモスクシンイミド、N−ヨードスクシンイミド、塩素、臭素またはヨウ素などとトリフェニルホスフィンとの組み合わせなども用いることができる。これらのうち好ましくは三臭化リンである。
前記化合物(III)と、前記ハロゲン化試薬との反応は、通常、溶媒中で行う。
溶媒としては、該反応を阻害しないものであれば特に制限はない。例えば、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、ジオキサンなどのエーテル類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類などが挙げられ、好ましくは1,2−ジメトキシエタンである。
これらは1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
ハロゲン化試薬は、化合物(III)に対して、好ましくは1.2当量以上、さらに好ましくは1.5当量以上3当量以下の量である。
反応温度は、好ましくは−20℃〜40℃、さらに好ましくは0℃〜30℃の範囲である。反応時間は、好ましくは10分〜12時間、さらに好ましくは30分〜10時間である。
また、前記化合物(I’’)は、下記式(IV)

で表される化合物と、ハロゲン化試薬とを反応させて得られることもできる。
この場合のハロゲン化試薬としては、N−ブロモスクシンイミド(NBS)、N−ヨードスクシンイミド、N−クロロスクシンイミド、塩素、臭素、ヨウ素などが挙げられる。
前記化合物(IV)と、前記ハロゲン化試薬との反応は、通常、溶媒中で、ラジカル反応開始剤の存在下に行う。
溶媒としては、該反応を阻害しないものであれば特に制限はない。例えば、四塩化炭素、クロロベンゼン、α、α、α−トリフルオロトルエンなどのハロゲン類などが挙げられる。これらは1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
ラジカル反応開始剤としては、通常、用いられるラジカル反応開始剤を用いることができ、特に限定されない。例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)などのアゾ化合物、過酸化ベンゾイルなどの過酸化物などが挙げられ、好ましくは2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)である。
前記ハロゲン化試薬は、化合物(IV)に対して、好ましくは1当量以上、さらに好ましくは1当量以上1.5当量以下の量である。
反応温度は、好ましくは室温〜溶媒の沸点の範囲である。反応時間は、好ましくは10分〜24時間、さらに好ましくは30分〜10時間である。
化合物(III)の製造
前記式(III)で表される化合物は、下記(1)〜(3)を含む工程により得ることができる。
(1)下記式(V)

(式中、Hal’はハロゲン原子を示す。)で表される化合物(以下「化合物(V)」ということがある。)とシアン化試薬とを反応させ、下記式(VI)

で表される化合物(以下「化合物(VI)」ということがある。)を得る工程(工程(1))、
(2)該式(VI)で表される化合物からホルミル化反応を経て、下記式(VII)

で表される化合物(以下「化合物(VII)」ということがある。)を得る工程(工程(2))、および、
(3)該(VII)で表される化合物を還元して、下記式(III)

で表される化合物(化合物(III))を得る工程(工程(3))。
以下、各工程毎に説明する。
(工程(1):化合物(V)→化合物(VI))
前記化合物(VI)は、前記化合物(V)とシアン化試薬とを反応させて得ることができる。
化合物(V)中のハロゲン原子としては、臭素原子、塩素原子、ヨウ素原子が挙げられ、これらのうちでは臭素原子が好ましい。
前記シアン化試薬としては、例えば、シアン化銅(I)、シアン化カリウム、シアン化ナトリウム、シアン化亜鉛などが挙げられ、好ましくはシアン化銅(I)である。
前記化合物(V)と、前記シアン化試薬との反応は、通常、溶媒中で行う。
溶媒としては、該反応を阻害しないものであれば特に制限はないが、シアン化に要する反応温度が高い場合があるため、高沸点でかつシアン化試薬を十分に溶解しうる溶媒が好ましい。このような溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、1−メチル−2−ピロリジノンなどのアミド類、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンなどのウレア類などが挙げられる。これらのうちでは、DMFを好ましく用いることができる。
これらは1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
前記シアン化試薬は、化合物(V)に対して、好ましくは1〜5当量、さらに好ましくは1〜2当量の量である。
反応温度は、好ましくは100〜200℃程度の範囲である。反応時間は、好ましくは10分〜24時間、さらに好ましくは30分〜10時間である。
なお、化合物(III)合成の原料化合物である化合物(V)は、下記式(XVII)の化合物(以下「化合物(XVII)」ということがある。)をハロゲン化して得ることができる。

ハロゲン化は、溶媒中、ハロゲン化試薬と化合物(XVII)とを反応させて行うことができる。
ハロゲン化試薬としては、例えば、N−ブロモスクシンイミド(NBS)、N−ヨードスクシンイミド、N−クロロスクシンイミド、塩素、臭素、ヨウ素などが挙げられ、所望のハロゲン化物に応じて使用すればよい。好ましくは、N−ブロモスクシンイミドである。
溶媒としては、該反応を阻害しないものであれば特に制限はない。例えば、アセトニトリルなどのニトリル類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、tert−ブチルメチルエーテル、ジオキサンなどのエーテル類、酢酸エチル、酢酸メチルなどのエステル類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、1−メチル−2−ピロリジノンなどのアミド類、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンなどを好ましく用いることができ、より好ましくはアセトニトリルである。
これらは1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
前記ハロゲン化試薬は、化合物(XVII)に対して、好ましくは0.95〜1.2当量の範囲で用いる。
反応温度は、例えば、好ましくは−10℃〜室温の範囲である。反応時間は、好ましくは10分〜24時間程度である。
なお、化合物(XVII)は、例えば市販の1,2−ジヒドロキシ−3−フルオロベンゼンをジエチルエーテル化することにより入手できる。
(工程(2):化合物(VI)→化合物(VII))
前記化合物(VII)は、前記化合物(VI)をホルミル化することにより得ることができる。
ホルミル化方法としては、例えば、溶媒中、化合物(VI)を塩基でアニオン化した後ホルミル化試薬を反応させる方法、またはビルスマイヤー試薬を用いる方法などが挙げられる。
以下、化合物(VI)を塩基でアニオン化してホルミル化試薬と反応させる方法について説明する。
溶媒中、化合物(VII)を塩基でアニオン化した後、ホルミル化試薬を反応させる方法の場合、溶媒としては、反応を阻害しないものであればよい。例えば、n−ヘキサン、n−ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭化水素類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類を好ましく用いることができ、より好ましくはn−ヘプタン、テトラヒドロフランである。これらの溶媒は1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
化合物(VI)を塩基でアニオン化する場合、例えば、溶媒としてn−ヘプタンを含有させると、化合物(VI)の6位がリチオ化された化合物が反応系内で結晶として析出し、活性種をより安定に存在させることができる。
塩基としては、アルキルアルカリ金属、金属アミドなどを好ましく用いることができる。アルキルアルカリ金属としては、例えば、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、フェニルリチウム、メチルリチウムなどが挙げられる。金属アミドとしては、リチウムジイソプロピルアミド、リチウム2,2,6,6−テトラメチルピペリジド、リチウムヘキサメチルジシラジド、ナトリウムヘキサメチルジシラジドなどが挙げられる。これらのうちでは金属アミドを好ましく用いることができ、より好ましくはリチウム2,2,6,6−テトラメチルピペリジドである。
ホルミル化試薬としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N−ホルミルモルホリンなどが挙げられる。
前記塩基は、化合物(VI)に対して、好ましくは1当量以上、さらに好ましくは1当量以上2当量以下の量である。
前記ホルミル化試薬は、化合物(VI)に対して、好ましくは1当量以上、さらに好ましくは1当量以上3当量以下の量である。
金属アミドは、反応容器内で所望に応じて2,2,6,6−テトラメチルピペリジン(TMP)などのアミン試薬にn−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、メチルリチウム、フェニルリチウムなどのアルキルアルカリ金属を作用することによっても調製することもできる。この場合、好ましくは2,2,6,6−テトラメチルピペリジンとn−ブチルリチウムとの組み合わせである。
2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどのアミン試薬を用いる場合の使用量は、アルキルアルカリ金属に対して好ましくは1〜2当量以下、さらに好ましくは1.01〜1.5当量の範囲である。TMPなどのアミン試薬を塩基に対して小過剰の量添加することにより、ホルミル化を収率良く行うことができる。
反応温度は、アニオン化段階は、用いる塩基の種類により異なり限定されない。例えば、好ましくは−100℃〜室温の範囲である。アニオン化の反応時間は、好ましくは10分〜12時間である。
ホルミル化段階は、好ましくは−100℃〜室温の範囲である。ホルミル化の反応時間は、好ましくは10分〜24時間、さらに好ましくは30分〜10時間である。
ホルミル化反応後、酢酸、塩酸、硫酸などの酸でクエンチする。これらのうちでは、酢酸を用いることが好ましい。酢酸を用いることにより、化合物(VII)を結晶として析出させて得ることができるとともに、不純物を低減させることができる。
(工程(3):化合物(VII)→化合物(III))
前記化合物(III)は、溶媒中、前記化合物(VII)を還元して得ることができる。還元には各種の還元剤を用いることができる。
還元剤としては、例えば、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素リチウム、水素化シアノホウ素ナトリウムまたは水素化リチウムアルミニウム、あるいは水素化ホウ素ナトリウムと酢酸の組み合わせなどが挙げられる。これらのうちでは、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウムを好ましく用いることができる。
溶媒は、該反応を阻害しないものであればよい。還元剤の種類により異なるが、例えば、酢酸エチル、酢酸メチルなどのエステル類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類、エタノールなどのアルコール類を好ましく用いることができ、より好ましくはテトラヒドロフランである。
これらの溶媒は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
前記還元剤は、化合物(VII)に対して、好ましくは1当量以上、さらに好ましくは1当量以上3当量以下の量である。
反応温度は、例えば、好ましくは0℃〜100℃の範囲である。反応時間は、好ましくは10分〜24時間、さらに好ましくは30分〜10時間である。
化合物(I’’)の製造
下記式(I’’)で表される化合物は、下記(1’)〜(3’)を含む工程により得ることができる。

式(I’’)中、Halはハロゲン原子を示す。ハロゲン原子としては、臭素原子、塩素原子、ヨウ素原子が挙げられ、これらのうち臭素原子が好ましい。
(1’)下記式(V)

(式中、Hal’はハロゲン原子を示す。)で表される化合物(V)とシアン化試薬とを反応させ、下記式(VI)

で表される化合物(VI)を得る工程(工程(1’))、
(2’)該式(VI)で表される化合物からメチル化反応を経て、下記式(IV)

