説明

発泡体製造用のガス発生剤

【課題】本発明の目的は、アンモニアや窒素酸化物(NOx)の発生を抑制しつつ窒素ガスを発生できる、発泡体製造用のガス発生剤を提供することである。
【解決手段】(A)アンモニアガスを生成する含窒素化合物、(B)亜硝酸塩、及び(C)リン酸塩を含むガス発生剤は、アンモニアガスや窒素酸化物(NOx)ガスの発生を効果的に抑制しつつ、窒素ガスを発生できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂やエラストマー等の発泡体の製造に使用するガス発生剤に関する。詳細には、本発明は、アンモニアや窒素酸化物(NOx)の発生を効果的に抑制しつつ窒素ガスを発生でき、熱可塑性樹脂やゴム等の発泡体の製造に使用されるガス発生剤に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂やエラストマー等に気泡を形成させた発泡体は、防音性、断熱性、止水性、気密性、制振性、クッション性等の特性に優れており、様々な製品に使用されている。従来、熱可塑性樹脂やゴムなどの発泡体の製造には、アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、N,N'−ジニトロペンタメチレンテトラミン等の、窒素ガスを発生させる熱分解型化学発泡剤が使用されている。これらの熱分解型化学発泡剤は、熱分解温度で発泡作用が生じ、主に窒素ガスを発生させる。一方、窒素ガスを発生する熱分解型化学発泡剤では、窒素ガス以外にも、アンモニアや窒素酸化物(NOx)を生成させることが知られている。アンモニアや窒素酸化物は、発泡倍率に寄与しないだけでなく、特有の臭気を呈したり環境に負荷を与えるため、これらの熱分解型化学発泡剤を使用する製造現場では、副生する物質に対する対策が必要とされている。
【0003】
これまでに、ポリオレフィン系樹脂発泡体に脱臭剤を配合することにより、上記熱分解型化学発泡剤から生じる臭気を除去できることが報告されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、特許文献1の技術では、製造された発泡体の臭気をある程度抑制できても、発泡体の製造現場に放出される臭気を有効に抑制することができないという欠点がある。
【0004】
また、従来、熱分解によりアンモニアガスを生成する含窒素化合物、亜硝酸塩、及びハイドロタルサイトを含むガス発生剤が、アンモニアや亜硝酸ガスの発生を抑制して窒素ガスを発生できることが報告されている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2の技術では、含窒素化合物の熱分解によって生じるアンモニアを亜硝酸により窒素ガスに変換し、ハイドロタルサイトによって亜硝酸のアンモニアに対する反応性を高められている。しかしながら、特許文献2の技術でも、依然としてアンモニアガス及び窒素酸化物の発生抑制効果が十分ではなく、更なる改善が望まれる。
【0005】
このような従来技術を背景として、発泡体の製造においてアンモニアガスを生成する含窒素化合物を使用する際に、アンモニアガスや窒素酸化物(NOx)ガスの発生を効果的に抑制する技術の開発が切望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−60774号公報
【特許文献2】国際公開第2010/147067号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、熱可塑性樹脂やエラストマー等の発泡体の製造において、アンモニアガスを生成する含窒素化合物を使用する際の前記問題点を解消することを目的とする。即ち、本発明は、アンモニアや窒素酸化物(NOx)の発生を抑制しつつ窒素ガスを発生できる、発泡体製造用のガス発生剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、(A)アンモニアガスを生成する含窒素化合物、(B)亜硝酸塩、及び(C)リン酸塩を含むガス発生剤は、アンモニアガスや窒素酸化物(NOx)ガスの発生を効果的に抑制しつつ、窒素ガスを発生できることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0009】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. 発泡体の製造に使用されるガス発生剤であって、(A)アンモニアガスを発生する含窒素化合物、(B)亜硝酸塩、及び(C)リン酸塩を含むことを特徴とする、ガス発生剤。
