画像処理装置、画像処理方法、及び画像処理プログラム
【課題】異常部と、該異常部と同種の色情報を有する他の被写体とを精度良く識別できる画像処理装置、画像処理方法、及び画像処理プログラムを提供する。
【解決手段】画像処理装置は、被検体の管腔内を撮像した画像を構成する各画素の色情報を基に異常部の候補領域を検出する異常部候補領域検出部110と、候補領域の境界近傍に存在する画素である境界近傍画素を特定する境界近傍画素特定部120と、境界近傍画素の画素値に基づき特徴量を算出する特徴量算出部130と、特徴量を基に異常部領域を識別する異常部領域識別部140とを備える。
【解決手段】画像処理装置は、被検体の管腔内を撮像した画像を構成する各画素の色情報を基に異常部の候補領域を検出する異常部候補領域検出部110と、候補領域の境界近傍に存在する画素である境界近傍画素を特定する境界近傍画素特定部120と、境界近傍画素の画素値に基づき特徴量を算出する特徴量算出部130と、特徴量を基に異常部領域を識別する異常部領域識別部140とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体の体内を撮像した画像から異常部を検出する画像処理装置、画像処理方法、及び画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内視鏡等の医用観察装置により被検体の管腔内を撮像した管腔内画像(以下、単に画像ともいう)から異常部を検出するために、種々の方法が検討されている。例えば、特許文献1には、画像内の各画素の画素値を各画素の色情報に基づく特徴空間に写像し、特徴空間内でクラスタリングを行った後、各クラスタの大きさや重心座標等の情報を基に正常粘膜クラスタや異常部クラスタを特定し、異常部クラスタに属する画素を異常部として検出する画像処理方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−192880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、内視鏡によって撮像される画像には、アフタ性病変や潰瘍といった白色調の病変部(異常部)に対し、食物残渣や、鏡面反射や、内視鏡に近接して撮像された粘膜面のように、異常部と同種の色情報を有する他の被写体が写っている場合がある。このため、従来のように、色情報のみに基づいて異常部を検出しようとすると、異常部とこれら他の被写体を識別することができないという問題があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、異常部と、該異常部と同種の色情報を有する他の被写体とを精度良く識別できる画像処理装置、画像処理方法、及び画像処理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る画像処理装置は、被検体の管腔内を撮像した画像を構成する各画素の色情報を基に異常部の候補領域を検出する異常部候補領域検出部と、前記候補領域の境界近傍に存在する画素である境界近傍画素を特定する境界近傍画素特定部と、前記境界近傍画素の画素値に基づく特徴量を算出する特徴量算出部と、前記特徴量を基に異常部領域を識別する異常部領域識別部とを備えることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る画像処理方法は、被検体の管腔内を撮像した画像を構成する各画素の色情報を基に異常部の候補領域を検出する異常部候補領域検出ステップと、前記候補領域の境界近傍に存在する画素である境界近傍画素を特定する境界近傍画素特定ステップと、前記境界近傍画素の画素値に基づく特徴量を算出する特徴量算出ステップと、前記特徴量を基に異常部領域を識別する異常部領域識別ステップとを含むことを特徴とする。
【0008】
本発明に係る画像処理プログラムは、被検体の管腔内を撮像した画像を構成する各画素の色情報を基に異常部の候補領域を検出する異常部候補領域検出ステップと、前記候補領域の境界近傍に存在する画素である境界近傍画素を特定する境界近傍画素特定ステップと、前記境界近傍画素の画素値に基づく特徴量を算出する特徴量算出ステップと、前記特徴量を基に異常部領域を識別する異常部領域識別ステップとをコンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、画像の色情報に基づいて異常部候補領域を検出した後、異常部候補領域の境界近傍画素の画素値に基づく特徴量を算出し、該特徴量を基に異常部領域を識別するので、異常部と、該異常部と同種の色情報を有する他の被写体とを精度良く識別することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明の実施の形態1に係る画像処理装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、図1に示す画像処理装置の動作を示すフローチャートである。
【図3】図3は、図1に示す画像処理装置の処理対象である画像の一例を示す模式図である。
【図4】図4は、図3に示す画像に対応する候補領域画像を示す模式図である。
【図5】図5は、図1に示す境界近傍画素特定部の動作を示すフローチャートである。
【図6】図6は、図4に示す画像から検出された境界画素を示す模式図である。
【図7】図7は、図6に示す画像から算出された距離変換画像を示す模式図である。
【図8】図8は、図7に示す画像を距離変換領域に分割した領域ラベル画像を示す模式図である。
【図9】図9は、図7に示す画像に基づいて設定された境界近傍領域を示す模式図である。
【図10】図10は、図1に示す境界近傍画素の画素値に基づく特徴量の算出処理を示すフローチャートである。
【図11】図11は、本発明の実施の形態2に係る画像処理装置の構成を示すブロック図である。
【図12】図12は、図11に示す境界近傍画素特定部の動作を示すフローチャートである。
【図13】図13は、実施の形態2における境界近傍画素の特定方法を説明する模式図である。
【図14】図14は、実施の形態2における境界近傍画素の特定方法を説明する模式図である。
【図15】図15は、実施の形態2の変形例における外辺有効画素特定部の構成を示すブロック図である。
【図16】図16は、実施の形態2の変形例における境界近傍画素特定部の動作を示すフローチャートである。
【図17】図17は、実施の形態2の変形例における検査対象領域の判定方法を説明する模式図である。
【図18】図18は、本発明の実施の形態3に係る画像処理装置の構成を示すブロック図である。
【図19】図19は、図18に示す特徴量算出部の動作を示すフローチャートである。
【図20】図20は、本発明の実施の形態4に係る画像処理装置の構成を示すブロック図である。
【図21】図21は、図20に示す特徴量算出部の動作を示すフローチャートである。
【図22】図22は、画素値変化情報の算出方法を説明する模式図である。
【図23】図23は、図22に示す画素群に対応する画素値の平均値を示すグラフである。
【図24】図24は、正規化された画素値の平均値を示すグラフである。
【図25】図25は、本発明の実施の形態5に係る画像処理装置の構成を示すブロック図である。
【図26】図26は、図25に示す特徴量算出部の動作を示すフローチャートである。
【図27】図27は、画素値の変化量情報(微分値)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態に係る画像処理装置、画像処理方法、及び画像処理プログラムについて、図面を参照しながら説明する。なお、これら実施の形態によって本発明が限定されるものではない。また、各図面の記載において、同一部分には同一の符号を付して示している。
【0012】
以下の実施の形態においては、一例として、カプセル内視鏡等の医用観察装置によって被検体の管腔内を撮像することにより取得された管腔内画像(以下、単に画像ともいう)から白色調の病変部(以下、異常部ともいう)を検出する画像処理について説明する。なお、以下の実施の形態において画像処理の対象となる管腔内画像は、各画素位置においてR(赤)、G(緑)、B(青)の各色成分(波長成分)に対する画素レベル(画素値)を持つカラー画像である。
【0013】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る画像処理装置の構成を示すブロック図である。図1に示す画像処理装置1は、画像処理装置1全体の動作を制御する制御部10と、カプセル内視鏡等の医用観察装置によって撮像された画像に対応する画像データを取得する画像取得部20と、外部から入力される入力信号を受け付ける入力部30と、各種表示を行う表示部40と、画像取得部20によって取得された画像データや種々のプログラムを格納する記録部50と、画像データに対して所定の画像処理を実行する演算部100とを備える。
【0014】
制御部10は、CPU等のハードウェアによって実現され、記録部50に格納された各種プログラムを読み込むことにより、画像取得部20から入力される画像データや入力部30から入力される操作信号等に従って、画像処理装置1を構成する各部への指示やデータの転送等を行い、画像処理装置1全体の動作を統括的に制御する。
【0015】
画像取得部20は、医用観察装置を含むシステムの態様に応じて適宜構成される。例えば、医用観察装置がカプセル内視鏡であり、医用観察装置との間の画像データの受け渡しに可搬型の記録媒体が使用される場合、画像取得部20は、この記録媒体を着脱自在に装着し、保存された管腔内画像の画像データを読み出すリーダ装置で構成される。また、医用観察装置によって撮像された管腔内画像の画像データを保存しておくサーバを設置する場合、画像取得部20は、サーバと接続される通信装置等で構成され、サーバとデータ通信を行って管腔内画像の画像データを取得する。或いは、画像取得部20を、内視鏡等の医用観察装置から、ケーブルを介して画像信号を入力するインターフェース装置等で構成しても良い。
【0016】
入力部30は、例えばキーボードやマウス、タッチパネル、各種スイッチ等の入力デバイスによって実現され、受け付けた入力信号を制御部10に出力する。
表示部40は、LCDやELディスプレイ等の表示装置によって実現され、制御部10の制御の下で、管腔内画像を含む各種画面を表示する。
【0017】
記録部50は、更新記録可能なフラッシュメモリ等のROMやRAMといった各種ICメモリ、内蔵若しくはデータ通信端子で接続されたハードディスク、又は、CD−ROM等の情報記録媒体及びその読取装置等によって実現される。記録部50は、画像取得部20によって取得された管腔内画像の画像データの他、画像処理装置1を動作させると共に、種々の機能を画像処理装置1に実行させるためのプログラムや、このプログラムの実行中に使用されるデータ等を記録する。具体的には、記録部50は、管腔内画像から異常部を検出する画像処理を当該画像処理装置1に実行させるための画像処理プログラム51を記録する他、予めサンプリングにより取得したアフタ性病変や潰瘍等の白色調の病変部に属する画素の色特徴量といった情報を記録する。
【0018】
演算部100は、CPU等のハードウェアによって実現され、画像処理プログラム51を読み込むことによって管腔内画像に対応する画像データに画像処理を施し、管腔内画像から異常部を検出するための種々の演算処理を行う。
【0019】
次に、演算部100の詳細な構成について説明する。
図1に示すように、演算部100は、管腔内画像の色情報を基に異常部の候補領域を検出する異常部候補領域検出部110と、該候補領域の境界近傍画素を特定する境界近傍画素特定部120と、境界近傍画素の画素値に基づき特徴量を算出する特徴量算出部130と、該特徴量を基に異常部領域を識別する異常部領域識別部140とを備える。
【0020】
この内、境界近傍画素特定部120は、候補領域の境界近傍領域を設定する境界近傍領域設定部121を有し、境界近傍領域内の画素を境界近傍画素として特定する。ここで、境界近傍領域とは、候補領域の境界に位置する画素(境界画素)を挟んで候補領域の内側及び外側に設定される所定の幅以下の領域のことである。より詳細には、境界近傍領域設定部121は、画像内の各画素と境界画素との間の距離を表す距離変換画像を算出する距離変換画像算出部121aと、距離変換画像を候補領域にそれぞれ対応する距離変換領域に分割する距離変換画像分割部121bとを含む。
また、特徴量算出部130は、境界近傍画素のエッジ強度を算出するエッジ強度算出部131を有し、エッジ強度を特徴量とすることを特徴とする。
【0021】
次に、画像処理装置1の動作について説明する。図2は、画像処理装置1の動作を示すフローチャートである。また、図3は、画像処理装置1の処理対象である画像の一例を示す模式図である。図3に示すように、画像M1には、粘膜Memの表面に現れた白色調の病変部の領域A1と、粘膜Memの画面の手前側の空間に浮遊し、又は、粘膜Memの表面に堆積(付着)した残渣の領域A2〜A5とが写されている。なお、領域A2〜A5は、粘膜Memよりも画面の手前側に突出しているため、領域A2〜A5の境界の周囲には影が現れている。
【0022】
まず、ステップS11において、画像取得部20は、被検体の管腔内画像を取得して記録部50に格納する。演算部100は、処理対象の画像(例えば、画像M1)を記録部50から順次読み込む。
【0023】
続くステップS12において、異常部候補領域検出部110は、画像を構成する各画素の色情報を基に、異常部の候補領域を検出する。ここで、アフタ性病変や潰瘍等の異常部は白色調の特定色を示す。そこで、異常部候補領域検出部110は、画像から白色調の特定色を示す領域を検出し、これを異常部の候補領域とする。
【0024】
具体的には、異常部候補領域検出部110は、事前に記録部50に記録しておいたアフタ性病変や潰瘍等に属する複数の画素の色特徴量を用いて、下記演算処理を行う。
ここで、色特徴量とは、R、G、B各成分の画素値や、これらの画素値を基に公知の変換により2次的に算出される値のことである。後者の具体例としては、YCbCr変換により算出される色差、色相、HSI変換により算出される彩度、G/RやB/Gといった色比等が挙げられる。記録部50には、予めサンプリングした画素の色特徴量からなる特徴ベクトルFn=(fn_1,fn_2,…,fn_j,…,fn_k)t (fn_jはn番目のサンプリング画素のj番目の色特徴量、kは特徴量の個数。なお、右辺の肩のtは転置ベクトルを示す)を基に、次式(1−1)及び(1−2)によって与えられる平均ベクトルμ及び分散共分散行列Zが記録されている。
