説明

生ゴミの微生物処理方法および装置

【課題】(ア)大量生ゴミの処理で、かつ、簡易構造、(イ)微生物の長期安定活動、(ウ)臭気の消臭化・無公害化。
【解決手段】 大量の生ゴミを微生物で処理するために常時人為的に外部より微生物の活動を促進し生ゴミの安定分解が行える機構を有しこの機構により生ゴミの分解は総投入量のうち水分を除く固形物の40%以上が約24時間で消滅可能とし生ゴミの分解時に発生する臭気を極力抑制した生ゴミ処理方法ならびに処理装置。ほぐしながら回転して大量の生ゴミと微生物を混合する、生ゴミの分解時に発生する臭気を極力抑制した生ゴミの微生物処理方法であって、常時人為的に外部より微生物の活動を促進する手段を加えることにより、生ゴミの分解が総投入量のうち水分を除く固形物の40%以上が約24時間で消滅可能としたことを特徴とする生ゴミの微生物処理方法ならびに装置。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、食品工場、水産加工場、農畜産加工場などから排出する生ゴミ(動植物性残滓)や排水から出る脱水余剰汚泥の微生物処理方法および装置に関する。
【0002】
【従来の技術】食品工場、水産加工場、農畜産加工場などから排出する生ゴミ(動植物性残滓)や排水から出る脱水余剰汚泥の処理方法のひとつに、微生物分解処理方法がある。処理しようとする生ゴミが家庭用生ゴミ(1〜2kg/日)や店舗業務用(10〜50kg/日)であれば、簡易なパドル方式の攪拌機で生ゴミと微生物の担体を混合することが可能であるが、食品工場、水産加工場、農畜産加工場などの工場から排出する生ゴミは最低でも一日100kg程度になる。こうした大量の生ゴミになると、攪拌機では攪拌トルクが膨大になり、実用に耐えない攪拌機になる。攪拌機に関して、キルン方式も考えられるが、キルン方法では円筒を回転する構造なので、生ゴミの投入口、担体の排出口、給排気口が円筒のセンター側壁面に集中し、各部を使いやすい構造とすると、各部の取り合いが複雑化し、製造コストを上昇させ、実用的装置になりなりにくい欠点があった。
【0003】また、生ゴミの微生物処理からみると、微生物では生ゴミ中の処理できない無機物や難分解性物質の残留物はどうしても担体中に残る。コンポストのように短時間の残留物全部を引き出せば問題がないが、消滅タイプの処理方法では、長期に、この残留物が担体中に蓄積する。この蓄積は分解の活動している微生物に悪影響を与え続け、最後には微生物の活動を抑制する欠点があった。また、微生物の生ゴミ処理装置を簡易にするため、微生物の活動を成り行きにしているものがある。しかし、この場合、外気温度や湿度などの影響で、微生物活動が急変することがある。もし、一定の分解能力を望むなら、発酵槽外部からの、強制的に微生物が安定する工夫が必要である。さらに、生ゴミを微生物分解する場合、処理物によって発生臭気濃度は異なるが、多少なりとも臭気が発生する。大方は発生臭気をそのまま大気に開放する濃度でないため、消臭機が必要とされる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記の従来の技術の欠点を克服するため、本発明は、下記の3項目を解決する。
(ア)大量生ゴミの処理で、かつ、簡易構造先に簡単にふれたが、従来のパドル式攪拌機では発酵槽の径を大きくして、攪拌機容積を増やして行くと、径約1m程度で、攪拌羽根の回転トルクが異常になり、実用可能なモーターでの攪拌ができなくなってくる。また、キルン方式の攪拌機は、攪拌機能は簡易であり、容積のスケールアップが可能であるが、微生物による発酵槽の役目を果たそうとすると、投入口、担体排出口、給排気口などの機器を設置していく必要がある。しかし、キルンの円筒が回転するため、回転軸センター側の壁面に各機器が集中し、複雑な構造となってゆく。そのため、キルン自体は簡易構造の攪拌機であるが、微生物の発酵槽となると、構造は複雑でしかもコストの高い装置になる。装置の複雑化はマシンメンテナンスの手間を増大していく。そのため、装置としては、避けたい方向になる。本発明は大量な生ゴミを処理し、しかも簡易な構造で、マシンメンテナンスを容易にすることを目的とする。