項2. 前記含窒素化合物(A)が、尿素結合を有する化合物、アゾジカルボンアミド、及びN,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミンよりなる群から選択される少なくとも1種である、項1記載のガス発生剤。
項3. 前記亜硝酸塩(B)が、亜硝酸アルカリ金属塩である、項1又は2に記載のガス発生剤。
項4. 前記リン酸塩(C)が、リン酸のアンモニウム塩及びリン酸水素アルカリ土類金属塩の少なくとも1種である、項1〜3の何れかに記載のガス発生剤。
項5. 前記含窒素化合物(A)が尿素であり、前記亜硝酸塩(B)が亜硝酸ナトリウムであり、前記リン酸塩(C)がリン酸二水素アンモニウム、リン酸三アンモニウム、及びリン酸水素カルシウムよりなる群から選択される少なくとも1種である、項1〜4の何れかに記載のガス発生剤。
項6. 項1〜5の何れかに記載のガス発生剤、及び高分子材料を含むことを特徴とする、発泡用ポリマー組成物。
項7. 前記高分子材料が、熱可塑性樹脂又はエラストマーである、項6に記載の発泡用ポリマー組成物。
項8. 項6又は7に記載の発泡用ポリマー組成物を加熱処理する工程を含む、発泡体の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、熱可塑性樹脂やエラストマー等の発泡体を形成させる際に、アンモニアガスや窒素酸化物(NOx)ガスの発生を効果的に抑制できる。そのため、本発明によって、発泡体の製造現場におけるアンモニアガスや窒素酸化物(NOx)ガスの臭気対策等が不要となり、製造装置の簡易化が図られ、環境への負荷も抑制できるため、工業的に極めて有利になる。更に、本発明は、効率的に窒素ガスを発生させることができるので、均一で微細な気泡を発泡体に形成させることにも寄与し得る。
【0011】
なお、限定的な解釈を望むものではないが、本発明によってアンモニアガスや窒素酸化物(NOx)ガスの発生が効果的に抑制されて窒素ガスを効率的に発生できるのは、含窒素化合物の熱分解によって生成するアンモニアガスが亜硝酸塩と反応して窒素ガスに変換され、このアンモニアガスと亜硝酸塩の反応をリン酸塩が促進することにより、窒素酸化物(NOx)ガスの発生抑制と窒素ガスの発生促進を可能にしているためであると考えられる。
【0012】
また、本発明のガス発生剤によれば、ガス発生後の残渣はガス発生前に比べて色調が殆ど変化しないため、発泡体の色調に悪影響を及ぼすこともない。
【発明を実施するための形態】
【0013】
1.ガス発生剤
本発明は、発泡体の製造に使用されるガス発生剤であって、(A)アンモニアガスを発生する含窒素化合物、(B)亜硝酸塩、及び(C)リン酸塩を含むことを特徴とする。以下、本発明について詳細に説明する。
【0014】
本発明で使用される含窒素化合物は、熱分解によりアンモニアガスを生成させるものである。当該含窒素化合物は、熱分解によって主に窒素ガスを生じさせ、少量のアンモニアガスが副生するものであってもよく、また熱分解によって主にアンモニアガスを生じさせるものであってもよい。好適な含窒素化合物として、熱分解によって主に窒素ガスを生じさせ、少量のアンモニアガスが副生するものが例示される。
【0015】
本発明で使用される含窒素化合物としては、例えば、130〜250℃程度で熱分解してアンモニアガスを生成させるものが挙げられ、具体的には、尿素、ヒドラゾジカルボンアミド、ビウレット、ウラゾール等の尿素結合(例えば−NHCONH、−NRCONH、−NHCONHR、−NRCONHR等;ここでRは、任意の基、好ましくは有機基、更に好ましくは炭素数1〜10個の有機基、特に好ましくは炭素数1〜10個のアルキル基)を有する化合物の他、グアニジン類、4,4’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、p−トルエンスルホニルヒドラジド、2,2’−アゾイソブチロニトリル、アゾジカルボンアミド等が挙げられる。
【0016】
