説明

甘しょ焼酎蒸留粕を原料とする健康食品素材と健康飲料及びそれらの製造方法

【課題】 甘しょ焼酎蒸留粕を効果的に固液分離し、固形分は健康食品素材とし、液体部分は健康飲料として利用する。
【解決手段】 甘しょ焼酎蒸留粕にセルラーゼ系酵素を添加し可溶化処理を行った後、固液分離し、固形分は乾燥して健康食品素材とし、液体部分は中空糸膜ろ過後、そのまま若しくは殺菌して健康飲料とする。健康飲料としては、そのままか、あるいは濃縮して飲料とするほか、更に甘味料等を添加した飲料として用いることもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミネラル分やクエン酸及びポリフェノール等を豊富に含む甘しょ焼酎蒸留粕を原料とした、健康食品素材と健康飲料及びそれらを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
甘しょ焼酎蒸留粕は、発酵したもろみから蒸留により、エチルアルコールやその他の香気成分等の揮発性成分が除去されており、原料甘しょ及び米に由来する繊維類、非発酵性糖類、蛋白質、脂肪、無機塩類その他の原料成分の一部と、麹菌、酵母等の菌体、有機酸、ビタミン類及びポリフェノール等発酵生産物の中、蒸留で除去されなかったものが含まれている。甘しょ焼酎蒸留粕の一般成分の一例を表1に示す。
【0003】
【表1】

