説明

産業用車両のステップ及び産業用車両

【課題】吊下げ部材の剛性が比較的高い場合であっても、下段側の踏板の変位を許容することができる産業用車両のステップを提供する。
【解決手段】本発明に係る産業用車両のステップ100は、固定踏板部50と、固定踏板部50に対して回動軸Xを介して連結された回動踏板部60とを有する上踏板10と、回動踏板部60に取り付けられて下方に延び、弾性を有する第1吊下げ部材20と、固定踏板部50に取り付けられて下方に延び、弾性を有する第2吊下げ部材30と、第1吊下げ部材20および第2吊下げ部材30によって保持された下踏板40と、を備えている。そして、回動踏板部60は回動軸Xを中心に固定踏板部50に対して上方に回動可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業用車両に取り付ける昇降用のステップ及びこれを備えた産業用車両に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベルやホイールローダ等の産業用車両のうち比較的高さのあるものには、オペレータ等(以下、作業者等ともいう)が運転席やエンジンルームに向かうための昇降用のステップが設けられている。このような産業用車両のステップは、作業中等において障害物に接触し破損するおそれがある。このような破損を防止する機構として、例えば特許文献1には建設車両の乗降用ステップが提案されている。かかる乗降用ステップは、機体左右幅よりも外側に突出する状態で設けられているが、作業走行中等において障害物が乗降用ステップに当たった場合、支持ピンを支点として上方に持ち上げられて退避揺動することにより障害物を乗り越えるので、破損を防止することができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−233541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の乗降用ステップは、各部材が鋼板から形成されており、大きな衝撃が加わった場合に変形する場合がある。また、力が加わる方向によっては退避揺動しない場合があり、この場合も部材が変形するという問題がある。また、特許文献1は、乗降用ステップを使用する際には、ストッパピンを開放して、収納状態から使用可能状態にする必要があり、オペレータによって利便性が低い。
【0005】
一方、複数の踏板が鉛直下方に設けられた吊下げ式のステップを適用した場合、オペレータが乗降する際、上記開放作業を必要としないが、下段側の踏板が地面に接して破損しやすいという問題がある。そこで、下段側の踏板を保持する吊下げ部材をゴムなどの弾性材料によって形成すれば、下段側の踏板が障害物や地面に接触して変位しても、吊下げ部材自体が変形するため、ステップの破損を防ぐことができる。
【0006】
しかし、吊下げ部材が変形しやすいと下段側の踏板が安定せず乗り降りしにくいという問題がある。また近年では、ISO2867によれば、所定の力を加えたときの踏板の許容変位量をより小さくすることが要求されているが、吊下げ部材の剛性を高くすると、吊下げ部材の変形が十分でなく、ステップの破損を回避できないことも想定される。このように、吊下げ式のステップにおいて、踏板を安定させることと、破損を防ぐことは相反する対策が必要であり、これらを両立させることは非常に困難であった。
【0007】
そこで本発明では、踏板を安定させつつも、障害物との接触による破損を防ぐことができる産業用車両のステップを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある形態に係る産業用車両のステップは、固定踏板部と、前記固定踏板部に対して回動軸を介して連結された回動踏板部とを有する上踏板と、前記回動踏板部に取り付けられて下方に延び、弾性を有する第1吊下げ部材と、前記固定踏板部に取り付けられて下方に延び、弾性を有する第2吊下げ部材と、前記第1吊下げ部材および前記第2吊下げ部材によって保持された下踏板と、を備え、前記回動踏板部は、前記回動軸を中心に前記固定踏板部に対して上方に回動可能である。
【0009】
かかる構成によれば、下踏板が上方に変位したとしても、回動踏板部が回動することでその変位を吸収することができる。よって、吊下げ部材の剛性を上げても、接触による破損を防止することができる。
【発明の効果】
【0010】