【数1】
式(1−1)及び(1−2)において、NDはサンプリングデータ数である。また、式(1−2)の右辺の(Fn−μ)tは、ベクトル(Fn−μ)の転置ベクトルである。
【0025】
異常部候補領域検出部110は、処理対象の画像内の各画素の色特徴量からなる特徴ベクトルx=(x_1,x_2,…,x_j,…,x_k)t (x_jは、当該画素のj番目の色特徴量)を作成する。そして、この特徴ベクトルxと、事前に記録部50に記録しておいた平均ベクトルμ及び分散共分散行列Zとを基に、次式(1−3)に従い、各画素が特定色領域であるか否かを判定するための判定指標P(x)を算出する。
【数2】
式(1−3)において、|Z|は行列Zの行列式であり、Z-1は行列Zの逆行列である。また、(x−μ)tは、ベクトル(x−μ)の転置ベクトルである。
【0026】
その後、異常部候補領域検出部110は、判定指標P(x)が所定の閾値以上となる画素を候補領域として検出する。そして、候補領域の画素に対して値1を設定し、その他の画素に対して値0を設定した候補領域画像を作成する。
図4は、画像M1に対応する候補領域画像を示す模式図である。画像M2には、領域A1〜A5が白抜きで示されている。これらの領域A1〜A5が異常部の候補領域となる。
【0027】
なお、異常部の候補領域の検出方法としては、上述した確率モデルを用いた検出方法の他、例えば、各画素の色特徴量を成分とする特徴空間内において判別境界を設定する方法や、病変色等の代表的な色特徴量と各画素の色特徴量との色特徴空間における距離を閾値処理する方法(k近傍法、参考:特許第4266920号公報、CG−ARTS協会 「ディジタル画像処理」、第228頁(NN法とkNN法))等、公知の様々な検出方法を用いることができる。また、画素単位の色特徴量を用いて候補領域を検出するのではなく、画像内のエッジ情報等を基に画像を複数の小領域に分割した後、小領域単位の色特徴量を用いて候補領域を検出しても良い。
【0028】
ステップS13において、境界近傍画素特定部120は、候補領域の境界の近傍に存在する画素である境界近傍画素を特定する。
図5は、境界近傍画素特定部120の詳細な動作を示すフローチャートである。まず、ステップS131において、境界近傍画素特定部120は、候補領域の境界画素を検出する。具体的には、候補領域を含む画像をラスタ走査しながら注目画素を順次設定し、注目画素が候補領域であり、且つ、その隣接画素の何れかが候補領域でない場合の注目画素を境界画素とする。或いは、候補領域を含む画像において、公知の輪郭追跡(参考:CG−ARTS協会 「ディジタル画像処理」、第178頁(輪郭追跡))を行って、境界画素を検出しても良い。
図6は、画像M2から検出された境界画素を示す模式図である。画像M3には、各候補領域A1〜A5に対応する境界画素群B1〜B5が示されている。
【0029】
続くステップS132において、距離変換画像算出部121aは、画像内の各画素と候補領域の境界画素との間の距離を表す距離変換画像を算出する。これは、公知の距離変換処理(参考:東京大学出版会 「画像解析ハンドブック」、第576頁(距離変換とスケルトン抽出))を行うことで実現することができる。
【0030】
図7は、画像M3から算出された距離変換画像を示す模式図である。画像M4において、各画素の画素値(輝度)は、境界画素群B1〜B5から距離が離れるほど高くなるように設定されている。
【0031】
ステップS133において、距離変換画像分割部121bは、距離変換画像を各候補領域に対応する距離変換領域に分割する。ここで、複数の候補領域が画像内に存在する場合、その距離変換画像を、画素値の尾根を境界として分割することによって、各候補領域に対応する距離変換領域に分割することができる。
【0032】
画素値の尾根を境界とする画像分割は、例えば次のように行われる。まず、各画素の画素値の勾配方向を求める。このとき、勾配方向を画素値が低くなる方向にとる。次に、各画素が画素値の勾配方向に沿って移動した際に到達する極小値画素を求め、互いに隣接する極小値画素に到達した画素同士が同一の領域となるように画像を分割する。分割後は、各領域を識別するためのラベル値を各領域内の画素に設定して、領域ラベル画像を得る。なお、画素値の尾根を境界とする画像分割方法は、本発明者による国際公開第2006/080239号に詳細に開示されている。
【0033】
距離変換画像を分割する他の方法として、分水嶺(watershed)アルゴリズム(参考:Luc Vincent and Pierre Soille.“Watersheds in digital spaces:An efficient algorithm based on immersion simulations”,IEEE Transactions on Pattern Analysis and Machine Intelligence,Vol.13, No.6,pp.583−598,June 1991)を用いても良い。分水嶺アルゴリズムは、画像の画素値情報を高度とみなした地形において水を満たしていく際に、異なるくぼみに溜まる水の間で境界ができるように画像を分割する方法である。距離変換画像に対して分水嶺アルゴリズムを実行することによっても、国際公開第2006/080239号に開示された方法とほぼ同等の画像分割結果を得ることができる。
図8は、画像M4を距離変換領域に分割した領域ラベル画像を示す模式図である。画像M5には、各候補領域A1〜A5に対応する距離変換領域C1〜C5が示されている。
【0034】
ステップS134において、境界近傍領域設定部121は、各候補領域の境界近傍領域を設定する。より詳細には、境界近傍領域設定部121は、各候補領域に対応する距離変換領域において、所定値以下の画素値を有する画素領域、即ち、境界画素からの距離が所定値以下の領域を、各候補領域の境界近傍領域とする。
【0035】
図9は、画像M4に基づいて設定された境界近傍領域を示す模式図である。画像M6の各距離変換領域C1〜C5には、境界画素群B1〜B5に対応する境界近傍領域D1〜D5が示されている。
さらに、ステップS135において、境界近傍画素特定部120は、境界近傍領域内の画素を境界近傍画素として特定する。
この後、処理はメインルーチンに戻る。
【0036】
ステップS14において、特徴量算出部130は、境界近傍画素の画素値に基づく特徴量を算出する。
図10は、特徴量算出部130の詳細な動作を示すフローチャートである。まず、ステップS141において、エッジ強度算出部131は、境界近傍画素のエッジ強度を算出する。これは、境界近傍画素の各波長成分(R、G、B)の画素値に対して、公知の1次微分フィルタ(参考:CG−ARTS協会 「ディジタル画像処理」、第114頁(微分フィルタ))を適用し、各画素における1次微分値を算出することで実現できる。この時、ノイズによる影響を軽減するため、平滑化を伴う1次微分であるソーベル(Sobel)フィルタ等を適用すると良い。
【0037】
続くステップS142において、特徴量算出部130は、エッジ強度の平均値を境界近傍領域ごとに算出する。なお、ステップS141においては、波長成分ごとにエッジ強度を算出しているので、1つの候補領域に対し、R、G、B波長成分に対応する3つの平均値が得られる。
【0038】
ここで、粘膜の表層に存在するアフタ性病変や潰瘍の領域(例えば、図3に示す候補領域A1)は、粘膜上に浮遊又は堆積する食物残渣(例えば、図3に示す候補領域A2〜A5)や、粘膜から鏡面反射された領域に比べると、周辺の粘膜面との間の画素値の変化が小さい。一方、病変等が見られない(即ち連続する)粘膜面である近接粘膜面に比べると、周辺の粘膜面との間における画素値の変化が大きい。そこで、実施の形態1においては、画素値の変化を識別するための特徴量として、境界近傍画素のエッジ強度を算出する。
この後、処理はメインルーチンに戻る。
【0039】
ステップS15において、異常部領域識別部140は、特徴量を基に異常部領域を識別する。実施の形態1においては、ステップS12において説明した方法と同様に、確率モデルを用いて識別を行う。具体的には、事前に、アフタ性病変や潰瘍、食物残渣、鏡面反射、近接粘膜等のカテゴリにそれぞれ属する複数の候補領域をサンプリングし、各候補領域の境界近傍画素の画素値に基づく特徴量(即ち、波長成分毎のエッジ強度)を求めておく。そして、サンプリングした候補領域の特徴量からなる特徴ベクトルFn=(fn_1,fn_2,…,fn_j,…,fn_k)t (fn_j:n番目のサンプリング候補領域のj番目の特徴量、k:特徴量の個数(本実施形態においてはk=3)を基に、カテゴリごとに、上式(1−1)及び(1−2)によって与えられる平均ベクトルμ及び分散共分散行列Zを求め、記録部50に記録しておく。
【0040】
そして、異常部領域識別部140は、処理対象の画像に含まれる候補領域の特徴量からなる特徴ベクトルx=(x_1,x_2,…,x_j,…,x_k)t (x_jは、当該候補領域のj番目の特徴量)を作成し、事前に記録部50に記録しておいた各カテゴリの平均ベクトルμ及び分散共分散行列Zを基に、上式(1−3)に従い、各候補領域が各カテゴリの領域であるか否かを判定するための判定指標P(x)を、カテゴリごとに算出する。その後、アフタ性病変や潰瘍のカテゴリに対する判定指標P(x)が、他のカテゴリに対応する判定指標P(x)よりも大きく、且つ、その判定指標P(x)の値が所定の閾値以上となる候補領域を異常部領域と識別する。
【0041】
なお、特徴量を基に異常部領域を識別する方法としては、上述した確率モデルを用いる方法の他、パターン認識で用いられる他の一般的な方法(決定木、近傍法、サポートベクターマシン等)を用いても良い。
【0042】
そして、最後のステップS16において、演算部100は、ステップS15における異常部領域の識別結果を出力する。これに応じて、制御部10は、異常部領域の識別結果を記録部50に記録する。この際、制御部10は、異常部領域の識別結果を表示部40等に表示させても良い。その後、画像処理装置1における処理は終了する。
【0043】
以上説明したように、実施の形態1によれば、管腔内画像の色情報に基づいて異常部の候補領域を検出した後、候補領域の境界近傍画素の画素値に基づく特徴量を算出し、該特徴量を基に異常部領域を識別するので、異常部と、該異常部と同種の色情報を有する他の被写体とを精度良く識別することができる。また、実施の形態1によれば、候補領域の境界画素から所定の距離以下となる領域を各候補領域の境界近傍領域に設定し、境界近傍領域内の画素を境界近傍画素として特徴量を算出するので、候補領域の検出精度が不十分で、検出された候補領域の境界と本来の境界とに差異が生じる場合においても、その差を補うことができる。その結果、異常部を精度良く識別することが可能となる。
【0044】
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2について説明する。
図11は、実施の形態2に係る画像処理装置の構成を示すブロック図である。図11に示すように、実施の形態2に係る画像処理装置2は、図1に示す演算部100の代わりに、演算部200を備える。なお、画像処理装置2の演算部200以外の構成については、図1に示すものと同様である。
【0045】
演算部200は、異常部候補領域検出部110と、境界近傍画素特定部210と、特徴量算出部130と、異常部領域識別部140とを備える。この内、異常部候補領域検出部110と、特徴量算出部130と、異常部領域識別部140の構成及び動作は、実施の形態1と同様である。
【0046】
境界近傍画素特定部210は、境界近傍画素を特定する際の基となる境界を、候補領域の境界全周の内の一部に制限する対象境界制限部211を有し、制限した一部の境界に対して境界近傍画素を特定する。
【0047】
より詳細には、対象境界制限部211は、候補領域の境界画素から外側の所定範囲である外辺領域から、特徴量の算出に有効な領域の画素(以下、有効画素という)を特定する外辺有効画素特定部211aと、有効画素に対応する境界を設定する対応境界設定部211bとを含む。この内、外辺有効画素特定部211aは、距離変換画像算出部211a−1と、距離変換画像分割部211a−2とを含み、各距離変換領域において、境界画素から所定の距離に位置する画素を、当該距離変換領域に対応する候補領域における有効画素として特定する。
【0048】
一方、対応境界設定部211bは、画像内の各画素と上記有効画素との間の距離を表す距離変換画像を算出する距離変換画像算出部211b−1を含み、有効画素から所定の距離以内にある境界を、有効画素に対応する境界に設定する。
【0049】
次に、画像処理装置2の動作について説明する。画像処理装置2の動作は、全体として実施の形態1と同様であり、図2のステップS13において境界近傍画素特定部210が実行する管腔内画像から検出された異常部の候補領域の境界近傍画素を特定する処理の内容が実施の形態1とは異なる。
【0050】
図12は、境界近傍画素特定部210の詳細な動作を示すフローチャートである。また、図13及び図14は、境界近傍画素の特定方法を説明する模式図である。
まず、ステップS201において、境界近傍画素特定部210は、候補領域の境界画素を検出する。なお、ステップS201における詳細な処理は、図5に示すステップS131と同様である。
【0051】
続くステップS202において、距離変換画像算出部211a−1は、画像内の各画素と候補領域の境界画素との間の距離を表す距離変換画像を算出する。なお、ステップS202における詳細な処理は、図5に示すステップS132と同様である。
【0052】
ステップS203において、距離変換画像分割部211a−2は、距離変換画像を各候補領域に対応する距離変換領域に分割する。なお、ステップS203における詳細な処理は、図5に示すステップS133と同様である。
【0053】
ステップS204において、外辺有効画素特定部211aは、境界画素から所定の距離にある画素である外辺画素を有効画素として特定する。ここで外辺画素とは、各候補領域に対応する距離変換領域において、候補領域の境界画素から候補領域の外側に向かって所定の距離dだけ離れた画素のことである。
【0054】
