説明

畦塗り機のギヤケース

【課題】ギヤケースから整畦部に至る動力伝達系を簡素化することが可能な畦塗り機のギヤケースの提案。
【解決手段】トラクタからの動力を受けて垂直軸回りに回動する駆動軸54に接続された駆動ギヤ561とこの駆動ギヤ561に噛み合って水平軸回りに回動する第1の従動ギヤ562及び第2の従動ギヤ563と、第1の従動ギヤ562に一端部が接続されて前処理体500に動力伝達を行う第1の従動軸564と、第2の従動ギヤ563に一端部が接続されて整畦部502に動力伝達を行う第2の従動軸565とを有する畦塗り機10のギヤケース56において、駆動軸54の中心線Z1と第1の従動軸543の中心線Z2との交わった点Pに第2の従動軸565を通す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はトラクタの後部に装着され、トラクタからの動力を前処理体及び整畦部に伝達する畦塗り機のギヤケースに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トラクタの後部に装着され、トラクタからの動力を前処理体及び整畦部に伝達する畦塗り機のギヤケースにあっては、その内部に動力の伝達方向を90度曲げる直交軸ギヤを有していることが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の畦塗り機の回転軸ケース(ギヤケース)11にあっては、直交軸ギヤとして、垂直軸回りに回動する駆動ギヤとこの駆動ギヤに噛み合って水平軸回りに回動する2つの従動ギヤとを有している。
図9に示すように駆動ギヤにはトラクタの動力を受けて垂直軸回りに回動する回転軸(駆動軸)10が接続される。また、第1の従動ギヤには水平軸回りに回動自在な前処理動力伝達シャフト(従動軸)54が接続され、この前処理動力伝達シャフト54の先端側には旧畦を切り崩して土盛りを行う前処理部31が接続される。一方、第2の従動ギヤには水平軸回りに回動自在な第2整畦動力伝達シャフト(従動軸)72が接続され、この第2整畦動力伝達シャフト72の先端側には前処理部31により盛られた土を切り崩された旧畦上に塗り付ける整畦部41が接続される。
【0004】
そして、回転軸ケース11は、トラクタからの動力により垂直軸回りに回動する回転軸10の動力伝達方向を直交軸ギヤにより水平方向に90度曲げて前処理動力伝達シャフト54及び第2整畦動力伝達シャフト72を水平軸回りに回動させて前処理部31及び整畦部41を動作させるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−6号公報(段落0020〜0027、図3、図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の畦塗り機の回転軸ケースにあっては、駆動ギヤ及び2つの従動ギヤにはギヤ比1:1のマイタギヤが用いられている。
また、図9に示すように、第1の従動ギヤ(及び前処理動力伝達シャフト54)は平面上、畦と平行な線分Z0に対して角度θだけ畦側にふられた状態で回転軸ケース11に配される。第1の従動ギヤに角度θがつけられているのは前処理部31の性能(砕土性や方向性)を発揮させるためである。一方、第2の従動ギヤは平面上、整畦部41の回転中心軸と平行に(畦に対しては直交して)回転軸ケース11に配される必要があることから、第2の従動ギヤは整畦部41側(畦側)ではなく、反整畦部側(反畦側)に配されることとなる。
【0007】
ところで、上記従来の畦塗り機の回転軸ケースにあっては、第2の従動ギヤに接続された第2整畦動力伝達シャフト72は回転軸ケース11から反整畦部側に突出し、回転軸ケース11を迂回して整畦部41へ動力伝達が行われている。このため、回転軸ケース11から整畦部41に至る動力伝達系の複雑化を招いている。
【0008】
本発明は、上記背景により、ギヤケースから整畦部に至る動力伝達系の簡素化を図ることが可能な農作業機のギヤケースを提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明の畦塗り機のギヤケースは、トラクタの後部に装着され、前記トラクタからの動力を受けて垂直軸回りに回動する駆動軸に接続された駆動ギヤとこの駆動ギヤに噛み合って水平軸回りに回動する第1の従動ギヤ及び第2の従動ギヤと、前記第1の従動ギヤに一端部が接続されて前処理体に動力伝達を行う第1の従動軸と、前記第2の従動ギヤに一端部が接続されて整畦部に動力伝達を行う第2の従動軸とを有する畦塗り機のギヤケースにおいて、
