説明

留置針組立体

【課題】留置針組立体を血管内に挿入し、位置を固定した状態で、外針が目的部位に留置され、内針が抜去された後、さらに外針を前進させた際に外針が不本意に撓むのを防止することができる留置針組立体を提供すること。
【解決手段】留置針組立体1は、先端に鋭利な針先を有する内針4と、内針の基端部に固定された内針ハブと、可撓性を有し、内針4が挿通される内腔21を有する管体で構成された外針2と、外針2の基端部に固定された外針ハブと、外針2を補強する補強材8とを備えている。そして、補強材8は、外力を付与しない自然状態で直線状をなす1本の線状体で構成され、内針4とともに外針2の内腔21を挿通している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、留置針組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
患者に対し輸液を行う際などには、輸液ラインと接続される留置針組立体を患者の血管に穿刺し、留置してこれを行う。
【0003】
このような留置針組立体は、可撓性を有する中空の外針と、外針の基端に固着された外針ハブと、外針内に挿入され、先端に鋭利な針先を有する内針と、内針の基端に固着された内針ハブとで構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
この留置針組立体を患者の血管に穿刺する際には、内針が外針内に挿入され、内針の針先を外針の先端から突出させた組立状態で穿刺操作を行う。
【0005】
そして、内針の針先が血管内に到達すると、針先の開口より流入した血液は、内針の内腔を通り、透明な内針ハブの内部に流入する(フラッシュバック)。これにより、内針が血管を確保したことを確認することができる。
【0006】
このフラッシュバックを確認したら、内針をガイドとして、外針を進め、当該外針を血管内に挿入する。
【0007】
次いで、内針を外針から抜去して、外針ハブに輸液ラインのコネクタを接続し、輸液剤を投与する。
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の留置針組立体では、外針は、可撓性を有するものであるため、内針が抜去されるとコシがなくなり、留置中に不本意に外力が加わると撓んでしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−232916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、留置針組立体を血管内に挿入し、位置を固定した状態で、外針が目的部位に留置され、内針が抜去された後、さらに外針を前進させた際に外針が不本意に撓むのを防止することができる留置針組立体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような目的は、下記(1)〜(8)の本発明により達成される。
(1) 先端に鋭利な針先を有する内針と、
前記内針の基端部に固定された内針ハブと、
可撓性を有し、前記内針が挿通される中空部を有する管体で構成された外針と、
前記外針の基端部に固定された外針ハブと、
前記外針を補強する線状体とを備えることを特徴とする留置針組立体。
【0012】
(2) 前記線状体は、外力を付与しない自然状態で直線状をなすものである上記(1)に記載の留置針組立体。
【0013】
(3) 前記線状体は、前記外針の中心軸に対し偏心して配置される上記(1)または(2)に記載の留置針組立体。
【0014】
(4) 前記線状体は、前記外針に対しその長手方向に沿って移動可能に支持されており、
前記線状体の基端部に固定された線状体用ハブをさらに備える上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の留置針組立体。
【0015】
(5) 前記線状体は、前記外針に対し固定されている上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の留置針組立体。
【0016】
(6) 前記線状体は、前記内針とともに前記中空部内を挿通している上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の留置針組立体。
【0017】
(7) 前記内針は、前記線状体がその軸に対して垂直な方向にずれることを防止する支持部を有する上記(6)に記載の留置針組立体。
【0018】
(8) 前記外針は、前記中空部から独立して形成され、前記線状体が挿通される線状体用中空部を有する上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の留置針組立体。
【0019】