また、これらの含窒素化合物は、脂肪酸、脂肪酸金属塩、脂肪酸エステル、シランカップリング剤等の表面処理剤によって表面処理され、吸湿性が改善されていてもよい。これらの含窒素化合物は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0017】
本発明のガス発生剤において、アンモニアガス及び窒素酸化物(NOx)ガスの発生を一層効率的に抑制するという観点から、前記含窒素化合物として好ましくは尿素結合を有する化合物、アゾジカルボンアミド、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、更に好ましくは尿素が挙げられる。
【0018】
本発明で使用される亜硝酸塩としては、亜硝酸のアルカリ金属塩、亜硝酸のアルカリ土類金属塩等が挙げられ、具体的には亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、亜硝酸バリウム、亜硝酸カルシウム、亜硝酸アンモニウム等が挙げられる。これらの亜硝酸塩は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0019】
本発明のガス発生剤において、アンモニアガス及び窒素酸化物(NOx)ガスの発生を一層効率的に抑制するという観点から、亜硝酸塩として好ましくは亜硝酸のアルカリ金属塩、更に好ましくは亜硝酸ナトリウムが挙げられる。
【0020】
本発明で使用されるリン酸塩としては、リン酸のアンモニウム塩(リン酸アルカリ金属二アンモニウム塩、リン酸二アルカリ金属アンモニウム塩、リン酸アルカリ土類金属アンモニウム塩、リン酸三アンモニウム)、リン酸二水素アルカリ金属塩、リン酸水素二アルカリ金属塩、リン酸水素アルカリ土類金属塩、リン酸アルカリ金属塩、リン酸アルカリ土類金属塩等が挙げられる。リン酸塩の具体例としては、リン酸水素二アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸ナトリウム二アンモニウム、リン酸カルシウムアンモニウム、リン酸マグネシウムアンモニウム、リン酸水素カルシウム、リン酸水素マグネシウム、リン酸三アンモニウム、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カルシウム、ピロリン酸第二鉄、リン酸三カルシウム、ハイドロキシアパタイト等が挙げられる。これらのリン酸塩は、水和物の形態であってもよい。また、これらのリン酸塩は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0021】
本発明のガス発生剤において、アンモニアガス及び窒素酸化物(NOx)ガスの発生を一層効率的に抑制するという観点から、リン酸塩として、好ましくはリン酸のアンモニウム塩(リン酸水素二アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸アルカリ金属二アンモニウム、リン酸アルカリ土類金属アンモニウム、リン酸二アルカリ金属アンモニウム、リン酸三アンモニウム等)、並びにリン酸水素アルカリ土類金属塩(リン酸水素カルシウム、リン酸水素マグネシウム等);更に好ましくはリン酸二水素アンモニウム、リン酸三アンモニウム、リン酸水素カルシウムが挙げられる。
【0022】
本発明のガス発生剤において、上記含窒素化合物、亜硝酸塩、及びリン酸塩の比率については、使用する各成分の種類等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、上記含窒素化合物、亜硝酸塩、及びリン酸塩の総量100重量部当たり、上記含窒素化合物が0.5〜95重量部、好ましくは10〜70重量部、更に好ましくは20〜50重量部;上記亜硝酸塩が0.5〜70重量部、好ましくは20〜65重量部、更に好ましくは40〜55重量部;上記リン酸塩が0.5〜60重量部、好ましくは1〜50重量部、更に好ましくは5〜30重量部が挙げられる。
【0023】
