説明

男性用パンツ

【課題】尿漏れ対策を施して、前身頃が嵩張らず、通気性がよく着心地を改善する。
【解決手段】パンツ1は、左右両側で互いに縫合される前身頃2及び後身頃3と、前身頃2及び後身頃3の上端に環状に縫い付けられたゴムバンド4と、前身頃2の内側に上端縁と下端縁とが縫合されて取り付けられた当て布5とで構成される。当て布5は、上下縫合部間において、縦方向の寸法が前身頃2の縦方向の寸法よりも小さく形成され、これにより前身頃2と当て布5との間に空間7を形成する。尿漏れが生じて尿が当て布5に浸みても、空間7により当て布5の尿が前身頃3に染み移らず、空間7によって尿の乾燥が促されて濡れ感触や臭いが抑制される。従来の尿吸収体を用いることなく尿漏れ対策を行うので、尿吸収体に表裏クロッチ布が密着して前身頃の周辺部が嵩張る不都合を防止でき、また、熱のこもりや蒸れを防ぐことができて良好な着心地が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はパンツに関し、より具体的には尿漏れ対策を施したパンツに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、特に高年者における排尿障害や尿失禁による尿漏れの対策には、大人用おむつが用いられているが、最近、高年者に限らず、中年者や若年者における少量の尿漏れ対策の必要性が認識され始めている。少量の尿漏れは、尿意の極度の我慢や冷房の影響、或いは残尿等によるものであり、職場や学校等での一般生活において生じる。したがって、尿の漏れ量は比較的少なくても、ズボンへの染みや周囲への臭いの心配により、精神的ストレスを招き易いという問題がある。このような少量の尿漏れ対策として、尿吸収体を有するパンツが提案されている。
【0003】
この種のパンツとしては、前身頃にクロッチポケットを形成し、このクロッチポケットに尿吸収体を収容するように構成されたボクサータイプのパンツがある(例えば、特許文献1参照)。クロッチポケットは、表クロッチ布と裏クロッチ布を上端縁と下端縁で縫合して形成されている。クロッチポケットの左右両側に表開き口と裏開き口を夫々形成し、この開き口を通して、吸水性ポリマ等を含んだパッド型の尿吸収体を着脱するようになっている。表クロッチ布と裏クロッチ布は、通常使用される同種の布で、互いに同じ形状と寸法に形成されている。
【特許文献1】特許第4015675号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来のパンツは、表クロッチ布と裏クロッチ布が互いに同じ形状と寸法に形成され、これらのクロッチ布の間に尿吸収体を装着するので、各クロッチ布が尿吸収体の両面で密着状態になり易い。各クロッチ布が尿吸収体と密着すると、前身頃の周辺部が保形されて嵩張るという問題がある。また、表クロッチ布と裏クロッチ布が通常使用される同種の布で形成されるうえに、クロッチポケットに尿吸収体が装着されるので、前身頃の周辺部の通気性が低下しやすく、特に夏場に熱のこもりや蒸れを招き、着心地の悪化を招くという問題がある。
【0005】
そこで、本発明の課題は、尿漏れ対策を施しつつ、前身頃の嵩張りを少なくでき、また、通気性を向上できて着心地を改善できるパンツを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、請求項1の発明のパンツは、前身頃の左右の中央部に上端と下端が縫合されて、これら上下の縫合部間の長さが、前身頃のそれよりも短い当て布を備えることを特徴としている。
【0007】