このとき、例えば図13の画像M7に示すように、候補領域A6が画像M7の端部に接する場合、境界画素群B6の内、画像M7の端部近傍の画素群B6’には有効画素が特定されない。また、例えば図14の画像M8に示すように、距離変換領域C7、C8にそれぞれ含まれる候補領域A7、A8同士が所定の距離dの2倍以下の間隔で近接する場合、境界画素群B7、B8の内、距離dの2倍以下で近接する境界画素群B7’、B8’には有効画素が特定されない。
【0055】
ステップS205において、距離変換画像算出部211b−1は、画像内の各画素の有効画素からの距離変換画像を算出する。なお、距離変換画像の算出方法については、図5に示すステップS132と同様である。
ステップS206において、対応境界設定部211bは、有効画素から所定の距離にある境界画素を検出する。
【0056】
続くステップS207において、境界近傍画素特定部210は、ステップS206において検出した境界画素を境界近傍画素として特定する。これより、境界画素の内、画像の端部に接する部分の画素や、所定の距離以内で互いに近接する候補領域の部分の画素は境界近傍領域として特定されなくなる。
この後、処理はメインルーチンに戻る。
【0057】
具体例として、画像M7の場合、ステップS205において算出された有効画素群E6からの距離変換画像を基に、ステップS206において、有効画素群E6から所定の距離dにある境界画素群B6(太線の部分)が検出される。この境界画素群B6のみが、ステップS207において境界近傍画素として特定される。
【0058】
また、画像M8の場合、ステップS205において算出された有効画素群E7、E8からの距離変換画像を基に、ステップS206において、有効画素群E7、E8から所定の距離dにある境界画素群B7、B8(太線の部分)が検出される。これらの境界画素群B7、B8のみが、ステップS207において境界近傍画素として特定される。
【0059】
以上説明したように、実施の形態2によれば、境界画素から所定の距離に位置する外辺画素を特徴量の算出に有効な領域の画素と特定し、該有効な領域の画素に対応する境界を基に特徴量を算出するので、候補領域の画像端に接する部分の画素値の変化や、互いに近接する候補領域間の画素値の変化を除外し、周辺の粘膜面との間の画素値の変化に基づく特徴量を算出することができる。その結果、異常部を精度良く識別することが可能となる。
【0060】
(変形例)
次に、実施の形態2の変形例について説明する。
実施の形態2の変形例に係る画像処理装置は、図11に示す外辺有効画素特定部211aの代わりに、図15に示す外辺有効画素特定部211a’を有する。なお、外辺有効画素特定部211a’以外の画像処理装置の構成については、図11に示すものと同様である。
【0061】
外辺有効画素特定部211a’は、実施の形態2と同様の距離変換画像算出部211a−1及び距離変換画像分割部211a−2に加えて、外辺領域内の画素が異常部の検出を行う対象領域(以下、検査対象領域という)に含まれるか否かを判定する検査領域判定部211a−3をさらに含み、検査対象領域に含まれると判定された外辺領域内の画素を有効画素として特定する。
【0062】
次に、本変形例に係る画像処理装置の動作について説明する。図16は、本変形例における境界近傍画素特定部の動作を示すフローチャートである。また、図17は、検査対象領域の判定方法を説明する模式図である。なお、図16に示すステップS201〜S203における動作は、実施の形態2と同様である。
【0063】
ステップS203に続くステップS211において、検査領域判定部211a−3は、境界画素から所定の距離に位置する外辺画素の各々が、異常部検出のための検査対象領域に含まれるか否か判定する。ここで、候補領域の外側の周辺(外辺)に、管腔の深部(暗部)や有色残渣のように、検査対象領域である粘膜領域以外の領域(非検査対象領域)が存在する場合、この非検査対象領域と候補領域との間の境界近傍の画素に基づいて特徴量を算出することは適切でない。これは、非検査対象領域と候補領域との境界においては画素値の変化が非常に大きいので、この境界における画素値の変化が、異常部判定に用いる特徴量の平均値に影響を与えてしまうからである。
【0064】
そこで、検査領域判定部211a−3は、外辺画素が検査対象領域である粘膜領域か否かを判定する。より詳細には、検査領域判定部211a−3は、ステップS12と同様に、画像内の各画素の色情報を基に、粘膜領域の色を示す領域を特定し、この領域に含まれる外辺画素を粘膜領域(検査対象領域)と判定する。
【0065】
例えば、図17の画像M9に示すように、粘膜のひだ領域R1の端部において候補領域A9が検出された場合、候補領域A9の境界画素群B9から所定の距離dに位置する外辺画素群E9の内、ひだ領域R1側の外辺画素群E9−1が検査対象領域と判定され、管腔の深部領域R2側の外辺画素群E9−2は検査対象領域外と判定される。
【0066】
続くステップS212において、外辺有効画素特定部211a’は、検査対象領域に含まれると判定された外辺画素を、特徴量の算出に有効な領域の画素(有効画素)として特定する。例えば、図17の場合、外辺画素群E9−1が有効画素として特定される。
【0067】
この後のステップS205〜S207は、実施の形態2と同様である。例えば、画像M9の場合、ステップS205において算出された外辺画素(有効画素)群E9−1からの距離変換画像を基に、ステップS206において、外辺画素群E9−1から所定の距離dにある境界画素群B9(太線の部分)が検出される。この境界画素群B9のみが、ステップS207において境界近傍画素として特定される。即ち、非検査領域(管腔の深部領域R2)と隣接する側の境界画素群B9’は境界近傍画素として特定されなくなる。
【0068】
以上説明したように、実施の形態2の変形例によれば、検査対象領域に含まれると判定された外辺画素を特徴量の算出に有効な領域の画素と特定し、該有効な領域の画素に対応する境界画素の画素値を基に特徴量を算出するので、候補領域の境界画素のうち非検査対象領域と隣接する境界における画素値の変化を除外し、周辺の粘膜面との間の画素値の変化に基づく特徴量を算出することができる。その結果、異常部を精度良く識別することが可能となる。
【0069】
(実施の形態3)
次に、本発明の実施の形態3について説明する。
図18は、実施の形態3に係る画像処理装置の構成を示すブロック図である。図18に示すように、実施の形態3に係る画像処理装置3は、図1に示す演算部100の代わりに、演算部300を備える。なお、画像処理装置3の演算部300以外の構成については、図1に示すものと同様である。
【0070】
演算部300は、異常部候補領域検出部110と、境界近傍画素特定部120と、特徴量算出部310と、異常部領域識別部140とを備える。この内、異常部候補領域検出部110と、境界近傍画素特定部120と、異常部領域識別部140の構成及び動作は、実施の形態1と同様である。
【0071】
特徴量算出部310は、生体内における吸収の度合いに応じて特定される特定波長成分を選択する特定波長成分選択部311と、境界近傍画素の画素値の内、選択された特定波長成分のエッジ強度を算出するエッジ強度算出部312とを有する。
【0072】
次に、画像処理装置3の動作について説明する。画像処理装置3の動作は、全体として実施の形態1と同様であり、図2のステップS14において特徴量算出部310が実行する境界近傍領域の画素値の特徴量を算出する処理の内容が実施の形態1とは異なる。
【0073】
図19は、特徴量算出部310の詳細な動作を示すフローチャートである。まず、ステップS301において、特定波長成分選択部311は、生体内での吸収が少ないR波長成分を選択する。ここで、粘膜表層に存在するアフタ性病変や潰瘍の撮像距離が、その周辺の粘膜面の撮像距離と同程度であるのに対し、粘膜上に浮遊又は堆積する食物残渣の撮像距離は、その周辺の粘膜面の撮像距離よりも短い(近い)。このような撮像距離の差は、生体内における吸収が少ないR波長成分により容易に確認することができる。そこで、ステップS301においては、R波長成分を特定波長成分として選択する。
【0074】
続くステップS302において、エッジ強度算出部312は、境界近傍画素に対し、ステップS301において選択した特定波長成分のエッジ強度の平均値を算出する。なお、この処理の詳細は、エッジ強度の平均値の算出対象が特定波長成分のみであることを除き、図10に示すステップS141及びS142と同様である。
【0075】
ステップS303において、特定波長成分選択部311は、生体内での吸収が多いG波長成分又はB波長成分を選択する。ここで、生体組織の変化を伴うアフタ性病変や潰瘍は、撮像距離に関係なく、その周辺の粘膜面と異なる色調となるのに対し、カプセル内視鏡等の医用観察装置に近接して撮像された粘膜面(近接粘膜領域)は、撮像距離が短くなることによりR波長成分が飽和して周辺の粘膜面と異なる色調となる。このような撮像距離に応じた色調の差は、生体内での吸収が多いG波長成分又はB波長成分により容易に確認することができる。そこで、ステップS303においては、G波長成分又はB波長成分を特定波長成分として選択する。
【0076】
ステップS304において、エッジ強度算出部312は、境界近傍画素に対し、ステップS303において選択した特定波長成分のエッジ強度の平均値を算出する。なお、この処理の詳細は、エッジ強度の平均値の算出対象が特定波長成分のみであることを除き、図10に示すステップS141及びS142と同様である。
【0077】
この後、処理はメインルーチンに戻る。この際、図2のステップS15においては、ステップS302において算出されたエッジ強度の平均値と、ステップS304において算出されたエッジ強度の平均値とを別々に用いて、異常部領域の識別を行う。それにより、R波長成分に基づくエッジ強度の平均値から、食物残渣領域と異常部領域とが識別される。また、G波長成分又はB波長成分に基づくエッジ強度の平均値から、近接粘膜領域と異常部領域とが識別される。なお、必要に応じていずれか一方の平均値のみを用いて識別を行っても良い。
【0078】
以上説明したように、実施の形態3によれば、生体内における吸収の度合いに応じて特定される特定波長成分を選択して特徴量を算出するので、異常部と食物残渣、或いは、異常部と近接粘膜とを識別するために適した特徴量を算出することができる。その結果、異常部を精度良く識別することが可能となる。
なお、上述した特徴量算出部310を、図11に示す特徴量算出部130の代わりに適用しても良い。
【0079】
(実施の形態4)
次に、本発明の実施の形態4について説明する。
図20は、実施の形態4に係る画像処理装置の構成を示すブロック図である。図20に示すように、実施の形態4に係る画像処理装置4は、図1に示す演算部100の代わりに、演算部400を備える。なお、画像処理装置4の演算部400以外の構成については、図1に示すものと同様である。
【0080】
演算部400は、異常部候補領域検出部110と、境界近傍画素特定部120と、特徴量算出部410と、異常部領域識別部140とを備える。この内、異常部候補領域検出部110、境界近傍画素特定部120、及び異常部領域識別部140の構成及び動作は、実施の形態1と同様である。
【0081】
特徴量算出部410は、候補領域の境界画素の内側と外側との間における画素値の変化を表す画素値変化情報を算出する画素値変化情報算出部411を有し、この画素値変化情報を特徴量とする。より詳細には、画素値変化情報算出部411は、画像内の各画素の境界画素からの距離を表す距離変換画像を算出する距離変換画像算出部411aと、境界画素における画素値が同一の値となるように画素値変化情報を正規化する正規化部411bとを含む。
【0082】
次に、画像処理装置4の動作について説明する。画像処理装置4の動作は、全体として実施の形態1と同様であり、図2のステップS14において特徴量算出部410が実行する境界近傍領域の画素値の特徴量を算出する処理の内容が実施の形態1とは異なる。
【0083】
図21は、特徴量算出部410の詳細な動作を示すフローチャートである。また、図22は、画素値変化情報の算出方法を説明する模式図である。
まず、ステップS401において、距離変換画像算出部411aは、画像内の各画素と境界画素との間の距離を表す距離変換画像を算出する。なお、ステップS401における詳細な処理は、図5に示すステップS132と同様である。
【0084】
続くステップS402において、画素値変化情報算出部411は、距離変換領域ごとに、距離変換画像において同一の距離となる画素群(即ち、候補領域の境界からの距離が同一の画素群)の画素値の平均値を、該距離を変更しながら順次算出することにより、画素値変化情報を算出する。
【0085】
例えば、画像M10の場合、境界画素群B1〜B5から距離dnだけ離れた各画素群H1n〜H5nに対し、画素値の平均値が算出される。ここで、n=0、±1、±2、…であり、n=0のときdn=0である。また、nが増加するについて、距離dnが境界画素群B1〜B5の外側方向に増加し、nが減少するにつれて、距離dnが境界画素群B1〜B5の内側方向に増加する。
【0086】
図23は、画素群H1n〜H5nにそれぞれ対応する画素値の平均値f1(dn)〜f5(dn)を示すグラフである。ここで、各平均値f1(dn)〜f5(dn)は、グラフの上方に位置するほど、対応する候補領域の輝度が全体的に高く、従って、撮像距離が短いと判断することができる。画像M10の場合、平均値f1(dn)が突出して高い候補領域A1の撮像距離が短く(画面の手前側に存在)、それ以外の候補領域A2〜A5の撮像距離は比較的長い(画面の奥側に存在)といえる。
【0087】
ステップS403において、正規化部411bは、境界画素における画素値の平均値が同一の値となるように画素値変化情報を正規化する。それにより、上述した撮像距離の差に起因する平均値の大きさを補正する。
【0088】
図24は、図23に示す画素値の平均値f1(dn)〜f5(dn)を正規化したグラフである。図24に示す正規化された各平均値f1(dn)’〜f5(dn)’の変化(傾き)は、各候補領域A1〜A5に対応する境界画素群B1〜B5近傍の画素値の変化を示している。例えば、図24においては、平均値f1(dn)’の変化が最も小さく、平均値f4(dn)’、f5(dn)’の変化が比較的大きくなっている。画素値変化情報算出部411は、このようにして算出した平均値f1(dn)’〜f5(dn)’を、画素値変化情報(画素値プロファイル)として出力する。