【0004】
【表2】

【0005】
【表3】

【0006】
【表4】

註)試料:遠心沈殿物の凍結乾燥品
【0007】
【表5】

註)表1〜表5は鹿児島県工業技術センターの分析結果による。
【0008】
以上の分析結果から、甘しょ焼酎蒸留粕中にはミネラル分として特にカリウム分が多いこと、有機酸としてはクエン酸が最も多いことが特徴としてあげられる。またビタミン類としては、ビタミンB1、ビタミンB2、ナイアシン等のビタミンB、及びα−トコフェロール、β−トコフェロールなどのビタミンEが含まれており、各種アミノ酸等も含まれていることがわかる。
【0009】
焼酎蒸留粕を原料として健康食品又は健康飲料を製造する方法としては、特開平11−178519号公報には焼酎蒸留残渣からゼリー状食品を製造する方法及び焼酎蒸留残渣から製造されたゼリー状食品が開示されており、特開平11−13722号公報には焼酎蒸留残渣から飲料を製造する方法及び焼酎蒸留残渣から製造された飲料が開示されている。
【0010】
前記二つの発明はいずれもいも類又は穀類を原料とした焼酎蒸留粕を対象とし、甘味料を添加した後、磨砕することを特徴としている。ここで磨砕する理由は焼酎蒸留粕には、通常、原料穀類又はいも類の外殻部分(例えば、甘しょの皮、米、麦の外殻)に含まれている繊維質物質をそのまま含んでおり、このような繊維質物質をそのまま残留させると、食感の良好な食品又は飲料を得ることはできない。そこで、前記二発明では、繊維物質をより微細なものとするため、例えば豆乳製造用磨砕機、ジュース製造用磨砕機を使用し、製品の食感を改善しようとしている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
焼酎蒸留粕を健康食品又は健康飲料として利用しようとする場合、焼酎蒸留粕を磨砕して利用する方法以外に、焼酎蒸留粕を固液分離して固形分と液体部分に分け、それぞれについて有効利用する手段がより有効と考えられる。このとき、固液分離を効果的に行うことが重要であるが、南九州で最も多量に生産される甘しょ焼酎の蒸留粕は特に固液分離が困難とされている。
【0012】
本発明は、甘しょ焼酎蒸留粕を効率的に固液分離し、固形部分は健康食品素材とし、液体部分は健康飲料とし、これら健康食品素材及び健康飲料は栄養成分に富むと共に、優れた食感を有するものを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記課題を解決するため以下の手段を提供するものである。
第1には、本発明は、甘しょ焼酎蒸留粕に、セルラーゼ系酵素と、米麹及び/又は麦麹を添加し、又は添加することなく可溶化処理を行った後、固液分離を行い、該固液分離で得られた固形分を乾燥して得られた健康食品素材と、該固液分離で得られた液体部分を中空糸膜でろ過後、そのままもしくは加熱殺菌して得られた健康飲料とを包含するものである。
また、酵素反応後麹類を添加する方法と、酵素と麹類を同時に添加する方法があるが、固液分離の効率は後者の方が優れている。
【0014】
第2には、本発明は、米麹及び/又は麦麹の添加量が、甘しょ焼酎蒸留粕に対し、30重量%以下であることを特徴とする、上記する健康食品素材と健康飲料を提供する。米麹及び/又は麦麹の添加量を30重量%以上としても焼酎蒸留粕のろ過性の向上は特にみられない上、香りや呈味性の改善もあまり期待できない。
【0015】
第3には、本発明は、甘しょ焼酎蒸留粕に、セルラーゼ系酵素と、米麹及び/又は麦麹を添加して可溶化処理を行った後、固液分離を行い、該固液分離で得られた固形分は乾燥して健康食品素材とし、該固液分離で得られた液体部分は中空糸膜でろ過後、そのままもしくは加熱殺菌して健康飲料とすることを特徴とする甘しょ焼酎蒸留粕を原料とする健康食品素材及び/又は健康飲料の製造方法である。中空糸膜でほぼ除菌されるのでそのまま健康飲料としてもよいが、さらに安全性を確保したい場合、加熱殺菌することが好ましい。
【0016】
第4には、本発明は、米麹及び/又は麦麹の添加量が、甘しょ焼酎蒸留粕に対し、30重量%以下であることを特徴とする、上記する甘しょ焼酎蒸留粕を原料とする健康食品素材及び/又は健康飲料の製造方法を提供する。
【0017】
本発明のその他の目的、特徴、優秀性及びその有する観点は、以下の記載より当業者にとっては明白であろう。しかしながら、以下の記載及び具体的な実施例等の記載を含めた本件明細書の記載は本発明の好ましい態様を示すものであり、説明のためにのみ示されているものであることを理解されたい。本明細書に開示した本発明の意図及び範囲内で、種々の変化及び/又は改変(あるいは修飾)をなすことは、以下の記載及び本明細書のその他の部分からの知識により、当業者には容易に明らかであろう。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、甘しょ焼酎蒸留粕からの健康食品素材と健康飲料及びそれらの製造方法が提供される。本発明で、従来その大部分が産業廃棄物化されていた甘しょ焼酎蒸留粕からポリフェノール等機能性成分を含み栄養的にも優れ、嗜好性も満足できる健康食品素材と健康飲料を提供することが可能となった。
そして、上記健康食品素材と健康飲料の製造段階において、甘しょ焼酎蒸留粕の固液分離を容易にし、また、製品の香りと呈味性が改善される。
健康食品素材は食物繊維に富み、クッキーやビスケット、せんべい等各種食品に配合し、食物繊維増強剤として利用できる。
健康飲料としては、そのままか、あるいは濃縮して飲料とするほか、更に甘味料等を添加した飲料として用いることもできる。
本発明は、前述の説明及び実施例に特に記載した以外も、実行できることは明らかである。上述の教示に鑑みて、本発明の多くの改変及び変形が可能であり、従ってそれらも本件添付の請求の範囲の範囲内のものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明は甘しょ焼酎蒸留粕を対象とする。甘しょ焼酎蒸留粕はろ過性が悪く、固液分離が困難なため、本発明はこの点を改善すべく研究開発されたものであり、米焼酎や麦焼酎の蒸留粕は、比較的固液分離が容易であるため、本発明を利用することはできるが特に利点がみられないからである。
本発明では、甘しょ焼酎蒸留粕にセルラーゼ系酵素を添加することを特徴としている。セルラーゼ系酵素の添加は、焼酎蒸留粕中に含まれる繊維類を分解し、固液分離を容易にするとともに、製品の食感を改善するためである。
【0020】