本発明の留置針組立体では、前記線状体は、その外径が長手方向に沿って一定のものであるのが好ましい。
【0020】
本発明の留置針組立体では、前記線状体は、その外径が先端方向に向かって漸減する部分を有するのが好ましい。
【0021】
本発明の留置針組立体では、前記線状体は、その横断面形状が円形のものであるのが好ましい。
【0022】
本発明の留置針組立体では、前記線状体は、金属材料で構成されているのが好ましい。
本発明の留置針組立体では、前記内針ハブと前記外針ハブとは、前記線状体用ハブを介して連結可能であるのが好ましい。
【0023】
本発明の留置針組立体では、前記内針および前記線状体は、それぞれ独立して前記外針から抜去可能であるのが好ましい。
【0024】
本発明の留置針組立体では、前記支持部は、前記内針の外周部にその長手方向に沿って形成された溝で構成されているのが好ましい。
【0025】
本発明の留置針組立体では、前記外針を前記線状体ごと押圧する押圧部材をさらに備えるのが好ましい。
【0026】
本発明の留置針組立体では、前記押圧部材は、前記線状体に対し回動可能に支持されているのが好ましい。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、留置針組立体の使用過程、すなわち、留置針組立体を血管内に挿入し、位置を固定した状態で、外針が目的部位に留置され、内針が抜去された状態となる。このとき、内針が抜去された外針には線状体が残留しているため、外針を前進させても、外針が不本意に撓むのを防止することができる。これにより、例えば外針が撓んで目的部位から抜け出してしまうような不具合を確実に防止することができ、よって、外針の目的部位への留置状態が確実に維持される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の留置針組立体(第1実施形態)の使用過程を順に示す斜視図である。
【図2】本発明の留置針組立体(第1実施形態)の使用過程を順に示す斜視図である。
【図3】本発明の留置針組立体(第1実施形態)の使用過程を順に示す斜視図である。
【図4】本発明の留置針組立体(第1実施形態)の使用過程を順に示す斜視図である。
【図5】図1中のA−A線断面図である。
【図6】図1中の一点鎖線で囲まれた領域[B]の縦断面図である。
【図7】本発明の留置針組立体(第2実施形態)の先端側の部分を示す横断面斜視図である。
【図8】本発明の留置針組立体(第3実施形態)の使用過程を順に示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の留置針組立体を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0030】
<第1実施形態>
図1〜図4は、それぞれ、本発明の留置針組立体(第1実施形態)の使用過程を順に示す斜視図、図5は、図1中のA−A線断面図、図6は、図1中の一点鎖線で囲まれた領域[B]の縦断面図である。なお、以下では、説明の都合上、図1〜図6中の右上側を「基端」、左下側を「先端」と言う。
【0031】
図1〜図4に示すように、留置針組立体1は、留置針11と、穿刺針12と、中間構造体13とを備え、図1、図2に示す第1の状態(組立状態)と、図3に示す第2の状態(中間状態)と、図4に示す第3の状態(抜去状態)とを取り得るものである。第1の状態は、留置針11と中間構造体13と穿刺針12とを先端側からこの順に組み立てられた状態である。第2の状態は、組立状態から穿刺針12を抜去した状態である。第3の状態は、第2の状態から中間構造体13を抜去した状態である。
【0032】
留置針11は、中空の外針2と、外針2の基端部に固定された外針ハブ3とを有している。穿刺針12は、外針2内に挿通される内針4と、内針4の基端部に固定された内針ハブ5と、内針ハブ5に接続された把持部材7とを有している。中間構造体13は、外針2を補強する長尺な補強材(線状体)8と、補強材8の基端部に固定された補強材用ハブ9と、補強材用ハブ9に接続された押圧部材6とを有している。以下、各部の構成について説明する。
【0033】
まず、留置針11について説明する。
外針2は、内腔(中空部)21を有する可撓管で構成されている。
【0034】
外針2は、ある程度の可撓性を有し、その構成材料としては、樹脂材料、特に、軟質樹脂材料が好適であり、その具体例としては、例えば、PTFE、ETFE、PFA等のフッ素系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂またはこれらの混合物、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリエーテルナイロン樹脂、前記オレフィン系樹脂とエチレン−酢酸ビニル共重合体との混合物等が挙げられる。このような外針2は、その全部または一部が内部の視認性を有していてもよい。また、外針2の構成材料中には、例えば硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸ビスマス、タングステン酸のようなX線造影剤を配合し、造影機能を持たせることもできる。