上記のように、本発明に係る産業用車両のステップによれば、踏板を安定させつつも、障害物との接触による破損を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1実施形態に係る産業用車両の側面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係るステップの斜視図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る上踏板の斜め上方から見た斜視図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る上踏板の斜め下方から見た斜視図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係るステップの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る実施形態について図を参照しながら説明する。以下では、全ての図面を通じて同一又は相当する要素には同じ符号を付して、重複する説明は省略する。
【0013】
(第1実施形態)
はじめに、図1から図4を参照して、本発明の第1実施形態について説明する。図1は、本実施形態に係る産業用車両101の側面図であって、前輪が傾斜面に乗り上がった状態を示している。紙面左側が産業用車両101の前方側であって前進方向である。また、紙面右側が産業用車両101の後方側であって後退方向である。本実施形態に係る産業用車両101は、ホイールローダであり、車両本体102の後側の左側面にステップ100(リアステップ)を備えている。本実施形態に係るステップ100は、オペレータ等が車両本体102のエンジンルーム103に向かうためのステップである。なお、産業用車両101は、ホイールローダに限られず、油圧ショベルなど、他の産業用車両であってもよい。
【0014】
産業用車両101が平坦な道で作業したり、走行したりする場合には、ステップ100は地面に接することはない。しかし、図1に示すように、かき上げ作業時等において、ステップ100の下方部分が車両本体102の底面よりも下方に位置し、地面に接する場合がある。すなわち、図1に示すように、産業用車両101の前輪が傾斜面に乗り上げたときには、産業用車両101が傾いて図中の二点鎖線で示す地表面に接する。このとき、ステップ100の特に右側の下端部分が地面に接し、当該部分が上方に突き上げられる。これにより、ステップ100の下方部分が初期位置から上方に変位することになる。なお、ステップ100の下端部分に障害物が接触した場合における各部材の動作については後で説明する。
【0015】
図2は、本実施形態に係るステップ100の斜視図である。図2に示すように、本実施形態に係るステップ100は、2段からなる吊下げ式のステップであって、上踏板10と、第1吊下げ部材20と、第2吊下げ部材30と、下踏板40と、を備えている。以下、これらの各構成要素について順に説明する。なお、説明を簡単にするため、以下では、図2において紙面奥側(車両本体102側に相当)を「後」、紙面手前側を「前」、紙面右側(車両本体102の後方側に相当)を「右」、紙面左側(車両本体102の前方側に相当)を「左」として説明する。
【0016】
上踏板10は、ステップ100の上段側の踏板である。図2に示すように、本実施形態に係る上踏板10は、固定踏板部50と、回動踏板部60とを有している。ここで、図3は、上踏板10の左斜め上方向からみた斜視図であって、回動状態を示した図である。また、図4は、上踏板10の左斜め下方向からみた斜視図であって、回動状態を示した図である。なお、ここでいう「回動状態」とは、回動踏板部60に上方への力がかかり回動踏板部60が固定踏板部50に対して回動した状態をいう。また、後述する「非回動状態」とは、回動踏板部60に外力が加わっていない基本姿勢の状態をいう。
【0017】
固定踏板部50は、図2から図4に示すように、取付部材51と、上面部材52と、側面部材53と、連結部材54とによって主に構成されている。
【0018】
取付部材51は、ステップ100を車両本体102の側面に固定するための部材である。取付部材51は、左右方向に延びる平板状の形状を有している。取付部材51には、その上縁および下縁に沿って複数箇所に貫通孔55が形成されている。この貫通孔55には、図示しない固定用のボルトが挿入され、このボルトによって取付部材51は車両本体102に固定される。なお、本実施の形態では取付部材51は車両本体102に対してボルトにより固定されているが、取付方法はこれに限られない。
【0019】
上面部材52は、固定踏板部50の上面及び左側面を形成する部材である。上面部材52は、平面視において略台形の形状を有している。上面部材52は、上記の取付部材51に固定されている。上面部材52は、作業者が乗る部分にあたるため、滑り止め用の孔56が形成されている。また、上面部材52の右縁は、略直線状に形成されており、取付部材51に対して傾斜している。さらに、上面部材52の左端部分は中央部分を含むそれ以外の部分に対して直角に屈曲している。この上面部材52の左端部分は、上踏板10の左側面を形成している。なお、固定踏板部50の左側面(上面部材52の左端部分)は、取付部材51に対して傾斜している。なお、上面部材52は、平面視において略台形状であるが、これに限られない。例えば、上面部材52の左側部分が取付部材51に対して傾斜していなくてもよい。
