説明

畜舎

【課題】安価で、糞尿の清掃が容易となる畜舎を提供する。
【解決手段】筒の延設方向を横方向として設置され、複数の家畜を収容する樹脂製の筒状筐体2と、この筒状筐体2の内部に水平状に設置され、家畜の糞尿用の落下孔を形成した家畜載置用の床材11と、を備える畜舎1とした。また、床材11の下方の空間が、筒状筐体2の内壁面を底面とする糞尿溜め空間13として構成される。筒状筐体2としてはFRPパイプが好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家畜を収容する畜舎に関するものである。
【背景技術】
【0002】
豚用の畜舎の従来構造としては、特許文献1に代表されるプレハブ式のものが一般的である。
【特許文献1】特開平10−286035号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このようなプレハブ式の畜舎では、建築費用が嵩むので、施設費用が高くなりやすいという問題がある。また、糞尿の処理構造が複雑になりやすく、清掃が行いにくいという問題もある。
【0004】
本発明は、以上のような問題を解決するために創作されたものであり、安価で、糞尿の清掃が容易となる畜舎を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、前記課題を解決するため、筒の延設方向を横方向として設置され、複数の家畜を収容する樹脂製の筒状筐体と、この筒状筐体の内部に水平状に設置され、家畜の糞尿用の落下孔を形成した家畜載置用の床材と、を備えたことを特徴とする畜舎とした。また、前記床材の下方の空間が、前記筒状筐体の内壁面を底面とする糞尿溜め空間として構成されていることを特徴とする畜舎とした。
【0006】
この畜舎によれば、(1)家畜の収容施設を筒状筐体から構成することで、家畜の収容施設費用を安価にできる。また、筒状筐体を地面に載置するだけで済むので、固定資産税がかからずに済み、建築確認の作業等も不要となる。筒状筐体の設置場所の移動も容易となる、(2)床材に糞尿の落下孔が形成されているので、床材に糞尿が溜まることがない。したがって、床材上の家畜に対して衛生的となり、床材の清掃も容易となる、(3)筒状筐体が樹脂材よりなるので、金属材料とした場合に比して耐腐食性に優れる、(4)部材点数が少なく、畜舎の組み立て時間が短時間で済む。また、簡易な構造であるので、同様のものを複数連結することも容易であり、拡張性に優れる、(5)気密性が高い構造となり、年間を通じ空調環境が良好となる。また、野鳥やネズミの侵入を防止できる、(6)筐体が筒状を呈しているので、筐体強度が高くなり、耐積雪性に優れる、等の効果が奏される。
【0007】
また本発明では、前記床材の下方の空間が、前記筒状筐体の内壁面を底面とする糞尿溜め空間として構成されていることを特徴とする畜舎とした。
【0008】
この畜舎によれば、前記(1)〜(6)の効果に加え、(7)糞尿溜め空間の底面が樹脂面として形成されるので、従来のように糞尿がコンクリート打ち面にこびり付いて清掃しにくいという問題も解消され、高圧水の噴射等によって溜まった糞尿を筒の延設方向に沿って効率的に押し流すことができる。したがって、糞尿溜め空間の清掃が容易になる、等の効果が奏される。
【0009】
また本発明では、前記床材から前記筒状筐体の断面中央上端までの室内高さ寸法が1.8メートル以上の値に設定されていることを特徴とする畜舎とした。
【0010】
この畜舎によれば、腰をかがめることなく清掃等を行えるので、畜舎内における諸作業の利便性が向上する。
【0011】
また本発明では、前記筒状筐体の両端は側壁によって閉塞され、少なくとも一方の側壁に人の出入り口が形成されていることを特徴とする畜舎とした。
【0012】
この畜舎によれば、筒状筐体の筒壁部に出入り口を設ける場合に比して出入り口の構造を簡易にすることができる。
【0013】
また本発明では、前記床材上の家畜収容空間を前記筒状筐体の延設方向に区画する間仕切り部材を備えたことを特徴とする畜舎とした。
【0014】
この畜舎によれば、例えば、生後3ヶ月の子豚群と生後5ヶ月の子豚群とを各区画ごとに飼育するというように、家畜収容空間を家畜の飼育状況に合わせて有効に利用することができる。
【0015】
また本発明では、前記筒状筐体には、前記筒状筐体の周方向に延設される補強部材が前記筒状筐体の延設方向に間隔を空けて複数内嵌され、前記間仕切り部材は、この補強部材にねじの締結により着脱自在に取り付けられる構成としたことを特徴とする畜舎とした。