また、本発明のガス発生剤は、本発明の効果を妨げない範囲で、上記成分以外の添加剤が含まれていてもよい。このような添加剤としては、例えば、上記含窒素化合物以外の発泡剤、発泡助剤等が挙げられる。上記含窒素化合物以外の発泡剤としては、具体的には、クエン酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム等の有機化学発泡剤;炭酸水素ナトリウム等の無機化学発泡剤;その他、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、しゅう酸第一鉄、炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、過硫酸アンモニウム、アジド化合物、ナトリウムボロンハイドライド、シリコンオキシハイドライド等が挙げられる。また、発泡助剤としては、具体的には、ステアリン酸等の脂肪酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カドミウム、ステアリン酸バリウム等の脂肪酸塩、酸化鉛、酸化カドミウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、ホウ砂、二塩基性亜リン酸鉛、水酸化カルシウム、グリセリン、ジエチレングリコール、ジブチルチンジマレート等が挙げられる。
【0024】
本発明のガス発生剤において、上記含窒素化合物、亜硝酸塩、及びリン酸塩の含有割合としては、特に制限されるものではないが、例えば、上記含窒素化合物、亜硝酸塩、及びリン酸塩の合計量が、本発明のガス発生剤の総量当たり、5〜100重量%、好ましくは20〜100重量%、更に好ましくは30〜100重量%となる範囲が例示される。
【0025】
本発明のガス発生剤の製造方法は、特に制限されるものではなく、一般的な混合法を用いることができる。具体的には、上記含窒素化合物、亜硝酸塩、リン酸塩、及び必要に応じて他の添加剤を、高速ミキサー、リボンブレンダー、コーンブレンダー等の混合装置を用いて、含窒素化合物の分解温度以下(例えば130℃以下で)1〜180分間程度の条件で、均一に分散するように混合すればよい。
【0026】
また、本発明のガス発生剤は、必要に応じて、粉砕処理に供され、微粉末化されていてもよい。本発明のガス発生剤の粒子径としては、例えば0.01〜100μm程度が挙げられ、このような粒子径に調整することにより、一層均一で微細な気泡を発泡体に形成させることが可能になる。
【0027】
本発明のガス発生剤は、樹脂やエラストマー等のポリマーの発泡成型に使用される。本発明のガス発生剤は、樹脂やエラストマー等のポリマーの発泡体の成型温度(例えば、130〜250℃)において、アンモニアガス及び窒素酸化物(NOx)ガスの発生を抑制して窒素ガスを効率的に発生でき、発泡体に均一で微細な気泡を形成させることができる。
【0028】
以下に、本発明のガス発生剤を使用した発泡体の製造法について説明する。
【0029】
2.発泡用ポリマー組成物及び発泡体
本発明の発泡用ポリマー組成物は、上記ガス発生剤、及び高分子材料を含むことを特徴とする。本発明において、「発泡用ポリマー組成物」とは、未発泡の状態であって発泡体成型に供される原料組成物である。
【0030】
本発明の発泡用ポリマー組成物において、上記ガス発生剤の含有割合については、当該ガス発生剤の組成、含有する高分子材料の種類等に応じて適宜設定される。例えば、当該発泡用ポリマー組成物の総量当たり、上記含窒素化合物、亜硝酸塩、及びリン酸塩の合計量が1〜30重量%、好ましくは1〜15重量%、更に好ましくは1〜10重量%を充足する範囲が挙げられる。
【0031】
本発明の発泡用ポリマー組成物に含まれる高分子材料は、発泡体のベースポリマーとして使用できるものである限り特に制限されないが、具体的には、熱可塑性樹脂、エラストマーが挙げられる。
【0032】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル共重合体、ポリエチレン、及びポリプロピレン等のポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体で例示されるポリオレフィン共重合樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体等が挙げられる。
【0033】
また、エラストマーとしては、例えば、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、スチレン・ブタジエン共重合ゴム、アクリロニトリル・ブタジエン共重合ゴム、アクリルゴム、フッ素ゴム、エチレン酢酸ビニル共重合ゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
