説明

疾患を処置するためのサブグループBアデノウイルスベクター

ヒトサブグループBアデノウイルスを使用して疾患を処置するための方法および組成物。上記のようなウイルス由来のベクターであって、1つ以上のサブグループBアデノウイルス遺伝子が、外来遺伝子によって置換される発現ベクター系を含むベクター。本発明の特徴は、組換え腫瘍溶解性ヒトサブグループBアデノウイルスの記載であり、この組換え腫瘍溶解性ヒトサブグループBアデノウイルスは、機能的腫瘍サプレッサ遺伝子産物に結合し得る、発現されたウイルス腫瘍タンパク質を欠き、そして主にCAR依存性機構によって細胞に感染する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の技術)
本明細書中で記載される本発明は、ヒトサブグループBアデノウイルスを使用して疾患を処置する分野に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
条件により複製するウイルスは、抗癌剤の有望な新たなクラスを表す。癌細胞において選択的に複製して、そしてその癌細胞を殺傷する、ヒトアデノウイルス5型(Ad5)の誘導体が開発されている。このようなウイルスの基本型であるONYX−015(サブグループCアデノウイルス)は、再発性の頭頚部癌を有する患者、ならびに肝転移性疾患を有する患者についての、いくつかの第I相臨床試験および第II相臨床試験において有望な結果を示した。
【0003】
アデノウイルスが細胞において効率的に複製するために、アデノウイルスE1b遺伝子産物p55は、宿主細胞p53タンパク質と複合体を形成し、これによって、p53を隔絶および/または不活化し、そしてp53機能を欠損している細胞を産生する。p53機能を欠損したこのような細胞は、アデノウイルスの複製を支持し得る。このように、野生型アデノウイルスは、p53を含有する細胞において複製し得る。なぜなら、アデノウイルスp55タンパク質は、宿主細胞のp53タンパク質を不活化および/または隔絶するからである。Onyx−015は、変異p55タンパク質をコードするE1b遺伝子座を含む組換えアデノウイルスであり、その変異p55タンパク質は、上記組換えアデノウイルスによって感染され得る新形成細胞を含む個体または細胞集団に投与される場合、感染細胞においてp53タンパク質と機能的な複合体を実質的に形成し得ない。組換えアデノウイルスが、感染非新形成細胞においてp53タンパク質を効率的に隔絶することに実質的に無能であることは、非新形成細胞において複製表現型を発現できない、導入された組換えアデノウイルスポリヌクレオチドを生じる。対照的に、機能的p53タンパク質を欠く新形成細胞は、導入された組換えアデノウイルスによる、複製表現型の発現を支持し、これは、アデノウイルス細胞変性効果による新形成細胞の難解および/または複製表現型に連結された陰性選択遺伝子の発現をもたらす。
【0004】
Onyx−015を用いる持続的な臨床試験から学んだ教訓は、毒性よりも効力がその治療上の利点を限定するらしいということである。現在までに、用量が限定する毒性は観察されていない。腫瘍溶解性(oncolytic)ウイルスの臨床的効力を高めるための1つの戦略は、それらを他の治療(例えば、標準的な化学療法)と組み合わせること、またはそれらに抗癌遺伝子(例えば、抗血管新形成因子、細胞傷害剤、酵素を変換するプロドラッグ、もしくはサイトカインなど)を加えることである。別のアプローチ(これは、化学療法および抗癌遺伝子と組み合わせられ得る)は、遺伝学的にウイルスを変換し、そのウイルスをより強力にすること(すなわち、より迅速に複製すること、より多くのウイルス子孫を産生すること、ならびに組織特異性および/または細胞型特異性を高めることなど)である。癌細胞をより迅速に、より選択的に殺傷し、そして最終的に癌を根絶する、治療用ウイルスを生じることが、ここでの目的である。
【0005】
そのような治療的戦略の臨床的局面は、アデノウイルスが標的細胞に進入する能力に依存する。このプロセスは、多段階現象であり、この現象は、アデノウイルス線維ノブタンパク質がその細胞レセプターCARに結合することによる、細胞へのウイルスの結合によって開始されると考えられている(Bergelsonら(1997)Science 275:1320−1323)。次いで、第2の段階において、ウイルスの内在化は、αvβインテグリンおよびαvβインテグリンによって、アデノウイルスペントンベースのRGDドメインとの相互作用を介して、媒介される(Wickhamら(1993)Cell 73:309−319;Mathiasら(1994)J.Virol.68:6811−6814)。内在化の後、ウイルス粒子は、核膜に移動する。このプロセスの間、キャプシドが取り除かれ、最後に、ウイルスDNAが核に放出され、ここでウイルスDNAの複製が開始される。細胞上のCARの存在は、アデノウイルス感染の効力について主要な決定因子であると考えられる。対照的に、二次アデノウイルスレセプター(αvβインテグリンおよびαvβインテグリンを含む)の発現とは関係がない(Hemmiら(1998)Hum Gene Ther.9:2363−2373)。
【0006】
サブグループCアデノウイルスを癌を処置するために使用することに対する潜在的な障害が、2つ存在する。1つは、最近の実験研究が、CAR発現は、癌の特定形態に罹患する患者において、インビトロおよびインビボの両方で、正常細胞と比較して腫瘍細胞において減少されることを示したことである。CAR発現レベルとトランスフェクション有効性アデノウイルスとの間に良好な相関が存在することが、RT−PCRおよびウエスタンブロット分析によって見出された(Jee YS,Lee SG,Lee JC,Kim MJ,Lee JJ,Kim DY,Park SW,Sung MW,Heo DS.Anticancer Res 2002 Sep−Oct;22(5):2629−34)。また、内因性CAR発現を示さないヒト膀胱癌細胞へのCARのトランスフェクションは、これらの細胞の感染能力(infectibility)を増大させた(Liら(1999)Cancer Res.59:325−330)。
【0007】
癌治療のためにサブグループCアデノウイルスを使用することに関する2つ目の障害は、肝臓においてウイルスの蓄積を促進するという所望しない副作用を有する、肝細胞(hepocyte)中のCARの存在である。サブグループB系および最適タンデム線維系を実証するサブグループBウイルスは、Ad5線維ベクターと比較して、2ログをこえて肝臓の形質転換を減少した(Schoggins JW,Gall JG,Falck−PedersenE.:J Virol 2003 Jan;77(2):1039−48)。
【0008】
上述のように、基本型腫瘍溶解性(oncolytic)ウイルスはOnyx015であり、これはサブグループCウイルスである。上で考察した理由のために、サブグループCウイルスから構築されたアデノウイルスベクターは、それらの腫瘍溶解性の潜在性を制限するという、ある特性を有する。医者に別の腫瘍溶解性ウイルスを提供するために、Onyx 015の特性、およびサブグループBアデノウイルスの特性を有するアデノウイルスを産生することが有用である。
【0009】
科学文献および特許文献において、サブグループBアデノウイルスの遺伝子の局面(これらのウイルスの特定領域のヌクレオチド配列を含む)を記載する報告が存在する。
【0010】
WO0240693A1は、アデノウイルスレプリコンが、Ad5由来のDNAとサブグループBアデノウイルスDNAとの間に融合を有する組換えアデノウイルスを含むことを示す。
【0011】
WO0240665は、サブグループB(好ましくはアデノウイルス35型)由来の血清型に基づく組換えアデノウイルスを補完し得るパッケージング細胞株を示す。
【0012】
WO0227006は、骨格筋細胞の形質転換のための手段および方法、上記細胞に対して親和性を有するアデノウイルスに由来する遺伝子送達ビヒクルの使用を示す。上記遺伝子送達ビヒクルは、サブグループBのアデノウイルス線維タンパク質の少なくとも1つの親和性決定部分を含む。
【0013】
WO0052186は、線維芽細胞様細胞またはマクロファージ様細胞に対する組織親和性を有する、アデノウイルスサブグループB核酸送達ビヒクルを記載する。
【0014】
WO0031285は、平滑筋細胞および/または内皮細胞に対する組織親和性を有する核酸送達ビヒクルを提供する。1つの局面において、上記核酸送達ビヒクルは、サブグループBアデノウイルスのウイルスキャプシドである。
【0015】
WO8906282は、改変された自己抑圧機能ドメインを有するヒトアデノウイルスサブグループB:lの機能変異ElA遺伝子を記載する。
【0016】