前記駆動軸の中心線と前記第1の従動軸の中心線との交わった点を前記第2の従動軸が通ることを構成要件とする。
【0010】
畦塗り機は、旧畦を切り崩して土盛りを行う前処理体及び、前処理体により盛られた土を切り崩された旧畦上に塗り付ける整畦部を有している。また、畦塗り機は、前進作業で残った部分は前処理体及び整畦部(以下、本項中、作業部と言う)を前後反転させて後進作業で行うリバース式である場合とそうでない場合とがある。
【0011】
リバース式の畦塗り機の場合、作業部は前進作業位置では前進作業姿勢をとり、後進作業位置では後進作業姿勢をとる。作業部が前進作業位置から後進作業位置もしくはその逆方向に移行するとは、本実施例の場合、トラクタの後部に垂直軸回りに回動自在に装着された伝動フレームが垂直軸回りに回動して作業部を前進作業位置から後進作業位置に至るまで、もしくその逆方向に移動させることである。この伝動フレームの先端側に作業部が配される。伝動フレームの回動は、シリンダ(油圧式、電動式、電動油圧式)によって行われる場合と、手動によって行われる場合とがある。
【0012】
前進作業位置とは、トラクタの前進走行により作業可能な位置で、本実施例では作業部が前進方向右側にオフセットされた作業位置のことであり、後進作業位置とは、トラクタの後進走行により作業可能な位置で、本実施例では作業部が後進方向右側にオフセットされた作業位置のことである。オフセット量は、作業形態に応じて任意に設定される。例えば前進3段階、後進1段階にオフセットをとることもできる。
【0013】
トラクタからの動力を受けて垂直軸回りに回動する駆動軸に接続された駆動ギヤとこの駆動ギヤに噛み合って水平軸回りに回動する第1の従動ギヤ及び第2の従動ギヤとから直交軸ギヤが形成される。また、第1の従動ギヤには前処理体に動力伝達を行う第1の従動軸の一端部が接続され、第2の従動ギヤには整畦部に動力伝達を行う第2の従動軸の一端部が接続されることで、トラクタからの動力により垂直軸回りに回動する駆動軸の動力伝達方向は、ギヤケース内の直交軸ギヤにより水平方向に90度曲げられて第1の従動軸及び第2の従動軸を水平軸回りに回動させて前処理体及び整畦部を動作させる。
【0014】
前記したように畦塗り機のギヤケースにあっては、駆動ギヤ及び2つの従動ギヤにはギヤ比1:1のマイタギヤが用いられている。また、第1の従動ギヤ(及び第1の従動軸)は平面上、畦と平行な線分に対して角度θだけ畦側にふられた状態でギヤケースに配される。第1の従動ギヤに角度θがつけられているのは前処理体の性能(砕土性や方向性)を発揮させるためであり、この角度θをつけたことで前処理体が放擲した土は畦に効果的に送り込まれる。一方、第2の従動ギヤは平面上、整畦部の回転中心軸と平行に(畦に対しては直交して)ギヤケースに配される必要があるので、第2の従動ギヤは整畦部側(畦側)ではなく、反整畦部側(反畦側)に配されることとなる。そのような場合、ギヤケースを迂回することなくギヤケースの反整畦部側の第2の従動ギヤから整畦部に動力伝達させるには、駆動軸の中心線と第1の従動軸の中心線との交わった点に第2の従動軸を通すことで、従来では第2の従動ギヤを配することができなかったギヤケースの整畦部側から整畦部に動力を伝達するように構成すればよい。
【0015】
そこで、駆動軸の中心線と第1の従動軸の中心線との交わった点を第2の従動軸が通ることで(請求項1)、ギヤケースから整畦部に動力を伝達する動力伝達系は、従来では第2の従動ギヤを配することができなかったギヤケースの整畦部側から整畦部に動力伝達することが可能となる。従って、ギヤケースから整畦部に至る動力伝達系はギヤケースを迂回する必要がなくなり、その構造は簡素化される。
【0016】
また、ギヤケースには、整畦部の多面体ドラムを上下回動自在とするタイプと、多面体ドラムを固定するタイプの2種類があるが、何れのタイプであるかは問わない。また、第2の従動軸の径状は一定である必要はなく、長さ方向で拡径したり、縮径することは任意である。
また、第2の従動軸から離れた整畦部(多面体ドラム)への動力伝達手段には、スプロケット及びチェーンが用いられる場合と、タイミングプーリ及びタイミングベルト、あるいはギヤが用いられる場合とがある。
【0017】
