説明

画像形成装置、画像形成システムおよびその制御方法

【課題】使用者固有の使用状況による特定部品に対する負荷の集中や特定部品の電力消費の増大を防ぎ、画像形成装置またはそのシステム全体の長寿命化および低消費電力化を実現する。
【解決手段】使用時間を計時するタイマーと、製造者が規定した各動作モードまたは動作状態における、規定された信頼度の部品寿命の推定量を含む部品情報を格納する第1の不揮発性メモリと、所定部品の使用時の使用条件および規定条件タイマーにより計時された使用時間を含む使用状況の情報を格納する書き換え可能な第2の不揮発性メモリと、規定条件使用状況の情報および規定条件部品情報から、規定条件に対し特定部品の負荷が大きいと判定される場合に、使用者に本装置の寿命が長くなる方法を提示する提示手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置、画像形成システムおよびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、複写機、プリンタ、ファクシミリ装置などの画像形成装置に対し、その信頼性を向上させるため、装置を構成する各部の残存寿命を適正に管理することが求められるようになってきている。
【0003】
例えば、特許文献1には、装置の稼働時間に基づいてその電源部の寿命管理を適正に行う目的で、装置の動作モード毎に、各動作モードにおける電源部への負荷状態に応じた寿命消費ポイントを定め、各動作モードの実行時間に、当該動作モードに対応する寿命消費ポイントに応じた重み付けをしながら残存寿命から減算カウントすることにより、電源部の寿命管理を行う装置が開示されている。この発明では、さらに、スキャナユニットやFAX受信ユニットなど、装置に対して着脱可能なオプションユニットがある場合に、その装着状況に応じて寿命消費ポイントを変え、また、周囲温度によっても寿命消費ポイントを増減させて、電源部の寿命管理を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−225047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術では、使用環境や使用者の使用状況を基に、電源部単体の寿命管理を適正に行うことや、消耗部品単体の寿命期間を延ばすことはできるが、システム全体の寿命を延ばすことができないという問題があった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、使用者固有の使用状況による特定部品に対する負荷の集中や特定部品の電力消費の増大を防ぎ、画像形成装置またはそのシステム全体の長寿命化および低消費電力化を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の画像形成装置は、使用時間を計時するタイマーと、製造者が規定した各動作モードまたは動作状態における、規定された信頼度の部品寿命の推定量を含む部品情報を格納する第1の不揮発性メモリと、所定部品の使用時の使用条件および前記タイマーにより計時された使用時間を含む使用状況の情報を格納する書き換え可能な第2の不揮発性メモリと、前記使用状況の情報および前記部品情報から、規定条件に対し特定部品の負荷が大きいと判定される場合に、使用者に本装置の寿命が長くなる方法を提示する提示手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の画像形成装置は、使用時間を計時するタイマーと、製造者が規定した各動作モードまたは動作状態における、規定された信頼度の消費電力の推定量を含む部品情報を格納する第1の不揮発性メモリと、所定部品の使用時の使用条件および前記タイマーにより計時された使用時間を含む使用状況の情報を格納する書き換え可能な第2の不揮発性メモリと、前記使用状況の情報および前記部品情報から、規定条件に対し特定部品の電力消費が大きいと判定される場合に、使用者に消費電力低減方法を提示する提示手段とを備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の画像形成装置は、使用時間を計時するタイマーと、製造者が規定した各動作モードまたは動作状態における、規定された信頼度の部品寿命の推定量および規定された信頼度の消費電力の推定量を含む部品情報を格納する第1の不揮発性メモリと、所定部品の使用時の使用条件および前記タイマーにより計時された使用時間を含む使用状況の情報を格納する書き換え可能な第2の不揮発性メモリと、前記使用状況の情報および前記部品情報から、規定条件に対し特定部品の負荷が大きいと判定される場合には、使用者に本装置の寿命が長くなる方法を提示し、規定条件