説明

画像再形成可能な媒体

【課題】画像再形成可能な媒体において周辺光による吸収に引き起こされる背景着色を最小に抑える。
【解決手段】(a)バインダと、(b)フォトクロミック材料と、(c)光吸収材料と、を含む複数の粒子を有する画像再形成可能な媒体。または、基材をさらに有する前記記載の画像再形成可能な媒体。または、前記粒子およびフィルム形成バインダを含むフィルムをさらに有し、別の基材が前記媒体に存在しない前々記記載の画像再形成可能な媒体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像再形成可能な媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの紙文書は読まれた後、直ちに廃棄される。廃棄される紙文書の量を減少させるには、画像再形成可能な媒体が望ましい。フォトクロミック材料を使用した画像再形成可能な媒体に関する問題は、周辺光のフォトクロミック材料によるオーバータイム吸収により画像形成領域(露光領域とも呼ばれる)と非画像形成領域(非露光領域とも呼ばれる)との間のコントラストが低減する、背景着色(background coloration)問題である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第7,205,088号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2006/0222972号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そのため、画像再形成可能な媒体において周辺光による吸収に引き起こされる背景着色を最小に抑える、本発明の態様により対処される、新規アプローチが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、(a)バインダと、(b)フォトクロミック材料と、(c)光吸収材料と、を含む複数の粒子を有する画像再形成可能な媒体である。
【0006】
また、前記画像再形成可能な媒体において、基材をさらに有することが好ましい。
【0007】
また、前記画像再形成可能な媒体において、前記粒子およびフィルム形成バインダを含むフィルムをさらに有し、別の基材が前記媒体に存在しないことが好ましい。
【0008】
また、前記画像再形成可能な媒体において、前記光吸収材料はイエロー着色剤を含むことが好ましい。
【0009】
また、前記画像再形成可能な媒体において、前記粒子はコアおよびシェルを有することが好ましい。
【0010】
また、前記画像再形成可能な媒体において、前記シェルは単一シェルであり、前記フォトクロミック材料は前記コア中に存在し、前記光吸収材料は前記単一シェル中に存在することが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の粒子の1つの実施形態の部分断面を示す図である(便宜上、単一粒子を示す)。
【図2】本発明の粒子の別の実施形態の部分断面を示す図である(便宜上、単一粒子を示す)。
【図3】1つのフォトクロミック材料および1つの光吸収材料のUV−VIS吸収スペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施形態では、(a)バインダと、(b)フォトクロミック材料と、(c)光吸収材料とを含む、複数の粒子が提供される。
【0013】
別の実施形態では、(a)バインダと、(b)フォトクロミック材料と、(c)光吸収材料とを含む、複数の粒子を有する画像再形成可能な媒体が提供される。
【0014】
別の実施形態では、(a)バインダと、(b)着色が弱い形態と着色が強い形態との間で可逆的に変換することができ、着色が弱い形態は予め決定された波長範囲と重なる光吸収帯Aを有する、フォトクロミック材料と、(c)光吸収帯Aと重なる光吸収帯Bを示す光吸収材料であって、予め決められた波長範囲では、光吸収材料による光吸収が、着色が弱い形態による光吸収よりも弱い、光吸収材料と、を含む、複数の粒子を有する画像再形成可能な媒体が提供される。
【0015】
本明細書で使用されるように、「画像」という用語は、ヒトが見たいと思う任意のマーキングとすることができ、ここで「画像」は例えば、言葉、絵、図、またはそれらの組み合わせとすることができる。
【0016】
「吸収スペクトル」という句は、光吸収が最小量よりも大きくなる、ある波長範囲での光吸収を示す。
【0017】
「光吸収帯」という句は、吸収がかなり高いレベルにある(本明細書で記載される「谷」と比較した場合)「吸収スペクトル」における1つまたは複数の波長範囲を示し、ある実施形態では、吸収がその「光吸収帯」に対し最大量にある「ピーク」を含む。
【0018】
光吸収における「谷」は、吸収がかなり低いレベルにある(「光吸収帯」と比較した場合)吸収スペクトルの一部を示す。「谷」は典型的には「光吸収帯」に隣接する。
【0019】
「周囲温度」という用語は、約15から約30℃までの範囲の温度を示す。
【0020】
本開示は、例えば、画像再形成可能な媒体において有用な粒子に関する。粒子は少なくとも3つの成分:(a)バインダと、(b)フォトクロミック材料と、(c)光吸収材料とを含む。3つの成分は粒子中に任意の適した構造および濃度で存在してもよい。
【0021】
粒子2は例えば、図1および図2において見られるような任意の適した構造を有してもよい。実施形態では、粒子はコアとシェルとを有する(シェルは単一シェルまたは2つもしくはそれ以上のシェルとすることができる)。実施形態では、例えば、図1で示されるように、シェル6は単一シェルであり、フォトクロミック材料がコア4中に存在し、光吸収材料が単一シェル中に存在し、同じかまたは異なるバインダがコアおよび単一シェル中に存在してもよい。粒子コア中に存在するフォトクロミック材料の濃度は、粒子の約2から約30重量%または約3から約10重量%までである。粒子のシェル中に存在する光吸収材料の濃度は、粒子の約2から約30重量%または約3から約10重量%までである。
【0022】
乳化重合から生成される、フォトクロミック材料と光吸収材料とを含むポリマ粒子から構成されるコア/単一シェルラテックスエマルジョンは、下記のように調製することができる。アニオン界面活性剤溶液および脱イオン水をステンレス鋼保持タンク中で混合し、水性界面活性剤相を形成させる。保持タンクをそれから、窒素でパージし、その後、反応器内に移す。反応器をその後、100RPMで撹拌しながら、連続して窒素でパージする。反応器をその後、制御した速度で80℃まで加熱し、その温度で維持する。別に、過硫酸アンモニウム開始剤および脱イオン水の溶液を調製する。別に、メチルメタクリレートと、アニオン界面活性剤と、脱イオン水と、フォトクロミック化合物を含む第1のモノマエマルジョンを調製する。メチルメタクリレートと、アニオン界面活性剤と、脱イオン水と、光吸収化合物とを含む第2の「シェル」モノマ溶液を調製する。10重量%の第1のモノマ溶液を徐々に、80℃の水性界面活性剤相を含む反応器に送り込み、窒素でパージしながら、「種」を形成させる。開始剤溶液をその後、徐々に反応器に添加し、10分後、第1のモノマエマルジョンの残りを、計量ポンプを使用して0.5%/分の速度で連続して送り込む。第1のモノマエマルジョンが全て主反応器に添加された時点で、第2のシェルモノマエマルジョンを、計量ポンプを使用して0.5%/分の速度で連続して送り込む。第2のシェルモノマエマルジョンが全て主反応器に添加された時点で、温度を80℃でさらに2時間維持し、反応を完了させる。その後、完全に冷却させ、反応器温度を35℃まで低下させる。ラテックス粒子をその後、別々に乾燥させる。
【0023】
別の実施形態では、例えば図2に示されるように、シェルは外側シェル6Aと内側シェル6Bとを有し、フォトクロミック材料はコア4もしくは内側シェル6B、またはコア4と内側シェル6Bの両方に存在し、光吸収材料は外側シェル6A中に存在し、同じかまたは異なるバインダがコア4、内側シェル6B、および外側シェル6A中に存在してもよい。粒子コアもしくは内側シェルまたはコアと内側シェルの両方に存在するフォトクロミック材料の濃度は、粒子全体の約2から約30重量%または約3から約10重量%までである。粒子の外側シェル中に存在する光吸収材料の濃度は、粒子全体の約2から約30重量%または約3から約10重量%までである。
【0024】
