発酵乳の製造方法
【課題】低脂肪タイプの発酵乳の製造において、カード残りを低減しながら、過度な粘度低下を抑制し、しかも従来の方法に比して、製造工程の負荷を軽減することを可能とする技術を提供する。
【解決手段】脂肪含量が1.5質量%以下の、発酵乳原料を含む調乳液を発酵して得られる発酵物中のカードの破砕工程を、メッシュフィルターを通過させる第1の破砕工程、及び前記第1の破砕工程と異なる破砕条件で行われる第2の破砕工程、の少なくとも2段階に分けて行う。
【解決手段】脂肪含量が1.5質量%以下の、発酵乳原料を含む調乳液を発酵して得られる発酵物中のカードの破砕工程を、メッシュフィルターを通過させる第1の破砕工程、及び前記第1の破砕工程と異なる破砕条件で行われる第2の破砕工程、の少なくとも2段階に分けて行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低脂肪タイプの発酵乳の製造方法、及び低脂肪タイプの発酵乳に関する。また、本発明は、発酵乳の製造の際に用いる破砕装置にも関する。
【背景技術】
【0002】
発酵乳は、様々な生理的作用が知られている乳酸菌等のプロバイオティクスを含む食品として、注目されている。
近年の健康志向の高まりにより、脂肪含量が1.5質量%以下の低脂肪或いは無脂肪タイプ(本明細書において、まとめて低脂肪タイプということがある。)の発酵乳が開発されている。
他方で、消費者の嗜好の多様化により、低脂肪タイプの発酵乳にも様々なフレーバーソースやフルーツを添加した製品が登場している。このような製品については、発酵後にフレーバーソースやフルーツ等を添加・混合することで製造される。
【0003】
ところで、発酵乳は、その製法により、静置型発酵乳と撹拌型発酵乳とに分類される。静置型発酵乳は、発酵乳原料を含む調乳液を小売容器に充填して発酵する方法により製造されることから、後発酵型発酵乳とも呼ばれ、プレーンヨーグルト、ハードヨーグルトがこれに分類される。一方、撹拌型発酵乳は、発酵乳原料を含む調乳液をタンク中で予め発酵し、発酵後に形成されるカードを破砕した後、小売容器に充填する方法により製造されることから、前発酵型発酵乳とも呼ばれ、ソフトヨーグルト、ドリンクヨーグルト、フローズンヨーグルトがこれに分類される。
上記のような発酵後にフレーバーソースやフルーツ等を添加・混合する発酵乳は、撹拌型発酵乳に分類されるものがほとんどである。
【0004】
撹拌型発酵乳は、通常、発酵乳原料を用いて調製した調乳液を発酵する発酵工程、及び発酵工程で得られた発酵物に含まれるカードを破砕する破砕工程を経て製造される。
撹拌型発酵乳のうち、ソフトヨーグルトと呼ばれる発酵乳(ドリンクやフローズンヨーグルト以外の発酵乳)には、カードの十分な破砕による滑らかさに加え、食感、濃厚感を与える適度な粘度が要求される。すなわち、カードの不十分な破砕によるカード残りの低減と、過度な粘度低下の抑制とを両立することが課題となる。
しかしながら、カード残りを低減しようとして、十分なせん断力を与えると粘度低下が進み、反対に粘度低下を抑制しようとして、せん断力を抑制するとカード残りが生ずるという問題がある。
従って、従来の一般的な撹拌型発酵乳の製造においては、カード残りの低減と、過度な粘度低下の抑制とのバランスを考慮してカード破砕条件を設定することにより、製品設計をしていたという実情がある。
【0005】
このような背景において、カード残りの低減と、過度な粘度低下の抑制との両立を目的とした、以下の技術が開発されている。
特許文献1には、高純度ホエータンパク質を一定以上含む発酵乳原料を発酵させた後、得られた発酵乳のカードを一定の範囲の均質圧力で破砕することが記載されている。
特許文献2には、ヨーグルトミックスを発酵させて得た発酵乳カードの破砕を、325〜1300メッシュ(JISのフルイ規格)の大きさの複数の開口部を介して当該発酵乳カードを押し出すことにより行うことが記載されている。
特許文献3には、特許文献2に記載の方法において、タンパク質濃度が5〜10%のヨーグルトミックスを使用することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−104号公報
