説明

生食用赤身魚肉の加工食品

【課題】 簡便且つ安全な手段により、−18〜−25℃程度の通常の冷凍温度帯での長期間保管中における肉色の変色及び風味の劣化を抑制でき、冷凍保管状態〜解凍後未開封状態〜包装を開封して実際に食品を賞味する状態までの各段階を通じて、好ましい鮮紅色の肉色を呈する生食用赤身魚肉の加工食品を提供すること。
【解決手段】 生食用赤身魚肉を、アスコルビン酸類及び/又はエリソルビン酸類をアスコルビン酸及びエリソルビン酸としての重量換算で総量50〜300ppm含有する状態で、23℃における酸素透過度が1000〜2000cc/m2 ・24hrs ・ atmの範囲内である包装材料を用いて密封包装した後、冷凍処理する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍での長期保管中の肉色及び風味の劣化が抑えられ、冷凍保管中の段階、解凍後開封前の段階、包装を開封してから実際に食品を賞味するまでの段階を通じて、好ましい鮮紅色の肉色を呈する生食用赤身魚肉の加工食品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、マグロ、カツオ等の脂肪分が少ない生食用赤身魚肉をミンチ状に加工して、サラダオイル、白絞油、ショートニング、マーガリン等の脂肪分を混合して、脂身の持つコク味、風味を付与させた食品の加工方法は良く知られている。例えば、マグロ赤身肉に油脂を添加した製品は、ネギトロ、トロまぐろ等と称されて、そのまま、あるいは海苔巻きの具、寿司種等に広く利用されており、それらの製造技術も多数報告されている。
【0003】
例えば、マグロ肉を挽肉器等で粉砕肉とし、その中にショートニングを5〜25%添加して練り合わせる方法(特許文献1参照)、ミンチ状生鮮魚肉に、融点が15〜40℃で且つ20℃の固体脂指数が5〜25である、コーン硬化油とコーン白絞油との混合系ショートニングを1〜30重量%含ませる方法(特許文献2参照)、ミンチ状生鮮魚肉に、魚介類からの抽出液で呈味成分を含有し油脂の融点が15〜40℃で且つ固体脂指数が20℃で5〜25である油中水分散型エマルジョンを1〜30重量%混合する方法(特許文献3参照)、マグロの粉砕肉100重量部当たり、ガス量が100g中20ml以下になるように急冷練り合わせをしたショートニングを5〜25重量部加える方法(特許文献4参照)、マグロ肉に卵黄と蛋白質とキサンタンガムを含む水中油滴型乳化油脂を混合する方法(特許文献5参照)、食用油脂に対しポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリンクエン酸脂肪酸エステル及びグリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステルの内から選ばれた1種又は2種以上の乳化剤を配合する方法(特許文献6参照)、等が提案されている。
【0004】
しかしながら、これらの提案された方法で製造された魚肉加工食品は、一般には、鮮度を保持するために凍結状態で流通・保管させることが広く行われているが、何れも冷凍保管中に赤身魚肉が褐色又は灰色に変色したり、あるいは冷凍保管中に問題がなくても解凍中・開封後に肉色が急速に変色したりして、加工食品を実際に賞味する際の肉色が好ましくないという問題点を解消したものではなかった。
【0005】
この赤身魚肉の変色は、該魚肉中に含まれる色素蛋白質であるミオグロビンの変化により生じる。即ち、ミオグロビンは酸素と可逆的に結合するヘム鉄を分子中に有しており、ヘム鉄が酸素と結合して生じる好ましい色調のオキシミオグロビンから、ヘム鉄が酸化されてメトミオグロビンができるためであり、この反応は一般にメト化と呼ばれている。社団法人 日本冷凍食品協会による指導基準では、冷凍食品の定義は「冷凍食品とは前処理を施し、急速凍結を行って、−18℃以下の凍結状態で保持した包装食品をいう。」と定められており、通常、冷凍食品は−18〜−25℃程度の温度帯の冷凍庫で保管、流通されているが、このミオグロビンを含むマグロ等の赤身魚肉でのメト化は、−20℃近辺での冷凍保管中でも確実に進行するため、メト化による変色をほぼ完全に抑制するためには−35〜−65℃程度のより低温温度帯、いわゆる超低温での保管、流通が必要とされることは広く知られている(非特許文献1参照)。実際に、この知見に基づいて、マグロ、カツオ等の生食用赤身魚肉の長期冷凍保存用には、超低温コールドチェーンが広く実用化されている。