【0035】
また、外針2の長さL1は、特に限定されず、用途や諸条件等に応じて適宜設定されるが、2.0〜50.0cm程度の範囲内の値に設定されることが好ましく、3.0〜40.0cm程度の範囲内の値に設定されることがより好ましく、10.0〜30.0cm程度の範囲内の値に設定されることがさらに好ましい。これにより、外針2を、例えば、中心静脈カテーテル、PICC、ミッドラインカテーテル等、一般的な末梢静脈カテーテルよりも長さが長いカテーテルとして用いることができる。なお、外針2を末梢静脈カテーテルとして用いてもよい。
【0036】
外針2の基端部には、例えば、カシメ、融着(熱融着、高周波融着等)、接着剤による接着等の方法により、外針ハブ3が液密に固定されている。
【0037】
外針ハブ3は、ほぼ筒状の部材で構成され、その内部が外針2の内腔21と連通している。また、外針ハブ3の基端部の外周部には、その外径が拡径したフランジ31が形成されている(図6参照)。
【0038】
外針ハブ3の構成材料としては、それぞれ、特に限定されず、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリブタジエン、ポリ塩化ビニル、ポリアセタール等の各種樹脂材料が挙げられる。
【0039】
次に、穿刺針12について説明する。前述したように、この穿刺針12は、内針4と、内針ハブ5と、把持部材7とを有している。
【0040】
外針2には、先端に鋭利な針先41を有する内針4が挿通される。図1、図2に示すように、内針4の長さは、第1の状態としたとき、少なくとも針先41が外針2の先端開口22から突出する程度の長さとされる。
【0041】
図6に示すように、内針4は、中空針であるが、これに限定されず、例えば、中実針で構成されたものであってもよいし、中空部と中実部との双方を有する構成(例えば、中空針の内腔の一部を充填することにより、先端側を中空とし、基端側を中実とする構成等)のものであってもよい。
【0042】
また、内針4は、その外径が一定のものでもよく、また、その外径が異なる複数の部分を有していてもよい。
【0043】
図5に示すように、内針4の外周部には、その長手方向に沿って溝43が形成されている。溝43は、図6に示す構成では内針4の先端部から長手方向の途中まで形成されているが、これに限定されず、例えば、内針4の全長にわたって形成されていてもよい。この溝43には、第1の状態で中間構造体13の補強材8が挿入される。これにより、第1の状態の留置針組立体1で血管100を穿刺するときに、補強材8がその軸に対して垂直な方向にずれることを確実に防止することができる。このように溝43は、補強材8の位置ずれを防止する支持部として機能する。また、溝43は、血液がフラッシュバックする際の流路としても機能する。このように、溝43は、血液が通過する流路と、補強材8を収納する収納部とを兼ねるものである。これにより、例えば当該流路や当該収納部をそれぞれ個別に設けるよりも、留置針組立体1が簡単な構造のものとなり、よって、コンパクト化が図れる。また、内針4が挿入される外針2を簡単な、すなわち、横断面形状が単純な円形のものとすることができる。
【0044】
内針4の構成材料としては、例えば、ステンレス鋼、アルミニウムまたはアルミニウム合金、チタンまたはチタン合金のような金属材料が挙げられる。
【0045】
内針4の基端部には、例えば、嵌合、カシメ、融着、接着剤による接着等の方法、あるいはこれらを併用した方法により、内針ハブ5が固定されている。
【0046】
内針ハブ5は、ほぼ筒状の部材で構成されている。そして、内針ハブ5の基端側の開口には、その開口を覆うように、通気フィルタが設置されているのが好ましい。この通気フィルタは、気体は透過するが液体は遮断する性質を有するものであり、例えば、各種焼結多孔体で構成されている。これにより、血液が内針4内を流下して通気フィルタに到達した場合、当該血液との接触により通気も遮断されるので、外部からの空気の侵入を防止することができる。
【0047】
図6に示すように、内針ハブ5の外周側には、把持部材7が配置されている。この把持部材7は、基端部が内針ハブ5に接続され、内針ハブ5から先端方向に突出している。これにより、外針2を留置する操作の際、把持部材7を手で把持することができ、その操作を容易かつ確実に行うことができる。
【0048】