上記構成によれば、パンツの前身頃の内側に上下端を縫合された当て布が、この上下の縫合部間で前身頃のそれよりも短いことにより、上下の縫合部間で前身頃に当て布からの外側への浮代を与え、着用されたときの双方の立体化で当て布が上下の縫合部間で局部に沿おうとするのに対し、前身頃は前記浮代分当て布から外側に浮いて双方間に空間を形成する。したがって、少量の尿漏れが生じても当て布で受け止めてその受け止めた尿が前身頃に染み移るのを防止できる。また、当て布に浸みた尿の早期乾燥を促すことができる。さらに、当て布は前身頃の左右の中央部に当てがうだけであるため、前身頃の左右中央部に設けることのある排尿用開口を通じての排尿作業を特に損なうことはないし、裾口の縁が、幅方向の中央から両側に向かって上方に傾斜する最大腰部までの切れ上り形状とするときは、切れ上がり形状による前身頃下部での当て布程度に幅狭部とすることができるのを利用して排尿作業ができる。このように、従来のような尿吸収体を用いずに、当て布と前身頃の間に空間を形成することで尿漏れ対策を行うので、前身頃の周辺部が嵩張る不都合を防止できる。また、当て布と前身頃の間の空間により通気性が高まるので、夏場においても熱のこもりや蒸れを防ぐことができ、その結果、良好な着心地が得られる。
【0008】
なお、本明細書において、上下、前後及び左右は、パンツの着用者から見た方向を示すものとする。
【0009】
請求項2の発明のパンツは、請求項1に記載のパンツにおいて、前身頃が左右一対の前身頃片で形成され、当て布の下端が、一対の前身頃片の互いに接続される部分の下端に縫合されていることを特徴としている。
【0010】
請求項2のパンツによれば、前身頃が一対の前身頃片で形成される比較的簡単な構成で立体化と必要に応じた排尿用開口の形成に便利なパンツにおいて、尿漏れ対策を行いつつ、前身頃の周辺部が嵩張る不都合を防止でき、また、熱のこもりや蒸れを防ぐことができて、良好な着心地が得られる。
【0011】
請求項3の発明のパンツは、請求項1に記載のパンツにおいて、前身頃が、左右一対の前身頃片で形成され、前身頃の中央部の下端と、後身頃の中央部の下端との間に股部片を備え、前身頃の中央部の下端と股部の前端、および当て布の下端とが股部片の左右方向中央部に入り込んで縫合されていることを特徴としている。
【0012】
請求項3のパンツによれば、前身頃が左右一対の前身頃片で形成され、前身頃の中央の下端と後身頃の中央部の下端との間に股部片を備えた比較的簡単でありながら立体化と必要に応じ前立て部を利用した排尿用開口部の保形性とにより有利な構成のパンツにおいて、尿漏れ対策を股部片中央部に食い込む広域にて行いつつ、前身頃の周辺部が嵩張る不都合を防止でき、また、熱のこもりや蒸れを防ぐことができて、良好な着心地が得られる。
【0013】
請求項4の発明のパンツは、請求項1〜3のいずれか1つのパンツにおいて、当て布が左右方向の中央部に局部に対応して外側へ膨らませる立体縫合部を有し、前身頃が左右方向の中央部に局部に対応して外側に膨らませる立体縫合部を有していることを特徴としている。
【0014】
請求項4のパンツによれば、当て布は、立体縫合部によって局部を無理なくしかし不用意にはみ出さないように包み込んで保持する立体形状が得られるし、前身頃は、立体縫合部によって、局部を包み込むように保持している立体的な当て布に対し、その外側に外観を損なわない程度で、通気性を損なわず、かつ、当て布からの尿の染み移りが生じないだけの間隔および広がりのある空間を、外側衣類の装着によっても崩れにくい保形性を有して形成することができる。
【0015】
請求項5の発明のパンツは、請求項1〜4のいずれか1つのパンツにおいて、前身頃および後身頃は、布帛地よりなり、当て布は、天竺織、フライス、スムースなどの編み生地よりなることを特徴としている。
【0016】
請求項5のパンツによれば、前身頃が布帛地であることにより、立体縫合部による立体形状の保形性が特別な負荷条件なしに高まるし、当て布が編み生地であることにより、局部に対する包み込みが柔軟でより無理なく対応できるし、排尿作業時の押し退けに順応しやすくなるので排尿作業に便利になる。
【0017】
請求項6の発明のパンツは、請求項1に記載のパンツにおいて、当て布が、縦方向の伸縮性よりも横方向の伸縮性が大きい生地を用いて形成されていることを特徴としている。
【0018】
請求項6のパンツによれば、当て布の縦方向の伸縮性が比較的小さいので、当て布と前身頃との間の空間を確保しやすく、かつ、当て布の横方向の伸縮性が比較的大きいので、着用者の男性器を、過度に締め付けないで、しかも、上下方向の所定位置に支持しやすく、また、排尿用開口を通じた排尿作業に順応しやすく排尿作業がさらに容易になる。
【0019】
