説明

発光ダイオードの製造方法及び発光ダイオード

【課題】発光ダイオードにおいて、発光層に加工損傷が生じることを抑止するとともに、発光層の面積を最大限に確保する。
【解決手段】発光ダイオードの製造方法は、Si基板21の表面にn型クラッド層23を形成する第1の工程と、n型クラッド層23上に発光層24を形成する第2の工程と、発光層24上にp型クラッド層25を形成する第3の工程と、Si基板21の裏面よりn型クラッド層23に達するビアホール27を形成する第4の工程と、ビアホール27にビアホール電極29を埋め込む第5の工程と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光ダイオードの製造方法及び発光ダイオードに関する。
【背景技術】
【0002】
先ず、図1を参照して、従来の発光ダイオード(LED;Light Emitting Diode)について説明する。図1は、従来の一般的な発光ダイオードを説明するための概略図であって、主要部の切断端面を示している。
【0003】
発光ダイオードは、特許文献1に記載されているように、支持基板11上に、バッファ層12、n型クラッド層13、発光層14、及びp型クラッド装15が順次に積層されて構成されている。
【0004】
発光ダイオードのp型クラッド層15の上側表面上には、p型電極16が設けられている。また、n型クラッド層13まで掘り込まれた箇所には、オーミック接合で形成されたn型電極17が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−232649号公報
【特許文献2】特開2009−049342号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図1に示すように、n型電極17を形成する箇所は、ドライエッチングを用いてn型クラッド13まで掘り込まれている。この際、ドライエッチングはウェットエッチングに比べて加工精度が優れている反面、物理的破壊が行われるため、LEDの発光層14に加工損傷が起こる可能性がある。
【0007】
加工される境界が損傷を受けることで、発光層14の発光効率の低下や電流リークが起こり、LEDの性能劣化の原因となる。また、性能劣化だけでなく、n型電極17を形成する箇所では、発光層14を含む領域を掘り込んでいるため、発光層14が発光する面積も縮小してしまう。
【0008】
一方、加工損傷の恐れや発光面積を縮小させない構造として、特許文献2に記載されているように、従来のLED構造をフリップチップ化し、裏面より光を取り出す方法がある。しかしながら、この場合、支持基板として炭化珪素(SiC)やサフィアなどの透明な基板が必要になる。そして、炭化珪素(SiC)やサフィアはSiに比べると高価であるという欠点がある。
【0009】
更に、導電性のあるSi基板やSiC基板を支持基板に用いることで、n型電極17を支持基板11の裏面に設置する構造も考えられる。しかし、Si基板やSiC基板の抵抗率はおよそ0.1Ωm程度であり、一方、金属の抵抗率はマイナス7〜8乗オーダーであるため、Si基板やSiC基板の抵抗率は金属に比べると高く、LEDの性能の発揮を妨げてしまう。
【0010】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、発光層に加工損傷が生じることを抑止するとともに、発光層の面積を最大限に確保でき、製造コストを低減することが可能な、新規かつ改良された発光ダイオードの製造方法及び発光ダイオードを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、支持基板の表面に第1導電型の導電層を形成する第1の工程と、前記第1導電型の導電層上に発光層を形成する第2の工程と、前記発光層上に第2導電型の導電層を形成する第3の工程と、前記支持基板の裏面より前記第1導電型の導電層に達するビアホールを形成する第4の工程と、前記ビアホールにビアホール電極を埋め込む第5の工程と、を備える発光ダイオードの製造方法が提供される。
【0012】
また、前記第4の工程の前に、前記支持基板の裏面にレジストパターンを形成する工程と、前記第4の工程の後に、前記レジストパターンを除去する工程と、を更に備え、前記第4の工程において、前記レジストパターンをマスクとして前記ビアホールを形成するものであってもよい。
【0013】
また、前記第4の工程の後に、前記ビアホール内に露出した前記第1導電型の導電層の表面に、めっき法で用いるシード層を形成する工程を備え、前記第5の工程において、めっき法で前記シード層に前記ビアホール電極を埋め込むものであってもよい。
【0014】
また、前記シード層は、Ti/Al/Ti/Auの積層膜から構成されるものであってもよい。
【0015】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、支持基板の表面に形成された第1導電型の導電層と、前記第1導電型の導電層上に形成された発光層と、前記発光層上に形成された第2導電型の導電層と、前記支持基板の裏面から前記第1導電型の導電層に達するビアホールに埋め込まれたビアホール電極と、を備える発光ダイオードが提供される。
【0016】
また、前記ビアホール電極は、めっき法で用いるシード層を介して前記ビアホールに埋め込まれたものであってもよい。
【0017】