把持部材7は、長尺状をなし、底板71と、底板71に立設された2つの壁部72、73と、壁部72と壁部73との間に架設された天板76とで構成された筒体である。
【0049】
第1の状態では、把持部材7の内側の空間に、中間構造体13の押圧部材6の一部または全部が収納される(図1、図2、図6参照)。これにより、押圧部材6がその幅方向にずれるのを防止することができる。図1、図2に示すように、押圧部材6を先端方向に押圧操作した際、当該押圧部材6は、把持部材7で案内されつつその方向に移動することとなり、よって、その押圧操作を容易に行なうことができる。
【0050】
なお、天板76は、把持部材7の長手方向の途中から基端部まで延在している。これにより、第1の状態で押圧部材6の先端部が上方に向かって露出し、当該露出した部分を押圧操作する際に指を当てる指当て部として用いることができる。また、押圧部材6を持ち上げることもでき、力こぶ等に干渉することを避けることも可能である。
【0051】
内針ハブ5および把持部材7の構成材料としては、それぞれ、特に限定されず、例えば、外針ハブ3の構成材料として例示したものと同様のものを用いることができる。
【0052】
なお、内針ハブ5、把持部材7、外針ハブ3、補強材用ハブ9は、それぞれ、好ましくは透明(無色透明)、着色透明または半透明の樹脂で構成され、内部の視認性が確保されている。これにより、外針2が血管を確保した際、流入する血液のフラッシュバックを目視で確認することができる。
【0053】
次に、中間構造体13について説明する。前述したように、この中間構造体13は、補強材8と、補強材用ハブ9と、押圧部材6とを有している。
【0054】
補強材8は、図1および図2に示す第1の状態と、図3に示す第2の状態とで、外針2内に挿入されている。この挿入された補強材8により、可撓性を有する外針2が補強され、よって、外針2を血管100に留置した際、当該外針2が不本意に撓むのを防止することができる。なお、第1の状態では、補強材8は、内針4とともに外針2の内腔21内を挿通して、当該外針2を補強することとなる(図5参照)。これにより、外針2に対する補強の程度は、第1の状態が最も高く、次いで、第2の状態、第3の状態となる。また、補強材8の長さは、第1の状態と第2の状態とで、その先端81が外針2の先端開口22からは突出しない程度の長さとされるのが好ましい。
【0055】
この補強材8は、外力を付与しない自然状態で直線状をなす1本の線状体で構成されている(図4参照)。これにより、留置針組立体1を組み立てる際、補強材8を外針2内に容易に挿入することができ、よって、その組立操作を容易に行なうことができる。
【0056】
また、図5に示すように、補強材8は、その横断面形状が円形のものである。そして、補強材8の外径は、その長手方向に沿って一定であり、内針4の外径よりも小さい(図5、図6参照)。補強材8がこのような形状をなすものであることにより、外針2を補強することができる程度に補強材8ができる限り細径化されたものとなる。
【0057】
前述したように、補強材8は、第1の状態で内針4の溝43に挿入されている。補強材8は、その横断面形状が円形をなすものであるため、溝43に容易に挿入されることとなり、よって、その挿入状態が確実に維持される。これにより、第1の状態の留置針組立体1で血管100を穿刺するときに、補強材8がその軸に対して垂直な方向にずれることをより確実に防止することができる。
【0058】
そして、第1の状態での補強材8は、内針4の溝43に挿入されており、その結果、外針2の中心軸に対し偏心して配置されることとなる。
【0059】
補強材8の構成材料としては、特に限定されず、例えば、内針4の構成材料として例示したものと同様の金属材料を用いることができ、特に、スプリングワイヤや撚り線等のステンレス鋼や、Ni−Ti合金、その他、ナイロンポリエステル等の比較的高弾性率の高分子材料が好ましい。これにより、可撓性を有する外針2に補強材8が挿通された状態で、当該外針2を確実に補強することができる。
【0060】
図6に示すように、補強材8の基端部には、補強材用ハブ9が固定されている。補強材用ハブ9は、筒状をなし、その先端部91が縮径しており、補強材8の基端部を固定する固定部として機能している。先端部91は、例えば、融着、接着剤による接着等の方法によって、補強材8を固定することができる。
【0061】
また、第1の状態では、内針4は、補強材用ハブ9を挿通しており、先端部91でその長手方向の一部が支持されている。内針4は、その長さが長いため、留置針組立体1で血管100を穿刺するときに振動する可能性があるが、前記一部が先端部91で支持されており、これにより、内針4の振動を抑制または防止することができる。これにより、穿刺操作を容易かつ確実に行なうことができる。