【0005】(イ)微生物の長期安定活動生ゴミを微生物処理する場合、どんなに優れた微生物を使用しても、その菌が有効に働く条件を維持できなければ、微生物の活動は停止し、悪い場合、有害な微生物の発生を招く。本発明は発酵槽の外部から微生物の活動が適正になる制御を加え、長期にわたって、生ゴミ分解が持続することを目的としている。
【0006】(ウ)臭気の消臭化・無公害化生ゴミを微生物分解すると、臭気が発生する。処理する生ゴミによっては、ほとんど臭気を発しないものがあるが、一般の生ゴミを対象にする装置であれば、臭気対策を考えなくてはいけない。現状の装置でも、オゾン脱臭、吸着剤、生物脱臭などが試みられている。オゾン脱臭は酸化力が強いため、人体への悪影響の恐れがあるし、吸着剤は効果があるが、臭気によっては直ぐに吸着効果がなくなり、吸着剤の交換が頻繁になり、コストがかさむことがある。生物脱臭は性能が安定しにくいため、実用上適さない場合が多い。本発明は、安全で能力が維持し、かつ安全な機構を実現することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、大量の生ゴミを微生物で処理するために常時人為的に外部より微生物の活動を促進し生ゴミの安定分解が行える機構を有しこの機構により生ゴミの分解は総投入量のうち水分を除く固形物の40%以上が約24時間で消滅可能とし生ゴミの分解時に発生する臭気を極力抑制した生ゴミ処理方法ならびに処理装置である。すなわち、本発明は、ほぐしながら回転して大量の生ゴミと微生物を混合する、生ゴミの分解時に発生する臭気を極力抑制した生ゴミの微生物処理方法であって、常時人為的に外部より微生物の活動を促進する手段を加えることにより、生ゴミの分解が総投入量のうち水分を除く固形物の40%以上が約24時間で消滅可能としたことを特徴とする生ゴミの微生物処理方法を要旨としている。また、本発明は、ほぐしながら回転する混合装置を備える大量の生ゴミを微生物で処理する生ゴミ処理装置であって、生ゴミの分解時に発生する臭気を極力抑制し、総投入量のうち水分を除く固形物の40%以上を約24時間で消滅することができる微生物の活動促進手段を備えることを特徴とする生ゴミの微生物処理装置を要旨としている。
【0008】
【発明の実施の形態】上記の、ほぐしながら回転して大量の生ゴミと微生物を混合する手段は、リボンスクリュー方式攪拌機を採用することが好ましい。大量の生ゴミを微生物で処理するためには、微生物が生息する大量な担体と投入した生ゴミを均一に混合する必要がある。そのためパドル式攪拌機に特殊な形状を持ったリボンスクリュー羽根を取り付け、担体を強制攪拌するのではなく担体をほぐしながら回転し生ゴミと微生物を混合するので、担体の攪拌時の回転トルクが軽減されかつ均一混合する。発酵槽を一般のパドル式攪拌機から、リボンスクリュー式の羽根に換えて発酵槽の径のスケールアップしていくことで、例えば、一般のパドル式攪拌機では、径が1m程度で限界であったが、径が2m程度と約2倍まで拡大でき、しかも、低トルクで安定な攪拌が持続できる。
【0009】微生物の分解に使用する微生物は高温菌と中温菌が共存しており、お互いがバランスよい状態であると、生ゴミの分解能力は良好となる。また、好気・嫌気性の区分からいうと、本発明の主たる活動菌は好気性菌であるが、適正量の嫌気性菌が混在し、良好な処理を導く。この菌のバランスをとるため、次の4項目の実施が必要である。
1)発酵槽の加温本発明で生ゴミを分解する微生物に高温菌と中温菌を使用する。高温菌の適正温度は45℃〜65℃、中温菌の適正温度は20℃〜45℃である。両者を共存する温度として40℃〜50℃に担体をコントロールする必要がある。そのため、発酵槽の壁面を加温することが必要である。また、加温して冷却を行わないと、担体温度は高温菌の発する熱量で上昇していき、高温菌が微生物系を支配してゆく。これを防ぐため、攪拌を頻繁におこない、担体内に蓄積する熱量を飛散させる。この頻繁な攪拌は、担体と空気の接触を増やすことで、好気性菌と嫌気性菌のバランスをとる目的もある。すなわち、本発明において、上記の「常時外部より微生物の活動を促進する」には微生物の適正活動温度を保持する必要がある。このため本発明の発酵槽はその側壁を電気ヒーターや温水などの熱媒体で加熱する機構を有する。
