説明

画像形成装置

【課題】非通紙領域と通紙領域間の温度差に起因する光沢ムラの発生を有効に防止し、熱定着ジョブ実行の生産性を高める。
【解決手段】整磁合金層を含み、キュリー温度に近づく程、電磁誘導による昇温速度が低下する発熱体を有し、印刷ジョブ実行中に発熱体の通紙領域に対応する領域と非通紙領域に対応する領域の温度差が、光沢ムラが許容される限界値を超えた場合に、当該温度差が限界値以内になるまで次の印刷ジョブの熱定着の実行を抑止する画像形成装置であって、印刷ジョブ実行中に、前記温度差が限界値を超えたか否かを判定し、超えた場合に、実行中の印刷ジョブが終了するまでの期間内において、その通紙領域に対応する領域の温度を、その非通紙領域に対応する領域より速い昇温速度で昇温させ(S1101)、前記印刷ジョブの熱定着が終了するまでの期間内に、前記温度差が限界値以内に戻った場合に(S1102:YES)、前記抑止を解除する(S1103)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁誘導により発熱し、定着温度よりも高いキュリー温度を有する整磁合金層を含む発熱体を用いて、記録シート上の未定着画像の熱定着を行う、プリンター、複写機等の画像形成装置に関し、特に、所定幅の記録シートを連続通紙した場合に生じる通紙領域と非通紙領域との間の温度差に起因する光沢ムラの発生を防止する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンター、複写機等の画像形成装置では、ウォームアップ時間の短縮や省電力等の点において、ヒーター加熱方式の画像形成装置よりも優れている電磁誘導加熱方式の画像形成装置が利用されるようになってきている。
一方、電磁誘導加熱方式の画像形成装置では、記録シートの未定着画像を熱定着させるために用いられる定着部材の熱容量が小さいため、記録シートの通紙により、通紙領域の温度が低下しやすく、通紙領域の温度を定着温度に維持するため、熱定着動作が行われている間、定着部材全体が随時加熱される。このため、連続通紙された場合に、定着部材の通紙領域と、非通紙領域との間の温度差が大きくなり、その結果、小サイズ(例えば、A4サイズ)の記録シートについて連続して熱定着動作が行われた後に、大サイズ(例えば、A3サイズ)の記録シートについて熱定着動作が行われると、大サイズの記録シートの熱定着後の画像に当該温度差に起因する光沢ムラが生じることがある。
【0003】
定着部材の通紙領域と、非通紙領域との間に生じる温度差を低減する技術として、例えば、特許文献1には、定着温度よりもキュリー温度が高く設定された整磁合金を含む発熱体を用いて定着部材を加熱するとともに、先の熱定着ジョブの終了後から次の熱定着ジョブを開始するまでの熱定着ジョブ間において、上記の発熱体を電磁誘導加熱する画像形成装置が開示されている。
【0004】
特許文献1の画像形成装置においては、発熱体として整磁合金が用いられているので、発熱体の温度がキュリー温度以上になると磁性を失い、非通紙領域の温度がキュリー温度以上に上昇しないように抑制される。さらに、発熱体の昇温速度が、キュリー温度に向けて温度が上昇するに従って徐々に低下することを利用し(段落44、図7の記載参照)、熱定着ジョブ間において発熱体の電磁誘導加熱を行うことにより、定着部材の通紙領域と、非通紙領域との間に生じている温度差が低減される。
【0005】
具体的には、発熱体が電磁誘導加熱されると、非通紙領域より温度の低い通紙領域の方が、昇温速度が大きくなるため、加熱が進むにつれて、両者の温度差が小さくなる。これにより、先に実行された熱定着ジョブにおいて定着部材の通紙領域と、非通紙領域との間に生じた温度差を有効に低減することができ、後の熱定着ジョブにおいて、先の熱定着ジョブの場合よりも幅が大サイズの記録シートについて熱定着を行う場合においても、記録シートの幅方向における定着温度を均一化して熱定着後の画像に光沢ムラが生じないようにすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−70757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記の特許文献1に開示された技術では、熱定着ジョブ間において定着部材の通紙領域と、非通紙領域との間に生じた温度差を低減するための電磁誘導加熱動作が行われるため、その間、次の熱定着ジョブの実行が遅延され、その分、熱定着ジョブ実行の生産性が低下してしまうという問題が生じる。
本発明は、上述のような問題に鑑みて為されたものであって、定着部材の通紙領域と、非通紙領域との間に生じる温度差の低減化を図り、当該温度差に起因する光沢ムラの発生を有効に防止しつつ、熱定着ジョブ実行の生産性を高めることが可能な画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る画像形成装置は、電磁誘導により発熱し、定着温度よりも高いキュリー温度を有する整磁合金層を含み、キュリー温度に近づく程、電磁誘導による昇温速度が低下する発熱体を用いて、記録シート上の未定着画像の熱定着を行い、印刷ジョブ実行中に前記発熱体における通紙領域に対応する領域の温度とその非通紙領域に対応する領域の温度との温度差が、後者の温度上昇により光沢ムラが許容される限界値を超えた場合に、当該印刷ジョブの熱定着が終了後、当該温度差が前記限界値以内になるまで次の印刷ジョブの熱定着の実行を抑止する画像形成装置であって、印刷ジョブ実行中に、前記非通紙領域に対応する領域の温度上昇により、前記温度差が前記限界値を超えたか否かを判定する判定手段と、前記限界値を超えた場合に、その後、実行中の印刷ジョブが終了するまでの期間内において、前記発熱体を定着温度より昇温させることにより、その通紙領域に対応する領域の温度を、その非通紙領域に対応する領域より速い昇温速度で昇温させる温度制御手段と、前記温度制御手段による昇温により、前記印刷ジョブの熱定着が終了するまでの期間内に、前記温度差が前記限界値以内に戻った場合には、次の印刷ジョブの熱定着の実行の抑止を解除する解除手段と、を備える。
【0009】
ここで、前記判定手段は、前記非通紙領域に対応する領域の温度がキュリー温度に達した場合に、前記温度差が前記限界値を超えたと判定することとすることができる。
印刷ジョブの記録シートのサイズを特定するサイズ特定手段を備え、前記温度制御手段は、実行中の印刷ジョブと次の印刷ジョブの記録シートのサイズが同一の場合には、前記発熱体を定着温度より昇温させる昇温動作を抑止し、前記解除手段は、次の印刷ジョブの熱定着の実行の抑止を解除することとすることができる。
【発明の効果】
【0010】
上記構成を備えることにより、印刷ジョブ実行中に発熱体における非通紙領域に対応する領域の温度上昇により、その通紙領域に対応する領域との温度差が、光沢ムラが許容される限界値を超えた場合に、その後、実行中の印刷ジョブが終了するまでの期間内において、発熱体が定着温度より昇温されて、その通紙領域に対応する領域の温度が、その非通紙領域に対応する領域より速い昇温速度で昇温され、その結果、当該昇温により印刷ジョブの熱定着が終了するまでの期間内に両者の温度差が限界値以内に戻った場合には、次の印刷ジョブの熱定着の実行の抑止が解除されるので、両者の温度差に起因する光沢ムラの発生を有効に防止しつつ、解除された分だけ、熱定着ジョブ実行の生産性を高めることができる。
【0011】
ここで、前記温度制御手段は、前記印刷ジョブの熱定着が終了するまでの期間内に、前記温度差が前記限界値以内に戻らなかった場合には、前記印刷ジョブの熱定着が終了した後、前記温度差が前記限界値以内に戻るまで前記発熱体をさらに昇温させ、前記解除手段は、前記発熱体をさらに昇温させたことにより、前記温度差が前記限界値以内に戻った場合に、次の印刷ジョブの熱定着の実行の抑止を解除することとしてもよい。
【0012】
これにより、発熱体における通紙領域に対応する領域の温度とその非通紙領域に対応する領域の温度との温度差が印刷ジョブの熱定着が終了するまでの期間内に限界値以内に戻らなかった場合においても、印刷ジョブ実行中に発熱体の通紙領域に対応する領域の温度が、その非通紙領域に対応する領域より速い昇温速度で昇温された上で、両者の温度差が限界値以内に戻るまでさらに発熱体が昇温されるので、印刷ジョブ実行中に昇温された分だけ、両者の温度差が限界値以内に達するまでの時間を短縮することができ、その分だけ早く次の熱定着ジョブの実行を開始することができ、熱定着ジョブ実行の生産性を高めることができる。
【0013】
ここで、前記温度制御手段は、前記温度差が前記限界値以内になるまで前記印刷ジョブの熱定着が終了するまでの期間内において、記録シートについて熱定着が行われる毎に、各熱定着が行われている期間の昇温量が、前記限界値を超えないように、段階的に前記発熱体を昇温させることとしてもよい。