【0016】
この畜舎によれば、簡易な構造で間仕切り部材を筒状筐体内に設置できる。そして、着脱自在であることから、変化する家畜の飼育状況に柔軟に対応できる。
【0017】
また本発明では、前記床材の上方空間において、前記床材から離間し、前記筒状筐体の延設方向に沿う監視用通路を備えたことを特徴とする畜舎とした。
【0018】
この畜舎によれば、家畜収容空間に対する視野角度が広くなり、多数の家畜の健康チェックが容易となる。監視用通路は床材の上方空間に設けられるので、家畜収容空間が狭くなることはない。
【0019】
また本発明では、前記筒状筐体と別体に設けられ、前記糞尿溜め空間に連通する糞尿貯留槽と、前記筒状筐体の内部において、前記筒状筐体の延設方向に沿って配管され、複数の吸気口を形成した吸気管と、を備え、前記吸気管を介して吸気した前記筒状筐体内の空気を前記糞尿貯留槽に送気する構成としたことを特徴とする畜舎とした。
【0020】
この畜舎によれば、糞尿から発生するメタンガスやアンモニア等が吸気管を介して外部に排出されることになり、筒状筐体内にこれらのガスや臭気が充満することを防止できる。また、排出したガスの臭気を糞尿貯留槽を利用して処理できるので、経済的な畜舎を構築できる。この際、ガスを糞尿貯留槽内の糞尿に曝気させれば、糞尿を浄化させることができる。
【0021】
また本発明では、前記筒状筐体をFRPパイプから構成したことを特徴とする畜舎とした。
【0022】
この畜舎によれば、安価で高強度な筐体を確保できる。
【0023】
また本発明では、前記FRPパイプは、断熱材層を間に挟んだ3層構造からなることを特徴とする畜舎とした。
【0024】
この畜舎によれば、外気に対して筒状筐体内の保温が良好となるので、寒冷地の屋外等に設置する場合に有効となる。
【0025】
また本発明では、前記筒状筐体を内側の筒状筐体と外側の筒状筐体との2重構造とし、両者間の空間に空気または水を通す構成としたことを特徴とする畜舎とした。
【0026】
この畜舎によれば、経済的なランニングコストで、内側の筒状筐体内の室温、つまり家畜収容空間の室温を適温に保持できる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、家畜の収容施設費用が安価で済み、糞尿の清掃も容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明に係る畜舎は、特に子豚の収容に適している。
「第1実施例」
図1ないし図3は第1実施例に関する図面であり、図1は本発明に係る畜舎の外観斜視図(一部破断)、図2において(a)、(b)はそれぞれ図1におけるA−A断面図、B−B断面図、図3において(a)、(b)はそれぞれ本発明に係る畜舎の平断面説明図、側断面説明図である。
【0029】
図1ないし図3において、畜舎1は、筒の延設方向(筒軸方向)が横方向となるように設置される、閉断面で一定形状断面の筒状筐体2を主な外郭部材として構成される。本実施例では、筒状筐体2は断面円形を呈した円筒部材として構成されている。筒状筐体2の寸法は、収容する家畜数にもよるが、例えば子豚100頭程度を収容する場合、外径約2.5メートル、長さ約10メートル程度とする。筒状筐体2は樹脂製であり、その板厚としては、例えば数ミリメートル〜数センチメートル程度である。また、筒状筐体2の内壁面は特に、糞尿がこびり付きにくいように鏡面状に形成されている。
【0030】
樹脂製の筒状筐体2の具体例としては、FRP(繊維強化プラスチック)パイプが好適である。FRPパイプとしては、金型に半硬化状態のFRPシートを巻きつけてパイプ状に成形する、いわゆるシートワインディング製法で製造されたものを使用することができる。
【0031】
断熱効率を高めるために、筒状筐体2を2重構造としてもよい。この場合、内側の筒状筐体と外側の筒状筐体との間に形成される空間については、そのまま空気貯めの空間としてもよいし、ウレタン材等の断熱材を介在させてもよい。後者の場合で筒状筐体2をFRPパイプとすれば、つまり、筒状筐体2を、断熱材層を間に挟んだ3層構造からなるFRPパイプとすれば、シートワインディング製法により容易に製造できるので、断熱性と経済性の両立を図ることができる。
【0032】