【0010】2)担体への加水本発明で使用している生ゴミの分解菌は担体の含水率が20〜30重量%が適正である。そのためには、発酵槽の重量を測定している秤(たとえばロードセル)からの信号で、適正な含水率まで加水していく。すなわち、本発明において、上記の「常時外部より微生物の活動を促進する」ために微生物の「すみか」である担体の含水率をコントロールすることが必要である。例えば「篩い機構」によって生ゴミ投入終了後24時間経過すると発酵槽の担体は前日の量に戻るのでそのときの担体重量を上記のロードセルなどで測定すれば不足している担体水分がわかるので、そのとき、発酵槽上部に設置している散水管から不足分の水分を補充する。つまり上記のロードセルなどの秤からの信号で発酵槽の担体の水分コントロールを可能にせしめた。
【0011】3)担体の乾燥逆に、担体を乾燥せしめる機構がないと、担体の含水率はコントロールできない。そのため、乾燥機構を付加し、微生物の関与なしで、発酵槽自体でも乾燥可能にしておく。上記の「生ゴミの安定分解」をさらに確実にするため、発酵槽の上部に温風をおくり、かつ、上記の「発酵槽の加熱」によって担体の強制乾燥を行う。万一、微生物の活動が弱まったときでも、人為的に担体の水分を蒸発させ、担体の状態を一定にする機構がある。つまり、本発明は微生物発酵と強制乾燥を併用して、生ゴミを分解するシステムをとっている。
【0012】4)無機物および難分解性物質の除去機構生ゴミの微生物分解では、どうしても分解(ガス化)できない無機物や繊維質のような難分解性物質が担体内に残留物として蓄積する。この残留物の蓄積がすすんでいくと、微生物の通気に悪影響をあたえ、好気性菌と嫌気性菌のバランスを崩す。これを防ぐため、発酵槽底部にパンチグメタルのような篩い機構を施し、微生物分解で生じた無機物や繊維質を常時、発酵槽の系外へ排出してゆく。この機構で無機物および難分解性物質の除去が可能となった。すなわち、本発明の方法における上記微生物の活動を促進する手段は、好ましくは無機物および難分解性物質を常時発酵槽の外に排出することである。また、本発明の装置における上記微生物の活動促進手段は、好ましくは無機物および難分解性物質を常時発酵槽の外に排出する無機物および難分解性物質の除去装置である。
【0013】本発明の方法において、生ゴミの消滅状態を常時測定可能とすることを好ましい態様としている。また、本発明の装置において、好ましくは発酵槽重量を測定する秤を備える。消滅状態を常時測定可能とするため、ロードセルなどの秤で発酵槽重量をモニタリングすることが好ましい。このロードセルなどの秤からの信号で発酵槽の担体の水分コントロールすることができる。
【0014】本発明は、発酵槽径が2m以下の発酵槽をユニットモジュールにしてモジュール台数を増加することで生ゴミの大量処理に対処することを好ましい態様としている。大量の生ゴミを微生物で処理することに対して単純に攪拌機をスケールアップする方式では発酵槽の径が大きくなるにつれて攪拌機の回転トルクが異常に大きくなり実用不可能な回転トルクとなる。これに至らないように発酵槽径が2m以下の発酵槽をユニットモジュールにしてモジュール台数を増加することで生ゴミの大量処理に対処する。実際には、まだ、径の拡大は可能であるが、モーターのイニシャルコストなどを考慮すると、担体充填容積を2.5m3程度でモジュールユニットで区分して大量な生ゴミを処理した方が経済的である。
【0015】本発明において、消臭機構を具備することができる。本発明において、生ゴミを分解する際に発生する臭気は、水と臭気を気液接触させる洗浄を3段階行い、消臭を施し、処理後の臭気は下水道や河川への水に水封排気することで、無公害化を可能にする。また、本発明において、自動制御が可能であるため、メンテナンスが容易で、生ゴミの投入ならびに排出粉(無機物・難分解性物質)の回収を除いては無人運転が可能となる。生ゴミ分解時に発生する臭気は、例えば気液接触の洗浄を3段階施し、かつその処理臭気を下水道や河川への水に水封排気し、無公害化を実現する。
【0016】
【実施例】本発明を実施例で詳細に説明する。本発明はこれらの実施例で何ら限定されるものではない。
【0017】実施例1本発明を図1〜図4を用いて説明する。まずは大量な生ゴミ用の攪拌機(発酵槽)について述べる。以下、4項目の特徴を有する。