で表される化合物(以下「化合物(IV)」ということがある。)を得る工程(工程(2’))、
(3’)該式(IV)で表される化合物とハロゲン化試薬とを反応させて、前記式(I’’)で表される化合物を得る工程(工程(3’))。
以下各工程について詳説する。
(工程(1’):化合物(V)→化合物(VI))
該工程(1’)は、前記工程(1)と同様である。
(工程(2’):化合物(VI)→化合物(IV))
化合物(IV)は、化合物(VI)をメチル化して得ることができる。メチル化の方法は特に限定されず、例えば、溶媒中、塩基の存在下に、化合物(VI)をメチル化試薬と反応させる方法が挙げられる。
メチル化試薬としては、ヨウ化メチルなどのハロゲン化メチル、ジメチル硫酸、メタンスルホン酸メチルなどが挙げられ、好ましくはヨウ化メチルが挙げられる。
塩基としては、アルキルアルカリ金属、金属アミドなどを好ましく用いることができる。このうちアルキルアルカリ金属としては、例えば、メチルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、フェニルリチウムなどが挙げられ、金属アミドとしては、リチウムジイソプロピルアミド、リチウム2,2,6,6−テトラメチルピペリジド、リチウムヘキサメチルジシラジド、ナトリウムヘキサメチルジシラジドなどが挙げられる。これらのうちでは金属アミドを好ましく用いることができ、より好ましくはリチウム2,2,6,6−テトラメチルピペリジドである。
金属アミドは、反応容器内で所望に応じて2,2,6,6−テトラメチルピペリジン(TMP)などのアミン試薬にメチルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、フェニルリチウムなどのアルキルアルカリ金属を作用することによっても調製することもできる。好ましくは2,2,6,6−テトラメチルピペリジンとメチルリチウムとの組み合わせである。
前記溶媒としては、反応を阻害しないものであればよい。例えば、n−ヘキサン、n−ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭化水素類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類を好ましく用いることができ、好ましくはテトラヒドロフランなどのエーテル類である。これらの溶媒は1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
前記塩基は、化合物(VI)に対して、好ましくは1当量以上、さらに好ましくは1〜1.5当量の量である。
前記メチル化試薬は、化合物(VI)に対して、好ましくは1当量以上、さらに好ましくは1当量以上2当量以下の量である。
また、TMPなどのアミン試薬を用いる場合の使用量は、塩基と同じ当量であることが好ましい。
反応温度は、アニオン化段階は、用いる塩基の種類により異なり限定されないが、例えば、好ましくは−100℃〜室温の範囲である。アニオン化の反応時間は、好ましくは10分〜12時間である。
メチル化段階は、好ましくは−100℃〜室温の範囲である。メチル化の反応時間は、好ましくは10分〜12時間、さらに好ましくは30分〜10時間である。
(工程(3’):化合物(IV)→化合物(I’’))
該工程(3’)は、前記と同様である。
このような本発明に係る含フッ素ベンズアミジン誘導体(A)(化合物(II))またはその塩の製造方法は、各工程の収率がよく、再現性にも優れている。また、各工程において得られる生成物のカラムクロマトグラフィー等による精製を必要としないので、工業的に極めて有用である。さらに、例えば、前記特許文献1においては、オルト−ジシアノ中間体を酸化白金を触媒として用いて接触還元することにより、含フッ素ベンズアミジン誘導体(A)(化合物(II))を得ているが、本発明に係る方法では該触媒を用いておらず、該触媒の精製が不要である他、精製後の該触媒からの発火などの心配がなく安全性にも優れている。このため、環状ベンズアミジン誘導体(C)(「化合物(XIII)」の製造に極めて有用である。
化合物(XIV)
本発明に係る化合物は、下記式(XIV)

(式中、Rは、ハロゲン原子またはCNを示し、Rは、水素原子、メチル基、−CHO、−CHOH、−CHHal(式中、Halはハロゲン原子を示す。)、−CH−OSO(式中、Rは、C1−6アルキル基、ハロゲン化C1−6アルキル基、C6−10アリール基またはハロゲン化C6−10アリール基を示す。)、フタルイミドメチル基またはスクシンイミドメチル基を示す。)で表される。(前記式(XIV)で表される化合物を「化合物(XIV)」ということがある。)
化合物(XIV)としては、具体的には、例えば、以下の化合物が挙げられ、これらはいずれも新規化合物である。
(化合物(I’))

式(I’)中、Rは、前記と同義である。
(化合物(I’’))

式(I’’)中、Halは前記と同義である。
(化合物(III))(3,4−ジエトキシ−2−フルオロ−6−ヒドロキシメチルベンゾニトリル)

(化合物(IV))(3,4−ジエトキシ−2−フルオロ−6−メチルベンゾニトリル)

(化合物(V))

式(V)中、Halはハロゲン原子を示し、ハロゲン原子としては、臭素原子、塩素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
(化合物(VI))(3,4−ジエトキシ−2−フルオロベンゾニトリル)

(化合物(VII))(3,4−ジエトキシ−2−フルオロ−6−ホルミルベンゾニトリル)

(化合物(XVI))(3,4−ジエトキシ−2−フルオロ−6−(フタルイミドメチル)ベンゾニトリル)

(化合物(XVIII))(3,4−ジエトキシ−2−フルオロ−6−(スクシンイミドメチル)ベンゾニトリル)

これらの化合物は、上記含フッ素環状ベンズアミジン誘導体(A)またはその塩を製造する際の中間体となりうる。
<モルホリン置換フェナシル誘導体(B)>
モルホリン置換フェナシル誘導体(B)の製造
本発明に係る下記式(VIII)

で表される化合物(以下「モルホリン置換フェナシル誘導体(B)」または化合物(VIII)ということがある。)またはその塩の製造方法は、下記(1’’)〜(3’’)の工程を含む。式(VIII)中、Hal’’はハロゲン原子を示す。
(1’’)下記式(IX)

〔式中、2つのRは互いに独立してC1−4アルキル基(炭素原子数1〜4のアルキル基)を示し、2つのRは互いに結合して−(CH−(式中、nは2〜4の整数を示す。)で示される基により環を形成してもよく、Hal’’’はハロゲン原子を示す。〕で表される化合物(以下「化合物(IX)」ということがある。)と、モルホリンとを反応させて、下記式(X)

(式中、Rは式(IX)と同じ基を示す。)で表される化合物(以下「化合物(X)」ということがある。)を得る工程(工程(1’’))、
(2’’)該式(X)で表される化合物とハロゲン化試薬とを反応させて、下記式(XI)

(式中、Rは式(IX)と同じ基を示し、Hal’’はハロゲン原子を示す。)で表される化合物(以下「化合物(XI)」ということがある。)を得る工程(工程(2’’))、
(3’’)該式(XI)で表される化合物に脱ケタール化反応を行って、前記式(VIII)で表されるモルホリン置換フェナシル誘導体(B)を得る工程(工程(3’’))。
以下、各工程毎に説明する。
(工程(1’’):化合物(IX)→化合物(X))
前記化合物(X)は、通常、溶媒中、塩基の存在下、前記化合物(IX)とモルホリンとを反応させて得ることができる。この場合、触媒を添加することができる。
式(IX)中、Hal’’’のハロゲン原子としては、臭素原子、塩素原子、ヨウ素原子が挙げられ、これらのうちでは臭素原子が好ましい。
式(IX)中、RのC1−4アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などが挙げられる。これらのうちでは、メチル基が好ましい。また、2つのRが互いに結合することにより−(CH−(式中、nは2〜4の整数を示す。)で示される基により環状ケタールを形成してもよく、この場合、nとしては2または3が好ましい。
塩基としては、カリウムtert−ブトキシド、ナトリウムtert−ブトキシドなどのアルカリ金属のtert−ブトキシド;炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸セシウム、トリエチルアミンなどが挙げられる。これらのうちでは、ナトリウムtert−ブトキシドを用いることが好ましい。
溶媒としては、該反応を阻害しないものであれば特に制限はない。例えば、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類などが挙げられる。これらのうちでは、1,2−ジメトキシエタンなどのエーテル類を用いることが望ましく、1,2−ジメトキシエタンがより好ましい。1,2−ジメトキシエタンを用いると反応速度が上昇し、反応収率を上げることができる。
これらの溶媒は、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
前記触媒としては、使用する溶媒等により異なり、また反応を阻害しない限りにおいて特に限定されない。このような触媒としては、酢酸パラジウム、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(O)、塩化パラジウム(II)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(O)、ジクロロ[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィン)−フェロセン]パラジウム(O)などがあげられる。さらに必要に応じて2、2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1、1’−ビナフチル(BINAP)、トリフェニルホスフィン、トリ−tert−ブチルホスフィンなどの金属配位子を用いてもよい。好ましくは酢酸パラジウムと2、2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1、1’−ビナフチル(BINAP)の組み合わせである。BINAPはラセミ体、キラル体のいずれでもよい。
前記モルホリンの使用量は、化合物(IX)に対して、好ましくは1〜1.5当量の範囲である。
塩基の使用量は、化合物(IX)に対して、好ましくは1〜2当量の範囲である。
前記触媒として酢酸パラジウムを用いる場合、使用量は好ましくは1mol%以上、さらに好ましくは1〜10mol%である。
前記金属配位子としてBINAPを用いる場合、使用量は好ましくは1.5mol%以上、さらに好ましくは1.5〜15mol%である。1.5mol%未満であると、触媒を添加した効果が得られない場合がある。
反応温度は、75〜90℃程度の範囲にあることが望ましい。反応時間は、好ましくは10分〜24時間である。
(工程(2’’):化合物(X)→化合物(XI))
前記化合物(XI)は、前記化合物(X)を溶媒中ハロゲン化試薬と反応させて得ることができる。
式(X)中、Rは、前記式(IX)のRと同じである。
式(XI)中、ハロゲン原子としては、前記式(IX)中のハロゲン原子と同様のものが挙げられる。
ハロゲン化試薬としては、フェニルトリメチルアンモニウムトリブロミド、ピリジニウムハイドロゲントリブロミドなどが挙げられ、このうちでは、フェニルトリメチルアンモニウムトリブロミドを好ましく用いることができる。
溶媒としては、該反応を阻害しないもので任意の溶媒を用いることができる。例えば、1,2−ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド類、アセトニトリルなどのニトリル類、メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール類を好ましく用いることができる。これらのうちでは、エーテル類が好ましく、テトラヒドロフランがより好ましい。
溶媒としてテトラヒドロフランを用いる場合、例えば、ハロゲン化試薬として前記フェニルトリメチルアンモニウムトリブロミドを用いる場合、反応後に生成する4級塩(PhMe3Br)のテトラヒドロフランへの溶解性が低いため、反応系外に析出させることができ、濾過などにより容易に除去することができる。
これらの溶媒は1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
前記ハロゲン化試薬は、化合物(X)に対して、好ましくは1〜1.9当量、さらに好ましくは1〜1.2当量の量である。
反応温度は、例えば、好ましくは0℃〜室温の範囲である。
反応時間は、好ましくは10分〜24時間程度である。
(工程(3’’):化合物(XI)→化合物(VIII))
前記のような反応方法により得られる前記化合物(XI)を抽出後または前記反応後の溶液にチオ硫酸ナトリウム水溶液などを加え、脱ケタール化することにより化合物(VIII)を得ることができる。また、所望に応じて、塩酸、硫酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、p−トルエンスルホン酸等の酸、ピリジニウム p−トルエンスルホネートまたはトリメチルシリルヨージドで処理することによっても脱保護することができる。
化合物(IX)の製造
前記式(IX)で表される化合物(IX)は、例えば、下記式(XII)