筒状筐体2の両端は円板形状の側壁3によって閉塞される。側壁3もFRP等の樹脂材から構成される。各側壁3には、人の出入り口としてのドア4、換気扇5、窓6、餌投入口用の開閉蓋7が取り付けられている。ドア4は側壁3の中央部付近に設けられ、開閉蓋7はドア4を挟んで一対設けられている。換気扇5による直接的な空気の流れが家畜(子豚)にかからないように、換気扇5は家畜(子豚)よりも上方の高さ位置に取り付けられている。
【0033】
また、図2に示すように、筒状筐体2の上部には換気用のファン8が取り付けられ、このファン8を保護するカバー9が筒状筐体2の上部外面側に取り付けられている。ファン8は、筒状筐体2の長さ方向においても間隔をおいて複数取り付けられている。なお、ファン8に代えて、筒状筐体2内に外気を送り込む送風機を筒状筐体2の上部に取り付ける態様としてもよい。
【0034】
断面円形の筒状筐体2を地面に載置するに当たっては、例えば、筒状筐体2の下部外面側に、筒状筐体2の姿勢を維持するための取り付け台座10が複数あてがわれる。
【0035】
筒状筐体2の内部の下方には家畜載置用の床材11が水平状に設置され、例えば、筒状筐体2の下端から50センチメートル程度上方に設置される。床材11は、概ね筒状筐体2の内部全長にわたって設置されており、筒状筐体2の内部空間を上方の家畜収容空間12と下方の糞尿溜め空間13とに区画する。これにより、糞尿溜め空間13は、床材11よりも下方に位置した、筒状筐体2の断面円弧状の内壁面を底面とする空間として構成される。床材11には、家畜の糞尿を糞尿溜め空間13に落下させるために落下孔が全面にわたって形成されている。床材11の具体例としては、スノコや打抜き金網、等であり、そのスリットや網目が前記落下孔に相当する。床材11の材質としては、金属、プラスチック等が好適であるが、特に限定されるものではない。
【0036】
床材11の縁部は図示しない固定手段により、筒状筐体2の内壁面や側壁3の内面等に固定される。図3等に示すように、一方の側壁3の下部には、糞尿溜め空間13に溜まった糞尿を外部に排出するための集尿ピット14が取り付けられる。
【0037】
また、家畜収容空間12には清掃時等に人が入る。日本人の成人男性の平均身長がおよそ1.7メートル前後であることを考慮すると、家畜収容空間12の高さ寸法、すなわち図2に示すように、床材11から筒状筐体2の断面中央上端までの室内高さ寸法Hは少なくとも1.8メートル以上の値に設定されていることが好ましい。なお、筒状筐体2の製造コストや搬送性を考慮すると、筒状筐体2の外郭形状における高さ寸法は3メートル以内であることが好ましい。
【0038】
筒状筐体2内において、各開閉蓋7に対応した位置には餌箱15が設置されている。図4は餌箱の説明図であり、(a)は外観斜視図、(b)は側断面説明図である。図1の開閉蓋7を開けて投入された餌は、餌箱15の上端開口からホッパ部を介して餌箱15の下部に供給される。家畜は餌箱15の前面に形成された鉄格子15a付の開口部から餌を食べる。
【0039】
以上のように、筒の延設方向を横方向として設置され、複数の家畜を収容する筒状筐体2と、この筒状筐体2の内部に水平状に設置され、家畜の糞尿用の落下孔を形成した家畜載置用の床材11と、を備える畜舎1とすれば、次のような効果が奏される。
(1)家畜の収容施設を筒状筐体2から構成することで、家畜の収容施設費用を安価にできる。また、筒状筐体2を地面に載置するだけで済むので、固定資産税がかからずに済み、建築確認の作業等も不要となる。筒状筐体2の設置場所の移動も容易となる。
(2)床材11に糞尿の落下孔が形成されているので、床材11に糞尿が溜まることがない。したがって、床材11上の家畜に対して衛生的となり、床材11の清掃も容易となる。
(3)筒状筐体2が樹脂材よりなるので、金属材料とした場合に比して耐腐食性に優れる。
(4)部材点数が少なく、畜舎1の組み立て時間が短時間で済む。また、簡易な構造であるので、同様のものを複数連結することも容易であり、拡張性に優れる。
(5)気密性が高い構造となり、年間を通じ空調環境が良好となる。また、野鳥やネズミの侵入を防止できる。
(6)筐体が筒状を呈しているので、筐体強度が高くなり、耐積雪性に優れる。
また、床材11の下方の空間が、筒状筐体2の内壁面を底面とする糞尿溜め空間13として構成される畜舎1とすれば、
(7)糞尿溜め空間13の底面が樹脂面として形成されるので、従来のように糞尿がコンクリート打ち面にこびり付いて清掃しにくいという問題も解消され、高圧水の噴射等によって、溜まった糞尿を筒の延設方向に沿って効率的に押し流すことができる。これにより、糞尿溜め空間13の清掃が容易になる。