米国特許第6,492,169号は、サブグループB(好ましくはアデノウイルス35型)由来の血清型に基づく組換えアデノウイルスを補完するパッケージング細胞株を示す。
【0017】
米国特許第5,770,442号は、サブグループBアデノウイルスキメラ線維タンパク質を含む組換えアデノウイルスを示す。
【0018】
米国特許第4,920,211号は、改変された自己抑圧機能ドメインを有するヒトアデノウイルスサブグループB:lの機能変異ElA遺伝子を示し、このドメインは、ElA変異遺伝子を制御するプロモーターの正味の抑圧なしに促進するE1A産物を発現するのに効率的である。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0019】
(発明の要旨)
本発明の特徴は、組換え腫瘍溶解性ヒトサブグループBアデノウイルスの記載である。
【0020】
本発明はまた、ヒトサブグループBアデノウイルス3型およびヒトサブグループBアデノウイルス34型の完全ゲノム配列を示す。
【0021】
別の局面において、本発明は、異質DNA配列の発現のための、組換えヒトサブグループBアデノウイルス、および上記アデノウイルスに由来する組換えウイルスベクターの使用を包含する。
【0022】
本発明の別の実施形態は、サブグループB3型およびサブグループB34型に基づくヒトアデノウイルス発現ベクター系(ここで、E1遺伝子領域およびE3遺伝子領域の1つもしくは両方の一部または全体が欠失される)に関する。
【0023】
本発明の特徴は、組換え腫瘍溶解性ヒトサブグループBアデノウイルスの記載であり、この組換え腫瘍溶解性ヒトサブグループBアデノウイルスは、機能的腫瘍サプレッサ遺伝子産物に結合し得る、発現されたウイルス腫瘍タンパク質を欠き、そして主にCAR依存性機構によって細胞に感染する。
【0024】
本発明の別の特徴は、機能的腫瘍サプレッサ遺伝子産物に結合し得る、発現されたウイルス腫瘍タンパク質を欠く、腫瘍溶解性ヒトサブグループBアデノウイルスの記載である。
【0025】
本発明の別の局面は、機能的E1Aウイルス腫瘍タンパク質または機能的E1B 55kウイルス腫瘍タンパク質をコードする能力を欠く、ヒトサブグループBアデノウイルスに関する。
【0026】
本発明のさらなる局面は、組換えヒトサブグループBアデノウイルスを使用して疾患を処置することの記載である。
【0027】
本発明のこれらの局面および別の局面は、以下を完全に考慮する際、当業者に明らかとなる。
【0028】
(発明の詳細な説明)
本特許の全体にわたって引用される全ての刊行物および特許出願は、各個々の刊行物または特許/特許出願が具体的にかつ別々に、その全体が参照として援用されるように示される場合と同程度まで、参照として援用される。本発明の実施は、他で特に示されない限り、慣用的な微生物学、免疫学、ウイルス学、分子生物学、および当該分野の範囲内である組換えDNA技術を使用する。これらの技術は、文献に完全に説明される。例えば、以下を参照のこと:Maniatisら,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(1982);DNA Cloning:A Practical Approach,第I巻および第II巻(D.Glover(編));Oligonucleotide Synthesis(N.Gait(編)(1984));Nucleic Acid Hybridization(B.HamesおよびS.Higgins(編)(1985));Transcription and Translation(B.HamesおよびS.Higgins(編)(1984));Animal Cell Culture(R.Freshney(編)(1986));Perbal,A Practical Guide to Molecular Cloning (1984),Sambrookら,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(2.sup.nd Edition);第I巻,第II巻および第III巻(1989)。また、以下も参照のこと: Hermiston,T.ら,Methods in Molecular Medicine:Adenovirus Methods and Protocols,W.S.M.Wold(編),Humana Press,1999。
【0029】
(A.定義)
他で特に定義されない限り、本明細書中で使用される技術用語および科学用語の全ては、本発明が属する分野の当業者に一般的に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書中で記載される方法および材料と類似または等価であるいずれの方法および材料が、本発明の実施または試験に使用され得るが、好ましい方法および材料が記載される。
【0030】
米国特許第5,677,178号および同第5,801,029号に示される定義は、本明細書において適用可能であり、そして以下の用語を包含する。
【0031】
「複製欠損ウイルス」とは、所定の細胞集団(例えば、p53機能および/またはRB機能を実質的に欠く細胞)における細胞増殖を優先的に阻害するウイルスをいい、これは、非複製の形質転換されていない細胞に特徴的な正常なp53レベルまたはRBレベルを含む細胞において、ウイルス複製表現型の発現を支持し、そして実質的に、細胞増殖を阻害し得るか、アポトーシスを誘発し得るか、または複製表現型を発現し得る。代表的に、複製欠損ウイルスは、正常なp53機能またはRB機能を含む細胞に対するプラーク効率(plaquing efficiency)の実質的な低下を示す。
【0032】
本明細書中で使用される場合、用語「p53機能」とは、p53遺伝子によってコードされるポリペプチドの本質的に正常なレベル(すなわち、同じ組織学型の非新形成細胞に対して)を有する特性をいい、ここで、p53ポリペプチドは、サブグループC野生型アデノウイルス34のE1b p55タンパク質に結合し得る。例えば、p53機能は、p53の不活性(すなわち、変異体)形態の産生によって、またはp53ポリペプチド発現の実質的な低下または全体的な損失によって、損失され得る。また、p53機能は、野生型p53タンパク質をコードするp53対立遺伝子を含む新形成細胞において実質的に存在し得ない;例えば、p53遺伝子座以外での遺伝学的変化(例えば、異常な細胞下プロセシングまたはp53の局在化をもたらす変異(例えば、核よりも細胞質において優位なp53の局在化をもたらす変異)、またはp53が作用することによる、分子の損失もしくは不活性化)は、p53機能の損失をもたらし得る。つまり、生化学的経路において、p53が作用することによる変化が存在し得、これは、p53機能の損失を引き起こす。
【0033】
本明細書中で使用される場合、用語「複製表現型」とは、複製欠損アデノウイルスのようなウイルスに感染された細胞の以下の表現型特徴のうちの1つ以上をいう:(1)後期遺伝子産物(例えば、キャプシドタンパク質(例えば、アデノウイルスペントン塩基ポリペプチド)またはウイルス性後期遺伝子プロモーターから開始されるRNA転写物)の実質的な発現、(2)ウイルスゲノムの複製または複製中間体の形成、(3)ウイルスキャプシドまたはパッケージングされたビリオン粒子のアセンブリ、(4)感染細胞における細胞変性効果(CPE)の出現、(5)ウイルス溶解性サイクルの完了、および(6)他の表現型変化(これは、代表的に機能的腫瘍タンパク質をコードする野生型複製コンピテントDNAウイルスに感染された非新形成細胞におけるp53機能の抑止に付随する)。複製表現型は、列挙された表現型特徴のうちの少なくとも1つ、好ましくはその表現型特徴のうちの1つより多くを含む。
【0034】
用語「抗腫瘍性複製欠損ウイルス」は、本明細書中で、同一の組織学的細胞型の感染性の非複製非新形成細胞に対して感染新形成細胞を優先的に細胞殺傷することによって、ヒトにおける新形成物の発生または発達を阻害する機能的特性を有する組換えウイルスをいうことに使用される。
【0035】
本明細書中で使用される場合、「新形成(neoplastic)」、「新形成(neoplasia)」、「癌」または「腫瘍」とは、比較的に自発的増殖を示し、その結果、細胞増殖制御の有意な損失を特徴とする異常な増殖表現型を示す細胞をいう。
【0036】
本明細書中で使用される場合、用語「作動可能に連結されている」とは、機能的関係におけるポリヌクレオチドエレメントの連結をいう。核酸は、別の核酸配列と機能的関係におかれる場合、「作動可能に連結されている」。例えば、プロモーターまたはエンハンサーは、コード配列の転写物に影響を与える場合、そのコード配列に作動可能に連結されている。作動可能に連結されていることは、連結されているDNA配列が代表的には隣接し、2つのタンパク質コード領域に結合することが必要な場合、隣接してリーディングフレーム中に存在することを意味する。しかし、エンハンサーは一般的に、プロモーターから数キロベース離された場合に機能し、そしてイントロン配列は可変性の長さであり得るので、いくつかのポリヌクレオチドエレメントは、作動可能に連結され得るが、隣接はしていない。