【0006】
従来から、ミオグロビンのメト化の防止方法として、酸化防止剤、pH調整剤等の使用等、多種多様な方法が提案されており、上記の赤身魚肉の加工方法の中でもこれらの酸化(メト化)抑制方法を組み入れたものが存在する。しかしながら、様々な試みによっても、長期の−20℃近辺の冷凍保管中での赤身魚肉の肉色の変色の進行を効果的に抑制できるものは存在せず、上記の加工方法で製造された赤身魚肉加工食品はほぼ例外なく、現在、超低温保管・物流によっているのが実情である。
【0007】
また、生食用赤身魚肉の加工食品を−20℃近辺の温度で保管する際には、肉色の変色以外に風味の劣化の問題がある。生食用赤身魚肉は、雰囲気中の酸素分圧(酸素濃度)が高い場合に、ミオグロビンが酸素と結合することにより鮮紅色の発色を示し、良好な外観を呈する。従って、オキシミオグロビンの状態をなるべく保持するためには、なるべく肉付近の酸素分圧が高いことが好ましいため、酸素透過性の高い包装材料の使用が望ましい。しかしながら、酸素透過性の高い包装材料を使用した場合、包装材料を透過する酸素により魚肉特有の好ましい風味が減退しやすい上に、魚肉や添加する脂肪分に含まれる脂質が酸素によって酸化されることによって、いわゆる生ぐさ臭、油焼け臭が冷凍保管中に2〜3ヶ月程度で発生し、その商品価値がなくなりやすい。いってみれば、冷凍中の肉色の保持(酸素を必要とする)と風味の劣化抑制(酸素の除去が好ましい)は、相背反する関係にあって、両立させることが難しいのである。
【特許文献1】特公平5−4061号公報
【特許文献2】特許第2503471号明細書
【特許文献3】特許第2570298号明細書
【特許文献4】特許第2676193号明細書
【特許文献5】特開平9−234002号公報
【特許文献6】特開2000−60495号公報
【非特許文献1】「マグロ −その生産から消費までー」成山堂書店、昭和59年1月18日発行(改訂初版)、p.230 〜p.241
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本出願人は、先に、赤身魚肉を密封包装する包装材料として酸素難透過性包装材料を用い、且つ赤身魚肉に食品添加物である還元剤を高濃度で含有せしめることにより、冷凍保管中はくすんだ肉色となるが風味の劣化が抑えられ、解凍・開封後に賞味する際に、肉色が復元して好ましい鮮紅色の肉色を呈するため、−20℃近辺の保管温度で長期の冷凍保管が可能となる生食用赤身魚肉の加工食品の発明について、出願を行った(特願2005−31059)。
しかしながら、この生食用赤身魚肉の加工食品は、解凍、開封後の肉色ならびに風味は非常に好ましいものの、冷凍保存中及び解凍後に開封する前の段階において、肉色が退色してくすんだものとなる欠点があり、冷凍保管状態等での肉色を実際に観察して購入する消費者のニーズに完全に応えたものとはいえなかった。
【0009】
従って、本発明の目的は、簡便且つ安全な手段により、−18〜−25℃程度の通常の冷凍温度帯での長期間保管中における肉色の変色及び風味の劣化を抑制でき、冷凍保管状態〜解凍後未開封状態〜包装を開封して実際に食品を賞味する状態までの各段階を通じて、好ましい鮮紅色の肉色を呈する生食用赤身魚肉の加工食品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、生食用赤身魚肉を密封包装する包装材料として、中間的な酸素透過性を有する包装材料を用い、且つ生食用赤身魚肉にアスコルビン酸類及び(もしくは)エリソルビン酸類を冷凍中の肉色の退色が起こらない程度の適切な濃度で含有せしめることにより、−20℃近辺の通常の冷凍食品の保管温度帯による長期保存を経ても、冷凍保管状態、解凍後未開封状態、包装を開封して実際に食品を賞味する状態までの各段階を通じて、好ましい鮮紅色の肉色を呈し、なおかつ、食品の風味の面においても好ましい魚肉の風味が保たれることを見出し、本発明を完成させた。