【0034】
本発明の発泡用ポリマー組成物において、上記高分子材料は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0035】
本発明の発泡用ポリマー組成物における上記高分子材料の含有割合については、特に制限されないが、例えば、当該発泡用ポリマー組成物の総量当たり、1〜99重量%、好ましくは1〜95重量%、更に好ましくは1〜90重量%が挙げられる。
【0036】
本発明の発泡用ポリマー組成物は、高分子材料として熱可塑性樹脂を使用する場合には、架橋剤が含まれていてもよい。架橋剤としては、具体的には、ジクミルペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス(t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルペルオキシ)バレレート、ベンゾイルペルオキシド、p−クロロベンゾイルペルオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、t−ブチルペルオキシベンゾエート、t−ブチルペルベンゾエート、t−ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド等が挙げられる。これらの架橋剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0037】
本発明の発泡用ポリマー組成物において、熱可塑性樹脂と架橋剤を含有させる場合、これらの比率については特に制限されるものではないが、例えば、熱可塑性樹脂100重量部当たり、架橋剤が0.1〜10重量部、好ましくは0.5〜1.5重量部配合される。
【0038】
また、本発明の発泡用ポリマー組成物は、高分子材料としてエラストマーを使用する場合には、加硫剤が含まれていてもよい。加硫剤としては、具体的には、硫黄、過酸化物等が挙げられる。これらの加硫剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0039】
本発明の発泡用ポリマー組成物において、エラストマーと加硫剤を含有させる場合、これらの比率については特に制限されるものではないが、例えば、エラストマー100重量部当たり、加硫剤が0.1〜20重量部、好ましくは0.1〜10重量部配合される。
【0040】
また、上記加硫剤を使用する場合には、必要に応じて、加硫助剤を含んでいてもよい。加硫助剤としては、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、ステアリン酸、ジベンジルチアゾルジスルフィド等が挙げられる。
【0041】
本発明の発泡用ポリマー組成物は、上記成分の他に、必要に応じて、補強材、充填剤、着色剤、軟化剤、活性剤等の添加剤を含んでいてもよい。
【0042】
補強材としては、具体的には、乾式シリカ、湿式シリカ、カーボンブラック、微粉ケイ酸、ケイ酸塩等が挙げられる。
【0043】
充填剤としては、具体的には、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、コロイド炭酸カルシウム、カオリンクレー、タルク、マイカ、セリサイト、長石、珪酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、シリカ、ベントナイト等が挙げられる。
【0044】
本発明の発泡用ポリマー組成物は、上記ガス発生剤、高分子材料、及び必要に応じて他の添加剤を、当該ガス発生剤に含まれる含窒素化合物の分解温度未満(例えば、130℃)で溶融混合することにより調製される。
【0045】
本発明の発泡用ポリマー組成物を使用して発泡体を製造するには、発泡用ポリマー組成物を上記ガス発生剤に含まれる含窒素化合物の分解温度以上の温度条件で加熱処理を行えばよい。かかる加熱処理の具体的条件については、上記ガス発生剤に含まれる含窒素化合物の種類等に応じて適宜設定されるが、例えば、40〜400℃、好ましくは80〜300℃、更に好ましくは100〜250℃が例示される。
【0046】
本発明の発泡用ポリマー組成物を使用して発泡体を製造する方法は、一般的な加熱発泡の方法であればよく、使用する高分子材料の種類、使用するガス発生剤の組成、他の成分の種類等に応じて適宜設定すればよい。本発明の発泡用ポリマー組成物を加熱発泡させる方法として、具体的には、加圧発泡法、常圧発泡法、押出発泡法、射出発泡法等が挙げられる。