に対し特定部品の電力消費が大きいと判定される場合には、消費電力低減方法を提示する提示手段とを備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の画像形成装置の制御方法は、使用時間を計時するタイマーと、第1の不揮発性メモリと、書き換え可能な第2の不揮発性メモリと、提示手段とを備える画像形成装置において、前記第1の不揮発性メモリに、製造者が規定した各動作モードまたは動作状態における、規定された信頼度の部品寿命の推定量を含む部品情報を格納し、前記第2の不揮発性メモリに、所定部品の使用時の使用条件および前記タイマーにより計時された使用時間を含む使用状況の情報を格納し、前記提示手段により、前記使用状況の情報および前記部品情報から、規定条件に対し特定部品の負荷が大きいと判定される場合に、使用者に本装置の寿命が長くなる方法を提示することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の画像形成装置の制御方法は、使用時間を計時するタイマーと、第1の不揮発性メモリと、書き換え可能な第2の不揮発性メモリと、提示手段とを備える画像形成装置において、前記第1の不揮発性メモリに、製造者が規定した各動作モードまたは動作状態における、規定された信頼度の消費電力の推定量を含む部品情報を格納し、前記第2の不揮発性メモリに、所定部品の使用時の使用条件および前記タイマーにより計時された使用時間を含む使用状況の情報を格納し、前記提示手段により、前記使用状況の情報および前記部品情報から、規定条件に対し特定部品の電力消費が大きいと判定される場合に、使用者に消費電力低減方法を提示することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、使用状況の情報および前記部品情報から、規定条件に対し特定部品の負荷が大きいと判定される場合には、使用者に本装置の寿命が長くなる方法を提示し、また、規定条件に対し特定部品の電力消費が大きいと判定される場合には、消費電力低減方法を提示して、これらの使用方法の実施を促すことによって、使用者固有の使用状況による、特定部品に対する集中的な負荷や電力消費等のストレスの発生を分散させ、画像形成装置またはそのシステム全体の長寿命化および低消費電力化を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本実施形態の画像形成装置の一例としてのインクジェットプリンタの概略構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、メカ駆動部に備わる用紙搬送部の概略構成を示す図である。
【図3】図3は、メカ駆動部に備わる用紙印刷部の概略構成を示す図である。
【図4】図4は、本実施形態の画像形成装置における印刷の際の制御フローを示すフローチャートである。
【図5】図5は、ステップS403の情報提供処理の一例を示すフローチャートである。
【図6】図6は、ステップS403の情報提供処理の別例を示すフローチャートである。
【図7】図7は、部品情報の諸例を示す図である。
【図8】図8は、部品情報の諸例を示す図である。
【図9】図9は、部品情報の諸例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる画像形成装置の一実施の形態を詳細に説明する。
【0015】
図1は、本実施形態の画像形成装置の一例としてのインクジェットプリンタの概略構成を示すブロック図である。
【0016】
図1に示すインクジェットプリンタ100においては、使用者の所定操作により、電力供給部101が機能し、電圧生成部102から、CPU103、ROM104、RAM105、メカ駆動部106、操作パネル107、センサ部108、通信制御部109、EEPROM110およびタイマー111に対する電力供給が開始される。
【0017】
電圧生成部102は、CPU103、ROM104、RAM105、メカ駆動部106、操作パネル107、センサ部108、通信制御部109、EEPROM110およびタイマー111の各電子デバイスで規定されている電圧生成を行う。
【0018】
CPU103は、ROM104に書き込まれた制御プログラムに従い、メカ駆動部106、操作パネル107、センサ部108、通信制御部109、EEPROM110を制御する。EEPROM110に対しては、使用者の使用状況のデータや機種固有の情報の読み出し、書き換えを実施する。
【0019】