【0062】
図6に示すように、補強材用ハブ9は、その先端部91が外針ハブ3の基端部33に挿入され、基端部92に内針ハブ5の先端部53が挿入されている。このように、第1の状態では、外針ハブ3と内針ハブ5とが補強材用ハブ9を介して連結されている。そして、この第1の状態から内針ハブ5または把持部材7を把持して、そのまま基端方向に引張ると、内針4も同方向に向かって移動して、当該内針4が外針2から抜去される。これにより、中間構造体13から穿刺針12が離脱する、すなわち、留置針組立体1が第2の状態となる(図3参照)。さらに、第2の状態から補強材用ハブ9を把持して、そのまま基端方向に引張ると、補強材8も同方向に向かって移動して、当該補強材8が外針2から抜去される。これにより、留置針11から中間構造体13が外れる、すなわち、留置針組立体1が第3の状態となる(図4参照)。
【0063】
留置針組立体1では、外針ハブ3、補強材用ハブ9、内針ハブ5がこの順に先端側から配置、連結され、内針4および補強材8がそれぞれ独立して外針2から抜去可能であることにより、前述したような第1の状態から第3の状態への移行操作を順番に確実に行なうことができる。
【0064】
なお、図6に示すように、第1の状態では、内針ハブ5は、その先端部53が補強材用ハブ9の基端部92に挿入されていることの他に、その長手方向の途中の部分54が把持部材7の基端部に嵌合している。これにより、内針ハブ5が補強材用ハブ9から不本意に離脱するのを確実に防止することができる。
【0065】
補強材用ハブ9の外周部には、押圧部材6が配置されている。
押圧部材6は、外針2を留置する操作において、外針2を補強材8ごと押圧する部材である。押圧部材6は、外針2の長手方向に沿って配置され、外針2上に位置する長尺な板状をなす本体部61と、本体部61の表側の面に設けられ、指を掛ける複数の指掛け突起62と、本体部61の裏側の面の一部で構成された押圧部64とを有している。
【0066】
複数の指掛け突起62は、図1の上方に向かって突出するように形成されている。また、これらの指掛け突起62は、本体部61の長手方向に沿って等間隔に配置されている。このような指掛け突起62が形成されていることにより、外針2を血管100に留置する操作において、内針4に対して外針2を先端方向に移動させる際、指で指掛け突起62をその方向に押圧することができる。そして、この押圧力は、補強材用ハブ9を介して外針ハブ3に伝達されて、補強材8とともに、当該外針ハブ3ごと外針2を移動させることができる(図2、図6参照)。また、各指掛け突起62の穿刺針12の把持部材7に対する位置を確認することより、外針2の血管100への挿入長さを把握することができる。このように、各指掛け突起62は、外針2の血管100への挿入長さを示す目盛りとしての機能を有する。
【0067】
押圧部64は、本実施形態では、本体部61の裏側の面の一部をそのまま利用したものであるが、これに限らず、例えば、本体部61の裏側の面から突出形成された突起等で構成してもよい。押圧部64が形成されていることにより、外針2の長さが比較的長い場合でも、穿刺操作の際、押圧部材6の押圧部64を介して外針2の長手方向の途中の部分が押圧部64で図2中の下方に押し付けられ、外針2の撓みを抑制することができ、容易かつ確実に、その穿刺操作を行うことができる。
【0068】
また、押圧部材6は、補強材用ハブ9(補強材8)に対し回動し得るように接続されている。この回動支持部の構成としては、特に限定されないが、例えば、本実施形態では、本体部61の基端部に設けられた軸63と、補強材用ハブ9の外周部に設けられ、軸63を支持する軸受け93とで構成することができる。
【0069】
そして、押圧部材6は、外針2に接近した図1〜図3に示す第1の位置と、外針2から退避した図4に示す第2の位置とに変位することができる。穿刺操作を行なう際には、押圧部材6は、第1の位置にある。また、例えば外針2が留置された後等、術者(使用者)や患者(被使用者)にとって、押圧部材6が邪魔になった場合には、押圧部材6を第2の位置に回動させることができる。
なお、押圧部材6は、補強材用ハブ9に対して着脱自在に構成されていてもよい。
【0070】
図5に示すように、留置針組立体1は、第1の状態で外針2がその軸に対して垂直な方向、すなわち、図中上下左右方向にずれることを防止するずれ防止手段として、押圧部材6に形成された溝(凹部)65と、把持部材7に形成された溝(凹部)74とを有している。なお、前記溝は、押圧部材6と把持部材7との一方のみに形成されていてもよい。
【0071】