これにより、印刷ジョブの熱定着が終了するまでの期間内における、各記録シートの熱定着が行われている期間の昇温量が、光沢ムラが許容される限界値を超えないように、発熱体の温度が段階的に昇温されるので、昇温動作によって熱定着後の記録シートに光沢ムラが発生するのを有効に防止することができる。
【0014】
ここで、前記温度制御手段は、前記次の印刷ジョブの熱定着の実行開始後、当該熱定着が終了するまでの期間内において、記録シートについて熱定着が行われる毎に、各熱定着が行われている期間の温度下降量が、前記限界値を超えないように、段階的に前記発熱体の温度を、定着温度になるまで下降させることとしてもよい。
これにより、次の印刷ジョブの熱定着の実行開始後、各記録シートの熱定着が行われている期間の温度下降量が、光沢ムラが許容される限界値を超えないように、発熱体の温度が定着温度になるまで段階的に下降されるので、必要以上に高い温度で熱定着動作が継続され、電力消費が不必要に多くならないようにすることができる。
【0015】
ここで、印刷ジョブの記録シートの厚みを特定する厚み特定手段を備え、前記温度制御手段は、実行中の印刷ジョブの記録シートの厚みが、次の印刷ジョブの記録シートの厚みよりうすい場合に、実行中の印刷ジョブの熱定着が終了するまでの期間内において、記録シートについて熱定着が行われる毎に、各熱定着が行われている期間の昇温量が、前記限界値を超えないように、段階的に前記発熱体を昇温させ、前記解除手段は、前記温度制御手段による昇温により、前記印刷ジョブの熱定着が終了するまでの期間内に、前記発熱体の温度が、実行中の印刷ジョブに係る定着温度より高い、次の印刷ジョブの記録シートの熱定着に適した所定の温度になった場合には、次の印刷ジョブの熱定着の実行の抑止を解除する
の構成とすることとしてもよい。
【0016】
これにより、実行中の印刷ジョブの記録シートの厚みが、次の印刷ジョブの記録シートの厚みよりうすく、定着不良を防止するため、次の印刷ジョブの熱定着を実行中の印刷ジョブに係る定着温度より高い所定の温度で行う必要がある場合に、実行中の印刷ジョブの熱定着が終了するまでの期間内における、各記録シートの熱定着が行われている期間の昇温量が、光沢ムラが許容される限界値を超えないように、発熱体の温度が段階的に昇温され、実行中の印刷ジョブの熱定着が終了するまでの期間内に、発熱体の温度が当該所定の温度になった場合は、次の印刷ジョブ熱定着の実行の抑止が解除されるので、記録シートの厚みの変更に起因する、定着温度の変更の際における、次の印刷ジョブの熱定着の実行に遅れが発生しないようにすることができる。
【0017】
ここで、前記温度制御手段は、前記印刷ジョブの熱定着が終了するまでの期間内に、前記発熱体の温度が前記所定の温度にならなかった場合には、前記発熱体の温度が前記所定の温度になるまで前記発熱体をさらに昇温させ、前記解除手段は、さらに昇温させた前記発熱体の温度が前記所定の温度になった場合に、次の印刷ジョブの熱定着の実行の抑止を解除することとしてもよい。
【0018】
これにより、実行中の印刷ジョブの熱定着が終了するまでの期間内に、発熱体の温度が当該所定の温度にならなかった場合においても、当該期間内において、発熱体の温度が段階的に昇温された上で、発熱体の温度が当該所定の温度になるまで、さらに、発熱体が昇温されるので、印刷ジョブ実行中に昇温された分だけ、記録シートの厚みの変更に起因する、定着温度の変更の際における、次の印刷ジョブの熱定着の実行の遅れを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】プリンター1の構成を示す図である。
【図2】定着装置5の構成を示す部分断面斜視図である。
【図3】定着装置5の要部の断面図を示す。
【図4】制御部60の構成と制御部60の制御対象となる主構成要素との関係を示す図である。
【図5】周波数制御テーブルの具体例を示す図である。
【図6】図5の周波数制御テーブルにおける制御周波数と予想供給電力、制御周波数と閾値供給電力の各対応関係を直交座標にプロットして形成したグラフを示す。
【図7】IH電源190の概要を示す回路図である。
【図8】制御部60が行う印刷ジョブ中断制御処理の動作を示すフローチャートである。
【図9】制御部60が行うジョブ間印刷処理中断温度差調整処理の動作を示すフローチャートである。
【図10】図9のジョブ間印刷処理中断温度差調整処理の実行によって、定着ベルト155の表面温度(t)の温度調整が行われる様子を模式的に示した図である。
【図11】制御部60が行うジョブ間印刷処理非中断温度差調整処理の動作を示すフローチャートである。
【図12】図11のジョブ間印刷処理非中断温度差調整処理の実行によって、定着ベルト155の表面温度(t)の温度調整が行われる様子を模式的に示した図である。
【図13】印刷ジョブ中断制御処理の動作の変形例を示すフローチャートである。
【図14】制御部60が行うジョブ間印刷処理中断厚紙大用温度差調整処理1の動作を示すフローチャートである。
【図15】制御部60が行うジョブ間印刷処理非中断厚紙大用温度差調整処理1の動作を示すフローチャートである。
【図16】制御部60が行うジョブ間印刷処理中断厚紙大用温度差調整処理2の動作を示すフローチャートである。
【図17】制御部60が行うジョブ間印刷処理非中断厚紙大用温度差調整処理2の動作を示すフローチャートである。
【図18】制御部60の行うジョブ間印刷処理中断厚紙小用温度差調整処理の動作を示すフローチャートである。
【図19】制御部60が行うジョブ間印刷処理非中断厚紙小用温度差調整処理の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(実施の形態)
以下、本発明に係る一形態の画像形成装置の実施の形態を、タンデム型カラーデジタルプリンター(以下、単に「プリンター」という。)に適用した場合を例にして説明する。
[1]プリンターの構成
先ず、本実施の形態に係るプリンター1の構成について説明する。図1は、本実施の形態に係るプリンター1の構成を示す図である。同図に示すように、このプリンター1は、画像プロセス部3、給紙部4、定着装置5、制御部60等を備えている。
【0021】
プリンター1は、ネットワーク(例えばLAN)に接続され、外部の端末装置(不図示)や図示しない表示部を有する操作パネルから印刷指示を受け付けると、その指示に基づいてイエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックの各色のトナー像を形成し、これらを記録シートへ多重転写してフルカラーの画像を形成することにより、記録シートへの印刷処理を実行する。以下、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各再現色をY、M、C、Kと表し、各再現色に関連する構成要素の番号にこのY、M、C、Kを添字として付加する。
【0022】
画像プロセス部3は、作像部3Y、3M、3C、3K、露光部10、中間転写ベルト11、二次転写ローラー45などを有している。作像部3Y、3M、3C、3Kの構成は、いずれも同様の構成であるため、以下、主として作像部3Yの構成について説明する。
作像部3Yは、感光体ドラム31Yと、その周囲に配設された帯電器32Y、現像器33Y、一次転写ローラー34Y、および感光体ドラム31Yを清掃するためのクリーナー35Yなどを有しており、感光体ドラム31Y上にY色のトナー像を作像する。現像器33Yは、感光体ドラム31Yに対向し、感光体ドラム31Yに帯電トナーを搬送する。中間転写ベルト11は、無端状のベルトであり、駆動ローラー12と従動ローラー13に張架されて矢印C方向に周回駆動される。又、従動ローラー13の近傍には、中間転写ベルト上に残留するトナーを除去するためのクリーナー21が配置されている。
【0023】
露光部10は、レーザーダイオードなどの発光素子を備え、制御部60からの駆動信号によりY〜K色の画像形成のためのレーザー光Lを発し、作像部3Y、3M、3C、3Kの各感光体ドラムを露光走査する。この露光走査により、帯電器32Yにより帯電された感光体ドラム31Y上に静電潜像が形成される。作像部3M、3C、3Kの各感光体ドラム上にも同様にして静電潜像が形成される。
【0024】
各感光体ドラム上に形成された静電潜像は、作像部3Y、3M、3C、3Kの
各現像器により現像されて各感光体ドラム上に対応する色のトナー像が形成され
る。形成されたトナー像は、作像部3Y、3M、3C、3Kの各一次転写ローラー(図1では、作像部3Yに対応する一次転写ローラーのみ符号34Yを付し、他の一次転写ローラーについては、符号を省略している。)により、中間転写ベルト11上の同じ位置で重ね合わされるように、中間転写ベルト11上にタイミングをずらして順次一次転写された後、二次転写ローラー45による静電力の作用により中間転写ベルト11上のトナー像が一括して記録シート上に二次転写される。