また、前記シード層は、Ti/Al/Ti/Auの積層膜から構成されるものであってもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、光層に加工損傷が生じることを抑止するとともに、発光層の面積を最大限に確保でき、製造コストを低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】従来の発光ダイオードを説明するための概略図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る発光ダイオードの製造方法を示す概略断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る発光ダイオードの製造方法を示す概略断面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る発光ダイオードの製造方法を示す概略断面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る発光ダイオードの製造方法を示す概略断面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る発光ダイオードの製造方法を示す概略断面図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る発光ダイオードの製造方法を示す概略断面図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る発光ダイオードの製造方法を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0021】
窒化物半導体を用いたLEDにおいて、窒化ガリウム(GaN)の単結晶基板は高価であり、また、基板サイズも小さいものしか入手できない。このため、窒化物系LEDを製造するにあたっては、通常、支持基板11として、他の材質で形成された異種材料基板を用いて、この異種材料基板上にGaNなどの窒化物半導体薄膜を成長させる。異種材料基板として、例えば、シリコン(Si)基板、シリコンカーバイド(SiC)基板、サフィア基板などが用いられる。
【0022】
以下、本実施形態について説明する。先ず、図2に示すように、支持基板(Si基板)21上に、GaN、窒化アルミガリウム(AlGaN、GaN)、または窒化アルミ(AlN)からなるバッファ層22を有機金属気相成長法(MOCVD)で堆積させる。
【0023】
続いて、n型クラッド層23、発光層24、及びp型クラッド層25を順次結晶成長させる。具体的には、バッファ層22上に、SiがドープされたGaNからなるn型クラッド層23を形成する。次に、n型クラッド層23上に、シリコン(Si)やマグネシウム(Mg)がドープされたInGaN/GもしくはAlGaN/GNからなり、数nm単位で超格子状に積層された発光層24を形成する。次に、発光層24上に、MgがドープされたGaNを含むp型クラッド層25を形成する。
【0024】
その後、Si基板21の裏面側を200μm程度まで研磨し、Si基板21を薄層化する。
【0025】
次に、ウェハの裏面のSi基板21側に、ドライエッチング耐性のあるポジレジスト、例えば、OFPR(東京応化工業株式会社製)を塗布する。その後、図3に示すように、フォトリソグラフィ及びこれに続くドライエッチングによりポジレジストをパターニングし、例えば直径50μmの円形のレジストパターン26を150μmピッチでパターニングする。
【0026】
その後、図4に示すように、六フッ化硫黄ガス(SF)と四フッ化炭素ガス(CF)を交互に供給するボッシュ法を用いたドライエッチングにより、レジストパターン26をマスクとして、Si基板11の裏面側からバッファ層22に達するまでエッチングを行う。その後、塩素(Cl)や三塩化ホウ素(BCl)のガスによる誘導結合型反応性イオンエッチング法により、バッファ層22を貫通し、n型クラッド層23に十分達する箇所まで続けてドライエッチングを行ない、ビアホール27を形成する。その後、レジストパターン26を除去し、洗浄を行う。
【0027】
次に、図5に示すように、電界めっき用の電流供給層として、チタン(Ti)/アルミニウム(Al)/Ti/金(Au)からなるシード層28をスパッタ法等で堆積する。ここで、チタン(Ti)は密着性を高めるため、アルミニウム(Al)はn型GaNへのオーミック接合のため、金(Au)はめっき液からの保護のために用いる。シード層28は、任意の厚さで形成する。
【0028】
次に、図6に示すように、電解めっきによりビアホール27内に銅(Cu)を堆積させてビアホール電極29を形成する。次に、スパッタ等により、p型クラッド層25の表面に酸化インジウムスズ(ITO)等からなる透明電極29を300nm程度の厚さで堆積する。透明電極29は、発光層24へ広く効率良く電流が流れるために用いられる。
【0029】
次に、図8に示すように、フォトリソグラフィ及びこれに続くドライエッチングにより、透明電極29上へ上面電極用のパターンをパターニングし、蒸着法によりTi/Al、またはTi/Au、ニッケル(Ni)/Auを300nm程度の厚さで蒸着し、リフトオフで上面電極30を形成する。
【0030】
図8に示す構成において、ビアホール電極29を介してn型クラッド層23が所定の電位に設定される。また、上面電極30を介してp型クラッド層25に所定の電位が印加される。これにより、n型クラッド層23とp型クラッド層25に挟まれた発光層24が発光する。
【0031】
図8に示すように、本実施形態の窒化物半導体発光ダイオードは、Si基板21の裏面側からビアホール電極29が設置された構造とされている。このため、n型電極およびp型電極が同じ面側に平面状に配置される構造とは異なり、上面と裏面の上下方向にn型電極およびp型電極が設置された構造となる。従って、本実施形態に係る窒化物半導体発光ダイオードの構造内における電流経路は縦方向となり、n型クラッド層を横方向に電流が流れる従来構造(図1)よりも電流経路を大幅に短縮することができる。