【特許文献2】国際公開第2006/057266号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2006/057265号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載される方法は、発酵乳原料に、高純度ホエータンパク質を一定割合以上含むことを条件とするものであり、処方の自由度が制限されることがある。
特許文献2や特許文献3に記載される方法は、325〜1300メッシュという微細な開口部を介して発酵乳カードを押し出すものであるため、当該押し出しに大きな圧力が必要であり、製造工程の負荷が大きくなるという問題があった。
【0008】
また、発酵乳の中でも、脂肪含量が1.5質量%以下のいわゆる低脂肪タイプの発酵乳は、カード残りの問題が起こりやすい(後述の試験例1を参照)。
このような脂肪含量が低い調乳液を用いて発酵乳を製造する際に、特許文献2や特許文献3に記載された方法で、カードを破砕すると、カード残りの問題は解消できたとしても、過度な粘度低下が起こってしまうという問題がある。
すなわち、脂肪含量が1.5質量%以下のいわゆる低脂肪タイプの発酵乳については、これまで、カード残りを低減しながら、過度な粘度低下を抑制する有効な方法がなかったのが実情である。
【0009】
そこで、本発明は、脂肪含量が1.5質量%以下の発酵乳の製造において、カード残りを低減しながら、過度な粘度低下を抑制することを課題とする。また、従来の方法に比して、製造工程の負荷を軽減することを可能とする技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、低脂肪タイプの発酵乳等を製造する工程において、得られた発酵物中のカードを破砕する際に、従来の破砕を行う前に、メッシュフィルターを用いた破砕を行うことにより、特許文献2や特許文献3に記載されるような従来の方法においてカードを十分に破砕するのに必要な圧力より小さな圧力で、発酵物中のカードを十分に破砕できることを見出した。また、その結果、製造される発酵乳の過度な粘度の低下を抑制することが可能となることも見出した。
本発明者は、上記の方法は、特に、脂肪含量が1.5質量%以下のいわゆる低脂肪タイプ或いは無脂肪タイプの発酵乳の製造において、顕著な効果を発揮することを見出した。
本発明者は、これらの知見に基づいて、以下の本発明を完成させた。
【0011】
上記課題を解決する本発明は、脂肪含量が1.5質量%以下である、発酵乳原料を含む調乳液を発酵して得られる発酵物中のカードの破砕工程を含む、発酵乳の製造方法であって、前記破砕工程は、第1の破砕工程と、第1の破砕工程の後に行われる第2の破砕工程と、を有し、前記第1の破砕工程は、前記発酵物を、メッシュフィルターを通過させることによって行われ、前記第2の破砕工程は、前記第1の破砕工程と異なる破砕条件で行われることを特徴とする。
このような製造方法によれば、低脂肪或いは無脂肪タイプの発酵乳の製造に際し、従来の方法に比して小さな圧力でカード残りを低減しながら、粘度の低下を抑制でき、製造工程の負荷を軽減することができる。脂肪含量が低い調乳液を用いて得られた発酵物を、従来の特許文献2や3に記載されるような方法で破砕すると、過度な粘度低下が起こることから、本発明の製造方法が極めて有用である。
【0012】
本発明の好ましい形態では、第1の破砕工程における破砕圧力は、第2の破砕工程における破砕圧力より小さい。
第1の破砕工程における破砕圧力を、第2の破砕工程における破砕圧力より小さく設定することで、カード残りを低減しながら、粘度の低下を十分に抑制することができる。
【0013】
本発明の好ましい形態では、前記第1の破砕工程における破砕圧力は、0.01〜0.14MPaである。
第1の破砕工程の破砕圧力を0.01〜0.14MPaとすることにより、第2の破砕工程での破砕を効率よく行うことができるので、カード残りを低減させながら、過度な粘度低下を抑制することができる。
【0014】