【0025】
トナー像が二次転写された記録シートは、さらに定着装置5に搬送され、記録シート上のトナー像(未定着画像)が、定着装置5において加熱及び加圧されて記録シートに熱定着された後、排出ローラー71により排紙トレイ72に排出される。
給紙部4は、記録シート(図1の符号Sで表す)を収容する給紙カセット41と、給紙カセット41内の記録シートを搬送路43上に1枚ずつ繰り出す繰り出しローラー42と、繰り出された記録シートを二次転写位置46に送り出すタイミングをとって記録シートを搬送するタイミングローラー44などを備えている。
【0026】
給紙カセットは、1つに限定されず、複数であってもよい。記録シートとしては、大きさや厚さの異なる用紙(普通紙、厚紙)やOHPシートなどのフィルムシートを利用できる。給紙カセットが複数ある場合には、大きさ又は厚さ又は材質の異なる記録シートを複数の給紙カセットに収納することとしてもよい。
タイミングローラー44は、中間転写ベルト11上の同じ位置で重ね合わされるように中間転写ベルト11上に一次転写されたトナー像が二次転写位置46に搬送されるタイミングに合わせて、記録シートをニ次転写位置46に搬送する。そして、二次転写位置46において、ニ次転写ローラー45により中間転写ベルト11上のトナー像が一括して記録シート上に二次転写される。
【0027】
繰り出しローラー42、タイミングローラー44等の各ローラーは、搬送モーター(不図示)を動力源とし、歯車ギヤーやベルトなどの動力伝達機構(不図示)を介して回転駆動される。この搬送モーターとしては、例えば、高精度の回転速度の制御が可能なステッピングモーターが使用される。
[2]定着装置の構成
図2は、定着装置5の構成を示す部分断面斜視図であり、図3は、その要部における断面図を示す。図3(a)は、定着装置5の横断面図を示し、図3(b)は、定着ベルト155(図3(a)の点線矩形Cで示す部分)の詳細な構造を示す部分断面図を示す。以下、図2、図3(a)、(b)を参照して定着装置5の構成の詳細について説明する。
【0028】
図2に示すように、定着装置5は、電磁誘導加熱方式の定着装置であり、定着ローラー150と、定着ベルト155と、ガイドプレート156と、加圧ローラー160と、磁束発生部170、中央サーミスター180とを備える。同図の符号Pで示す領域は、符号Sで示す記録シート(ここでは、普通紙、A4サイズとする。)が通紙されない、定着ベルト155における非通紙領域を示す。
【0029】
定着ローラー150は、長尺で円柱状の芯金152の周囲を弾性体層153で被覆されて構成され、図3(a)に示すように、定着ベルト155の周回経路(周回走行路)内側に配置されている。定着ローラー150の大きさとしては、例えば、外径36mmのものを用いることができる。
芯金152は、定着ローラー150を支持する部材であり、例えば外径が約20mmの円柱体で構成される。芯金152を構成する材料としては、例えば、アルミニウム、鉄、ステンレス等を用いることができる。
【0030】
弾性体層153は、定着ベルト155が発熱した熱を芯金152に逃がさないようにするとともに、図3(a)に示すように定着ベルト155を介して加圧ローラー160と定着ニップ(155n)を形成するための層である。弾性体層153の厚みは例えば、8mmとすることができる。弾性体層153を構成する材料としては、耐熱性及び断熱性の高いものが望ましく、例えば、シリコーンゴムやフッ素ゴム等の発砲弾性体を用いることができる。
【0031】
定着ベルト155は、無端状のベルトであり、図3(b)に示すように、整磁合金層155a、弾性体層155bと、離型層155cとが、この順に積層されて構成されている。なお、整磁合金層155aと弾性体層155bとの間にニッケルや銅等から構成される発熱層を設けることとしてもよい。
整磁合金層155aは、キュリー温度に達するまでは強磁性体で、キュリー温度に達すると常磁性体となる性質を有し、キュリー温度に達するまでは、電磁誘導により発熱して定着ベルト155を昇温させ、キュリー温度に達すると電磁誘導による定着ベルト155の昇温を抑制する層である。
【0032】
整磁合金層155aの厚みは、例えば、約30μmとすることができる。整磁合金層155aを構成する材料としては、例えば、ニッケルと鉄の合金等を用いることができる。整磁合金層155aのキュリー温度は、ニッケルと鉄との混合比率を調節することにより所望の温度に設定される。ここでは、整磁合金層155aのキュリー温度は、定着温度(例えば、約180℃)より約40℃高い温度(例えば、約220℃)に設定されているものとする。
【0033】
キュリー温度を定着温度の近傍の温度(例えば、定着温度との温度差が、光沢ムラが許容される限界値(例えば、10℃)を超えない温度(約190℃))に設定すると、定着ベルト155の温度が定着温度に達するまでに定着ベルト155の昇温速度が大きく低下し、熱定着動作を開始するまでのウォームアップ時間が長くなってしまうという不都合が生じるので、キュリー温度は、定着温度との温度差が少なくとも光沢ムラが許容される限界値を超える温度に設定するのが望ましい。
【0034】
又、キュリー温度を定着温度よりも余りにも高温に設定してしまうと、後述する印刷ジョブ中断制御処理において、定着ベルト155を昇温させて、定着ベルト155の高温側(非通紙領域側)と低温側(通紙領域側)の昇温速度の差を利用して両者の温度差がなくなるように温度制御する際に、定着温度よりかなり高温にならないと、両者の昇温速度の差が大きくならないので、温度制御のための消費電力が大きくなってしまうという不都合が生じるので、キュリー温度は、定着温度より、50℃以上高くならないように設定するのが望ましい。
又、整磁合金層155aを構成する材料としてニッケルと鉄とクロムの合金を用いることとしてもよい。
【0035】
弾性体層155bは、記録シート上のトナー像に均一かつ柔軟に熱を伝えるための層である。弾性体層155bを設けることにより、トナー像が押しつぶされたり、トナー像が不均一に溶融されたりするのを防止し、画像ノイズの発生を防止することができる。弾性体層155bの厚みは、例えば、約200μmとすることができる。弾性体層155bを構成する材料としては、耐熱性と弾性とを有するゴム材や樹脂材を用いることができる。例えば、シリコーンゴムやフッ素ゴムなどを用いることができる。
【0036】
離型層155cは、定着ベルト155の最外層をなし、定着ベルト155と記録シートとの離型性を高めるための層である。離型層155cの厚みは、5〜100μm、望ましくは10〜50μmの範囲内のものとするのがよい。離型層155cを構成する材料としては、定着温度での使用に耐えられるとともにトナーに対する離型性に優れたものを使用することができる。例えば、PFA(四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合体)、PTFE(四フッ化エチレン)、FEP(四フッ化エチレン・六フッ化エチレン共重合体)、PFEP(四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体)等のフッ素樹脂を使用することができる。
【0037】
ガイドプレート156は、周回駆動する定着ベルト155を、その周回方向に案内するためのプレートである。ガイドプレート156は、定着ベルト155の周回経路内側において、定着ベルト155を介して磁束発生部170と対向する位置に配置され、定着ベルト155の曲率に沿って湾曲し、周回駆動される定着ベルト155の内側の面と面接触することにより、定着ベルト155をその周回方向に案内しつつ、定着ベルト155と磁束発生部170との相対位置を規制する。ガイドプレート156を構成する材料としては、例えば、銅やアルミニウム等の非磁性の抵抵抗材料を用いることができる。
【0038】
なお、定着ベルト155に整磁合金層155aを形成する代わりに、ガイドプレート156又は定着ローラー150に整磁合金層155aを設け、定着ベルトには、整磁合金層155aの代わりに銅やニッケル等で構成される発熱層を設けることとしてもよい。このように構成した場合においても、定着ベルト155に整磁合金層155aを設けた場合と同様に、ガイドプレート156又は定着ローラー150を電磁誘導加熱してガイドプレート156又は定着ローラー150を介してキュリー温度に達するまで定着ベルトを昇温させ、キュリー温度に達すると、定着ベルトの昇温を抑制することができる。
【0039】
加圧ローラー160は、円柱状の芯金161の周囲に、弾性体層162を介して離型層163が積層されて構成され、定着ベルト155の周回経路の外側に配置されている。定着ベルト155の外側から定着ベルト155を介して定着ローラー150を加圧ローラー160で押圧することにより、加圧ローラー160と定着ベルト155の外表面との間に、周方向に所定幅を有する定着ニップ155nが形成される。