【0011】
即ち、本発明は、生食用赤身魚肉を、アスコルビン酸類及び/又はエリソルビン酸類をアスコルビン酸及びエリソルビン酸としての重量換算で総量50〜300ppm含有する状態で、23℃における酸素透過度が1000〜2000cc/m2 ・24hrs ・ atmの範囲内である包装材料を用いて密封包装した後、冷凍処理してなる、生食用赤身魚肉の加工食品を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、簡便且つ安全な手段により、−18〜−25℃程度の通常の冷凍温度帯での長期間保存中における肉色の変色及び風味の劣化を抑制でき、且つ、冷凍保管状態〜解凍後未開封状態〜包装を開封して実際に食品を賞味する状態までの各段階を通じて、好ましい鮮紅色の肉色を呈する生食用赤身魚肉の加工食品を提供することができる。
即ち、本発明の生食用赤身魚肉の加工食品は、特殊な冷凍保管設備及び多大なランニングコストを必要とする超低温物流を必要とせず、−20℃近辺の温度帯での長期冷凍貯蔵が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の生食用赤身魚肉の加工食品について詳述する。
本発明の対象となる生食用赤身魚肉は、色素成分としてミオグロビンを主体として含有する生食用赤身魚肉である。色素成分としてミオグロビンを主体的に含有する代表的な魚としては、マグロ、カツオ等が挙げられる。使用部位は、ミオグロビンを含有する部位であれば特に限定されず、赤身部位、スキ身(中落ち)部位、小トロ部位、中トロ部位、大トロ部位、血合等を用いることができる。また、上記ミオグロビン含有生食用赤身魚肉は、生食用魚肉であれば、冷凍肉であっても非冷凍肉であってもよい。
【0014】
本発明で使用するアスコルビン酸類及びエリソルビン酸類としては、L−アスコルビン酸、エリソルビン酸、あるいはこれらの酸の塩類(例:ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩)、あるいはこれらの酸の誘導体(例:脂肪酸エステル、配糖体)等のアスコルビン酸類及びエリソルビン酸類が挙げられる。
これらのアスコルビン酸類及び/又はエリソルビン酸類の添加量は、上記ミオグロビン含有生食用赤身魚肉中に、アスコルビン酸及びエリソルビン酸としての重量換算で総量として、50〜300ppmであり、好ましくは100〜200ppmである。
アスコルビン酸類とエリソルビン酸類との存在比は制限されない。エリソルビン酸は、アスコルビン酸の立体異性体であり、アスコルビン酸が持つビタミンCとしての生理機能はほとんど有していないが、酸化防止剤としてはアスコルビン酸と類似した挙動を示し、ほぼ同様な効果を持つからである(文献:「Food processing 」誌 1989年11月号、Putman社発行 p62参照)。
【0015】