乳化重合から生成される、フォトクロミック材料と光吸収材料を含むポリマ粒子から構成されるコア/内側シェル/外側シェルラテックスエマルジョンは、下記のように調製することができる。アニオン界面活性剤溶液および脱イオン水をステンレス鋼保持タンク中で混合し、水性界面活性剤相を形成させる。保持タンクをそれから、窒素でパージし、その後、反応器内に移す。反応器をその後、100RPMで撹拌しながら、連続して窒素でパージする。反応器をその後、制御した速度で80℃まで加熱し、その温度で維持する。別に、過硫酸アンモニウム開始剤および脱イオン水の溶液を調製する。別に、メチルメタクリレートと、アニオン界面活性剤と、脱イオン水とを含む第1のモノマエマルジョンを調製する。メチルメタクリレートと、アニオン界面活性剤と、脱イオン水と、フォトクロミック化合物とを含む第2の「内側シェル」モノマ溶液を調製する。メチルメタクリレートと、アニオン界面活性剤と、脱イオン水と、光吸収化合物とを含む第3の「外側シェル」モノマ溶液を調製する。10重量%の第1のモノマ溶液を徐々に、80℃の水性界面活性剤相を含む反応器に送り込み、窒素でパージしながら、「種」を形成させる。開始剤溶液をその後、徐々に反応器に添加し、10分後、第1のモノマエマルジョンの残りを、計量ポンプを使用して0.5%/分の速度で連続して送り込む。第1のモノマエマルジョンが全て主反応器に添加された時点で、第2の「内側シェル」モノマエマルジョンを、計量ポンプを使用して0.5%/分の速度で連続して送り込む。第2の「内側シェル」モノマエマルジョンが全て主反応器に添加された時点で、第3の「外側シェル」モノマエマルジョンを、計量ポンプを使用して0.5%/分の速度で連続して送り込む。第3の「外側シェル」モノマエマルジョンが全て主反応器に添加された時点で、温度を80℃でさらに2時間維持し、反応を完了させる。その後、完全に冷却させ、反応器温度を35℃まで低下させる。ラテックス粒子をその後、別々に乾燥させる。
【0025】
別の実施形態では、粒子はコア/シェル構造を欠いており、フォトクロミック材料および光吸収材料は単純にバインダ中に分散されている。粒子中に存在するフォトクロミック材料の濃度は、粒子全体の約2から約30重量%または約3から約10重量%までである。粒子中に存在する光吸収材料の濃度は、粒子全体の約2から約30重量%または約3から約10重量%までである。
【0026】
乳化重合から生成される、フォトクロミック材料および光吸収材料を含むポリマ粒子から構成されるラテックスエマルジョンは、下記のように調製することができる(コア/シェル構造を欠く粒子を製造するため)。アニオン界面活性剤溶液および脱イオン水をステンレス鋼保持タンク中で混合し、水性界面活性剤相を形成させる。保持タンクをそれから、窒素でパージし、その後、反応器内に移す。反応器をその後、100RPMで撹拌しながら、連続して窒素でパージする。反応器をその後、制御した速度で80℃まで加熱し、その温度で維持する。別に、過硫酸アンモニウム開始剤および脱イオン水の溶液を調製する。別に、メチルメタクリレートと、アニオン界面活性剤と、脱イオン水と、フォトクロミック化合物と、光吸収化合物とを含むモノマエマルジョンを調製する。10重量%のモノマ溶液を徐々に、80℃の水性界面活性剤相を含む反応器に送り込み、窒素でパージしながら、「種」を形成させる。開始剤溶液をその後、徐々に反応器に添加し、10分後、モノマエマルジョンの残りを、計量ポンプを使用して0.5%/分の速度で連続して送り込む。モノマエマルジョンが全て主反応器に添加された時点で、温度を80℃でさらに2時間維持し、反応を完了させる。その後、完全に冷却させ、反応器温度を35℃まで低下させる。ラテックス粒子をその後、別々に乾燥させる。
【0027】
粒子は、例えば、円形およびジャガイモ形状などの任意の適した形状を有してもよい。
【0028】
粒子サイズ範囲は、約30nmから約400nmまで、または約40nmから約100nmまでである。
【0029】
コアサイズに関して、Aは本明細書では粒子半径として規定され、本明細書でBとして規定されるコア半径は、Aの約5%から約90%まで、または約30%から約70%までである。実施形態では、コア半径は、約14nmから約180nmまでである。
【0030】
単一シェルの厚さは、Aの約10%から約95%まで、または約30%から約70%までである。実施形態では、単一シェルは、約2nmから約340nmまでの範囲の厚さを有する。
【0031】
内側シェルの厚さおよび外側シェルの厚さに関して、Cは本明細書では内側シェルの厚さとして規定され、Dは外側シェルの厚さとして規定される。C+Dは、Aの約10%〜約95%、または約30%から約70%までである。C/Dは、約0.2から約4までまたは約0.7から約1.5までである。実施形態では、CおよびDは、C+Dの合計が約2nmから約340nmまでとなるような様々な厚さとすることができる。
【0032】
フォトクロミック材料は、2つの形態の間の化学種の可逆的な変換を含む。フォトクロミック材料の実施形態はまた、3つまたはそれ以上の形態の間の化学種の可逆的な変換を含む。フォトクロミック材料は、1、2、3またはそれ以上の異なる型のフォトクロミック材料から構成されてもよく、この場合、「型(type)」という用語は、可逆的な相互変換可能な形態の各ファミリーを示し、例えば、スピロピランおよびその異性体メロシアニンは、集合的にフォトクロミック材料の1つの型(1つのファミリーとも呼ばれる)を形成する。特に記載がなければ、「フォトクロミック材料」という用語は、形態に関係なくフォトクロミック材料の全ての分子を示す。例えば、フォトクロミック材料が単一の型、例えばスピロピラン/メロシアニンである場合、いかなる瞬間でも、フォトクロミック材料の分子は、完全にスピロピラン、完全にメロシアニン、またはスピロピランとメロシアニンの混合物であってもよい。実施形態では、フォトクロミック材料の各型に対し、1つの形態は無色または弱く着色されており(本明細書では集合的に「着色が弱い」と呼ばれる)、他の形態は異なるように着色されている(本明細書では「異なる色」または「着色が強い」とも呼ばれる)。
【0033】
2つまたはそれ以上の型のフォトクロミック材料が存在する場合、各型は等しい、または等しくない、重量で表された量で、例えば、フォトクロミック材料の全ての型の重量に基づき約5%から約90%までの範囲で存在してもよい。
【0034】
実施形態では、フォトクロミック材料はまた、サームクロミックであり、すなわち、熱的に誘導される可逆的な色の変化である、サーモクロミズムを示す。
【0035】
任意の適したフォトクロミック材料を使用してもよい。適したフォトクロミック材料の例としては、複素環開裂を受ける化合物類、例えばスピロピラン類および関連化合物類;単素環開裂を受ける化合物類、例えばヒドラジンおよびアリールジスルフィド化合物類;シス−トランス異性化を受ける化合物類、例えば、アゾ化合物類、スチルベン化合物類など;プロトンまたは基移動光互変異性を受ける化合物類、例えば、フォトクロミックキニン類;電子移動によりフォトクロミズムを受ける化合物類、例えば、ビオロゲン類など;その他が挙げられる。
【0036】
スピロピラン類、スピロオキサジン類、およびスピロチオピラン類の特定の例としては、1’,3’−ジヒドロ−1’,3’,3’−トリメチル−6−ニトロスピロ−[2H−1−ベンゾピラン−2,2’−(2H)−インドール]、1’,3’−ジヒドロ−1’,3’,3’−トリメチル−5’−ニトロスピロ−[2H−1−ベンゾピラン−2,2’−(2H)−インドール]、1’,3’−ジヒドロ−1’,3’,3’−トリメチル−6−シアノ−スピロ−[2H−1−ベンゾピラン−2,2’−(2H)−インドール]、1’,3’−ジヒドロ−1’,3’,3’−トリメチル−8−ニトロスピロ−[2H−1−ベンゾピラン−2,2’−(2H)−インドール]、1’,3’−ジヒドロ−1’,3’,3’−トリメチル−6−ニトロ,8−メトキシ−スピロ−[2H−1−ベンゾピラン−2,2’−(2H)−インドール]、1’,3’−ジヒドロ−1’−デシル−3’,3’−ジメチル−6−ニトロスピロ−[2H−1−ベンゾピラン−2,2’−(2H)−インドール]、1,3−ジヒドロ−1,3,3−トリメチルスピロ[2H−インドール−2,3’−[3H]ナフト[2,1−b]−[1,4]オキサジン]、1,3−ジヒドロ−1,3,3−トリメチル−5−ニトロスピロ[2H−インドール−2,3’−[3H]ナフト[2,1−b]−[1,4]オキサジン]、1,3−ジヒドロ−1,3,3−トリメチル−5,6’−ジニトロ−スピロ[2H−インドール−2,3’−[3H]ナフト[2,1−b]−[1,4]オキサジン]、1,3−ジヒドロ−1,3,3−トリメチル−5−メトキシ,5’−メトキシ−スピロ[2H−インドール−2,3’−[3H]ナフト[2,1−b]−[1,4]オキサジン]、1,3−ジヒドロ−1−エチル−3,3−ジメチル−5’−ニトロスピロ[2H−インドール−2,3’−[3H]ナフト[2,1−b]−[1,4]オキサジン]、1’,3’,3’−トリメチルスピロ[2H−1−ベンゾチオピラン−2,2’−(2H)−インドリン]が挙げられる。
【0037】
したがって、実施形態で使用するのに適した置換ジアリールエテン類は、下記一般式で表すことができるものである。
【化1】