【0040】
芯金161は、加圧ローラー160を支持する部材であり、耐熱性と強度を有する材料から構成される。芯金161の材料としては、例えば、アルミニウム、鉄、ステンレス等を用いることができる。
弾性体層162は、シリコーンゴム、フッ素ゴム等の弾性体で、厚さ1〜20mmの範囲内の耐熱性の高い材料で構成される。離型層163は、加圧ローラー160と記録シートとの離型性を高めるための層であり、離型層155cと同様の材料及び厚さで構成することができる。加圧ローラー160の大きさとしては、例えば、外径約35mmのものを用いることができる。
【0041】
磁束発生部170は、コイルボビン171と、裾コア172と、励磁コイル173と、コア174と、カバー175とを有し、定着ベルト155の周回経路の外側で、定着ベルト155を挟んで加圧ローラー160と相対する位置を基準として、ここから周回方向のやや上流側に、定着ベルト155の幅方向に沿うように配置されている。
励磁コイル173は、定着ベルト155の整磁合金層155aを電磁誘導加熱するための磁束を発生させるものであり、コイルボビン171に巻かれている。励磁コイル173から発生する交番磁束は、コア174及び裾コア172により、定着ベルト155に導かれ、定着ベルト155の整磁合金層155aの、主に磁束発生部170に対向する部分を貫き、この部分に渦電流を発生させて整磁合金層155a自体を発熱させ、定着ベルト155を昇温させる。
【0042】
この定着ベルト155の昇温にともなって、定着ベルト155と定着ニップ155nで接触している加圧ローラー160も昇温する。定着ベルト155の幅方向の中央部付近には、定着ベルト155の表面温度を検出するための中央サーミスター180が配置されている。
制御部60は、中央サーミスター180からの検出信号に基づき定着ベルト155中央部付近の表面温度を取得し、取得した表面温度に応じて定着ベルト155の表面温度が目標温度になるように、励磁コイル173への電力供給量を制御する。
【0043】
[3]制御部の構成
図4は、制御部60の構成と制御部60の制御対象となる主構成要素との関係を示す図である。制御部60は、所謂コンピューターであって、同図に示されるように、CPU(Central Processing Unit)601、通信インターフェース(I/F)部602、ROM(Read Only Memory)603、RAM(Random Access Memory)604、画像データ記憶部605、印刷ジョブ記憶部606、温調温度記憶部607、周波数制御テーブル記憶部608、電力制御部609、キュリー温度到達判定部610などを備える。
【0044】
通信I/F部602は、LANカード、LANボードといったLANに接続するためのインターフェースである。ROM603には、画像プロセス部3、給紙部4、中央サーミスター180、IH電源190、画像読取部7、操作パネル8等を制御するためのプログラム及び後述する印刷ジョブ中断制御処理を制御するためのプログラムなどが格納されている。CPU601は、ROMに格納されている各種プログラムを実行することにより、画像プロセス部3、給紙部4、中央サーミスター180、IH電源190、画像読取部7、操作パネル8等を制御し、さらに、後述する印刷ジョブ中断制御処理を実行する。
【0045】
RAM604は、CPU601のプログラム実行時のワークエリアとして用いられる。
画像データ記憶部605は、通信I/F部602や画像読取部7を介して入力された、印刷用の画像データを記憶している。印刷ジョブ記憶部606は、通信I/F部602又は操作パネル8から入力された各印刷ジョブの印刷条件と印刷ジョブの識別子との対応関係を示す印刷ジョブリストを記憶している。各対応関係は、当該印刷ジョブの実行が完了する毎に、制御部60によって印刷ジョブリストから削除される。ここで、「印刷条件」には、記録シートの印刷枚数、記録シートのサイズの指定、記録シートの種類(普通紙、厚紙等)の指定等の情報が含まれるものとする。
【0046】
温調温度記憶部607は、後述する印刷ジョブ中断制御処理において、定着ベルト155の温度制御の対象となる各目標温度が記憶されている。具体的には、記録シートの種類が普通紙の記録シートの熱定着動作における定着温度(ここでは、180℃)とする。)、記録シートの種類が厚紙で、記録シートのサイズが大サイズ(A3サイズ)である場合の定着温度(ここでは、210℃とする。)、記録シートの種類が厚紙で、記録シートのサイズが小サイズ(A4サイズ)である場合の定着温度(ここでは、200℃とする)、整磁合金層155aのキュリー温度(ここでは、220℃とする)をそれぞれ記憶している。
【0047】
周波数制御テーブル記憶部608は、周波数制御テーブルを記憶している。「周波数制御テーブル」とは、IH電源190から励磁コイル173に供給する電力を制御するための、IH電源190のスイッチング素子の制御周波数と、当該制御周波数で制御した場合に、IH電源190から供給されると予想される供給予想電力(以下、「予想供給電力」という。)と、定着ベルト155の非通紙領域の表面温度がキュリー温度に達しているときに、当該制御周波数で制御した場合に、IH電源190から供給されると予想される供給電力(以下、「閾値供給電力」という。)との対応関係を示すテーブルのことをいう。
【0048】
ここで、各制御周波数に対応する予想供給電力は、定着ベルト155が定着温度(約180℃)に制御されている状態のときに、IH電源190のスイッチング素子において制御周波数を所定範囲内(ここでは、44〜52キロヘルツ(kHz)の範囲内)で変更設定した場合に励磁コイル173に供給される電力であり、プリンター1の製造者により、予め測定され、設定される。
【0049】
又、各制御周波数に対応する閾値供給電力」は、定着ベルト155に小サイズ(ここでは、普通紙、A4サイズとする。)の記録シートが通紙された状態のときに、その通紙領域の表面温度が定着温度(約180℃)に制御された状態で、かつ、非通紙領域の表面温度がキュリー温度に達した状態のときに、IH電源190のスイッチング素子において制御周波数を所定範囲内(ここでは、44〜52キロヘルツ(kHz)の範囲内)で変更設定した場合に励磁コイル173に供給される電力であり、予めプリンター1の製造者により測定され、設定される。
【0050】
図5は、周波数制御テーブルの具体例を示す図である。同図に示すように、閾値供給電力は、予想供給電力より低くなっている。これは、定着ベルト155の非通紙領域の表面温度がキュリー温度に達すると、当該非通紙領域が常磁性体になり、励磁コイル173から発生した磁束が当該非通紙領域に導かれなくなり、その分、励磁コイル173から発生した磁束の内、励磁コイル173に戻る磁束量が増えるため、励磁コイル173のインダクタンスが大きくなり、その結果、IH電源190から供給される電圧と電流との間に位相差が発生し、無効電力が発生するからである。
【0051】
図6は、図5の周波数制御テーブルにおける制御周波数と予想供給電力、制御周波数と閾値供給電力の各対応関係を直交座標にプロットして形成したグラフを示す。同図の符号61は、制御周波数と予想供給電力との対応関係を示すグラフを表し、同図の符号62は、制御周波数と閾値供給電力との対応関係を示すグラフを表す。さらに、同図の符号63は、定着ベルト155全体がキュリー温度(約220℃)に制御された状態のときの、制御周波数とIH電源190から励磁コイル173への供給電力(以下、「キュリー温度到達時供給電力」という。)との対応関係を示すグラフを表す。
【0052】
なお、周波数制御テーブル記憶部608は、上記対応関係を示すテーブルの代わりに、図6に示す符号61、62の各グラフに対応する両者の関係式を記憶することとしてもよい。
又、符号62で示すグラフの対応関係は、符号61と符号63でそれぞれ示すグラフから算出することとしてもよい。具体的には、各制御周波数における、予想供給電力とキュリー温度到達時供給電力との電力差が、最大通紙範囲(ここでは、A3の幅方向の長さ)に対する非通紙範囲(ここでは、A4の幅方向の長さ)の割合に応じた電力差になるように補正することにより、符号62に示すグラフを作成することとしてもよい。
【0053】
同図に示すように、制御周波数に対応する供給電力の値は、キュリー温度到達時供給電力の場合が最も低くなっており、キュリー温度に達した領域が広がるにつれて供給電力が小さくなることを示している。制御部60は、周波数制御テーブルを用いて、以下のようにして定着ベルト155に小サイズ(ここでは、普通紙、A4サイズとする。)の記録シートを通紙して熱定着動作を行っている際に、定着ベルト155の非通紙領域の表面温度がキュリー温度に達したか否かの判定を行う。