また、本発明の生食用赤身魚肉の加工食品には、その効果を妨げない範囲において、サラダオイル、白絞油、ショートニング、マーガリン等の油脂、醤油、ラー油等の調味料、ネギ、大根等の野菜加工品、イノシン酸塩、グルタミン酸塩等の調味料、クエン酸、コハク酸等の酸味料、グリシン、ε−ポリリジン等の保存料、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル等の乳化剤、pH調整剤、香料、増粘多糖類、膨張剤、たん白質、糖類等を添加することができる。特に、pH調整剤を添加することが好ましい。マグロ等の赤身魚肉のミオグロビンのメト化は、肉のpHが酸性になると早く進行することは、1950年代からの研究で明らかになっており(文献:「冷凍」昭和62年12月号、日本冷凍空調学会発行、p31等参照)、肉中の解糖系酵素の働きによって生じる乳酸により酸性にシフトするpHを微酸性〜中性領域のpH(pH6〜7程度)に戻すために、アルカリ性のpH調整剤を添加することが好ましい。具体的には、リン酸三ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム等のリン酸塩、炭酸水素ナトリウム等の炭酸塩等が適宜使用される。
【0016】
本発明に用いる酸素中間透過性包装材料としては、通常の魚肉加工食品に使用される、単層もしくは複層構造を有するシート状あるいはフィルム状の包装材料を適宜に成型して使用することができる。上記酸素中間透過性包装材料は、23℃における酸素透過度が、1000〜2000cc/m2・24hrs ・atm の範囲のものである必要があり、好ましくは1300〜1700cc/m2・24hrs ・atm の範囲のものである。なお、酸素透過度は、下記のJIS規格によるものである。
酸素透過度:JIS K 7126A、B法(23℃,0%RH)
【0017】
上記酸素中間透過性包装材料の具体的な組成としては、弱いバリア性を有する延伸ポリプロピレン等の外層と、シーラント層としての直鎖状低密度ポリエチレン等の内層とを組み合わせた複層フィルム等が好ましい。
上記酸素中間透過性包装材料は、酸素透過性の他に、価格、輸送保管性、保護性、作業性、密封性、耐冷凍性等、一般に冷凍食品用包装材料に要求される諸機能を考慮して材料を選択することが好ましい。
【0018】
本発明の生食用赤身魚肉の加工食品は、好ましくは、例えば次のようにして製造される。
本発明の生食用赤身魚肉の加工食品を製造するには、まず、生食用赤身魚肉に、アスコルビン酸類及び/又はエリソルビン酸類を含んだ添加物を添加、混合し、該魚肉中にアスコルビン酸類及びエリソルビン酸類をなるべく均一になるように含有させることが好ましい。赤身魚肉が、原料となる魚肉を細断し混和したミンチ状魚肉である場合、上記添加物を容易に魚肉中に均一に含有させることができるため、本発明は、生食用赤身魚肉がミンチ状魚肉であるネギトロ等の加工食品である場合に特に優れた効果が発揮される。ミンチ状の生食用赤身魚肉への上記添加物の添加、混合は、サイレントカッター、フードカッター、真空ボールカッター等の装置を使用することが好ましい。上記添加物の添加時期は、ミンチ状の生食用赤身魚肉の原料段階で添加してもよく、あるいはその漬込み時又は練り込み時等の各製造工程における適宜の段階で添加してもよい。例えば、ネギトロと一般に称されるミンチ状のマグロ赤身肉に油脂を添加した加工食品では、ミンチ状のマグロ赤身肉に植物油脂等を練りこむ際に上記添加物を同時に添加すればよい。
本発明は、生食用赤身魚肉がすき身状魚肉、細片状魚肉、スライス状魚肉等であっても好適である。
【0019】
次に、アスコルビン酸類及び/又はエリソルビン酸類等の添加物を含有させた魚肉を、上記酸素中間透過性包装材料からなる包装体に充填し、密封した後、冷凍処理を行うことにより、本発明の生食用赤身魚肉の加工品が得られる。密封は、通常の方法、例えばヒートシールによって行えばよく、その際、ある程度の真空包装を行っても、加工食品の品質に悪影響を及ぼすことはない。冷凍処理は、通常の方法により−30〜−60℃程度の温度で急速凍結を行えばよい。
【0020】