A.発酵槽内攪拌羽根および駆動方法図1の発酵槽15には、特殊なリボンスクリュー式羽根(発酵槽内攪拌羽根)13を有す。発酵槽内攪拌羽根13は、駆動モーター8によって、発酵槽駆動スプロケット14を介して回転が伝達される。そして、この発酵槽内攪拌羽根13の回転によって担体を混合していく。発酵槽内攪拌羽根13の詳細は図2に示す。発酵槽攪拌羽根13は、平板を横に寝かし、かつ「ねじり」をいれた形状をしており、この羽根が、発酵槽15の壁面と5〜20mmの透き間をとって発酵槽15内を回転する。この隙間を保ち、発酵槽攪拌羽根13が回転することで、発酵槽内の担体が強制的な左右の移動を少なくし、担体をほぐすために回転力が使用されるため、攪拌機の回転トルクが低減できる。発酵槽内攪拌羽根13を頻繁に回転することで、担体の「ほぐし」の効果が続くため、生ゴミとの混合が良好になっていく。また、発酵槽内攪拌羽根13には「ねじり方向」がある。この「ねじり方向」によって、担体は「ねじり方向」への移動力が若干加わる。その力を利用して、発酵槽内攪拌羽根13の回転方向を正逆を繰り返すことで、担体はほぐれながら左右へ移動し、生ゴミとより均一混合が実現する。図3は発酵槽内攪拌羽根13のねじれ方向が一方向のもの、図4R>4は発酵槽15の左右半分でねじり方向が2方向のものを示す。生ゴミの特性によって一方向・二方向をかえていく。また、発酵槽内攪拌羽根13は、90〜180度ずつでユニットに区切られている。このユニットによって次の3点の利点が生まれる。
1)このユニット交換で、一方向や二方向の変化が容易にできる。
2)万一羽根に損害が生じたとき、簡単にその箇所のユニットを交換できるので、マシンメンテナンスが容易である。
3)担体の強制的な左右への移動を弱め、上記の回転トルクの低減も図っている。
【0018】B.発酵槽重量のリアルタイムモニタリング発酵槽15の給・排気管には、フレキダクト3・4が装着してあり、フレキダクト3・4で配管と発酵槽の重量の縁が切れている。そして、発酵槽15は、発酵槽架台10の上に秤(ロードセル)9を介して設置されている。このフレキダクトの工夫により、秤(ロードセル)9で、発酵槽の重量をリアルタイムで監視できる。この仕組みによって、生ゴミが分解して消滅していく様子が定量的に把握できる。
C.篩機構発酵槽15の底部には、パンチグメタルなどのような穴加工がしてある。この篩機構が、後述するが、微生物では消滅しない生ゴミ中の無機物(灰分)や難分解性物質(繊維質など)を発酵槽15の外へ落とし、粉搬出コンベア11によって粉収集容器は運ばれ、そこストックする仕組みとなっている。粉が粉収集容器に一杯になるところをみはかり、人為的に廃棄する。
D.担体加熱機構発酵槽15の底には、担体を人為的に加温するためにヒーターを装着するか、温水などのような熱媒体を通すジャッケト構造を施す。これにより担体は、適正に加温される。
【0019】次に、上記で述べた機能を有した発酵槽15に、生ゴミを投入し消滅していく過程を説明する。生ゴミを発酵槽15の投入口から投入すると、発酵槽内攪拌羽根13を回転することにより、低い回転トルクで投入口から投入すると、発酵槽内攪拌羽根13を回転することにより、低い回転トルクで内部にある生ゴミを分解する担体と均一混合する。微生物は中温菌と高温菌がバランスよく生息している。中温菌の適正温度は20〜45℃高温菌の適正温度は45〜65℃である。両者の菌には次の特性がある。中温菌で生ゴミ分解を図ると、分解速度は遅く水分蒸発が弱いが、最終的に低分子レベルまで分解は進む。一方、高温菌で生ゴミを分解すると、分解速度は中温菌の3〜5倍の速さはあり、かつ、水分蒸発能力もあるが、分解しにくい副産物を生じるため、中温菌に比べ最終残留物は多い。そこで両者の利点を引き出すため、両者が共存する温度帯40〜50℃で発酵槽内を次の方法で制御する。