なお、ROM104には、上記制御プログラムの他、部品情報(寿命/電力)、情報提供処理により情報提示をする際の判定条件(規定時間、規定電力)、および後述の情報提供処理により提示される提示情報(この提示情報は種々のケースに対応して複数用意される)が製造者により書き込まれている。また、使用者の使用状況(印字率、各部の各モードでの使用時間等)の情報が、使用者による当該画像形成装置の使用に応じて、順次EEPROM110に書き込まれていく。EEPROM110に書き込まれる使用状況の情報は、どの部品またはユニット(本明細書においては“部品”と“ユニット”を構成要素として区別しないものとする)が、どの印字率および環境温度の下、どの動作モード/動作状態で、すなわちどの使用条件の下で、何時間使用されたかなどのデータからなる。
【0020】
一方、ROM104に書き込まれる部品情報は、以下に説明する、図7〜図9に示す表1〜10のような情報である。
【0021】
図7に示す表1〜表4は、ROM104に記憶される部品寿命の情報例を示し、製造者が規定した動作モードにおいて、規定した信頼度における部品寿命の推定量のデータからなり、図の例は信頼度95%における製品寿命の推定量のデータ例を示している。
【0022】
表1〜表4は、後述の用紙搬送部、用紙印刷部および電力供給部101の各ユニットを対象とし、特性値として推定寿命(時間)を、また因子として印刷品質高速、印刷品質標準、印刷品質きれい、待機、省エネ、電源OFF、の各モード/状態を、温度(表1は10℃、表2は20℃、表3は30℃、表4は40℃の場合を例示)および印字率(表1〜表4は印字率CMYK 10%の場合を例示)毎に設定したデータである。ここで記載されている製品寿命の推定量(推定寿命)は、信頼性工学等で用いられる製品のMTTF(故障までの動作時間の平均値)の推定値を表している。推定寿命算出方法は、製造者が特定の因子条件(例えば温度20℃ 高速印刷)で連続使用を行い、故障するまでの時間を計測することで算出できる。
【0023】
上記方法を各々の因子条件について評価することで、因子条件毎の推定寿命が分かる。しかし、上記方法を実施すると評価が膨大な量になるため、市場から戻ってきた過去類似機種のEEPROM110に格納された「偏った使用方法(例えば温度20℃付近で 高速印刷の使用率が全体の90%以上の使用方法)をした使用者のデータ」と故障時間をタイマー111で関連付ける方法でも、推定寿命を算出することができる。データ例の対象はここではユニットを例としているが、部品を対象としてもよい。因子に関しても、寿命に関わるその他のパラメーターを追加してもよい。
【0024】
図8に示す表5〜表8は、表1〜表4のそれぞれを加工したデータ(ストレス値)であり、製造者規定の製品寿命を表1〜表4に示される推定寿命で割ったデータをストレス値と定義したものである。表5〜表8は製造者規定の製品寿命を24時間×365日×5年=43800時間として算出した。このストレス値を用いて、各部品もしくはユニットの残寿命を、残寿命=製品寿命−Σ[使用条件に応じたストレス値×使用時間]として求めることができる。規定した信頼度の製品寿命の推定量に関する表1〜表4もしくは表5〜表8のような部品情報がROM104に書き込まれている。
【0025】
図9に示す表9は、製造者が規定した動作モードにおいて、規定した信頼度における消費電力の推定量のデータ例であり、特性値として電力(ワット)を、因子として印刷品質高速、印刷品質標準、印刷品質きれい、待機、省エネ、電源OFFの各モード/状態について、各温度(表9の例では、10℃、20℃、30℃、40℃)に対し、所定の印字率(表9は印字率CMYK 10%の場合を例示)での消費電力の推定量を設定したデータである。このデータも上記部品情報としてROM104に書き込まれている。
【0026】
同図表10は、表9のデータに1Wh当たりの電力料金を乗じたデータ例である(表4の例は、1kWh当たり17円として算出)。このデータも部品情報としてROM104に予め記憶させておいてもよい。
【0027】
操作パネル107は、LCD(Liquid Crystal Display)等を用いた表示手段による情報の表示を行いまたタッチパネルを用いた入力手段による使用者の操作入力を受け付ける。通信制御部109は、LAN(Local Area Network)等の電気通信回線を介して接続される外部のPC等の情報処理装置から、使用者による遠隔操作を受ける際などの通信制御を行う。操作パネル107もしくは通信制御部109を用いて使用者から発信された指示に従い、センサ部108からの情報と連携した動作を行ったり、メカ駆動部106の用紙搬送部(後述)を用いて用紙搬送したり、メカ駆動部106の用紙印刷部(後述)を用いて用紙印刷を実施する。なお、センサ部108は、温度センサや用紙の位置検出用のセンサ等各種センサにより構成される。
【0028】