請求項7の発明のパンツは、請求項1に記載のパンツにおいて、当て布が、抗菌、消臭、吸水、速乾処理の少なくとも1つが処理を施されていることを特徴としている。
【0020】
請求項7のパンツによれば、尿漏れが生じても、当て布による吸収性、当て布が吸収した尿の速乾、消臭、尿による雑菌の繁殖の少なくとも1つを抑制することができる。
【0021】
請求項8の発明のパンツは、請求項1に記載のパンツにおいて、裾口の縁が、幅方向の中央から両側に向かって上方に傾斜する最大腰部までの切れ上り形状となっていることを特徴としている。
【0022】
請求項8のパンツによれば、裾口の縁の最大腰部までの切れ上り形状による前身頃下部での当て布程度に幅狭部とすることができるのを利用して排尿用開口を設けずに排尿作業ができる。また、介護者が着用者にパンツを着用させるときに、着用者の足を容易に裾口に通すことができる。したがって、介護者への介護負担を軽減できる介護用のパンツが得られる。
【発明の効果】
【0023】
本発明のパンツによれば、前身頃に上下端を縫合され、これら上下方向部間の長さが前身頃片のそれよりも短い当て布を設けるという簡易な構成により、当て布に対し前身頃が外側に浮く空間が形成されるようにして、少量の尿漏れが生じても当て布で受け止めて尿が前身頃に染み移るのを防止でき、また、当て布に浸みた尿の乾燥を促すことができるので、尿の湿りに起因する濡れ感触や臭いを抑制できる。こうして、尿吸収体を用いずに尿漏れ対策を行うことができるので、前身頃の周辺部が嵩張る不都合を防止でき、また、当て布と前身頃の間の空間により通気性を高めて、熱のこもりや蒸れを防ぐことができるし、洗濯するだけで繰り返し良好な着心地が得られる。さらに、当て布は左右の幅が小さくてよく、排尿用開口を通じるなどした排尿作業を特に邪魔する不便はない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0025】
図1は、本発明の第1実施形態のパンツを示す正面図であり、図2は、パンツの着用時の断面図である。
【0026】
本実施形態のパンツ1は、左右両側で互いに縫合される前身頃2及び後身頃3と、前身頃2及び後身頃3の上端に環状に縫い付けられたゴムバンド4と、前身頃2の内側に上端縁と下端縁とが縫合されて取り付けられた当て布5とで大略構成されている。
【0027】
前身頃2は、右前身頃片21と左前身頃片22とで形成され、互いに近い側の端縁部が重なり合う打ち合わせ部21a,22aとなっている。打ち合わせ部21a,22aの間に排尿用開口23が形成され、この排尿用開口23は、右前身頃片21の打ち合わせ部21aに取り付けられたボタン24を、左前身頃片22の打ち合わせ部22aに形成されたボタン孔に掛けて、閉じ状態を保持するようになっている。しかし、排尿用開口23は必須ではない。
【0028】
後身頃3は1枚の布で形成され、右側縁が右前身頃片21の右側縁に縫合されると共に、左側縁が左前身頃片22の左側縁に縫合されている。後身頃3の中央部の下端縁は、前身頃2の中央の下端縁、すなわち、右前身頃片21の左側部分の下端縁及び左前身頃片22の右側部分の下端縁と縫合されている。この後身頃3の中央部の下端縁と前身頃2の中央の下端縁との縫合部S1に、当て布5の下端縁が縫合されている。後身頃3の両側部の下端縁は、右前身頃片21の下端縁と左前身頃片22の下端縁と共に、夫々右側裾口61と左側裾口62を形成している。
【0029】
右側裾口61と左側裾口62の縁にはパイピングが施されている。右側裾口61と左側裾口62は、図1に示すように、幅方向の中央から両側に向かって上方に傾斜する切れ上り形状に形成されている。詳しくは、右側裾口61は、右前身頃片21の左側部の下端と後身頃3の中央部の下端との縫合位置から、右前身頃片21の右側部の下端と後身頃3の右側部の下端との縫合位置に向かって、上方に切れ上がる形状となっている。一方、左側裾口62は、左前身頃片22の右側部の下端と後身頃3の中央部の下端との縫合位置から、左前身頃片21の左側部の下端と後身頃3の左側部の下端との縫合位置に向かって、上方に切れ上がる形状となっている。
【0030】