【0020】
側面部材53は、図3、4に示すように、固定踏板部50の前面から右側面に至る面を形成する部材である。側面部材53は板状の形状を有しており、上面部材52の側縁に沿うように形成されている。側面部材53の前面部分は上面部材52の外縁よりも外側に設けられ、その上縁は滑り止めのために波状に形成されている。側面部材53の前面部分以外は、上面部材52の外縁よりも内側に位置している。側面部材53の後端部分は取付部材51に固定されており、その反対側にあたる前面側の左端部分は連結部材54に固定されている。
【0021】
連結部材54は、第2吊下げ部材30に連結する部材である。図3、4に示すように、連結部材54は、後端部分が取付部材51に固定されており、取付部材51に直交している。連結部材54は、上面部材52の左端部分と側面部材53との間を抜けて、前端部分が上面部材52よりも外側に突出している。前端部分はさらに下方に延びるように形成されており、その下端付近には取付孔57が前後方向に形成されている。この取付孔57を利用して、第2吊下げ部材30が取り付けられる。
【0022】
続いて、回動踏板部60は、図2から図4に示すように、上面部材61と、前面部材62と、連結部材63と、補助部材64と、上踏板連結部材65とによって主に構成されている。
【0023】
上面部材61は、回動踏板部60の上面を形成する部材である。上面部材61は、平面視において略三角形の形状を有している。また、上面部材61は、作業者が乗る部分にあたるため、滑り止め用の孔66が形成されている。さらに、回動踏板部60の上面部材61は、非回動状態において、固定踏板部50の上面部材52と平行になるよう構成されている。ただし、回動踏板部60の上面部材61は、固定踏板部50の上面部材52との境界付近において固定踏板部50の上面部材52の上方に位置している。つまり、平面視において、回動踏板部60の上面部材61と固定踏板部50の上面部材52は、それらの境界付近において重なるように配置されている。これにより、両部材52、61の間には隙間がなくなり、作業者の靴から落ちた砂などが、上踏板連結部材65に入り込むのを防止している。
【0024】
前面部材62は、回動踏板部60の前面を形成する部材である。前面部材62は、左端部分がわずかに後方へ屈曲しているが、全体として略平板状の形状を有している。また、前面部材62は、上面部材61の前縁に固定されており、上縁が波状に形成されている。さらに、非回動状態において、前面部材62の左縁が固定踏板部50の側面部材53に接するように構成されている。そのため、回動状態から非回動状態に戻るとき、前面部材62の左縁が固定踏板部50の側面部材53に接し、これにより回動踏板部60が固定踏板部50の下方に向かって回動するのを防いでいる。つまり、前面部材62の左端部分は、ストッパーとして機能している。
【0025】
連結部材63は、第1吊下げ部材20に連結する部材である。連結部材63は、上面部材61の右縁に位置しており、非回動状態において、固定踏板部50の連結部材54と略平行になるよう構成されている。連結部材63は、固定踏板部50の連結部材54とほぼ同じ形状を有している。ただし、連結部材63の後端部分はわずかに左へ屈曲しており、非回動状態において、後縁が固定踏板部50の側面部材53に接するように構成されている。そのため、回動状態から非回動状態に戻るとき、連結部材63の後端縁が固定踏板部50の側面部材53に接し、これにより回動踏板部60が固定踏板部50の下方に向かって回動するのを防いでいる。つまり、連結部材63の後端部分は、ストッパーとして機能している。なお、連結部材63は、固定踏板部50の連結部材54と同様に、前端部分が下方に延びて、その下端付近には取付孔67が形成されている。
【0026】
補助部材64は、後述する上踏板連結部材65を取り付けるための部材である。補助部材64は、略L字状を有しており、前面部材62の左端部分と連結部材63の後端部分を連結するように配置されている。補助部材64は、このように配置されることで、回動踏板部60の補強部材としても機能する。また、補助部材64は、非回動状態において、固定踏板部50の側面部材53の中央部分と平行になるように配置されている。さらに、補助部材64のL型に屈曲した部分と、上面部材61との間には空間が形成されている。
