説明

畜舎

【課題】省力で維持管理できるとともに、常時良好な衛生状態を維持することができて、しかも、作業者にも周辺環境にも無害な畜舎を提供すること。
【解決手段】畜舎1の畜舎本体11は、豚等の家畜を収容する畜房21〜23と、該畜房の底面側に設けられたスノコ状の床板3を有している。畜房21,22の床下には、スクレーパを備えた糞尿ピットが構築されている。また、畜房23の床下には、曝気槽が構築されている。畜房内の家畜によって排泄された糞尿は、家畜の体表に付着することなく、スノコ状床板3の間隙を介して床下に落下する。床下の糞尿ピットに堆積した糞尿は、スクレーパによって掻き集められて、曝気槽へ投入される。このような構成によれば、畜房内の衛生状態を良好に保つことでき、家畜にストレスを与えることがなく良好に発育させることが可能になる。また、畜舎内における作業者の作業性を改善することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、豚、牛、羊、鶏等の家畜を肥育するための畜舎に関する。
【背景技術】
【0002】
わが国では、豚、牛、羊、鶏等の様々な家畜が畜舎で飼育されている。このような家畜から排泄される糞尿の処理方法としては、たとえば、オガ粉(木材の切削屑)を畜房内に敷設して家畜の糞尿を吸着させる方法が一般的に知られている。
【0003】
この方法では、四方を棚枠で包囲した畜房(家畜飼育エリア)内の床上にオガ粉を敷設して、その中で家畜を飼育している。そして、家畜が毎日排泄する糞尿をオガ粉に吸着させ、一定期間毎にこのオガ粉を新たなものに取り替える作業をしている。この取り替え作業においては、家畜を他の畜舎に移動させて、機械や人手を利用して古いオガ粉を排出し、新しいオガ粉を敷設している。
【0004】
しかしながら、このような方法では、オガ粉に吸着された糞尿はオガ粉と混練されるため、経時的にオガ粉は糞尿で汚れて行く。そのため、一定期間毎の交換作業を欠かすことはできない。ところが、実際には一定期間毎のオガ粉の交換及び清掃作業は遅れがちとなる傾向にあるので、最悪の場合、家畜は、一面糞尿だらけとなった畜房で飼育されることとなる。このような場合、極めて衛生状態が悪くなり、場合によっては毒性の強いウイルスや寄生虫が発生することもある。
【0005】
また、糞尿の混じったオガ粉はアンモニアガス、塵埃、発酵による熱気を伴っているため、畜房での交換作業は作業者にとってきわめて苛酷なものである。よって、このような作業を長期間にわたって継続して行えば、作業者の健康を害する虞れが大きい。
【0006】
さらに、畜房内で交換作業をするときは、豚等の家畜を空いた畜房や他の家畜のいる畜房に移しておく必要がある。ところが、これを定期的に行えば、家畜に大きなストレスを与えることとなり、結果として家畜の発育に悪影響を及ぼす。
【0007】
さらに、近年、サーズや鳥インフルエンザなどの毒性の強い新種のウイルスの発生・流行が懸念されている。このような新種のウイルスの蔓延を防止するためにも、世界規模で畜舎の衛生状態の改善を図る必要がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、上述した背景に鑑み、本発明の目的は、従来と比較して省力で維持・管理できるとともに、常時良好な衛生状態を維持することができて、しかも、作業者にも周辺環境にも無害な畜舎を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的は、下記(1)〜(12)記載の本発明によって達成される。
【0010】
(1) 飼育すべき家畜を収容するための畜房と、
前記畜房の底面側に設けられており、前記家畜によって排泄された糞尿を床下へ落下させるための貫通孔及び/又は間隙が形成された床板と、
前記床板を通過してきた前記糞尿を収容するための糞尿ピットと、
を有していることを特徴とする畜舎。
【0011】
(2) 飼育すべき家畜を収容するための畜房と、
