説明

畝立施肥装置

【課題】 部分耕耘施肥において、畝断面にほぼ均一に施用剤を散布しようとする。
【解決手段】トラクタ車体1の後方に耕耘ロータリ6と耕耘土壌を受けて畝成形する畝成形器7を装着し、耕耘ロータリ6の耕耘軸15には複数の耕耘爪23,23…と畝成形器7で成形する畝の畝幅間で対応する対のディスク25,25を配設し、この対向するディスク25,25間またはその前方において繰り出された粉・粒状施用剤を土壌と共に攪拌する畝立施肥装置において、前記畝成形器7による畝の幅方向であって前記対のディスク25,25間に粉粒状物を拡散するディスク間拡散手段Kを設け、該拡散散布量を当該幅方向において異なる量に設定することで、耕耘爪で土寄せされてもディスク25,25間幅方向においてほぼ均一に施肥又は施薬できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、畝成形器によって形成された畝に、粉・粒状の肥料又は薬剤を施用する畝立施肥装置に関する。
【背景技術】
【0002】
耕耘ロータリの上方部に施肥ホッパ等を配置して、繰出流下させる肥料を耕耘ロータリの左右ディスク間に施肥する技術(例えば、特許文献1参照)が知られている。また、耕耘装置の上部に複数の施用タンクを備えて異なる粒状物施用剤や粉状物施用剤を収容し、これらを各施用タンク出口部に配設する繰出装置を介して共通の流下ホッパに導いて混合された施用剤を等しく一対のディスクの間隔内に入るように耕耘爪の前側に落下させる構成がある(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−6550号公報
【特許文献2】特開2010−172310号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1、2の構成では、粒状物及び粉状物施用剤を混合しあるいは別々に一対のディスクの間に入るように構成されることになり、粉・粒状施用剤は共にこれらディスク間にて耕耘攪拌されるものとなる。このように構成することで、施用剤を局所的に施用でき、然も耕耘作用を受けて土壌に攪拌されて作物に対する施用効果も大きい。
【0005】
ところが、耕耘攪拌する耕耘爪の配置は、一対の耕耘爪を互いに先曲り部が対向しあうように構成されて土壌は一対の耕耘爪の間に寄せられる傾向となるから、耕耘ロータリの前位に散布された施用剤は該攪拌土壌に伴って一対の耕耘爪の間に寄せられ、その結果、一対のディスク間における施用剤の分布が幅方向においても相違することとなる。このため、この発明は成形される畝の幅方向における施用剤の分布を適切に行わせようとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、トラクタ車体1の後方に耕耘ロータリ6と耕耘土壌を受けて畝成形する畝成形器7を装着し、耕耘ロータリ6の耕耘軸15には複数の耕耘爪23,23…と畝成形器7で成形する畝の畝幅間で対応する対のディスク25,25を配設し、この対向するディスク25,25間またはその前方において繰り出された粉・粒状施用剤を土壌と共に攪拌する畝立施肥装置において、前記畝成形器7による畝の幅方向であって前記対のディスク25,25間に粉粒状物を拡散するディスク間拡散手段Kを設け、該拡散散布量を当該幅方向において異なる量に設定してなる畝立施肥装置とする。
【0007】
このように構成し作業を開始すると、土壌は耕耘ロータリ6によって耕耘され、次いで畝成形器7の作用で畝立てされる。繰出手段Hからの粉粒状物は成形される畝のうち対向するディスク25,25間で攪拌され、該ディスク25,25間に分布する。また、拡散手段Kで繰り出される粉粒状物は、ディスク25,25の内側において幅方向に散布量を異ならせてあるから、一対の対向耕耘爪23,23…の打ち込み作用によってディスク25,25間に偏って分布しようとしても予めこれを予測して耕耘爪の片寄せ方向に対応する個所の散布量を少量に設定することによってディスク25,25間幅方向においてほぼ均一に施肥又は施薬できる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、一対のディスク25,25間に一対の耕耘爪23,23を配置し、耕耘爪23,23による打ち込み作用によって耕耘土壌を一対のディスク25,25間中央に寄せるよう構成し、該一対のディスク25,25間に散布するディスク間拡散手段Kの中央側散布量を左右側散布量に対して少量に設定してある請求項1に記載の畝立施肥装置とする。