甘しょ焼酎蒸留粕に添加するセルラーゼ系酵素は特に限定するものではなく、当該分野で知られたもののうちから適宜選択して使用できるが、例えばTrichoderma viride由来のセルラーゼを挙げることができ、また、Aspergillus niger由来のセルラーゼでもよい。
米麹及び/又は麦麹の添加は、これらの麹の有するプロテアーゼやアミラーゼ等の酵素の働きによるろ過性の改良と、焼酎蒸留粕のもつ発酵臭を除去し、製品の香りと呈味性を改善する効果がある。しかし、焼酎蒸留粕のろ過性が良好の場合は麹類の添加を省略してもよい。
【0021】
甘しょ焼酎蒸留粕に添加する麹は米麹又は麦麹のいずれでもよいが、この両者の混合物でもよい。これらは、当該分野で知られたものあるいは容易に入手できるものなどから適宜選択して使用できるが、例えば使用する麹菌はクエン酸を生産する能力の高い、広く焼酎製造に用いられる白麹菌(Asperillus kawachii)、又は黒麹菌(Aspergillus awamori、Asperillus saitoi)等が好ましい。
【0022】
甘しょ焼酎蒸留廃液を可溶化処理した後の固液分離には、フィルタープレス等による圧搾ろ過のほか、デカンター等の遠心力による分離も用いることができる。該固液分離には当該分野で知られた技術・装置あるいは容易に実施可能な方法などから適宜選択して使用できる。
【0023】
液体部分は中空糸膜でろ過し、前段の固液分離の工程で充分に除去できなかった酵母菌体等の微細懸濁物質を除去する。中空糸膜は、好適にはプラスチック製あるいはセラミック製中空糸膜を利用でき、当該分野及び分離精製技術の分野で知られたものから適宜選択して使用できるが、例えば半透過性の膜を介して固形成分と液体成分とを分離することのできる性状のものを使用するものが挙げられる。中空糸膜は、膜形態、チューブ形態、シート形態、螺旋形態、平面状の膜などのいずれの形態のものであってもよく、所要の目的を達成することのできるものであれば限定されない。
【0024】
中空糸膜でろ過し、そのまま健康飲料としてもよいが、さらに加熱殺菌してもよい。加熱殺菌は残存する酵母その他の微生物を殺菌し、あるいは酵素を失活させ、安定した性状の製品を得るために行う。通常、30分前後で室温から80℃迄昇温し、80℃に到達したら加熱を中止し室温まで冷却する。80℃から室温に到達する時間は約60分前後であった。
本発明の健康食品素材は、そのまま摂取することもできるが、他の食品素材と配合されて摂取することもできる。該健康食品素材は、粉末、錠剤、カプセル剤などさまざまな形態で使用することが可能である。
本発明の健康飲料は、それを食酢としてそのまま摂取することもできるが、他の食品素材あるいはジュースなどと配合されて摂取することもできる。
本発明の健康食品素材や健康飲料は、果物あるいは野菜のジュース、例えば、麦芽汁、ブドウ、リンゴ、マルメロ、グレープフルーツ、オレンジ、ミカンなどの柑橘類、カリン、ナシ、西洋ナシ、ビワ、アンズ、ウメ、カキ、サクランボ、スモモ、ナツメ、モモ、ネクタリン、イチジク、キイチゴ、グミ、ザクロ、キウイフルーツ、マンゴー、バナナ、パインアップル、パパイア、グアバ、ヤシなどの果汁、アイソトニック飲料、シロップ、清涼飲料、炭酸飲料、乳清飲料、ビール飲料、アルコール飲料、穀物、例えば、米、小麦などから調製された食品及び食品素材、オートミール、シリアル、パン、せんべいなどの和菓子、クッキーなどの洋菓子、即席菓子、アイスクリーム、氷菓子、調味料、肉製品、水産加工品、乳製品などに混合されて用いることもできる。
【0025】
本発明の実施の形態について図1にもとづいて説明する。甘しょ焼酎蒸留粕にセルラーゼ系酵素と米麹又は麦麹、あるいは米麹と麦麹の混合物を添加して可溶化処理を行い、繊維質を分解してろ過性を向上させるとともに呈味性を改善する。次に圧搾ろ過等の手段で固液分離し、固形分は乾燥して健康食品素材とし、液体部分は中空糸膜でろ過し、酵母菌体その他の懸濁物質を除去、加熱殺菌して健康飲料とする。
【0026】
セルラーゼ系酵素としては、Tri.viride由来のセルラーゼ、商品名セルロシンT2(阪急バイオインダストリー株式会社製造)を使用することができる。このとき酵素の添加量は甘しょ焼酎蒸留粕に対し0.05〜0.2重量%でよい。
【0027】
米麹又は麦麹あるいは両者の混合物は甘しょ焼酎蒸留粕に対し10〜30重量%とする。麹菌は白麹菌(Asp.kawachii)又は黒麹菌(Asp.awamori)を用いるとよい。
【0028】
セルラーゼ系酵素と麹を添加した甘しょ焼酎蒸留粕は約30℃〜40℃で少なくとも2時間以上、可溶化処理を行う。
固液分離には加圧式圧搾機を用いたが、遠心力を利用するデカンターを用いることもできる。
【0029】
固液分離により得られた固形分は乾燥して健康食品素材とし、液体部分は中空糸膜でろ過後殺菌して健康飲料とする。中空糸膜としてはポリビニールアルコール製又はポリスルホン製のものを使用したが、ポリビニールアルコール製のものでは最高使用温度が60℃であるのに対し、ポリスルホン製では最高使用温度70℃となる。
【0030】
本発明の健康飲料は、そのままクエン酸を主成分とする「もろみ酢」として用いることができるが、特徴として機能性成分であるポリフェノールが含まれており、活性酸素消去作用のほか、ラジカル消去能も期待できる。
ポリフェノール含量と、ラジカル消去能は甘しょ焼酎蒸留粕を酵素と麹で処理する過程で増加することを発見した。
【0031】
もろみ酢のポリフェノール含量:本発明のもろみ酢(酵素+20%麹処理)と、その原料である甘しょ焼酎蒸留粕液のポリフェノール含量の測定結果を図2に示した。ポリフェノール含量の測定はフォーリン・チオカルトウ法により行い、クロロゲン酸換算量で示した。図2において、甘しょ焼酎蒸留粕ではポリフェノール含量は77mg(クロロゲン酸相当/100ml)で、もろみ酢の場合、134mg(クロロゲン酸相当/100ml)となり、これらの結果は甘しょ焼酎蒸留粕からもろみ酢を製造する過程でポリフェノール含量が1.7倍ほど増加することを示している。
【0032】
もろみ酢と市販醸造酢とのポリフェノール含量の比較を表6に示した。
もろみ酢のポリフェノール含量は、米黒酢やサトウキビ酢と同程度であった。これらの値は、一部の玄米酢や大麦黒酢以外の酢類の中では高く、各種機能性が期待可能なことを示している。
(註)表6は、独立行政法人農業技術研究機構九州沖縄農業センターの分析結果による。
【0033】
【表6】

