説明

畜舎

【課題】 畜舎内で餌育している家畜、特に牛の排泄物の搬出作業を解消するために行われている醗酵処理において、醗酵をより旺盛にして搬出作業を皆無としようとするものである。
【解決手段】 畜舎の放牧する土間の構成を、よくかき混ぜて空気を混入しやわらかな客土を敷設した客土層上に、堆肥に米ぬかと糖分とを混合して成る醗酵層を敷設して成り、同醗酵層を耕起して好気性醗酵促進した後、放牧して排泄物とともに醗酵層を耕起することにより問題を解決しようとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家畜の糞尿処理を容易にした畜舎にかかわり、詳しくは、平成16年11月施行「家畜排泄物の管理の適正化及び利用の促進に関する法律」の目的達成に沿う家畜排泄物、特に牛舎における糞尿処理に関する。
【背景技術】
【0002】
家畜の餌育舎(以下、牛舎という。)の糞尿処理は餌育者にとって過重な負担となっている。牛舎の上記処理は人手で毎日行われ舎外へ排出している。この作業を微生物を活用することにより皆無としようとする試みがある。その先行技術に特開2003−219743(特許文献1)が公開されている。それによると、「牛舎の床を土のままにし、屋根を透光性の高い素材にし、排泄物をトラクターで耕し、好気的醗酵を促進する。」ことが(0004)に記されている。
この技術は、透光状態の床土にまかれた排泄物を耕し、好気的醗酵により排泄物を分解して排出作業を皆無としようとするが、トラクターの耕起による空気の混合と陽光の付与を図っても排泄物の好気的醗酵には日時を必要とする。さらに、床土に尿の浸透による環境への悪影響は避けられない等の問題がある。
【0003】
また、特開2002−125500(特許文献2)の公開技術によると、(0008)及び(0012)に「牛舎内の牛の休息場に最高積載高0.8〜1.8mの敷料を載積して醗酵床とし同敷料をシャベルローダ等で切り返し、……敷料の醗酵を促進する」ことが記されているが、特許文献1の場合と同様の問題がある。
【特許文献1】特開2003−219743
【特許文献2】特開2002−125500
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
よく撹拌し小石を除いたやわらかい客土層上に、糞尿の堆肥に米ぬか及び糖分を混和した醗酵層を重層し、同醗酵層を繰り返し耕起することにより好気性菌による醗酵を促し、醗酵の熟成後、同醗酵層上で飼育することにより、排泄物の処理手数を皆無としようとする。
【0005】
上記目的解決のための牛舎は、屋根を透光性とし、前記醗酵層を牛を飼育しつつトラクターで耕起して好気性菌による醗酵を促進させようとする。
【0006】
上記解決しようとする課題の基本は、特許文献1、特許文献2の問題点の醗酵の完熟速度を、前記客土を醗酵をすすめやすくする環境を作る醗酵温床とすることにより解決しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
屋根及び周壁に透光性材を用いた牛舎の土間は小石を除いた土を撹拌して空気を混入し敷きつめたやわらかい客土層上に、堆肥に米ぬか及び糖分を混和した醗酵層を重層し、同醗酵層を繰り返し耕起して成り、牛舎はさらに、両側の柱間に牛の高さに張り渡したロープに、所要長さで牛にとりつけたロープの他端を移動自由にとりつけて成り、前記醗酵層の耕起時に牛が移動して耕起を妨げず耕起による醗酵を促す。
【0008】
本発明における上記醗酵は客土層がその上層の醗酵層の水分と温度の影響により、また、やわらかく空気を含んだ土であるため、元から存在する好気性菌が常に増殖して上層の醗酵層の醗酵を助長する。すなわち、醗酵の温床となり、醗酵が従来のものより強大となる特徴がある。
これにより、排泄物の搬出作業を解消し課題解決の目的を達成する。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、牛舎の土間をコンクリート製とすることなく、客土層と醗酵層との重なった2層とし、その2層上で牛を移動可能状態で飼育し、上記醗酵層を排泄物とともに耕起するため、好気性菌による醗酵が旺盛となり、醗酵層の温度は40〜50℃になり、排尿は水蒸気となり、醗酵物は粉状となり、牛舎は寒冷期に暖房を必要としないで飼育できるとともに排泄物の搬出を要しない効果ある。