【0009】
このように構成すると、耕耘爪23,23の打ち込みによって耕耘土壌は一対のディスク25,25間中央の寄せられようとするが、ディスク間拡散手段Kによる施用剤散布は中央側が少量の薄く設定されているから上記土寄せに伴ってディスク25,25間にほぼ均一な散布状態となる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、ディスク間拡散手段Kは、横方向に長い拡散口部を備えると共に、中央部を絞って口部断面積を左右端部側よりも小に設定した拡散用案内筒55とする請求項2に記載の畝立施肥装置とする。これによって、ディスク25,25間において、施用剤は中央部では絞られた拡散口部から少量に散布される。
請求項4に記載の発明は、ディスク間拡散手段Kは、拡散用樋46の翼部46b中央に隆起部46rを形成してなる請求項2に記載の畝立施肥装置とする。これによると、隆起部46rを越える施用剤は少なく左右側に対して中央側への流下案内量を少なくしている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、一対の対向耕耘爪間に偏って分布しようとしても予めこれを予測して耕耘爪間に対応する個所の散布量を側部に対して少量に設定することによって幅方向においてほぼ均一に施肥又は施薬できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】畝立施肥装置の側面図。
【図2】畝立施肥装置の背面図。
【図3】耕耘ロータリ部の背面図。
【図4】耕耘ロータリ部の側面図。
【図5】散布樋組の斜視図。
【図6】作用説明平面図。
【図7】従来技術を示す概念図
【図8】本発明の一例を示す概念図
【図9】本発明の他の例を示す概念図(イ)、拡散用案内筒の一例を示す斜視図(ロ)
【図10】拡散用案内筒の作用を示す概念図(イ)(ロ
【図11】拡散用案内筒の装着状態を示す斜視図(イ)、拡大側面図(ロ)
【図12】ホッパの他の例を示す正面図(イ)、繰出口の作用説明図(ロ)〜(ニ)
【図13】拡散用樋の改良例を示す正面図(イ)、側面図(ロ)
【図14】拡散用樋の他の改良例を示す正面図(イ)(a)、側面図(ロ)(b)、及び作用説明図(ロ)(a)、(ロ)(b)
【図15】拡散用樋の更に他の改良例を示す正面図(イ)(a)、側面図(ロ)(b)、及び作用説明図(ロ)(a)、(ロ)(b)
【図16】拡散用樋の更に他の改良例を示す正面図(イ)、側面図(ロ)
【図17】他の畝立施肥装置の概念図(イ)(ロ)
【発明を実施するための形態】
【0013】
この発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
トラクタ車体1の後部にリフトアーム2によって昇降されるロアリンク3、トップリンク4等からなる3点リンク機構5を構成し、該3点リンク機構5を介して耕耘ロータリ6及び畝成形器7からなる耕耘畝立部Aを装着している。
上記耕耘ロータリ6及び畝成形器7からなる耕耘畝立部Aの上方に、左右中央の粉繰出ホッパ8と左右側方に一対設けられる粒繰出ホッパ9,9を有する施肥装置Bを設けている。
【0014】
10,10は車体1の後輪、11はフェンダー、12はキャビンである。
前記耕耘ロータリ6は所謂センタドライブ形態で、左右の耕耘軸15,15を伝動駆動する伝動ケース16を耕耘幅の中央部に垂下状態に設ける構成である。