ゴムバンド4は、着用者の腰回りを弾性的に締め付けるように形成され、前身頃2の上端縁と後身頃3の上端縁に沿って縫い付けられている。前身頃2の上端縁の中央部とゴムバンド4との縫合部S2に、当て布5の上端縁が縫合されている。なお、ゴムバンド4に替えて、ゴムの織り込み、縫込み、通しにより伸縮度を高めた布バンドでもよい。
【0031】
ここで、当て布5は、前記前身頃との縫合構造において、上下の縫合部S2、S1間の長さが、前身頃2のそれよりも短くされ、パンツ1を畳んだ状態の前身頃2の幅の約半分の上端幅を有する一方、前身頃2と後身頃3との下端の縫合部と略同じ幅の下端幅を有する。また、図示例の当て布5は、縦方向(上下方向)の寸法が、前身頃2の縦方向の寸法、すなわち、前身頃2の右前身頃片21の打ち合わせ部21aと左前身頃片22の打ち合わせ部22aとの重複部分を通る寸法よりも小さく形成されている。このような長さ関係により、上下の縫合部S2、S1間で前身頃2に当て布5からの外側への浮代を与え、着用されたときの双方の立体化で当て布5が上下の縫合部S2、S1間で局部に沿おうとするのに対し、前身頃2は前記浮代分当て布5から外側に浮いて双方間に図2に示すような空間7を形成するようになっている。
【0032】
上記当て布5は、綿などの天竺織、フライス、スムースなどの編み生地で形成されており、図示例では当て布5は、天竺織で縦方向の伸縮性よりも横方向の伸縮性が大きくなるようにパターニングされている。一方、前身頃2及び後身頃3は、綿などの布帛で形成されている。なお、当て布5は、横方向の伸縮性をある程度確保できればよく、綿の天竺織り生地以外に、綿の編物生地や合成繊維の編物生地等を用いてもよい。また、前身頃2及び後身頃3は、当て布5よりも伸縮性が小さい生地であれば、その材質は綿に限られない。
【0033】
また、上記当て布5には抗菌剤が添加されている。これにより、当て布5に尿が浸透しても菌類の繁殖が抑制され、臭いの発生を抑制することができる。抗菌剤としては、ニーム油脂成分、ナリジクス酸、オキソリニック酸、竹酢、アシルアミノ酸銀塩及びアシルアミノ酸銅塩の少なくとも1つを含有するもの等を用いることができる。
【0034】
上記構成のパンツ1は、着用者に着用されると、当て布5が着用者の下腹部から股間にわたって密着して男性器を覆う。特に、当て布5の横方向の伸縮性が縦方向の伸縮性よりも大きく形成されているので、男性器は過度に締め付けられることなく自然な高さ位置で違和感なく包み込まれ左右方向の所定位置に安定支持される。従って、不用意に左右に外れることはない。しかし、当て布5は前身頃の左右の中央部に当てがうだけであるため、排尿用開口23を通じるなどしての排尿作業を特に損なうことはない。また、当て布5の着用者から見て前側の前身頃2は、上下の縫合部S2、S1間で縦方向の寸法が当て布5の縦方向の寸法よりも大きく形成されているので、当て布5と前身頃2との間には空間7が形成される。ここで、例えば着用者の尿意の極度の我慢等により少量の尿漏れが生じると、尿が当て布5に受け止められて浸みる。しかしながら、当て布5と前身頃2との間には空間7が形成されているので、当て布5に浸みた尿は前身頃3に染み移るのを防止できる。また、当て布5と前身頃2との間の空間7によって、当て布5に浸みた尿の乾燥が促されるので、尿の湿りに起因する濡れ感触や臭いが抑制される。こうして、従来のような尿吸収体を用いることなく、当て布5と前身頃2の間に空間7を形成することで尿漏れ対策を行うので、従来のように尿吸収体に表裏クロッチ布が密着して前身頃の周辺部が嵩張る不都合を防止できる。また、当て布5と前身頃2の間の空間7により通気性が高まるので、夏場においても熱のこもりや蒸れを防ぐことができるし、洗濯するだけで繰り返し、良好な着心地が得られる。要するに、前身頃2、後身頃3が布帛であることにより、立体縫合部による立体形状の保形性が特別な負荷条件なしに高まるし、当て布が編み生地であることにより、局部に対する包み込みが柔軟でより無理なく対応できるし、排尿作業時の押し退けに順応しやすくなるので排尿作業に便利になる。
【0035】