【0089】
この後、処理はメインルーチンに戻り、図2に示すステップS15において、異常部領域識別部140は、ステップS14において算出された画素値変化情報に基づいて異常部領域の識別を行う。より詳細には、画素値変化情報における各距離dnに対応する値を特徴量として、実施の形態1と同様にして判定指標P(x)を算出し、この判定指標P(x)を閾値処理することにより、異常部領域を識別する。例えば、画像M10の場合、平均値f1(dn)の変化が小さい候補領域A1が異常部領域として判定される。
【0090】
以上説明したように、実施の形態4によれば、境界近傍画素のうち、境界画素からの距離が同一となる画素の画素値の平均値を、該距離を変更しながら順次算出した画素値変化情報を特徴量とするので、ノイズに影響され難く、且つ、候補領域周辺の粘膜面と候補領域との間の詳細な画素値の変化を示した特徴量を算出することができる。また、実施の形態4によれば、境界画素における画素値が同一の値となるように画素値変化情報を正規化するので、撮像距離に応じた画素値の大小差が補正された特徴量を算出することができる。従って、異常部を精度良く識別することが可能となる。
なお、上述した特徴量算出部410を、図11に示す特徴量算出部130の代わりに適用しても良い。
【0091】
(実施の形態5)
次に、本発明の実施の形態5について説明する。
図25は、実施の形態5に係る画像処理装置の構成を示すブロック図である。図25に示すように、実施の形態5に係る画像処理装置5は、図1に示す演算部100の代わりに、演算部500を備える。なお、画像処理装置5の演算部500以外の構成については、図1に示すものと同様である。
【0092】
演算部500は、異常部候補領域検出部110と、境界近傍画素特定部120と、特徴量算出部510と、異常部領域識別部520とを備える。特徴量算出部510は、候補領域の境界画素の内側と外側との間における画素値の変化を表す画素値変化情報を算出する画素値変化情報算出部511と、エッジ強度算出部512とを有する。この内、エッジ強度算出部512は、画素値変化情報を基に画素値の変化量を表す変化量情報を算出する変化量情報算出部512aと、変化量の最大値を算出する最大値算出部512bとを含む。異常部領域識別部520は、特徴量算出部510が特徴量として算出した上記最大値に基づいて異常部領域を識別する。なお、異常部候補領域検出部110及び境界近傍画素特定部120の構成及び動作は、実施の形態1と同様である。
【0093】
次に、画像処理装置5の動作について説明する。画像処理装置5の動作は、全体として実施の形態1と同様であり、図2のステップS14において特徴量算出部510が実行する境界近傍領域の画素値の特徴量を算出する処理の内容が実施の形態1とは異なる。
【0094】
図26は、特徴量算出部510の動作を示すフローチャートである。まず、ステップS501において、画素値変化情報算出部511は、境界画素の内側と外側との間における画素値変化情報を算出する(図24参照)。なお、ステップS501における詳細な処理は、図21に示すステップS401〜S403と同様である。
【0095】
続くステップS502において、変化量情報算出部512aは、画素値変化情報を基に画素値の変化量情報を算出する。具体的には、変化量情報算出部512aは、ステップS501において算出した画素値の平均値の微分値を算出する。図27は、図24に示す各平均値f1(dn)’〜f5(dn)’に対応する微分値g1(dn)〜g5(dn)を示すグラフである。
【0096】
さらに、ステップS503において、最大値算出部512bは、各候補領域A1〜A5に対応する変化量情報に基づき、変化量の最大値を算出する。例えば、図27の場合、微分値g1(dn)〜g5(dn)から、最大値g1(d-2)、g2(d0)、g3(d1)、g4(d1)、g5(d1)がそれぞれ算出される。
特徴量算出部510は、このようにして算出された最大値を特徴量として出力する。
【0097】
この後、処理はメインルーチンに戻り、図2に示すステップS15において、異常部領域識別部520は、ステップS14において算出された特徴量(変化量の最大値)に対して閾値処理を施すことにより、異常部領域の識別を行う。例えば、画像M10の場合、最大値g1(d-2)の値が小さい候補領域A1が異常部領域として判定される。
【0098】
以上説明したように、実施の形態5によれば、境界画素の内側と外側の間の画素値変化情報を基に画素値の変化量情報を算出するので、候補領域周辺の粘膜面と候補領域との間の詳細な画素値の変化量を示す特徴量を算出することができる。また、実施の形態5によれば、変化量の最大値を算出することにより、候補領域の検出精度が不十分で、検出された候補領域の境界と本来の境界とに差異が生じる場合においても、その差を補うことができる。その結果、異常部を精度良く識別することが可能となる。
【0099】
以上説明した実施の形態1〜5及び変形例に係る画像処理装置は、記録媒体に記録された画像処理プログラムをパーソナルコンピュータやワークステーション等のコンピュータシステムで実行することによって実現することができる。また、このようなコンピュータシステムを、ローカルエリアネットワーク、広域エリアネットワーク(LAN/WAN)、又は、インターネット等の公衆回線を介して、他のコンピュータシステムやサーバ等の機器に接続して使用しても良い。この場合、実施の形態1〜5及びその変形例に係る画像処理装置は、これらのネットワークを介して管腔内画像の画像データを取得したり、これらのネットワークを介して接続された種々の出力機器(ビュアーやプリンタ等)に画像処理結果を出力したり、これらのネットワークを介して接続された記憶装置(記録媒体及びその読取装置等)に画像処理結果を格納するようにしても良い。
【0100】
なお、本発明は、実施の形態1〜5及び変形例に限定されるものではなく、各実施の形態や変形例に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることによって、種々の発明を形成できる。例えば、各実施の形態や変形例に示される全構成要素からいくつかの構成要素を除外して形成しても良いし、異なる実施の形態や変形例に示した構成要素を適宜組み合わせて形成しても良い。
【符号の説明】
【0101】
1〜5 画像処理装置
10 制御部
20 画像取得部
30 入力部
40 表示部
50 記録部
51 画像処理プログラム
100、200、300、400、500 演算部
110 異常部候補領域検出部
120 境界近傍画素特定部
121、210 境界近傍領域設定部
121a、211a−1、211b−1、411a 距離変換画像算出部
121b、211a−2 距離変換画像分割部
130、310、410、510 特徴量算出部
131 エッジ強度算出部
140 異常部領域識別部
211 対象境界制限部
211a、211a’ 外辺有効画素特定部
211a−3 検査領域判定部
211b 対応境界設定部
311 特定波長成分選択部
312、512 エッジ強度算出部
411 画素値変化情報算出部
411b 正規化部
511 画素値変化情報算出部
512a 変化量情報算出部
512b 最大値算出部
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体の体内を撮像した画像から異常部を検出する画像処理装置、画像処理方法、及び画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内視鏡等の医用観察装置により被検体の管腔内を撮像した管腔内画像(以下、単に画像ともいう)から異常部を検出するために、種々の方法が検討されている。例えば、特許文献1には、画像内の各画素の画素値を各画素の色情報に基づく特徴空間に写像し、特徴空間内でクラスタリングを行った後、各クラスタの大きさや重心座標等の情報を基に正常粘膜クラスタや異常部クラスタを特定し、異常部クラスタに属する画素を異常部として検出する画像処理方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−192880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、内視鏡によって撮像される画像には、アフタ性病変や潰瘍といった白色調の病変部(異常部)に対し、食物残渣や、鏡面反射や、内視鏡に近接して撮像された粘膜面のように、異常部と同種の色情報を有する他の被写体が写っている場合がある。このため、従来のように、色情報のみに基づいて異常部を検出しようとすると、異常部とこれら他の被写体を識別することができないという問題があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、異常部と、該異常部と同種の色情報を有する他の被写体とを精度良く識別できる画像処理装置、画像処理方法、及び画像処理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る画像処理装置は、被検体の管腔内を撮像した画像を構成する各画素の色情報を基に異常部の候補領域を検出する異常部候補領域検出部と、前記候補領域の境界近傍に存在する画素である境界近傍画素を特定する境界近傍画素特定部と、前記境界近傍画素の画素値に基づく特徴量を算出する特徴量算出部と、前記特徴量を基に異常部領域を識別する異常部領域識別部とを備えることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る画像処理方法は、被検体の管腔内を撮像した画像を構成する各画素の色情報を基に異常部の候補領域を検出する異常部候補領域検出ステップと、前記候補領域の境界近傍に存在する画素である境界近傍画素を特定する境界近傍画素特定ステップと、前記境界近傍画素の画素値に基づく特徴量を算出する特徴量算出ステップと、前記特徴量を基に異常部領域を識別する異常部領域識別ステップとを含むことを特徴とする。
【0008】
本発明に係る画像処理プログラムは、被検体の管腔内を撮像した画像を構成する各画素の色情報を基に異常部の候補領域を検出する異常部候補領域検出ステップと、前記候補領域の境界近傍に存在する画素である境界近傍画素を特定する境界近傍画素特定ステップと、前記境界近傍画素の画素値に基づく特徴量を算出する特徴量算出ステップと、前記特徴量を基に異常部領域を識別する異常部領域識別ステップとをコンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、画像の色情報に基づいて異常部候補領域を検出した後、異常部候補領域の境界近傍画素の画素値に基づく特徴量を算出し、該特徴量を基に異常部領域を識別するので、異常部と、該異常部と同種の色情報を有する他の被写体とを精度良く識別することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明の実施の形態1に係る画像処理装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、図1に示す画像処理装置の動作を示すフローチャートである。
【図3】図3は、図1に示す画像処理装置の処理対象である画像の一例を示す模式図である。
【図4】図4は、図3に示す画像に対応する候補領域画像を示す模式図である。
【図5】図5は、図1に示す境界近傍画素特定部の動作を示すフローチャートである。
【図6】図6は、図4に示す画像から検出された境界画素を示す模式図である。
【図7】図7は、図6に示す画像から算出された距離変換画像を示す模式図である。
【図8】図8は、図7に示す画像を距離変換領域に分割した領域ラベル画像を示す模式図である。
【図9】図9は、図7に示す画像に基づいて設定された境界近傍領域を示す模式図である。
【図10】図10は、図1に示す境界近傍画素の画素値に基づく特徴量の算出処理を示すフローチャートである。
【図11】図11は、本発明の実施の形態2に係る画像処理装置の構成を示すブロック図である。
【図12】図12は、図11に示す境界近傍画素特定部の動作を示すフローチャートである。
【図13】図13は、実施の形態2における境界近傍画素の特定方法を説明する模式図である。
【図14】図14は、実施の形態2における境界近傍画素の特定方法を説明する模式図である。
【図15】図15は、実施の形態2の変形例における外辺有効画素特定部の構成を示すブロック図である。
【図16】図16は、実施の形態2の変形例における境界近傍画素特定部の動作を示すフローチャートである。
【図17】図17は、実施の形態2の変形例における検査対象領域の判定方法を説明する模式図である。
【図18】図18は、本発明の実施の形態3に係る画像処理装置の構成を示すブロック図である。
【図19】図19は、図18に示す特徴量算出部の動作を示すフローチャートである。
【図20】図20は、本発明の実施の形態4に係る画像処理装置の構成を示すブロック図である。
【図21】図21は、図20に示す特徴量算出部の動作を示すフローチャートである。
【図22】図22は、画素値変化情報の算出方法を説明する模式図である。
【図23】図23は、図22に示す画素群に対応する画素値の平均値を示すグラフである。
【図24】図24は、正規化された画素値の平均値を示すグラフである。
【図25】図25は、本発明の実施の形態5に係る画像処理装置の構成を示すブロック図である。
【図26】図26は、図25に示す特徴量算出部の動作を示すフローチャートである。
【図27】図27は、画素値の変化量情報(微分値)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態に係る画像処理装置、画像処理方法、及び画像処理プログラムについて、図面を参照しながら説明する。なお、これら実施の形態によって本発明が限定されるものではない。また、各図面の記載において、同一部分には同一の符号を付して示している。
【0012】
以下の実施の形態においては、一例として、カプセル内視鏡等の医用観察装置によって被検体の管腔内を撮像することにより取得された管腔内画像(以下、単に画像ともいう)から白色調の病変部(以下、異常部ともいう)を検出する画像処理について説明する。なお、以下の実施の形態において画像処理の対象となる管腔内画像は、各画素位置においてR(赤)、G(緑)、B(青)の各色成分(波長成分)に対する画素レベル(画素値)を持つカラー画像である。