【0034】
もろみ酢のラジカル消去能:本発明のもろみ酢(酵素+20%麹処理)と、その原料である甘しょ焼酎蒸留粕液のラジカル消去能の測定結果を図3に示した。ラジカル消去能は安定ラジカルであるDPPHを用いて測定した。結果は、IC50(DPPHの吸光度を50%に減少させるに必要な試料の量)でトロロックス換算により示した。
【0035】
甘しょ焼酎蒸留粕及びもろみ酢(酵素+20%麹処理)のラジカル消去能(IC50)は、それぞれ3.9、4.3でもろみ酢が甘しょ焼酎蒸留粕液より明らかに高い値を示した。ポリフェノール含量と、ラジカル消去能は相関関係が高く、もろみ酢のポリフェノール含量の高いことと一致している。なお、DPPH(1、1−Dipheny1−2Picrylhydrazyl)はそれ自体が紫色のラジカルで、抗酸化性物質から水素を引き抜き、自身は還元されて紫色が退色する。
【0036】
次にもろみ酢のラジカル消去能を市販の醸造酢と比較した。供試した14種の醸造酢のうち上位6種を図に示したが、もろみ酢は4番目の強いラジカル消去能を示した(図4)。
もろみ酢のポリフェノール含量は米黒酢や玄米酢より低いにもかかわらず、ラジカル消去能では高い値を示した。これらの結果は、ポリフェノール組成の違い、またはポリフェノール以外のラジカル消去成分の存在が示唆される。
【実施例】
【0037】
以下に実施例を揚げ、本発明を具体的に説明するが、この実施例は単に本発明の説明のため、その具体的な態様の参考のために提供されているものである。これらの例示は本発明の特定の具体的な態様を説明するためのものであるが、本願で開示する発明の範囲を限定したり、あるいは制限することを表すものではない。本発明では、本明細書の思想に基づく様々な実施形態が可能であることは理解されるべきである。全ての実施例は、他に詳細に記載するもの以外は、標準的な技術を用いて実施したもの、又は実施することのできるものであり、これは当業者にとり周知で慣用的なものである。
【0038】
[実施例1]
甘しょ焼酎蒸留粕(20kg)にセルラーゼ系酵素(甘しょ焼酎蒸留粕に対し0.1重量%:Tri.viride由来のセルラーゼ、商品名セルロシンT2、阪急バイオインダストリー株式会社製造)と米麹(表7に示した量)を添加して約30℃〜40℃で少なくとも6時間撹拌しながら可溶化処理を行い、繊維質を分解してろ過性を向上させる。次に圧搾ろ過機(東洋商会製)を使用して2kg/cm荷重で固液分離した。固液分離により得られた固形分は約30℃〜40℃で少なくとも4時間乾燥して健康食品素材とし、液体部分はポリスルホン製の中空糸膜で2時間ろ過後殺菌して健康飲料とした。甘しょ焼酎蒸留粕から得られた健康飲料と米麹の添加量との関係を表7に示す。
【0039】
【表7】