また、本実施形態のパンツ1は、裾口61,62の縁が実線で示し、仮想線で示すように最大腰部未満の切れ上がり形状であるので、爽快感がよいうえ、着用者が介護を受ける場合、介護者は着用者の足を容易に裾口61,62に通すことができる。したがって、このパンツ1は、介護不要な着用者の日常的な用途の他に、介護者の負担を軽減できる介護用パンツとして用いることもできる。また、前身頃2の特に下半部の幅は当て布5の幅とほぼ等しいかそれに近い幅となるので、図5に示すように排尿用開口を省略した構成としても、切れ上がり形状による前身頃2下部での当て布程度に幅狭部とすることができるのを利用して排尿作業ができる。なお、図5に示す例では、前身頃2および当て布5共に左右片の中央縫い合わせ部31、32を立体縫合部としてある。当て布5は、立体縫合部32によって局部を無理なくしかし不用意にはみ出さないように包み込んで保持する立体形状が得られるし、前身頃2は、立体縫合部31によって、局部を包み込むように保持している立体的な当て布5に対し、その外側に外観を損なわない程度で、通気性を損なわず、かつ、当て布からの尿の染み移りが生じないだけの間隔および広がりのある空間を、外側衣類の装着によっても崩れにくい保形性を有して形成することができる。なお、立体縫合部31、32は、図3に示す例の立体縫合部31などによる膨出部85のような立体縫合構造を採用することもでき、その縫合形態は特に問わない。
【0036】
図3は、本発明の第2実施形態のパンツを示す平面図であり、図4は本実施形態のパンツの着用時の断面図である。本実施形態において、第1実施形態と同じ構成部分には同一の参照番号を付して、詳細な説明を省略する。
【0037】
第2実施形態のパンツ10は、前身頃12が、左右一対の前身頃片21,22と、右前身頃片21と左前身頃片22との間の前立て部8とで形成されている点と、前身頃12と後身頃3との間に股部片9が設けられている点、前身頃2の中央部の下端と股部片9の前端、および当て布5の下端とが股部片9の左右方向中央部に入り込んで縫合されている点が、第1実施形態のパンツ1と大きく異なる点である。これによって、前身頃2が左右一対の前身頃片21、22と前立て部8とで形成され、前身頃2の中央の下端と後身頃3の中央部の下端との間に股部片9を備えた比較的簡単でありながら立体化と排尿用開口23部の保形性とに、より有利な構成のパンツにおいて、尿漏れ対策を股部片中央部に食い込む広域にて行いつつ、前身頃2の周辺部が嵩張る不都合を防止でき、また、熱のこもりや蒸れを防ぐことができて、良好な着心地が得られる。
【0038】
前立て部8は、右前身頃片21の左端縁に縫合された右前立て部81と、左前身頃片22の右端縁に縫合された左前立て部82とで形成されている。右前立て部81と左前立て部82とは互いに重なり合った状態で上下各部が互いに縫合されており、重なり合う部分の縫合されていない部分が夫々打ち合わせ部81a,82aとなって、互いの間に排尿用開口83を形成している。排尿用開口83は、右前立て部81の打ち合わせ部81aに取り付けられたボタン84を、左前立て部82の打ち合わせ部82aに形成されたボタン孔に掛けて、閉じ状態が保持される。前立て部8の排尿用開口83の下部には、男性器に対応する膨出部85が形成されている。膨出部85は、右前立て部81と左前立て部82が、それらの中央部縫合、右前身頃片21、左身頃片22との立体縫合部31と、これら縫合された部分にギャザー84が設けられる立体縫合部にて、カップ状に前側に膨出するように形成されている。なお、ギャザー84以外にタックやダーツによって膨出部85が形成されてもよい。
【0039】
股部片9は、その前端縁が左右方向中央部に前身頃2の入り込み部を有して、右前身頃片21の左側部の下端縁と、前立て部8の下端縁と、左前身頃片22の右側部の下端縁とに縫合されている。股部9の後端縁は、後身頃3の下端縁に縫合されて縫合部S11が形成され、この縫合部S11に当て布5の下端縁が縫合されている。
【0040】
ゴムバンド4は、前身頃2と後身頃3の上端部の内側に沿って縫い付けられている。このゴムバンド4と前身頃2との縫合部の下端縁S12に、当て布5の上端縁が縫合されている。
【0041】