【0013】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る画像処理装置の構成を示すブロック図である。図1に示す画像処理装置1は、画像処理装置1全体の動作を制御する制御部10と、カプセル内視鏡等の医用観察装置によって撮像された画像に対応する画像データを取得する画像取得部20と、外部から入力される入力信号を受け付ける入力部30と、各種表示を行う表示部40と、画像取得部20によって取得された画像データや種々のプログラムを格納する記録部50と、画像データに対して所定の画像処理を実行する演算部100とを備える。
【0014】
制御部10は、CPU等のハードウェアによって実現され、記録部50に格納された各種プログラムを読み込むことにより、画像取得部20から入力される画像データや入力部30から入力される操作信号等に従って、画像処理装置1を構成する各部への指示やデータの転送等を行い、画像処理装置1全体の動作を統括的に制御する。
【0015】
画像取得部20は、医用観察装置を含むシステムの態様に応じて適宜構成される。例えば、医用観察装置がカプセル内視鏡であり、医用観察装置との間の画像データの受け渡しに可搬型の記録媒体が使用される場合、画像取得部20は、この記録媒体を着脱自在に装着し、保存された管腔内画像の画像データを読み出すリーダ装置で構成される。また、医用観察装置によって撮像された管腔内画像の画像データを保存しておくサーバを設置する場合、画像取得部20は、サーバと接続される通信装置等で構成され、サーバとデータ通信を行って管腔内画像の画像データを取得する。或いは、画像取得部20を、内視鏡等の医用観察装置から、ケーブルを介して画像信号を入力するインターフェース装置等で構成しても良い。
【0016】
入力部30は、例えばキーボードやマウス、タッチパネル、各種スイッチ等の入力デバイスによって実現され、受け付けた入力信号を制御部10に出力する。
表示部40は、LCDやELディスプレイ等の表示装置によって実現され、制御部10の制御の下で、管腔内画像を含む各種画面を表示する。
【0017】
記録部50は、更新記録可能なフラッシュメモリ等のROMやRAMといった各種ICメモリ、内蔵若しくはデータ通信端子で接続されたハードディスク、又は、CD−ROM等の情報記録媒体及びその読取装置等によって実現される。記録部50は、画像取得部20によって取得された管腔内画像の画像データの他、画像処理装置1を動作させると共に、種々の機能を画像処理装置1に実行させるためのプログラムや、このプログラムの実行中に使用されるデータ等を記録する。具体的には、記録部50は、管腔内画像から異常部を検出する画像処理を当該画像処理装置1に実行させるための画像処理プログラム51を記録する他、予めサンプリングにより取得したアフタ性病変や潰瘍等の白色調の病変部に属する画素の色特徴量といった情報を記録する。
【0018】
演算部100は、CPU等のハードウェアによって実現され、画像処理プログラム51を読み込むことによって管腔内画像に対応する画像データに画像処理を施し、管腔内画像から異常部を検出するための種々の演算処理を行う。
【0019】
次に、演算部100の詳細な構成について説明する。
図1に示すように、演算部100は、管腔内画像の色情報を基に異常部の候補領域を検出する異常部候補領域検出部110と、該候補領域の境界近傍画素を特定する境界近傍画素特定部120と、境界近傍画素の画素値に基づき特徴量を算出する特徴量算出部130と、該特徴量を基に異常部領域を識別する異常部領域識別部140とを備える。
【0020】
この内、境界近傍画素特定部120は、候補領域の境界近傍領域を設定する境界近傍領域設定部121を有し、境界近傍領域内の画素を境界近傍画素として特定する。ここで、境界近傍領域とは、候補領域の境界に位置する画素(境界画素)を挟んで候補領域の内側及び外側に設定される所定の幅以下の領域のことである。より詳細には、境界近傍領域設定部121は、画像内の各画素と境界画素との間の距離を表す距離変換画像を算出する距離変換画像算出部121aと、距離変換画像を候補領域にそれぞれ対応する距離変換領域に分割する距離変換画像分割部121bとを含む。
また、特徴量算出部130は、境界近傍画素のエッジ強度を算出するエッジ強度算出部131を有し、エッジ強度を特徴量とすることを特徴とする。
【0021】
次に、画像処理装置1の動作について説明する。図2は、画像処理装置1の動作を示すフローチャートである。また、図3は、画像処理装置1の処理対象である画像の一例を示す模式図である。図3に示すように、画像M1には、粘膜Memの表面に現れた白色調の病変部の領域A1と、粘膜Memの画面の手前側の空間に浮遊し、又は、粘膜Memの表面に堆積(付着)した残渣の領域A2〜A5とが写されている。なお、領域A2〜A5は、粘膜Memよりも画面の手前側に突出しているため、領域A2〜A5の境界の周囲には影が現れている。
【0022】
まず、ステップS11において、画像取得部20は、被検体の管腔内画像を取得して記録部50に格納する。演算部100は、処理対象の画像(例えば、画像M1)を記録部50から順次読み込む。
【0023】
続くステップS12において、異常部候補領域検出部110は、画像を構成する各画素の色情報を基に、異常部の候補領域を検出する。ここで、アフタ性病変や潰瘍等の異常部は白色調の特定色を示す。そこで、異常部候補領域検出部110は、画像から白色調の特定色を示す領域を検出し、これを異常部の候補領域とする。
【0024】
具体的には、異常部候補領域検出部110は、事前に記録部50に記録しておいたアフタ性病変や潰瘍等に属する複数の画素の色特徴量を用いて、下記演算処理を行う。
ここで、色特徴量とは、R、G、B各成分の画素値や、これらの画素値を基に公知の変換により2次的に算出される値のことである。後者の具体例としては、YCbCr変換により算出される色差、色相、HSI変換により算出される彩度、G/RやB/Gといった色比等が挙げられる。記録部50には、予めサンプリングした画素の色特徴量からなる特徴ベクトルFn=(fn_1,fn_2,…,fn_j,…,fn_k)t (fn_jはn番目のサンプリング画素のj番目の色特徴量、kは特徴量の個数。なお、右辺の肩のtは転置ベクトルを示す)を基に、次式(1−1)及び(1−2)によって与えられる平均ベクトルμ及び分散共分散行列Zが記録されている。
【数1】
式(1−1)及び(1−2)において、NDはサンプリングデータ数である。また、式(1−2)の右辺の(Fn−μ)tは、ベクトル(Fn−μ)の転置ベクトルである。
【0025】
異常部候補領域検出部110は、処理対象の画像内の各画素の色特徴量からなる特徴ベクトルx=(x_1,x_2,…,x_j,…,x_k)t (x_jは、当該画素のj番目の色特徴量)を作成する。そして、この特徴ベクトルxと、事前に記録部50に記録しておいた平均ベクトルμ及び分散共分散行列Zとを基に、次式(1−3)に従い、各画素が特定色領域であるか否かを判定するための判定指標P(x)を算出する。
【数2】
式(1−3)において、|Z|は行列Zの行列式であり、Z-1は行列Zの逆行列である。また、(x−μ)tは、ベクトル(x−μ)の転置ベクトルである。
【0026】
その後、異常部候補領域検出部110は、判定指標P(x)が所定の閾値以上となる画素を候補領域として検出する。そして、候補領域の画素に対して値1を設定し、その他の画素に対して値0を設定した候補領域画像を作成する。
図4は、画像M1に対応する候補領域画像を示す模式図である。画像M2には、領域A1〜A5が白抜きで示されている。これらの領域A1〜A5が異常部の候補領域となる。
【0027】
なお、異常部の候補領域の検出方法としては、上述した確率モデルを用いた検出方法の他、例えば、各画素の色特徴量を成分とする特徴空間内において判別境界を設定する方法や、病変色等の代表的な色特徴量と各画素の色特徴量との色特徴空間における距離を閾値処理する方法(k近傍法、参考:特許第4266920号公報、CG−ARTS協会 「ディジタル画像処理」、第228頁(NN法とkNN法))等、公知の様々な検出方法を用いることができる。また、画素単位の色特徴量を用いて候補領域を検出するのではなく、画像内のエッジ情報等を基に画像を複数の小領域に分割した後、小領域単位の色特徴量を用いて候補領域を検出しても良い。
【0028】
ステップS13において、境界近傍画素特定部120は、候補領域の境界の近傍に存在する画素である境界近傍画素を特定する。
図5は、境界近傍画素特定部120の詳細な動作を示すフローチャートである。まず、ステップS131において、境界近傍画素特定部120は、候補領域の境界画素を検出する。具体的には、候補領域を含む画像をラスタ走査しながら注目画素を順次設定し、注目画素が候補領域であり、且つ、その隣接画素の何れかが候補領域でない場合の注目画素を境界画素とする。或いは、候補領域を含む画像において、公知の輪郭追跡(参考:CG−ARTS協会 「ディジタル画像処理」、第178頁(輪郭追跡))を行って、境界画素を検出しても良い。
図6は、画像M2から検出された境界画素を示す模式図である。画像M3には、各候補領域A1〜A5に対応する境界画素群B1〜B5が示されている。
【0029】
続くステップS132において、距離変換画像算出部121aは、画像内の各画素と候補領域の境界画素との間の距離を表す距離変換画像を算出する。これは、公知の距離変換処理(参考:東京大学出版会 「画像解析ハンドブック」、第576頁(距離変換とスケルトン抽出))を行うことで実現することができる。
【0030】
図7は、画像M3から算出された距離変換画像を示す模式図である。画像M4において、各画素の画素値(輝度)は、境界画素群B1〜B5から距離が離れるほど高くなるように設定されている。
【0031】
ステップS133において、距離変換画像分割部121bは、距離変換画像を各候補領域に対応する距離変換領域に分割する。ここで、複数の候補領域が画像内に存在する場合、その距離変換画像を、画素値の尾根を境界として分割することによって、各候補領域に対応する距離変換領域に分割することができる。
【0032】
画素値の尾根を境界とする画像分割は、例えば次のように行われる。まず、各画素の画素値の勾配方向を求める。このとき、勾配方向を画素値が低くなる方向にとる。次に、各画素が画素値の勾配方向に沿って移動した際に到達する極小値画素を求め、互いに隣接する極小値画素に到達した画素同士が同一の領域となるように画像を分割する。分割後は、各領域を識別するためのラベル値を各領域内の画素に設定して、領域ラベル画像を得る。なお、画素値の尾根を境界とする画像分割方法は、本発明者による国際公開第2006/080239号に詳細に開示されている。
【0033】
距離変換画像を分割する他の方法として、分水嶺(watershed)アルゴリズム(参考:Luc Vincent and Pierre Soille.“Watersheds in digital spaces:An efficient algorithm based on immersion simulations”,IEEE Transactions on Pattern Analysis and Machine Intelligence,Vol.13, No.6,pp.583−598,June 1991)を用いても良い。分水嶺アルゴリズムは、画像の画素値情報を高度とみなした地形において水を満たしていく際に、異なるくぼみに溜まる水の間で境界ができるように画像を分割する方法である。距離変換画像に対して分水嶺アルゴリズムを実行することによっても、国際公開第2006/080239号に開示された方法とほぼ同等の画像分割結果を得ることができる。
図8は、画像M4を距離変換領域に分割した領域ラベル画像を示す模式図である。画像M5には、各候補領域A1〜A5に対応する距離変換領域C1〜C5が示されている。
【0034】
ステップS134において、境界近傍領域設定部121は、各候補領域の境界近傍領域を設定する。より詳細には、境界近傍領域設定部121は、各候補領域に対応する距離変換領域において、所定値以下の画素値を有する画素領域、即ち、境界画素からの距離が所定値以下の領域を、各候補領域の境界近傍領域とする。
【0035】
図9は、画像M4に基づいて設定された境界近傍領域を示す模式図である。画像M6の各距離変換領域C1〜C5には、境界画素群B1〜B5に対応する境界近傍領域D1〜D5が示されている。
さらに、ステップS135において、境界近傍画素特定部120は、境界近傍領域内の画素を境界近傍画素として特定する。
この後、処理はメインルーチンに戻る。
【0036】
ステップS14において、特徴量算出部130は、境界近傍画素の画素値に基づく特徴量を算出する。
図10は、特徴量算出部130の詳細な動作を示すフローチャートである。まず、ステップS141において、エッジ強度算出部131は、境界近傍画素のエッジ強度を算出する。これは、境界近傍画素の各波長成分(R、G、B)の画素値に対して、公知の1次微分フィルタ(参考:CG−ARTS協会 「ディジタル画像処理」、第114頁(微分フィルタ))を適用し、各画素における1次微分値を算出することで実現できる。この時、ノイズによる影響を軽減するため、平滑化を伴う1次微分であるソーベル(Sobel)フィルタ等を適用すると良い。
【0037】
続くステップS142において、特徴量算出部130は、エッジ強度の平均値を境界近傍領域ごとに算出する。なお、ステップS141においては、波長成分ごとにエッジ強度を算出しているので、1つの候補領域に対し、R、G、B波長成分に対応する3つの平均値が得られる。
【0038】
ここで、粘膜の表層に存在するアフタ性病変や潰瘍の領域(例えば、図3に示す候補領域A1)は、粘膜上に浮遊又は堆積する食物残渣(例えば、図3に示す候補領域A2〜A5)や、粘膜から鏡面反射された領域に比べると、周辺の粘膜面との間の画素値の変化が小さい。一方、病変等が見られない(即ち連続する)粘膜面である近接粘膜面に比べると、周辺の粘膜面との間における画素値の変化が大きい。そこで、実施の形態1においては、画素値の変化を識別するための特徴量として、境界近傍画素のエッジ強度を算出する。
この後、処理はメインルーチンに戻る。
【0039】