【0020】中温菌は、生ゴミの分解時に発生する発生熱量が少なく、生ゴミ中のすべての水分を蒸発させられない。そのため、外部より人為的に加温が必要になる。そこで、先の述べた発酵槽の担体加熱機構が必要となり、適正温度まで担体を加熱する。また、発酵槽15の上部から、ブロア1より空気を加熱ヒーター2に押し込み、その高温空気を供給する。この供給で、湿りがちになる担体の乾燥をあおる仕組みになっている。中温菌を立ち上げ、担体の攪拌をしないままで長時間おいておくと、担体に分解熱が蓄積し、高温菌の活動があおられる。高温菌の活動が開始したあとまで、担体を攪拌しないでおくと、短時間で担体温度が60℃近くまで上昇する。この温度帯になると、中温菌の活動は停止し、高温菌の独占支配に落ち着く。この高温菌の独占支配では、中温菌の特性がでてこない。この独占を防ぐため、発酵槽壁面温度を中温・高温菌が共存する温度帯40〜50℃で制御し、かつ、攪拌羽根を頻繁に回転することで、本発明は、生ゴミの分解熱を発散させ、必要以上の担体温度上昇を防ぐ運転を実施している。
【0021】また、生ゴミを微生物分解すると、好気であろうが嫌気であろうが、最終的に無機物(灰分)や難分解物質(繊維質など)の残留物が生じる。この残留物を担体中に蓄積をしていくと微生物への通気阻害を起こしやすい。本発明では好気性菌を主体に活動をあおっているため通気阻害を起こす残物蓄積を排除する工夫が必要である。それが先に述べた発酵槽の篩機構である。本発明は、この篩機構で不用な残留物を発酵槽15の外へ排除でき長期安定な微生物活動ができる工夫を外部から施している。さらに、この篩機構により、生ゴミを分解して残物が生じても系外に排出するので、担体量は一日(24時間)で元に戻るために、先にのべた発酵槽15の重量モニタリング機構によって、担体中の水分割合が予想できる。本発明の微生物の適正担体水分は、20〜30重量%であるので、発酵槽の重量をモニタリングする機能で、不足水分を検知し、電磁弁5を開放して、発酵槽内にある散水スプレー16から散水を行い、担体が適正水分になるように加水する仕組みになっている。また、本発明の生ゴミ分解菌にはわずかに嫌気性菌(乳酸菌・酵母菌など)がいる。この嫌気性菌の活動で担体のpHを酸性側に持っていく。この酸性に進ませることで、臭気が著しく消臭できる。また、図1に示す様に、発酵槽の出口配管中に散水スプレー17を設置し、その後に、水スクラバー18・19を2基設置し消臭をせしめている。なお、排気は、ブロア20などで、吸引し、系外へ排出する。本発明で行う消臭方法は、生ゴミを分解する際に発生する臭気に対して、計3回の気液接触することで低減させている。さらに、この臭気を下水道に放出したり、河川へ水封排気する事で、完全な無公害化を実現できる。
【0022】実施例2担体容量が1.5m3の試作機を製作し、本発明の実施結果を検証した。生ゴミとして排水装置からの脱水汚泥・ピラフ・麺・ご飯・魚・野菜などの混合物を一日に100〜200kg投入した。臭気測定は第2洗浄塔(消臭塔)出口で行った。結果は下記のとおりであった。まず、一日の消滅結果を図5に示す。これにより、一日(24時間)で生ゴミは消滅せしめていることがわかる。また、このようなテストを3カ月間続けた結果を図6R>6に示す。この図から、生ゴミの真の消滅率である固形分消滅率で40%が観測できる。表1に、生ゴミ処理機の条件変更後と通常との比較を示す。臭気に関して、表1より、発生臭気が検知管では観測できないまで消臭できていることがわかる。
【0023】表1において、変更条件は以下の通りである。
(A)温風ブロアの設定温度(60℃→50℃)
実施日:2月17日〜3月21日目的:発酵槽内の担体温度差(約40℃)を維持するのに60℃の温風を送る必要があるのか、また、ブロアによって供給される温風の温度が下がることによりどのような影響があるのかを調べる。
(B)壁面ヒーターの設定(横ヒーターOFF)
実施日:2月24日〜3月21日目的:担体温度を維持するのに上、横、底とヒーターがあるが、そのうち上、横ヒーターを停止し通常との変化を調べる。
(C)攪拌停止時間の設定(30秒→60秒)
実施日:3月17日〜3月21日目的:攪拌停止の時間を長く(60秒)し、それに伴い発生する臭気がどのように変化するかを調べる。
【0024】
【表1】


【0025】表1より明らかなように、実験結果をまとめると以下のとおりである。
変更条件(A)
槽内湿度、担体温度、壁面温度に於いては通常の範囲から僅かに出ているが、全体的にほぼ同じ状態を維持出来ているので温風ブロアの設定は50℃でも十分であると思われる。
変更条件(B)