駆動軸の中心線と第1の従動軸の中心線との交わった点を第2の従動軸が通る場合、駆動ギヤに2つの従動ギヤを噛み合わせながら、第2の従動軸と第1の従動ギヤとが干渉しないようにする必要がある。さらには、前処理体の性能(砕土性や方向性)を発揮させるため、第1の従動ギヤ(及び第1の従動軸)は平面上、畦と平行な線分に対して角度θだけ畦側にふられることが望ましい。そこで、第1の従動軸の中心線と第2の従動軸の中心線とが平面上、70度から75度の角度で交わることで(請求項2)、駆動ギヤに2つの従動ギヤを噛み合わせながら第1の従動ギヤと第2の従動軸との干渉を防ぐことができるうえに、前処理体の性能(砕土性や方向性)を発揮させることができる。
【発明の効果】
【0018】
畦塗り機のギヤケースにおいて、駆動軸の中心線と第1の従動軸の中心線との交わった点を第2の従動軸が通ることで、ギヤケースから整畦部に動力を伝達する動力伝達系は、従来では第2の従動ギヤを配することができなかったギヤケースの整畦部側から整畦部に動力伝達することが可能となる。従って、ギヤケースから整畦部に至る動力伝達系はギヤケースを迂回する必要がなくなり、その構造は簡素化される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】整畦部の多面体ドラムを固定するドラム固定タイプのギヤケースであって、(a)はギヤケース上面の一部がカットされて、ギヤケース内の直交軸ギヤによりトラクタからの動力が前処理体及び整畦部に伝達される様子が示された平面図、(b)はギヤケース側面の一部がカットされて、ギヤケース内の直交軸ギヤによりトラクタからの動力が前処理体及び整畦部に伝達される様子が示された側面図である。
【図2】整畦部の多面体ドラムを上下回動自在とする上下回動タイプのギヤケースであって、(a)はギヤケース上面の一部がカットされて、ギヤケース内の直交軸ギヤによりトラクタからの動力が前処理体及び整畦部に伝達される様子が示された平面図、(b)はギヤケース側面の一部がカットされて、ギヤケース内の直交軸ギヤによりトラクタからの動力が前処理体及び整畦部に伝達される様子が示された側面図である。
【図3】トラクタの後部に装着された畦塗り機の側面図である。
【図4】作業部が前進作業位置と後進作業位置との間の格納位置に移動した状態の畦塗り機に、一対のスタンドが装着された様子を示した平面図である。
【図5】図4の側面図である。
【図6】(a)、(b)は、図5の斜視図である。
【図7】作業部が移動、格納位置に移動し、チェーンケースが取り外された状態の畦塗り機の幅方向片側にスタンドが装着された様子を示した平面図である。
【図8】リンク部材の節に突設された案内軸が案内孔部奥に位置している様子を示した平面図である。
【図9】従来の畦塗り機において、ギヤケースから前処理体及び整畦部に至る動力伝達系を説明するための平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態を図面を用いて説明する。
【0021】
図1(a)、(b)、図2(a)、(b)はトラクタ100(図3参照)の後部に装着され、トラクタ100からの動力を受けて垂直軸回りに回動する駆動軸54に接続された駆動ギヤ561とこの駆動ギヤ561に噛み合って水平軸回りに回動する第1の従動ギヤ562及び第2の従動ギヤ563と、第1の従動ギヤ562に一端部が接続されて前処理体500(図1(a)、(b)参照)に動力伝達を行う第1の従動軸564と、第2の従動ギヤ563に一端部が接続されて整畦部502(図1(a)、(b))に動力伝達を行う第2の従動軸565とを有する畦塗り機(以下、作業機)10のギヤケース56において、
駆動軸54の中心線Z1と第1の従動軸564の中心線Z2との交わった点Pを第2の従動軸565が通る様子を示す。
【0022】
図1(a)、(b)に示したのは整畦部502の多面体ドラム503を固定するドラム固定タイプのギヤケース、図2(a)、(b)に示したのは多面体ドラム503を上下回動自在とする上下回動タイプのギヤケースである。
【0023】
作業機10の本体10Aは図3に示すようにトラクタ100後部のトップリンク101とロアリンク102からなる3点ヒッチ機構に連結フレーム(カプラ)103を介して連結されるトップマスト11と、ロアリンク連結部12を備え、この3点ヒッチ機構によりトラクタ100の後部に昇降可能に装着される。トップマスト11の下方には、トラクタ100のPTO出力軸(図示せず)にユニバーサルジョイント、伝動シャフト等を有するジョイント軸(図示せず)を介して連結されるギヤボックス13が配置され、ギヤボックス13から本体の幅方向に前フレーム14が架設される。
【0024】
図3〜図7に示されるように、前フレーム14の幅方向両端に前向きに突設されたブラケット15にロアリンク連結部12が接合され、前フレーム14の幅方向中央部にトップマスト11が接合されることによりトップマスト11及びロアリンク連結部12は前フレーム14に支持される。また、図4、図6(a)、(b)に示すように前フレーム14の幅方向両端に横向きに突設されたブラケット16、17にスタンド装着部18、19が接合されることにより作業機10の幅方向両側にスタンド20、21が装着される。
【0025】
PTO出力軸からの動力はギヤボックス13のPIC入力軸130に伝達され、PIC入力軸130でうけた動力はギヤボックス13内部の直交軸ギヤ131により上向きに90度曲げられて伝動フレーム51の回動中心軸としての回動軸(動力伝達軸)53に伝達される(図7参照)。
【0026】
図7に示すように伝動フレーム51の前部は前フレーム14の長さ方向中央部に垂直軸回りに回動自在に支持される。伝動フレーム51は、図1(b)に示すようにその上部にPIC入力軸130からの動力を作業部50側に伝達するチェーン520及び、このチェーン520が巻装される一対のスプロケット521、522を用いた動力伝達機構を格納するチェーンケース52(図1(b)、図3参照)を有し、回動軸(動力伝達軸)53から作業部50(畦塗り作業部)側へ張り出すように架設され、先端部分(移動側端部)に作業部50(畦塗り作業部)が接続される。
【0027】
具体的には、図1(b)に示すように前フレーム14の長手方向中央からはこれを貫通する回動軸(動力伝達軸)53が上下方向に突出し、その上部に駆動側のスプロケット521が接続され、下部に直交軸ギヤ131を介してPIC入力軸130が接続される。また、伝動フレーム51の先端部(移動端部)からはこれを貫通する駆動軸54(作業部側)が上下方向に突出し、その上端部に従動側のスプロケット522が連結され、下端部に直交軸ギヤ560を介して作業部50が連結される。
【0028】
作業部50側の駆動軸54は、図3、図5、図6(a)、(b)に示すように、互いに相対回転可能な上側軸部550、中央軸部551、下側軸部552からなる回動軸部55によって包囲される。上側軸部550は伝動フレーム51の先端部に接続され、下側軸部552は、前段に記した直交軸ギヤ560を収納し、かつ作業部50を支持するギヤケース56に接続される。なお、このギヤケース56についての説明は後述する。
【0029】
図6〜図8に示すように中央軸部551と下側軸部552とはリンク部材71a〜71dを介して連接される。すなわち、中央軸部551に一端部が接続されたリンク部材71aの他端部はリンク部材71bの一端部に垂直軸回りに回動自在に接続される。リンク部材71bの他端部はリンク部材71cの一端部に垂直軸回りに回動自在に接続される。このリンク部材71cの一端部は上下に離間した二又部71c1を有しており、その二又部71c1の対向面間にリンク部材71bの他端部が挿入された状態でガイドピン72により回動自在に接続される。すなわち、図8に示すようにリンク部材71bとリンク部材71cとの継ぎ手部分となる節にはガイドピン72が上向きに突設される。
【0030】
ガイドピン72は、図8に示すように伝動フレーム51の下面に設けられたガイド部材73のガイド溝73aに沿って移動自在、かつガイド溝73aの開口部73bから離脱自在とされる。ガイドピン72が開口部73bから抜出されている場合は作業部50は前進作業位置とされ、ガイド溝73a奥に位置している場合は作業部50は後進作業位置とされる。すなわち、ガイドピン72が開口部73bからガイド溝73a奥側に向かって移動している場合は作業部50は前進作業位置から後進作業位置に移行している状態にある。これに対し、ガイドピン72がガイド溝73a奥側から開口部73bに向かって移動している場合は作業部50は後進作業位置から前進作業位置に移行している状態にある。
【0031】
また、リンク部材71cの他端部はリンク部材71dの一端部に垂直軸回りに回動自在に接続され、さらにこのリンク部材71dの一端部は下側軸部552に作業部支持フレーム58を介して接続される。この作業部支持フレーム58は、下側軸部552から後述する前処理体500に向かって延設されており、その先端側の下方に前処理体500が支持される(図7参照)。
【0032】
図3〜図6(a)、図7に示すように伝動フレーム51の側方に、伝動フレーム51を垂直軸(回動軸53)回りに回動させる(電動油圧式)シリンダ57が配される。シリンダ57のロッド先端部は取付ブラケット22を介して前フレーム14に接続され、シリンダ側取付部は取付ブラケット23を介して伝動フレーム51に接続されており、シリンダ57の伸張動作により伝動フレーム51は本体の右側(前進作業位置)に向けて回動し、短縮動作により本体の左側(後進作業位置)に向けて回動する。なお、シリンダ57は、トラクタ100に乗ったまま手元で伸縮が行えるリモコン(図示せず)に接続される。