RAM105は、CPU103のメインメモリとして機能し、また画像データ処理等の際にはキャッシュメモリとして処理速度を上げる機能も持つ。タイマー111は、計時機能を有するデバイスであり、使用時間を計測する。
【0029】
次に、メカ駆動部106に備わる用紙搬送部について図2を用いて説明する。図2は、メカ駆動部106に備わる用紙搬送部の概略構成を示す図である。なお、同図に示す用紙搬送部は、一般的なインクジェットプリンタに備わる用紙搬送手段と同様である。
【0030】
用紙搬送部200は、駆動源として用紙搬送DCモーター201を有する。この用紙搬送DCモーター201からの動力が歯車202に伝達され、歯車202に固定された用紙搬送軸204と用紙搬送軸204に固定された搬送ローラー205a〜205eが回転し、用紙220が、用紙搬送方向1・230もしくは、用紙搬送方向2・240へ任意の速度で搬送される。その際、用紙搬送エンコーダーシート203と透過型センサ206により、用紙220の位置検知が実施される。用紙搬送軸受210,211は搬送ローラー205a〜205eを任意の位置で回転させるために設けられている。
【0031】
次に、メカ駆動部106に備わる用紙印刷部について図3を用いて説明する。図3は、メカ駆動部106に備わる用紙印刷部の概略構成を示す図である。なお、同図に示す用紙印刷部は、一般的なインクジェットプリンタに備わる用紙印刷手段と同様である。
【0032】
用紙印刷部300は、駆動源として用紙印刷DCモーター301を有する。用紙印刷DCモーター301からの動力がタイミングベルト303に伝達され、用紙印刷エンコーダーシート304と図示しない透過型センサにより、用紙320の位置検知を実施し、タイミングベルト303に固定された用紙印刷機構305が移動し、任意の位置で任意の色の液を吐出する。用紙印刷機構軸306および用紙印刷機構軸受307,308により高さ方向の位置決めを行う。印刷方法の違いにより、例えば、同図に示す黒印刷部分330、黒50%印刷部分331、黒25%印刷部分332、および無印刷の地の部分333のような画像が出力される。
【0033】
上記構成のインクジェットプリンタ等の画像形成装置を用いて、使用者が印刷を実施する場合、使用者がPC等の情報処理装置上のアプリケーションから印刷ジョブを当該画像形成装置へ送る。当該画像形成装置は、印刷ジョブから、印刷データを取得し、印刷モード(ここでは、製造者が定めた、印刷速度優先モード、通常印刷モード、画質優先モードの3種の印刷モードがあるものとする)決定し、決定された印刷モードによる印刷を実行し、その印刷物を出力する。
【0034】
ところで、画像形成装置において1つの部品が故障してしまうと当該システム全体の機能が損なわれてしまう傾向があり、上記のような画像形成装置における通常の使用方法では以下のような問題が生じる。
【0035】
例えば使用者が、印刷速度優先モードのみを使用した場合、用紙搬送部200にストレスが集中することで、用紙搬送部200が早期に故障してしまい、用紙搬送部200の寿命がシステム全体の寿命となる。
【0036】
また、画質優先モードのみを使用した場合、用紙印刷部300にストレスが集中することで、用紙印刷部300が早期に故障してしまい、用紙印刷部300の寿命がシステム全体の寿命となる。
【0037】
また、寿命を伸ばすために通常印刷モードしか使用できないようにしてしまうと、急いで印刷したい時に時間がかかり、また高精細に印刷したい時に画質が落ちてしまうなど、使用者に制約が生じてしまう。
【0038】
本実施形態の画像形成装置では、以下のように制御することにより、長期間快適に製品を使用できるようにし(情報提供処理1)、また、消費電力を抑えることができるようにする(情報提供処理2)。
【0039】
続いて、本実施形態において特徴的な、画像形成装置における印刷の際の制御フローについて、図4を用いて説明する。図4は、本実施形態の画像形成装置における印刷の際の制御フローを示すフローチャートである。
【0040】
印刷を実行する際、はじめに、蓄積された印刷データからこれから印刷する印刷データを選定する(ステップS401)。
【0041】
次に、部品情報把握判断を行う(ステップS402)。ここでは使用者が部品把握を実施するモードを選択したか否かを判定する。この使用者による選択は、例えば、操作パネル107を用いた所定の操作により実施することができる。
【0042】
ここで、部品情報把握を実施するモードとなっている場合は(ステップS402でYes)、ステップS403の使用者へ情報提供処理(詳細は後述)を実行した後ステップS404へ移行し、そうでない場合は(ステップS402でNo)、ステップS404へ移行する。
【0043】