式[I]において、Xは独立して、H;塩素、フッ素、臭素などのハロゲン;1から約20まで、または約40までの炭素原子の直鎖または分枝、置換または非置換アルキル基、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチルなど(ここで、置換基はハロゲン原子、ヘテロ原子(例えば酸素基、窒素基、など)を含むことができる)、および同類のものを示す。
【化2】


式[II]において、XはSまたはOを示す。
【化3】


【化4】


式[IV]において、XはS、OまたはC=Oを示し、YはO、CHまたはC=Oを示す。
【化5】


式[V]において、YはCHまたはC=Oを示す。
【化6】


式[VI]において、XはCHまたはNを示す。
【化7】


式[VII]において、YはCHまたはC=Oを示す。
【0038】
一般式[I]〜[VII]では、R、RおよびRは、それぞれ独立して、置換アルキル基、非置換アルキル基、直鎖アルキル基、および分枝アルキル基を含み、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素などのヘテロ原子がアルキル基中に存在してもよく、または存在しなくてもよい、アルキル基、ハロゲン基、アルコキシ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アミド基、アリール基、置換アルキルアリール基、非置換アルキルアリール基を含み、ヘテロ原子がアルキルアリール基のアルキル部分またはアルキルアリール基のアリール部分に存在してもよく、または存在しなくてもよいアルキルアリール基から選択され、Aは下記で示す置換基[a]または[b]または[c]を示し、Bは置換基[d]または[e]または[f]を示す。
【0039】
【化8】