本発明の生食用赤身魚肉の加工食品は、−18〜−25℃程度の温度帯で保管流通させても、長期保管中の肉色及び風味の劣化が抑えられる。本発明の生食用赤身魚肉の加工食品は、中間的酸素透過性を有する包装材料の使用と適量のアスコルビン酸類・エリソルビン酸類の添加との適した組み合わせにより、凍結中の包装内部の環境が、風味の劣化及び肉色の変色を抑制されるものとなっているからである。本発明で規定する酸素透過度より酸素バリア性が高く、酸素透過度の低い包装材料を使用した場合は、得られる加工食品は冷凍状態及び解凍後未開封状態の肉色がすみやかに変色してしまう。また、本発明で規定する酸素透過度より酸素バリア性が低く、酸素透過度が高い包装材料を使用した場合は、冷凍中の風味の劣化が速やかに進行してしまう。同様に、該加工食品中のアスコルビン酸・エリソルビン酸の濃度についても、本発明で規定する量よりも少なければ、冷凍中の風味の劣化は速やかに進行し、且つ開封後の肉色は好ましくなくなる。また、本発明で規定する量よりも多ければ、冷凍状態及び解凍後未開封状態の肉色の変色は速やかに進行してしまう。すなわち、本発明における中間的酸素透過性を有する包装材料の使用と、適量のアスコルビン酸類・エリソルビン酸類の添加との組み合わせによってのみ、−20℃近辺の通常の冷凍食品の保管温度帯による長期保存を経ても肉色の変色及び風味の劣化を抑制でき、冷凍保管状態、解凍後未開封状態、包装を開封して実際に食品を賞味する状態までの各段階を通じて、好ましい鮮紅色の肉色を呈する生食用赤身魚肉の加工食品を提供することができるのである。
【実施例】
【0021】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されない。
【0022】
半解凍状態にした冷凍メバチマグロブロック肉2kgに対して表1に示す配合の添加物を添加して、サイレントカッターで粉砕・混和してネギトロ状マグロ加工品をそれぞれ製造した。製造したネギトロ状マグロ加工品をそれぞれ、表2に示す構成からなる7種類の包装材料(包装1〜7)をそれぞれ用いて3方シールでシート状に成型した包装容器に100gずつ入れ、真空包装機により真空包装し、直ちに−40℃に設定のエアブラストフリーザーで凍結した後、−20℃に設定の冷凍庫で保管した。なお、表2に示す包装1〜7の包装材料の詳細は次の通りである。
【0023】
包装1は、包装外側の「厚み15μmの延伸ナイロン(ONY)フィルム」と、内側の「厚み50μmの直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルム」とを張り合わせた複層フィルムからなる包装材料である。
包装2は、包装外側の「厚み12μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム」と、内側の「厚み50μmのLLDPEフィルム」とを張り合わせた複層フィルムからなる包装材料である。
包装3は、包装外側の「厚み40μmの延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム」と、内側の「厚み30μmのLLDPEフィルム」とを張り合わせた複層フィルムからなる包装材料である。
包装4は、包装外側の「厚み25μmの延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム」と、内側の「厚み50μmのLLDPEフィルム」とを張り合わせた複層フィルムからなる包装材料である。
包装5は、包装外側の「厚み20μmの延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム」と、内側の「厚み50μmのLLDPEフィルム」とを張り合わせた複層フィルムからなる包装材料である。
包装6は、包装外側の「厚み20μmの無延伸ポリプロピレン(CPP)フィルム」と、内側の「厚み30μmのLLDPEフィルム」とを張り合わせた複層フィルムからなる包装材料である。
包装7は、厚さ60μmのLLDPE単層フィルムからなる包装材料である。
【0024】
各試料(冷凍ネギトロ状マグロ加工品)を、1、3、5ヵ月後に冷凍庫から取り出して、まず冷凍状態での肉色について、下記の方法により肉眼による官能評価を行った。該評価後、直ちに冷凍ネギトロ状マグロ加工品を包装ごと流水で解凍した。解凍後の未開封状態のネギトロ状マグロ加工品について、同様に肉色の官能評価を行った。その後、開封したネギトロ状マグロ加工品を皿にあけて、1時間程度室温に放置した後、同様に肉色の官能評価及び、下記の方法による風味の官能評価並びに総合評価を行った。