前記畜房の全部又は一部の底面側に設けられており、前記家畜によって排泄された糞尿を床下へ落下させるための貫通孔及び/又は間隙が形成された床板と、
前記床板を通過してきた前記糞尿を収容するための糞尿ピットと、を有しており、
畜舎内において前記家畜は前記床板の上で活動するようになっており、当該家畜によって排泄された糞尿は、家畜の体表に付着することなく、直ちに前記床板の貫通孔及び/又は間隙を介して床下に落下するようになっていることを特徴とする畜舎。
【0012】
(3) 前記床板が、スノコ状の床板から構成されていることを特徴とする上記(1)又は(2)記載の畜舎。
【0013】
(4) 前記糞尿ピットが、前記畜房の床下に設けられており、
前記糞尿ピットに、前記床板を介して落下してきた糞尿を掻き集めるためのスクレーパが設けられており、
前記スクレーパが、前記糞尿ピット内で往復摺動可能に設けられている
ことを特徴とする上記(1)又は(2)記載の畜舎。
【0014】
(5) 前記畜舎は、さらに、前記糞尿に対して曝気処理するための曝気槽を有しており、前記糞尿ピットにおいて前記スクレーパによって掻き集められた糞尿は、該スクレーパによって前記曝気槽へ投入されるようになっていることを特徴とする上記(4)記載の畜舎。
【0015】
(6) 前記スクレーパは、前記糞尿ピット内で定期的に往復摺動可能に構成されており、前記糞尿ピットに堆積した糞尿は、前記スクレーパによって定期的に前記曝気槽へ投入されるようになっていることを特徴とする上記(5)記載の畜舎。
【0016】
(7) 前記糞尿ピットは、複数の個別糞尿ピットに区画されており、前記複数の個別糞尿ピットのそれぞれに、前記スクレーパが設けられていることを特徴とする上記(6)記載の畜舎。
【0017】
(8) 前記曝気槽は、前記糞尿ピットよりも低位置に設けられていることを特徴とする上記(5)記載の畜舎。
【0018】
(9) 前記畜房が地上部に構築されており、前記曝気槽が地下に構築されており、前記糞尿ピットが前記畜房と前記曝気槽の間の高さ位置に構築されていることを特徴とする上記(8)記載の畜舎。
【0019】
(10) さらに、前記畜房の床板を水で自動洗浄するための洗浄装置を有していることを特徴とする上記(5)記載の畜舎。
【0020】
(11) 前記畜舎は、さらに、前記曝気槽からの汚泥水を散水濾床するための反応槽を有しており、前記反応槽を経て得られた処理水の少なくとも一部を、前記曝気槽に投入するように構成されていることを特徴とする上記(5)記載の畜舎。
【0021】
(12) 前記曝気槽及び前記反応槽は、それぞれ、微生物を担持させた多孔質材を収容していることを特徴とする上記(11)記載の畜舎。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、家畜によって排泄された糞尿は、畜房の床上に堆積することなく、排泄後直ちに床下へ落下する。よって、畜房内が一面糞尿だらけとなるといった事態が生じることがなく、畜房内の衛生状態を良好に保つことできる。その結果、たとえば畜房内での寄生虫等の発生を防止でき、また、家畜にストレスを与えることがなく良好に発育させることが可能になる。
また、畜房内で家畜が動き回っても糞尿と接触することが少ないため、体表に糞尿が付着せず、家畜の健康状態を良好に維持することができる。
さらに、畜房内の衛生状態を常時良好な状態に保つことができる結果、悪臭や熱気の発生を防止できるので、畜舎内における作業者の作業性を改善することができる。
【0023】
また、本発明によれば、床板を介して糞尿ピットに落下した糞尿は、床下に設けたスクレーパによって、自動的に掻き集められるようになっている。これにより、作業者による糞尿の排出作業が不要となるので、従来と比較してより省力で家畜を飼育することができる。
【0024】
さらに、本発明によれば、床板を介して糞尿ピットに落下した糞尿は、スクレーパによって曝気槽へ投入されるようになっている。曝気槽に投入された糞尿は、投入後に直ちにバイオ処理(微生物の代謝によって有機物を分解する処理)されるため嫌気発酵せず、悪臭の発生を抑制することができる。よって、悪臭に起因する周辺環境及び畜舎内環境の悪化を防止することができる。