【0040】
置換基[a]〜[c]では、Rは1から約20または約40までの炭素原子の直鎖、分枝または環状、置換または非置換アルキル基、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソプロピル、シクロヘキシル、イソボルネオールなど、フェニル、ナフチルなどを含むアリールオキシ基ならびに置換および非置換ヘテロ芳香族基、アルコキシ基または置換アルコキシ基(ここでアルコキシ基のアルキル部分が1から約20または約40までの炭素原子の直鎖、分枝または環状、置換または非置換アルキル基、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソプロピル、シクロヘキシル、イソボルネオールなどを示し、置換基はハロゲン原子、ヘテロ原子(例えば、酸素基、窒素基、など)を含むことができる)、などを示し;Rはアリール基、または置換アルキルアリール基、非置換アルキルアリール基を含み、ヘテロ原子がアルキルアリール基のアルキル部分またはアルキルアリールのアリール部分に存在してもよく、または存在しなくてもよいアルキルアリール基、シアノ基、カルボン酸基または不飽和アルケン基を示し;Rは水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、およびアルコキシ基、フルオロアルキル基、シアノ基、アリール基または置換アルキルアリール基を示し;Rはアルキル基およびアリール基、または置換アルキルアリール基、非置換アルキルアリール基を含み、ヘテロ原子がアルキルアリール基のアルキル部分またはアルキルアリールのアリール部分に存在してもよく、または存在しなくてもよいアルキルアリール基を示し;ならびに、UはOまたはSを示す。
【0041】
置換基[d]〜[f]では、Rは1から約20または約40までの炭素原子の直鎖、分枝または環状、置換または非置換アルキル基、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソプロピル、シクロヘキシル、イソボルネオールなど、フェニル、ナフチルなどを含むアリールオキシ基ならびに置換および非置換ヘテロ芳香族基、またはアルコキシ基もしくは置換アルコキシ基(ここでアルコキシ基のアルキル部分が1から約20または約40までの炭素原子の直鎖、分枝または環状、置換または非置換アルキル基、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソプロピル、シクロヘキシル、イソボルネオールなどを示し、置換基はハロゲン原子、ヘテロ原子(例えば、酸素基、窒素基、など)を含むことができる)、などを示し;Rはアリール基、または置換アルキルアリール基、非置換アルキルアリール基を含み、ヘテロ原子がアルキルアリール基のアルキル部分またはアルキルアリールのアリール部分に存在してもよく、または存在しなくてもよいアルキルアリール基、シアノ基、カルボン酸基または不飽和アルケン基を示し;R10は水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、およびアルコキシ基、フルオロアルキル基、シアノ基、アリール基または置換アルキルアリール基を示し;R11はアルキル基もしくはアリール基、または置換アルキルアリール基、非置換アルキルアリール基を含み、ヘテロ原子がアルキルアリール基のアルキル部分またはアルキルアリールのアリール部分に存在してもよく、または存在しなくてもよいアルキルアリール基を示し;ならびに、ZはOまたはSを示す。
【0042】
ある実施形態では、式[I]〜[VII]の置換ジアリールエテンは、RおよびRが同じアルコキシを含む置換基である化合物である。これらの実施形態では、アルキルまたは置換アルキル基は、4またはそれ以上の炭素原子を含む。これは、ある実施形態では、十分な熱に基づく逆環化反応時間に対する要件である。しかしながら、別の実施形態では、RおよびRのアルコキシ置換基は異なるアルコキシ置換基とすることができる。この場合、アルコキシ基の少なくとも1つまたは両方が4またはそれ以上の炭素原子を含んでもよい。
【0043】
実施形態では、2−アリールアルコキシ含有ジアリールエテン類は、他の置換ジアリールエテン類、例えばアルキル置換ジアリールエテン類に比べ、可視光に対し、より長期間の間、その着色状態でより安定である。同時に、アルコキシ置換により熱脱色、すなわち、着色状態から無色状態へ戻る逆異性化への障壁が低下する。これらは画像再形成可能な媒体では重要な属性であり、フォトクロム(photochrome)のアルコキシ含有ジチエニルエテンクラスに非常に特異的であることが見出されている。例えば、幾人かの使用者、特に放置された情報の安全性に関わる者にとっては、画像再形成可能な文書の約1日での自己消去は有益である。しかしながら、他の使用者にとっては、自己消去は、使用者が消去時間/速度を制御しないので、不都合である。これらの後者の使用者は、「オンデマンド消去(erase−on−demand)」型の再使用可能な文書を好み、この場合、文書は必要とされる限り(例えば、数日から数週間またはそれ以上の間)、印刷された画像を表示し、その後、使用者が決定した場合、同じ媒体上への新規情報のリプリントプロセス中に情報が消去される。
【0044】
アルコキシ修飾ジアリールエテン類の特別な利点は、アルコキシ置換基の適した選択により、熱消去に対する障壁の特定の調整が可能になることである。例えば、熱消去に対する障壁は、アルコキシR−基置換基の構造に基づき、高温(例えば約80℃から約160℃まで)では急速で、完全であり、一方、周囲温度(例えば、約25℃から約70℃まで)では長期の熱による色安定性が維持されるように調整することができる。熱分析および分光分析に基づき、特定の化合物の半減期熱安定性は、最も熱的に安定性が低いtert−ブチル化合物では30℃で約2.2時間〜メトキシ化合物では30℃で420年の範囲であると予測することができる。
【0045】
したがって、いくつかの実施形態では、アルコキシ修飾ジチエニルエテンフォトクロミック材料は、適した照射、例えば可視光に暴露するだけで、その着色状態から無色状態に容易に変換させることができる。しかしながら、別の実施形態では、アルコキシ修飾ジチエニルエテンフォトクロミック材料は、適した照射、例えば可視光と共に熱に暴露することにより、または熱のみに暴露することにより、その着色状態から無色状態に容易に変換させることができる。本明細書における「容易に変換される」により、調製されたフォトクロミック材料は、約30分未満、約10分未満、約1分未満、または約30秒未満の、熱および/または光の適した変換手段への暴露期間で、その着色状態から無色状態へ変換させることができることが意味される。例えば、熱が変換のための活性化因子として使用されるいくつかの実施形態では、フォトクロミック材料を約80℃から約250℃まで、例えば約100から約200℃までまたは約100から160℃までの温度で加熱すると、上記期間で、フォトクロミック材料を着色状態から無色状態に容易に変換して戻すことができるが、約25〜約70℃の温度でフォトクロミック材料を加熱しても、フォトクロミック材料は着色状態から無色状態に容易に変換されない。
【0046】
これらのフォトクロミック材料はこのように、他の異なって置換された、または非置換のジチエルエテン類を含む他のフォトクロミック材料とは、材料が可視光への暴露だけでは着色状態から無色状態に容易に変換させて戻すことが一般的にはできず、着色状態から無色状態に変換して戻すためには、可視光と共に、または可視光なしで、適当な加熱に暴露することが必要であるという点で異なる。これにより、着色状態は周囲熱を超える十分な熱により構造再構成が起こるのに十分な分子および格子移動度が誘導されるまで凍結させることができる所望の製品が可能になる。さらに、実施形態では、フォトクロミック材料は着色状態と無色状態の間で切り換えるのに、熱の適用のみを必要とし、光刺激を必要としない。
【0047】
フォトクロミック材料は、3−(3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロ−2−(2−メトキシ−5−フェニルチオフェン−3−イル)シクロペント−1−エニル)−2−メチル−5−フェニルチオフェン:
【化9】


により表されるモノアルコキシ置換ジアリールエテン(DAE)としてもよい。
【0048】
フォトクロミック材料は、3,3’−(パーフルオロシクロペント−1−エン−1,2−ジイル)ビス(2−(シクロヘキシルオキシ)−5−フェニルチオフェン):
【化10】