ステップS404では、印刷ジョブで指定された印刷モードを判定し、印刷速度優先モードの場合ステップS405へ移行し、印刷速度優先で印刷を実行する。一方、通常印刷モードの場合ステップS406へ移行し、通常印刷を実行する。他方、画質優先モードの場合ステップS407へ移行し、画質優先で印刷を実行する。
【0044】
以上の一連の処理で、印刷が完了する。
【0045】
続いて、前述のステップS403での情報提供処理の詳細を説明する。まず、情報提供処理1として、図5のフローチャートを用いて説明する。図5は、ステップS403の情報提供処理の一例を示すフローチャートである。
【0046】
はじめに、各部品間の残寿命の差を算出する(ステップS501)。
【0047】
次いで、各部品間残寿命差が規定時間以上であるか否か判断する(ステップS502)。
【0048】
上記判断で、各部品間残寿命差が規定時間未満である場合(ステップS502でNo)、ステップS503へ移行し、各部品の寿命に対して良い使用方法をしていることを使用者に提示する。
【0049】
一方、上記判断で、各部品間残寿命差が規定時間以上である場合(ステップS502でYes)、ステップS504へ移行し、各部品間残寿命差が規定時間以下になる条件を使用者に提示する。
【0050】
上記処理にて、部品情報と使用者の使用状況を比較し、その結果から使用者に製品推定寿命が長くなる方法を示唆する手法として下記のように実施する。
【0051】
例えば、使用者が印字率10%、温度40℃環境で高速印刷を5000時間実施し、印字率10%、温度40℃環境で高画質モードのきれい印刷を3000時間実施した場合、上記使用者の使用状況が格納されたEEPROM110とストレス値が格納されたROM104(ここでは部品情報としてストレス値がROM104に格納されているものとする)を用いて、各部品もしくはユニットの残寿命を算出することができる。下記に上記条件の下での各部品もしくはユニットの残寿命計算結果を記載する。
【0052】
用紙搬送部:43800−[0.63(ストレス値)×5000時間+0.49(ストレス値)×3000時間]=39180時間
【0053】
用紙印刷部:43800−[0.58(ストレス値)×5000時間+0.80(ストレス値)×3000時間]=38500時間
【0054】
電力供給部:43800−[0.88(ストレス値)×5000時間+0.88(ストレス値)×3000時間]=36760時間
【0055】
上記例では、電力供給部101の残寿命が最も短く、電力供給部101と用紙搬送部200の残寿命の差(2420時間)が、規定時間(例えば1000時間)以上あるため、電力供給部のストレスを低減する方法として、電力供給部101のストレスが低くなる条件を使用者に提示する。提示する方法としては、ユーザーインターフェース(操作パネル107や使用者が遠隔操作で使用するPC)に、「使用環境温度を下げて使用すると寿命が伸びる確率が上がります。」もしくは、「標準印刷を可能な限り使用すると寿命が伸びる確率が上がります。」等を提示することで、各ユニットもしくは部品間の残寿命が平均的になり、当該画像形成装置の寿命を伸ばすことが可能となる。なお、ここで提示される情報は、前述のようにROM104に提示情報として記憶されており、この情報を参照して必要な提示を行う。
【0056】
次に、前述のステップS403での情報提供処理の別例の詳細を説明する。ここでは、情報提供処理2として、図6のフローチャートを用いて説明する。図6は、ステップS403の情報提供処理の別例を示すフローチャートである。
【0057】
はじめに、使用方法間の消費電力の差を算出する(ステップS601)。
【0058】
次いで、上記で算出した消費電力差が規定電力以上であるか否か判断する(ステップS602)。
【0059】
上記判断で、消費電力差が規定電力未満である場合(ステップS602でNo)、ステップS603へ移行し、消費電力に対して良い使用方法をしていることを使用者に提示する。
【0060】
一方、上記判断で、消費電力差が規定電力以上である場合(ステップS602でYes)、ステップS604へ移行し、消費電力が規定電力以下になる条件を使用者に提示する。
【0061】
使用者が部品情報把握を実施している条件で、使用者が規定消費電力(例えば規定電力27W)以上の使用方法をしている時、部品情報として図9の表9のデータをROM104に記憶しており使用者が使用環境温度40℃、印刷品質高速を使用していた場合においては(このとき消費電力の推定量は29W)、「印刷品質を標準にすると2W省エネできます。」、「印刷品質をきれいにすると4W省エネできます。」等を、ユーザーインターフェースを介して使用者に提示する。この提示に従い、使用者が使用方法を改めれば、当該画像形成装置の消費電力を抑えることができることとなる。なお、ここで提示される情報も、前述のようにROM104に提示情報として記憶されており、この情報を参照して必要な提示を行う。