溝65は、押圧部材6の本体部61の裏側の面に形成され、その全長にわたって延在している。なお、溝65は、本体部61の先端部のみに形成されていてもよい。溝74は、把持部材7の底板71の裏側の面の溝65に対応する位置に形成され、その全長にわたって延在している。なお、溝74は、底板71の先端部のみに形成されていてもよい。そして、外針2は、溝65と溝74との間で保持されている。これにより、外針2が図5中上下左右方向にずれることを確実に防止することができる。
【0072】
補強材用ハブ9および押圧部材6の構成材料としては、それぞれ、特に限定されず、例えば、外針ハブ3の構成材料として例示したものと同様のものを用いることができる。
【0073】
次に、留置針組立体1の使用方法の一例について詳細に説明する。
[1] 図1に示すように、留置針組立体1を第1の状態とする。このとき、押圧部材6が第1の位置にある。
【0074】
そして、図2に示すように、内針ハブ5に設けられた把持部材7の先端部を一方の手で把持し、一方の手の人差し指を押圧部材6の最先端の指掛け突起62に掛け、その人差し指で指掛け突起62の根元部付近を下方に押圧しつつ、留置針組立体1の先端部を、患者に押し当てるようにして、血管100に向かって、表皮を穿刺する。この際、押圧部64が外針2の長手方向の途中の部分を下方に押し付けることにより、外針2の撓みを抑制することができる。
【0075】
[2] 内針4の針先41が血管100に穿刺されると、血管100の内圧により血液が内針4内を基端方向へ流入し、内針ハブ5内に導入され、視認性を有する内針ハブ5を介してこのフラッシュバックを視認することができる。これにより内針4の針先41が血管100を確保したことを知ることができる。また、内針4の溝43を介しても血液が外針2内に流入し、この流入によってもフラッシュバックを視認することができる。
【0076】
なお、この血液の流入に伴い、内針ハブ5内の空気は、前記通気フィルタを通って排出されるが、血液は、前記通気フィルタを通過できず、外部への漏れ出しが防止される。
【0077】
[3] 次に、内針4をガイドとし、内針4に沿って、さらに外針2を図2中の矢印方向へ微小距離進める。この際、人指し指で、最先端の指掛け突起62を先端方向に押圧し、外針2を先端方向へ移動させる。
【0078】
[4] さらに、人指し指で、1つ基端側の指掛け突起62を先端方向に押圧し、外針2を微小距離先端方向へ移動させ、これを順次行い、外針2の先端部を血管100内の目的位置(目的部位)まで挿入する。これにより、外針2が血管100の目的位置に留置される。
【0079】
[5] 次に、図3に示すように、押圧部材6を他方の手で押さえつつ、一方の手で把持部材7の基端部や内針ハブ5を把持し、基端方向へ引っ張る。これにより、内針4が外針2から抜き取られ、留置針組立体1が第2の状態となる。このとき、内針4が抜去された外針2には、補強材8が残留しているため、当該補強材8により、外針2が不本意に撓むのを防止することができる。
【0080】
なお、外針2から内針4を抜き取った後は、内針4、内針ハブ5および把持部材7(穿刺針12)は不用となるため、廃棄処分される。
【0081】
[6] 次に、図4に示すように、外針2を他方の手で押さえつつ、一方の手で補強材用ハブ9や押圧部材6を把持し、基端方向へ引っ張る。このとき、押圧部材6を、図4に示すように第2の位置へ回動させてもよいし、第1の位置のままとしてもよい。そして、この引張り操作により、補強材8が外針2から抜き取られ、留置針組立体1が第3の状態となる。
【0082】
[7] 補強材8が抜き取られた外針ハブ3には、輸液セットのコネクタ等(図示せず)を素早く接続し、定法に従い、輸液の投与を開始する。
【0083】
<第2実施形態>
図7は、本発明の留置針組立体(第2実施形態)の先端側の部分を示す横断面斜視図である。
【0084】
以下、この図を参照して本発明の留置針組立体の第2実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
本実施形態は、補強材の配置状態が異なること以外は前記第1実施形態と同様である。
【0085】
図7に示すように、補強材8は、外針2の管壁(壁部)23に埋設されている。これにより、補強材8を外針2に対し固定することができる。この場合、例えば補強材用ハブ9を省略することができ、よって、留置針組立体1をその構成が簡単なものとすることができる。
【0086】
なお、内針4は、図7に示す構成では溝43が省略されたものとなっているが、これに限定されず、溝43が形成されたものであってもよい。
【0087】
<第3実施形態>
図8は、本発明の留置針組立体(第3実施形態)の使用過程を順に示す縦断面図である。なお、以下では、説明の都合上、図8中の右側を「基端」、左側を「先端」と言う。
【0088】
以下、この図を参照して本発明の留置針組立体の第3実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