(式中、Hal’’’’はハロゲン原子を示す。)で表される化合物(以下「化合物(XII)」ということがある。)と、ROH、HC(ORまたはHO−(CH−OH(式中、Rは前記と同義であり、nは2〜4の整数を示す。)とを反応させることにより、カルボニル基をケタール化する工程および水酸基をメトキシ化する工程を経て得られる。
前記Hal’’’のハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。これらのうちでは臭素原子が好ましい。
OHで表される化合物として、より具体的には、例えば、メタノール、エタノールなどが挙げられる。
HC(ORとして、より具体的には、例えば、オルトギ酸トリメチル、オルトギ酸トリエチルなどが挙げられる。
水酸基をメトキシ化する工程で用いるメチル化試薬としては、ヨウ化メチルなどが挙げられる。
カルボニル基のケタール化は、溶媒中、前記ROH、HC(ORまたはHO−(CH−OH(式中、nは2〜4の整数を示す。)を反応させて行う。この場合、触媒を添加することもできる。
触媒としては、例えば、(±)−10−カンファースルホン酸、塩酸、硫酸、p−トルエンスルホン酸などが挙げられ、好ましくは(±)−10−カンファースルホン酸またはp−トルエンスルホン酸である。
この場合の溶媒としては、該反応を阻害しないもので任意の溶媒を用いることができる。例えば、メタノールなどのアルコール類、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、塩化メチレン、ニトロメタン等を用いることができる。
これら溶媒は1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
なお、前記化合物(IX)において、2つのRが互いに結合した環状ケタールとする場合は、例えば、p−トルエンスルホン酸、エチレングリコールなどを添加してケタールを形成させることができる。
前記ROHまたはHC(ORは、前記化合物(XII)に対して好ましくは3当量以上、さらに好ましくは3〜10当量程度用いる。
触媒は、化合物(XII)に対して、好ましくは1〜4mol%の範囲で用いる。
ケタール化における反応温度は、例えば、好ましくは0℃〜60℃の範囲である。
反応時間は、好ましくは10分〜24時間程度である。
前記水酸基のメトキシ化反応は、溶媒中、ヨウ化メチルなどのハロゲン化メチルを添加して行うことができる。また、炭酸カリウム、炭酸セシウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムtert−ブトキシド、ナトリウムtert−ブトキシド、水素化ナトリウムなどを添加することが好ましく、より好ましくは炭酸カリウムである。
メトキシ化における溶媒としては、該反応を阻害しないもので任意の溶媒を用いることができる。例えば、テトラヒドロフランなどのエーテル類、N,N−ジメチルホルムアミドなどのアミド類、アセトンなどのケトン類、アセトニトリルなどのニトリル類、塩化メチレンなどを用いることができる。
これら溶媒は1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
前記ハロゲン化メチルは、前記化合物(XII)に対して好ましくは1当量以上、さらに好ましくは1〜3当量程度用いる。
前記炭酸カリウムを用いる場合は、前記化合物(XII)に対して好ましくは0.5当量以上、さらに好ましくは1〜3当量程度用いる。
メトキシ化における反応温度は、特に限定されず、例えば、好ましくは0℃〜100℃の範囲である。反応時間は、好ましくは10分〜12時間程度である。
前記ケタール化の工程と前記メトキシ化の工程とは、それぞれの工程における生成物を単離精製し、それぞれ独立して行うことができ、その順番も限定されない。また、ケタール化を行った後、生成物を単離することなく連続してメトキシ化を行うか、あるいはメトキシ化を行った後、生成物を単離することなく連続してケタール化を行うこともできる。
化合物(XII)の製造
前記化合物(XII)は、例えば、2−tert−ブチルフェノールを塩化アセチルと反応させて1−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)エタノンを得る工程(工程(i))、得られた該化合物をハロゲン化する工程(工程(ii))を経て得ることができる。
前記2−tert−ブチルフェノールは市販のものを用いることができる。
前記1−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)エタノンは、例えば、溶媒中、ルイス酸の存在下に、2−tert−ブチルフェノールと塩化アセチルとを反応させて得ることができる。
溶媒としては、該反応を阻害しないもので任意の溶媒を用いることができる。例えば、ベンゼン、トルエン、ニトロベンゼンなどの芳香族炭化水素類、四塩化炭素など用いることが好ましい。これらのうちではトルエンを用いることがより好ましい。
これら溶媒は1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
ルイス酸としては、塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、四塩化錫、三フッ化ホウ素などを用いることができる。これらのうちでは塩化アルミニウムを好ましく用いることができる。
前記塩化アセチルは、原料の2−tert−ブチルフェノールに対して好ましくは1当量以上、さらに好ましくは1〜3当量程度用いる。
前記ルイス酸は、原料の2−tert−ブチルフェノールに対して、好ましくは1当量以上、さらに好ましくは1〜3当量程度用いる。
反応時間は、好ましくは10分〜24時間程度である。
反応温度は、好ましくは−20℃以下、さらに好ましくは−25℃以下である。
この反応工程(i)では溶液を高希釈とすることが望ましく、具体的には、2−tert−ブチルフェノールに対して、好ましくは10倍〜50倍の質量の溶媒を用いる。
このような低温かつ高希釈な状態で反応を行うことにより、原料の分解を防ぎつつ、高い収率で1−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)エタノンを得ることができる。
また該1−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)エタノンは、反応終了後、反応液中に水を添加することにより、結晶として得ることができる。
1−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)エタノンをハロゲン化する工程(ii)では、溶媒中、該化合物にハロゲン化試薬を反応させることにより、前記化合物(XII)へ導くことができる。
ハロゲン化試薬としては、目的とするハロゲンの種類により異なるが、例えば、臭素化の場合はN−ブロモスクシンイミド(NBS)、臭素などが挙げられ、塩素化の場合はN−クロロスクシンイミド(NCS)、塩素などが挙げられ、ヨウ素化の場合はN−ヨードスクシンイミド(NIS)、ヨウ素、N−クロロスクシンイミド(NCS)とヨウ化ナトリウムの組み合わせなどが挙げられる。
溶媒としては、該反応を阻害しない溶媒であればよい。例えば、THFなどのエーテル類、酢酸エチルなどのエステル類、N,N−ジメチルホルムアミド、1−メチル−2−ピロリジノン、N,N−ジメチルイミダゾリジノンなどのアミド類などを好ましく用いることができる。
これら溶媒は1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
前記ハロゲン化試薬は、前記1−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)エタノンに対して、好ましくは1当量以上、さらに好ましくは1〜3当量程度用いる。
反応温度は、好ましくは10℃以下、さらに好ましくは−25℃〜5℃の範囲である。このような範囲で反応行うことにより、不純物の生成を抑制することができる。
反応時間は、好ましくは10分〜24時間程度である。
化合物(XV)
本発明に係る化合物は、下記式(XV)

(式中、2つのRはそれぞれC1−4アルキル基を示し、2つのRは互いに結合して−(CH−(式中、nは2〜4の整数を示す。)で示される基により環を形成してもよく、Rは、水素原子またはハロゲン原子を示し、Rは、ハロゲン原子またはモルホリノ基を示す。)で表される化合物またはその塩である。
これらの化合物としては、具体的には、例えば、以下の化合物が挙げられ、これらはいずれも新規化合物である。
(化合物IX)

式(IX)中、2つのRはそれぞれC1−4アルキル基を示し、2つのRは互いに結合して−(CH−(式中、nは2〜4の整数を示す。)で示される基により環を形成してもよい。
1−4アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などが挙げられる。これらのうちでは、メチル基が好ましい。また、2つのRが互いに結合することにより環状ケタールを形成するが、この場合nとしては2または3が好ましく、nが2の場合がより好ましい。
Hal’’’はハロゲン原子を示し、ハロゲン原子としては塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
(化合物X)

式(X)中、Rは、式(IX)中のRと同意義である。
(化合物XI)

式(XI)中、Rは、式(IX)中のRと同意義である。Hal’’はハロゲン原子を示し、例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。これらのうちでは、臭素原子が好ましい。
これらの化合物は、上記モルホリン置換フェナシル誘導体(B)を製造する際の中間体となりうる。
<環状ベンズアミジン誘導体(C)>
本発明に係る下記式(XIII)

で表される環状ベンズアミジン誘導体(C)(「化合物(XIII)」ということがある。)またはその塩の製造方法は、下記式(II)

で表される含フッ素環状ベンズアミジン誘導体(A)と、下記式(VIII)