上記構成のパンツ10が着用者に着用されると、当て布5が着用者の下腹部から股間にわたって密着して男性器を覆う。ここで、前身頃2の前立て部8及び股部9に亘る部分は、縦方向の寸法が当て布の縦方向の寸法よりも大きく形成されているので、前立て部8及び股部9と当て布5との間に空間7が形成される。特に、前立て部8の膨出部85と当て布5との間には効果的に空間7が形成される。したがって、着用者に少量の尿漏れが生じて尿が当て布5に浸みても、空間7の存在により、当て布5の尿が前身頃3に染み移るのを防止できる。また、空間7によって、当て布5に浸みた尿の乾燥が促されるので、尿の湿りに起因する濡れ感触や臭いが抑制される。こうして、従来のような尿吸収体を用いることなく尿漏れ対策を行うので、従来のように尿吸収体に表裏クロッチ布が密着して前身頃の周辺部が嵩張る不都合を防止できる。また、空間7により通気性が高まるので、夏場においても熱のこもりや蒸れを防ぐことができるし、洗濯するだけで繰り返し良好な着心地が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】第1実施形態のパンツを示す正面図である。
【図2】第1実施形態のパンツの着用時の断面図である。
【図3】第2実施形態のパンツを示す正面図である。
【図4】第2実施形態のパンツの着用時の断面図である。
【図5】第3実施形態のパンツを示す正面図である。
【符号の説明】
【0043】
1 パンツ
2 前身頃
3 後身頃
4 ゴムバンド
5 当て布
21 右前身頃片
22 左前身頃片
23 排尿用開口
31、32 立体縫合部
61 右側裾口
62 左側裾口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前身頃の左右の中央部に上端と下端が縫合されて、これら上下の縫合部間の長さが、前身頃のそれよりも短い当て布を備えることを特徴とするパンツ。
【請求項2】
請求項1に記載のパンツにおいて、
前身頃が左右一対の前身頃片で形成され、当て布の下端が、一対の前身頃片の互いに接続される部分の下端に縫合されていることを特徴とするパンツ。
【請求項3】
請求項1に記載のパンツにおいて、
前身頃が左右一対の前身頃片で形成され、
前身頃の中央部の下端と、後身頃の中央部の下端との間に股部片を備え、
前身頃の中央部の下端と股部の前端、および当て布の下端とが股部片の左右方向中央部に入り込んで縫合されていることを特徴とするパンツ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のパンツにおいて、
当て布が左右方向の中央部に局部に対応して外側へ膨らませる立体縫合部を有し、前身頃が左右方向の中央部に局部に対応して外側に膨らませる立体縫合部を有していることを特徴とするパンツ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のパンツにおいて、
前身頃および後身頃は、布帛地よりなり、当て布は、天竺織、フライス、スムースなどの編み生地よりなることを特徴とするパンツ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のパンツにおいて、
当て布が、縦方向の伸縮性よりも横方向の伸縮性が大きい生地を用いて形成されていることを特徴とするパンツ。
【請求項7】
請求項1に記載のパンツにおいて、
当て布が、抗菌、消臭、吸水、速乾処理の少なくとも1つが施されていることを特徴とするパンツ。
【請求項8】
請求項1又は2に記載のパンツにおいて、
裾口の縁が、幅方向の中央から両側に向かって上方に傾斜する最大腰部までの切れ上り形状となっていることを特徴とするパンツ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−18921(P2010−18921A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−181995(P2008−181995)
【出願日】平成20年7月11日(2008.7.11)
【特許番号】特許第4351728号(P4351728)
【特許公報発行日】平成21年10月28日(2009.10.28)
【出願人】(504040357)
【Fターム(参考)】