左右の耕耘軸15,15は、伝動ケース16に近い第1の耕耘軸15a,この第1の耕耘軸15aの先端側異径部に着脱自在に嵌合する主体の第2耕耘爪15bからなり、伝動ケース16から左右に突出する耕耘出力軸17,17に前記第1耕耘軸15aをスプライン嵌合して動力伝動可能に構成し、前記異径嵌合部を介して第1耕耘軸15aの回転動力を第2耕耘軸15bに伝達する構成とし、第2耕耘軸15bの軸方向の抜け止めは長尺のボルト部材18で行なう構成である。
【0015】
第1耕耘軸15aの周りには爪ホルダ19を直接に溶接一体化して取り付け、第2耕耘軸15bには、爪ホルダ20を適宜個数、位相をずらせて配設した短ボス体21,21を外嵌してスライド自在に設け、第2耕耘軸15bの軸方向にスライドさせて所定の位置で締付部22,22によって固定する構成である。これら爪ホルダ19,20には耕耘爪23,23を着脱自在に装着している。
【0016】
前記第2耕耘軸15bには、左右間隔離れて一対のディスク25,25と該一対の耕耘ディスク25,25間に配置する耕耘爪23を設けた長ボス体(筒状体)26をスライド自在に挿通し、締付具27,27で固定できる構成としている。詳述すると、所定間隔(例えば200mm)離して長ボス体(筒状体)26の周面に回転軸15に直交する平面に対して僅かに捻って複数の取付板28a〜28d(図例では4枚)を同位相でありながら半径方向には等間隔に配置し、かつこれら取付板28a〜28dに夫々螺旋羽根形態の複数枚の螺旋羽根からなっている(図例では分割螺旋羽根25a〜25dの4枚)ディスク25を装着する。
【0017】
上記長ボス体(筒状部材)26には所定間隔(例えば200mm)離して上記構成の螺旋羽根25a〜25dからなるディスク25を左右に対向する関係に設けている。この一対のディスク25,25の回転は土壌を耕耘する機能と螺旋状に形成されるため耕耘土壌を対向する側即ち左右ディスク25,25の間隔内側に寄せる機能を備えている。即ち、前記分割螺旋羽根25a〜25dの打ち込み作用で土壌を各対抗するディスク25,25間中央側に跳ねだすものである。
【0018】
また、長ボス体(筒状部材)26の中間部には複数の爪ホルダ29,29を配設し、該爪ホルダ29,29に前記耕耘爪23,23を着脱自在に装着している。これら耕耘爪23,23は先端側を湾曲させた所謂ナタ爪形態であって、この湾曲先端側が互いに内向いて対向しあう状態に設けられる。したがって、一対の左右ディスク25,25の間隔部内で耕耘爪23,23により、間隔内側に土寄せ機能を具備する。上記左右ディスク25,25の土寄せ機能と相俟って耕耘土壌をこれら左右ディスク25,25の間隔部中央側に寄せながら耕耘される。
【0019】
上記のように構成された耕耘ロータリ6は、第1、第2耕耘軸15a,15bの回転によって耕耘爪23,23…が順次土中に打ち込まれ土壌を耕耘する。また、対向するディスク25,25も同様に回転し、左右に対向する関係となって、螺旋状に配設された螺旋羽根25a〜25d回転は土壌をこの対向する間隔部内に向けて移動させながら耕耘する。
【0020】
第2耕耘軸15bに一対のディスク25,25を配設する構成としたが、伝動ケース16を挟んで左右に位置する第1耕耘軸15a,15aの夫々に一対として対向しあうディスク25,25の取付板28Ca〜28Cdを直接的に設けて、後記のように3畦成形に対応させている。
【0021】
又、この耕耘ロータリ6の上側を覆う耕耘カバー30上に位置する耕耘フレーム31から後方にわたってヒッチ32を設け、このヒッチ32にツールバー33を取付ける。このツールバー33には、畝成形器7、後述のステップ34及び尾輪36等を配置できる。
畝成形器7は、片培土板40,40の一対を耕耘幅にわたって複数取付け(図例では3対配置して、3条畝成形形態としている)、このツールバー33に沿って横移動可能にして、畝幅調節及び成形畝の間隔を調整することができる。前記施肥装置Bは、耕耘フレーム31、及びヒッチ32等の上方に支持フレーム41を介して支持されるツールバー42に沿って配置し、横方向に取付位置を移動調節可能に構成している。
【0022】