という効果も奏される。
【0040】
なお、本実施例のように、筒状筐体2の断面形状を円形とすることで、糞尿溜め空間13の底面が下側に向けて凸となる曲面から構成されることになるので、糞尿が筒状筐体2の下端に集まりやすくなり、高圧水の噴射等によって、溜まった糞尿を筒の延設方向に沿ってより効率的に押し流すことができる。
【0041】
また、床材11から筒状筐体2の断面中央上端までの室内高さ寸法Hを1.8メートル以上の値に設定すれば、腰をかがめることなく清掃等を行えるので、畜舎1内における諸作業の利便性が向上する。
【0042】
また、筒状筐体2の両端が側壁3によって閉塞され、少なくとも一方の側壁3に人の出入り口(ドア4)が形成される構成とすれば、筒状筐体2の筒壁部に出入り口を設ける場合に比して出入り口の構造を簡易にすることができる。
【0043】
さらに、筒状筐体2をFRPパイプから構成すれば、高強度な筐体で、かつ安価な畜舎を構築できる。特に経済性から言えば、シートワインディング製法で製造されたFRPパイプとすることが好ましい。
【0044】
図5は筒状筐体2の内部のレイアウト変形例を示す図であり、畜舎1の平断面説明図である。この変形例では、筒状筐体2の長手方向中央部に給餌エリア16を設け、この給餌エリア16を挟んで両側に家畜収容空間12を形成している。給餌エリア16への出入り口として筒状筐体2の筒壁部にはドア17が設けられている。給餌エリア16の床材は家畜載置用の床材11であってもよいし、FRP等から構成してもよい。
【0045】
「第2実施例」
図6ないし図8は第2実施例に関する図面であり、図6は畜舎の外観斜視図(一部破断)、図7は断面説明図、図8は平断面説明図である。
【0046】
第1実施例の筒状筐体2が断面円形を呈した円筒部材として構成されていたのに対し、第2実施例の筒状筐体22は、断面略四角形状を呈している。この断面略四角形状において、上面部22aと一対の側面部22bの各面は外側に向けて凸となるように円弧面として形成されている。下面部22cは地面に安定して載置させるべく平面状に形成されている。
【0047】
この筒状筐体22としても、FRPパイプが好適であり、シートワインディング製法で製造されたものを使用することができる。断熱効率を高めるために、筒状筐体22を2重構造としてもよく、例えば、筒状筐体22を、断熱材層を間に挟んだ3層構造からなるFRPパイプとしてもよい。
【0048】
筒状筐体22の両端は側壁23によって閉塞される。側壁23もFRP等の樹脂材から構成される。側壁23には、換気扇25や窓26が取り付けられている。本実施例において、人の出入り口であるドア24は一方の側面部22bの長手方向中央部に取り付けられている。図8に示すように、筒状筐体22の長手方向中央部に給餌エリア16が形成され、餌箱15が設置されている。
【0049】
筒状筐体22には、上面部22aと一対の側面部22bにおける内壁面に当接するように、補強部材38が内嵌されている。補強部材38は図8に示すように断面L字状を呈しており、筒状筐体22の延設方向に間隔をおいて複数設けられている。図6や図7に示すように、補強部材38の開口部38aの下縁辺38bは水平状に形成されており、例えば床材21はこの下縁辺38bに載置される。補強部材38の下部には、糞尿溜め空間13を長手方向に連通させるべく切欠き38cが形成されている。このような補強部材38を設けることで筒状筐体22の強度を効果的に上げることができるので、筒状筐体22の板厚を薄くさせることができ、経済性において有利となる。勿論、この補強部材38の適用は第1実施例においても可能である。
【0050】
そして、筒状筐体22の内部には、家畜載置用の床材21が例えば補強部材38の下縁辺38bに水平状に設置される。これにより、床材21は、筒状筐体22の下端から40〜50センチメートル程度上方に設置される。床材21は、筒状筐体22の内部空間を上方の家畜収容空間12と下方の糞尿溜め空間13とに区画する。これにより、糞尿溜め空間13は、床材21よりも下方に位置した、筒状筐体22の内壁面(下面部22c)を底面とする空間として構成される。床材21としては、第1実施例の床材11と同じものが使用される。また、一方の側壁23の下部には、糞尿溜め空間13に溜まった糞尿を外部に排出するための集尿ピット14(図8)が取り付けられる。