【0040】
表7によれば、甘しょ焼酎蒸留粕に対し米麹の添加量が増えると、酸度及び直糖が増加し、官能検査の結果では酸度は適度な酸味が保たれるが甘味が強くなることが認められた。香りについてみると、米麹無添加では発酵臭が残り、やや難点が認められるが、米麹の添加によりこの難点は解消されている。
【0041】
以上の結果から麹類無添加のものでも健康飲料として利用できるものの、甘しょ焼酎蒸留粕に対し10重量%以上の米麹の添加が食感の優れた健康飲料を得るためには好ましいと考えられた。
また、米麹の添加量をある程度以上増やしても健康飲料の物性の改善にそれほど寄与しないこと、また米麹の添加量を余り増加させると、甘しょ焼酎蒸留粕を利用しようとする効果がうすくなること等から、米麹の添加量は30重量%以下とすることが適当と考えた。
【0042】
[実施例2]
甘しょ焼酎蒸留粕から得られた健康飲料中の無機成分を表8に示す。
【0043】
【表8】

【0044】
表2の甘しょ焼酎蒸留粕中の無機成分と比較すると、K、Naはやや増えているがCaやFeは少なくなっていることがわかる。
また、前記健康飲料の一般性状は表9のとおりであった。
【0045】
【表9】

【0046】
表9でこの健康飲料の固形分は約3%前後であるが、この液を濃縮して固形分10%前後とすることが可能であり、この濃縮液をそのまま飲料としたり、この濃縮液を原料とした加工食品等を製造することもできる。
【0047】
[実施例3]
甘しょ焼酎蒸留粕にセルラーゼ系酵素及び米麹を添加して可溶化処理を行った場合、固液分離すると固形分が約20重量%、液体部分が約80重量%得られた。このとき得られた固形分の分析値は表10のとおりであった。
【0048】
【表10】