ステップS15において、異常部領域識別部140は、特徴量を基に異常部領域を識別する。実施の形態1においては、ステップS12において説明した方法と同様に、確率モデルを用いて識別を行う。具体的には、事前に、アフタ性病変や潰瘍、食物残渣、鏡面反射、近接粘膜等のカテゴリにそれぞれ属する複数の候補領域をサンプリングし、各候補領域の境界近傍画素の画素値に基づく特徴量(即ち、波長成分毎のエッジ強度)を求めておく。そして、サンプリングした候補領域の特徴量からなる特徴ベクトルFn=(fn_1,fn_2,…,fn_j,…,fn_k)t (fn_j:n番目のサンプリング候補領域のj番目の特徴量、k:特徴量の個数(本実施形態においてはk=3)を基に、カテゴリごとに、上式(1−1)及び(1−2)によって与えられる平均ベクトルμ及び分散共分散行列Zを求め、記録部50に記録しておく。
【0040】
そして、異常部領域識別部140は、処理対象の画像に含まれる候補領域の特徴量からなる特徴ベクトルx=(x_1,x_2,…,x_j,…,x_k)t (x_jは、当該候補領域のj番目の特徴量)を作成し、事前に記録部50に記録しておいた各カテゴリの平均ベクトルμ及び分散共分散行列Zを基に、上式(1−3)に従い、各候補領域が各カテゴリの領域であるか否かを判定するための判定指標P(x)を、カテゴリごとに算出する。その後、アフタ性病変や潰瘍のカテゴリに対する判定指標P(x)が、他のカテゴリに対応する判定指標P(x)よりも大きく、且つ、その判定指標P(x)の値が所定の閾値以上となる候補領域を異常部領域と識別する。
【0041】
なお、特徴量を基に異常部領域を識別する方法としては、上述した確率モデルを用いる方法の他、パターン認識で用いられる他の一般的な方法(決定木、近傍法、サポートベクターマシン等)を用いても良い。
【0042】
そして、最後のステップS16において、演算部100は、ステップS15における異常部領域の識別結果を出力する。これに応じて、制御部10は、異常部領域の識別結果を記録部50に記録する。この際、制御部10は、異常部領域の識別結果を表示部40等に表示させても良い。その後、画像処理装置1における処理は終了する。
【0043】
以上説明したように、実施の形態1によれば、管腔内画像の色情報に基づいて異常部の候補領域を検出した後、候補領域の境界近傍画素の画素値に基づく特徴量を算出し、該特徴量を基に異常部領域を識別するので、異常部と、該異常部と同種の色情報を有する他の被写体とを精度良く識別することができる。また、実施の形態1によれば、候補領域の境界画素から所定の距離以下となる領域を各候補領域の境界近傍領域に設定し、境界近傍領域内の画素を境界近傍画素として特徴量を算出するので、候補領域の検出精度が不十分で、検出された候補領域の境界と本来の境界とに差異が生じる場合においても、その差を補うことができる。その結果、異常部を精度良く識別することが可能となる。
【0044】
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2について説明する。
図11は、実施の形態2に係る画像処理装置の構成を示すブロック図である。図11に示すように、実施の形態2に係る画像処理装置2は、図1に示す演算部100の代わりに、演算部200を備える。なお、画像処理装置2の演算部200以外の構成については、図1に示すものと同様である。
【0045】
演算部200は、異常部候補領域検出部110と、境界近傍画素特定部210と、特徴量算出部130と、異常部領域識別部140とを備える。この内、異常部候補領域検出部110と、特徴量算出部130と、異常部領域識別部140の構成及び動作は、実施の形態1と同様である。
【0046】
境界近傍画素特定部210は、境界近傍画素を特定する際の基となる境界を、候補領域の境界全周の内の一部に制限する対象境界制限部211を有し、制限した一部の境界に対して境界近傍画素を特定する。
【0047】
より詳細には、対象境界制限部211は、候補領域の境界画素から外側の所定範囲である外辺領域から、特徴量の算出に有効な領域の画素(以下、有効画素という)を特定する外辺有効画素特定部211aと、有効画素に対応する境界を設定する対応境界設定部211bとを含む。この内、外辺有効画素特定部211aは、距離変換画像算出部211a−1と、距離変換画像分割部211a−2とを含み、各距離変換領域において、境界画素から所定の距離に位置する画素を、当該距離変換領域に対応する候補領域における有効画素として特定する。
【0048】
一方、対応境界設定部211bは、画像内の各画素と上記有効画素との間の距離を表す距離変換画像を算出する距離変換画像算出部211b−1を含み、有効画素から所定の距離以内にある境界を、有効画素に対応する境界に設定する。
【0049】
次に、画像処理装置2の動作について説明する。画像処理装置2の動作は、全体として実施の形態1と同様であり、図2のステップS13において境界近傍画素特定部210が実行する管腔内画像から検出された異常部の候補領域の境界近傍画素を特定する処理の内容が実施の形態1とは異なる。
【0050】
図12は、境界近傍画素特定部210の詳細な動作を示すフローチャートである。また、図13及び図14は、境界近傍画素の特定方法を説明する模式図である。
まず、ステップS201において、境界近傍画素特定部210は、候補領域の境界画素を検出する。なお、ステップS201における詳細な処理は、図5に示すステップS131と同様である。
【0051】
続くステップS202において、距離変換画像算出部211a−1は、画像内の各画素と候補領域の境界画素との間の距離を表す距離変換画像を算出する。なお、ステップS202における詳細な処理は、図5に示すステップS132と同様である。
【0052】
ステップS203において、距離変換画像分割部211a−2は、距離変換画像を各候補領域に対応する距離変換領域に分割する。なお、ステップS203における詳細な処理は、図5に示すステップS133と同様である。
【0053】
ステップS204において、外辺有効画素特定部211aは、境界画素から所定の距離にある画素である外辺画素を有効画素として特定する。ここで外辺画素とは、各候補領域に対応する距離変換領域において、候補領域の境界画素から候補領域の外側に向かって所定の距離dだけ離れた画素のことである。
【0054】
このとき、例えば図13の画像M7に示すように、候補領域A6が画像M7の端部に接する場合、境界画素群B6の内、画像M7の端部近傍の画素群B6’には有効画素が特定されない。また、例えば図14の画像M8に示すように、距離変換領域C7、C8にそれぞれ含まれる候補領域A7、A8同士が所定の距離dの2倍以下の間隔で近接する場合、境界画素群B7、B8の内、距離dの2倍以下で近接する境界画素群B7’、B8’には有効画素が特定されない。
【0055】
ステップS205において、距離変換画像算出部211b−1は、画像内の各画素の有効画素からの距離変換画像を算出する。なお、距離変換画像の算出方法については、図5に示すステップS132と同様である。
ステップS206において、対応境界設定部211bは、有効画素から所定の距離にある境界画素を検出する。
【0056】
続くステップS207において、境界近傍画素特定部210は、ステップS206において検出した境界画素を境界近傍画素として特定する。これより、境界画素の内、画像の端部に接する部分の画素や、所定の距離以内で互いに近接する候補領域の部分の画素は境界近傍領域として特定されなくなる。
この後、処理はメインルーチンに戻る。
【0057】
具体例として、画像M7の場合、ステップS205において算出された有効画素群E6からの距離変換画像を基に、ステップS206において、有効画素群E6から所定の距離dにある境界画素群B6(太線の部分)が検出される。この境界画素群B6のみが、ステップS207において境界近傍画素として特定される。
【0058】
また、画像M8の場合、ステップS205において算出された有効画素群E7、E8からの距離変換画像を基に、ステップS206において、有効画素群E7、E8から所定の距離dにある境界画素群B7、B8(太線の部分)が検出される。これらの境界画素群B7、B8のみが、ステップS207において境界近傍画素として特定される。
【0059】
以上説明したように、実施の形態2によれば、境界画素から所定の距離に位置する外辺画素を特徴量の算出に有効な領域の画素と特定し、該有効な領域の画素に対応する境界を基に特徴量を算出するので、候補領域の画像端に接する部分の画素値の変化や、互いに近接する候補領域間の画素値の変化を除外し、周辺の粘膜面との間の画素値の変化に基づく特徴量を算出することができる。その結果、異常部を精度良く識別することが可能となる。
【0060】
(変形例)
次に、実施の形態2の変形例について説明する。
実施の形態2の変形例に係る画像処理装置は、図11に示す外辺有効画素特定部211aの代わりに、図15に示す外辺有効画素特定部211a’を有する。なお、外辺有効画素特定部211a’以外の画像処理装置の構成については、図11に示すものと同様である。
【0061】
外辺有効画素特定部211a’は、実施の形態2と同様の距離変換画像算出部211a−1及び距離変換画像分割部211a−2に加えて、外辺領域内の画素が異常部の検出を行う対象領域(以下、検査対象領域という)に含まれるか否かを判定する検査領域判定部211a−3をさらに含み、検査対象領域に含まれると判定された外辺領域内の画素を有効画素として特定する。
【0062】
次に、本変形例に係る画像処理装置の動作について説明する。図16は、本変形例における境界近傍画素特定部の動作を示すフローチャートである。また、図17は、検査対象領域の判定方法を説明する模式図である。なお、図16に示すステップS201〜S203における動作は、実施の形態2と同様である。
【0063】
ステップS203に続くステップS211において、検査領域判定部211a−3は、境界画素から所定の距離に位置する外辺画素の各々が、異常部検出のための検査対象領域に含まれるか否か判定する。ここで、候補領域の外側の周辺(外辺)に、管腔の深部(暗部)や有色残渣のように、検査対象領域である粘膜領域以外の領域(非検査対象領域)が存在する場合、この非検査対象領域と候補領域との間の境界近傍の画素に基づいて特徴量を算出することは適切でない。これは、非検査対象領域と候補領域との境界においては画素値の変化が非常に大きいので、この境界における画素値の変化が、異常部判定に用いる特徴量の平均値に影響を与えてしまうからである。
【0064】
そこで、検査領域判定部211a−3は、外辺画素が検査対象領域である粘膜領域か否かを判定する。より詳細には、検査領域判定部211a−3は、ステップS12と同様に、画像内の各画素の色情報を基に、粘膜領域の色を示す領域を特定し、この領域に含まれる外辺画素を粘膜領域(検査対象領域)と判定する。
【0065】
例えば、図17の画像M9に示すように、粘膜のひだ領域R1の端部において候補領域A9が検出された場合、候補領域A9の境界画素群B9から所定の距離dに位置する外辺画素群E9の内、ひだ領域R1側の外辺画素群E9−1が検査対象領域と判定され、管腔の深部領域R2側の外辺画素群E9−2は検査対象領域外と判定される。
【0066】
続くステップS212において、外辺有効画素特定部211a’は、検査対象領域に含まれると判定された外辺画素を、特徴量の算出に有効な領域の画素(有効画素)として特定する。例えば、図17の場合、外辺画素群E9−1が有効画素として特定される。
【0067】
この後のステップS205〜S207は、実施の形態2と同様である。例えば、画像M9の場合、ステップS205において算出された外辺画素(有効画素)群E9−1からの距離変換画像を基に、ステップS206において、外辺画素群E9−1から所定の距離dにある境界画素群B9(太線の部分)が検出される。この境界画素群B9のみが、ステップS207において境界近傍画素として特定される。即ち、非検査領域(管腔の深部領域R2)と隣接する側の境界画素群B9’は境界近傍画素として特定されなくなる。
【0068】
以上説明したように、実施の形態2の変形例によれば、検査対象領域に含まれると判定された外辺画素を特徴量の算出に有効な領域の画素と特定し、該有効な領域の画素に対応する境界画素の画素値を基に特徴量を算出するので、候補領域の境界画素のうち非検査対象領域と隣接する境界における画素値の変化を除外し、周辺の粘膜面との間の画素値の変化に基づく特徴量を算出することができる。その結果、異常部を精度良く識別することが可能となる。
【0069】
(実施の形態3)
次に、本発明の実施の形態3について説明する。
図18は、実施の形態3に係る画像処理装置の構成を示すブロック図である。図18に示すように、実施の形態3に係る画像処理装置3は、図1に示す演算部100の代わりに、演算部300を備える。なお、画像処理装置3の演算部300以外の構成については、図1に示すものと同様である。
【0070】
演算部300は、異常部候補領域検出部110と、境界近傍画素特定部120と、特徴量算出部310と、異常部領域識別部140とを備える。この内、異常部候補領域検出部110と、境界近傍画素特定部120と、異常部領域識別部140の構成及び動作は、実施の形態1と同様である。
【0071】
特徴量算出部310は、生体内における吸収の度合いに応じて特定される特定波長成分を選択する特定波長成分選択部311と、境界近傍画素の画素値の内、選択された特定波長成分のエッジ強度を算出するエッジ強度算出部312とを有する。
【0072】
次に、画像処理装置3の動作について説明する。画像処理装置3の動作は、全体として実施の形態1と同様であり、図2のステップS14において特徴量算出部310が実行する境界近傍領域の画素値の特徴量を算出する処理の内容が実施の形態1とは異なる。
【0073】
図19は、特徴量算出部310の詳細な動作を示すフローチャートである。まず、ステップS301において、特定波長成分選択部311は、生体内での吸収が少ないR波長成分を選択する。ここで、粘膜表層に存在するアフタ性病変や潰瘍の撮像距離が、その周辺の粘膜面の撮像距離と同程度であるのに対し、粘膜上に浮遊又は堆積する食物残渣の撮像距離は、その周辺の粘膜面の撮像距離よりも短い(近い)。このような撮像距離の差は、生体内における吸収が少ないR波長成分により容易に確認することができる。そこで、ステップS301においては、R波長成分を特定波長成分として選択する。
【0074】
続くステップS302において、エッジ強度算出部312は、境界近傍画素に対し、ステップS301において選択した特定波長成分のエッジ強度の平均値を算出する。なお、この処理の詳細は、エッジ強度の平均値の算出対象が特定波長成分のみであることを除き、図10に示すステップS141及びS142と同様である。