【0037】
本明細書中で使用される場合、「生理学的条件」とは、インタクトな哺乳動物細胞内あるいは生きている哺乳動物の組織空間または器官内の条件と実質的に類似したイオン強度、pH、および温度を有する水性環境をいう。代表的に、生理学的条件は、約150mM NaCl(または必要に応じてKCl)、pH6.5〜8.1、および約20℃〜45℃の温度を有する水溶液を包含する。一般的に、生理学的条件は、生物学的高分子の分子間会合のために適切な結合条件である。例えば、150mM NaCl、pH7.4、37℃での生理学的条件が、一般的に適切である。
【0038】
DNA「コード配列」とは、適切な調節塩基配列の制御の下に置かれる場合、インビボでポリペプチドに転写および翻訳されるDNA配列である。コード配列の境界は、5’(アミノ)末端での開始コドンおよび3’(カルボキシ)末端での翻訳停止コドンによって決定される。コード配列としては、原核生物の配列、真核生物のmRNA由来のcDNA、真核生物(例えば、哺乳動物)のDNA由来のゲノムDNA配列、ウイルスDNA、およびさらに合成DAN配列が挙げられ得るが、これらに限定されない。ポリアデニル化シグナルおよび転写終結配列は、通常、コード配列に対して3’にある。
【0039】
「転写プロモーター配列」とは、細胞中のRNAポリメラーゼに結合し得、下流(3’方向)のコード配列の転写を開始し得るDNA調節領域である。本発明を定義する目的のために、プロモーター配列は、コード配列の翻訳開始コドン(ATG)によって3’末端で結合され、バックグラウンドより上で検出可能なレベルで転写を開始するために必要な最小限の数の塩基またはエレメントを含むために、上流(5’方向)を伸長する。
【0040】
DNA「制御配列」とは、プロモーター配列、リボソーム結合部位、スプライシングシグナル、ポリアデニル化シグナル、転写終結配列、上流の調節ドメイン、エンハンサー、翻訳終結配列などを集合的にいい、それらは、宿主細胞中のコード配列の転写および翻訳を集合的に提供する。
【0041】
コード配列またはコードする配列とは、RNAポリメーラーゼが、プロモーター配列に結合し、コード配列をmRNAに転写し、次いで、そのmRNAが、コード配列によってコードされるポリペプチドに翻訳される場合、細胞中の制御配列に「作用可能に連結される」か、または細胞中の制御配列「の制御の下」にある。
【0042】
「宿主細胞」とは、外因性のDNA配列によって、形質転換されているか、または形質転換され得る細胞である。
【0043】
2つのポリペプチド配列は、アミノ酸の少なくとも約80%(好ましくは、少なくとも約90%、および最も好ましくは、少なくとも約95%)が、分子の定義された長さにわたって一致する場合、「実質的に相同性」である。
【0044】
2つのDNA配列は、それらがヌクレオチドに対して同一であるか、またはヌクレオチドの40%より多く、好ましくはヌクレオチドの約30%より多く(すなわち、少なくとも約70%の相同性)、より好ましくはヌクレオチドの約20%より多く、および最も好ましくはヌクレオチドの約10%より多くと相違しない場合、「実質的に相同性」である。
【0045】
実質的に相同性であるDNA配列は、サザンハイブリダイゼーションの実験で、例えば、特定の系について定義されるような、ストリンジェントな条件下で同定され得る。高度にストリンジェントな条件としては、65℃での0.5M NaHPO4、7%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、1mM EDTA中のフィルター結合DNAへのハイブリダイゼーション、および68℃での0.1×SSC/0.1%SDS中の洗浄が挙げられる(Ausubel F.M.ら、編、1989、Current Protocols in Molecular Biology,第I巻,Green Publishing Associates,Inc.およびJohn Wiley & Sons,Inc.,New Yorkのp.2.10.3)。適切なハイブリダイゼーション条件を定義することは、当該分野の範囲内である。例えば、Maniatisら、前出;DNA Cloning、第I巻および第II巻、前出;Nucleic Acid Hybridization、前出を参照のこと。
【0046】
DNAコンストラクトの「異種」領域とは、天然の他の分子との会合において見い出されていない別のDNA分子内または別のDNA分子に付着されるDNAの同定可能なセグメントである。
【0047】
「融合タンパク質」は、通常、リーダー配列をコードするか、またはポリペプチドを安定化させる第1領域、および異種タンパク質をコードする第2領域を含む遺伝子の発現産物として定義される。それは、抗原タンパク質フラグメントまたは全長アデノウイルスタンパク質配列ならびに異種配列、代表的に、細胞内に発現したポリペプチドについての組み換え宿主における分泌のための機能的なリーダー配列、を含むポリペプチドに関与する。抗原タンパク質フラグメントは、通常、長さが約5〜7アミノ酸である。
【0048】
「組み換え」ポリペプチドとは、組み換えDNA技術によって生成されるポリペプチドをいう。
【0049】
「実質的に純粋な」タンパク質とは、他のタンパク質がなく、好ましくは、少なくとも10%の相同性、より好ましくは60%の相同性、および最も好ましくは95%の相同性である。
【0050】
「感染性」によって、アデノウイルスゲノムを細胞に送達するための能力を有することが意味される。
【0051】
「CAR」とは、宿主細胞に感染して侵入を増やす過程で、サブグループCアデノウイルスが結合する細胞上のレセプターをいう。それは、Coksakie アデノウイルスレセプター(Coksakie Adenovirus Receptor)の略語である。
【0052】
「腫瘍溶解性」とは、正常細胞を実質的に選択して;すなわち、実質的に正常細胞に害を与えないで腫瘍性細胞を殺すための本発明のヒトサブグループBアデノウイルスの能力をいう。
【0053】
(B.一般的な方法)
アデノウイルスサブグループBゲノム/コード領域:ヒトサブグループBアデノウイルスゲノムは、American Type Culture Collection(ATCC)から入手され得る。好ましくは、サブグループB3型および34型由来のそのウイルスは、A549細胞ならびに標準的な感染技術および増殖技術を含む、当該分野において周知の物質および方法を使用して、増殖され得る。Hermiston,T.ら、Methods in Molecular Medicine:Adenovirus Methods and Protocols,W.S.M.Wold、編、Humana Press,1999。ウイルスは、塩化セシウム勾配バンディング遠心分離を含むいくつかの技術によって精製され得る。例えば、米国特許第5,837,520号および米国特許第6,008,036号を参照のこと。
【0054】
ウイルスDNAは、好ましくは:10mM Tris−HCL(pH8.0)、5mM EDTA、0.6% SDSおよび1mlあたり1.5mgのプロナーゼ(Sigma Corporation)からなる溶解溶液中のウイルス粒子を溶解することによって配列決定のために調製される。その溶液は、好ましくは、37℃である。溶解したウイルス粒子は、フェノール/クロロホルムで抽出され、ウイルスDNAは、エタノールで沈殿される。精製したウイルスDNAは、蒸留水に溶解されて、DNA配列決定のために使用される。
【0055】
次に、アデノウイルスサブグループB3型または34型のいずれか由来のウイルスDNAは、適切な制限酵素、好ましくはSau 3AIで制限消化され、続いて1%アガロースゲル中で消化したDNAを分解する。サイズが0.8kbと1.2kbとの間のフラグメントは、商業的なDNAゲル抽出キット(Qiagen Corporation)を使用して精製され、その後、適合した制限酵素で以前に消化した適切なベクターにクローン化される。実施例により詳細に記載されるように、Bam HIは、ベクターであるpGem−7zf(+)(Promega Corporation)を消化するために使用され得る。
【0056】
次に、数百の個々のクローンは、自動シークエンサー、CEQ20000XL(Beckman)、ならびに標準的なT7およびSP6シークエンシングプライマーを使用して配列決定される。コンティグは、SeqMan Software(DNAStar Inc.)を使用して構築された。構築された配列に基づいて、オリゴヌクレオチドは合成され、プライマーウォーキングは、全てのコンティグが結合されるまで行われ得る。以下に記載したように、ほとんどの領域は、少なくとも2つの独立した配列決定によって対象とされた。