【0051】
本実施例においても、家畜収容空間12の高さ寸法、すなわち図7に示すように、床材21から筒状筐体22の断面中央上端までの室内高さ寸法Hは少なくとも1.8メートル以上の値に設定されていることが好ましい。また、筒状筐体22の製造コストや搬送性を考慮すると、筒状筐体22の外郭形状における高さ寸法は3メートル以内であることが好ましい。なお、家畜収容空間12の高さ寸法に余裕がある場合には、屋外における日光照射による温度上昇などを考慮して、図7に仮想線で示すように家畜収容空間12の上方に断熱材39を配することもできる。
【0052】
以上のような第2実施例でも、第1実施例で記した(1)〜(7)の効果を奏するものである。
【0053】
「第3実施例」
図9ないし図11は第3実施例に関する図面であり、図9、図10はそれぞれ畜舎の外観斜視図(一部破断)、平断面説明図、図11は補強部材に対する間仕切り部材の取り付け構造を示す説明図である。
【0054】
第3実施例では、図9に示すように、筒状筐体32を、断面円形を呈した円筒部材から構成した場合を示しており、側壁3には、換気扇5、窓6、換気扇5や筒状筐体32内の照明機器(図示せず)を制御する制御盤37が取り付けられる。この第3実施例の主な特徴部は、家畜収容空間12を筒状筐体32の延設方向に区画する間仕切り部材41を備えた点にある。
【0055】
第2実施例で示した補強部材38と同様、筒状筐体32の強度を上げる目的で、筒状筐体32の周方向に延設された形状からなる補強部材42が、図10に示すように、筒状筐体32の延設方向に間隔を空けて複数内嵌されている。前記間仕切り部材41は、この補強部材42にねじの締結により着脱自在に取り付けられる構造となっている。図10では、間仕切り部材41を4つ設けて家畜収容空間12を5室に区画した場合を示している。人の出入り口であるドア24は、それぞれ5室に対応して筒状筐体32の周壁部に複数取り付けられている。各ドア24を入った直後のエリアは給餌エリア16となっており、餌箱15が設置されている。ドア24の材質は、耐腐食性を考慮すると樹脂製であることが好ましく、FRPが好適である。
【0056】
図11に示すように、補強部材42の開口部42aの下縁辺42bは水平状に形成されており、床材11(図9)はこの下縁辺42bに載置される。補強部材42の下部には、糞尿溜め空間13(図9)を長手方向に連通させるべく切欠き42cが形成されている。間仕切り部材41はその両端部が、補強部材42の一面側において開口部42aの左右縁にあてがわれたうえで、補強部材42の他面側で開口部42aの左右縁に跨る固定部材43に対し、ねじ(具体的にはボルトおよびナット)により固定される。つまり、間仕切り部材41は、固定部材43とで補強部材42を挟み込む態様として、補強部材42に固定される。なお、符号41a、43aはボルト挿通用の孔である。間仕切り部材41の材質は、耐腐食性を考慮すると樹脂製が好ましく、FRPが好適である。
【0057】
以上のように、家畜収容空間12を筒状筐体32の延設方向に区画する間仕切り部材41を設ければ、例えば、生後3ヶ月の子豚群と生後5ヶ月の子豚群とを各区画ごとに飼育するというように、家畜収容空間12を家畜の飼育状況に合わせて分けることができる。また、間仕切り部材41を、補強部材42にねじの締結により着脱自在に取り付ける構成とすれば、簡易な構造で間仕切り部材41を筒状筐体32内に設置でき、着脱自在であることから、変化する家畜の飼育状況に柔軟に対応できる。
【0058】
「第4実施例」
図12ないし図15は第4実施例に関する図面であり、図12(a)、(b)はそれぞれ畜舎の平断面説明図、側断面説明図、図13は畜舎の断面説明図である。図14は、集尿ピットの構造説明図である。図15は、糞尿浄化処理系と筒状筐体内の空気の処理系とを示すブロック図である。
【0059】
第4実施例では、筒状筐体52は断面略楕円形状を呈している。図12(a)に示すように、一方の側壁3にはドア4が取り付けられるとともに、筒状筐体52の周壁部にはドア24が取り付けられている。この第4実施例でも、第3実施例の場合と同様、家畜収容空間12は間仕切り部材41により複数に区画されている。
【0060】