(式中、Hal’’はハロゲン原子を示す。)で表されるモルホリン置換フェナシル誘導体(B)とを、溶媒として炭化水素類またはエーテル類を用いて反応させることを特徴としている。
反応は、通常、溶媒中で、これらの化合物(A)および(B)を混合して撹拌するだけでよく、また、後処理、単離精製操作を行い目的とする環状ベンズアミジン誘導体(C)を遊離ベンズアミジン体またはその塩として単離精製することもできる。
前記溶媒として用いるエーテル類としては、THFなどが挙げられる。
溶媒として用いられる炭化水素類としては、n−ヘキサン、n−ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどが挙げられ、これらのうち好ましくはn−ヘキサン、n−ヘプタンなどの脂肪族炭化水素類が挙げられる。
これらの溶媒は、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
溶媒に前記エーテル類あるいは前記炭化水素類を用いて反応を行うと、反応系から環状ベンズアミジン誘導体(C)の塩が結晶として析出してくる。このため、目的とする環状ベンズアミジン誘導体(C)の塩の単離精製が極めて簡単で、工業的に優れる。
これらの溶媒のうちでは、エーテル類がより好ましく、THFを用いることが特に好ましい。溶媒としてTHFなどのエーテル類を用いる場合、エーテル類単独で用いることもできるが、エーテル類以外の溶媒を貧溶媒として混合することもできる。
貧溶媒としては、n−ヘキサン、n−ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭化水素類が挙げられる。これらのうちではn−ヘプタンを好ましく用いることができる。後処理としてこのような貧溶媒を反応終了後に添加することにより、環状ベンズアミジン誘導体(C)(化合物(XIII))の塩の収率を向上させることができる。
溶媒としてエーテル類を用い、さらに貧溶媒を混合する場合、溶媒中のエーテル類の含有割合は、好ましくは50質量%以上100質量%未満である。
エーテル類で反応させた後に、貧溶媒を添加し、エーテル類の含有割合が上記範囲にあると結晶の析出をより効率よく行うことができる。
反応温度は好ましくは0℃〜室温程度、反応時間は好ましくは10分〜50時間程度であればよい。
環状ベンズアミジン誘導体(C)の原料となる、含フッ素環状ベンズアミジン誘導体(A)、モルホリン置換フェナシル誘導体(B)は、公知の方法または本発明に係る製造方法により製造することができる。好ましくは、前述の本発明に係る含フッ素環状ベンズアミジン誘導体(A)の製造方法および/または本発明に係るモルホリン置換フェナシル誘導体(B)の製造方法によりこれらを製造し、さらに含フッ素環状ベンズアミジン誘導体(A)とモルホリン置換フェナシル誘導体(B)とを反応させることが通し収率向上の観点から望ましい。なお、「(A)および/または(B)」とは(A)、(B)の少なくとも一つを含むことを意味する。
本発明に係る前記環状ベンズアミジン誘導体(C)またはその塩の製造方法は、さらに、再結晶化工程を含むことができる。すなわち、このようにして得られる環状ベンズアミジン誘導体(C)またはその塩は、さらに、再結晶化して、精製することができる。
再結晶方法としては、前記環状ベンズアミジン誘導体(C)またはその塩の粗結晶を、メタノールやエタノールなどのアルコール類と水の任意の割合の混合溶媒、またはTHFなどのエーテル類と水の任意の割合の混合溶媒に添加し、低温で該粗結晶を溶解する。溶解後、さらに水を添加して結晶を析出させる方法が挙げられる。混合溶媒としては、アルコール類と水との混合溶媒が好ましい。アルコール類としてはエタノールが好ましい。
前記溶解時における水とエーテル類またはアルコール類との混合割合は、水:エーテル類またはアルコール類の体積割合が好ましくは0:100〜80:20、さらに好ましくは10:90〜30〜70の範囲である。
粗結晶の析出時の温度は、好ましくは50℃以下、さらに好ましくは45℃以下とする。前記環状ベンズアミジン誘導体(C)またはその塩は、熱に不安定であり、長時間高温にさらされると、分解、副生成物の生成等により品質が低下することがある。例えば上記の水とエタノールとの混合溶媒を用いると、前記環状ベンズアミジン誘導体(C)またはその塩を低温で容易に溶解させることができるので、溶解のための加熱により品質の低下を招くことがない。また、エタノールを使用しているため作業上および薬理上の観点から安全性に優れる。さらに、水を加えるだけで結晶が析出するので工業的に有利である。
このような本発明の方法により得られる環状ベンズアミジン誘導体(C)またはその塩は、優れたトロンビン受容体阻害活性を有し、トロンビン受容体拮抗剤として有用である。
【図面の簡単な説明】
図1は、化合物(XIII)の結晶の粉末X線回析チャートである。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。本明細書において、室温とは20〜30℃の範囲で、好ましくは約25℃を意味する。
〔調製例1〕
1−ブロモ−3,4−ジエトキシ−2−フルオロベンゼン

氷冷下、1,2−ジエトキシ−3−フルオロベンゼン(150.00g,814mmoL)のアセトニトリル(900mL)溶液にN−ブロモスクシンイミド(NBS)(153.72g,864mmoL)のアセトニトリル(1.5L)溶液を滴下後、室温で一晩撹拌した。溶媒を留去後、残渣に酢酸エチルを加え、水洗した。得られた水層を酢酸エチルで再抽出し、先の有機層と混合した。有機層を水、飽和食塩水、水の順で洗浄して無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶液を濃縮し、油状物を得、これにヘキサンを加え析出した結晶を濾去した。溶液を再度濃縮し油状物を得、減圧蒸留して標記化合物を205.65g(収率:96%)得た。
b.p℃:110〜111℃/2mmHg
H−NMR(CDCl)δ:1.35(3H,t,J=6.8Hz),1.42(3H,t,J=6.8Hz),4.03(2H,q,J=6.8Hz),4.11(2H,q,J=6.8Hz),6.57(1H,dd,J=2.0,9.3Hz),7.15(1H,dd,J=7.3,8.8Hz).
MS m/z:262(M
【実施例1】
3,4−ジエトキシ−2−フルオロベンゾニトリル

室温下、1−ブロモ−3,4−ジエトキシ−2−フルオロベンゼン(12.0g,45.6mmoL)のN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)(60mL)溶液にシアン化銅(I)(6.8g,68.3mmoL)を加え、その後、155℃で3時間撹拌した。反応液を氷冷後、酢酸エチル、28%アンモニア水を加え有機層を分取し、水、飽和食塩水で洗浄して無水硫酸マグネシウムで乾燥した。濾過後溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン、酢酸エチル)で精製して標記化合物を9.0g(収率:94.3%)得た。
H−NMR(CDCl)δ:1.35(3H,t,J=6.8Hz),1.49(3H,t,J=6.8Hz),4.14(2H,q,J=6.8Hz),4.15(2H,q,J=6.8Hz),6.70(1H,dd,J=1.5,8.8Hz),7.24(1H,dd,J=6.4,8.8Hz).
MS m/z:209(M
【実施例2】
3,4−ジエトキシ−2−フルオロ−6−ホルミルベンゾニトリル

反応缶にTHF(18.7Kg)を窒素気流下投入後、続いてn−ヘプタン(13.7kg)を投入、さらに2,2,6,6−テトラメチルピペリジン(TMP)(7.50kg,53.1mol)を投入し、撹拌した。系を閉鎖系とし、窒素微陽圧で−15℃に冷却し終夜撹拌した。内温を−42.3℃とした、15% n−ブチルリチウム−ヘキサン溶液(22.4kg,50.2mol)を内温−10℃以下で滴下した。滴下配管内はn−ヘプタン(0.68kg)でリンスした。その後内温を−86.9℃に冷却し、3,4−ジエトキシ−2−フルオロベンゾニトリル(7.00kg,33.5mol)のTHF(10.68kg)溶液を滴下した。滴下配管をTHF(1.8kg)でリンスした。約1時間後N,N−ジメチルホルムアミド(4.89kg,66.9mol)のTHF(4.49kg)溶液を滴下した。DMF−THF溶液滴下終了33分後、n−ヘプタン(34.5Kg)を滴下した。1時間撹拌後、酢酸(10.5kg,175.0mol)のTHF(2.99kg)溶液し、外浴を10℃とした。55分後、水(50.4L)を滴下、さらにn−ヘプタン(17.2kg)を加えた。外浴を10℃とし、14.7時間撹拌した。反応液を抜き出し、半量ずつ遠心分離した。得られた結晶をn−ヘプタン(5L)、水5L、とn−ヘプタン(5L)で洗浄し、粗体を4.85kg得、冷蔵庫にて保管した。もう一方のスラリーも初回と同様に処理し、粗体5.25kgを得た(湿体合計:10.10kg)。
湿体を反応缶へ投入し、水(40L)とn−ヘプタン(80L)を加え、25℃で18.7時間撹拌した。反応液を抜き出し、缶壁をn−ヘプタン(5L)と水(10L)の混液でリンスした。反応液とリンス液をあわせた後、遠心分離した。得られた結晶をn−ヘプタン(5L)、水(5L)、さらにn−ヘプタン(5L)で洗浄し、標記化合物を湿体として10.30kg得た。
湿体をコニカルドライヤーに投入後、50℃で20時間、55℃で4時間減圧乾燥し標記化合物を微緑白色粉末状結晶として5.98kg(収率:75.3%)得た。
H−NMR(CDCl)δ:1.39(3H,t,J=6.8Hz),1.49(3H,t,J=6.8Hz),4.20(2H,q,J=6.8Hz),4.28(2H,q,J=6.8Hz),7.32(1H,d,J=1.5Hz),10.19(1H,s)
MS m/z:238[(M+H)
【実施例3】
3,4−ジエトキシ−2−フルオロ−6−ヒドロキシメチルベンゾニトリル

反応缶に窒素雰囲気下、3,4−ジエトキシ−2−フルオロ−6−ホルミルベンゾニトリル(5.90kg,24.87mol)と酢酸エチル(59.0L)を投入し、攪拌下トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(NaB(OAc)H)(11.70kg)を加えた。30分撹拌後、内温を40℃へと加熱し、2時間撹拌した。反応液を冷却し、内温15℃で水(2L)をゆっくり滴下し、過剰のトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウムの分解を行った。さらに水(27.5L)を加えた。外浴を40℃にし不溶物を溶解させ、再度冷却し、分液した。分液後、得られた有機層を重曹水で2回洗浄後、食塩水で洗浄した。得られた有機層は外浴10℃で冷却し、終夜放置した。
外浴を50℃とし、液量約14Lまで減圧濃縮した。外浴を10℃にしn−ヘプタン(59L)を投入し、2.8時間撹拌した。析出した結晶をろ過後、結晶をn−ヘプタン(5.9L)で洗浄し湿体の標記化合物を5.66kg得た。この湿体をコニカルドライヤーで50℃下、18.3時間減圧乾燥を行い、標記化合物を微黄白色粉末状結晶として5.17kg(収率:87%)得た。
H−NMR(CDCl)δ:1.36(3H,t,J=6.8Hz),1.48(3H,t,J=6.8Hz),4.12(2H,q,J=6.8Hz),4.17(2H,q,J=6.8Hz),4.82(2H,s),5.53(1H,s),6.95(1H,s).
MS m/z:240(M+H)
【実施例4】
3,4−ジエトキシ−2−フルオロ−6−メチルベンゾニトリル