槽内温度・湿度、担体温度、壁面温度、消滅率(重量・固形分)については温風ブロアの設定を変更した時の様に通常の範囲から僅かに出ているものもあるが、通常とほぼ同じ状態である。また、pH、臭気(アミン・アンモニア)が発生してしまったので条件変更は失敗したと思われたが原因を考えてみると、壁面ヒーター(横ヒーター)を切ったからではなく、攪拌を長時間停止させたことによって臭気が発生した可能性が極めて高いので壁面ヒーター(横ヒーター)を稼働させなくても通常の状態を維持することは可能であると思われる。
変更条件(C)
槽内温度、壁面温度については変化はみられないが、湿度、担体温度については通常の範囲から僅かに出ているものもあるが、範囲内にある。消滅率についてかなりばらつきがあった。また、担体が酸性になったことにより、アミン、アンモニア共に0ppmと臭気に問題はなかった。
【0026】
【発明の効果】このような外部からの人為的施しによって、微生物の活性をあおり、消臭を施したことにより、実用的な生ゴミの消滅を実現し、かつ、臭気の無公害化を可能とした。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の生ゴミの微生物処理装置(発酵槽)のフローシートである。
【図2】発酵槽内の攪拌羽根の詳細を説明する図面である。
【図3】発酵槽内攪拌羽根のねじれ方向が一方向のものを説明する図面である。
【図4】発酵槽内攪拌羽根の左右半分でねじり方向が2方向のものを説明する図面である。
【図5】本発明の生ゴミの微生物処理装置を用いた生ゴミの一日の処理重量推移グラフである。
【図6】本発明の生ゴミの微生物処理装置を用いた生ゴミの3ヶ月の消滅結果を説明する図面である。
【符号の説明】
1 ブロア
2 加熱給気ヒーター
3 フレキダクト
4 フレキダクト
5 散水用電磁弁
6 排気ダンパー(弁)
7 排気ダンパー(弁)
8 駆動モーター
9 ロードセル(秤)
10 発酵槽架台
11 粉取り出しコンベア
12 加熱装置
13 発酵槽内攪拌羽根
14 発酵槽駆動スプロケット
15 発酵槽
16 散水管
17 散水スプレー
18 洗浄塔
19 洗浄塔
20 ブロア
21 駆動モーター用スプロケット
22 駆動チェーン
23 粉排出装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】 ほぐしながら回転して大量の生ゴミと微生物を混合する、生ゴミの分解時に発生する臭気を極力抑制した生ゴミの微生物処理方法であって、常時人為的に外部より微生物の活動を促進する手段を加えることにより、生ゴミの分解が総投入量のうち水分を除く固形物の40%以上が約24時間で消滅可能としたことを特徴とする生ゴミの微生物処理方法。
【請求項2】 微生物の活動を促進する手段が、無機物および難分解性物質を常時発酵槽の外に排出することである請求項1の生ゴミの微生物処理方法。
【請求項3】 生ゴミの消滅状態を常時測定可能とする請求項1または2の生ゴミの微生物処理方法。
【請求項4】 発酵槽径が2m以下の発酵槽をユニットモジュールにしてモジュール台数を増加することで生ゴミの大量処理に対処する請求項1ないし3のいずれかの生ゴミの微生物処理方法。
【請求項5】 ほぐしながら回転する混合装置を備える大量の生ゴミを微生物で処理する生ゴミ処理装置であって、生ゴミの分解時に発生する臭気を極力抑制し、総投入量のうち水分を除く固形物の40%以上を約24時間で消滅することができる微生物の活動促進手段を備えることを特徴とする生ゴミの微生物処理装置。
【請求項6】 微生物の活動促進手段が、無機物および難分解性物質を常時発酵槽の外に排出する無機物および難分解性物質の除去装置である請求項5の生ゴミの微生物処理装置。
【請求項7】 発酵槽重量を測定する秤を備える請求項5または6の生ゴミの微生物処理装置。
【請求項8】 発酵槽径が2m以下の発酵槽をユニットモジュールとした複数台数のモジュールを備える請求項5、6または7の生ゴミの微生物処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図5】
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