により表されるジ−アルコキシ置換ジアリールエテン(DAE)としてもよい。
【0049】
フォトクロミック材料は、下記:
【化11】


により表されるスピロピラン系フォトクロミック材料としてもよい。
【0050】
式において、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、置換アルキル基、非置換アルキル基、直鎖アルキル基、および分枝アルキル基を含み、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素などのヘテロ原子がアルキル基中に存在してもよく、または存在しなくてもよい、アルキル基、ハロゲン基、アルコキシ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アミド基、エステル基、アリール基、置換アルキルアリール基、非置換アルキルアリール基を含み、ヘテロ原子がアルキルアリール基のアルキル部分またはアルキルアリール基のアリール部分中に存在してもよく、または存在しなくてもよい、アルキルアリール基から選択される。
【0051】
本明細書で記載されるように、フォトクロミック材料は、本明細書において各々の型のフォトクロミック材料に対し例示的な構造式で示されている多くの形態で存在することができる。本明細書で識別される化学構造では、フォトクロミック材料の1つの形態は典型的に無色であり、または弱く着色されており(例えば、淡黄色)、これは本明細書では「着色が弱い」形態と呼ばれ、一方、他の形態は典型的には異なる色(例えば、レッド、ブルー、またはパープル)を有し、これはまた、本明細書では、「着色が強い」形態と呼ばれる。
【0052】
実施形態では、3つの主な型のバインダを使用することができる:(1)粒子を製造するためのバインダ、(2)基材上への粒子のコーティングを促進するための、必要に応じて用いられるバインダ、および(3)画像再形成可能な媒体に対し、別の基材を必要に応じて用いられるものにするための、バインダおよび粒子のフィルムを製造するためのフィルム形成バインダ。これらの3つの主な型のバインダに対し、同じかまたは異なるバインダ(1つまたは複数)を使用してもよい。特に記載がなければ、バインダに対する本明細書の記載は、一般に3つの主な型のバインダに適用可能である。
【0053】
実施形態では、画像形成光がフォトクロミック材料に画像形成させることができ、画像が十分なコントラストを有するように、バインダは高い結晶質または光散乱性でないほうがよい。さらに、実施形態では、バインダは固体の、不揮発性材料であり、基材から容易に除去されない。
【0054】
ポリマ材料などの任意の適したバインダを使用してもよい。バインダとして使用することができるポリマ材料の例としては、ポリカーボネート類、ポリスチレン類、ポリスルホン類、ポリエーテルスルホン類、ポリアリールスルホン類、ポリアリールエーテル類、ポリオレフィン類、ポリアクリレート類、ポリビニル誘導体類、セルロース誘導体類、ポリウレタン類、ポリアミド類、ポリイミド類、ポリエステル類、シリコーン樹脂類、およびエポキシ樹脂類、などが挙げられる。コポリマ材料、例えば、ポリスチレン−アクリロニトリル、ポリエチレン−アクリレート、塩化ビニリデン−塩化ビニル、酢酸ビニル−塩化ビニリデン、スチレン−アルキド樹脂類もまた、適したバインダ材料の例である。コポリマ類はブロック、ランダム、または交互コポリマ類としてもよい。
【0055】
バインダは、1、2、3またはそれ以上の異なるバインダ類から構成してもよい。2つまたはそれ以上の異なるバインダ類が存在する場合、各バインダは全てのバインダの重量に基づき、例えば、約5重量%から90重量%まで、特に約30重量%から約50重量%までの範囲の等しい、または等しくない量で存在してもよい。
【0056】
光吸収材料は、1、2またはそれ以上の光吸収材料から構成されてもよい。
【0057】
光吸収材料は、フォトクロミック材料の着色の弱い形態の吸収スペクトルと比べた、その吸収スペクトルに基づいて選択される。実施形態では、光吸収材料の吸収スペクトルは、フォトクロミック材料のより熱力学的に安定な形態の吸収スペクトルと比較されるが、ここで、例えば、スピロピランおよびメロシアニンの代表的な可逆的に相互変換可能な形態では、スピロピランがより熱力学的に安定な形態であると考えられる。「熱力学的に安定な形態」という句は、外部刺激がない場合により安定な化合物を示す。
【0058】
図3は、非対称ジアリールエテン(3−(3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロ−2−(2−メトキシ−5−フェニルチオフェン−3−イル)シクロペント−1−エニル)−2−メチル−5−フェニルチオフェン)および光吸収材料である、イエロー染料(ドデシルアントラニレートドデシルピロリドン)に対する「吸収スペクトル」、「光吸収帯」、「ピーク」および「谷」の意味を説明する。非対称ジアリールエテンフォトクロームは、約250nmから約400nmの範囲の「吸収スペクトル」を示し、約400nmから約500nmまでのジアリールエテン形態の最小吸収はいずれも、「吸収スペクトル」の一部と考えない。ジアリールエテンの吸収スペクトル内には、2つの重なる光吸収帯が存在し、約300nmから約350nmの範囲の第1の強い光吸収帯および約350nmから約400nmの範囲の第2の光吸収帯である。ジアリールエテンの第1光吸収帯は、約320nmの吸収ピークを有し、ジアリールエテンの第2光吸収帯は約360nmの吸収ピークを有する。画像形成光が約365nmの予め決められた波長範囲を有する実施形態では、ジアリールエテンは図3で示されるように、予め決められた波長範囲と重なる吸収スペクトルを有する。実施形態では、フォトクロミック材料の1つの形態の光吸収帯は、図3で示される予め決められた波長範囲と重なり、図3では、ジアリールエテンの第2光吸収帯が約365nmの予め決められた波長範囲と重なっている。