ここにおいて、畝立施肥装置の構成は、トラクタ車体1の後方に耕耘ロータリ6とこの耕耘土壌を培土する畝成形器7を装着し、これら前部の耕耘ロータリ6の上方部で左右中央位置には、主に薬剤を施用するため粒状物を繰出す粒繰出ホッパ8を設け、後部の畝成形器7の上方部で、左右両側位置には主に肥料を施用するため粉状物を繰出す粉繰出ホッパ9,9を設けたものである。車体1の進行によって耕耘ロータリ6によって土壌面が耕耘されて、この耕耘土壌面を畝成形器7によって培土して畝成形する。この畝には、粒繰出ホッパ8から繰出す粒状施薬と、粉繰出ホッパ9から繰出す粉状肥料を土壌と攪拌しながら施用する。このような粉、粒状物の施用において、粒繰出ホッパ8を前部の耕耘ロータリ6上方の中央部に搭載し、粉繰出ホッパ9を後部の畝成形器7上方の左右両側部に搭載して、粉状物(粉状肥料)及び粒状物(粒状施薬)等の繰出流下施用を直下方向へ垂直状に行わせる。
【0023】
粒状物(粒状施薬)と粉状物(粉状肥料)を混合しながら畝立土壌面に施用する作業機形態にあっては、これら施薬と肥料を各別に収容しておくと、繰出ホッパの設置数が耕耘ロータリの上部で多くなり、これらの占めるスペースが広くなり、肥料等の供給作業やメンテナンス等が煩雑化となり易いが、前記のように、トラクタ車体1の後方に耕耘ロータリ6とこの耕耘土壌を受けて畝成形する畝成形器7を装着し、これら前部の耕耘ロータリ6の上方部で左右中央位置には、粒状物を繰出す粒繰出ホッパ8を設け、後部の畝成形器7の上方部で、左右両側位置には粉状物を繰出す粉繰出ホッパ9を設けた畝立施肥装置の構成とすることにより上記課題を解消する。すなわち、車体1の進行によって耕耘ロータリ6によって土壌面が耕耘されて、この耕耘土壌面を畝成形器7によって培土して畝成形し、この畝面には、粒繰出ホッパ8から繰出す粒状物と、粉繰出ホッパ9から繰出す粉状物を施用するが、これら各ホッパ8、9を前後、左右にずらせて配置しているため、各ホッパ7、8の容量を大きく設定し、中央部のホッパ8に対する粒状物の供給等の作業を行い易くする。従って、上記の構成によると、粒繰出ホッパ8と粉繰出ホッパ9を前後、左右に位置ずれさせた形態に配置するため、これら各ホッパ8、9の容量を大きくして有効に配置することができ、耕耘ロータリ6の上方部における特に中央部の粒繰出ホッパ8に対するメンテナンス性を容易に行うことができる。
【0024】
次に、上記実施例では、前記粒繰出ホッパ8から繰出される粒状物(粒状施薬)を流下供給するホース45の粒供給口45aを拡散用樋46にて圃場に拡散散布し、粉繰出ホッパ9から繰出される粉状物(粉状肥料)を流下案内するホース47の粉供給口47aを筒状樋48にて圃場に局所散布する構成としている。
【0025】
前記各繰出ホッパ8,9,9は、平面視略方形状形態に設けられて、開閉可能の蓋50を有する。各繰出ホッパ8,9,9の底部には、繰出ロールをモータで駆動して該ホッパ8,9,9の粉状物、又は粒状物を繰出す繰出装置51,51,51を設ける。各繰出装置51には3個所ずつ繰出口52,53,53を設け、夫々に前記ホース45,47,47を連結し、これらホース45,47,47によって粒状物G(粒状施薬)は拡散用樋46を、粉状物P(粉状肥料)は筒状樋48,48を介して圃場に散布される。
【0026】
拡散用樋46は、ホース45の下端を挿入させる受筒体46aと、この受筒体46aから排出される粒状物を受けて左右に拡散する案内する翼部46bと上部の飛散防止板46cからなり、翼部46bを滑走しながら左右に拡散落下される構成である。一方、筒状樋48は一対宛に設けられ左右繰出ホッパ9,9に接続するホース47,47の各先端を受ける構成である。
【0027】
拡散用樋46及び一対の筒状樋48,48は、耕耘ロータリ6の前側において、該耕耘ロータリ6のフレームから前下向きに延出するステー49a,49a…間に水平姿勢で横設された支持ロッド49bによって支持される。なお、該支持ロッド49bに対して、拡散用樋46は前方に位置し、筒状樋48,48は後方に位置している。