回動踏板部60が回動したとき、この空間に固定踏板部50の上面部材52が入り込み、これにより補助部材64と固定踏板部50の上面部材52とが干渉するのを防いでいる。
【0027】
上踏板連結部材65は、固定踏板部50と回動踏板部60とを連結するとともに、回動踏板部60を固定踏板部50に対して上方に回動させる部材である。本実施の形態において、上踏板連結部材65は、軸棒68と2枚の羽根部材69とによって主に構成されている。2枚の羽根部材69は、それぞれ固定踏板部50の側面部材53の中央部分と、補助部材64に固定されている。そして、非回動状態においては、2枚の羽根部材69は互いに接触し(又は近接した状態で対向し)、それらの上方に軸棒68が位置する。上踏板連結部材65は、このように構成されているため、回動踏板部60は非回転状態にあるとき、固定踏板部50に対して上方に向かってのみ回動することができる。別の言い方をすれば、回動踏板部60の回動範囲は、非回転状態における位置よりも上方側の領域である。
【0028】
また、軸棒68の延在方向の軸、すなわち回動踏板部60の回動軸X(図中の一点鎖線)は、平面視において、産業用車両101の進行方向に対して傾斜するように設けられている。すなわち、回動軸Xは、上踏板10を横切り、第1吊下げ部材20と第2吊下げ部材30が向かい合う方向(左右方向)に対して傾斜するように構成されている。本実施形態では、この傾斜角度が60度になるよう構成されている。なお、この傾斜角度は、90度以下とすれば、より速やかに非回動状態に戻ることができる。以上が、上踏板10についての説明である。引き続き、上踏板10以外の構成要素についても説明する。
【0029】
第1吊下げ部材20は、下踏板40を保持する部材である。第1吊下げ部材20は、上下方向に延びており、上方部分が回動踏板部60の連結部材63に連結されている。第1吊下げ部材20と連結部材63は、固定用のボルト21とナット22を用いて連結されている。第1吊下げ部材20は、ゴム板で形成されており、そのため弾性を有している。また、第1吊下げ部材20は、全体としても板状の形状を有しており、左右方向を厚み方向とし、前後方向を幅方向としている。そのため、第1吊下げ部材20は、左右方向に曲がりやすく、前後方向には曲がりにくく構成されている。
【0030】
第2吊下げ部材30は、下踏板40を保持する部材である。第2吊下げ部材30は、上下方向に延びており、上方部分が固定踏板部50の連結部材54に連結されている。第2吊下げ部材30と連結部材54は、固定用のボルト21とナット22を用いて連結されている。第2吊下げ部材30は、ゴム板で形成されており、そのため弾性を有している。また、第2吊下げ部材30は、全体としても板状の形状を有しており、左右方向を厚み方向とし、前後方向を幅方向としている。そのため、第2吊下げ部材30は、左右方向に曲がりやすく、前後方向には曲がりにくく構成されている。なお、本実施の形態において、第1吊下げ部材20及び第2吊下げ部材30はゴム板としたが、これに限られず、弾性を有するものであればよい。
【0031】
下踏板40は、ステップ100の下段側の踏板である。下踏板40は、第1吊下げ部材20および第2吊下げ部材30の下端付近に位置している。そして、ボルト21とナット22を用いて、下踏板40の右端部分が第1吊下げ部材20に固定されており、左端部分が第2吊下げ部材30に固定されている。下踏板40の上面には、滑り止めのための長円状の孔41が形成されている。また、この孔41の周辺は一部が上方に突出して全体として波状の形状を有している。下踏板40の左右方向の長さは、固定踏板部50の連結部材54と回動踏板部60の連結部材63との距離に略等しい。また、下踏板40の右端縁と左端縁は平行に形成されている。これにより、非回動状態においては、第1吊下げ部材20と第2吊下げ部材30は互いに平行であり、いずれもねじれのない状態で配置されている。
【0032】
以上のように構成されたステップ100は、産業用車両101が急な傾斜を登るようにして前進し、下踏板40の右側部分が地面に接触した場合には(図1の二点鎖線参照)、次のように作用する。つまり、車両本体102を基準とすると、下踏板40の右側部分の底が地面に接触したとき、下踏板40の右側部分が上方へ変位する。これにより下踏板40は、第1吊下げ部材20を押上げ、第1吊下げ部材20が回動踏板部60を押し上げる。その結果、回動踏板部60は固定踏板部50に対して回動し、下踏板40の変位を吸収する。よって、ステップ100の各部材及び各部材の連結部分には無理な力が働くことはなく、ステップ100の破損を防ぐことができる。
【0033】