【0025】
さらに、本発明によれば、床板を介して糞尿ピットに落下した糞尿は、スクレーパによって、定期的に曝気槽へ投入されるようになっている。よって、処理能力を超えた量の糞尿が曝気槽に一気に投入されることがないので、曝気槽に投入された糞尿を確実にバイオ処理することが可能になる。
【0026】
さらに、本発明によれば、曝気槽は糞尿ピットよりも低位置に設けられている。これにより、糞尿の自重を利用して、簡単に糞尿を曝気槽に投入することができる。
【0027】
さらに、本発明によれば、畜房の床板は、定期的に水で自動洗浄されるようになっている。これにより、畜房の床板に付着している糞尿を洗い流すことができるので、畜房内をより衛生的な状態に保つことができるとともに、畜房内の清掃に要する作業性を改善することができる。また、洗浄に用いられた水は、床板を通過して曝気槽へ投入されることとなるので、水資源の有効再利用にも貢献することとなる。
【0028】
加えて、本発明において、多孔質材として杉材(杉チップ)を用いることにより、以下に述べる優れた効果が達成される。
【0029】
広葉樹は、球菌が住みつく孔がいないため腐りやすい。一方、針葉樹の場合、カラ松類は油が出る。また、ヒバやヒノキでは抗菌作用が強く微生物が住むのには適していない。それに対し、杉の木には約8万個/m2の孔があり、微生物が住みつくのに適しているといえる。
【0030】
また、本発明で用いる杉チップは、多孔質となるように加工が施されており、しかもその製造過程において、杉の成分中に含まれるセルロース,ヘミセルロースを一部糖化してある。よって、多孔質化された結果、微生物が杉チップに住みつき易いように環境が最適化され、しかも、セルロース,ヘミセルロースを一部糖化することによって、BOD源の発酵・分解・消化するための微生物発生・増殖の栄養分がつくられることとなる。
【0031】
また、杉材は粘度が低く、比重が軽いということが利点としてあげられ、そのために、曝気槽の装置内での攪拌時にかかる動力費を低く抑えることが可能になる。
【0032】
なお、東京都等の各自治体は、花粉症の抜本的な発生源対策として、杉林の伐採と花粉の少ない杉林の植樹を進め、10年で杉花粉を約2割削減するとの数値目標を掲げている。ところが、その伐採に伴って生じる大量の杉の間伐材については、未だに有効な利用方法が提案されておらず、処分に困っているのが現状である。
そこで、本発明で用いる木質細片の原材料として「杉材」を積極的に活用することにより、伐採に伴って生じる杉の間伐材を有効に再利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、添付図面に基づいて、本発明に係る畜舎について説明する。
図1は、本発明に係る畜舎1の概略構成を示す平面図である。
図2は、図1に示す畜舎の畜舎本体11の床下構造の概略を示す図である。
図3は、図1のA−A線に沿った畜舎本体11の断面図である。
図4は、図1のB−B線に沿った畜舎本体11の断面図である。
なお、本発明に係る畜舎で飼育可能な家畜の種類は特に限定されず、豚,羊,牛,鳥等様々な種類の家畜に適用することが可能である。
【0034】
畜舎1は、主として、畜舎本体11と、糞尿処理システムとから構成されている。畜舎本体11は、主として、家畜を飼育するための畜房21〜23を有している。また、糞尿処理システムは、畜舎本体11の地下に構築された曝気槽31と、畜舎本体の外に設けられた原水槽32と、処理水槽33と、反応槽34と、脱臭用水槽35とを含んで構成されている。
以下、畜舎1の構成について詳細に説明する。
【0035】
畜舎本体11は、図1に示すように、両側を通路に挟まれた複数の畜房を有しており、本実施形態では、第1の畜房21,第2の畜房22,第3の畜房33が設けられている。家畜が肥育される畜房21〜23のそれぞれは、四方を仕切られており、各畜房内に、2つの給餌エリアと1の休息エリアが設けられている。各畜房内の家畜は、所定の条件に従って、給餌エリアと休息エリアの間を行き来できるようになっている。