【0054】
制御部60の電力制御部609は、中央サーミスター180が検出した、定着ベルト155の中央部付近の表面温度に応じて、当該表面温度を目標温度に設定するために必要な供給電力値を算出し、当該供給電力値をIH電源190のCPUに通知し、目標温度に設定するために必要な電力を励磁コイル173に供給させる。
IH電源190のCPUは、通知された供給電力値の供給電力が、励磁コイル173に供給されるように、スイッチング素子を制御する制御周波数を決定し、決定した制御周波数で励磁コイル173に電力を供給させるとともに、決定した制御周波数を制御部60に通知する。
【0055】
制御部60のキュリー温度到達判定部610は、周波数制御テーブル記憶部608に記憶されている周波数制御テーブルを参照して、IH電源190のCPUより通知された制御周波数に対応する閾値供給電力の値と、IH電源190のCPUに通知した供給電力値の値とを比較し、IH電源190のCPUに通知した供給電力の値が、当該閾値供給電力の値以下である場合に、定着ベルト155の非通紙領域の表面温度がキュリー温度に達したと判定する。
【0056】
図7は、IH電源190の概要を示す回路図である。IH電源190は、CPU191、スイッチング素子192、コンデンサ193、コイル194、ダイオードブリッジ195、電圧検知部196、電流検知部197、コイル198、ノイズフィルター199等から構成される。上記の構成では、コンデンサ193、コイル194、励磁コイル173で共振回路が形成されている。
【0057】
CPU191は、中央サーミスター180による定着ベルト155の表面温度の検知結果に基づく制御部60からの、所定の電力供給指示(当該表面温度を目標温度に設定するため供給電力値の通知)に応じてスイッチング素子192を制御する制御周波数を決定し、決定した制御周波数で励磁コイル173に電力を供給させる。
CPU191は、電圧検知部196、電流検知部197による、励磁コイル173に供給される電圧及び電流の検知結果に基づいて、励磁コイル173に供給される電力を算出し、供給される電力が、指示された電力供給値になるように、制御周波数を調整して、指示された電力供給値の電力を供給する制御周波数を決定する。
【0058】
ダイオードブリッジ195は、交流電源200からの交流を整流し、ノイズフィルター199は、交流電源200から供給される電力に含まれる各種ノイズ成分を除去する。
図4の説明に戻って、画像読取部7は、スキャナーなどの画像入力装置から構成され、用紙等の記録シートに記載されている文字や図形などの情報を読取り、画像データを形成する。操作パネル8は、複数の入力キーと液晶表示部を備え、液晶表示部の表面にはタッチパネルが積層されている。タッチパネルからのタッチ入力又は入力キーからのキー入力により、ユーザからの指示を受取り、制御部60に通知する。
【0059】
[4]印刷ジョブ中断制御処理
次に、制御部60が行う印刷ジョブ中断制御処理の動作について説明する。図8は、上記動作を示すフローチャートである。なお、ここでは、記録シートの種類は全て、普通紙とする。
制御部60は、定着装置5のウォームアップ終了後、通信I/F部602又は操作パネル8から小サイズ(ここでは、A4サイズとする)の記録シートの印刷処理を指示する印刷ジョブが入力されると、当該印刷ジョブに係る小サイズの印刷処理を開始して印刷枚数のカウントを開始し(ステップS801)、印刷ジョブ記憶部606から印刷ジョブリストを取得し、当該印刷ジョブリストを参照して(ステップS802)、実行中の印刷ジョブの次に実行すべき印刷ジョブが有るか否かを判定する(ステップS803)。
【0060】
次に実行すべき印刷ジョブが有る場合には(ステップS803:YES)、制御部60は、当該印刷ジョブの印刷条件を参照して、当該印刷ジョブに係る記録シートのサイズ(定着ベルト155の幅方向のサイズ)が、印刷処理中の記録シートのサイズより大きいか否かを判定する(ステップS805)。
ステップS805の判定結果が肯定的である場合(ステップS805:YES)、制御部60は、周波数制御テーブル記憶部608に記憶されている周波数制御テーブルを参照して、IH電源190に対する、定着ベルト155の表面温度を定着温度(ここでは、180℃とする。)に維持するために必要な供給電力値の通知に対して、IH電源190から通知される制御周波数に対応する閾値供給電力の値と、IH電源190に通知した供給電力値の値とを比較することにより、定着ベルト155の非紙領域の表面温度がキュリー温度に達したか否かを判定する(ステップS806)。
【0061】
定着ベルト155の非紙領域の表面温度がキュリー温度に達した場合には(ステップS806:YES)、制御部60は、現在実行中の印刷ジョブが終了したときに次の印刷ジョブの実行を抑止するか否かを判定するための実行抑止フラグを、当該実行を抑止することを示す「オン」に設定し、印刷処理中の印刷ジョブの印刷枚数と、当該印刷ジョブの印刷条件の示す印刷枚数とに基づいて、当該印刷ジョブにおける印刷残枚数(P)を算出し(ステップS808)、Pがキュリー温度到達可能枚数(P0)より少ないか否かを判定する(ステップS809)。
【0062】
ここで、「キュリー温度到達可能枚数」とは、印刷処理において、1枚熱定着処理を行う間に光沢ムラが生じない限界温度(ここでは、10℃とし、以下、「Δt」という。)ずつ、定着ベルト155の表面温度を昇温させた場合に、定着温度(ここでは、180℃とする。)から整磁合金層155aのキュリー温度(ここでは、220℃とする。)に達するまでに要する印刷枚数(ここでは、4枚とする。)のことをいう。
【0063】
従って、Pがキュリー温度到達可能枚数以上であれば、1回熱定着処理を行う間に限界温度(Δt)ずつ、定着ベルト155の表面温度を昇温させる(この場合、定着ベルト155の非通紙領域の表面温度は、既にキュリー温度に達しているので、非通紙領域は、昇温されず、定着ベルト155の通紙領域の表面温度のみがΔtずつ昇温されることになる。)ことにより、印刷処理中の印刷ジョブが終了するまでに、キュリー温度に達している定着ベルト155の非通紙領域と通紙領域との間の表面温度の温度差を解消できることになり、次の印刷ジョブが大サイズ(ここでは、A3サイズとする。)であっても、連続して印刷ジョブを実行しても光沢ムラが生じないようにすることができる。
【0064】
Pがキュリー温度到達可能枚数(P0)より少ない場合には(ステップS809:YES)、制御部60は、後述するジョブ間印刷処理中断温度差調整処理を実行し(ステップS810)、Pがキュリー温度到達可能枚数(P0)以上である場合には(ステップS809:NO)、制御部60は、後述するジョブ間印刷処理非中断温度差調整処理を実行する(ステップS811)。
【0065】
ステップS806の判定結果が否定的であり(ステップS806:NO)、印刷処理中であった印刷ジョブが終了すると(ステップS807:YES)、制御部60は、次の印刷ジョブを実行する前の、定着ベルト155の通紙領域と非通紙領域との間の表面温度の温度差を調整する処理を抑止して、次の印刷ジョブを実行する(ステップS812)。
又、ステップS805の判定結果が否定的である場合には(ステップS805:NO)、制御部60は、ステップS812の処理に移行し、ステップS803の判定結果が否定的であり(ステップS803:NO)、印刷処理中であった印刷ジョブが終了すると(ステップS804:YES)、制御部60は、印刷ジョブ中断制御処理の動作を終了する。
【0066】
次に制御部60が行うジョブ間印刷処理中断温度差調整処理の動作について説明する。図9は、上記動作を示すフローチャートである。制御部60は、実行中の印刷ジョブにおける印刷処理が未処理の残枚数(P)の各記録シートについて、各1枚の熱定着処理を行う間に限界温度(Δt)だけ定着ベルト155の表面温度を昇温させるように、IH電源190を用いて定着ベルト155の表面温度の制御を行うことにより、定着ベルト155の通紙領域の表面温度を昇温させる(ステップS901)。
【0067】
そして、現在実行中の印刷ジョブが終了すると(ステップS902:YES)、制御部60は、実行抑止フラグを参照する。当該実行抑止フラグは、ステップS808の処理で「オン」に設定されているので、制御部60は、印刷処理を中断して、次の印刷ジョブの実行を抑止し(ステップS903)、定着ベルト155の表面温度(t)(通紙領域の表面温度(t))がキュリー温度(t0)に達するまで当該表面温度の昇温動作を継続する(ステップS904)。
【0068】
定着ベルト155の表面温度(t)がキュリー温度(t0)に達すると(ステップS905:YES)、制御部60は、実行抑止フラグを、次の印刷ジョブの実行の抑止が解除されたことを示す「オフ」に設定し、次の印刷ジョブの実行抑止を解除し、次の印刷ジョブの印刷処理を開始する(ステップS906)。
