説明

生細胞観察用ディッシュ

【課題】
培養液交換ができ、かつ透過光を用いる位相差観察や微分干渉観察などが行えるカバーガラス保持具を提供する。
【解決手段】
中央に上面用カバーガラスを取り付けるための開口を有する円盤状の上板と、中央に上面用よりも径が大きい下面用カバーガラスを取り付けるための開口を有する円盤状の下板と、中央に上面用と同じ径の開口を有し径の違う上面用および下面用カバーガラスを保持する円盤状の中板と、カバーガラスとシール用パッキンおよび締付け用ビスにより閉空間を構成し、培養液を注入・排出するための2本のノズルを閉空間の最上面である上板の上面用カバーガラスシール用パッキンより外側で下面用カバーガラスシール用パッキンより内側の部分に設けることを特徴とする生細胞観察用ディッシュ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、丸形カバーガラスに付着培養した生細胞を生物顕微鏡で観察する際に用いる保持具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図3に示す密閉式保持具(ANALYTICAL BIOCHEMISTRY 207,208−213(1992))と図4に示す泰榮電器株式会社にて発売済みの蛍光観察専用ディッシュがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
図3に示す密閉式保持具は、生細胞が付着したカバーガラスともう一枚のカバーガラスがパッキンをはさんで固定されることでできる空間に注射器で培養液を注入して使う器具であるため、培養液の交換をしながらの長時間観察ができない。
図4に示す蛍光観察専用ディッシュは培養液交換は可能であるが透過光を用いる位相差観察や微分干渉観察などができない構造である。また、透過光を用いる観察を行うために小径のカバーガラスを上板上面に取り付ける場合、長時間観察では培養液中に溶け込んでいる空気が気泡となって上面カバーガラス内面に滞留し十分な透過光を得られなくなることが予想される。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1によれば、中板は径の大きい下面用カバーガラスだけでなく小径の上面用カバーガラスにも締め付け力を与えることことができ、培養液を保持するための閉空間を形成することが可能となる。
【0005】
請求項2によれば、上面用カバーガラスは閉空間天井部の最低レベルにセットされるため、発生した気泡は上面用カバーガラスの下面に滞留しずらくなりスリットを経て培養液排出用ノズル部に導かれる。
【0006】
請求項3によれば、培養液から発生する気泡が閉空間内最上部であるノズル開放部のテーパー加工した部分に集まることで気泡の排除が容易に行える。
【発明の効果】
【0007】
請求項1によれば、カバーガラス上に培養した生細胞に培養液を容易に供給でき、培養液交換をしながら透過光を用いた観察が可能となる。
【0008】
請求項2によれば、培養液注入時の排気及び気泡の排除が容易となる。また、組立時の上面カバーガラス位置決めが容易となる。
【0009】
請求項3によれば、気泡の排除を容易にするだけでなく、接液範囲には狭隈部分や不可視部分が無く分解洗浄及び滅菌・乾燥を容易に行える。
【実施例】
【0010】
図1は、本発明の1実施例である培養液交換ディッシュの構造説明図である。11で示す下板、12で示す中板、13で示す上板と14a、14bで示す2本のノズルの材料はステンレス鋼である。
【0011】
15で示す下面カバーガラスには直径25mmを、16で示す上面カバーガラスには直径15mmを用い、17a、17b、17cで示すパッキンとともに培養液を保持するための閉空間を構成する。
【0012】
14a、14bで示す培養液注入・排出ノズルはパッキン17bの外側でパッキン17a及び17cの内側に設ける。
【0013】
12で示す中板には中央の開口から培養液注入・排出ノズルの位置を結ぶ1mm幅のスリットを設ける。また、上面中央には16で示す上面カバーガラスの取付が容易に行えてかつ気泡が滞留しないように上面カバーガラス取付面を一段低い面とする。
【0014】
図2のとおり培養液注入・排出ノズルの内面側をシール溶接の上テーパー加工する。
【産業上の利用可能性】
【0015】
タイムラプスビデオ撮影が標準装備となりつつある生細胞観察用倒立型顕微鏡では、顕微鏡ステージ上の生細胞に通常生活環境である温度とpHを与えることが長時間観察には必須であることを多くのバイオ研究者が自覚しつつある。本発明によるディッシュは、特開2003−116518に示す生細胞観察用顕微鏡温度制御装置に取り付けることで温度制御ができ、さらに培養液交換をしながら透過光を用いる簡便な観察方法を可能とするものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の1実施例である生細胞観察用ディッシュの分解斜視図である。
【図2】本発明の1実施例である生細胞観察用ディッシュの中板のスリット位置での断面図である。
【図3】従来の技術である密閉式保持具の分解斜視図である。
【図4】従来の技術である蛍光観察専用ディッシュの分解斜視図である。
【符号の説明】
【0017】
11 下板、 12 中板、 13 上板
14a及び14b 培養液注入・排出ノズル、
15 下面カバーガラス、 16 上面カバーガラス
17a、17b及び17c パッキン、 18 ビス(4本)
19 観察対象細胞、 31 ベース、
32 下面カバーガラス、 33 パッキン
34 上面カバーガラス、 35 ストッパー
36 注射針挿入口 41 下板、 42 カバーガラス
43 パッキン 44 上板
45a及び45b 培養液注入・排出ノズル 46 ビス(4本)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央に上面用カバーガラスを取り付けるための開口を有する円盤状の上板と、中央に上面用よりも径が大きい下面用カバーガラスを取り付けるための開口を有する円盤状の下板と、中央に上板と同じ径の開口を有する円盤状の中板が、両カバーガラスとパッキンおよび締付け用ビスにより閉空間を構成し、培養液を注入・排出するための2本のノズルを閉空間の最上面である上板に設けることを特徴とする生細胞観察用ディッシュ。
【請求項2】
上板に設けた2本のノズルからの内部流路として中央の開口に向かうスリットと上面用カバーガラス収納部として一段低い面を設けた中板を用いることを特徴とする請求項1の生細胞観察用ディッシュ。
【請求項3】
上板に設けた2本のノズルの内面開放部をシール溶接しテーパー加工することを特徴とする請求項1の生細胞観察用ディッシュ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−30465(P2006−30465A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−207317(P2004−207317)
【出願日】平成16年7月14日(2004.7.14)
【出願人】(300060056)泰榮電器株式会社 (1)
【Fターム(参考)】