【0059】
イエロー染料は谷により分離された2つの重ならない光吸収帯、約250nmから約320nmまでの範囲の第1光吸収帯および約370nmから約490nmまでの範囲の第2光吸収帯を有する。谷は約320nmから約370nmまでの範囲であり、約340nmに中心がある最低吸収を有する。イエロー染料の第1光吸収帯は約280nmの吸収ピークを有し、イエロー染料の第2光吸収帯は約430nmの吸収ピークを有する。
【0060】
実施形態では、光吸収材料の光吸収帯は、予め決められた波長範囲と重ならないようにされる。これは、図3では、イエロー染料の2つの光吸収帯およびそれらの吸収ピークが、約365nmの予め決められた波長範囲と重なっていないことで示されている。
【0061】
実施形態では、予め決められた波長範囲では、光吸収材料による光吸収は、光吸収材料の光吸収スペクトルの谷にある。別の実施形態では、予め決められた波長範囲では、光吸収材料による光吸収は、フォトクロミック材料の着色が弱い形態の光吸収の約50%未満、または約25%未満である。別の実施形態では、フォトクロミック材料の着色が弱い形態は無色であり、光吸収材料はイエロー着色剤を含む。
【0062】
実施形態では、予め決められた波長範囲では、光のシェルによって吸収が最小になる。例えば、実施形態では、シェルにより、予め決められた波長範囲では、フォトクロミック材料への光の透過が約20%から約99%まで、または約50%から約99%までとすることができる。実施形態では、図1の単一シェルおよび図2の外側シェルは半透明である。
【0063】
光吸収材料が存在しないと、実施形態では、一定期間にわたる室内の周辺光により、非露光領域にある(すなわち、画像形成光に露光されない)フォトクロミック材料は着色が強い形態への相互変換を受ける可能性があり、この場合、非露光領域は露光領域の色と一致する、または類似する可能性があり、これにより、色のコントラストが減少することにより画像の退色または消去が引き起こされる。光吸収材料を画像再形成可能な媒体に組み入れると、画像形成されていない領域の背景着色を減速させることにより、この問題が軽減され、または最小に抑えられる。
【0064】
光吸収材料のために有用である可能性のある有機化合物としては、下記が挙げられる:例えば、2,4−ジヒドロキシフェノン、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾールのような2−ヒドロキシ−フェノン類、例えば、アゾベンゼン、4−エチルアゾベンゼン、2−クロロ−アゾベンゼン、4−フェニルアゾベンゼンのようなアゾベンゼン誘導体類、下記を有する芳香族共役系:
(a)例えば、約6の炭素原子から約40の炭素原子までを有する1、2またはそれ以上の芳香環などの少なくとも1つの芳香環、例えばC−および−C−C−;
(b)例えば、約8の炭素原子から約50の炭素原子までを有し、1つまたは複数のエテニルまたはエチニル結合により共役された1、2またはそれ以上の芳香環などの少なくとも1つの芳香環、例えば−C−CH=CH−C−および−C−C≡C−C−;または、
(c)例えば、約10から約50までの炭素原子を有する縮合芳香環、例えば1,4−C10および1,5−C10
【0065】
必要に応じて、1つまたは複数の芳香環は置換基を有する。そのような置換基は例えば、N、O、Sのような原子(この場合、原子価はHとの結合により満たされる)または炭化水素基、アルデヒド(−C(O)−H)、ケトン(−C(O)−R)、エステル(−COOR)、カルボン酸(−COOH);シアノ(CN);ニトロ(NO);ニトロソ(N=O);硫黄系基(例えば、−SO−CH;および−SO−CF);フッ素原子;アルケン(−CH=CRまたは−CH=CHR)とすることができ、式において、各Rは独立して、例えば、1から約20までの炭素原子、特に1から約12までの炭素原子を有する直鎖アルキル基、例えば、ペンチル、デシルおよびドデシル、例えば、3から約40までの炭素原子、特に3から約30までの炭素原子を有する分枝アルキル基、例えば、イソプロピル、イソペンチルおよび2−プロピル−ペンチル、例えば、環状の3から約30までの炭素原子、特に4から約7までの炭素原子を有するシクロアルキル基、例えば、シクロペンチルおよびシクロヘキシル、例えば、7から約30までの炭素原子を有するアリールアルキル基またはアルキルアリール基、例えば、p−メチル−ベンジル、3−(p−エチル−フェニル)−プロピルおよび5−(1−ナフチル)−ペンチルとすることができる。
【0066】
有機芳香族共役化合物の特定の例としては、例えば、ニトロ−ベンゼン、4−メトキシ−ベンゾニトリル、アントラセン、アントラキノン、1−クロロ−アントラセンなどが挙げられ、それらの多くは予め決められた波長範囲未満で、吸収する可能性がある。
【0067】
光吸収材料のために有用なイエロー着色剤、特にイエロー染料を使用してもよい。
【0068】
例示的なイエロー着色剤の型を下記で説明する。アゾピリドンイエロー染料が適している可能性がある。実施形態では、アゾピリドンイエロー染料は370nm未満で非常に低い吸収を有するが、この波長より上で高い吸収を有する可能性がある。これらのアゾピリドンイエロー染料は、モノピリドンおよびモノアントラニレート;ジピリドンおよびビスアントラニレート;またはジアントラニレートおよびビスピリドンのいずれかから構成させることができる。いくつかの例は下記の通りである。
【化12】