【0049】
表10によれば分離された固形分の約50%が可溶性無窒素物であり、これらの多くが非発酵性炭水化物であると考えられ、甘しょ細胞壁の薄膜層状の構造が走査電子顕微鏡で観察されている。また固形分のNDF(Neutral Detergent Fiber)の測定結果は66.3%であり、食物繊維増強剤として使用が期待できる。
【0050】
[実施例4]
株式会社東洋商会製手動油圧吟醸搾り機(480L)を用いて、甘しょ焼酎蒸留粕等のろ過試験を行った。
試験方法:ろ布に甘しょ焼酎蒸留粕等を入れ、搾り機に詰め終わった時間をろ過開始時間とする。ろ過開始から無加圧で搾り、その間に流出してくる液を荒ばしりとして別取りする。ろ過開始30分後に0.5MPaの圧力をかけ、12時間後に圧搾を終了した。
(註)荒ばしり:ろ過開始から30分以内に無加圧で流出した濁度の高い液。
清澄液:ろ過開始から30分を過ぎてから加圧して流出した清澄な液。
甘しょ焼酎蒸留粕のろ過特性を測定した結果を表11に示した。
【0051】
【表11】

【0052】
甘しょ焼酎蒸留粕のみ:甘しょ焼酎蒸留粕を圧搾ろ過した結果、上記のとおりであった。
酵素のみ添加:液の回収率を上げるために酵素の添加を試みた。酵素を添加することで液部の回収率を上げることができたが、液部SSがかなり上がり圧搾ろ過できたとは言えなかった。
酵素反応後米麹添加:次に酵素を添加反応後に米麹を添加し糖化を行った。液部SSはかなり減少したが、液の回収率が低下した。
酵素+米麹添加:酵素と米麹を同時に添加することにより芋焼酎粕のみに比べて液部SSの濃度は同等で液の回収率を上げることができ、固形分の水分も減らすことができた。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の甘しょ焼酎蒸留粕を原料とする健康食品素材と健康飲料の製造方法を示すフローチャートである。
【図2】甘しょ焼酎蒸留粕ともろみ酢のポリフェノール含量を示す図である。
【図3】甘しょ焼酎蒸留粕ともろみ酢のDPPHラジカル消去能を示す図である。
【図4】もろみ酢と市販酢のラジカル消去能の比較を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
甘しょ焼酎蒸留粕にセルラーゼ系酵素を添加して可溶化処理を行った後、固液分離を行って得られた固形分を乾燥して得られた健康食品素材であることを特徴とする、甘しょ焼酎蒸留粕を原料とする健康食品素材。
【請求項2】
甘しょ焼酎蒸留粕にセルラーゼ系酵素を添加して可溶化処理を行った後、固液分離を行って得られた固形分を乾燥して健康食品素材とすることを特徴とする、甘しょ焼酎蒸留粕を原料とする健康食品素材の製造方法。
【請求項3】
甘しょ焼酎蒸留粕にセルラーゼ系酵素を添加して可溶化処理を行った後、固液分離を行って得られた液体部分を中空糸膜でろ過後、そのままもしくは加熱殺菌して得られた健康飲料であることを特徴とする、甘しょ焼酎蒸留粕を原料とする健康飲料。
【請求項4】
甘しょ焼酎蒸留粕にセルラーゼ系酵素を添加して可溶化処理を行った後、固液分離を行って得られた液体部分を中空糸膜でろ過後、そのままもしくは加熱殺菌して健康飲料とすることを特徴とする、甘しょ焼酎蒸留粕を原料とする健康飲料の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−136343(P2006−136343A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−43196(P2006−43196)
【出願日】平成18年2月20日(2006.2.20)
【分割の表示】特願2003−135383(P2003−135383)の分割
【原出願日】平成15年5月14日(2003.5.14)
【出願人】(301017765)田苑酒造株式会社 (3)
【復代理人】
【識別番号】100090985
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 幸雄
【Fターム(参考)】