【0057】
本発明は、ヒトサブグループBアデノウイルス3型および34型の完全なヌクレオチドゲノム配列を開示する。それぞれ、図1および図2を参照のこと。また示しているのは、これらのウイルスの特定の領域(E1Aを含む)についてのヌクレオチド配列(3型および34型について、それぞれ、図3および図5)、E1A領域についてのアミノ酸配列(3型および34型について、それぞれ、図4および図6)である。55Kタンパク質、およびそれらのアミノ酸配列をコードするE1B領域をコードするヌクレオチド配列は、アデノウイルス3型および34型について、それぞれ、図1および図2に示されている。
【0058】
ヒトサブグループBアデノウイルス3型および34型のゲノム配列に加えて、これらのウイルスの種々の領域は、配列決定されて、アミノ酸配列は決定されている(図3)。
組み換え体:1つの実施形態において、本発明は、E1領域、特にE1B領域、および/またはE3領域を含む、ヒトサブグループBアデノウイルスのヌクレオチド配列の一部または全てを欠失させる方法を特定し、提供する。所望の場合、外来遺伝子またはそのフラグメントをコードする異種または相同性のヌクレオチド配列は、ヒトアデノウイルス組み換え体を生成するために、挿入され得る。「欠失部分の」ヌクレオチド配列によって、E1Bおよび/またはE3領域の一部のヌクレオチド配列を欠失させるための従来の遺伝子工学技術を使用することが意味される。
【0059】
挿入は、制限消化、ヌクレアーゼ消化、ライゲーション、キナーゼおよびホスファターゼ処理、DNAポリメラーゼ処理、逆転写酵素処理、ならびに化学的なオリゴヌクレオチド合成に限定されないが、これらを含む、当該分野で理解されている技術によって作製される。目的の外来の核酸配列は、プラスミドベクター内にクローン化され、その結果、その外来の配列は、挿入が指向されるアデノウイルスゲノムの領域と実質的に相同性を有する配列に隣接する。次いで、これらの構築物は、所望のサブグループBウイルスと同時感染される宿主細胞内に導入される。感染の間に、これらの構築物とアデノウイルスゲノムとの間の相同的な組み換えが生じ、組み換えアデノウイルスベクターを生成する。挿入が、アデノウイルスゲノムの本質的な領域において生じる場合、組み換えアデノウイルスベクターは、挿入によって失ったウイルス機能を供給するヘルパー細胞株中で増殖される。
【0060】
好ましいアデノウイルスの欠失は、腫瘍性タンパク質である55KをコードするE1B領域の全てまたは一部が除去されていることである。この欠失は、複製欠失サブグループBアデノウイルスを生成する効果を有する。同様に、E1B領域において選択した変異を作製することによって、複製欠失であるサブグループBアデノウイルスを生成することが可能である。米国特許第6,080,578号を参照のこと。そのような複製欠失サブグループBアデノウイルスは、p53機能を欠き、CARでない機構により主に腫瘍性細胞に感染する腫瘍細胞に対して腫瘍溶解性である。CARは、肝細胞上に高レベルで存在し、しばしば腫瘍細胞上で減少するので、サブグループBの複製の欠失したアデノウイルスは、例えば、サブグループCアデノウイルスと比べて肝臓によって容易に取り込まれないという点で、全身の活性を高めている。従って、それはまた、サブグループCアデノウイルスと比べた場合、高レベルの腫瘍溶解性の活性を示す。
【0061】
本発明の代替の実施形態において、E1a腫瘍性タンパク質をコードするE1a遺伝子座における欠失または変異を含む組み換えサブグループBアデノウイルスが構築され得、その欠失または変異は、E1aタンパク質が、感染細胞中のRBタンパク質と複合体を実質的に形成し得なくさせる。例えば、米国特許第5,801,029号を参照のこと。このタイプの組み換えサブグループBウイルスの利点は、感染した非腫瘍性細胞中のRBタンパク質を実質的に引き離すのが実質的に不能であることであり、これにより、非腫瘍性細胞中で複製表現型を発現できない導入した組み換えアデノウイルスを生じる。対照的に、機能的なRBタンパク質を欠く腫瘍性細胞は、アデノウイルスの細胞変性効果による腫瘍性細胞の除去をもたらす導入した組み換えアデノウイルスによる複製表現型の発現を支持する。
【0062】
これらの実施形態の好ましい変化において、組み換えサブグループBアデノウイルスは、pRB(および/または300kDのポリペプチドおよび/または107kDのポリペプチド)を結合し得るドメインを欠くが、アデノウイルス初期遺伝子をトランス活性化し得る機能的なE1aドメインを含む、変異E1aタンパク質をコードするE1a遺伝子座を含む。これらの実施形態のさらなる変化としては、組み換えアデノウイルスが、pRBに結合して不活性化するタンパク質を実質的に発現し得ない非機能的なE1a遺伝子座を含むことが挙げられる。
【0063】
別の実施形態において、本発明は、高い効率で、E3を欠失させた組み換えアデノウイルスサブグループB(異種配列の挿入を有するか、または有さない)を構築、単離および増殖させるための組成物および方法を提供する。これらとしては、アデノウイルスE1の機能を発現する適切な細胞株または等価の細胞株における組み換えウイルスの単離、および方法が挙げられ、この方法において、組み換えゲノムは、適切な宿主細胞における相同的な組み換えによって構築され、それによって得られる組み換えゲノムは、適切な細胞株にトランスフェクトされ、組み換えウイルスは、トランスフェクトされた細胞から単離される。例えば、米国特許第6,492,169号を参照のこと。
【0064】
本発明の1つの実施形態において、組み換えアデノウイルスサブグループB発現カセットは、1つ以上の適切な制限酵素で野生型のゲノムを開裂することによって得られ得、以下;例えば、E1、好ましくはpRBを結合する腫瘍性タンパク質をコードするE1A、またはp53を結合する55Kタンパク質をコードするE1B、あるいはE3領域の配列、をそれぞれ含むウイルス制限酵素フラグメントを生成する。ウイルス制限酵素フラグメントは、クローニングビヒクル(例えば、プラスミド)に挿入され得、その後、少なくとも1つの異種配列(異種タンパク質をコードし得るか、またはコードし得ない)は、作動可能に連結された真核生物の転写調節配列を有するかまたは有さない選択されたウイルス領域中に挿入され得る。その組み換え発現カセットは、アデノウイルスサブグループBゲノムと接触され、適切な宿主細胞における相同的な組み換え、または他の従来の遺伝子工学方法によって、所望の組み換え体が得られる。
【0065】
適切な宿主細胞としては、アデノウイルスサブグループBゲノムとウイルス配列を含むプラスミドとの間、または各々がウイルス配列を含む2つ以上のプラスミドとの間の組み換えを支持する任意の細胞が挙げられる。ウイルス粒子を生成するために、ウイルスゲノムを含むプラスミドのトランスフェクションは、真核細胞、好ましくは哺乳動物細胞、より好ましくは293細胞、およびそれらの等価物で行われるが、組み換えは、原核細胞(例えば、E.coli)で行われ得る。細菌細胞培養物の増殖、ならびに真核細胞および哺乳動物細胞株の培養および維持は、当業者に周知の方法である。
【0066】
1つ以上の異種配列は、アデノウイルスサブグループBゲノムの1つ以上の領域中に挿入されて組み換えウイルスベクターを生成し得、これは、ウイルスゲノムの挿入能力および挿入した異種配列を発現する組み換えウイルスベクターの能力によってのみ制限される。融合タンパク質は、この方法で生成され得る。一般に、アデノウイルスゲノムは、約5%のゲノムの長さの挿入を受け入れ得、ウイルス粒子中にパッケージされ得るままであり得る。挿入能力は、本質的でない領域の欠失および/または本質的な領域の欠失によって増加され得、その機能は、ヘルパー細胞株によって与えられる。
【0067】
本発明の一つの実施形態において、挿入は、挿入が所望されるサブグループBのアデノウイルスゲノムの領域を含むプラスミドを構築することによって達成され得る。次いで、このプラスミドは、このプラスミドのウイルス部分における認識配列を有する制限酵素で消化される。そして、異種配列が、制限消化の部位に挿入される。上記プラスミドは、挿入された異種配列を有するウイルスゲノムの一部分を含み、細菌細胞(例えば、E.coli)中に、アデノウイルスゲノムまたはアデノウイルスゲノムを含む直鎖状プラスミドと共に、共形質転換される。ここで、上記アデノウイルスゲノムは、全長ゲノムであり得るか、または1以上の欠失を含み得る。プラスミドの間の相同組換えは、挿入された異種配列を含む組換えアデノウイルスゲノムを生み出す。
【0068】
異種配列を挿入するための部位を提供するためか、または異なる部位において挿入するためのさらなる能力を提供するために、アデノウイルスサブグループBの配列の欠失は、当業者に周知の方法によって達成され得る。例えば、プラスミド中でクローニングされた配列について、1以上の制限酵素を用いた(ウイルス挿入物における少なくとも1つの認識配列を用いた)消化の後にライゲーションされ、いくつかの場合において、制限酵素認識部位の間の配列の欠失を生じる。あるいは、ウイルス挿入物内の一個の制限酵素認識部位における消化の後に、エキソヌクレアーゼ処理をされ、続いてライゲーションされる。これは、制限部位に隣接したウイルス配列の欠失を生じる。1以上の欠失を有するアデノウイルスゲノムの1以上の部分を含むプラスミドは、上に記載されるように構築され、細菌細胞中に、アデノウイルスサブグループBゲノム(全長または欠失された)あるいは全長ウイルスゲノムまたは欠失したウイルスゲノムのどちらかを含むプラスミドとともに共形質転換され得、相同組換えによって1以上の特定の部位に欠失を有する、組換えウイルスゲノムを含むプラスミドを生み出す。次いで、欠失を含むサブグループBウイルスは、組換えウイルスゲノムを含むプラスミドを用いた哺乳動物細胞のトランスフェクションによって得られ得る。
【0069】
本発明の一実施形態において、挿入部位は、アデノウイルスプロモーターに隣接し得、そして(転写鎖において)下流に位置し得る。プロモーターの位置、および挿入部位として使用するための制限酵素認識配列は、本明細書中に提供されるサブグループBアデノウイルスヌクレオチド配列から、当業者によって容易に決定され得る。あるいは、種々のインビトロ技術は、特定の部位における制限酵素認識配列の挿入のためか、または制限酵素認識配列を含まない部位における異種配列の挿入のために、使用され得る。このような方法としては、1以上の制限酵素認識配列の挿入のための、オリゴヌクレオチド媒介性ヘテロ二重鎖形成(例えば、Zollerら(1982)Nucleic Acids Res.10:6487−6500;Brennanら(1990)Roux’s Arch.Dev.Biol.199:89−96;およびKunkelら(1987)Meth.Enzymology 154:367−382を参照のこと)およびより長い配列を挿入するためのPCR媒介性方法が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、Zhengら(1994)Virus Research 31:163−186を参照のこと。
【0070】
上記異種配列が、真核細胞において活性である転写調節配列をさらに含む場合、アデノウイルスサブグループBプロモーターから下流でない部位に挿入された異種配列の発現を得ることもまた、可能である。
【0071】
本発明はまた、異種遺伝子の発現を調節するために使用され得るアデノウイルスサブグループB調節配列も提供する。調節配列は、例えば、転写調節配列、プロモーター、エンハンサー、上流調節ドメイン、スプライシングシグナル、ポリアデニル化シグナル、転写終結配列、翻訳調節配列、リボソーム結合部位および翻訳終結配列であり得る。
【0072】
別の実施形態において、本発明は、外来遺伝子もしくはそれらのフラグメントをコードしてウイルス組換えを生み出す、異種のヌクレオチド配列または相同なヌクレオチド配列を挿入するために適切なサブグループBアデノウイルスゲノム(およびそのフラグメント)のさらなる領域を同定し、提供する。別の実施形態において、クローンのサブグループBアデノウイルスゲノムは、プラスミドとして増殖され得、そしてプラスミド含有細胞から、感染性ウイルスがレスキューされ得る。
【0073】
アデノウイルス核酸の存在は、当業者に公知の技術(ハイブリダイゼーションアッセイ、ポリメラーゼ連鎖反応、および他の型の増幅反応が挙げられるが、これらに限定されない)によって検出され得る。同様に、タンパク質を検出するための方法は、当業者に周知であって、これらの方法としては、種々の型の免疫アッセイ、ELISA、ウエスタンブロット、酵素アッセイ、免疫組織化学などが挙げられるが、これらに限定されない。種々の外来遺伝子またはヌクレオチド配列またはコード配列(原核細胞、および真核細胞)は、本発明に従って、アデノウイルスヌクレオチド配列中(例えば、DNA)に挿入され得る。異種のヌクレオチド配列は、1以上の目的遺伝子、好ましくは治療目的遺伝子からなり得る。本発明の文脈において、目的の遺伝子は、サイトカイン(例えば、インターフェロンおよびインターロイキン);リンフォカイン;陰性選択剤(negative selection agent)(例えば、チミジンキナーゼ)、膜レセプター(例えば、病原体(ウイルス、細菌または寄生物)によって、好ましくはHIVウイルス(ヒト免疫不全ウイルス)によって認識されるレセプター);または増殖因子をコードする遺伝子のいずれかをコードし得る。この列挙は限定ではなく、目的の他の遺伝子が、本発明の文脈において使用され得る。
【0074】
目的の遺伝子は、ゲノム型(genomic type)、相補的DNA(cDNA)型、または混合型(ミニ遺伝子(minigene)、少なくとも1つのイントロンが欠失している)であり得る。これは、成熟タンパク質、成熟タンパク質の前駆体(特に、分泌され、そしてその結果、一個のペプチドを含むことが意図される前駆体)、多様な起源の配列の融合が起源であるキメラタンパク質、または改良もしくは改変された生物学的特性を示す天然タンパク質の変異体をコードし得る。このような変異体は、天然のタンパク質をコードする遺伝子の1以上のヌクレオチドの欠失、置換および/または付加、あるいは、天然のタンパク質をコードする配列中の任意の他の型の変化(例えば、転移または逆位)によって得られ得る。
【0075】
目的の遺伝子は、宿主細胞において発現するために適切なエレメント(DNA制御配列)の制御のもとに配置され得る。適切なDNA制御配列は、遺伝子のRNAへの転写(アンチセンスRNAまたはmRNA)およびmRNAのタンパク質への翻訳に必要とされるエレメントのセットを意味することが、理解される。転写に必要とされるエレメントのうちで、プロモーターが特に重要であると考えられる。プロモーターは、定常的な(constitutive)プロモーターまたは調節可能な(regulatable)プロモーターであり得、真核細胞起源、原核細胞起源、またはウイルス起源の任意の遺伝子、およびさらにアデノウイルス起源の任意の遺伝子から単離され得る。あるいは、プロモーターは、目的の遺伝子の天然のプロモーターであり得る。概して、本発明で使用されるプロモーターは、調節配列を含むように改変され得る。例えば、HSV−1 TK(ヘルペスウイルス1型チミジンキナーゼ)遺伝子プロモーター、アデノウイルスMLP(主要後期プロモーター)(特に、ヒトアデノウイルス2型)、RSV(ラウス肉腫ウイルス)LTR(長末端反復)、CMV(サイトメガロウイルス)初期プロモーター、およびPGK(ホスホグリセリン酸キナーゼ)遺伝子プロモーターを含む、種々のプロモーターが使用され得、多くの細胞型における発現を可能にする。
【0076】
サブグループBアデノウイルス組換えの複製またはそこからの遺伝子の発現を調節するために、有利に(advantagously)適用され得るプロモーターは、米国特許出願番号09/714,409またはEPA 1230378に記載される、E2Fプロモーターである。
【0077】
特定の細胞型に対する組換えサブグループBアデノウイルスベクターの標的化は、組換えヘキソンおよび/またはファイバー(fiber)遺伝子を構築することによって、達成され得る。これらの遺伝子のタンパク質産物は、宿主細胞の認識に関連する;従って、これらの遺伝子は、ウイルスが代替の宿主細胞を認識することを可能にするペプチド配列を含むように、改変され得る。
【0078】
野生型の生物において見出される完全配列でなく、遺伝子のヌクレオチド配列のフラグメントのみが使用され得ること(ここで、これらは、防御性免疫応答または特定の生物学的効果を生み出すために十分である)もまた、可能である。入手可能な場合、合成遺伝子またはそのフラグメントもまた、使用され得る。しかし、本発明は、多種多様な遺伝子、フラグメントなどと共に使用され得、上に記載されたものに限定されない。
【0079】
いくつかの場合において、特定の抗原に対する遺伝子は、多くのイントロンを含み得るか、またはRNAウイルス由来であり得る。これらの場合において、相補的DNAコピー(cDNA)が使用され得る。
【0080】
遺伝子の発現が成功して起こるために、それは、エンハンサーエレメントおよびポリアデニル化配列を含む適切なプロモーターと一緒に、発現ベクター中に挿入され得る。哺乳細胞において、外来遺伝子の発現の成功を提供する、多くの真核細胞プロモーターおよびポリアデニル化配列、ならびに発現カセットを構築する方法は、当該分野(例えば、米国特許第5,151,267号、本明細書中に参考として援用される開示)で公知である。上記プロモーターが選択され、公知の判断基準に従う体液性免疫応答、細胞媒介性免疫応答、および粘膜性免疫応答を順番に十分に生じる、免疫原性タンパク質の最適な発現を与える。
【0081】
本発明はまた、薬学的に受容可能なビヒクルおよび/またはアジュバントと組み合わせた、治療有効量の組換えヒトアデノウイルスサブグループBウイルスまたは、本発明の方法に従って調製される、そこから由来するベクターを含む薬学的組成物も含む。このような薬学的組成物は、当該分野で周知である技術に従って調製され得、そして決定される投薬量であり得る。本発明の薬学的組成物は、任意の公知の投与経路によって投与され得る。これらの投与経路としては、全身性(例えば、静脈内、気管内、血管内、肺内、腹腔内、鼻内、非経口、経腸、筋肉内、皮下、腫瘍内(intratumorally)または頭蓋内)投与またはエーロゾール投与もしくは肺内点滴注入による投与が挙げられるが、これらに限定されない。投与は、単回用量または特定の時間間隔後の1回以上繰り返される投与で行われ得る。適切な投与経路および投薬量は、状況(例えば、処置される個体、処置される障害、または目的の遺伝子もしくはポリペプチド)に従って異なるが、当業者によって決定され得る。
【0082】
本発明の別の実施形態において、E1機能(あるいは、任意の特定のウイルスベクターにおいて変異または欠失され得る、他のウイルス領域の機能)は、細胞を、上記ベクターが欠く機能を発現するウイルスに共感染させることによって(補完する細胞株(complementing cell line)を提供するために)、供給され得る。
【0083】
本発明はまた、サブグループBアデノウイルス発現ベクターを含む発現系も含む。この発現系において、異種ヌクレオチド配列(例えば、DNA)は、E3領域の一部または全て、E1領域もしくはE1B領域の一部または全て、E2領域の一部または全て、E4領域の一部または全て、E4とゲノムの右端との間の領域の一部または全て、後半(late)領域(L1−L7)の一部または全て、ならびに/あるいはペントン遺伝子によって占有される領域の一部または全てを置換する。上記発現系は、外来ヌクレオチド配列(例えば、DNA)が任意の他の異種プロモーターの制御ありか、または制御なしで、使用され得る。
【0084】
ヒトにおける遺伝子治療に関して、本発明の実施は、疾患(癌、心臓血疾患などが挙げられるが、これらに限定されない)の予防または処置が意図される。癌の処置に対して適用される場合、上記アデノウイルスベクターは、化学療法と併用され得る。本発明の目的のために、本発明の方法によって調製されるベクター、細胞、およびウイルス粒子は、エキソビボ(すなわち、細胞または患者から除かれた細胞において)で被験体に導入され得るか、または処置される身体にインビボで直接的に導入され得るかのいずれかである。好ましくは、宿主細胞は、ヒト細胞であり、そしてより好ましくは、肺細胞、繊維芽細胞、筋細胞、肝細胞、またはリンパ球性細胞もしくは造血性系統の細胞である。
【0085】
本発明のアデノウイルスは、患者に対する治療投与および診断投与のために処方され得る。治療用途または予防用途のために、薬理学的有効投薬量のアデノウイルスを含む無菌の組成物が、例えば、新形成状態の処置のために、ヒト患者または獣医学的な非ヒト患者に対して投与される。一般的に、上記組成物は、水性懸濁液中に、約10〜10以上のアデノウイルス粒子を含む。薬学的に受容可能なキャリアまたは賦形剤が、多くの場合、このような無菌組成物中に適用される。種々の水性溶液(例えば、水、緩衝化水、0.4%生理的食塩水、0.3%グリシンなど)が、使用され得る。これらの溶液は、無菌であり、そして一般的に所望のアデノウイルスベクター以外の粒子状物質を含まない。上記組成物は、生理学的状態に近いことが必要とされるので、薬学的に受容可能な補助物質(例えば、pH調整剤および緩衝化剤、毒性調節剤など(例えば、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、乳酸ナトリウムなど))を含み得る。アデノウイルスによって細胞の感染を増強する賦形剤が、含まれ得る。
【0086】
本発明のサブグループBアデノウイルス、またはそこに含まれるDNAは、リポソーム送達または免疫リポソーム送達によって新形成細胞にも送達され得;そのような送達は、新形成細胞集団上に存在する細胞表面の性質(例えば、免疫リポソーム中の免疫グロブリンに結合する細胞表面タンパク質の存在)に基づき、選択的に新形成細胞を標的とすることができる。代表的には、ビリオンを含有する水性懸濁液をリポソームまたは免疫リポソーム中に被包する。例えば、アデノウイルスビリオンの懸濁液を、従来の方法によりミセルに被包し免疫リポソームを生成することができる(米国特許第5,043,164号、同第4,957,735号、同第4,925,661号;ConnorおよびHuang(1985)J.Cell Biol.101:582;Lasic DD(1992)Nature 355:279;Novel Drug Delivery(Prescott LFおよびNimmo WS編;Wiley、ニューヨーク、1989);Reddyら(1992)J.Immunol.148:1585ページ)。個体の癌細胞上に存在する癌細胞抗原(例えばCALLA、CEA)に特異的に結合する抗体を含む免疫リポソームは、ビリオンまたはビリオンDNAをこれらの細胞に標的とするために使用され得る。
【0087】
本発明のアデノウイルスまたはそのカクテルを含有する組成物は、新生物疾患の治療的処置のために投与され得る。治療的適用では、既に特定の新生物疾患に罹患している患者に、その状態および合併症を治癒または少なくとも部分的に阻止するに充分な量の組成物が投与される。これを達成するための十分な量を、「治療的有効用量」または「有効用量」と定義する。この用途のための有効な量は、状態の重篤度、患者の一般状態、および投与経路に依存する。
【0088】
以下の記載は、本発明の実施例である。これらの実施例は、例示の目的でのみ提供され、決して本発明の範囲を制限することは意図されない。本開示を考慮して、特許請求の範囲内の多くの実施形態は、当業者にとって明らかである。本明細書において引用された参考文献の内容は、本明細書中に参考として援用される。
【実施例】
【0089】
(実施例1:アデノウイルス3ゲノム配列およびアデノウイルス34ゲノム配列)
ヒトサブグループBアデノウイルス3型およびヒトサブグループBアデノウイルス34型(以下、それぞれ、Ad3またはAd 34としても言及される)を、American Type Culture Collection(ATCC)から入手した。上記ウイルスを、A549細胞(これもまたATCCから入手可能)において、標準的感染技術および標準的増殖技術を利用して増殖させた。両方のウイルスを、塩化セシウム勾配バンド形成遠心分離(cesium chloride gradient banding centrifugation)によって精製した。
【0090】
ウイルスDNAを、塩化セシウム勾配バンド化ウイルス粒子から、10mM Tris−HCI(pH8.0)、5mM EDTA、0.6% SDSおよび1mlあたり1.5mgのプロナーゼ(Sigma Corporation)からなる溶液中で上記ウイルス粒子を溶解することによって得た。上記溶液は37℃であった。溶解した粒子を、フェノール/クロロホルムで2回抽出し、そしてウイルスDNAを、エタノールで沈澱させた。精製されたウイルスDNAを、蒸留水に溶解し、そしてDNA配列決定に使用した。
【0091】
次に、ウイルスDNAを、Sau 3AIを用いた制限消化に供し、その後、1%アガロースゲル中で、消化されたDNAを分離した。0.8kbと1.2kbとの間の大きさのフラグメントを、市販のDNAゲル抽出キット(Qiagen Corporation)を使用して精製し、次いでBam HIで消化したベクターpGem−7zf(+)(Promega Corporation)ベクターにクローンした。
【0092】
200個の個別のクローンを、自動シークエンサー、CEQ20000XL(Beckman)および、標準的なT7シークエンスプライマーおよびSP6シークエンスプライマーを使用して配列決定した。コンフィグ(contig)は、SeqMan Software(DNAStar Inc.)を使用して構築した。上記構築された配列に基づいて、オリゴヌクレオチドを合成し、そして全てのコンフィグが結びつくまでプライマーウォーキング(primer walking)を行った。ほとんどの領域を、少なくとも2つの独立した配列決定によって補った。
【0093】
(実施例2:Ad34基幹(backbone)におけるE1B 55K欠失ウイルスの構築)
(プラスミド構築)
pGEM(Promega Corp.)に基づくベクターを、改変し、そして該当するヌクレオチド配列をクローニング、サブクローニングするために使用した。プラスミド構築は、固有のNheI制限酵素認識部位が、Ad34ゲノムの左端から6.5KBにあるという事実に基づいた。プラスミド構築は、HindIIIを用いたAd34ゲノム(15μg)の消化で開始した。2.2Kbおよび3.4Kbの大きさの、2つのフラグメントを、1%アガロースゲル上で単離し、Bio 101 Gene Clean Kitを使用して精製した。上記2.2Kbのフラグメントを、事前にHindIIIを用いて消化したpGEM−7Z(Promega)にライゲーションした。上記構築物を、正しいフラグメントおよび正しい方向性のために、制限酵素マッピングによって評価した。この構築物を2.2/pGEM−7Zと呼称した。次に、上記2.2/pGEM7Z構築物における上記NheI部位に近い上記HindIII部位を、NheIおよびClaIを用いて消化し、その後、Klenowを用いて埋め込み、そして再ライゲーションすることによって除去した。第1の上記Ad34ゲノムの1.4Kbは、PCRプライマーP04 Fwd (5’CATGAGCTCGCGGCCGCCATCATCAATAATATACCTTATAGA−3’)およびAd34−1370B(5’GGCTTAAGCTTCACAGGAA−3’)、1ngのゲノムテンプレートDNAおよびPfu DNA ポリメラーゼ(Stratagene)を使用するPCR(米国特許第4,683,202号)によって生成した。PCR産物を、QIAquick PCR Purification kit(QIAGEN)を使用して精製し、SacIおよびHindIIIを用いて消化し、1%アガロースゲル上で単離し、そしてBio 101 Gene Clean Kitを用いて精製した。精製された1.4Kbのフラグメントを、1.4/2.2/pGEM−7Z構築物を作製するために、SacIおよびHindIIIを用いて消化した2.2/pGEM−7Zにライゲーションした。3.4Kbのフラグメントを、事前にHindIIIを用いて消化したpGEM−9Z(Promega)中にライゲーションした。上記構築物を、正しいフラグメントおよび正しい方向性について、制限酵素マッピングによって評価した。
【0094】
E1B19K遺伝子重複およびE1B55K遺伝子重複として、E1B55K遺伝子の不活性化を、E1B55Kの開始部位の下流に終止コドンを導入し、そしてE1B19K末端の末端とE1B55K遺伝子の残部との間の配列の削除によって達成した。上記削除領域を、PmeI部位で置換した。E1B55Kの変異誘発を、3.4/pGEM9Z構築物を用いた2工程PCRプロセスを使用して行った。PCRの第1工程に由来する産物を、PCRプライマーP02 fwd(5’−CCCTCCAGTGGAGGAGGCGGAGTAGGTTTAAACGGTGAGTATTGGGAAAACTTGGGGT−3’)、P03 Rev(5’−TAGCATAGGTCAGCGTTGAAGAAT−3’)、10ngの3.4/pGEM−9ZテンプレートDNAおよびFaststart DNA ポリメラーゼ(Roche)を使用して生成した。第2のPCR工程産物を、PCRプライマーP01 fwd(5’−ATAAATGGATCCCGCAGACTCATTTTAGCAGGGGATACGTTTTGGATTTCG−3’)および第1のPCR反応由来の産物、10ngの3.4/pGEM9ZテンプレートDNAならびにFaststart DNA ポリメラーゼ(Roche)を使用して生成した。上記PCR産物を、QIAquick PCR Purification Kit(QIAGEN)を使用して精製し、BsmBIおよびBamHIを用いて消化し、2%アガロースゲル上で単離し、そしてBio101 GeneCleanを用いて精製した。上記精製されたE1B55K欠失フラグメントを、3.4Δ55K/pGEM−9Zを生成するために、事前にBsmBIおよびBamHIを用いて消化した3.4/pGEM9Z中にライゲーションした。上記1.4Kbのフラグメント、上記2.2kbのフラグメントおよび上記3.4Δ55Kフラグメントを構築するために、上記3.4Δ55K/pGEM−9Z構築物を、HindIIIを用いて消化し、この3.4Δ55Kフラグメントを、1%アガロースゲル上で単離し、Bio 101 Gene Clean Kitを用いて精製した。精製された3.4Δ55Kフラグメントを、シャトルベクター(SV13)を作製するために、HindIIIを用いて消化し、そしてCIPによって処理した1.4/2.2/pGEM−7Z構築物中にライゲーションした。
【0095】
上記シャトルベクター(SV13)を配列決定した後、上記PCRにおける誤差によって引き起こされた、1.4KBフラグメント中の単一の点変異があることを発見した。この誤差を修正するために、新しい1.4KB PCR産物を、プルーフリーディングDNAポリメラーゼ(Stratagene由来のpfu)を使用したことを除いて、同じPCR条件を使用して生成した。精製された1.4Kbフラグメントを、シャトルベクター、SV2−5を生成するために、NotIおよびBmgBIを用いて消化したSV13シャトルベクターにライゲーションした。この構築物を、配列決定によって検証した。
【0096】
(ウイルス構築およびウイルス単離)
サブグループBアデノウイルス34型(Ad34)(ATCC)TP DNAを、S.Miyakeら、(PNAS 1996)に記載されるように作製した。Ad34ΔE1B55Kウイルスを構築するために、上記SV2−5構築物を、NotIおよびNheI(8.5μg)を用いて消化し、1%アガロースゲル上で単離し、そしてQIAquick PCR Gel Purification Kit(QIAGEN)を用いて精製した。その後、このフラグメントの5μgを、室温で一晩、NheIを用いて、37℃で6時間消化した0.25μgのAD34−TP DNAにライゲーションした。上記ライゲーション混合物を、60mmディッシュにおいて、2% FBS培地を補充したDMEM中のHEK293細胞内に、製造業者のプロトコルに従って、Mammalian Transfection Kit(Stratagene)を使用してトランスフェクトした。上記トランスフェクトを、37℃/3%COで一晩、24時間インキュベートした。トランスフェクトを、24時間後に、上記培地を除去し、そしてその培地を2% FBS、2% L−グルタミン(Glutameine)、1% PSを補充したDMEMで置換することによって停止し、その後、37℃/5%COで24時間インキュベートした。上記細胞を、2% FBS、2% L−グルタミン、1% NEAA、1% PSおよび1.5% SeaPlaqueアガロースを含むDMEM感染培地でオーバーレイし(overlay)、そして新鮮なオーバーレイ培地を2〜3日ごとに供給した。プラークを単離し、HEK293細胞上で増殖し、そしてウイルスDNAを、製造業者の推奨に従って、QIAamp DNA Blood Kit(QIAGEN)を使用して単離した。ウイルスを、E1B55K欠失領域について、以下のプライマー:SVfwd05(5’−GGAAGACCTTAGAAAGACTAGGC−3’)およびP03Rev(5’−TAGCATAGGTCAGCGTTGAAGAAT−3’)を使用して、PCRによってスクリーニングした。PCRを、Faststart DNA ポリメラーゼ(Roche)を使用して、以下のサイクル条件:94℃で5分間を1サイクル、94℃で30秒間、55℃で30秒間、そして72℃で30秒間〜90秒間を25〜30サイクル、そして72℃で7分間を1サイクル、そして最後に4℃で無期限の下で行った。陽性プラークを、293/E4細胞(Microbix Biosystems Inc.)上で4ラウンド精製した。全てのウイルス単離物を、E1B55K欠失配列およびAd34野生型E1B55Kの内部配列について、以下のプライマー:3.4fwd03(5’−GGGATGAAGTTTCTGTATTGC−3’)および3.4rev12(5’−GTCACATCTACACACACCGG−3’)を用いて、PCRによってスクリーニングした。
【0097】
Ad34ΔE1B55Kウイルス、上記シャトルベクター(SV2−5)を、American Type Culture Collectionに、それぞれ、受託番号_および受託番号_で寄託する。
【0098】
本発明は、明確な理解を目的として、例示によってある程度詳細に記載されたが、特定の変更および改変が、特許請求の範囲内で実施され得ることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1−1】図1−1は、ヒトサブグループBアデノウイルス3型の完全ヌクレオチド配列、およびE1B55Kタンパク質をコードする領域を示す。
【図1−2】図1−2は、ヒトサブグループBアデノウイルス3型の完全ヌクレオチド配列、およびE1B55Kタンパク質をコードする領域を示す。
【図1−3】図1−3は、ヒトサブグループBアデノウイルス3型の完全ヌクレオチド配列、およびE1B55Kタンパク質をコードする領域を示す。
【図1−4】図1−4は、ヒトサブグループBアデノウイルス3型の完全ヌクレオチド配列、およびE1B55Kタンパク質をコードする領域を示す。
【図1−5】図1−5は、ヒトサブグループBアデノウイルス3型の完全ヌクレオチド配列、およびE1B55Kタンパク質をコードする領域を示す。
【図1−6】図1−6は、ヒトサブグループBアデノウイルス3型の完全ヌクレオチド配列、およびE1B55Kタンパク質をコードする領域を示す。
【図1−7】図1−7は、ヒトサブグループBアデノウイルス3型の完全ヌクレオチド配列、およびE1B55Kタンパク質をコードする領域を示す。
【図2−8】図2−8は、ヒトサブグループBアデノウイルス34型の完全ヌクレオチド配列、およびE1B55Kタンパク質をコードする領域を示す。
【図2−9】図2−9は、ヒトサブグループBアデノウイルス34型の完全ヌクレオチド配列、およびE1B55Kタンパク質をコードする領域を示す。
【図2−10】図2−10は、ヒトサブグループBアデノウイルス34型の完全ヌクレオチド配列、およびE1B55Kタンパク質をコードする領域を示す。
【図2−11】図2−11は、ヒトサブグループBアデノウイルス34型の完全ヌクレオチド配列、およびE1B55Kタンパク質をコードする領域を示す。
【図2−12】図2−12は、ヒトサブグループBアデノウイルス34型の完全ヌクレオチド配列、およびE1B55Kタンパク質をコードする領域を示す。
【図2−13】図2−13は、ヒトサブグループBアデノウイルス34型の完全ヌクレオチド配列、およびE1B55Kタンパク質をコードする領域を示す。
【図2−14】図2−14は、ヒトサブグループBアデノウイルス34型の完全ヌクレオチド配列、およびE1B55Kタンパク質をコードする領域を示す。
【図3】図3は、ヒトサブグループBアデノウイルス3型のE1A領域のcDNAヌクレオチド配列を示す。
【図4】図4は、ヒトサブグループBアデノウイルス3型のcDNAによってコードされるE1A領域のアミノ酸配列を示す。
【図5】図5は、ヒトサブグループBアデノウイルス34型のE1A領域のcDNAヌクレオチド配列を示す。
【図6】図6は、ヒトサブグループBアデノウイルス34型のcDNAによってコードされるE1A領域のアミノ酸配列を示す。
【図7】図7は、ヒトサブグループBアデノウイルス3型のオープンリーディングフレーム6のDNA配列を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞集団における新形成細胞を除去するための方法であって、以下の工程:
感染条件の下で(1)機能的腫瘍抑制遺伝子産物に結合可能な発現されたウイルス性腫瘍タンパク質を欠く、組換え複製欠損サブグループBアデノウイルスと、(2)ウイルス性腫瘍タンパク質と結合複合体を形成する該機能的腫瘍抑制遺伝子産物を含有する非新形成細胞、および該機能的腫瘍抑制遺伝子産物を欠く新形成細胞を含む細胞集団とを接触させることによって、感染された細胞集団を生成させる工程
を包含する、方法。
【請求項2】
前記腫瘍抑制物質が、p53、またはpRbである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ウイルス性腫瘍タンパク質が、アデノウイルスE1bポリペプチドまたはアデノウイルスE1Aポリペプチドを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記サブグループBアデノウイルスが、3型または34型からなる群より選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
患者の癌を処置する方法であって、該患者に、機能的腫瘍抑制遺伝子産物に結合可能な発現されたアデノウイルス性腫瘍タンパク質を欠く、組換え複製欠損サブグループBアデノウイルスを投与する工程を包含する、方法。
【請求項6】
前記サブグループBアデノウイルスが、3型または34型からなる群より選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記アデノウイルス性腫瘍タンパク質が、E1bポリペプチドまたはE1Aポリペプチドを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
図1に示されるヌクレオチド配列を含む、組換えヒトアデノウイルスサブグループB 3型。
【請求項9】
ストリンジェント条件の下で図1に示されるヌクレオチド配列にハイブリダイズする、ヌクレオチド配列。
【請求項10】
図2に示されるヌクレオチド配列を含む、組換えヒトアデノウイルスサブグループB 34型。
【請求項11】
ストリンジェント条件の下で図2に示されるヌクレオチド配列にハイブリダイズする、ヌクレオチド配列。
【請求項12】
pRbまたはp53にそれぞれ結合する腫瘍タンパク質をコードするE1A領域および/またはE1B領域における変異を含み、該変異が、pRbまたはp53のそれぞれに対する該腫瘍タンパク質の結合を減少または排除する変異である、請求項8に記載の組換えヒトアデノウイルスサブグループB 3型。
【請求項13】
前記変異が、欠失変異または点変異である、請求項12に記載の組換えヒトアデノウイルス。
【請求項14】
pRbまたはp53にそれぞれ結合する腫瘍タンパク質をコードするE1A領域および/またはE1B領域における変異を含み、該変異が、pRbまたはp53のそれぞれに対する該腫瘍タンパク質の結合を、減少または排除する変異である、請求項10に記載の組換えヒトアデノウイルスサブグループB 34型。
【請求項15】
前記変異が、欠失変異または点変異である、請求項14に記載の組換えヒトアデノウイルス。
【請求項16】
E1B 55Kタンパク質をコードする領域を含む、図1または図2に示されるヌクレオチド配列、またはストリンジェント条件下で該配列にハイブリダイズするヌクレオチド配列。
【請求項17】
図1または図2に示されるヌクレオチド配列によってコードされるE1B 55Kタンパク質、またはストリンジェント条件の下で該配列にハイブリダイズするヌクレオチド配列によってコードされるタンパク質。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図1−3】
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【図1−4】
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【図1−5】
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【図1−6】
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【図1−7】
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【図2−8】
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【図2−9】
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【図2−10】
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【図2−11】
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【図2−12】
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【図2−13】
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【図2−14】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2007−530004(P2007−530004A)
【公表日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−520185(P2006−520185)
【出願日】平成16年6月22日(2004.6.22)
【国際出願番号】PCT/US2004/019907
【国際公開番号】WO2005/010149
【国際公開日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(500132889)オニックス ファーマシューティカルズ,インコーポレイティド (5)
【Fターム(参考)】