第4実施例の特徴部は主に次の2点である。1点目は、図12、図13に示すように、床材11の上方空間において、床材11から離間し、筒状筐体52の延設方向に沿う監視用通路53を設けたことである。2点目は、図15に示すように、筒状筐体52と別体に設けられ、糞尿溜め空間13に連通する糞尿貯留槽54と、筒状筐体52の内部において、筒状筐体52の延設方向に沿って配管され、複数の吸気口55aを形成した吸気管55と、を備え、吸気管55を介して吸気した筒状筐体52内の空気を糞尿貯留槽54に送気する構成としたことである。
【0061】
監視用通路53は、図13に示すように、家畜や間仕切り部材41等と干渉しない程度に床材11から離間して設けられる。その取り付け態様は、例えば懸吊バー56を介して筒状筐体52や補強部材42に懸吊させる等である。監視用通路53は、例えばパンチングメタル等から構成されるが、特にこれに限定されるものではない。このような監視用通路53を設ければ、家畜収容空間12に対する視野角度が広くなり、多数の家畜の健康チェックが容易となる。監視用通路53は床材11の上方空間に設けられるので、家畜収容空間12が狭くなることはない。
【0062】
次に、糞尿浄化処理系と筒状筐体52内の空気の処理系について説明する。吸気管55は、床材11の下方、つまり糞尿溜め空間13に配管される。図13から判るように、吸気口55aは、家畜から落下してくる糞尿が内部に入らないように、その開口部は下向きとなっている。図15において、吸気管55は側壁3から外部の配管55bに連通している。配管55bの末端は糞尿貯留槽54に連通している。配管55bの途中にはブロワ58が取り付けられている。
【0063】
糞尿貯留槽54は、配管59を介して集尿ピット14に連通している。集尿ピット14の一構造例を図14を参照して説明すると、集尿ピット14の下端には配管59の端口が上向きに臨み、通常時、この配管59の端口は栓60により閉塞されている。集尿ピット14の上部には、開閉蓋14aが取り付けられ、通常時は閉じられている。したがって、この集尿ピット14周りからネズミが侵入するおそれはない。そして、定期的に(例えば数日に一度の割合で)糞尿を排出するときは、開閉蓋14aを開け、栓60を外すことで、糞尿を配管59を介して図15に示す糞尿貯留槽54に排出する。なお、糞尿貯留槽54は、1つの筐体内に3段階に区画されて構成されている。また、糞尿貯留槽54には図示しない糞尿浄化処理槽が接続されており、糞尿貯留槽54から排出された糞尿は糞尿浄化処理槽に送られる。
【0064】
以上により、図15において、ブロワ58を駆動して吸気管55に負圧を発生させることで、筒状筐体52内の下方の空気を吸気口55aから吸気し、例えば図示しないガス分解装置で所定のガス分解処理を行ったうえで、或いは直接、糞尿貯留槽54に送気する。具体的には、送気した空気を糞尿貯留槽54内の糞尿に曝気させる。なお、この曝気処理により、糞尿がある程度浄化されることになり、その分、次工程の糞尿浄化処理槽の浄化処理能力に余裕を持たせることができる。筒状筐体52内の下方の空気には、糞尿から発生するメタンガスやアンモニア等が多く含まれているので、これらが吸気管55を介して筒状筐体52の外部に排出されることで、筒状筐体52内にこれらのガスや臭気が充満することが防止される。また、排出したガスの臭気を糞尿貯留槽54を利用して消臭できるので、経済的な畜舎を構築できる。
【0065】
以上、本発明について好適な実施形態を説明した。本発明は、説明した形態に限られることなくその趣旨を逸脱しない範囲で適宜に設計変更が可能である。例えば、筒状筐体2、22の内部では上方の温度が高くなりやすいので、筒状筐体2、22を内側の筒状筐体と外側の筒状筐体との2重構造とし、その間の空間を利用して、上方の空気と下方の空気とを強制的に循環させる空気循環システムを付加することもできる。
【0066】
また、前記空間に水を通してもよい。図16は、水の循環処理系を示すブロック図である。内側の筒状筐体61と外側の筒状筐体62とは、リング状を呈した複数の連結部材63を介して同心状に配設される。連結部材63には、水を通すための貫通孔64が穿設されている。そして、水道や井戸、河川等からポンプPで水を引いて前記空間全体に流す。このように前記空間に水を通せば、夏場において、筒状筐体61内の室温を効果的に下げることができる。なお、前記空間から排出された水は例えば家畜の飲み水として利用することもできる。また、水の代わりに温風を通す、具体的には温風を循環させることも勿論可能であり、この場合には、冬場において、筒状筐体61内の室温を効果的に上げることができる。
【0067】