【0036】
各畜房21〜23の底面側に設けられた床板3は、間隙が形成されたスノコ状の床板から形成されている。家畜はこの床板3の上で活動するようになっており、当該家畜によって排泄された糞尿は、ほとんど家畜の体表に付着することなく、直ちにスノコ状床板の間隙を介して床下に落下する。
【0037】
なお、本発明において床板3を構成すべき材料は必ずしもスノコに限定されず、糞尿を通過させる貫通孔及び/又は間隙が形成してあれば、いかなる材料をも用いることが可能である。
【0038】
畜房21〜23の側壁,天井又は床上には、図示しない洗浄装置(例えばシャワー等)が設けられている。床下に落下することなく床板3にこびりついた糞尿は、この洗浄装置によって洗い流されて、洗浄水とともに床下へ落ちるようになっている。
【0039】
第1の畜房21,及び第2の畜房22の床下には、図2及び図3に示すように、床板3を介して落下してきた糞尿を収容するための糞尿ピット5が構築されている。この糞尿ピット5は、複数の個別糞尿ピットに区画されており、本実施形態では8つの個別糞尿ピット51に区画されている。なお、糞尿ピット5の底面には、糞尿が曝気槽31の方向へ流れやすいように傾斜が設けられていてもよい。また、糞と尿を分離するための溝が設けられていてもよい。
【0040】
個別糞尿ピット51のそれぞれには、床板3を介して落下してきた糞尿を掻き集めるためのスクレーパ61が設けられている。各スクレーパ61は、鉄板等の剛体で構成されており、ロープ62を介して対応する駆動モータ63に連結されている(図3参照)。各駆動モータ63は、所定の制御装置に接続され、定期的に駆動するようになっている。そして、この駆動モータ63が駆動すると、それに対応するスクレーパ61が、個別糞尿ピット51内で側壁に沿って往復摺動する。
【0041】
また、図2及び図3に示すように、第3の畜房23の床下には、糞尿に対して曝気処理するための曝気槽31が構築されている。この曝気槽31は、隣接する糞尿ピット5よりも低位置に構築されている。本実施形態では、畜房21〜23が地上部に構築されているのに対し、曝気槽31は地下に構築され、糞尿ピット5は畜房と曝気槽の間の高さ位置に構築されている(図3参照)。
【0042】
上記糞尿ピット5において各スクレーパ61によって掻き集められた糞尿は、該スクレーパによって定期的に曝気槽31へ投入されるようになっている。
【0043】
次に、本発明の畜舎が備える糞尿処理システムについて説明する。
【0044】
糞尿処理システムでは、大きく大別して2つの処理工程を経て、液肥(還元型有機養液)を製造するようになっている。一つは、曝気槽31における「曝気(水中処理)」による湿式処理と、もう一つは、前記湿式処理に続く反応槽34における「微生物濾過反応」による乾式処理である。最終的に反応槽34を経て得られた処理水は、農作物の有機栽培において液肥(養液)として利用することが可能である。
以下、糞尿処理システムの特徴について詳細に説明する。
【0045】
曝気槽31の内部には、汚泥水をバイオ処理するための微生物を担持させた多孔質材が敷き詰めてあるとともに、微生物を増殖させる促進剤が添加されている。この多孔質材は、例えば、細片状の杉材、木炭、竹炭等の何れか1種、又はこれらの2種以上の組合せから構成することができる。このような多孔質材には無数の孔隙が形成されており、その孔の中にはバイオ処理に必要な微生物や該微生物の餌が豊富に含まれている。
【0046】
この曝気槽31には、スクレーパ61によって、第1の畜房21及び第2の畜房22の家畜によって排出された糞尿が投入される。また、第3の畜房23で生じた糞尿は、そのまま落下して曝気槽31に投入されるようになっている。このようにして曝気槽31に投入された糞尿は、槽内において水で希釈され、その結果、有機物を含有する汚泥水が生成される。
【0047】