そして、制御部60は、各1枚の熱定着処理を行う間に限界温度(Δt)だけ定着ベルト155の表面温度を下降させるように、IH電源190から励磁コイル173への電力供給量を制御する(ステップS907)。
【0069】
制御部60は、定着ベルト155の表面温度(t)が、目標定着温度(ここでは、180℃とする。)に達するまで(ステップS908:YES)、ステップ907の処理を繰り返す。
図10は、上記のジョブ間印刷処理中断温度差調整処理の実行によって、定着ベルト155の表面温度(t)の温度調整が行われる様子を模式的に示した図である。同図は、印刷処理中の印刷ジョブの印刷残枚数(P)が1枚の場合の例を示している。同図に示すように、印刷処理中の印刷ジョブが終了するまでには、残枚数(P)が1枚であるので、当該印刷ジョブが終了するまでに定着ベルト155の通紙領域の表面温度が目標定着温度(180℃)よりΔt(10℃)だけ、昇温される。
【0070】
この時点では、定着ベルト155の通紙領域の表面温度は、190℃であり、キュリー温度(220℃)に達していないので、キュリー温度に達するまで次の印刷ジョブの実行が抑止され、当該実行が抑止されている間、定着ベルト155の通紙領域の表面温度の昇温動作が継続される。この場合における昇温速度は、キュリー温度(220℃)への到達時期を早めるため、熱定着処理中の昇温速度(1枚の熱定着処理を行う間にΔt(10℃)だけ昇温する速度)より速くなるように、制御部60によって温度制御される。
【0071】
そして、定着ベルト155の通紙領域の表面温度がキュリー温度(220℃)に達すると、次の印刷ジョブ(印刷枚数4枚の印刷ジョブ)の実行抑止が解除され、次の印刷ジョブの印刷処理が開始され、定着ベルト155の表面温度が元の目標定着温度(180℃)まで戻るまで、各1枚の熱定着処理が行われる間に、Δt(10℃)だけ、定着ベルト155の表面温度が下降するように制御部60によって温度制御される。
【0072】
このように、印刷ジョブ中断制御処理においては、実行中の印刷ジョブが終了するまでの間に、光沢ムラが生じない温度範囲で定着ベルト155の表面温度が予めある程度昇温された後に、次の印刷ジョブとの間において昇温動作が継続され、定着ベルト155における通紙領域と非通紙領域との間の表面温度の温度差が解消されるので、印刷ジョブ間の昇温動作の時間をその分、短縮することができ、熱定着ジョブ実行の生産性を高めることができる。
【0073】
さらに、定着ベルト155の表面温度がキュリー温度まで昇温され、通紙領域と非通紙領域との間の表面温度の温度差が解消された後は、次の印刷ジョブの実行中に光沢ムラが生じない温度範囲で定着ベルト155の表面温度が元の目標定着温度まで下降するように温度制御されるので、必要以上に高い温度で、印刷ジョブにおける熱定着動作が行われ、電力が過剰に消費されるのを有効に防止することができる。
【0074】
次に、制御部60が行うジョブ間印刷処理非中断温度差調整処理の動作について説明する。図11は、上記動作を示すフローチャートである。制御部60は、実行中の印刷ジョブにおける印刷処理が未処理の残枚数(P)の各記録シートについて、各1枚の熱定着処理を行う間に限界温度(Δt)だけ定着ベルト155の表面温度を昇温させるように、IH電源190を用いて定着ベルト155の表面温度の制御を行うことにより、定着ベルト155の通紙領域の表面温度を昇温させる(ステップS1101)。
【0075】
定着ベルト155の表面温度(t)(通紙領域の表面温度)がキュリー温度(t0)に達すると(ステップS1102:YES)、制御部60は、実行抑止フラグを「オフ」に設定し、現在印刷処理中の印刷ジョブが終了するまで定着ベルト155の表面温度をキュリー温度(t0)に維持するように温度制御する(ステップS1103、ステップS1104:NO)。
【0076】
そして、実行中の印刷ジョブが終了するすると(ステップS1104:YES)、制御部60は、実行抑止フラグを参照する。当該実行抑止フラグは、ステップS1103の処理において、「オフ」に設定されているので、制御部60は、次の印刷ジョブの印刷処理を開始し(ステップS1105)、各1枚の熱定着処理を行う間に限界温度(Δt)だけ、定着ベルト155の表面温度を下降させるように、IH電源190から励磁コイル173への電力供給量を制御する(ステップS1106)。
【0077】
制御部60は、定着ベルト155の表面温度(t)が、目標定着温度(ここでは、180℃とする。)に達するまで(ステップS1107:YES)、ステップ1106の処理を繰り返す。
図12は、上記のジョブ間印刷処理非中断温度差調整処理の実行によって、定着ベルト155の表面温度(t)の温度調整が行われる様子を模式的に示した図である。同図は、印刷処理中の印刷ジョブの印刷残枚数(P)が4枚の場合の例を示している。同図に示すように、印刷処理中の印刷ジョブが終了するまでには、残枚数(P)が4枚あるので、当該印刷ジョブが終了するまでに定着ベルト155の通紙領域の表面温度が、1枚熱定着処理が行われるごとにΔt、4枚分の熱定着処理が行われる間に4×Δt(40℃)だけ、目標定着温度(180℃)より昇温される。
【0078】
これにより、実行中の印刷ジョブの熱定着処理が行われている間に定着ベルト155の通紙領域の表面温度は、キュリー温度(220℃)まで昇温されるので、次の印刷ジョブの実行が抑止されることなく、連続的に次の印刷ジョブの印刷処理が開始される。そして、定着ベルト155の表面温度が元の目標定着温度(180℃)まで戻るまで、各1枚の熱定着処理が行われる間に、Δtだけ、定着ベルト155の表面温度が下降するように制御部60によって温度制御される。
【0079】
このように、ジョブ間印刷処理非中断温度差調整処理においては、実行中の印刷ジョブが終了するまでの間に、光沢ムラが生じない温度範囲で定着ベルト155の表面温度が昇温され、その結果、定着ベルト155における通紙領域と非通紙領域との間の表面温度の温度差が解消されるので、次の印刷ジョブの実行を抑止することなく、熱定着ジョブ実行の生産性を高めることができる。
【0080】
さらに、定着ベルト155の表面温度がキュリー温度まで昇温され、通紙領域と非通紙領域との間の表面温度の温度差が解消された後は、次の印刷ジョブの実行中に光沢ムラが生じない温度範囲で定着ベルト155の表面温度が元の目標定着温度まで下降するように温度制御されるので、必要以上に高い温度で、印刷ジョブにおける熱定着動作が行われ、電力が過剰に消費されるのを有効に防止することができる。
(変形例)
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明してきたが、本発明が上述の実施の形態に限定されないのは勿論であり、以下のような変形例を実施することができる。
【0081】
(1)本実施の形態では、定着ベルト155の非紙領域がキュリー温度に達した場合に、定着ベルト155の通紙領域と非通紙領域との間の表面温度の温度差を調整する処理を行うこととしたが、定着ベルト155の非紙領域が少なくとも、光沢ムラが生じる温度に達したとき(非通紙領域の表面温度と通紙領域の表面温度(定着温度)との温度差が、光沢ムラが生じない限界温度(Δt)を超えたとき)に、両者の間の温度差を調整する処理を行うこととしてもよい。
【0082】
具体的には、定着ベルト155の非通紙領域の近傍に温度センサーを設けて、制御部60が当該非通紙領域における定着ベルト155の表面温度を監視することとし、図8の印刷ジョブ中断制御処理において、ステップS806の判定処理をする代わりに、非通紙領域の表面温度が、(目標定着温度+Δt)を超えたか否か(定着ベルト155における「非通紙領域」と「通紙領域」との間の表面温度の温度差が限界値(Δt)を超えたか否か)を判定する処理を行い、超えたときに、図8のステップS808〜811の処理を行うこととする。
【0083】
又、ステップ810、811において、「tがt0に到達した」とき(ステップS905:YES、ステップS1102:YES)ではなく、「上記の温度差が限界値以内になった」ときに、ステップS906〜ステップS908の処理、ステップS1103〜ステップS1107の処理をそれぞれ行うこととする。
これにより、両者の温度差が光沢ムラを生じる温度差に達した時に、迅速に温度差を調整し、当該温度差に起因する光沢ムラの発生を防ぐことができる。
【0084】
(2)本実施の形態では、図9のステップS901、ステップS907、図11のステップS1101、ステップS1106の各処理において、1枚の熱定着処理を行う間に定着ベルトの表面温度を上昇又は下降させる温度を一律にΔtとしたが、限界温度を超えない範囲で、温度上昇又は下降量を変動させて表面温度を上昇又は下降させることとしてもよい。