【化13】

【0069】
適したイエロー着色剤としては、アシッドイエロー染料、ベイシックイエロー染料、ダイレクトイエロー染料、ソルベントイエロー染料が挙げられる。
【0070】
実施形態では、ポリマ骨格に結合された有機部分(光吸収材料として適していると本明細書で記載された化合物から誘導)から構成されるポリマ光吸収材料を使用する。ポリマ光吸収材料の適した例としては、置換ポリスチレン類、置換アクリレート類、置換メタクリレート類、置換ポリウレタン類が挙げられ、全て、光吸収有機分子に対し記載されている有機部分を結合または挿入により含んでいる。
【0071】
光吸収材料は、1、2、3またはそれ以上の異なる光吸収材料から構成されてもよい。2またはそれ以上の異なる光吸収材料が存在する場合、各光吸収材料は、全ての光吸収材料の重量に基づき、例えば約5重量%から90重量%まで、特に約30重量%から約50重量%までの範囲の等しいか、または等しくない量で存在してもよい。
【0072】
実施形態では、基材は可撓性材料から製造される。基材は透明か、または不透明とすることができる。基材は木材、プラスチック、紙、織物、繊維製品、ポリマフィルム、金属などの無機基材、などから構成してもよい。プラスチックは例として、プラスチックフィルム、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホンとしてもよい。基材は単層または多層としてもよく、多層の場合、各層は同じかまたは異なる材料である。基材は例えば、約0.3mmから約5mmまでの範囲の厚さを有する。
【0073】
基材/画像再形成可能な媒体は、剛性かまたは可撓性としてもよい。実施形態では、基材/画像再形成可能な媒体は、巻く/折り畳む、その後、開く/広げるという多くのサイクルを受けることができる。基材/画像再形成可能な媒体は、任意の適したサイズを有する。基材/画像再形成可能な媒体は、平面(例えば、シート)または非平面(例えば、立方体、巻物および湾曲形状)などの任意の適した形状を有してもよい。実施形態では、複数の画像再形成可能な媒体はまた、結合させることができ、多くのより小さな表示画面から構成された巨大な表示画面と類似のより大きな画像再形成可能な表面が形成される。
【0074】
画像再形成可能な媒体を製造する例示的な方法について以下、説明する。乳化重合から生成される、フォトクロミック材料と光吸収材料とを含むポリマ粒子から構成されたコア/シェルラテックスエマルジョンを、他の成分と組み合わせ、下記一般の調合ガイドラインに従う様式でコーティングを形成させる:乾燥重量ベースで100部のコア/シェルラテックス、乾燥重量ベースで10から50部までのバインダラテックス(ここで、バインダは典型的にはガラス転移温度が−10℃から30℃までであるスチレンアクリレートラテックスであり、これらのラテックスは、紙コーティングの分野の専門家にとって周知の紙コーティングバインダのあるクラスを含む)、1〜5部のレオロジー調節剤、これは、アルカリ膨潤性アクリレートエマルジョンまたは会合増粘剤材料またはカルボキシメチルセルロースなどの可溶性ポリマなどとしてもよく、多くの添加剤、例えば、潤滑剤、フォーム制御剤、殺生物剤などを含むことができ、典型的には7〜9の範囲の値に調製されたpHであり、すべてが当技術分野における専門家にとって周知の紙水性紙コーティング調合ガイドラインに従う。このコーティングをその後、基材に液体フィルムコーティングとして適用する。メータリングロッド、エアナイフ、ブレード、ナイフオンロール、スロットダイ、フォーワード−リバースロール、マルチロール、ディレクト−オフセットグラビア、噴霧、ファウンテインおよび他の周知の方法を含む、多くのコーティング技術が使用できる。液体フィルムコーティングを対象の基材に適用した後、紙コーティングの専門家に周知の様々な乾燥技術を使用して、水を除去することができ、所望の乾燥コーティング層が得られる。
【0075】
別の実施形態では、画像再形成可能な媒体は、予め形成された基材および粒子堆積工程を必要とせずに、調製させることができる。この場合、プラスチックフォトクロミック媒体を調製することができる。この場合、ポリエチレンテレフタレート樹脂が他の前記粒子およびバインダと共に、本明細書で記載した具体化されたフォトクロミック粒子の存在下で、押し出され、ポリエステルフィルムが得られる。押出条件は、樹脂材料がコアシェル粒子と適合し、押出温度が粒子シェルの溶融温度よりも低く、コアシェル構造の損失および具体化された特性の損失を回避するようなものとされるべきであることに注意すべきである。
【0076】
実施形態における本発明の利点は、フォトクロミック分子すべてが、確実に、光吸収材料を含む包括的な封入シェルにより、粒子のコア内で周辺UV光から保護されることである。これ以前では、光吸収材料およびフォトクロムは共に分散され、コートされており、これでは、光吸収材料およびフォトクロムがマトリクス全体にランダムに分散されるので、フォトクロムが周辺光から十分に保護されなかった。別の代替案は、フォトクロミック材料の上面に光吸収材料の薄膜をコートすることによるデュアルコーティングプロセスであった。これは滑らかな基材上では十分機能するが、粗い紙のような基材上では、完全な薄いコーティングを達成することが困難であるので、非常に問題が多い。さらに、追加のコーティング工程が必要となるが、一方、コア−シェルアプローチでは、必要となるのは予め形成させた粒子の1度のコーティング工程のみである。
【0077】
本方法の観点では、本開示は、画像再形成可能な媒体(本明細書では「媒体」とも呼ぶ)を提供することを含み、ここで、媒体は着色が弱い状態と着色が強い状態(本明細書では「異なる着色」状態とも呼ばれる)との間の可逆転移を示す。実施形態において、別の書き込みおよび消去プロセスを提供するために、第1の刺激、例えばUV光照射を媒体表面に適用し、色の変化を引き起こすことにより画像形成を実施し、第2の異なる刺激、例えばUVまたは可視光照射、および必要に応じて、熱を媒体に適用し、色の変化を逆にすることにより消去を実施する。別の実施形態では、消去は、可視光および熱の両方を適用することにより、または熱のみを適用することにより実施される。このように、例えば、媒体は全体として、フォトクロミック材料を着色が弱い状態から着色が強い状態に変換させる第1(例えばUV)波長において感応性があり、一方、媒体は全体として、フォトクロミック材料を着色が強い状態から着色が弱い状態に変換して戻す第2の異なる(例えば可視)波長および/または熱において感応性があるものとすることができる。
【0078】
実施形態では、加熱は、書き込みおよび/または消去プロセスのいずれかのために、光照射前、または光照射と同時に媒体に適用することができる。
【0079】
異なる刺激、例えば異なる光照射波長は、適切に選択することができ、明白な異なる書き込みおよび消去動作が提供される。
【0080】
実施形態では、画像再形成可能な媒体は、「オンデマンド消去」能力を有する。すなわち、画像は周囲条件において、使用者が画像再形成可能な媒体上に新しい画像を作成するために画像を意図的に消去するのに十分長い期間(例えば、1もしくは2週間またはそれ以上まで)、相対的に安定である。本開示は、本明細書において、「オンデマンド消去」能力を有する画像再形成可能な媒体(およびフォトクロミック材料を含む粒子)の実施形態について記載しているが、本開示はまた、いずれの画像消去装置を使用しなくても、周囲条件下で比較的迅速に(例えば、約48時間未満)画像が消えていく「自己消去」型の画像再形成可能な媒体(およびフォトクロミック材料を含む粒子)を含むことは理解される。フォトクロミック材料の選択は、画像再形成可能な媒体が「オンデマンド消去」能力を有するか、「自己消去」能力を有するかに強く影響する。
【0081】
様々な実施形態によれば、画像を観察者に対し視認可能にする色のコントラストは、例えば、2、3、またはそれ以上の異なる色の間のコントラストであってもよい。「色」という用語は、多くの観点、例えば、色相、明度および飽和度を含んでもよく、ここで、2つの色が少なくとも1つの観点で異なっている場合、1つの色はもう1つの色と異なっているとしてもよい。画像が使用者の裸眼にとって視認可能である限り、例えば、レッド、ホワイト、ブラック、グレイ、イエロー、シアン、マゼンタ、ブルー、およびパープルなどの任意の適した色を使用して、色のコントラストを生成させることができる。