【実施例1】
【0010】
本発明牛舎の実施例を図によって説明すると、図1は牛舎の長手方向の一部を示す平面図、図2は同上の正面図とする。牛舎は支柱1を並立して屋根材2を支え同屋根2上を透明性フィルム3で被覆し、周壁も同上フィルム3で被覆するのが望ましい。両側には通路4が設けられ給餌料樋が設けられる。
両側と中央に並ぶ支柱1は、中央の柱1と左右側方の柱1とのそれぞれの間隔は5m、前後の支柱1間は2.5mである。左右側方の支柱1から中央の柱1間には長いロープ5が成牛の頭より1.5mの高さに張り渡され、ロープ5には長さ1.5mのつなぎ用ロープ6の一端が輪環により摺動自由に取り付けられ、同短尺のロープ6の他端は牛の首或いは角に取り付けられる。
【0011】
牛舎内の土間は、小石を除いてよくかきまぜやわらかく客土を厚さ50cmに堆積した客土層8上に、牛の糞尿の堆積に米ぬか及び蜂蜜を混和した醗酵層7を厚さ30cmに堆積して成っている。
【0012】
醗酵層7は耕起用のトラクターで日数をかけて耕起し、醗酵を促し好気性菌を充分に増殖させた上で、醗酵層7上に牛を繋留する。
【0013】
つなぎ用ロープ6につながれた牛は上記の構成によれば、左右側方柱1と中央柱1間の間隔5mと、同間隔5mに張り渡された長いロープ5にそって同ロープ5をくぐりロープ6の1.5mを前後して3mを移動自在となる。各長いロープ5につながれた各牛は左右5m、前後3mの範囲を移動し相互接触しないで飼料摂取ができる。
【0014】
生後間もない幼牛は、舎内の行動を自由として長いロープ5につながれた母牛から授乳を受けるようにすることができる。
【0015】
舎内につながれた牛の排泄は醗酵層上になされる。そこで、長いロープ5より高さが低く耕起幅が5mの3分の1程度のトラクターで醗酵層を耕起してゆく。つながれた牛は同トラクターを避けて一方によるので耕起を妨げない.
【0016】
醗酵層7は透明性フィルム3を透過する陽光と耕起による空気の混和とにより好気性醗酵菌の増殖を受けて醗酵し、好気性菌の温床となっている客土層8からの同上菌の補給を受けて旺盛に醗酵する。そのために表面温度は40〜50℃に少なくとも達し、排尿等の水分は蒸発し耕起中に白い湯気となり蒸散してゆく。
排泄物は熱のため水分を失うことと醗酵作用により粉状となり耕起された醗酵層に混和される。
【0017】
客土層8は醗酵層7より厚いこと、排泄物の水分は醗酵層7から多くは蒸散していることにより排泄物の流入がほとんどみられず、流入があっても好気性菌の存在によって分解して外部へ流出させることがない。また、耕起を必ずしもする必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明牛舎の一部を示す平面図。
【図2】図1の正面図。
【符号の説明】
【0019】
1:支柱
2:屋根材
3:透明性フィルム
4:通路
5:長いロープ
6:つなぎ用ロープ
7:醗酵層
8:客土層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気が混入されやわらかい客土層上に、堆肥と米ぬかと糖分を混和した好気性醗酵層を積層敷設して成る土間を設けることにより、好気性醗酵を図ることを特徴とする畜舎。
【請求項2】
屋根に透光性材を用い、屋内の並立する左右両側支柱とその中間の中央の支柱間に飼育家畜の高さでロープを張り渡し、所要の長さで上記家畜に取り付けたロープの他端を前記張り渡しロープに移動自由に取り付け、請求項1記載の土間を敷設して成る畜舎。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−22792(P2008−22792A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−200253(P2006−200253)
【出願日】平成18年7月24日(2006.7.24)
【出願人】(502078066)
【Fターム(参考)】