【0085】
(3)本実施の形態では、制御部60のキュリー温度到達判定部610が、IH電源のCPU191から通知された制御周波数に基づいて定着ベルト155の非通紙領域の表面温度がキュリー温度に達したか否かを判定することとしたが、キュリー温度到達判定部610を介して当該判定を行う代わりに、定着ベルト155の非通紙領域に温度センサー(例えば、サーミスター)を配置することとし、当該温度センサーによって当該非通紙領域の表面温度を検出することにより、当該非通紙領域の表面温度がキュリー温度に達したか否かを判定することとしてもよい。
【0086】
(4)本実施の形態では、図8の印刷ジョブ中断制御処理において、定着ベルト155の非紙領域がキュリー温度に達していない場合には、定着ベルト155の温度調整は行わないこととしたが、次の印刷ジョブの記録シートの種類が、当該印刷ジョブの直前の、実行中の印刷ジョブの記録シートよりも厚さが厚い厚紙の記録シートであって、定着不良を防止するため、直前の場合よりも高温の定着で熱定着を行う必要がある場合には、定着ベルト155の温度を昇温させて定着不良が発生しないように制御することとしてもよい。
【0087】
図13は、上記の温度調整を合わせて実行する印刷ジョブ中断制御処理の動作の変形例を示すフローチャートである。同図において図8に示す印刷ジョブ中断制御処理と同一の処理については、図8の処理ステップ番号と同一の番号を付与し、説明を省略するとともに、フローチャート図を簡潔に表現するため、一部の処理ステップ番号については、処理内容の表示を省略している。
【0088】
以下、図8の処理内容と異なる処理について説明する。制御部60は、ステップS805の判定結果が肯定的である場合に(ステップS805:YES)、印刷処理中の印刷ジョブの印刷条件と、次に実行すべき印刷ジョブの印刷条件とを参照し、次に実行すべき印刷ジョブの記録シートの種類(用紙種)が、印刷処理中の印刷ジョブの記録シート(普通紙の記録シート)よりも厚みが厚い厚紙であるか否かを判定する(ステップS1301)。
【0089】
厚紙である場合には(ステップS1301:YES)、制御部60は、実行抑止フラグを「オン」に設定し(ステップS1302)、印刷処理中の印刷ジョブの印刷枚数と、当該印刷ジョブの印刷条件の示す印刷枚数とに基づいて、当該印刷ジョブにおける印刷残枚数(P)を算出し(ステップS1303)、ステップS806の処理と同様に定着ベルト155の非紙領域の表面温度がキュリー温度に達したか否かを判定する(ステップS1304)。
【0090】
定着ベルト155の非紙領域の表面温度がキュリー温度に達した場合には(ステップS1304:YES)、制御部60は、Pがキュリー温度到達可能枚数(P0)より少ないか否かを判定する(ステップS1305)。そして、ステップS1305の判定結果が肯定的である場合には(ステップS1305:YES)、制御部60は、後述するジョブ間印刷処理中断厚紙大用温度差調整処理1を実行し(ステップS1306)、ステップS1305の判定結果が否定的である場合には(ステップS1305:NO)、制御部60は、後述するジョブ間印刷処理非中断厚紙大用温度差調整処理1を実行する(ステップS1307)。
【0091】
ステップS1304において、定着ベルト155の非紙領域の表面温度がキュリー温度に達していない場合には(ステップS1304:NO)、制御部60は、Pが厚紙大定着温度到達可能枚数(P1)より少ないか否かを判定する(ステップS1308)。
ここで、「厚紙大定着温度到達可能枚数」とは、1枚熱定着処理を行う間に光沢ムラが生じない限界温度(Δt)ずつ、定着ベルト155の表面温度を昇温させた場合に、実行中の印刷ジョブの記録シートの定着温度(ここでは、180℃とする。)から厚紙大サイズ(ここでは、A3サイズとする。)用の定着温度(ここでは、210℃とする。)に達するまでに要する印刷枚数(ここでは、3枚とする。)のことをいう。
【0092】
ステップS1308の判定結果が肯定的である場合には(ステップS1308:YES)、制御部60は、後述するジョブ間印刷処理中断厚紙大用温度差調整処理2を実行し(ステップS1309)、ステップS1308の判定結果が否定的である場合には(ステップS1308:NO)、制御部60は、後述するジョブ間印刷処理非中断厚紙大用温度差調整処理2を実行する(ステップS1310)。
【0093】
一方、制御部60は、ステップS805の判定結果が否定的である場合に(ステップS805:NO)、ステップS1301の処理と同様にして次に実行すべき印刷ジョブの記録シートの種類(用紙種)が、印刷処理中の印刷ジョブの記録シートよりも厚みが厚い厚紙であるか否かを判定し(ステップS1311)、厚紙である場合に(ステップS1311:YES)、制御部60は、実行抑止フラグを「オン」に設定し(ステップS1312)、印刷処理中の印刷ジョブの印刷枚数と、当該印刷ジョブの印刷条件の示す印刷枚数とに基づいて、当該印刷ジョブにおける印刷残枚数(P)を算出する(ステップS1313)。
【0094】
次に、制御部60は、算出したPが厚紙小定着温度到達可能枚数(P2)より少ないか否かを判定する(ステップS1314)。ここで、「厚紙小定着温度到達可能枚数」とは、1枚熱定着処理を行う間に光沢ムラが生じない限界温度(Δt)ずつ、定着ベルト155の表面温度を昇温させた場合に、実行中の印刷ジョブの記録シートの定着温度(ここでは、180℃とする。)から厚紙小サイズ(ここでは、A4サイズとする。)用の定着温度(ここでは、200℃とする。)に達するまでに要する印刷枚数(ここでは、2枚とする。)のことをいう。
【0095】
ステップS1314の判定結果が肯定的である場合には(ステップS1314:YES)、制御部60は、後述するジョブ間印刷処理中断厚紙小用温度差調整処理を実行し(ステップS1315)、ステップS1314の判定結果が否定的である場合には(ステップS1314:NO)、制御部60は、後述するジョブ間印刷処理非中断厚紙小用温度差調整処理を実行する(ステップS1316)。
【0096】
次に、制御部60が行うジョブ間印刷処理中断厚紙大用温度差調整処理1の動作について説明する。図14は、上記動作を示すフローチャートである。ステップS1401〜ステップS1406までの処理は、図9のジョブ間印刷処理中断温度差調整処理の動作のステップS901〜ステップS906の処理と同様であるので説明を省略する。
制御部60は、ステップS1406の処理を行った後、IH電源190から励磁コイル173への供給電力量を制御して、定着ベルト155の表面温度(t)がキュリー温度(t0)に維持されるように温度制御する(ステップS1407)。
【0097】
次に制御部60が行うジョブ間印刷処理非中断厚紙大用温度差調整処理1の動作について説明する。図15は、上記動作を示すフローチャートである。ステップS1501〜ステップS1505までの処理は、図11のジョブ間印刷処理非中断温度差調整処理の動作のステップS1101〜ステップS1105の処理と同様であるので説明を省略する。又、ステップS1506の処理は、図14のステップS1407の処理と同様であるので説明を省略する。
【0098】
次に制御部60が行うジョブ間印刷処理中断厚紙大用温度差調整処理2の動作について説明する。図16は、上記動作を示すフローチャートである。ステップS1601〜ステップS1603の処理及びステップS1606の処理は、図9のステップS901〜ステップS903及びステップS906と同様であるので説明を省略する。
制御部60は、ステップS1604において、定着ベルト155の表面温度(t)(通紙領域の表面温度)が厚紙大用の定着温度(t1)に達するまで当該表面温度の昇温動作を継続し、定着ベルト155の表面温度(t)が厚紙大用の定着温度(t1)に達すると(ステップS1605:YES)、ステップS1606の処理に移行し、その後、ステップS1607において、IH電源190から励磁コイル173への供給電力量を制御して、定着ベルト155の表面温度が厚紙大用の定着温度(t1)に維持されるように温度制御する。
【0099】
次に制御部60が行うジョブ間印刷処理非中断厚紙大用温度差調整処理2の動作について説明する。図17は、上記動作を示すフローチャートである。ステップS1701、ステップS1704、ステップS1705の処理は、図11のジョブ間印刷処理非中断温度差調整処理の動作のステップS1101、ステップS1104、ステップS1105の処理と同様であるので説明を省略する。
【0100】
制御部60は、ステップS1702において、定着ベルト155の通紙領域の表面温度(t)が厚紙大用の定着温度(t1)に達すると(ステップS1702:YES)、実行抑止フラグを「オフ」に設定し、印刷処理中の印刷ジョブが終了するまで定着ベルト155の通紙領域の表面温度(t)を厚紙大用の定着温度(t1)に維持するように温度制御する(ステップS1703、ステップS1704:NO)。又、ステップS1706の処理は、図16のジョブ間印刷処理中断厚紙大用温度差調整処理2の動作のステップS1607の処理と同様であるので説明を省略する。