さらに、本実施形態に係るステップ100は、回動踏板部60の回動軸Xが、平面視において第1吊下げ部材20と第2吊下げ部材30が向かい合う方向に対して傾斜するように構成されている。そのため、回動踏板部60が回動すると、第1吊下げ部材20の上方部分が斜め後方に移動することになり、第1吊下げ部材20および第2吊下げ部材30がねじれた状態になる。そして、上述したように両吊下げ部材20、30は弾性を有しているため(弾性変形するため)、もとの形状に戻ろうとする力が働く。そのため、下踏板40が地面に接触しなくなると、ステップ100は速やかにもとの非回動状態に戻ることができる。
【0034】
なお、作業者が下踏板40に乗った場合には、回動踏板部60に下方の力が働くが、上述のように回動踏板部60は固定踏板部50よりも下方に回動することはないため、下踏板40は安定したままである。さらに、上記のように、回動踏板部60が回動することで、下踏板40の変位を吸収することができるため、第1吊下げ部材20及び第2吊下げ部材30を必要以上に柔軟にしなくとも、ステップ100の破損を防ぐことができる。つまり、下踏板40を安定させるために、第1吊下げ部材20及び第2吊下げ部材30の剛性を高めたとしても、ステップ100の破損を防ぐことができる。よって、本実施形態に係るステップ100によれば、下踏板40を安定させつつも、地面などの障害物との接触による破損を防ぐことができる。
【0035】
なお、以上では、回動踏板部60の回動軸Xが、産業用車両101の進行方向に対して傾斜している場合について説明したが、これ以外の構成であってもよい。すなわち、回動踏板部60の回動軸Xが、産業用車両101の進行方向に対して直交するように構成されていても良い。この構成によれば、回動踏板部60の回動によって吊下げ部材20、30にはねじれは生じない。しかしながら、産業用車両101は、例えばかき上げ作業など回動踏板部60が地面に接しやすい作業を行う場合には前進・後退を繰り返していることが多い。この場合、ステップ100が回動踏板部60をもとの位置(非回動状態)に戻そうとする構成を備えていなくとも、産業用車両101が進行方向と反対の方向に移動(後退)することで、回動踏板部60はもとの位置(非回動状態)に戻ることができる。
【0036】
(第2実施形態)
次に、図5を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。図5は、本実施形態に係るステップ200の斜視図である。図5に示すように、本実施形態に係るステップ200は、上踏板10が、固定踏板部50と、第1回動踏板部60と、第2回動踏板部80と、から主に構成されており、この点で第1実施形態に係るステップ100と異なる。上踏板10以外の構成は、基本的に第1実施形態に係るステップ100と同じである。
【0037】
本実施形態に係る上踏板10の各構成要素について簡単に説明すると、固定踏板部50は、第1実施形態に係る固定踏板部50の右側半分を左側半分にも適用した構造を有している。つまり、本実施形態に係る固定踏板部50は左右対称に構成されている。また、第1回動踏板部60の構成は、第1実施形態に係る回動踏板部60と同じである。さらに、第2回動踏板部80は、第1回動踏板部60と左右対称の構成を有している。そして、本実施形態では、第1吊下げ部材20は連結部材63を介して第1回動踏板部60に取り付けられており、第2吊下げ部材30は連結部材83を介して第2回動踏板部80に取り付けられている。また、第1回動踏板部60の回動軸Xおよび第2回動踏板部80の回動軸Yは、それぞれ平面視において第1吊下げ部材20と第2吊下げ部材30が向かい合う方向に対して傾斜するように構成されている。
【0038】
このように、本実施形態に係るステップ200は、全体として左右対称に構成されている。そして、これまでの説明から理解できるように、第1回動踏板部60および第2回動踏板部80は、非回転状態から上方へ固定踏板部50に対して回動することができる。これにより、下踏板40の右側部分が上方へ変位した場合には、第1吊下げ部材20を介して第1回動踏板部60が押し上げられて回動する。また、下踏板40の左側部分が上方へ変位した場合には、第2吊下げ部材30を介して第2回動踏板部80が押し上げられて回動する。さらに、下踏板40の全体が上方へ変位した場合には、第1回動踏板部60及び第2回動踏板部80の両方が押し上げられて回動する。このように、本実施形態に係るステップ200によれば、下踏板40のいずれの部分が変位した場合であっても、その変位を吸収することができ、ステップ200の破損を防ぐことができる。したがって、産業用車両101が斜面を登る場合と下る場合の双方の場面において、ステップ200の破損を防止することができる。
【0039】
以上、本発明の実施形態について図を参照して説明したが、具体的な構成はこれらの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。例えば、以上では上踏板10および下踏板40を有する2段のステップについて説明したが、3段以上のステップであっても本発明に含まれる。