【0075】
ステップS303において、特定波長成分選択部311は、生体内での吸収が多いG波長成分又はB波長成分を選択する。ここで、生体組織の変化を伴うアフタ性病変や潰瘍は、撮像距離に関係なく、その周辺の粘膜面と異なる色調となるのに対し、カプセル内視鏡等の医用観察装置に近接して撮像された粘膜面(近接粘膜領域)は、撮像距離が短くなることによりR波長成分が飽和して周辺の粘膜面と異なる色調となる。このような撮像距離に応じた色調の差は、生体内での吸収が多いG波長成分又はB波長成分により容易に確認することができる。そこで、ステップS303においては、G波長成分又はB波長成分を特定波長成分として選択する。
【0076】
ステップS304において、エッジ強度算出部312は、境界近傍画素に対し、ステップS303において選択した特定波長成分のエッジ強度の平均値を算出する。なお、この処理の詳細は、エッジ強度の平均値の算出対象が特定波長成分のみであることを除き、図10に示すステップS141及びS142と同様である。
【0077】
この後、処理はメインルーチンに戻る。この際、図2のステップS15においては、ステップS302において算出されたエッジ強度の平均値と、ステップS304において算出されたエッジ強度の平均値とを別々に用いて、異常部領域の識別を行う。それにより、R波長成分に基づくエッジ強度の平均値から、食物残渣領域と異常部領域とが識別される。また、G波長成分又はB波長成分に基づくエッジ強度の平均値から、近接粘膜領域と異常部領域とが識別される。なお、必要に応じていずれか一方の平均値のみを用いて識別を行っても良い。
【0078】
以上説明したように、実施の形態3によれば、生体内における吸収の度合いに応じて特定される特定波長成分を選択して特徴量を算出するので、異常部と食物残渣、或いは、異常部と近接粘膜とを識別するために適した特徴量を算出することができる。その結果、異常部を精度良く識別することが可能となる。
なお、上述した特徴量算出部310を、図11に示す特徴量算出部130の代わりに適用しても良い。
【0079】
(実施の形態4)
次に、本発明の実施の形態4について説明する。
図20は、実施の形態4に係る画像処理装置の構成を示すブロック図である。図20に示すように、実施の形態4に係る画像処理装置4は、図1に示す演算部100の代わりに、演算部400を備える。なお、画像処理装置4の演算部400以外の構成については、図1に示すものと同様である。
【0080】
演算部400は、異常部候補領域検出部110と、境界近傍画素特定部120と、特徴量算出部410と、異常部領域識別部140とを備える。この内、異常部候補領域検出部110、境界近傍画素特定部120、及び異常部領域識別部140の構成及び動作は、実施の形態1と同様である。
【0081】
特徴量算出部410は、候補領域の境界画素の内側と外側との間における画素値の変化を表す画素値変化情報を算出する画素値変化情報算出部411を有し、この画素値変化情報を特徴量とする。より詳細には、画素値変化情報算出部411は、画像内の各画素の境界画素からの距離を表す距離変換画像を算出する距離変換画像算出部411aと、境界画素における画素値が同一の値となるように画素値変化情報を正規化する正規化部411bとを含む。
【0082】
次に、画像処理装置4の動作について説明する。画像処理装置4の動作は、全体として実施の形態1と同様であり、図2のステップS14において特徴量算出部410が実行する境界近傍領域の画素値の特徴量を算出する処理の内容が実施の形態1とは異なる。
【0083】
図21は、特徴量算出部410の詳細な動作を示すフローチャートである。また、図22は、画素値変化情報の算出方法を説明する模式図である。
まず、ステップS401において、距離変換画像算出部411aは、画像内の各画素と境界画素との間の距離を表す距離変換画像を算出する。なお、ステップS401における詳細な処理は、図5に示すステップS132と同様である。
【0084】
続くステップS402において、画素値変化情報算出部411は、距離変換領域ごとに、距離変換画像において同一の距離となる画素群(即ち、候補領域の境界からの距離が同一の画素群)の画素値の平均値を、該距離を変更しながら順次算出することにより、画素値変化情報を算出する。
【0085】
例えば、画像M10の場合、境界画素群B1〜B5から距離dnだけ離れた各画素群H1n〜H5nに対し、画素値の平均値が算出される。ここで、n=0、±1、±2、…であり、n=0のときdn=0である。また、nが増加するについて、距離dnが境界画素群B1〜B5の外側方向に増加し、nが減少するにつれて、距離dnが境界画素群B1〜B5の内側方向に増加する。
【0086】
図23は、画素群H1n〜H5nにそれぞれ対応する画素値の平均値f1(dn)〜f5(dn)を示すグラフである。ここで、各平均値f1(dn)〜f5(dn)は、グラフの上方に位置するほど、対応する候補領域の輝度が全体的に高く、従って、撮像距離が短いと判断することができる。画像M10の場合、平均値f1(dn)が突出して高い候補領域A1の撮像距離が短く(画面の手前側に存在)、それ以外の候補領域A2〜A5の撮像距離は比較的長い(画面の奥側に存在)といえる。
【0087】
ステップS403において、正規化部411bは、境界画素における画素値の平均値が同一の値となるように画素値変化情報を正規化する。それにより、上述した撮像距離の差に起因する平均値の大きさを補正する。
【0088】
図24は、図23に示す画素値の平均値f1(dn)〜f5(dn)を正規化したグラフである。図24に示す正規化された各平均値f1(dn)’〜f5(dn)’の変化(傾き)は、各候補領域A1〜A5に対応する境界画素群B1〜B5近傍の画素値の変化を示している。例えば、図24においては、平均値f1(dn)’の変化が最も小さく、平均値f4(dn)’、f5(dn)’の変化が比較的大きくなっている。画素値変化情報算出部411は、このようにして算出した平均値f1(dn)’〜f5(dn)’を、画素値変化情報(画素値プロファイル)として出力する。
【0089】
この後、処理はメインルーチンに戻り、図2に示すステップS15において、異常部領域識別部140は、ステップS14において算出された画素値変化情報に基づいて異常部領域の識別を行う。より詳細には、画素値変化情報における各距離dnに対応する値を特徴量として、実施の形態1と同様にして判定指標P(x)を算出し、この判定指標P(x)を閾値処理することにより、異常部領域を識別する。例えば、画像M10の場合、平均値f1(dn)の変化が小さい候補領域A1が異常部領域として判定される。
【0090】
以上説明したように、実施の形態4によれば、境界近傍画素のうち、境界画素からの距離が同一となる画素の画素値の平均値を、該距離を変更しながら順次算出した画素値変化情報を特徴量とするので、ノイズに影響され難く、且つ、候補領域周辺の粘膜面と候補領域との間の詳細な画素値の変化を示した特徴量を算出することができる。また、実施の形態4によれば、境界画素における画素値が同一の値となるように画素値変化情報を正規化するので、撮像距離に応じた画素値の大小差が補正された特徴量を算出することができる。従って、異常部を精度良く識別することが可能となる。
なお、上述した特徴量算出部410を、図11に示す特徴量算出部130の代わりに適用しても良い。
【0091】
(実施の形態5)
次に、本発明の実施の形態5について説明する。
図25は、実施の形態5に係る画像処理装置の構成を示すブロック図である。図25に示すように、実施の形態5に係る画像処理装置5は、図1に示す演算部100の代わりに、演算部500を備える。なお、画像処理装置5の演算部500以外の構成については、図1に示すものと同様である。
【0092】
演算部500は、異常部候補領域検出部110と、境界近傍画素特定部120と、特徴量算出部510と、異常部領域識別部520とを備える。特徴量算出部510は、候補領域の境界画素の内側と外側との間における画素値の変化を表す画素値変化情報を算出する画素値変化情報算出部511と、エッジ強度算出部512とを有する。この内、エッジ強度算出部512は、画素値変化情報を基に画素値の変化量を表す変化量情報を算出する変化量情報算出部512aと、変化量の最大値を算出する最大値算出部512bとを含む。異常部領域識別部520は、特徴量算出部510が特徴量として算出した上記最大値に基づいて異常部領域を識別する。なお、異常部候補領域検出部110及び境界近傍画素特定部120の構成及び動作は、実施の形態1と同様である。
【0093】
次に、画像処理装置5の動作について説明する。画像処理装置5の動作は、全体として実施の形態1と同様であり、図2のステップS14において特徴量算出部510が実行する境界近傍領域の画素値の特徴量を算出する処理の内容が実施の形態1とは異なる。
【0094】
図26は、特徴量算出部510の動作を示すフローチャートである。まず、ステップS501において、画素値変化情報算出部511は、境界画素の内側と外側との間における画素値変化情報を算出する(図24参照)。なお、ステップS501における詳細な処理は、図21に示すステップS401〜S403と同様である。
【0095】
続くステップS502において、変化量情報算出部512aは、画素値変化情報を基に画素値の変化量情報を算出する。具体的には、変化量情報算出部512aは、ステップS501において算出した画素値の平均値の微分値を算出する。図27は、図24に示す各平均値f1(dn)’〜f5(dn)’に対応する微分値g1(dn)〜g5(dn)を示すグラフである。
【0096】
さらに、ステップS503において、最大値算出部512bは、各候補領域A1〜A5に対応する変化量情報に基づき、変化量の最大値を算出する。例えば、図27の場合、微分値g1(dn)〜g5(dn)から、最大値g1(d-2)、g2(d0)、g3(d1)、g4(d1)、g5(d1)がそれぞれ算出される。
特徴量算出部510は、このようにして算出された最大値を特徴量として出力する。
【0097】
この後、処理はメインルーチンに戻り、図2に示すステップS15において、異常部領域識別部520は、ステップS14において算出された特徴量(変化量の最大値)に対して閾値処理を施すことにより、異常部領域の識別を行う。例えば、画像M10の場合、最大値g1(d-2)の値が小さい候補領域A1が異常部領域として判定される。
【0098】
以上説明したように、実施の形態5によれば、境界画素の内側と外側の間の画素値変化情報を基に画素値の変化量情報を算出するので、候補領域周辺の粘膜面と候補領域との間の詳細な画素値の変化量を示す特徴量を算出することができる。また、実施の形態5によれば、変化量の最大値を算出することにより、候補領域の検出精度が不十分で、検出された候補領域の境界と本来の境界とに差異が生じる場合においても、その差を補うことができる。その結果、異常部を精度良く識別することが可能となる。
【0099】
以上説明した実施の形態1〜5及び変形例に係る画像処理装置は、記録媒体に記録された画像処理プログラムをパーソナルコンピュータやワークステーション等のコンピュータシステムで実行することによって実現することができる。また、このようなコンピュータシステムを、ローカルエリアネットワーク、広域エリアネットワーク(LAN/WAN)、又は、インターネット等の公衆回線を介して、他のコンピュータシステムやサーバ等の機器に接続して使用しても良い。この場合、実施の形態1〜5及びその変形例に係る画像処理装置は、これらのネットワークを介して管腔内画像の画像データを取得したり、これらのネットワークを介して接続された種々の出力機器(ビュアーやプリンタ等)に画像処理結果を出力したり、これらのネットワークを介して接続された記憶装置(記録媒体及びその読取装置等)に画像処理結果を格納するようにしても良い。
【0100】
なお、本発明は、実施の形態1〜5及び変形例に限定されるものではなく、各実施の形態や変形例に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることによって、種々の発明を形成できる。例えば、各実施の形態や変形例に示される全構成要素からいくつかの構成要素を除外して形成しても良いし、異なる実施の形態や変形例に示した構成要素を適宜組み合わせて形成しても良い。
【符号の説明】
【0101】
1〜5 画像処理装置
10 制御部
20 画像取得部
30 入力部
40 表示部
50 記録部
51 画像処理プログラム
100、200、300、400、500 演算部
110 異常部候補領域検出部
120 境界近傍画素特定部
121、210 境界近傍領域設定部
121a、211a−1、211b−1、411a 距離変換画像算出部
121b、211a−2 距離変換画像分割部
130、310、410、510 特徴量算出部
131 エッジ強度算出部
140 異常部領域識別部
211 対象境界制限部
211a、211a’ 外辺有効画素特定部
211a−3 検査領域判定部
211b 対応境界設定部
311 特定波長成分選択部
312、512 エッジ強度算出部
411 画素値変化情報算出部
411b 正規化部
511 画素値変化情報算出部
512a 変化量情報算出部
512b 最大値算出部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の管腔内を撮像した画像を構成する各画素の色情報を基に異常部の候補領域を検出する異常部候補領域検出部と、
前記候補領域の境界近傍に存在する画素である境界近傍画素を特定する境界近傍画素特定部と、
前記境界近傍画素の画素値に基づく特徴量を算出する特徴量算出部と、
前記特徴量を基に異常部領域を識別する異常部領域識別部と、
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記境界近傍画素特定部は、
前記候補領域の境界に位置する境界画素を挟んで該候補領域の内側及び外側に所定の幅以下の前記境界近傍領域を設定する境界近傍領域設定部を有し、
前記境界近傍領域内の画素を境界近傍画素と特定することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記境界近傍領域設定部は、
前記画像内の各画素の前記境界画素からの距離を表す距離変換画像を算出する距離変換画像算出部と、