【0025】
(肉色の官能評価の方法)
5人のパネラーによる官能検査を行った。具体的には、冷凍ネギトロ状マグロ加工品の冷凍状態、解凍後未開封状態、開封後1時間放置後の状態において、それぞれの外観を各パネラーに呈示し、その色調を、評価基準:4=好ましいマグロの赤みを有している、3=少しマグロの赤みが薄れている、2=かなり退色がみられる、1=一部あるいは全部に変色が生じている、に従って4段階に評価をしてもらい、5人のパネラーの評点の平均値を小数点以下四捨五入して評点とした。その結果を表3(−20℃1ヵ月保管後の冷凍ネギトロ状マグロ加工品)、表4(−20℃1ヵ月保管後に解凍し未開封状態のネギトロ状マグロ加工品)、表5(−20℃1ヵ月保管後に解凍、開封し1時間放置後のネギトロ状マグロ加工品)、表6(−20℃3ヵ月保管後の冷凍ネギトロ状マグロ加工品)、表7(−20℃3ヵ月保管後に解凍し未開封状態のネギトロ状マグロ加工品)、表8(−20℃3ヵ月保管後に解凍、開封し1時間放置後のネギトロ状マグロ加工品)、表9(−20℃5ヵ月保管後の冷凍ネギトロ状マグロ加工品)、表10(−20℃5ヵ月保管後に解凍し未開封状態のネギトロ状マグロ加工品)、表11(−20℃5ヵ月保管後に解凍、開封し1時間放置後のネギトロ状マグロ加工品)に示す。
【0026】
(風味の官能評価の方法)
5人のパネラーによる官能検査を行った。具体的には冷凍ネギトロ状マグロ加工品を流水解凍・開封し、1時間程度室温に放置した後、各パネラーにネギトロ状マグロ加工品を試食してもらい、その風味を、評価基準:4=異臭・異味が感じられず好ましいネギトロの風味を感じるもの、3=異臭が無く概ね好ましい風味であるもの、2=生ぐさ臭、油焼け臭が感じられるが軽微なもの、1=強い生ぐさ臭、油やけ臭を感じるもの、又は著しく食味が落ちるもの、に従って4段階に評価をしてもらい、5人のパネラーの評点の平均値を小数点以下四捨五入して評点とした。その結果を表12(1ヵ月後)、表13(3ヵ月後)、表14(5ヵ月後)に示す。
【0027】
(総合評価の方法)
上記の冷凍状態、解凍後未開封状態、開封後1時間放置後の肉色の評価結果、及び風味の評価結果をもとに、下記の評価基準:◎商品として優れている、○商品として問題なし、△商品として若干問題がある、×商品として明らかに問題がある、に従って4段階に判定した。総合評価で×がついた試験区は、その段階で、すべての評価を打ち切った。その結果を表15(1ヵ月後)、表16(3ヵ月後)、表17(5ヵ月後)に示す。
【0028】
【表1】

【0029】
【表2】

【0030】
【表3】

【0031】
【表4】

【0032】
【表5】

【0033】
【表6】

【0034】
【表7】

【0035】
【表8】

【0036】
【表9】

【0037】
【表10】

【0038】
【表11】

【0039】
【表12】

【0040】
【表13】

【0041】
【表14】

【0042】
【表15】

【0043】
【表16】

【0044】
【表17】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
生食用赤身魚肉を、アスコルビン酸類及び/又はエリソルビン酸類をアスコルビン酸及びエリソルビン酸としての重量換算で総量50〜300ppm含有する状態で、23℃における酸素透過度が1000〜2000cc/m2 ・24hrs ・ atmの範囲内である包装材料を用いて密封包装した後、冷凍処理してなる、生食用赤身魚肉の加工食品。
【請求項2】
pH調整剤を含有する請求項1記載の生食用赤身魚肉の加工食品。
【請求項3】
生食用赤身魚肉が、マグロ赤身肉である請求項1又は2記載の生食用赤身魚肉の加工食品。