また、筒状筐体をFRPパイプから構成する場合、前記したシートワインディング製法によるものの他に、ガラスロービングに樹脂を含浸させながら型に巻きつけて成形する、いわゆるフィラメントワインディング製法で製造したものを用いることができる。この場合、いわゆる型の外側に巻きつける外巻き式で製造されたものでもよいし、型の内側に巻きつける内巻き式で製造されたものでもよい。
【0068】
さらに、本発明において「筒状筐体」とは、その断面形状が一体成形のものに限られず、閉断面を呈することになれば、分割式のもの(例えば図17(a)に示すように、断面形状を上下に分割して筐体71、72からなる筒状筐体としたものや、図17(b)に示すように、断面形状を左右に分割して筐体73、74からなる筒状筐体としたもの)も含むものである。この場合、各筐体(筐体71〜74)を個別に現地までトラックやトレーラーで輸送できる。つまり、図2等に示した一体成形の筒状筐体に比して、トラックやトレーラーでの積載における道路法規上の高さ制限に関して有利となり、その分、各筐体71〜74の形状を大きく設計できる。したがって、断面形状の大きい畜舎を構築できることになる。
【0069】
さらに、本発明においては、糞尿用の落下孔を形成した床材を備えていれば、落下孔を有していない、例えば平滑な床面からなる床材(これを無孔床材というものとする)を混在させた場合も本発明に包含されるものである。図18(a)、(b)はそれぞれ畜舎の平断面説明図、側断面説明図であり、間仕切り部材41で区画された5つの空間それぞれに、糞尿用の落下孔を形成した床材11と、この床材11とほぼ床面が連なり、床材11と同様に家畜が載る無孔床材75とを備えた場合を示している。無孔床材75は例えばFRP板材から構成される。
【0070】
床を、落下孔を有した床材11のみから構成した場合、主に冷たい空気が下方、つまり糞尿溜め空間13から落下孔を通して上昇してくることから、状況によっては家畜(特に子豚)が風邪をひきやすくなる。これに対して、床材11に加えて無孔床材75を備える構成とすることで、子豚は下から空気が流れてこない無孔床材75側を主な居場所として選び、したがって風邪等の病気が発生しにくい環境を構築できる。豚は、寝場所などの自分の居場所周りを綺麗にしておく習性があるため、糞尿をする際には自ら落下孔を有した床材11側に移動する。
【0071】
次に、糞尿溜め空間13の最底部周りにおいて、主に尿を排出するための尿排出用小孔76を穿設する構成としてもよい。尿排出用小孔76は、糞はなるべく通さずに尿だけを落とすように、単独では例えば直径10ミリ程度の孔として構成され、これらを例えば10〜数10個程度密集させて穿設する。そして、この密集させた尿排出用小孔76群を図18(b)に示すように、筒状筐体の延設方向に間隔的に設ける。各尿排出用小孔76群の下方には尿受け槽77を設け、尿を配管78を介して例えば図15に示した糞尿貯留槽54に排出する。このように尿排出用小孔76を設ければ、糞尿の内の尿を効率良く、筒状筐体から外部に排出させることができる。
【0072】
また、糞尿溜め空間13に糞尿を掻き寄せるためのスクレイパ79を設けてもよい。スクレイパ79は、その掻き取り面部が糞尿溜め空間13の底面形状に合わせて形成されている。図19では、円弧面の掻き取り面部を有したスクレイパ79とした場合を示している。スクレイパ79は、例えばワイヤ80により糞尿溜め空間13の底部を筒状筐体の延設方向に沿って往復動し、糞尿を筒状筐体の端部、例えば集尿ピット14側へと掻き寄せる。スクレイパ79は、図示しないガイド部材により安定して筒状筐体の延設方向に沿って移動するようになっている。ワイヤ80は筒状筐体から外部に延出して、図示しない駆動源に接続している。スクレイパ79も例えばFRP材から構成される。糞尿溜め空間13の底面は樹脂面として形成されていることから、スクレイパ79による糞尿の掻き取り具合も良好となる。これにより、例えば、高圧水の噴射による清掃を省略できる、或いは高圧水の噴射による清掃間隔を広げることができる、などの効果が奏される。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明に係る畜舎の外観斜視図(一部破断)である。
【図2】(a)、(b)はそれぞれ図1におけるA−A断面図、B−B断面図である。
【図3】(a)、(b)はそれぞれ本発明に係る畜舎の平断面説明図、側断面説明図である。
【図4】餌箱の説明図であり、(a)は外観斜視図、(b)は側断面説明図である。