本発明の好ましい形態では、前記発酵物がメッシュフィルターを通過する際の、メッシュフィルターの有効面積1mm2あたりの発酵物の流量は、0.01〜4L/時間である。
発酵物の流量を上記の範囲とすることにより、粘度低下を抑制しながら、カード残りを低減する効果を十分に得ることができる。
【0015】
本発明の好ましい形態では、前記メッシュフィルターのメッシュサイズは、10〜40メッシュ(JISふるい規格)である。
このようなメッシュサイズの範囲とすることにより、第1の破砕工程で適度な粗さでの破砕を行うことができる。その結果、続く第2の破砕工程を効率よく行うことができ、従来に比して小さい破砕圧力で、カード残りを極めて小さくすることができる。また、粘度低下を十分に抑制することができる。
【0016】
本発明の好ましい形態では、前記調乳液の蛋白質含量が3質量%以上である。本発明の製造方法は、蛋白質含量が高い調乳液を用いる場合に顕著な効果を発揮する。このような調乳液を用いる場合に、硬いカードが形成されるためである。
【0017】
また、本発明は、上記の製造方法により得られた、発酵乳に関する。
このような発酵乳は、カード残りが低減され、かつ適度な粘度を維持している。
【0018】
また、本発明は、発酵乳原料を含む調乳液を発酵して得られる発酵物中のカードを破砕するための破砕部を備えた破砕装置であって、前記破砕部は、メッシュフィルターを備える第1の破砕部と、第1の破砕部の後段に配置される第2の破砕部と、を有し、前記第1の破砕部によるカードの破砕粗さと、前記第2の破砕部によるカードの破砕粗さとが異なることを特徴とする。
このような破砕装置を用いて、カードを破砕することにより、粘度の低下を抑制しながらカード残りを低減することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の発酵乳の製造方法によれば、従来の1段階の破砕工程でカードを破砕する発酵乳の製造方法に比して、カード残りの低減と、過度な粘度低下の抑制を容易に行うことができ、滑らかな食感で適度な粘度を有する低脂肪タイプの発酵乳を製造することができる。さらに、この効果を、従来の方法に比して小さな圧力で得ることができる。そのため、本発明の発酵乳の製造方法を用いることにより、従来の方法に比して、発酵乳の製造方法における製造工程の負荷を軽減することができる。
また、本発明の製造方法により製造された低脂肪タイプの発酵乳は、カード残りが低減され、過度な粘度低下が抑制されているため、滑らかながら、良好な食感や濃厚感を有する優れたものとなる。
また、本発明の破砕装置を用いることにより、上記のような優れた発酵乳を容易に生産することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の発酵乳の製造方法を示す概略図である。
【図2】本発明の破砕装置を示す概略図である。
【図3】本発明の試験例に用いた破砕装置を示す概略図である。
【図4】試験例1で測定した破砕圧力、カード残り、粘度の関係を示す図である。
【図5】試験例1で測定した破砕圧力、カード残り、粘度の関係を示す図である。
【図6】試験例1で測定した破砕圧力、カード残り、粘度の関係を示す図である。
【図7】試験例2で測定した破砕圧力、カード残り、粘度の関係を示す図である。
【図8】試験例2で測定した破砕圧力、カード残り、粘度の関係を示す図である。
【図9】試験例2で測定した破砕圧力、カード残り、粘度の関係を示す図である。
【図10】試験例2で測定した破砕圧力、カード残り、粘度の関係を示す図である。
【図11】試験例2で測定した破砕圧力、カード残り、粘度の関係を示す図である。
【図12】試験例3で測定した破砕圧力、カード残り、粘度の関係を示す図である。
【図13】試験例3で測定した破砕圧力、カード残り、粘度の関係を示す図である。
【図14】試験例3で測定した破砕圧力、カード残り、粘度の関係を示す図である。
【図15】試験例3で測定した破砕圧力、カード残り、粘度の関係を示す図である。
【図16】試験例3で測定した破砕圧力、カード残り、粘度の関係を示す図である。