汚泥水を収容する曝気槽31では、水中曝気による湿式処理が行われる。すなわち、曝気槽31では、曝気と接触剤により、好気性菌・嫌気性菌の両性菌の急激な増殖があり、汚泥のBOD源を消滅させる。そして、曝気槽31において曝気処理された汚泥水は、ポンプアップによって反応槽34へ送出される。
【0048】
反応槽34の内部には、上記曝気槽31と同様に、細片状の多孔質材が収容されている。曝気槽31から流入する汚泥水(処理水)は、主として、浮遊性の微粒子状であり、反応槽34において最終的な処理が施される。反応槽34に流入した汚泥水は、該反応槽内において多孔質材に接触し、さらに微生物による分解が行われる。
【0049】
つまり、反応槽34では、曝気槽31からの汚泥水が散水濾床され、微生物接触濾過反応により汚泥のBOD源が完全に消滅する。その結果、無害・無臭で有機農法に適した液肥が生成される。得られた液肥は還元状態にあるため、酸化することがなく、数年放置しても腐ることがない。また、本願発明者の成分分析によれば、この液肥には農作物の生育に好ましい成分が豊富に含まれており、かつ、人体や環境に害を与える成分は一切含まれていないことが確認された。
【0050】
反応槽34からの処理水(液肥)は、下流側の溜槽に一時的に貯留される。この溜槽に貯留された汚泥水は、一部は有機栽培において液肥として利用され、残りは、曝気槽31へ返送される。なお、得られた処理水を液肥として用いる場合には、そのまま農作物に付与してもよく、或いは、所定の成分調整を行った上で農作物に付与してもよい。
【0051】
上述した畜舎において、曝気槽31及び反応槽34に収容すべき多孔質材の種類は特に限定されないが、杉の間伐材から形成した木質細片(杉チップ)を用いることが好ましく、また、多孔質になるように前記木質細片に加工が施されていることが好ましい。木質細片の原材料として杉材を用いた場合には、上記製造プロセスにおいて、杉材の成分であるリグニンが、水溶性リグニンとなるため、つくり出された液肥(養液)は、数年経過しても腐らず無臭を保つ。
【0052】
また、木質細片として杉チップを用いる場合には、杉材に含まれる成分中のセルロース,ヘミセルロースを一部糖化させてあることが好ましい。また、該杉チップは、セルロース体65〜85%と、リグニン体10〜25%と、ペントザン体5〜10%とを含有することが好ましい。
【0053】
上述した本発明によれば、家畜によって排泄された糞尿は、畜房の床上に堆積することなく、排泄後直ちに床下へ落下する。よって、畜房内が一面糞尿だらけとなるといった事態が生じることがなく、畜房内の衛生状態を良好に保つことできる。その結果、たとえば畜房内での寄生虫等の発生を防止でき、また、家畜にストレスを与えることがなく良好に発育させることが可能になる。
また、畜房内で家畜が動き回っても糞尿と接触することが少ないため、体表に糞尿が付着せず、家畜の健康状態を良好に維持することができる。
さらに、畜房内の衛生状態を常時良好な状態に保つことができる結果、悪臭や熱気の発生を防止できるので、畜舎内における作業者の作業性を改善することができる。
【0054】
また、本発明によれば、床板を介して糞尿ピットに落下した糞尿は、床下に設けたスクレーパによって、自動的に掻き集められるようになっている。これにより、作業者による糞尿の排出作業が不要となるので、従来と比較してより省力で家畜を飼育することができる。
【0055】
さらに、本発明によれば、床板を介して糞尿ピットに落下した糞尿は、スクレーパによって曝気槽へ投入されるようになっている。曝気槽に投入された糞尿は、投入後に直ちにバイオ処理(微生物の代謝によって有機物を分解する処理)されるため嫌気発酵せず、悪臭の発生を抑制することができる。よって、悪臭に起因する周辺環境及び畜舎内環境の悪化を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明に係る畜舎の概略構成を示す平面図である。
【図2】図1に示す畜舎の畜舎本体の床下構造の概略を示す図である。