【図5】筒状筐体の内部のレイアウト変形例を示す平断面説明図である。
【図6】第2実施例における畜舎の外観斜視図(一部破断)である。
【図7】第2実施例における畜舎の断面説明図である。
【図8】第2実施例における畜舎の平断面説明図である。
【図9】第3実施例における畜舎の外観斜視図(一部破断)である。
【図10】第3実施例における畜舎の平断面説明図である。
【図11】補強部材に対する間仕切り部材の取り付け構造を示す説明図である。
【図12】第4実施例における畜舎の説明図であり、(a)、(b)はそれぞれ畜舎の平断面説明図、側断面説明図である。
【図13】第4実施例における畜舎の断面説明図である。
【図14】集尿ピットの構造説明図である。
【図15】糞尿浄化処理系と筒状筐体内の空気の処理系とを示すブロック図である。
【図16】筒状筐体を2重構造とした場合の水の循環処理系を示すブロック図である。
【図17】筒状筐体を断面形状において分割式とした場合の断面説明図である。
【図18】(a)、(b)はそれぞれ畜舎の平断面説明図、側断面説明図である。
【図19】スクレイパの外観斜視図である。
【符号の説明】
【0074】
1 畜舎
2、22、32、52 筒状筐体
3 側壁
4、24 ドア(出入り口)
11、21 床材
12 家畜収容空間
13 糞尿溜め空間
38、42 補強部材
41 間仕切り部材
53 監視用通路
54 糞尿貯留槽
55 吸気管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒の延設方向を横方向として設置され、複数の家畜を収容する樹脂製の筒状筐体と、
この筒状筐体の内部に水平状に設置され、家畜の糞尿用の落下孔を形成した家畜載置用の床材と、を備えたことを特徴とする畜舎。
【請求項2】
前記床材の下方の空間が、前記筒状筐体の内壁面を底面とする糞尿溜め空間として構成されていることを特徴とする請求項1に記載の畜舎。
【請求項3】
前記床材から前記筒状筐体の断面中央上端までの室内高さ寸法が1.8メートル以上の値に設定されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の畜舎。
【請求項4】
前記筒状筐体の両端は側壁によって閉塞され、少なくとも一方の側壁に人の出入り口が形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の畜舎。
【請求項5】
前記床材上の家畜収容空間を前記筒状筐体の延設方向に区画する間仕切り部材を備えたことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の畜舎。
【請求項6】
前記筒状筐体には、前記筒状筐体の周方向に延設される補強部材が前記筒状筐体の延設方向に間隔を空けて複数内嵌され、
前記間仕切り部材は、この補強部材にねじの締結により着脱自在に取り付けられる構成としたことを特徴とする請求項5に記載の畜舎。
【請求項7】
前記床材の上方空間において、前記床材から離間し、前記筒状筐体の延設方向に沿う監視用通路を備えたことを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の畜舎。
【請求項8】
前記筒状筐体と別体に設けられ、前記糞尿溜め空間に連通する糞尿貯留槽と、
前記筒状筐体の内部において、前記筒状筐体の延設方向に沿って配管され、複数の吸気口を形成した吸気管と、
を備え、前記吸気管を介して吸気した前記筒状筐体内の空気を前記糞尿貯留槽に送気する構成としたことを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の畜舎。
【請求項9】
前記筒状筐体をFRPパイプから構成したことを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の畜舎。
【請求項10】
前記FRPパイプは、断熱材層を間に挟んだ3層構造からなることを特徴とする請求項9に記載の畜舎。
【請求項11】
前記筒状筐体を内側の筒状筐体と外側の筒状筐体との2重構造とし、両者間の空間に空気または水を通す構成としたことを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれかに記載の畜舎。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate