説明

畦畔面の保護方法

【課題】 生分解性マルチフィルムと被覆植物を用いて行う畦畔の保護方法において、雑草防除の省力化が可能であり、簡単かつ有効な畦畔の保護方法を提供することを課題とする。
【解決手段】 被覆植物、特にセンチピードグラス及び/又は野芝を用いて行う畦畔の保護方法において、畦畔の雑草を処理する工程と、畦畔に生分解性マルチフィルム、特に脂肪族ポリエステル樹脂、脂肪族−芳香族ポリエステル樹脂から選ばれる少なくとも一種からなるフィルムを展張する工程と、被覆植物を定植する工程と、前記生分解性マルチフィルムに分解促進剤、特に加水分解酵素及び/又は酸化分解酵素を適用する工程とからなることを特徴とする畦畔面の保護方法による。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生分解性マルチフィルムと被覆植物を用いて行う畦畔の保護方法に関するものである。なお、畦畔(けいはん)とは田畑の端にあって、田畑本来の用途である耕作以外の用途に供せられる細長い土地部分のことで、本発明では、農地間や通路端の傾斜地等を意味する。
【背景技術】
【0002】
畦畔は、放置すれば雑草が伸び放題に繁茂してしまう。雑草は、通常草高の高いものが優性に繁殖するため、畦畔上の通行が困難になるほか、農業機械を用いた作業への悪影響、収穫時の作物への混入、害虫の繁殖、景観の劣化等の問題があり、雑草防除が畦畔の維持管理において必要不可欠である。
【0003】
雑草防除は、草刈りによるのが、古くから行われている方法であり、かつ、農作物及び土壌等環境への負荷が少ないため、現在においても好ましい方法である。しかし、草刈り作業はただでさえ手間がかかる上、傾斜地である畦畔においては、草刈り機を使用したとしても重労働となる欠点がある。農業従事者人口の減少、高齢化が依然として進行しており、いかにして省力化を図るかが今後の農業を考える上で重要となっている現在、草刈り作業に代わる方法が模索されている。
【0004】
たとえば定期的に除草剤を用いることにより雑草を一掃してしまうという方法がある。しかし、除草剤による作業者や農作物及び環境への影響のおそれがある上、雑草を全て除去すると、表土が露出することにより、風雨による浸食作用を容易に受けてしまうため、土壌流出を引き起し、ひいては、畦畔の崩壊につながるおそれがある。また、景観上も好ましいものではない。
【0005】
一方、コンクリート構造物、硬質プラスチック成形品等によって畦畔を覆工することが行われている。雑草防除・畦畔の安定化という意味では好ましいが、畦畔の高さ、傾斜等そのサイズはまちまちであるため、一定の大きさで作られた構造物を畦畔に単に適用することはユニットを小さくしない限り難しく、反対にユニットが小さくなるほど、省力化のメリットも小さくなる。また、隣接する他家の水田との境界に位置する畦畔に対しては、当該他家の合意の上でないと施工できないといった問題、さらに、当該構造物から流出する化学成分による環境への影響も考慮する必要があるため、あらゆる畦畔に適用する訳にはいかない。
【0006】
また、ポリエチレン樹脂等の生分解性のない合成樹脂からなるマルチフィルムで畦畔を覆い、雑草の成長を抑制する方法もあるが、日光により劣化してしまい、雑草防除効果を持続させるためには、毎年マルチフィルムを取り替える必要がある。
【0007】
上記の問題点を解決する手法として、近年、芝草等の草高が低く、土壌保全の効果のある被覆植物を植えて雑草防除を行う試みがなされている。この方法を採用する場合、播種又は苗の植えつけから被覆植物が成長し、畦畔をカバーするまでの期間、雑草が生えないように維持管理する必要がある。
【0008】
特許文献1には、継続的な雑草抑制効果を発揮するベース植物とベース植物が十分に成長するまでの間、雑草抑制効果を示す先行植物とを併用する方法が紹介されている。
【0009】
また、特許文献2には、透水性、通気性及び抑草性のあるシートを畦畔に被覆し、培養土をその上に盛り、被覆植物を植えつける方法が記載されている。
【0010】
さらに、非特許文献1には、紙マルチ、生分解性マルチ又は光分解性マルチを畦畔に被覆し、一定間隔でマルチシートに切れ目をいれ、セル成型苗を定植する方法が記載されている。
【0011】
しかし、上記最初の2つの方法は、いずれも被覆植物が成長するまでの雑草防除効果が不十分であり、上記最後の1つの方法は、被覆植物が成長するまでの雑草抑制効果はあるが、マルチシートが分解するまで被覆植物の成長を抑制してしまうため、結果的に被覆植物が畦畔面を被覆するまでに時間がかかるという欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2005−328744号公報
【特許文献2】特開2005−328796号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】加藤正広著 「センチピードグラスを用いた畦畔及び法面被覆法」社団法人千葉県農業総合研究センター・社団法人日本造園建設業協会共催「緑化に関する新技術講習会」資料 2005年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
そこで、本発明は、生分解性マルチフィルムと被覆植物を用いて行う畦畔の保護方法において、雑草防除の省力化が可能であり、簡単かつ有効な畦畔の保護方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、被覆植物を用いて行う畦畔の保護方法において、畦畔の雑草を処理する工程と、畦畔に生分解性マルチフィルムを展張する工程と、被覆植物を定植する工程と、前記生分解性マルチフィルムに分解促進剤を適用する工程とからなることを特徴とする畦畔面の保護方法である。
【0016】
また、前記被覆植物は、センチピードグラス及び/又は野芝であることが好ましい。
【0017】
また、前記生分解性マルチフィルムを構成する生分解性樹脂は、脂肪族ポリエステル樹脂、脂肪族−芳香族ポリエステル樹脂から選ばれる少なくとも一種からなることが好ましい。
【0018】
またさらに、前記分解促進剤は、加水分解酵素及び/又は酸化分解酵素を含む水溶液であることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の畦畔の保護方法によれば、除草剤を使用する回数が少ないため、作業者や農作物および環境への影響を低減することができる。また、畦畔の高さ、傾斜角度等の形状によらず適用でき、敷設の手間が簡便で、かつ、経済的である。また、被覆植物の成長に合わせて生分解性マルチフィルムを分解させることができるので、成長を阻害することなく、畦畔面の被覆までの所要期間をいたずらに延ばすことがない。またさらに、雑草を一掃することで、収穫物への雑草の混入や病害虫の発生を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明において使用されるマルチフィルムへの穿孔例を示した模式図である。
【図2】本発明において使用されるマルチフィルムへの別の穿孔例を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明について具体的に説明する。
【0022】
本発明は、被覆植物を用いて行う畦畔の保護方法において、畦畔の雑草を処理する工程と、畦畔に生分解性マルチフィルムを展張する工程と、被覆植物を定植する工程と、前記生分解性マルチフィルムに分解促進剤を適用する工程とからなることを特徴とする畦畔面の保護方法である。
【0023】
前記雑草の処理は、草刈機で行っても良いし、市販の除草剤を使用してもよい。除草剤としては、水田畦畔の雑草駆除に用いられる従来公知のものがいずれも使用でき、特に限定されない。たとえば、2,4−PA液剤、DCMU水和剤、DPA水溶剤、MCPAナトリウム塩液剤、アシュラム液剤、グリホサートアンモニウム塩液剤および水溶剤、グリホサートイソプロピルアミン塩液剤および水溶剤、グリホサートカリウム塩液剤、グルホシネート液剤、ジクワット・パラコート液剤、ビアラホス液剤および水溶剤、ビスピリバックナトリウム塩液剤、フルアジホップおよびフルアジホップP乳剤、塩素酸塩水溶剤、展着剤が挙げられる。
【0024】
雑草を処理した後、畦畔に生分解性マルチフィルムを展張する。
【0025】
前記生分解性マルチフィルムを構成する生分解性樹脂としては、熱可塑性を有し、軟質フィルムとすることができるものであれば、従来公知の生分解性樹脂がいずれも使用でき、特に限定されない。たとえば、脂肪族ポリエステル、脂肪族−芳香族ポリエステル、ポリヒドロキシカルボン酸、ポリラクトン、ポリエステル−カーボネートが挙げられる。構造中にエステル基を有することが特徴である。
【0026】
さらに具体的には、脂肪族ポリエステルとしては、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート;脂肪族−芳香族ポリエステル樹脂としては、ポリブチレンアジペートテレフタレート;ポリヒドロキシカルボン酸としては、ポリ乳酸、ポリヒドロキシブチレート、ポリヒドロキシブチレート/ヒドロキシバリレート;ポリラクトンとしては、ポリカプロラクトンがそれぞれ挙げられる。
【0027】
マルチフィルムは、雑草の成長を防ぐため日光を遮蔽する機能を有するものが良く、黒色、緑色、白色などの顔料が配合される。また、マルチフィルムは単層のみならず複層とすることもできるが、その場合、各層には同色の顔料を用いても良いし、別色としても良い。
【0028】
またさらに、炭酸カルシウム等の充填材や滑剤、アンチブロッキング剤等の各種添加剤を必要に応じて添加することができる。
【0029】
マルチフィルムの敷設においては、フィルムが風で飛んだりばたついたりしないよう、通常T字型の杭を用い、フィルムの端部を含め適宜間隔をおいて、フィルム上から畦畔面へ打ち込んでフィルムを固定する。また、別の方法として、後述のとおり被覆植物の苗を植えつけるための開口部において、杭を打ち込む方法もある。杭によって開けられた孔から日光が差し込むことにより雑草が繁茂するおそれがあるため、極力孔の数は少ない方が良い。また、苗や匍匐していく茎がフィルムの下に潜り込むと枯れてしまう。後者の方法であれば、両方の問題を同時に解決できるため好ましい方法である。
【0030】
また、マルチフィルムを固定する杭は、マルチフィルムの分解が進行し、同時に被覆植物が適度に繁茂した後、撤去する必要がある。そのため、あらかじめT字型に加工されたものを使用すると、繁茂した被覆植物が邪魔となり撤去作業が困難になるおそれがある。撤去作業を円滑に行うためには、杭本体とマルチフィルムを押さえつけるバーを別体とし、たとえばリング状の部材を用いて係合したものを使用すると良い。該部材の形状はリング状だけでなく、S字状でもC字状でも良く、杭本体とバーを係合できるものであれば形は問わない。さらに、特定の形状に成形されたものである必要もなく、ひも状や帯状の部材を用いても良い。該部材は、材質の種類によらず使用することが可能である。金属、木、硬質プラスチック等の剛性の高いものでも良いし、ゴム、エラストマ、軟質プラスチック等の柔らかい素材でもよい。中でも、マルチフィルムと同じ種類の生分解性樹脂を使用すれば、マルチフィルムの分解と共に当該部材も分解が進行する結果、撤去作業において労力が軽減されるため、好適に使用される。
【0031】
前記被覆植物としては、センチピードグラス、野芝、みやこ芝、ギョウギシバ等の芝草;その他シバザクラ、ヒメイワダレソウ、シロクローバ、アカクローバ、シュッコンバーベナ、マツバギク等が使用可能である。管理の手間や繁殖性といった点で芝草が好ましく、中でもセンチピードグラスが最も好ましい。
【0032】
当該被覆植物は、種子を直播きしてもセル苗(あるいはピット苗:タキイ種苗株式会社の登録商標)を定植してもよい。セル苗とは、所定の数に区画されたトレーに用土を敷きつめ、各区画に1〜5株ずつ苗として成長させたものであり、区画毎に取り分けて使用する。
【0033】
被覆植物を播種及び/又は定植する畦畔に対し、マルチフィルムの敷設に先立ち、土をすき込んでほぐしたり、施肥、散水等の土壌改良を必要に応じて行うことができる。
【0034】
マルチフィルムを敷設後、播種及び/又は定植するための孔を穿孔する。穿孔密度が10〜30個/mとなるよう実施すると良い。密度が10個/m以上であれば、畦畔を被覆するのに十分であるし、30個/mを超えると被覆までの所要期間は短くなるものの経済的ではない。孔は隣り合う列が互い違いになるよう千鳥状に配列すると、効率よく均等に被覆植物を繁殖させることができる。またマルチフィルムは、敷設前にあらかじめ穿孔しても良い。図1に穿孔例の模式図を示した。この例においては、マルチシート1に等間隔かつ千鳥状に孔2を穿孔した。図において、孔は四角形をしているが、形状によらず穿孔することができる。たとえば、円形、楕円形、星形、多角形、直線状、折れ線状又は曲線状のスリット、交差スリットが挙げられる。
【0035】
また、傾斜面(法面)においては、匍匐茎(ランナー)が下に延びるため、均一密度で穿孔するよりも、傾斜面の上の方の密度を高く、下へ行くほど低密度にする方が、効率的に畦畔を被覆させることが可能である。またさらに、傾斜の方向に対して隣り合う横列の孔が重複しないよう、千鳥状に配置すると、均一に被覆させることができる。図2に穿孔密度を変化させた例を示した。図の上端部が高密度、下端部に近づくほど低密度になっており、上記のように、斜面へ適用する場合は、高密度側が傾斜の上方になるよう設置すると良い。
【0036】
マルチフィルムを敷設した後、孔に播種及び/又はセル苗を定植する。その後、フィルムを固定する杭を孔の中に打ち込む。打ち込み密度が10個〜30個/mとなるよう実施すると良い。杭は、全ての孔に打ち込んでも良いし、一部の孔に打ち込んでも良い。効率よく固定するためには均等に打ち込むことが好ましいが、フィルムの端部はばたつきやすいため、端部の打ち込み密度を高くする方がさらに好ましい。
【0037】
その後、被覆植物の成長を観察し、ランナーが隣り合う孔に到達した時点で、マルチフィルム上から分解促進剤を散布する。
【0038】
前記分解促進剤は、酵素剤の水溶液が用いられる。酵素剤としては、加水分解酵素及び/又は酸化分解酵素が好適に使用される。より具体的には、加水分解酵素としてはリパーゼ、エステラーゼ、プロテアーゼ;酸化分解酵素としてはペルオキシダーゼ、モノオキシゲナーゼ、ジオキシゲナーゼが挙げられる。生分解性樹脂の多くはエステル結合を有するので、中でも、エステラーゼを使用するのが好ましい。また、これらの酵素剤は、1種を単独で用いても良く、可能な組み合わせで2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0039】
該分解促進剤中の酵素は、活性化するpHの範囲が決まっている。したがって、使用する酵素によって、pH調整が必要であり、かつ、分解によって酸が発生し、分解と共に酸性に傾くため、分解促進剤は緩衝液としてはたらかねばならない。たとえば、pH7付近であればリン酸二水素ナトリウム/リン酸水素二ナトリウム系の緩衝液が用いられる。
【0040】
また、分解促進剤をマルチフィルム上に散布したとき、フィルムとの濡れ性が悪いと分解促進作用が十分に発揮できない。そこで、界面活性剤として作用する物質を添加すると良い。当該物質は、農薬調整用に市販されているものであれば何でも良く、種類を問わない。
【0041】
またさらに、本発明の畦畔の保護方法を傾斜面に適用する場合、散布した分解促進剤が容易に流下しないよう展着剤を添加するのが好ましい。展着剤としては、食用・農薬調整用に市販されているものであれば何でも良く、種類を問わない。たとえば、カラギーナン、ペクチンなどの多糖類が挙げられる。
【0042】
該分解促進剤の散布量は、5〜30%であると良い。5%以上であれば、生分解性マルチフィルムの分解促進効果が十分発揮される。また、30%を上回っても、投下量に見合うだけの分解促進効果の際立った向上はない。
【実施例1】
【0043】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0044】
以下の実施例においては、次のものを使用した。
<マルチフィルム1>
生分解性樹脂(脂肪族−芳香族ポリエステル樹脂:BASF製「エコフレックス」)100質量部、カーボンブラック10質量部、タルク2.5質量部、エルカ酸アミド3質量部からなる生分解性樹脂組成物を用意し、単層インフレーション成型機(ダイ口径30mm、加工温度160℃)にて、厚さ20μm、幅1350mmの黒色生分解性マルチフィルムを得た。
<マルチフィルム2>
生分解性樹脂を、脂肪族−芳香族ポリエステル樹脂(BASF製「エコフレックス」)65質量部と脂肪族ポリエステル樹脂(昭和高分子製「ビオノーレ#1001」)35質量部とした以外は、生分解性マルチフィルム1と同様にして厚さ20μm、幅1350mmの黒色生分解性マルチフィルムを得た。
<マルチフィルム3>
ポリエチレンフィルム(大倉工業製「ポリマルチ」、厚さ20μm、幅1350mm)
以下の実施例においては、次のように評価した。
[フィルム分解程度]
試験終了後、被覆植物の定植地の中心1m×1mの範囲において、ただちに未分解のフィルムを採取し、次式に基づいて分解率を求め、以下の基準で評価した。
[分解率]=([1m×1mのフィルムの重量]−[未分解フィルムの重量])/[1m×1mのフィルムの重量]×100%
○:分解率70%以上
×:分解率70%未満
[ランナー定着程度]
試験終了後、被覆植物の定植地の中心1m×1mの範囲において、被覆植物のランナーが延び、地面に根を下ろした繁殖区域の面積を計算し、以下の基準で評価した。
【0045】
○:繁殖区域の面積0.70m以上
×:繁殖区域の面積0.70m未満
試験は次のように行った。
【0046】
千葉県茂原地区の枝豆畑の畦畔(高さ2.7m、幅2m)にて、2008年5月に畦畔の雑草を刈り取り、除草剤(日産化学工業製「ラウンドアップハイロード」)を100倍に希釈し、散布量50ml/mにて散布し、5日後すき込んで畦畔面を整えた。その上にマルチフィルム1を展張し、縦方向(傾斜方向)20cm間隔で、横方向(等高線方向)には隣り合う列が千鳥状になるよう最上部においては20cm間隔で、下方に従って間隔を広げ、最下部では25cm間隔となるよう孔を開け、センチピードグラスのセル苗を定植した。また、太さ約8mmの木製杭と太さ約8mmの竹製棒を、内径8mm太さ3mmのゴム輪で十字状に係合したフィルム押さえを、定植孔の3個置きに、隣り合う列が千鳥状になるよう打ち込んだ。定植後は定期的に散水を行い、生育管理した。センチピードグラスのランナーが隣接する定植位置に到達した同年9月の晴天の日に、当該マルチフィルム上に分解促進剤としてエステラーゼの一種であるクチナーゼを用い、酵素濃度10質量%、界面活性剤(アグロカネショウ製「アグラー」)1質量%、展着剤(ペクチン)1質量%となるよう1Mリン酸二水素ナトリウム/リン酸水素二ナトリウム系の緩衝液を調整し、散布量:300ml/mにて散布した。さらに1カ月後、生分解性マルチフィルムの分解程度とセンチピードグラスのランナー定着の確認を行った。評価結果を表1に示した。
【0047】
【表1】

【実施例2】
【0048】
マルチフィルム2を用いた以外は、実施例1と同様に試験を行った。評価結果を表1に示した。
[比較例1]
分解促進剤の散布をしなかったこと以外は、実施例1と同様に試験を行った。評価結果を表1に示した。
[比較例2]
分解促進剤の散布をしなかったこと以外は、実施例2と同様に試験を行った。評価結果を表1に示した。
[比較例3]
マルチフィルム3を用い、分解促進剤の散布をしなかったこと以外は、実施例1と同様に試験を行った。評価結果を表1に示した。
[比較例4]
マルチフィルム3を用いたこと以外は、実施例1と同様に試験を行った。評価結果を表1に示した。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の畦畔の保護方法によれば、水田・畑地等の耕作地の畦畔を被覆植物によりカバーすることによって、雑草を一掃し、かつ、畦畔の安定化を容易に、安価で行うことができる。
【符号の説明】
【0050】
1 マルチフィルム
2 孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被覆植物を用いて行う畦畔の保護方法において、
畦畔の雑草を処理する工程と、
畦畔に生分解性マルチフィルムを展張する工程と、
被覆植物を播種及び/又は定植する工程と、
前記生分解性マルチフィルムに分解促進剤を適用する工程と、
からなることを特徴とする畦畔面の保護方法。
【請求項2】
前記被覆植物が、センチピードグラス及び/又は野芝であることを特徴とする請求項1に記載の畦畔面の保護方法。
【請求項3】
前記生分解性マルチフィルムを構成する生分解性樹脂が、脂肪族ポリエステル樹脂、脂肪族−芳香族ポリエステル樹脂から選ばれる少なくとも一種からなることを特徴とする請求項2に記載の畦畔面の保護方法。
【請求項4】
前記分解促進剤が、加水分解酵素及び/又は酸化分解酵素を含む水溶液であることを特徴とする請求項3に記載の畦畔面の保護方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−233526(P2010−233526A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−86532(P2009−86532)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000106726)シーアイ化成株式会社 (267)
【Fターム(参考)】