【0028】
拡散用樋46からの粒状物G(粒状施薬)が機体の進行前位に左右に拡散して落下し前記耕耘ロータリ6の対向する左右ディスク25,25間隔内外共に散布状態となり、一方筒状樋48からの粉状体P(粉状肥料)はその略下方に落下しこれら対向する左右ディスク25,25の間隔内に散布されるようになっており、その左右方向の調整は、支持ロッド49bに対して拡散用樋46及び筒状樋48,48を貫通させたブラケット46a,48a,48aのロック用ボルトナット55による。前記拡散用樋46の受筒体46a、及び筒状樋48,48の上部はホース下端が挿通し易いように拡開状に形成されている。
拡散用樋46と一対の筒状樋48,48からなる散布樋組は後に成形される畝条数に対応し備えられる。図例では中央及び左右の3畝形態でこれに併せて散布樋組も3組に構成される。
【0029】
前記のように、繰出ホッパ8の繰出装置51、ホース45及び拡散用樋46によって拡散散布を行う拡散手段Wを構成し、繰出ホッパ9,9の繰出装置51,51、ホース47,47及び筒状樋48,48によって標準の局所散布を行う繰出手段Hを構成するものである。
【0030】
なお、拡散散布用の拡散用樋46には筒状樋48を交換取付自在に構成され、夫々の樋46,48には散布幅の目安となる数値を表示している。
【0031】
上例の作用について説明する。
【0032】
前記繰出ホッパ8から繰り出される粒状物(粒状施薬)は、前記拡散手段Kを介して耕耘ロータリ6の前面に左右所定幅に拡散散布される。また、繰出ホッパ9,9から繰り出される粉状物(粉状肥料)は、前記繰出手段Hを介して上記粒状施薬の直後に局所散布される。前記耕耘ロータリ6によって耕耘された土壌面は畝成形器7により畝立て成形されるが、この耕耘ロータリ6による耕耘、即ち耕耘爪23,23…の耕耘作用によって土壌が耕耘されながら、対向するディスク25,25間においては、拡散手段Kから散布される粒状物(粒状施薬)の一部と繰出手段Hから局所散布される粉状肥料の全部が攪拌される。また対向するディスク25,25の外側においては耕耘爪23,23…の耕耘作用が行われる。この後後続する畝成形器7によって所定条(図例では3条)の畝Rが成形される。
【0033】
特定の薬剤のように左右のディスク25,25間断面全域に分布させる方が効果が大きい場合には、前記拡散手段K(拡散用樋46)を用いることによって所期の効果を奏し得ると共に、また、特定の肥料においては、繰出手段Hによってディスク25,25間の局所に分布させることにより、低コストの作業を実現できる。
【0034】
前記繰出手段Hからの粉状物(粉状肥料)は成形される畝のうち対向するディスク25,25間で攪拌され、畝の断面のうち該ディスク25,25間に分布する。また、拡散手段Kで繰り出される粉粒状物は、ディスク25,25左右間隔部に亘り分布して耕耘爪23,23で攪拌されるため、耕耘爪23の先端側畝成形器7によって畝立てされる畝Rの中央部ほどサイド部に比較して濃度が濃い状態に分布する(濃度大散布域Z、図7)。そこで、拡散手段Kとしての拡散用樋46を一対に設けると共にディスク25,25間における中央部(図例では、伝動ケース16通過部)には散布量が少なくなるようになす(図8)。このように構成してディスク25,25間の幅方向分布を異ならせておくことにより、耕耘爪23,23によって中央側に土壌と共に寄せられようとする施用剤を畝内に均一に分布させることができる。
【0035】
また、図9に於ける構成は、拡散用樋46を改良して横方向に長い拡散口部を備えると共に、中央部を絞って口部断面積を左右端部側よりも小に設定した拡散用案内筒55を構成している(図9(ロ))。このため、中央部からの流下量が端部側の流下量よりも少なくなり、粉粒状物は元々左右中央部の少ない状態に圃場面に散布される。なお、このように構成すると、左右幅方向への散布量の設定を大小に行うことができ、拡散用案内筒55が傾斜変動しても散布量の変動が少ない。また、拡散用案内筒55を縦軸回りに回動調節できる構成とすることで筋状散布、即ち局所散布を行うことができ、簡単な切り替え構成で拡散散布(図10(ロ))と局所散布(図10(イ))の切り替えを行うことができる。
【0036】
拡散用樋の翼部46b中央に隆起部46rを形成する拡散用樋46とし(図5)、左右側に対して中央側への流下案内量を少なくする形態でもよい。このように構成すると、隆起部46rの形成のみの簡単な構成で左右幅方向の散布量を変更設定できコストダウンが図れる。
【0037】
前記ディスク間拡散手段K、即ち、拡散用案内筒55あるいは拡散用樋46を採用することによって、左右のディスク25,25間の略全幅に亘って粉・粒状施用剤を散布する場合に、上記のような拡散用案内筒55や拡散用樋46の隆起部46rの形成によると、左右幅の中央部を敢えて少なく散布させることとなるが、前記のように、ディスク25の分割螺旋羽根25a〜25dの回転及び/又は耕耘爪23,23の回転は土壌をその間隔中央部に向けて寄せ合う形態となって、該中央部に向けて耕耘土壌と共に流下された粉状物を寄せ合うものであるから耕耘後の粒状物分布は略均一化されるものとなる。
【0038】
なお、図7による図例では、耕耘爪23,23及び/又はディスク25,25によってこれらディスク25,25間の中央に土寄せする形態の爪形状に構成したが、逆に側方に土寄せする形態でも対応できる。即ちこのような場合には、両ディスク25,25近傍への散布量を少なくし、中央側を多くするよう拡散手段Kを構成するとよい。
【0039】
又、上記実施例では、拡散手段Kで粒状物(粒状施薬)を対象としたが、粉状物でもよく、薬剤のみならず肥料であってもよい。
【0040】
さらに、前記実施例では所謂3畝仕様について説明したが、2畝仕様のほか4畝以上についても同様に実施でき、支持ロッド49bに沿わせて拡散用樋46と一対の筒状樋48,48からなる散布樋組を個別に左右移動して適切な配置に調節できる。
【0041】
図11は、前記拡散用案内筒55の耕耘ロータリ6への装着代替構成を示す。耕耘ロータリ6の上面カバー56を断面湾曲状に形成し、この湾曲状の前端部に、拡散用案内筒55を左右側及び中央の3箇所に配置し、ボルト57・ナット58等の適宜着脱具によって装着している。この拡散案内筒55の装着傾き状態を該ボルト57・ナット58にて調整できる構成とすることにより、施用剤の流下案内を適正に設定できる。例えば、流下し易い粉状物は傾斜を緩くし、流下し難い粉状物は傾斜を急にすることで流下詰りや流下過多を防止できる。
【0042】
図12は、繰出ホッパの代替構成を示す。複数の繰出口60,60…を備え、共通の繰出モータ61の駆動に伴ない長尺の繰出ロール62の溝によって所定量に係合する施用剤を繰出口60,60…から繰出す構成である。繰出ホッパ63の内部には各繰出口60,60…の内側に山形の規制板64,64と片面傾斜の規制板65,65とを備え、適宜に繰出口60,60の上部を塞いで繰出条数を変更できる構成としている。これによって、繰出口が3連必要な3畝仕様(図2)、2連で足りる2畝仕様等多岐に対応できるものである。
【0043】
前記拡散手段Kの拡散用樋46に代替して筒状樋48を備えることにより、繰出ホッパ8の粒状物をも対向するディスク25,25内の局所に散布させることができるものである。
【0044】
図13〜図15に示す別例は、拡散手段Kとしての拡散用樋46の翼部46Bの機能をなくして局所散布に切り替える場合の改良案を示すものである。図13では、ホース45の下端を挿入させる受筒体46aの背面に取付用バー46dを一体的に設け、該取付用バー46dに、翼部46bの上部の重合バー46eを重ねてボルト66止めしている。該ボルト66を緩めて翼部46bを取り外すと、受筒体46aから直接施用剤は流下して局所散布に適する。また、図14に示す構成は、受筒体46aの背面に傾斜案内面46fを形成したボス部46gを備え、翼部46bを下向き傾斜に装着するときは、拡散手段Kとしての機能を有し、上向き傾斜に装着すると翼部46bが受筒体46aの施用剤流下圏外になって、受筒体46aによる局所散布が得られる。
【0045】
図15はさらに拡散散布と局所散布の切り替えを行う変形例を示し、翼部46bの受筒体46aの流下部に通孔46hを形成し、該通孔46hにゴム製の蓋部46iを装着するときは拡散散布状態とし蓋部46iを取り外すと局所散布が得られる。
【0046】
図16は、拡散散布の精度向上を図る変形例を示す。翼部46bの基部に弾性材としての板バネ46jを取り付け、受筒体46aの背面に形成したボス部46kに取り付ける。施用剤の落下衝撃や機体振動を受けて翼部46bは振動し、施用剤の停滞をなくして拡散流下を適正に行える。
また、前記の畝立施肥装置のディスクを用いない使用形態もある。
畝の中央部よりも畝成形器7による土寄せ作用の結果、成形畝Rの中央部に比較して該畝の肩部の方が粒状物の分布する濃度が濃い状態となる(図17(イ))。そこで、図17(ロ)に示すように、耕耘幅方向に複数の拡散手段K,K´を備えて後続の成形畝Rの肩部への偏った分布を解消しようとする。畝の中央に散布する拡散手段Kの散布量は多くし、畝成形器7の前方に対応する拡散手段K´からの散布量を少なくすることによって上記の解消を図る。なお、同一の粉粒状物の散布において、成形畝において対向する一対のディスク25,25間の分布を濃く、この間以外の分布を薄くさせたい場合には、繰出ホッパ8,9,9に同じ粉粒状物を投入しておき、繰出手段H及び拡散手段Kのいずれからも同じ粉粒状物を散布させるものである。このように構成すると、同一肥料や同一薬剤を畝断面の分布状況を異ならせて散布でき、作物の生長に見合う施肥乃至施薬状況を得ることができる。
【符号の説明】
【0047】

1 トラクタ車体
6 耕耘ロータリ
7 畝成形器
15 耕耘軸
23 耕耘爪
25 ディスク
46 拡散用樋
48 筒状樋
51 繰出装置
55 拡散用案内筒
H 繰出手段
K ディスク間拡散手段
G 粒状物(粒状施薬)
P 粉状物(粉状肥料)
Z 濃度大散布域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラクタ車体(1)の後方に耕耘ロータリ(6)と耕耘土壌を受けて畝成形する畝成形器(7)を装着し、耕耘ロータリ(6)の耕耘軸(15)には複数の耕耘爪(23,23…)と畝成形器(7)で成形する畝の畝幅間で対応する一対のディスク(25,25)を配設し、この対向するディスク(25,25)間またはその前方において繰り出された粉・粒状施用剤を土壌と共に攪拌する畝立施肥装置において、前記畝成形器(7)による畝の幅方向であって前記対のディスク(25,25)間に粉粒状物を拡散するディスク間拡散手段(K)を設け、該拡散散布量を当該幅方向において異なる量に設定してなる畝立施肥装置。
【請求項2】
一対のディスク(25,25)間に一対の耕耘爪(23,23)を配置し、耕耘爪(23,23)による打ち込み作用によって耕耘土壌を一対のディスク(25,25)間中央側に寄せるよう構成し、該一対のディスク(25,25)間に散布するディスク間拡散手段(K)の中央側散布量を左右側散布量に対して少量に設定してある請求項1に記載の畝立施肥装置。
【請求項3】
ディスク間拡散手段(K)は、横方向に長い拡散口部を備えると共に、中央部を絞って口部断面積を左右端部側よりも小に設定した拡散用案内筒(55)とする請求項2に記載の畝立施肥装置。
【請求項4】
ディスク間拡散手段(K)は、拡散用樋(46)の翼部(46b)中央に隆起部(46r)を形成してなる請求項2に記載の畝立施肥装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−231742(P2012−231742A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−102645(P2011−102645)
【出願日】平成23年5月2日(2011.5.2)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】