窒素気流下、氷冷した2,2,6,6−テトラメチルピペリジン(3.16ml,18.7mmoL)のテトラヒドロフラン(30ml)溶液にメチルリチウム(1.03Mジエチルエーテル溶液,18.2ml,18.8mmoL)を加え30分撹拌した。反応系を−78℃に冷却後、3,4−ジエトキシ−2−フルオロベンゾニトリル(3.90g,18.6mmoL)のテトラヒドロフラン(20ml)溶液を滴下し、さらに30分後、ヨウ化メチル(1.4ml,22.4mmoL)を滴下し2時間撹拌した。反応系を徐々に室温まで昇温後、反応液に1N塩酸を加えて酢酸エチルで抽出し、抽出液を水、飽和食塩水で洗浄して無水硫酸マグネシウムで乾燥した。濾過後溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン、酢酸エチル)で精製して標記化合物を3.40g(収率:81.7%)得た。
H−NMR(CDCl)δ:1.37(3H,t,J=7.2Hz),1.49(3H,t,J=7.2Hz),2.48(3H,s),4.08〜4.16(4H,m),6.57(1H,s).
MS m/z:224(M+H)
【実施例5】
6−(ブロモメチル)−3,4−ジエトキシ−2−フルオロベンゾニトリル

室温下、3,4−ジエトキシ−2−フルオロ−6−メチルベンゾニトリル(679mg,3.04mmoL)の四塩化炭素(7ml)溶液にN−ブロモスクシンイミド(553mg,3.05mmoL)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)(102mg,0.609mmoL)を加えた後、5時間還流した。冷却後、反応液を水、飽和食塩水で洗浄して無水硫酸マグネシウムで乾燥した。濾過後溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン、酢酸エチル)で精製して標記化合物を614mg(収率:66.8%)得、原料を121mg(収率:17.8%)回収した。
H−NMR(CDCl)δ:1.38(3H,t,J=7.2Hz),1.50(3H,t,J=7.2Hz),4.16(4H,q,J=7.2Hz),4.55(2H,s),6.81(1H,s).
MS m/z:302(M+H)
【実施例6】
6−(ブロモメチル)−3,4−ジエトキシ−2−フルオロベンゾニトリル

氷冷下、3,4−ジエトキシ−2−フルオロ−6−(ヒドロキシメチル)ベンゾニトリル(38.0g,33.4mmoL)の1,2−ジメトキシエタン(DME)(80ml)溶液にホスホラス トリブロミド(PBr,1.57ml,16.7mmoL)を加え、その後室温で3時間撹拌した。反応液を氷冷後、酢酸エチル、水を加え有機層を分取し、水層はさらに酢酸エチルで抽出した。あわせた抽出液を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄し、活性炭を加えて無水硫酸マグネシウムで乾燥した。濾過後溶媒を留去し、残渣にn−ヘプタン(100ml)を加えさらに溶媒を留去した。残渣にn−ヘプタン(100ml)を加え氷冷し、析出した結晶を濾過後n−ヘプタンで洗浄して標記化合物を9.1g(収率:90.1%)得た。
H−NMR(CDCl)δ:1.38(3H,t,J=7.2Hz),1.50(3H,t,J=7.2Hz),4.16(4H,q,J=7.2Hz),4.55(2H,s),6.81(1H,s).
MS m/z:302(M+H)
<アンモニアガスを用いた例(実施例7、8および9)>
【実施例7】

5,6−ジエトキシ−7−フルオロ−3H−イソインドール−1−イルアミン
6−(ブロモメチル)−3,4−ジエトキシ−2−フルオロベンゾニトリル(175.1g,579.5mmol)をトルエン(2L)で溶解し、減圧ろ過した。このトルエン溶液とトルエン(16L)を投入し、室温撹拌下、反応容器内をアンモニアガスで置換した。アンモニアガスを注入し、内圧を7.8Kg/cmとした後、密封して15時間、室温にて撹拌した。アンモニアガスを放出後、反応容器内を窒素で置換し、水(2.2L)および2N塩酸(2.2L)を加え、分液した。有機層に1N塩酸(1.3L)を加え分液後、水層を先に得られた水層と混合し、セライトろ過後、濾さいを水(1.3L)で洗浄した。ろ液を氷冷下撹拌しながら、2N水酸化ナトリウム水(1.58L)を滴下し、水溶液をpH6.5とした。室温にて約5時間撹拌後、氷冷撹拌下、2N水酸化ナトリウム水(1.7L)を滴下し、pH11.1として結晶を析出させた。結晶をろ取後、水(1.75L)で洗浄し、終夜減圧乾燥(40℃)を行い、標記化合物を白色結晶として得た(110.3g,収率:80%,HPLC純度:99.3%)。
【実施例8】

メタンスルホン酸2−シアノ−4,5−ジエトキシ−3−フルオロベンジル
反応缶に3,4−ジエトキシ−2−フルオロ−6−(ヒドロキシメチル)ベンゾニトリル(4.50kg,18.81mol)と1,2−ジメトキシエタン(45L)を投入後、攪拌した。反応液を冷却し、系内を窒素雰囲気下にした。内温8.4℃で、トリエチルアミン(2.47kg,24.45mol)を加えた。さらに塩化メタンスルホニル(2.59kg,22.61mol)を内温が20℃を越えないように滴下した。34分撹拌後、系内を窒素気流下とし、冷却を停止した。反応液にトルエン(45L)と0.5N塩酸(9L)を加え分液した。得られた有機層を水(18L)、10%炭酸水素ナトリウム水溶液(18L)、10%食塩水(18L)、水(18L)で洗浄し、有機層を減圧濃縮した。濃縮液にトルエン(45L)を投入後、再度減圧濃縮し、濃縮液を冷却後、トルエン(40L)を加え希釈し、反応缶より希釈液を容器2つへ均等に抜き出した。反応缶壁はトルエン(5L)でリンスした。このリンス液は2等分し、先の希釈液に混合し、メタンスルホン酸2−シアノ−4,5−ジエトキシ−3−フルオロベンジルのトルエン溶液を得た。それぞれをA溶液、B溶液とし、溶液重量を計量(A溶液:32.16Kg,B溶液:32.24kg)後、溶液を一部サンプリングしてHPLCで定量した。
メタンスルホン酸2−シアノ−4,5−ジエトキシ−3−フルオロベンジルのトルエン溶液
性状:褐色トルエン溶液、定量値:5.79kg(A溶液2.92kg,B溶液2.87kg)、収率:96.9%、HPLC純度:A溶液98.8%,B溶液98.6%
H−NMR(400MHz,CDCl)δ:1.38(3H,t,J=6.8Hz),1.50(3H,t,J=6.8Hz),3.13(3H,s),4.17(4H,q,J=6.8Hz),5.28(2H,s),6.89(1H,d,J=1.0Hz).
MS m/z:317(M
【実施例9】
5,6−ジエトキシ−7−フルオロ−3H−イソインドール−1−イルアミン
反応缶に上記実施例8で得られたメタンスルホン酸2−シアノ−4,5−ジエトキシ−3−フルオロベンジルのトルエンA溶液[32.16kg(メタンスルホン酸2−シアノ−4,5−ジエトキシ−3−フルオロベンジルとして2.92kg),9.20mol]とトルエン(170L)を投入し、室温下撹拌した。反応液を20℃以下になるまで冷却し、撹拌を停止後アンモニアで系内を置換した。撹拌後、再度アンモニアを0.86MPaまで加圧した。反応液はこのまま終夜撹拌後、アンモニアガスをリークした。反応液に水(35L)を加えた後、2N塩酸を(35L)加え、分液した。得られた有機層に1N塩酸(23.4L)を加え、分液した。得られた水層を先の水層と混合し、清澄ろ過した。水(10L)でリンスし後、反応缶へ移送した。水(15L)で洗い込み、反応液を冷却した。5N水酸化ナトリウム水溶液(7.18L)を滴下し、反応液を外浴30℃で加熱し約4時間撹拌した。反応液を冷却し、反応液温17.4℃で5N水酸化ナトリウム水溶液(12.82L)を滴下後、反応液を終夜撹拌した。析出した結晶をろ過後、結晶を水(30L)、tert−ブチル メチル エーテル(6L)で洗浄し、湿体を2.29kg得た。この湿体をコニカルドライヤーで、40℃下、減圧乾燥を行い、標記化合物(1.85kg)を微黄白色粉末状結晶として得た。
性状:微黄白色粉末状結、収量:1.85kg、収率:84%、HPLC純度:97.5%、水分含量:0.22%
H−NMR(400MHz,DMSO−d)δ:1.24(3H,t,J=7.0Hz),1.34(3H,t,J=7.0Hz),4.01(2H,q,J=7.0Hz),4.17(2H,q,J=7.0Hz),4.38(2H,s),6.04(2H,bs),7.04(1H,s).
MS m/z:239(M+H)
<液体アンモニアを用いた例(実施例10および11)>
【実施例10】

メタンスルホン酸2−シアノ−4,5−ジエトキシ−3−フルオロベンジル
3,4−ジエトキシ−2−フルオロ−6−(ヒドロキシメチル)ベンゾニトリル(1g,4.18mmoL)を1,2−ジメトキシエタン(10mL)に溶解し、塩化メタンスルホニル(0.39mL,5.02mmoL)を加え、8℃恒温槽で冷却した。ここにトリエチルアミン(0.76mL,5.43mmoL)を20℃以下を目安として滴下した。1時間同温度で攪拌後、トルエン(5mL)および0.5N塩酸(2mL)加え、分液ロートへ移し、トルエン(5mL)で洗い込んだ。分液後、水(4mL)、10%炭酸水素ナトリウム水溶液(4mL)、10%食塩水(4mL)、水(4mL)で順次洗浄した。有機層を留去後、トルエン(4mL)を加え、共沸により水を除去した。残渣にトルエン(4mL)を加えて、次の工程で使用した。トルエン溶液のHPLC分析値:99.10%(トルエンのピークは除く)
H−NMR(400MHz,CDCl)δ:1.38(3H,t,J=6.8Hz),1.50(3H,t,J=6.8Hz),3.13(3H,s),4.17(4H,q,J=6.8Hz),5.28(2H,s),6.89(1H,s).
MS m/z:317(M+・
【実施例11】
5,6−ジエトキシ−7−フルオロ−3H−イソインドール−1−イルアミン
実施例10で得られたメタンスルホン酸2−シアノ−4,5−ジエトキシ−3−フルオロベンジルのトルエン溶液を、100mLのオートクレーブに移し、トルエン(9mL)で洗い込んだ。オートクレーブに液化アンモニアのボンベを繋ぎ、エタノール−ドライアイスバスで冷却し、9.1gのアンモニアをオートクレーブに貯めた。これを8℃の恒温槽につけて1時間攪拌後(0.4MPa)、アンモニアをリークした。26mLの1N塩酸で分液ロートに移した。
水層をフラスコにとり、水(10.8mLx8)を加えてから氷冷し、5N水酸化ナトリウム水溶液(1.5mL)を加えてpH6.5に調整した。30℃水浴で加温しながら約3時間攪拌し、再度氷冷した。5N水酸化ナトリウム水溶液(4.6mL)を加え、pH11.9に調整し、結晶を濾取し、水(13mL,x10)、tert−ブチル メチル エーテル(2.6mL)で順次洗浄し、減圧乾燥した。微黄白色の表記化合物を0.851g(収率:85.4%二工程通算)を得た。
H−NMR(400MHz,DMSO−d)δ:1.24(3H,t,J=7.0Hz),1.34(3H,t,J=7.0Hz),4.01(2H,q,J=7.0Hz),4.17(2H,q,J=7.0Hz),4.38(2H,s),6.04(2H,bs),7.04(1H,s).
MS m/z:239(M+H)
【実施例12】
3,4−ジエトキシ−2−フルオロ−6−(フタルイミドメチル)ベンゾニトリ

フタルイミド(510mg,3.47mmoL)をTHF(20mL)に溶解し、カリウムtert−ブトキシド(460mg,4.10mmoL)、メタンスルホン酸2−シアノ−4,5−ジエトキシ−3−フルオロベンジル(1g,3.15mmoL)のN,N−ジメチルホルムアミド溶液(10mL)を順次加えた。さらにN,N−ジメチルホルムアミド(10mL)で秤量した容器は洗いこんだ。50℃で1時間加温した後、氷冷して酢酸エチル(120mL)、水(80mL)を加えて分液し、さらに有機層を水(40mL,20mL)で二回水洗した。有機層を減圧留去し、1.165gの標記化合物を粗結晶として得た。これをカラムクロマトグラフィーで精製し、972mg(収率:83.8%)の標記化合物を得た。
H−NMR(DMSO−d)δ:1.23(3H,t,J=7.1Hz),1.30(3H,t,J=7.1Hz),4.05(2H,q,J=7.1Hz),4.11(2H,q,J=7.1Hz),4.85(2H,s),6.96(1H,s),7.82 ̄7.93(4H,m).
MS m/z:369(M+H)
【実施例13】
5,6−ジエトキシ−7−フルオロ−3H−イソインドール−1−イルアミン

3,4−ジエトキシ−2−フルオロ−6−(フタルイミドメチル)ベンゾニトリル(350mg,0.95mmoL)にテトラヒドロフラン(3.5mL)を加え、減圧にして脱気を2回行った。室温でヒドラジン一水和物(0.12mL,2.47mmoL)を加え、同温度で2.5時間攪拌した。氷冷にして1N塩酸(3.5mL)を加えた後、室温に戻し約3時間攪拌した。テトラヒドロフランのみを留去し、析出した結晶を濾過した。濾液を氷冷し、5N水酸化ナトリウム水溶液(0.6mL)を加え、pH6.2とし、室温で攪拌を続行した。約2時間後に水(10mL)を加え、HPLCで目的物であることを確認後、氷冷して5N水酸化ナトリウム水(0.5mL)を加えてpH12.4に調整し、析出した結晶を濾取し、結晶を水洗(1mLx5)した。室温減圧乾燥し、169mg(収率:74.7%)の標記化合物を得た。
H−NMR(DMSO−d)δ:1.24(3H,t,J=7.0Hz),1.34(3H,t,J=7.0Hz),4.01(2H,q,J=7.0Hz),4.17(2H,q,J=7.0Hz),4.38(2H,s),6.04(2H,bs),7.04(1H,s).
MS m/z:239(M+H)
〔調製例2〕
1−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)エタノン

塩化アルミニウム(44.4g,333mmol)を−45℃に冷却し、トルエン(1.25L)を加えた。2−tert−ブチルフェノール(50.0g,333mmol)を加え2時間撹拌した。さらに塩化アセチル(26.1g,333mmol)を滴下し、2.5時間撹拌した。反応液を氷冷水(250mL)に滴下後、室温撹拌した。結晶をろ取後、減圧乾燥(50℃)し、標記化合物を白色結晶として48.7g得た(収率:76.1%,HPLC純度:99.8%)。
H−NMR(400MHz,CDCl)δ:1.43(9H,s),2.57(3H,s),6.17(1H,s),6.76(1H,d,J=8.0Hz),7.73(1H,dd,J=2.4,8.0Hz),7.96(1H,d,J=2.4Hz).
MS m/z:193[(M+H)
〔調製例3〕
1−(5−ブロモ−3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)エタノン

1−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)エタノン(690.9g,3.75mol)をアセトニトリル(6.05L)に溶解し、氷冷撹拌下、N−ブロモスクシンイミド(701.28g,3.94mol)のアセトニトリル(5L)溶液を滴下した。室温まで昇温させた後、溶媒を約3Lまで濃縮し、n−ヘプタン(5L)および水(5L)を加えて抽出、分液した。水層を更にn−ヘプタン(2L)で抽出、分液し、有機層を混合後、5%チオ硫酸ナトリウム水溶液(1L)および水(2L)で洗浄し、減圧濃縮(35℃)を行って標記化合物を微褐色油状物として977.0g得た(収量:99.1%,HPLC純度:95.8%)。
H−NMR(400MHz,CDCl)δ:1.42(9H,s),2.55(3H,s),6.26(1H,s),7.88(1H,d,J=2.0Hz),7.99(1H,d,J=2.0Hz).
MS m/z:271[(M+H)
【実施例14】
2−ブロモ−6−tert−ブチル−4−(1,1−ジメトキシエチル)アニソール

窒素雰囲気下、1−(5−ブロモ−3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)エタノン(678g,2.50mol)にメタノール(678mL)、オルトギ酸トリメチル(796g,7.50mol)と(±)−10−カンファースルホン酸[(±)−CSA](11.6g,0.050mol,2mol%)を加え撹拌した。2.7時間撹拌後、N,N−ジメチルホルムアミド(1.7L)を加え、氷冷した。さらにヨウ化メチル(700g)、続いて炭酸カリウム(518g)を加え、室温下撹拌した。5.5時間撹拌後、水(4750mL)とn−ヘプタン(4750mL)を加え分液した。有機層を水(2370mL)で洗浄後、硫酸ナトリウム(120.2g)を加え撹拌後、吸引ろ過した。この際、n−ヘプタン(250mL)で洗い込みを行った。ろ液を溶媒留去(50℃)し、標記化合物を褐色油状物として808g得た(収率:98%,HPLC純度:96.8%)。
H−NMR(400MHz,DMSO−d)δ:1.35(9H,s),1.43(3H,s),3.07(6H,s),3.86(3H,s),7.32(1H,d,J=2.0Hz),7.47(1H,d,J=2.0Hz).
MS m/z:330(M
【実施例15】
1−(3−tert−ブチル−5−クロロ−4−メトキシフェニル)エタノン

1−(3−tert−ブチル−5−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)エタノン(1.65g,7.28mmol)とヨウ化メチル(2.07g,14.56mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド(2.5mL)に加え、氷冷下撹拌した。さらに炭酸カリウム(1.51g,10.92mmol)を加え、3時間撹拌した。トルエン(30mL)、水(20mL)を加え分液した。有機層を水(15mL)で洗浄後、乾燥し、減圧濃縮(50℃)し標記化合物を微黄色油状物として1.37g得た(収量:78.2%,HPLC純度:99.4%)。
H−NMR(400MHz,DMSO−d)δ:1.38(9H,s),2.57(3H,s),3.93(3H,s),7.81(1H,d,J=2.0Hz),7.95(1H,d,J=2.0Hz).
【実施例16】
6−tert−ブチル−2−クロロ−4−(1,1−ジメトキシエチル)アニソール

1−(3−tert−ブチル−5−クロロ−4−メトキシフェニル)エタノン(1.36g,5.65mmol)にメタノール(1.4mL)、オルトギ酸トリメチル(1.79g,16.95mmol)を加え室温下撹拌した。さらに(±)−10−カンファースルホン酸[(±)−CSA](65mg,0.282mmol,5mol%)を加え2時間撹拌した。炭酸カリウム(156mg,1.128mmol)を加え、40分撹拌後、水(10mL)とn−ヘプタン(10mL)を加え分液した。有機層を水(10mL)で洗浄後、溶媒留去(50℃)し、標記化合物を黄色油状物として1.57g得た(収率:96.9%)。
H−NMR(400MHz,DMSO−d)δ:1.33(9H,s),1.44(3H,s),3.06(6H,s),3.87(3H,s),7.28(1H,d,J=2.0Hz),7.31(1H,d,J=2.0Hz).
〔調製例4〕
1−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−ヨードフェニル)エタノン

1−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)エタノン(384mg,2mmol)とヨウ化ナトリウム(360mg,2.4mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド(3mL)と水(1mL)の混液に溶解し、氷水浴にて冷却した。撹拌下、N−クロロスクシンイミド(NCS)(320mg,2.4mmol)を10分間で分割投入した。50分撹拌後、2%チオ硫酸ナトリウム水(4mL)、2N塩酸(1mL)と酢酸エチル(10mL)を加え分液した。有機層を2%チオ硫酸ナトリウム水(5mL)と飽和食塩水(1mL)の混液で洗浄後、さらに飽和食塩水(5mL)で洗浄した。有機層を乾燥後、減圧濃縮(50℃)し標記化合物を微黄色油状物として616mg得た(収量:96.8%,HPLC純度:93.2%)。
H−NMR(400MHz,CDCl)δ:1.40(9H,s),2.54(3H,s),5.96(1H,s),7.90(1H,d,J=2.0Hz),8.16(1H,d,J=2.0Hz).
【実施例17】
1−(3−tert−ブチル−5−ヨード−4−メトキシフェニル)エタノン