前記距離変換画像を前記候補領域に対応する距離変換領域に分割する距離変換画像分割部と、
を有し、
前記距離変換領域において所定の距離以下となる領域を、当該距離変換領域に対応する前記候補領域の境界近傍領域に設定することを特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記境界近傍画素特定部は、
前記境界近傍画素の特定に用いる境界を境界全周の内の一部に制限する対象境界制限部を有することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記対象境界制限部は、
前記候補領域の境界に位置する境界画素から外側の所定の範囲である外辺領域から、前記特徴量の算出に有効な領域の画素である有効画素を特定する外辺有効画素特定部と、
前記有効画素に対応する境界を設定する対応境界設定部と、
を有することを特徴とする請求項4に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記外辺有効画素特定部は、
前記画像内の各画素の前記境界画素からの距離を表す距離変換画像を算出する距離変換画像算出部と、
前記距離変換画像を前記候補領域に対応する距離変換領域に分割する距離変換画像分割部と、
を含み、
前記距離変換領域において所定の距離に位置する画素を、当該距離変換領域に対応する候補領域における前記有効画素と特定することを特徴とする請求項5に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記外辺有効画素特定部は、
前記外辺領域内の画素が前記異常部の検出を行う対象領域に含まれるか否かを判定する検査領域判定部を含み、
前記対象領域に含まれると判定された前記外辺領域内の画素を、前記有効画素と特定することを特徴とする請求項5に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記対応境界設定部は、
前記画像内の各画素の前記有効画素からの距離を表す距離変換画像を算出する距離変換画像算出部を含み、
前記有効画素から所定の距離以内にある境界を、前記有効画素に対応する境界に設定することを特徴とする請求項5に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記特徴量算出部は、
生体内における吸収の度合いに応じて特定される特定波長成分を選択する特定波長成分選択部を有し、
前記境界近傍画素における前記特定波長成分の画素値に基づく特徴量を算出することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項10】
前記特定波長成分選択部は、前記生体内における吸収が少ない波長成分を特定波長成分として選択し、
前記異常部領域識別部は、前記特定波長成分に対応する画素値に基づく特徴量を基に、前記画像における食物残渣領域と異常部領域とを識別することを特徴とする請求項9に記載の画像処理装置。
【請求項11】
前記特定波長成分選択部は、前記生体内における吸収が多い波長成分を特定波長成分として選択し、
前記異常部領域識別部は、前記特定波長成分の画素値に基づく特徴量を基に、前記画像における粘膜を近接して撮像した近接粘膜領域と異常部領域とを識別することを特徴とする請求項9に記載の画像処理装置。
【請求項12】
前記特定波長成分選択部は、互いに異なる複数の特定波長成分を選択することを特徴とする請求項9に記載の画像処理装置。
【請求項13】
前記特徴量算出部は、
前記候補領域の境界に位置する境界画素の内側と外側との間における画素値の変化を表す画素値変化情報を算出する画素値変化情報算出部を有し、
前記画素値変化情報を特徴量とすることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項14】
前記画素値変化情報算出部は、
前記画像内の各画素の前記境界画素からの距離を表す距離変換画像を算出する距離変換画像算出部を含み、
前記距離変換画像において同一の距離に位置する画素の画素値の平均値を、距離を変更しながら順次算出することにより、画素値変化情報を算出することを特徴とする請求項13に記載の画像処理装置。
【請求項15】
前記画素値変化情報算出部は、前記境界画素における画素値が同一の値となるように画素値変化情報を正規化する正規化部を含むことを特徴とする請求項13に記載の画像処理装置。
【請求項16】
前記特徴量算出部は、
前記境界近傍画素のエッジ強度を算出するエッジ強度算出部を有し、
前記エッジ強度を特徴量とすることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項17】
前記特徴量算出部は、前記候補領域の境界に位置する境界画素の内側と外側との間における画素値の変化を表す画素値変化情報を算出する画素値変化情報算出部を有し、
前記エッジ強度算出部は、前記画素値変化情報を基に画素値の変化量を表す変化量情報を算出する変化量情報算出部と、前記変化量の最大値を算出する最大値算出部とを含み、該最大値をエッジ強度とすることを特徴とする請求項16に記載の画像処理装置。
【請求項18】
被検体の管腔内を撮像した画像を構成する各画素の色情報を基に異常部の候補領域を検出する異常部候補領域検出ステップと、
前記候補領域の境界近傍に存在する画素である境界近傍画素を特定する境界近傍画素特定ステップと、
前記境界近傍画素の画素値に基づく特徴量を算出する特徴量算出ステップと、
前記特徴量を基に異常部領域を識別する異常部領域識別ステップと、
を含むことを特徴とする画像処理方法。
【請求項19】
被検体の管腔内を撮像した画像を構成する各画素の色情報を基に異常部の候補領域を検出する異常部候補領域検出ステップと、
前記候補領域の境界近傍に存在する画素である境界近傍画素を特定する境界近傍画素特定ステップと、
前記境界近傍画素の画素値に基づく特徴量を算出する特徴量算出ステップと、
前記特徴量を基に異常部領域を識別する異常部領域識別ステップと、
をコンピュータに実行させることを特徴とする画像処理プログラム。
【請求項1】
被検体の管腔内を撮像した画像を構成する各画素の色情報を基に異常部の候補領域を検出する異常部候補領域検出部と、
前記候補領域の境界近傍に存在する画素である境界近傍画素を特定する境界近傍画素特定部と、
前記境界近傍画素の画素値に基づく特徴量を算出する特徴量算出部と、
前記特徴量を基に異常部領域を識別する異常部領域識別部と、
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記境界近傍画素特定部は、
前記候補領域の境界に位置する境界画素を挟んで該候補領域の内側及び外側に所定の幅以下の前記境界近傍領域を設定する境界近傍領域設定部を有し、
前記境界近傍領域内の画素を境界近傍画素と特定することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記境界近傍領域設定部は、
前記画像内の各画素の前記境界画素からの距離を表す距離変換画像を算出する距離変換画像算出部と、
前記距離変換画像を前記候補領域に対応する距離変換領域に分割する距離変換画像分割部と、
を有し、
前記距離変換領域において所定の距離以下となる領域を、当該距離変換領域に対応する前記候補領域の境界近傍領域に設定することを特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記境界近傍画素特定部は、
前記境界近傍画素の特定に用いる境界を境界全周の内の一部に制限する対象境界制限部を有することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記対象境界制限部は、
前記候補領域の境界に位置する境界画素から外側の所定の範囲である外辺領域から、前記特徴量の算出に有効な領域の画素である有効画素を特定する外辺有効画素特定部と、
前記有効画素に対応する境界を設定する対応境界設定部と、
を有することを特徴とする請求項4に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記外辺有効画素特定部は、
前記画像内の各画素の前記境界画素からの距離を表す距離変換画像を算出する距離変換画像算出部と、
前記距離変換画像を前記候補領域に対応する距離変換領域に分割する距離変換画像分割部と、
を含み、
前記距離変換領域において所定の距離に位置する画素を、当該距離変換領域に対応する候補領域における前記有効画素と特定することを特徴とする請求項5に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記外辺有効画素特定部は、
前記外辺領域内の画素が前記異常部の検出を行う対象領域に含まれるか否かを判定する検査領域判定部を含み、
前記対象領域に含まれると判定された前記外辺領域内の画素を、前記有効画素と特定することを特徴とする請求項5に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記対応境界設定部は、
前記画像内の各画素の前記有効画素からの距離を表す距離変換画像を算出する距離変換画像算出部を含み、
前記有効画素から所定の距離以内にある境界を、前記有効画素に対応する境界に設定することを特徴とする請求項5に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記特徴量算出部は、
生体内における吸収の度合いに応じて特定される特定波長成分を選択する特定波長成分選択部を有し、
前記境界近傍画素における前記特定波長成分の画素値に基づく特徴量を算出することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項10】
前記特定波長成分選択部は、前記生体内における吸収が少ない波長成分を特定波長成分として選択し、
前記異常部領域識別部は、前記特定波長成分に対応する画素値に基づく特徴量を基に、前記画像における食物残渣領域と異常部領域とを識別することを特徴とする請求項9に記載の画像処理装置。
【請求項11】
前記特定波長成分選択部は、前記生体内における吸収が多い波長成分を特定波長成分として選択し、
前記異常部領域識別部は、前記特定波長成分の画素値に基づく特徴量を基に、前記画像における粘膜を近接して撮像した近接粘膜領域と異常部領域とを識別することを特徴とする請求項9に記載の画像処理装置。
【請求項12】
前記特定波長成分選択部は、互いに異なる複数の特定波長成分を選択することを特徴とする請求項9に記載の画像処理装置。
【請求項13】
前記特徴量算出部は、
前記候補領域の境界に位置する境界画素の内側と外側との間における画素値の変化を表す画素値変化情報を算出する画素値変化情報算出部を有し、
前記画素値変化情報を特徴量とすることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項14】
前記画素値変化情報算出部は、
前記画像内の各画素の前記境界画素からの距離を表す距離変換画像を算出する距離変換画像算出部を含み、
前記距離変換画像において同一の距離に位置する画素の画素値の平均値を、距離を変更しながら順次算出することにより、画素値変化情報を算出することを特徴とする請求項13に記載の画像処理装置。
【請求項15】
前記画素値変化情報算出部は、前記境界画素における画素値が同一の値となるように画素値変化情報を正規化する正規化部を含むことを特徴とする請求項13に記載の画像処理装置。
【請求項16】
前記特徴量算出部は、
前記境界近傍画素のエッジ強度を算出するエッジ強度算出部を有し、
前記エッジ強度を特徴量とすることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項17】
前記特徴量算出部は、前記候補領域の境界に位置する境界画素の内側と外側との間における画素値の変化を表す画素値変化情報を算出する画素値変化情報算出部を有し、
前記エッジ強度算出部は、前記画素値変化情報を基に画素値の変化量を表す変化量情報を算出する変化量情報算出部と、前記変化量の最大値を算出する最大値算出部とを含み、該最大値をエッジ強度とすることを特徴とする請求項16に記載の画像処理装置。
【請求項18】
被検体の管腔内を撮像した画像を構成する各画素の色情報を基に異常部の候補領域を検出する異常部候補領域検出ステップと、
前記候補領域の境界近傍に存在する画素である境界近傍画素を特定する境界近傍画素特定ステップと、
前記境界近傍画素の画素値に基づく特徴量を算出する特徴量算出ステップと、
前記特徴量を基に異常部領域を識別する異常部領域識別ステップと、
を含むことを特徴とする画像処理方法。
【請求項19】
被検体の管腔内を撮像した画像を構成する各画素の色情報を基に異常部の候補領域を検出する異常部候補領域検出ステップと、
前記候補領域の境界近傍に存在する画素である境界近傍画素を特定する境界近傍画素特定ステップと、
前記境界近傍画素の画素値に基づく特徴量を算出する特徴量算出ステップと、
前記特徴量を基に異常部領域を識別する異常部領域識別ステップと、
をコンピュータに実行させることを特徴とする画像処理プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図7】
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【図16】
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【図18】
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【図21】
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【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図7】
【公開番号】特開2013−111420(P2013−111420A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−263091(P2011−263091)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
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