【図17】試験例4で測定した破砕圧力、カード残り、粘度の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、本発明の発酵乳の製造方法を示す概略図である。以下、本発明に用いられる原料や本発明における工程について詳しく説明する。
本明細書において、乳、乳製品に関する分類は、特に断らない限り、『乳及び乳製品の成分規格等に関する省令』(以下、「乳等省令」という。)に基づくものである。
本明細書において、「%」パーセントについての表示は、特に断らない限り、質量による表示である。
【0022】
<調乳液>
本発明において、「調乳液」とは、乳、乳製品などの発酵乳原料を含む種々の原料を調製して得られる液である。
本発明において用いられる調乳液に含まれる発酵乳原料は、従来発酵乳の製造において用いられているものを特に制限なく用いることができる。
調乳液における脂肪含量は、1.5質量%以下である。これは、脂肪含量が低い調乳液を発酵させて得られる発酵物は、脂肪含量が高いものに比して、カード残りを生じやすい硬いカードを含むためである。一方、このような脂肪含量の調乳液を用いた場合に、従来の特許文献2や3に記載される方法で破砕を行うと、過度な粘度低下を招くという問題があった。以下に説明する破砕工程は、脂肪含量が1.5質量%以下の発酵乳の製造に適用した場合に、過度な粘度低下を招くことなく、カード残りを十分に低減することを可能にする。
また、調乳液における蛋白質含量は、好ましくは3質量%以上である。このような蛋白質含量の調乳液を発酵させて得られる発酵物は、蛋白質含量が低いものに比して、硬いカードを含むためである。本発明の製造方法は、蛋白質含量が3質量%以上の発酵乳の製造に極めて好適である。
【0023】
また、本発明の調乳液は、蛋白質含量が3〜5質量%で、かつ脂肪含量が1.5質量%以下であることが特に好ましい。このような調乳液を発酵させて得られる発酵物に対し、以下に説明する破砕工程を行うことで、カード残りが殆どなく、かつ適度な粘度を有する、低脂肪タイプの発酵乳を容易に製造することができる。また、このような調乳液から得られる発酵物に対し以下に説明する破砕工程を行った場合には、従来の例えば1段階で破砕を行う方法に比して小さい破砕圧力で、カード残りを殆ど生じさせないことが可能となる。その結果、発酵物に過剰なせん断力が加わらないので、適度な粘度を有する発酵乳となる。すなわち、本発明は、特に蛋白質含量が3〜5質量%で、かつ脂肪含量が1.5質量%以下の発酵乳の製造方法として好適である。
なお、本発明の発酵乳の製造方法は、脂肪含量が1.5質量%以下でない発酵乳の製造方法にも適用することは可能である。特に、蛋白質含量が高く、比較的硬いカードを形成する発酵乳に好適である。
【0024】
<発酵工程>
本発明では、まず上記調乳液を発酵する。調乳液に添加する乳酸菌等の菌、発酵温度や時間などは、通常用いられているものを用いることができる。
本発明で用いられる乳酸菌としては、通常の発酵乳の製造に用いられるものを特段の制限なく用いることができる。例えば、ラクトコッカス(Lactococcus)属菌として、ラクトコッカス・ラクティス(L. lactis)、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティス(L. lactis subsp. lactis)、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティス・バイオバラエティ・ジアセチラクティス(L. lactis subsp. lactis biovar. diacetylactis)、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・クレモリス(L. lactis subsp. cremoris)などの菌株が、ラクトバチルス(Lactobacillus)属菌として、ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ラクティス(L. delbrueckii