【0032】
ビアホール電極29の材料はCu等の金属であるため、半導体のみを支持基板11として裏面に電極を設置した場合と比較すると電気伝導性が高く、またCuを電極に用いることでSiやサフィアを支持基板とした場合よりも放熱性を向上させることができる。
【0033】
更に、Cuの熱伝導率は401W/(m・K)である。一方、Siの熱伝導率は149W/(m・K)、サフィアの熱伝導率は42W/(m・K)であり、Cuの物性値と比較すると、Siは約1/2.69倍、サフィアは約1/9.55倍である。従って、Cuをビアホール電極29に用いることで、Siやサフィアを支持基板11とした場合よりも放熱性を向上させることができる。
【0034】
Si支持基板の厚さ200μmに直径50μmのビアホール電極29を150μmピッチで設計し、Cuの抵抗率を1.7×10−8Ωm、低抵抗Si支持基板の抵抗率を0.1Ωmとした場合、ビアホール電極29の1mあたりの抵抗値は約6.9×10−11Ωとなる。一方、低抵抗Siの支持基板のみの1mあたりの抵抗値は、2.0×10−5Ωとなり、低抵抗Siの支持基板を用いた場合は約288倍程度抵抗値が劣化することになる。
【0035】
n型クラッド層23に接続されるn型電極をビアホール電極29にすることで、電極形成のために発光層24を縮小することなくLED構造を形成することができる。従って、発光層24の発光面積を増大することができ、発光量を増加させることが可能となる。
【0036】
また、従来のLED構造のn型電極のようなドライエッチングを用いる工程では、発光層14へ加工損傷が起こってしまうが、本実施形態では、ビアホール電極29をSi基板21の裏面側から形成するため、発光層14をドライエッチングする必要がなく、発光層14への加工損傷の発生を確実に抑えることが可能である。
【0037】
また、ビアホール電極29の材料は金属であるため、支持基板21に用いる半導体よりも熱伝導性が優れ、発光ダイオードの放熱性を向上することができる。更に、金属は半導体よりも電気伝導性が優れるため、LEDの裏面にビアホール電極29を形成することで、電流ロスを抑えることができ、LEDの性能劣化を確実に抑制することができる。
【0038】
以上説明したように本実施形態によれば、発光ダイオードにおいて、n型電極を形成するために発光層14の面積が縮小してしまうことを抑えることができ、且つ、発光層14の加工損傷による発光ダイオードの性能劣化を抑止することができる。従って、発光面積を拡大するとともに、発光ダイオードの性能劣化を確実に抑えることが可能となる。また、支持基板21の裏面側からビアホール電極29を形成したため、放熱性及び電気伝導性を向上させることが可能となる。
【0039】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0040】
23 n型クラッド層
24 発光層
25 p型クラッド層
27 ビアホール
28 シード層
29 ビアホール電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持基板の表面に第1導電型の導電層を形成する第1の工程と、
前記第1導電型の導電層上に発光層を形成する第2の工程と、
前記発光層上に第2導電型の導電層を形成する第3の工程と、
前記支持基板の裏面より前記第1導電型の導電層に達するビアホールを形成する第4の工程と、
前記ビアホールにビアホール電極を埋め込む第5の工程と、
を備えることを特徴とする、発光ダイオードの製造方法。
【請求項2】
前記第4の工程の前に、前記支持基板の裏面にレジストパターンを形成する工程と、
前記第4の工程の後に、前記レジストパターンを除去する工程と、を更に備え、
前記第4の工程において、前記レジストパターンをマスクとして前記ビアホールを形成することを特徴とする。請求項1に記載の発光ダイオードの製造方法。
【請求項3】
前記第4の工程の後に、前記ビアホール内に露出した前記第1導電型の導電層の表面に、めっき法で用いるシード層を形成する工程を備え、
前記第5の工程において、めっき法で前記シード層に前記ビアホール電極を埋め込むことを特徴とする、請求項1に記載の発光ダイオードの製造方法。
【請求項4】
前記シード層は、Ti/Al/Ti/Auの積層膜から構成されることを特徴とする、請求項3に記載の発光ダイオードの製造方法。
【請求項5】
支持基板の表面に形成された第1導電型の導電層と、
前記第1導電型の導電層上に形成された発光層と、
前記発光層上に形成された第2導電型の導電層と、
前記支持基板の裏面から前記第1導電型の導電層に達するビアホールに埋め込まれたビアホール電極と、
を備えることを特徴とする、発光ダイオード。
【請求項6】
前記ビアホール電極は、めっき法で用いるシード層を介して前記ビアホールに埋め込まれたことを特徴とする、請求項5に記載の発光ダイオード。
【請求項7】
前記シード層は、Ti/Al/Ti/Auの積層膜から構成されることを特徴とする、請求項6に記載の発光ダイオード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−74245(P2013−74245A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−214333(P2011−214333)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】