1−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−ヨードフェニル)エタノン(616mg,1.93mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド(2.5mL)に加え、さらにヨウ化メチル(684mg,4.84mmol)と炭酸カリウム(401mg,2.90mmol)を加え、60℃で3時間加熱撹拌した。室温へ冷却し、酢酸エチル(6mL)、水(3mL)と2N塩酸(2mL)を加え分液した。有機層を水(3mL)と飽和食塩水(1mL)の混液で洗浄後、さらに飽和食塩水(3mL)で洗浄した。有機層を乾燥後、減圧濃縮(50℃)し標記化合物を黄色油状物として587mg得た(収量:91.3%,HPLC純度:94.1%)。
H−NMR(400MHz,CDCl)δ:1.41(9H,s),2.56(3H,s),3.94(3H,s),7.95(1H,d,J=2.0Hz),8.26(1H,d,J=2.0Hz).
【実施例18】
6−tert−ブチル−4−(1,1−ジメトキシエチル)−2−ヨードアニソール

1−(3−tert−ブチル−5−ヨード−4−メトキシフェニル)エタノン(664mg,2mmol)にメタノール(6mL)、オルトギ酸トリメチル(262mg,2.4mmol)とp−トルエンスルホン酸一水和物(TsOH・HO)(38mg,0.2mmol)を加え室温下2時間、60℃で1時間撹拌した。さらに0℃で3時間撹拌した後、炭酸カリウム(138mg,1.0mmol)を加え、氷冷下1.5時間撹拌後、反応液を濃縮乾固した。それに水(5mL)とトルエン(10mL)を加え分液した。有機層を水(5mL)で洗浄後、溶媒留去(50℃)し、標記化合物を淡茶色結晶として708mg得た(収率:93.6%)。
H−NMR(400MHz,DMSO−d)δ:1.34(9H,s),1.42(3H,s),3.06(6H,s),3.81(3H,s),7.34(1H,d,J=2.0Hz),7.71(1H,d,J=2.0Hz).
【実施例19】
4−[3−tert−ブチル−5−(1,1−ジメトキシエチル)−2−メトキシフェニル]モルホリン

窒素雰囲気下、2−ブロモ−6−tert−ブチル−4−(1,1−ジメトキシエチル)アニソール(650g,1.962mol)、酢酸パラジウム(4.4g,19.6mmol,1mol%)および(±)−BINAP(18.3g,29.4mmol,1.5mol%)を1,2−ジメトキシエタン(1.96L)で室温にて溶解し、モルホリン(205g,2.36mol)およびナトリウムtert−ブトキシド(264g,2.75mol)を加えた。
85℃にて2時間撹拌後、氷冷撹拌下、温度を30℃以下とした。不溶物をろ過後、濾さいを1,2−ジメトキシエタン(1L)で洗浄した。溶媒を減圧留去後、メタノール(600mL)、N,N−ジメチルホルムアミド(1.2L)およびn−ヘプタン(6L)を加え、抽出、分液した。更にN,N−ジメチルホルムアミド層をn−ヘプタン(3L)で2回抽出、分液後、n−ヘプタン層を混合し、メタノール(200mL)および水(1.8L)で洗浄した。得られたn−ヘプタン層にチオシアヌル酸(TMT)(13g)を加え、15時間室温にて撹拌後、セライトろ過した。濾さいをn−ヘプタン(500mL)で洗浄し、ろ液を87%N,N−ジメチルホルムアミド水(1.3L)および水(1.3L)で洗浄後、減圧濃縮(50℃)し標記化合物を褐色油状物として618g得た(収率:93.3%,HPLC純度:99.5%)。
H−NMR(400MHz,CDCl)δ:1.37(9H,s),1.52(3H,s),3.07(4H,t,J=4.4Hz),3.18(6H,s),3.88(4H,t,J=4.4Hz),3.94(3H,s),6.97(1H,d,J=2.4Hz),7.10(1H,d,J=2.4Hz).
MS m/z:337(M
【実施例20】
2−ブロモ−1−(3−tert−ブチル−4−メトキシ−5−モルホリノフェニル)エタノン

4−[5−(1,1−ジメトキシエチル)−3−tert−ブチル−2−メトキシフェニル]モルホリン(600g,1.78mol)をテトラヒドロフラン(2.67L)およびメタノール(0.89L)の混合溶媒に溶解し、窒素雰囲気下、7℃にてフェニルトリメチルアンモニウム トリブロミド(716g,1.87mol)を投入した。1時間撹拌後、5%チオ硫酸ナトリウム水溶液(660mL)を反応液に加えた。さらに水(4.68L)を投入し、1時間撹拌後、結晶をろ取し、標記化合物の粗結晶を黄肌色結晶として得た。
標記化合物の粗結晶をn−ヘプタン(1980mL)および2−プロパノール(660mL)の混合溶媒で7℃にて懸濁撹拌した。13時間撹拌後、結晶を濾取し、10%2−プロパノール/n−ヘプタン溶液(660mL)およびn−ヘプタン(660mL)で洗浄後、減圧乾燥(50℃)し標記化合物を淡黄白色結晶として566.2g得た(収率:86.0%,HPLC純度:99.0%)。
4−[5−(2−ブロモ−1,1−ジメトキシエチル)−3−tert−ブチル−2−メトキシフェニル]モルホリン
H−NMR(400MHz,CDCl)δ:1.37(9H,s),3.07(4H,t,J=4.4Hz),3.24(6H,s),3.57(2H,s),3.88(4H,t,J=4.4Hz),3.94(3H,s),6.98(1H,d,J=2.4Hz),7.08(1H,d,J=2.4Hz).
2−ブロモ−1−(3−tert−ブチル−4−メトキシ−5−モルホリノフェニル)エタノン
H−NMR(400MHz,CDCl)δ:1.40(9H,s),3.09(4H,t,J=4.4Hz),3.90(4H,t,J=4.4Hz),3.99(3H,s),4.41(2H,s),7.52(1H,d,J=2.0Hz),7.69(1H,d,J=2.0Hz).
MS m/z:369(M
【実施例21】
1−(3−tert−ブチル−4−メトキシ−5−モルホリノフェニル)−2−(5,6−ジエトキシ−7−フルオロ−1−イミノ−1,3−ジヒドロ−2H−イソインドール−2−イル)エタノン ハイドロブロミド

2−ブロモ−1−(3−tert−ブチル−4−メトキシ−5−モルホリノフェニル)エタノン(550g,1.485mol)をテトラヒドロフラン(3L)に溶解し、清澄濾過後、外温6℃にて撹拌下、5,6−ジエトキシ−7−フルオロ−3H−イソインドール−1−イルアミン(300g,1.254mol)のテトラヒドロフラン(4.5L)溶液を3回に分けて(100g/1.5Lを3回)滴下した。滴下終了後、結晶が析出した。18時間撹拌後、析出した結晶をろ取した。氷冷下冷却したテトラヒドロフラン(1.2L)で洗浄し、標記化合物を湿体の結晶として696.5g得た。
この湿体の結晶(693.5g)を50%テトラヒドロフラン/水(5L)中、50℃にて溶解後、清澄ろ過し、50%テトラヒドロフラン/水(0.5L)で洗浄した。氷冷撹拌下、濾液に水(2.5L)を加え、種結晶(1.52g)を加えた後、水(7.5L)を滴下した。8℃にて15時間撹拌後、結晶をろ取し、水(2L)で洗浄後、26時間通風乾燥(60℃)を行い、標記化合物を白色結晶として622.1g得た(収率:81.5%,HPLC純度:99.6%)。
1−(3−tert−ブチル−4−メトキシ−5−モルホリノフェニル)−2−(5,6−ジエトキシ−7−フルオロ−1−イミノ−1,3−ジヒドロ−2H−イソインドール−2−イル)エタノン ハイドロブロミドの再結晶別法
標記化合物の粗結晶(5.50kg)にエタノール(46.8L)と水(8.3L)を加え、40℃に加熱し結晶を溶解した。これを清澄ろ過し、エタノール(5.5L)と水(5.5L)で洗い込んだ。溶液に水(27.5L)を滴下後、内温10.9℃に冷却した。これに種結晶を添加し、水(82.5L)を滴下後、同温度で終夜撹拌した。結晶をろ取後、減圧乾燥し、表記化合物を4.90kg(収率:89.1%)得た。
前記のようにして得られた結晶について、CuKα線を特性X線とする粉末X線回析を行ったところ、表1に示すようなX線回析値(2θ)(誤差範囲±0.2)が得られた。図1に結晶の粉末X線回析チャートを示す。なおX線回析は、以下の条件で行った。
ゴニオメータ:水平ゴニオメータ
アタッチメント:回転試料台(反射法)
発散スリット:“1deg”
散乱スリット:“1deg”
受光スリット:“0.15mm”
走査モード:連続
スキャンスピード:2°/min.
スキャンステップ:0.02°
走査範囲:5〜40°
【表1】

以上のように本発明では、上記の、化合物(I)、化合物(III)、化合物(IV)、化合物(V)、化合物(VI)、化合物(VII)、化合物(XVI)および化合物(XVIII)を中間体として採用することにより、化合物(II)を収率よく合成することができる。すなわち、従来法(WO02/85855に記載)の収率は約10%であったが、本発明の方法の収率は約40%であり、本発明の方法は従来法に比し収率が格段と向上した。
上記の、化合物(IX)、化合物(X)、化合物(XI)および化合物(XII)を中間体として採用することにより、化合物(VIII)を収率よく合成することができる。すなわち、従来法(WO02/85855に記載)の収率は数%であったが、本発明の方法の収率は約50%であり、本発明の方法は従来法に比し収率が格段と向上した。
上記の、化合物(II)および化合物(VIII)のカップリング工程において、溶媒として、炭化水素類またはエーテル類(好適には、テトラヒドロフラン)を採用することにより、反応混合物から反応生成物が塩として析出するので、目的化合物(XIII)を極めて容易に単離精製することができる。
上記の、環状ベンズアミジン誘導体(C)またはその塩の再結晶方法において、溶解させる溶媒として、アルコール類と水との混合溶媒またはエーテル類と水との混合溶媒(好適には、アルコール類と水との混合溶媒)を採用することにより、環状ベンズアミジン誘導体(C)が安定に存在しうる低温領域で容易に溶解させることができる。また、溶解液に水を添加するだけで容易に結晶を析出させることができる。
【産業上の利用の可能性】
本発明に係る含フッ素環状ベンズアミジン誘導体(A)またはその塩の製造方法は、下記式(I)