【0101】
次に、制御部60の行うジョブ間印刷処理中断厚紙小用温度差調整処理の動作について説明する。図18は、上記動作を示すフローチャートである。ステップS1801〜ステップS1803の処理及びステップS1806の処理は、図9のステップS901〜ステップS903及びステップS906と同様であるので説明を省略する。
制御部60は、ステップS1804において、定着ベルト155の表面温度(t)(通紙領域の表面温度)が厚紙小用の定着温度(t2)に達するまで当該表面温度の昇温動作を継続し、定着ベルト155の表面温度(t)が厚紙小用の定着温度(t2)に達すると(ステップS1805:YES)、ステップS1806の処理に移行し、その後、ステップS1807において、IH電源190から励磁コイル173への供給電力量を制御して、定着ベルト155の表面温度が厚紙小用の定着温度(t2)に維持されるように温度制御する。
【0102】
次に制御部60が行うジョブ間印刷処理非中断厚紙小用温度差調整処理の動作について説明する。図19は、上記動作を示すフローチャートである。ステップS1901、ステップS1904、ステップS1905の処理は、図11のジョブ間印刷処理非中断温度差調整処理の動作のステップS1101、ステップS1104、ステップS1105の処理と同様であるので説明を省略する。
【0103】
制御部60は、ステップS1902において、定着ベルト155の通紙領域の表面温度(t)が厚紙小用の定着温度(t2)に達すると(ステップS1902:YES)、実行抑止フラグを「オフ」に設定し、印刷処理中の印刷ジョブが終了するまで定着ベルト155の通紙領域の表面温度(t)を厚紙小用の定着温度(t2)に維持するように温度制御する(ステップS1903、ステップS1904:NO)。又、ステップS1907の処理は、図18のジョブ間印刷処理中断厚紙小用温度差調整処理の動作のステップS1807の処理と同様であるので説明を省略する。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明は、電磁誘導により発熱し、定着温度よりも高いキュリー温度を有する整磁合金層を含む発熱体を用いて、記録シート上の未定着画像の熱定着を行う、プリンター、複写機等の画像形成装置に関し、特に、所定幅の記録シートを連続通紙した場合に生じる通紙領域と非通紙領域との間の温度差に起因する光沢ムラの発生を防止する技術として利用できる。
【符号の説明】
【0105】
1 プリンター
3 画像プロセス部
3Y〜3K 作像部
4 給紙部
5 定着装置
7 画像読取部
8 操作パネル
10 露光部
11 中間転写ベルト
12 従動ローラー
13 駆動ローラー
21、35Y クリーナー
31Y 感光体ドラム
32Y 帯電器
33Y 現像器
34Y 一次転写ローラー
41 給紙カセット
42 繰り出しローラー
43 搬送路
44 タイミングローラー
45 二次ローラーーラー
46 二次転写位置
60 制御部
71 排出ローラー
72 排紙トレイ
150 定着ローラー
155 定着ベルト
156 ガイドプレート
160 加圧ローラー
170 磁束発生部
180 中央サーミスター
190 IH電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁誘導により発熱し、定着温度よりも高いキュリー温度を有する整磁合金層を含み、キュリー温度に近づく程、電磁誘導による昇温速度が低下する発熱体を用いて、記録シート上の未定着画像の熱定着を行い、印刷ジョブ実行中に前記発熱体における通紙領域に対応する領域の温度とその非通紙領域に対応する領域の温度との温度差が、後者の温度上昇により光沢ムラが許容される限界値を超えた場合に、当該印刷ジョブの熱定着が終了後、当該温度差が前記限界値以内になるまで次の印刷ジョブの熱定着の実行を抑止する画像形成装置であって、
印刷ジョブ実行中に、前記非通紙領域に対応する領域の温度上昇により、前記温度差が前記限界値を超えたか否かを判定する判定手段と、
前記限界値を超えた場合に、その後、実行中の印刷ジョブが終了するまでの期間内において、前記発熱体を定着温度より昇温させることにより、その通紙領域に対応する領域の温度を、その非通紙領域に対応する領域より速い昇温速度で昇温させる温度制御手段と、
前記温度制御手段による昇温により、前記印刷ジョブの熱定着が終了するまでの期間内に、前記温度差が前記限界値以内に戻った場合には、次の印刷ジョブの熱定着の実行の抑止を解除する解除手段と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記温度制御手段は、前記印刷ジョブの熱定着が終了するまでの期間内に、前記温度差が前記限界値以内に戻らなかった場合には、前記印刷ジョブの熱定着が終了した後、前記温度差が前記限界値以内に戻るまで前記発熱体をさらに昇温させ、
前記解除手段は、前記発熱体をさらに昇温させたことにより、前記温度差が前記限界値以内に戻った場合に、次の印刷ジョブの熱定着の実行の抑止を解除する
ことを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記温度制御手段は、前記温度差が前記限界値以内になるまで前記印刷ジョブの熱定着が終了するまでの期間内において、記録シートについて熱定着が行われる毎に、各熱定着が行われている期間の昇温量が、前記限界値を超えないように、段階的に前記発熱体を昇温させる
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記温度制御手段は、前記次の印刷ジョブの熱定着の実行開始後、当該熱定着が終了するまでの期間内において、記録シートについて熱定着が行われる毎に、各熱定着が行われている期間の温度下降量が、前記限界値を超えないように、段階的に前記発熱体の温度を、定着温度になるまで下降させる
ことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の画像形成装置。
【請求項5】
印刷ジョブの記録シートの厚みを特定する厚み特定手段を備え、
前記温度制御手段は、実行中の印刷ジョブの記録シートの厚みが、次の印刷ジョブの記録シートの厚みよりうすい場合に、実行中の印刷ジョブの熱定着が終了するまでの期間内において、記録シートについて熱定着が行われる毎に、各熱定着が行われている期間の昇温量が、前記限界値を超えないように、段階的に前記発熱体を昇温させ、
前記解除手段は、前記温度制御手段による昇温により、前記印刷ジョブの熱定着が終了するまでの期間内に、前記発熱体の温度が、実行中の印刷ジョブに係る定着温度より高い、次の印刷ジョブの記録シートの熱定着に適した所定の温度になった場合には、次の印刷ジョブの熱定着の実行の抑止を解除する
ことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記温度制御手段は、前記印刷ジョブの熱定着が終了するまでの期間内に、前記発熱体の温度が前記所定の温度にならなかった場合には、前記発熱体の温度が前記所定の温度になるまで前記発熱体をさらに昇温させ、
前記解除手段は、さらに昇温させた前記発熱体の温度が前記所定の温度になった場合に、次の印刷ジョブの熱定着の実行の抑止を解除する
ことを特徴とする請求項5記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記判定手段は、前記非通紙領域に対応する領域の温度がキュリー温度に達した場合に、前記温度差が前記限界値を超えたと判定する
ことを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の画像形成装置。
【請求項8】
印刷ジョブの記録シートのサイズを特定するサイズ特定手段を備え、
前記温度制御手段は、実行中の印刷ジョブと次の印刷ジョブの記録シートのサイズが同一の場合には、前記発熱体を定着温度より昇温させる昇温動作を抑止し、
前記解除手段は、次の印刷ジョブの熱定着の実行の抑止を解除する
ことを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2013−44785(P2013−44785A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−180508(P2011−180508)
【出願日】平成23年8月22日(2011.8.22)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】