【図3】図1のA−A線に沿った断面図である。
【図4】図1のB−B線に沿った断面図である。
【符号の説明】
【0057】
1 畜舎
3 床板
5 糞尿ピット
11 畜舎本体
21 第1の畜房
22 第2の畜房
23 第3の畜房
31 曝気槽
32 原水槽
33 処理水槽
34 反応槽
35 脱臭用水槽
51 個別糞尿ピット
61 スクレーパ
62 ロープ
63 駆動モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
飼育すべき家畜を収容するための畜房と、
前記畜房の底面側に設けられており、前記家畜によって排泄された糞尿を床下へ落下させるための貫通孔及び/又は間隙が形成された床板と、
前記床板を通過してきた前記糞尿を収容するための糞尿ピットと、
を有していることを特徴とする畜舎。
【請求項2】
飼育すべき家畜を収容するための畜房と、
前記畜房の全部又は一部の底面側に設けられており、前記家畜によって排泄された糞尿を床下へ落下させるための貫通孔及び/又は間隙が形成された床板と、
前記床板を通過してきた前記糞尿を収容するための糞尿ピットと、を有しており、
畜舎内において前記家畜は前記床板の上で活動するようになっており、当該家畜によって排泄された糞尿は、家畜の体表に付着することなく、直ちに前記床板の貫通孔及び/又は間隙を介して床下に落下するようになっていることを特徴とする畜舎。
【請求項3】
前記床板が、スノコ状の床板から構成されている
ことを特徴とする請求項1又は2記載の畜舎。
【請求項4】
前記糞尿ピットが、前記畜房の床下に設けられており、
前記糞尿ピットに、前記床板を介して落下してきた糞尿を掻き集めるためのスクレーパが設けられており、
前記スクレーパが、前記糞尿ピット内で往復摺動可能に設けられている
ことを特徴とする請求項1又は2記載の畜舎。
【請求項5】
前記畜舎は、さらに、前記糞尿に対して曝気処理するための曝気槽を有しており、
前記糞尿ピットにおいて前記スクレーパによって掻き集められた糞尿は、該スクレーパによって前記曝気槽へ投入されるようになっている
ことを特徴とする請求項4記載の畜舎。
【請求項6】
前記スクレーパは、前記糞尿ピット内で定期的に往復摺動可能に構成されており、
前記糞尿ピットに堆積した糞尿は、前記スクレーパによって定期的に前記曝気槽へ投入されるようになっている
ことを特徴とする請求項5記載の畜舎。
【請求項7】
前記糞尿ピットは、複数の個別糞尿ピットに区画されており、
前記複数の個別糞尿ピットのそれぞれに、前記スクレーパが設けられている
ことを特徴とする請求項6記載の畜舎。
【請求項8】
前記曝気槽は、前記糞尿ピットよりも低位置に設けられている
ことを特徴とする請求項5記載の畜舎。
【請求項9】
前記畜房が地上部に構築されており、
前記曝気槽が地下に構築されており、
前記糞尿ピットが前記畜房と前記曝気槽の間の高さ位置に構築されている
ことを特徴とする請求項8記載の畜舎。
【請求項10】
さらに、前記畜房の床板を水で自動洗浄するための洗浄装置を有している
ことを特徴とする請求項5記載の畜舎。
【請求項11】
前記畜舎は、さらに、前記曝気槽からの汚泥水を散水濾床するための反応槽を有しており、
前記反応槽を経て得られた処理水の少なくとも一部を、前記曝気槽に投入するように構成されている
ことを特徴とする請求項5記載の畜舎。
【請求項12】
前記曝気槽及び前記反応槽は、それぞれ、微生物を担持させた多孔質材を収容している
ことを特徴とする請求項11記載の畜舎。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−289048(P2007−289048A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−119526(P2006−119526)
【出願日】平成18年4月24日(2006.4.24)
【出願人】(505447928)特定非営利活動法人日本有機の里をすすめる会 (2)
【Fターム(参考)】