(式中、Xは、脱離基を示す。)で表される新規な化合物(I)を合成原料として用いることにより、含フッ素環状ベンズアミジン誘導体(A)またはその塩を簡便な操作で収率良く容易に合成することができる。
また、本発明のモルホリン置換フェナシル誘導体(B)またはその塩の製造方法によれば、下記式(IX)

(式中、2つのRはそれぞれ炭素原子数1〜4のアルキル基を示し、2つのRは互いに結合して−(CH−(式中、nは2〜4の整数を示す。)で示される基により環を形成してもよく、Hal’’’はハロゲン原子を示す。)で表される新規な化合物(8)を合成原料として用いているので、モルホリン置換フェナシル誘導体(B)またはその塩を簡便な操作で容易に合成することができる。
更に、本発明の環状ベンズアミジン誘導体(C)またはその塩の製造方法では、前記含フッ素環状ベンズアミジン誘導体(A)またはその塩と前記モルホリン置換フェナシル誘導体(B)またはその塩とを、エーテル類および炭化水素類からなる群から選ばれる少なくとも1種の溶媒下でカップリングさせるので、目的とする環状ベンズアミジン誘導体(C)またはその塩を容易に結晶化でき、極めて簡便に得ることができる。
またさらに、本発明の環状ベンズアミジン誘導体(C)またはその塩の再結晶方法では、環状ベンズアミジン誘導体(C)を、アルコール類と水との混合溶媒またはエーテル類と水との混合溶媒を用いて溶解させ、水を添加して結晶を析出させるので、該環状ベンズアミジン誘導体(C)を低温で容易に溶解させることができるとともに、容易に再結晶を得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)

(式中、Xは脱離基を示す。)で表される化合物と、アンモニアまたはイミドとを反応させる工程を含む、下記式(II)

(式中、Etはエチル基を示す。)で表される含フッ素環状ベンズアミジン誘導体(A)またはその塩の製造方法。
【請求項2】
前記式(I)中Xが−OSO(式中、Rは、C1−6アルキル基、ハロゲン化C1−6アルキル基、C6−10アリール基またはハロゲン化C6−10アリール基を示す。)で表される化合物と、アンモニアとを反応させる工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記式(I)中Xが−OSO(式中、Rは、C1−6アルキル基、ハロゲン化C1−6アルキル基、C6−10アリール基またはハロゲン化C6−10アリール基を示す。)で表される化合物と、フタルイミドもしくはスクシンイミドまたはこれらの金属塩とを反応させる工程を含み、
該Xが−OSO(式中、Rは、前記と同じ。)で表される化合物と、前記フタルイミドもしくはスクシンイミドまたはこれらの金属塩とを反応させた後、得られる化合物をアミン誘導体へ変換する工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記式(I)中Xがハロゲン原子で表される化合物と、アンモニアとを反応させる工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記式(I)中Xがハロゲン原子で表される化合物と、フタルイミドもしくはスクシンイミドまたはこれらの金属塩とを反応させる工程を含み、
該Xがハロゲン原子で表される化合物と、前記フタルイミドもしくはスクシンイミドまたはこれらの金属塩とを反応させた後、得られる化合物をアミン誘導体へ変換する工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
式(I’)

(式中、Rは、C1−6アルキル基、ハロゲン化C1−6アルキル基、C6−10アリール基またはハロゲン化C6−10アリール基を示す。)で表される化合物が、下記式(III)

で表される化合物(式中、Etはエチル基を示す。)と、RSOYまたは(RSOO(式中、Rは、C1−6アルキル基、ハロゲン化C1−6アルキル基、C6−10アリール基またはハロゲン化C6−10アリール基を示し、Yはハロゲン原子を示す。)とを反応させて得られることを特徴とする請求項2または3に記載の方法。
【請求項7】
式(I’’)

(式中、Halは、ハロゲン原子を示す。)で表される化合物が、下記式(III)

で表される化合物(式中、Etはエチル基を示す。)と、ハロゲン化試薬とを反応させて得られることを特徴とする請求項4または5に記載の方法。
【請求項8】
式(I’’)

(式中、Halは、ハロゲン原子を示す。)で表される化合物が、下記式(IV)

で表される化合物(式中、Etはエチル基を示す。)と、ハロゲン化試薬とを反応させて得られることを特徴とする請求項4または5に記載の方法。
【請求項9】
前記式(III)で表される化合物が、下記(1)〜(3)を含む工程により得られることを特徴とする請求項6または7に記載の方法:
(1)下記式(V)

(式中、Hal’はハロゲン原子を示す。)で表される化合物とシアン化試薬とを反応させ、下記式(VI)

で表される化合物を得る工程、
(2)該式(VI)で表される化合物からホルミル化反応を経て、下記式(VII)

で表される化合物を得る工程、
(3)該(VII)で表される化合物を還元して、下記式(III)

で表される化合物を得る工程(式中、Etはエチル基を示す。)。
【請求項10】
式(I’’)

(式中、Halは、ハロゲン原子を示す。)で表される化合物が、下記(1’)〜(3’)を含む工程により得られることを特徴とする請求項4または5に記載の方法:
(1’)下記式(V)

(式中、Hal’はハロゲン原子を示す。)で表される化合物とシアン化試薬とを反応させ、下記式(VI)

で表される化合物を得る工程、
(2’)該式(VI)で表される化合物からメチル化反応を経て、下記式(IV)

で表される化合物を得る工程、
(3’)該式(IV)で表される化合物とハロゲン化試薬とを反応させて、前記式(I’’)で表される化合物を得る工程(式中、Etはエチル基を示す。)。
【請求項11】
下記(1’’)〜(3’’)の工程を含む、下記式(VIII)

(式中、Hal’’はハロゲン原子を示す。)で表されるモルホリン置換フェナシル誘導体(B)またはその塩の製造方法:
(1’’)下記式(IX)

(式中、2つのRはそれぞれC1−4アルキル基を示し、2つのRは互いに結合して−(CH−(式中、nは2〜4の整数を示す。)で示される基により環を形成してもよく、Hal’’’はハロゲン原子を示す。)で表される化合物と、モルホリンとを反応させて、下記式(X)

(式中、Rは式(IX)と同じ基を示す。)で表される化合物を得る工程、
(2’’)該式(X)で表される化合物とハロゲン化試薬とを反応させて、下記式(XI)

(式中、Rは式(IX)と同じ基を示し、Hal’’はハロゲン原子を示す。)で表される化合物を得る工程、
(3’’)該式(XI)で表される化合物に脱ケタール化反応を行って、前記式(VIII)で表されるモルホリン置換フェナシル誘導体(B)を得る工程(式中、Meはメチル基を示す。)。
【請求項12】
下記式(IX)

(式中、2つのRはそれぞれC1−4アルキル基を示し、2つのRは互いに結合して−(CH−(式中、nは2〜4の整数を示し、Meはメチル基を示す。)で示される基により環を形成してもよく、Hal’’’はハロゲン原子を示す。)で表される化合物が、下記式(XII)

(式中、Hal’’’’はハロゲン原子を示す。)で表される化合物と、ROH、HC(OR(式中、RはC1−4アルキル基を示す。)またはHO−(CH−OH(式中、nは2〜4の整数を示す。)とを反応させてケタール化する工程および前記式(XII)で表される化合物の水酸基をメトキシ化する工程を経て得られることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
下記式(II)

で表される含フッ素環状ベンズアミジン誘導体(A)またはその塩と、下記式(VIII)

(式中、Hal’’はハロゲン原子を示す。)で表されるモルホリン置換フェナシル誘導体(B)またはその塩とを、エーテル類および炭化水素類からなる群から選ばれる少なくとも1種の溶媒の存在下に反応させて、下記式(XIII)

で表される化合物またはその塩を得ることを特徴とする環状ベンズアミジン誘導体(C)の製造方法(式中、Meはメチル基を示し、Etはエチル基を示す。)。
【請求項14】
前記溶媒がエーテル類であることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記エーテル類がテトラヒドロフランであることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
下記式(II)

で表される含フッ素環状ベンズアミジン誘導体(A)またはその塩と、下記式(VIII)

(式中、Hal’’はハロゲン原子を示す。)で表されるモルホリン置換フェナシル誘導体(B)またはその塩とを反応させて、下記式(XIII)

で表される化合物またはその塩を生成させる工程、および
前記式(XIII)で表される化合物またはその塩を、アルコール類と水との混合溶媒またはエーテル類と水との混合溶媒に溶解させ、溶解後、さらに水を添加して前記式(XIII)で表される化合物またはその塩の結晶を析出させる工程
(式中、Meはメチル基を示し、Etはエチル基を示す。)を含むことを特徴とする環状ベンズアミジン誘導体(C)の製造方法。
【請求項17】
下記式(XIII)

(式中、Meはメチル基を示し、Etはエチル基を示す。)で表される化合物またはその塩を、アルコール類と水との混合溶媒またはエーテル類と水との混合溶媒に溶解させ、
溶解後、さらに水を添加して前記式(XIII)で表される化合物またはその塩の結晶を析出させることを特徴とする環状ベンズアミジン誘導体(C)の再結晶方法。
【請求項18】
前記混合溶媒が、アルコール類と水との混合溶媒であることを特徴とする請求項17に記載の再結晶方法。
【請求項19】
下記式(XIV)

(式中、Rは、ハロゲン原子またはCNを示し、Rは、水素原子、メチル基、−CHO、−CHOH、−CHHal(式中、Halはハロゲン原子を示す。)、−CH−OSO(式中、Rは、C1−6アルキル基、ハロゲン化C1−6アルキル基、C6−10アリール基またはハロゲン化C6−10アリール基を示す。)、フタルイミドメチル基またはスクシンイミドメチル基を示し、Etはエチル基を示す。)
で表される化合物。
【請求項20】
下記式(XV)

(式中、2つのRはそれぞれ炭素原子数1〜4のアルキル基を示し、2つのRは互いに結合して−(CH−(式中、nは2〜4の整数を示す。)で示される基により環を形成してもよく、Rは、水素原子またはハロゲン原子を示し、Rは、ハロゲン原子またはモルホリノ基を示し、Meはメチル基を示す。)で表される化合物またはその塩。

【国際公開番号】WO2004/078721
【国際公開日】平成16年9月16日(2004.9.16)
【発行日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−502995(P2005−502995)
【国際出願番号】PCT/JP2004/001396
【国際出願日】平成16年2月10日(2004.2.10)
【出願人】(000000217)エーザイ株式会社 (102)
【Fターム(参考)】