【0040】
また、以上では、回動踏板部60等が回動したとき、第1吊下げ部材20及び第2吊下げ部材30がねじれるように、回動踏板部60の回転軸X等を第1吊下げ部材20と第2吊下げ部材30が向き合う方向に対して傾斜させているが、他の構成を採用しても良い。例えば、回動踏板部60の回動軸Xが第1吊下げ部材20と第2吊下げ部材30が向き合う方向と平行になるよう構成されていてもよい。さらに言えば、第1吊下げ部材20と第2吊下げ部材30が平行に向き合っていなくとも、第1吊下げ部材20の中心軸と第2吊下げ部材30の中心軸を含む面に対して回動軸Xが直交しないように構成されていればよい。この場合、第1吊下げ部材20の中心軸と第2吊下げ部材30の中心軸を含む面は、回動踏板部60が回動すると、回動前に位置していた平面上から一部が離れることになるため、第1吊下げ部材20及び第2吊下げ部材30はねじれる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明に係る産業用車両のステップよれば、踏板を安定させつつも、障害物との接触による破損を防ぐことができる。よって、産業用車両のステップの技術分野において有益である。
【符号の説明】
【0042】
10 上踏板
20 第1吊下げ部材
30 第2吊下げ部材
40 下踏板
50 固定踏板部
60 回動踏板部、第1回動踏板部
80 第2回動踏板部
100、200 ステップ
101 産業用車両
102 車両本体
X 回動軸(第1回動軸)
Y 回動軸(第2回動軸)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定踏板部と、前記固定踏板部に対して回動軸を介して連結された回動踏板部とを有する上踏板と、
前記回動踏板部に取り付けられて下方に延び、弾性を有する第1吊下げ部材と、
前記固定踏板部に取り付けられて下方に延び、弾性を有する第2吊下げ部材と、
前記第1吊下げ部材および前記第2吊下げ部材によって保持された下踏板と、を備え、
前記回動踏板部は、前記回動軸を中心に前記固定踏板部に対して上方に回動可能である、
産業用車両のステップ。
【請求項2】
前記回動踏板部の回動軸は、平面視において、前記産業用車両の進行方向に対して略直交である、請求項1に記載の産業用車両のステップ。
【請求項3】
前記回動踏板部が回動したとき、前記第1吊下げ部材及び前記第2吊下げ部材のうち少なくとも一方がねじれるように構成されている、請求項1に記載の産業用車両のステップ。
【請求項4】
前記回動踏板部の回動軸は、平面視において、前記産業用車両の進行方向に対して傾斜している、請求項3に記載の産業用車両のステップ。
【請求項5】
固定踏板部と、前記固定踏板部の一端に第1回動軸を介して連結された第1回動踏板部と、前記固定踏板部の他端に第2回動軸を介して連結された第2回動踏板部とを有する上踏板と、
前記第1回動踏板部に取り付けられて下方に延び、弾性を有する第1吊下げ部材と、
前記第2回動踏板部に取り付けられて下方に延び、弾性を有する第2吊下げ部材と、
前記第1吊下げ部材および前記第2吊下げ部材によって保持された下踏板と、を備え、
前記第1回動踏板部は、前記第1回動軸を中心に前記固定踏板部に対して上方へ回動可能であり、
前記第2回動踏板部は、前記第2回動軸を中心に前記固定踏板部に対して上方へ回動可能である、産業用車両のステップ。
【請求項6】
前記第1回動踏板部が回動したとき、前記第1吊下げ部材及び前記第2吊下げ部材のうち少なくとも一方がねじれ、かつ、前記第2回動踏板部が回動したとき、前記第1吊下げ部材及び前記第2吊下げ部材のうち少なくとも一方がねじれるように構成されている、請求項5に記載の産業用車両のステップ。
【請求項7】
前記第1回動踏板部の第1回動軸および前記第2回動踏板部の第2回動軸の少なくとも一方は、平面視において、前記産業用車両の進行方向に対して傾斜している、請求項5に記載の産業用車両のステップ。
【請求項8】
請求項1乃至7のうちいずれか一の項に記載の産業用車両のステップを備えた産業用車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−2209(P2013−2209A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−136572(P2011−136572)
【出願日】平成23年6月20日(2011.6.20)
【出願人】(509241041)株式会社KCM (35)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)