【0082】
様々な実施形態では、視認可能な時間中に、色のコントラスが変化する、例えば減少する可能性があるが、「色のコントラスト」という句は、視認可能な時間中に、色のコントランスが変化しているか、一定であるかに関係なく、使用者が画像を認識できるのに十分な色のコントラストのすべての程度を含んでもよい。
【実施例】
【0083】
<実施例1>
[コア−単一シェル粒子]
乳化重合から生成される、フォトクロミック材料と、光吸収材料とを含むポリマ粒子から構成されるコア/シェルラテックスエマルジョンを下記のように調製した。テイカ(Tayca)アニオン界面活性剤3gおよび脱イオン水250gをステンレス鋼保持タンク中で混合し、水性界面活性剤相を形成させた。保持タンクを、窒素でパージし、その後、反応器内に移した。反応器をその後、100RPMで撹拌しながら、連続して窒素でパージした。反応器をその後、制御した速度で80℃まで加熱し、その温度で維持した。別に、過硫酸アンモニウム開始剤1.05gおよび脱イオン水の溶液を調製した。別に、メチルメタクリレート31g、テイカアニオン界面活性剤1.75g、脱イオン水34g、およびフォトクロミック材料である3−(3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロ−2−(2−メトキシ−5−フェニルチオフェン−3−イル)シクロペント−1−エニル)−2−メチル−5−フェニルチオフェン3gを含む第1のモノマエマルジョンを調製する。メチルメタクリレート31g、テイカアニオン界面活性剤1.75g、脱イオン水34g、およびネプツンゲルブ(Neptun Gelb)075(BASF由来、イエロー染料)3gを含む第2の「シェル」モノマ溶液を調製する。10重量%の第1のモノマ溶液を徐々に、80℃の水性界面活性剤相を含む反応器に送り込み、窒素でパージしながら「種」を形成させた。その後、開始剤溶液を徐々に反応器に添加し、10分後、第1のモノマエマルジョンの残りを、計量ポンプを用いて0.5%/分の速度で連続して送り込んだ。第1のモノマエマルジョンがすべて、主反応器に添加された時点で、第2のシェルモノマエマルジョンを、計量ポンプを使用して0.5%/分の速度で連続して送り込んだ。第2のシェルモノマエマルジョンがすべて主反応器に添加された時点で、温度を80℃でさらに2時間維持し、反応を完了させた。その後、完全に冷却させ、反応器温度を35℃まで低下させる。ラテックス粒子をその後、別々に乾燥させる。
【0084】
<実施例2>
[コア/内側シェル/外側シェル粒子]
乳化重合から生成される、フォトクロミック材料と、光吸収材料とを含むポリマ粒子から構成されるコア/内側シェル/外側シェルラテックスエマルジョンを下記のように調製する。テイカアニオン界面活性剤3gおよび脱イオン水250gを含むアニオン界面活性剤溶液をステンレス鋼保持タンク中で混合し、水性界面活性剤相を形成させる。保持タンクをその後、窒素でパージし、それから反応器内に移す。反応器をその後、100RPMで撹拌しながら、連続して窒素でパージする。反応器をその後、制御した速度で80℃まで加熱し、その温度で維持する。別に、過硫酸アンモニウム開始剤1.05gおよび脱イオン水の溶液を調製する。別に、メチルメタクリレート31gと、テイカアニオン界面活性剤1.75gと、脱イオン水34gとを含む第1のモノマエマルジョンを調製する。メチルメタクリレート15gと、テイカアニオン界面活性剤0.9gと、脱イオン水17gと、3−(3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロ−2−(2−メトキシ−5−フェニルチオフェン−3−イル)シクロペント−1−エニル)−2−メチル−5−フェニルチオフェン3gとを含む第2の「内側シェル」モノマ溶液を調製する。メチルメタクリレート15gと、テイカアニオン界面活性剤0.9gと、脱イオン水17gと、ネプツンゲルブ075(BASF由来)3gとを含む第3の「外側シェル」モノマ溶液を調製する。10重量%の第1のモノマ溶液を徐々に、80℃の水性界面活性剤相を含む反応器に送り込み、窒素でパージしながら「種」を形成させる。その後、開始剤溶液を徐々に反応器に添加し、10分後、第1のモノマエマルジョンの残りを、計量ポンプを用いて0.5%/分の速度で連続して送り込む。第1のモノマエマルジョンがすべて主反応器に添加された時点で、第2の「内側シェル」モノマエマルジョンを、計量ポンプを用いて0.5%/分の速度で連続して送り込む。第2の「内側シェル」モノマエマルジョンがすべて主反応器に添加された時点で、第3の「外側シェル」モノマエマルジョンを、計量ポンプを用いて0.5%/分の速度で連続して送り込む。第3の「外側シェル」モノマエマルジョンがすべて主反応器に添加された時点で、温度を80℃でさらに2時間維持し、反応を完了させる。その後、完全に冷却させ、反応器温度を35℃まで低下させる。ラテックス粒子をその後、別々に乾燥させる。
【0085】
<実施例3>
[粒子(コア/シェル構造なし、この場合、フォトクロミック材料および光吸収材料は粒子中に分散される)]
乳化重合から生成される、フォトクロミック材料と光吸収材料とを含むポリマ粒子から構成されるラテックスエマルジョンを下記のように調製する。テイカアニオン界面活性剤3gおよび脱イオン水250gを含むアニオン界面活性剤溶液を、ステンレス鋼保持タンク中で混合し、水性界面活性剤相を形成させる。その後、保持タンクを窒素でパージし、それから反応器内に移す。反応器をその後、100RPMで撹拌しながら、連続して窒素でパージする。反応器をその後、制御した速度で80℃まで加熱し、その温度で維持する。別に、過硫酸アンモニウム開始剤1.05gおよび脱イオン水の溶液を調製する。別に、メチルメタクリレート64gと、テイカアニオン界面活性剤3.5gと、脱イオン水68gと、3−(3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロ−2−(2−メトキシ−5−フェニルチオフェン−3−イル)シクロペント−1−エニル)−2−メチル−5−フェニルチオフェン3gと、ネプツンゲルブ075(BASF由来)3gとを含むモノマエマルジョンを調製する。10重量%のモノマ溶液を徐々に、80℃の水性界面活性剤相を含む反応器に送り込み、窒素でパージしながら「種」を形成させる。その後、開始剤溶液を徐々に反応器に添加し、10分後、モノマエマルジョンの残りを、計量ポンプを用いて0.5%/分の速度で連続して送り込む。モノマエマルジョンがすべて主反応器に添加された時点で、温度を80℃でさらに2時間維持し、反応を完了させる。その後、完全に冷却させ、反応器温度を35℃まで低下させる。ラテックス粒子をその後、別々に乾燥させる。
【符号の説明】
【0086】
2 粒子、4 コア、6 シェル、6A 外側シェル、6B 内側シェル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)バインダと、
(b)フォトクロミック材料と、
(c)光吸収材料と、
を含む複数の粒子を有する画像再形成可能な媒体。
【請求項2】
基材をさらに有する、請求項1記載の画像再形成可能な媒体。
【請求項3】
前記粒子およびフィルム形成バインダを含むフィルムをさらに有し、別の基材が前記媒体に存在しない、請求項1記載の画像再形成可能な媒体。
【請求項4】
前記光吸収材料はイエロー着色剤を含む、請求項1記載の画像再形成可能な媒体。
【請求項5】
前記粒子はコアおよびシェルを有する、請求項1記載の画像再形成可能な媒体。
【請求項6】
前記シェルは単一シェルであり、前記フォトクロミック材料は前記コア中に存在し、前記光吸収材料は前記単一シェル中に存在する、請求項5記載の画像再形成可能な媒体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2010−92045(P2010−92045A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−229274(P2009−229274)
【出願日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】