【0062】
また、使用者が電力量に応じた料金、例えば1kWh当たり17円を当該画像形成装置に入力することで(図9の表10に示したデータを部品情報として予めROM104に記憶しておきそのデータを利用してもよい)、累積消費電力料金を算出し、使用者にこの料金を提示し、かつ消費電力低減方法を提示することで、使用者に消費電力低減意識が働き、消費電力をより減らすことも可能である。
【0063】
以上、本実施形態の画像形成装置における制御フローを説明したが、本制御フローが従来のものと異なる点は、印刷データ選定(S401)と印刷モード判断(S404)の間に、部品情報把握判断(S402)および使用者への情報提供処理(S403)が加わる点である。使用者が部品情報把握を実施するかを選択し、部品把握を実施する場合、図5に例示するようなフローチャートに従い、長寿命化方法の情報提供を実施する。部品情報把握判断(S402)を要求しないモードも使用者は選択可能である。
【0064】
情報を有効利用するかどうかは、使用者に委ねられており使用者に制約を与える処理ではない。使用者が情報提供通りに実施すれば、各部品にかかるストレスを分散させることができ、長寿命化が可能となる。
【0065】
また、図6に例示するようなフローチャートに従い、消費電力を抑えるための使用方法の情報提供を実施し、使用者が情報提供通りに実施すれば、消費電力低減を図ることも可能である。なお、図5に示した処理および図6に示した処理は、一方のみ行ってもよいし、これらを並行して行ってもよい。
【0066】
また上記では、インクジェットプリンタ等の画像形成装置を例に説明したが、画像形成装置本体のみに限らず、画像形成装置に有線または無線で接続される他装置を含む画像形成システム全体に対して上記制御を適用することで、そのシステム全体の故障率を低減し長寿命化が可能となり、また、消費電力低減を図ることが可能となる。
【0067】
なお、前述したハードウェア構成は、インクジェットプリンタを例としているが、上記制御フローは、インクジェットプリンタに限らず、任意のプリンタ、複写機、ファクシミリ装置、複合機等の画像形成装置に適用することができる。また、前述の部品情報および使用状況等の情報を記憶でき、前述の制御フローを実施できる任意の電子機器、電気機器にも適用することも可能である。
【0068】
また、本実施形態の画像形成装置の機能を実現させるプログラムは、当該装置のROM104やその他の不揮発性記憶媒体に予め組み込まれて提供されるか、または、インストール可能な形式または実行可能な形式のファイルでCD−ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD−R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されて提供される。
【0069】
または、上記プログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供または配布するように構成してもよい。
【0070】
以上、発明を実施するための実施の形態について説明を行ったが、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではない。本発明の主旨を損なわない範囲で変更することが可能である。
【符号の説明】
【0071】
100…インクジェットプリンタ(画像形成装置)
101…電力供給部
102…電圧生成部
103…CPU
104…ROM
105…RAM
106…メカ駆動部
107…操作パネル
108…センサ部
109…通信制御部
110…EEPROM
111…タイマー(TIMER)
200…用紙搬送部
201…用紙搬送DCモーター
202…歯車
203…用紙搬送エンコーダーシート
204…用紙搬送軸
205a〜205e…搬送ローラー
206…透過型センサ
210,211…用紙搬送軸受
220…用紙
230…用紙搬送方向1
240…用紙搬送方向2
300…用紙印刷部
301…用紙印刷DCモーター
304…用紙印刷エンコーダーシート
303…タイミングベルト
305…用紙印刷機構
306…用紙印刷機構軸
307,308…用紙印刷機構軸受
330…黒印刷部分
331…黒50%印刷部分
332…黒25%印刷部分
333…無印刷部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用時間を計時するタイマーと、
製造者が規定した各動作モードまたは動作状態における、規定された信頼度の部品寿命の推定量を含む部品情報を格納する第1の不揮発性メモリと、