本実施形態は、補強材の配置状態が異なること以外は前記第1実施形態と同様である。
【0089】
図8に示すように、外針2は、内腔21の他に、当該内腔21から独立して形成された内腔(補強材用中空部)24を有している。この内腔24は、先端が閉塞している。また、外針2の管壁23には、側孔25が形成されており、この側孔25を介して内腔24が外部と連通している。
【0090】
この外針2では、内腔21に内針4が挿通され、内腔24に補強材8が挿通される。また、内腔21から内針4を抜去することができ、内腔24からも補強材8を抜去することができる。
【0091】
図8(a)〜(e)に示すように、外針2からは、順に内針4および補強材8を抜去することができる。そして、内針4が抜去された内腔21と、補強材8が抜去された内腔24とに、それぞれ、例えば互いに組成の異なる流体200a、200bを供給することができる(図8(e)参照)。内腔21を通過した流体200aは、外針2の先端開口22から外部へ流出し、内腔24を通過した流体200bは、外針2の側孔25から外部へ流出する。
【0092】
また、補強材8を抜去する操作を途中で停止すると、内腔24を、補強材8が存在する部分241と、補強材8が存在しない部分242とに分けることができる(図8(c)参照)。この部分241の長さに応じて、外針2の補強材8によって補強される長さを調整することができる。
【0093】
以上、本発明の留置針組立体を図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、留置針組立体を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
【0094】
また、本発明の留置針組立体は、前記各実施形態のうちの、任意の2以上の構成(特徴)を組み合わせたものであってもよい。
【0095】
また、本発明の留置針組立体は、血管内に挿入して使用されるものに限定されず、例えば、腹腔内、胸腔内、リンパ管内、脊柱管内等に挿入して使用されるものに適用することもできる。
【符号の説明】
【0096】
1 留置針組立体
11 留置針
12 穿刺針
13 中間構造体
2 外針
21 内腔(中空部)
22 先端開口
23 管壁(壁部)
24 内腔(補強材用中空部)
241、242 部分
25 側孔
3 外針ハブ
31 フランジ
33 基端部
4 内針
41 針先
43 溝
5 内針ハブ
53 先端部
54 途中の部分
6 押圧部材
61 本体部
62 指掛け突起
63 軸
64 押圧部
65 溝(凹部)
7 把持部材
71 底板
72、73 壁部
74 溝(凹部)
76 天板
8 補強材(線状体)
81 先端
9 補強材用ハブ
91 先端部
92 基端部
93 軸受け
100 血管
200a、200b 流体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端に鋭利な針先を有する内針と、
前記内針の基端部に固定された内針ハブと、
可撓性を有し、前記内針が挿通される中空部を有する管体で構成された外針と、
前記外針の基端部に固定された外針ハブと、
前記外針を補強する線状体とを備えることを特徴とする留置針組立体。
【請求項2】
前記線状体は、外力を付与しない自然状態で直線状をなすものである請求項1に記載の留置針組立体。
【請求項3】
前記線状体は、前記外針の中心軸に対し偏心して配置される請求項1または2に記載の留置針組立体。
【請求項4】
前記線状体は、前記外針に対しその長手方向に沿って移動可能に支持されており、
前記線状体の基端部に固定された線状体用ハブをさらに備える請求項1ないし3のいずれかに記載の留置針組立体。
【請求項5】
前記線状体は、前記外針に対し固定されている請求項1ないし4のいずれかに記載の留置針組立体。
【請求項6】
前記線状体は、前記内針とともに前記中空部内を挿通している請求項1ないし5のいずれかに記載の留置針組立体。
【請求項7】
前記内針は、前記線状体がその軸に対して垂直な方向にずれることを防止する支持部を有する請求項6に記載の留置針組立体。
【請求項8】
前記外針は、前記中空部から独立して形成され、前記線状体が挿通される線状体用中空部を有する請求項1ないし7のいずれかに記載の留置針組立体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−5647(P2012−5647A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−144040(P2010−144040)
【出願日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】