【0047】
例えば、本発明の発泡用ポリマー組成物が、上記ガス発生剤と熱可塑性樹脂と架橋剤とを含む場合には、厚み5〜30mmの金型内を当該発泡用ポリマー組成物で満たし、プレス機で145〜170℃及び150kg/cmの条件下、5〜60分間加圧して発泡及び架橋を行うことにより発泡体を製造する方法が例示される。
【0048】
また、例えば、本発明の発泡用ポリマー組成物が、上記ガス発生剤とエラストマーと加硫剤とを含む場合には、当該発泡用ポリマー組成物を70〜90℃程度に加熱した押出機へ投入して未加硫成形体を調製し、未加硫成形体を60〜220℃程度に加熱したオーブン中で5〜15分程度加熱して発泡及び加硫を行うことにより発泡体を製造する方法が例示される。
【実施例】
【0049】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0050】
試験例1:アンモニアガス及び窒素酸化物ガスの発生量と発泡量、並びにガス発生後の分解残渣の色調の評価
1.方法
ガス発生剤(実施例1及び比較例1−2)を調製し、アンモニアガス及び窒素酸化物ガスの発生量と発泡量、並びにガス発生後の分解残渣の色調について評価を行った。各ガス発生剤の調製方法と、アンモニアガス及び窒素酸化物(NO及びNO)ガスの発生量と発泡量の測定方法は、以下の通りである。
【0051】
1−1.ガス発生剤の調製
実施例1
尿素(和光一級、和光純薬工業株式会社製)2.75g、亜硝酸ナトリウム(試薬一級、林純薬工業株式会社製)3.45g、及びリン酸二水素アンモニウム(試薬特級、和光純薬工業株式会社製)0.96gを乳鉢で10分間粉砕・混合し、ガス発生剤を得た。得られたガス発生剤の1.06gを採取し、以下の測定に用いた。
【0052】
実施例2
尿素(和光一級、和光純薬工業株式会社製)2.75g、亜硝酸ナトリウム(試薬一級、林純薬工業株式会社製)3.45g、及びリン酸三アンモニウム三水和物(試薬一級、関東化学株式会社製)1.69gを乳鉢で10分間粉砕・混合し、ガス発生剤を得た。得られたガス発生剤の1.17gを採取し測定に用いた。
【0053】
実施例3
尿素(和光一級、和光純薬工業株式会社製)2.75g、亜硝酸ナトリウム(試薬一級、林純薬工業株式会社製)3.45g、及び無水リン酸水素カルシウム(富田製薬株式会社製)1.13gを乳鉢で10分間粉砕・混合し、ガス発生剤を得た。得られたガス発生剤の1.08gを採取し測定に用いた。
【0054】
比較例1
尿素(和光一級、和光純薬工業株式会社製)3.00g、及び亜硝酸ナトリウム(試薬一級、林純薬工業株式会社製)3.45g、を乳鉢で10分間粉砕・混合し、ガス発生剤を得た。得られたガス発生剤の0.95gを採取し、以下の測定に用いた。
【0055】
比較例2
尿素(和光一級、和光純薬工業株式会社製)3.00g、亜硝酸ナトリウム(試薬一級、林純薬工業株式会社製)3.45g、及びハイドロタルサイト(商品名「AD550PF」、富田製薬株式会社製)0.30gを乳鉢で10分間粉砕・混合し、ガス発生剤を得た。得られたガス発生剤の1.00gを採取し、以下の測定に用いた。
【0056】
1−2.アンモニアガス及び窒素酸化物ガスの発生量と発泡量の測定方法、並びにガス発生後の分解残渣の色調の評価方法
試験管(株式会社イワキ製、30×200mm)に流動パラフィン(和光一級、和光純薬工業株式会社製)10mLを採取した。上記で得られた各ガス発生剤を所定の量採取し、ポリエチレンシートに包んで上記試験管に投入し、液面上部をガラスウール(和光一級、和光純薬工業株式会社製)で覆った。
【0057】
次に、500mL容量と250mL容量のガス洗浄瓶(市ノ瀬式、柴田科学株式会社製)のそれぞれに精製水を400mL及び200mL入れたものと試験管をゴム管で接続した。170℃に加温したオイルバス(OIL BATH OB−200S、株式会社井内盛栄堂製)に試験管を15分静置し、発生したガスを水上置換法にて捕集し、発泡量を測定した。また、500mL容量と250mL容量のガス洗浄瓶中の精製水を採取して混合した後、精製水を添加して総量を1Lとした。これをイオンクロマトグラフ法で分析し、アンモニアガス及び窒素酸化物(NO及びNO)ガスの発生量を測定した。
【0058】
また、上記条件でガスを発生させた後、ガス発生剤の残渣の色調を目視及び色差計(Color meter ZE6000、日本電色工業株式会社)にてハンター白度を測定し、評価した。標準白板を完全な白とし、次式により計算した。
W=100−〔(100−L)+(a+b)〕1/2
W:Lab系による白色度
L:ハンターLabにおける明度指数
a、b:ハンターLabにおける色座標

なお、試験前のガス発生剤の色調は、いずれも白色であった。
【0059】
2.結果
得られた結果を表1−2に示す。この結果から、含窒素化合物、亜硝酸塩、及びリン酸塩を併用したガス発生剤(実施例1−3)では、十分なガス発生量を示し、しかもアンモニアガスの発生量を大幅に低減され、窒素酸化物(NO及びNO)ガスの発生も効果的に抑制できることが確認された。また、実施例1−3のガス発生剤では、ガス発生後の残渣の色調は微黄色であり、殆ど色調変化を生じさせなかった。これに対して含窒素化合物及び亜硝酸塩を含み、リン酸塩を含まないガス発生剤(比較例1)では、アンモニアガス及び窒素酸化物(NO及びNO)ガスの発生を十分に抑制できていなかった。また、含窒素化合物、亜硝酸塩、及びハイドロタルサイトを含み、リン酸塩を含まないガス発生剤(比較例2)では、窒素酸化物(NO及びNO)ガスの発生を抑制できていたものの、アンモニアガスの発生抑制効果が不十分であった。更に、比較例1のガス発生剤では上記ガス発生剤と同様の微黄色であったが、比較例2のガス発生剤では、ガス発生後の残渣に明らかな色調変化が認められた。
【0060】
以上の結果から、アンモニアガス及び窒素酸化物ガスの発生を効果的に抑制しつつ、効率的に窒素ガスを発生させるには、含窒素化合物、亜硝酸塩、及びリン酸塩を一体不可分として組み合わせることが重要であることが明らかとなった。また、含窒素化合物、亜硝酸塩、及びリン酸塩を含むガス発生剤は、ガス発生後に色調変化をほとんど生じず、発泡体の色調に対する悪影響も回避し得ることが確認された。
【0061】
【表1】

【0062】
【表2】




【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡体の製造に使用されるガス発生剤であって、(A)アンモニアガスを発生する含窒素化合物、(B)亜硝酸塩、及び(C)リン酸塩を含むことを特徴とする、ガス発生剤。
【請求項2】
前記含窒素化合物(A)が、尿素結合を有する化合物、アゾジカルボンアミド、及びN,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミンよりなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1記載のガス発生剤。
【請求項3】
前記亜硝酸塩(B)が、亜硝酸アルカリ金属塩である、請求項1又は2に記載のガス発生剤。
【請求項4】
前記リン酸塩(C)が、リン酸のアンモニウム塩及びリン酸水素アルカリ土類金属塩の少なくとも1種である、請求項1〜3の何れかに記載のガス発生剤。
【請求項5】
前記含窒素化合物(A)が尿素であり、前記亜硝酸塩(B)が亜硝酸ナトリウムであり、前記リン酸塩(C)がリン酸二水素アンモニウム、リン酸三アンモニウム、及びリン酸水素カルシウムよりなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1〜4の何れかに記載のガス発生剤。
【請求項6】
請求項1〜5の何れかに記載のガス発生剤、及び高分子材料を含むことを特徴とする、発泡用ポリマー組成物。
【請求項7】
前記高分子材料が、熱可塑性樹脂又はエラストマーである、請求項6に記載の発泡用ポリマー組成物。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の発泡用ポリマー組成物を加熱処理する工程を含む、発泡体の製造方法。

【公開番号】特開2012−251024(P2012−251024A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−122805(P2011−122805)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000237972)富田製薬株式会社 (30)
【Fターム(参考)】