所定部品の使用時の使用条件および前記タイマーにより計時された使用時間を含む使用状況の情報を格納する書き換え可能な第2の不揮発性メモリと、
前記使用状況の情報および前記部品情報から、規定条件に対し特定部品の負荷が大きいと判定される場合に、使用者に本装置の寿命が長くなる方法を提示する提示手段と
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
使用時間を計時するタイマーと、
製造者が規定した各動作モードまたは動作状態における、規定された信頼度の消費電力の推定量を含む部品情報を格納する第1の不揮発性メモリと、
所定部品の使用時の使用条件および前記タイマーにより計時された使用時間を含む使用状況の情報を格納する書き換え可能な第2の不揮発性メモリと、
前記使用状況の情報および前記部品情報から、規定条件に対し特定部品の電力消費が大きいと判定される場合に、使用者に消費電力低減方法を提示する提示手段と
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
使用者が使用電力量に応じた料金を入力する入力手段をさらに備え、
前記提示手段は、前記使用状況の情報および前記部品情報および前記使用電力量に応じた料金を基に算出される電力使用料金を提示する
ことを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記第1の不揮発性メモリは、前記部品情報として、製造者が規定した各動作モードまたは動作状態における、規定された信頼度の消費電力の推定量に対応する電力料金をさらに格納しており、
前記提示手段は、前記使用状況の情報および前記部品情報および前記電力料金を基に算出される電力使用料金を提示する
ことを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項5】
使用時間を計時するタイマーと、
製造者が規定した各動作モードまたは動作状態における、規定された信頼度の部品寿命の推定量および規定された信頼度の消費電力の推定量を含む部品情報を格納する第1の不揮発性メモリと、
所定部品の使用時の使用条件および前記タイマーにより計時された使用時間を含む使用状況の情報を格納する書き換え可能な第2の不揮発性メモリと、
前記使用状況の情報および前記部品情報から、規定条件に対し特定部品の負荷が大きいと判定される場合には、使用者に本装置の寿命が長くなる方法を提示し、規定条件に対し特定部品の電力消費が大きいと判定される場合には、消費電力低減方法を提示する提示手段と
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の画像形成装置と、該画像形成装置に接続される他装置とを備えることを特徴とする画像形成システム。
【請求項7】
使用時間を計時するタイマーと、第1の不揮発性メモリと、書き換え可能な第2の不揮発性メモリと、提示手段とを備える画像形成装置において、
前記第1の不揮発性メモリに、製造者が規定した各動作モードまたは動作状態における、規定された信頼度の部品寿命の推定量を含む部品情報を格納し、
前記第2の不揮発性メモリに、所定部品の使用時の使用条件および前記タイマーにより計時された使用時間を含む使用状況の情報を格納し、
前記提示手段により、前記使用状況の情報および前記部品情報から、規定条件に対し特定部品の負荷が大きいと判定される場合に、使用者に本装置の寿命が長くなる方法を提示する
ことを特徴とする画像形成装置の制御方法。
【請求項8】
使用時間を計時するタイマーと、第1の不揮発性メモリと、書き換え可能な第2の不揮発性メモリと、提示手段とを備える画像形成装置において、
前記第1の不揮発性メモリに、製造者が規定した各動作モードまたは動作状態における、規定された信頼度の消費電力の推定量を含む部品情報を格納し、
前記第2の不揮発性メモリに、所定部品の使用時の使用条件および前記タイマーにより計時された使用時間を含む使用状況の情報を格納し、
前記提示手段により、前記使用状況の情報および前記部品情報から、規定条件に対し特定部品の電力消費が大きいと判定される場合に、使用者に消費電力低減方法を提示する
ことを特徴とする画像形成装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−98612(P2012−98612A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−247649(P2010−247649)
【出願日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(000006932)リコーエレメックス株式会社 (708)
【Fターム(参考)】