【0033】
さらに、前フレーム13と中間軸部551との間には平行リンク部材59が架設されている。平行リンク部材59の移動端部側(作業部50側)は、リンク部材71aの下面側に接続されたブラケット60に垂直軸回りに回動自在に接続されることで、伝動フレーム51の回動動作に応じて中間軸部551を回動させる。
【0034】
これにより、シリンダ57の伸縮動作に応じて伝動フレーム51が回動し、作業部50を前進作業位置(右オフセット位置)と後進作業位置(左オフセット位置)との間で平行移動させると共に、作業部50を平行移動させている間に、図8に示すようにガイドピン72が伝動フレーム51下面に設けられたガイド部材73のガイド溝73aに沿って移動することで作業部50が前後反転する。
【0035】
また、図示はしないが前進作業位置あるいは後進作業位置において中間軸部551(伝動フレーム51)に対して下側軸部552(作業部50)の回動を拘束する作業部回動ロック装置を配置しており、各作業位置でのシリンダ57へ過大な負荷がかかるのを防ぐことができる。
【0036】
図1(a)、(b)、図3〜図7に示すように作業部50(畦塗り作業部)は、圃場の周辺に沿って形成された旧畦を切り崩して土盛りを行う前処理部500と、盛られた土を切り崩された旧畦上に塗り付ける整畦部502と、旧畦の天場を切り崩す天場処理ロータ505とを有している。
【0037】
前処理部500は、回転自在に支持された耕耘ロータ501を有し、耕耘ロータ501は、ギヤケース56に駆動ケース61(図1(a)、(b)、図3、図5参照)を介して連結され、さらにこの駆動ケース61の先端側には天場処理ロータ505がスプロケット及びチェーンを内蔵した駆動ケース62を介して連結される。また、整畦部502は、回転可能に支持された多面体ドラム503を備え、多面体ドラム503はギヤケース56にスプロケット567、568及びチェーン569を内蔵した駆動ケース63を介して連結されている。これにより耕耘ロータ501、天場処理ロータ505及び多面体ドラム503には、伝動フレーム51に支持されたチェーンケース52内の動力伝達機構及びギヤケース56を介してトラクタ100からの動力が伝達される。
【0038】
ここでギヤケース56についての説明を図1(a)、(b)、図2(a)、(b)を用いて行う。
同図に示すように、ギヤケース56は、トラクタ100からの動力を受けて垂直軸回りに回動する駆動軸54の下端部に接続された駆動ギヤ561とこの駆動ギヤ561に噛み合って水平軸回りに回動する第1の従動ギヤ562及び第2の従動ギヤ563と、第1の従動ギヤ562に一端部が接続されて前処理体500及び天場処理ロータ505に動力伝達を行う第1の従動軸543と、第2の従動ギヤ563に一端部が接続されて整畦部502に動力伝達を行う第2の従動軸565とを有し、駆動軸54の中心線Z1と第1の従動軸543の中心線Z2との交わった点Pを第2の従動軸565が通っている。
【0039】
詳述すると、駆動ギヤ561、第1の従動ギヤ562及び第2の従動ギヤ563にはマイタギヤが用いられている。また、図1(a)、図2(a)に示すように第1の従動ギヤ562(及び第1の従動軸543)は平面上、畦と平行な線分Z0に対して角度θだけ畦側にふられた状態でギヤケース56に配される。一方、第2の従動ギヤ565は平面上、整畦部502の回転中心軸504(図1(a)、(b)参照)と平行に(畦に対しては直交して)ギヤケース56に配される必要があるので、第2の従動ギヤ565は、駆動軸54の中心線Z1と第1の従動軸543の中心線Z2との交わった点Pを挟んで整畦部側(畦側)ではなく、反整畦部側(反畦側)に配される。そこで、駆動軸54の中心線Z1と第1の従動軸543の中心線Z2との交わった点Pに第2の従動軸565を通すことで、ギヤケース56から整畦部502に動力を伝達する動力伝達系は、従来では第2の従動ギヤ565を配することができなかったギヤケース56の整畦部側から整畦部502に動力伝達することが可能となる。従って、ギヤケース56から整畦部502に至る動力伝達系はギヤケース56を迂回する必要がなくなり、その構造は簡素化される。
【0040】
ところで、駆動軸54の中心線Z1と第1の従動軸543の中心線Z2との交わった点Pに第2の従動軸565が通る場合、第1の従動軸543の中心線Z2と、第2の従動軸565もしくはその中心線Z3が平面上、70度から75度の範囲内の角度θ1で交わっている。これにより、駆動ギヤ561に2つの従動ギヤ562、563を噛み合わせながら第1の従動ギヤ562と第2の従動軸565との干渉を防ぐことができるうえに、前処理体500の性能(砕土性や方向性)を発揮させることができる。
【0041】
第1の従動軸543の他端部はギヤケース56から突出し、その他端部側(先端側)には前処理体500及び天場処理ローラ505が配される。一方、第2の従動軸565はその両端部がギヤケース56の内周面に水平軸回りに回動自在に軸支される。この第2の従動軸565の中心線Z3と多面体ドラム503の中心線Z4とは同一方向を向いて(畦塗り作業時の畦に対しては直交して)いるが、図1(b)に示すように立面上、上下方向にずれが生じている。
【0042】
第2の従動軸565の他端部にスプロケット567が接続され、多面体ドラム503の回転中心軸504にスプロケット568が接続され、これらスプロケット567、568にはチェーン569が巻装されており、高低差(段差)がある第2の従動軸565から多面体ドラム503の回転中心軸504に動力伝達がなされる。これらスプロケット567、568及びチェーン569を内蔵する駆動ケース63は、ギヤケース56に一体的に取り付けられているものであることからギヤケース56の一部とみなされる。従って、第2の従動軸565の他端部を軸支するのはギヤケース56もしくは駆動ケース63の何れかであってもよい。
【符号の説明】
【0043】
10……畦塗り機(作業機)、10A……本体、11……トップマスト、12……ロアリンク連結部、13……ギヤボックス、130……PIC入力軸、131……直交軸ギヤ、14……前フレーム、15……ブラケット、16、17……ブラケット、18、19……スタンド装着部、20、21……スタンド、22、23……ブラケット、

50……作業部、500……前処理体、501……耕耘ロータ、502……整畦部、503……多面体ドラム、504……回転中心軸、505……天場処理ロータ、51……伝動フレーム、52……チェーンケース、520……チェーン、521、522……スプロケット、53……回動軸(動力伝達軸)、54……駆動軸、55……軸部、550……上側軸部、551……中央軸部、552……下側軸部、

56……ギヤケース、560……直交軸ギヤ、561……駆動ギヤ、562……第1の従動ギヤ、563……第2の従動ギヤ、564……第1の従動軸、565……第2の従動軸、566……動力伝達手段、567、568……スプロケット、569……チェーン、

57……シリンダ、58……作業部支持フレーム、59……平行リンク部材、60……ブラケット、61……駆動ケース、

70……反転リンク機構、71a〜71d……リンク部材、72……ガイドピン(案内軸)、72a……軸心棒(軸心部)、72a1……凹部、72b……フランジ部、72b1……拡径部、72b2……延設部、72c……回動部、72c1……延設部、72d……グリスニップル、73……ガイド部材、73a……ガイド溝(案内孔部)、73b……開口部

100……トラクタ、101……トップリンク、102……ロアリンク、103……連結フレーム(カプラ)

Z1、Z2、Z3、Z4……中心線、P……駆動軸の中心線と第1の従動軸の中心線との交点


【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラクタの後部に装着され、前記トラクタからの動力を受けて垂直軸回りに回動する駆動軸に接続された駆動ギヤとこの駆動ギヤに噛み合って水平軸回りに回動する第1の従動ギヤ及び第2の従動ギヤと、前記第1の従動ギヤに一端部が接続されて前処理体に動力伝達を行う第1の従動軸と、前記第2の従動ギヤに一端部が接続されて整畦部に動力伝達を行う第2の従動軸とを有する畦塗り機のギヤケースにおいて、
前記駆動軸の中心線と前記第1の従動軸の中心線との交わった点を前記第2の従動軸が通ることを特徴とする畦塗り機のギヤケース。
【請求項2】
前記第1の従動軸の中心線と前記第2の従動軸の中心線とは平面上、70度から75度の角度で交わることを特徴とする請求項1に記載の畦塗り機のギヤケース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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