subsp. lactis)、ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリカス(L. delbrueckii subsp. bulgaricus)(ラクトバチルス・ブルガリカス)、ラクトバチルス・ロイテリ(L. reuteri)、ラクトバチルス・ヘルベティカス(L. helveticus)などの菌株が、ストレプトコッカス(Streptococcus)属菌として、ストレプトコッカス・サリバリウス・サブスピーシーズ・サーモフィルス(S. salivarius subsp. thermophilus)(ストレプトコッカス・サーモフィラス)などの菌株が用いられる。
【0025】
乳酸菌の添加量は、通常の範囲で適宜調節することができる。例えば、調乳液における菌濃度が、少なくとも1×105CFU/g程度、好ましくは少なくとも1×107CFU/g程度となるような量を添加することが好ましい。
【0026】
また、乳酸菌に加えて、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属菌(ビフィズス菌)を用いることもできる。例えば、ビフィドバクテリウム・ロンガム(B. longum)、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(B. breve)、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(B. bifidum)、ビフィドバクテリウム・インファンティス(B. infantis)などの菌株を用いることができる。
ビフィズス菌を用いた場合には、得られる発酵物のカードが硬くなるので、本発明の製造方法の適用の効果が顕著に得られる。
【0027】
調乳液への菌の添加方法は特に制限されず、菌末の状態で添加することも、カルチャー(培養物)の状態で添加することもできる。
【0028】
培養温度(発酵温度)は、乳酸菌等の菌が効率よく増殖する範囲であればよく、通常30〜50℃程度、好ましくは35〜43℃程度である。発酵は、乳酸菌が十分に増殖するまで行えばよく、通常、調乳液のpHが5.0以下になるまで、好ましくは、調乳液のpHが4.8以下になるまで、さらに好ましくは、調乳液のpHが4.2〜4.8程度になるまで行えばよい。発酵時間としては、35〜43℃程度の培養温度の場合、3〜10時間程度、好ましくは3〜6時間程度が目安となる。
【0029】
<破砕工程>
発酵工程の終了後、上記の発酵により得られた発酵物中に含まれるカードを破砕する破砕工程を行う。本発明においては、この破砕工程が、第1の破砕工程と第2の破砕工程を含む点に特徴がある。第2の破砕工程は、第1の破砕工程の後に行われる。
以下、各破砕工程について説明する。
【0030】
〔第1の破砕工程〕
第1の破砕工程は、複数の開き目を有するメッシュフィルターを通過させることにより行う。メッシュフィルターを用いると、比較的小さな圧力で、発酵物中のカードを粗く均一に破砕できるためである。
メッシュフィルターを用いた破砕は、例えば、調乳液を発酵して得られる発酵物を供給する管路内にメッシュフィルターを設置し、発酵物を管路内のメッシュフィルター設置部分に向けて連続的に送り出すことにより行うことができる。メッシュフィルターの形状としては、平板状のものや筒状のものなど、特に制限なく用いることができる。このようなメッシュフィルターとしては、例えば、クロスフィルター(rubberfub製)、ノッチワイヤー(フジトク社製)等が挙げられる。
【0031】
発酵物がメッシュフィルターを通過する際の流量としては、メッシュフィルターの有効面積1mm2あたり、好ましくは0.01〜4L/時間、さらに好ましくは0.1〜2L/時間とすることができる。
本発明において、メッシュフィルターの有効面積とは、発酵物がメッシュフィルターを通過する際の、発酵物が通過可能な空隙部分(開き目の部分)の面積をいう。
このような流量とすることにより、効率よく破砕を行うことができる。また、上記範囲のメッシュサイズのフィルターに対し、上記範囲の流量でフィルターを通過させることにより、第1の破砕工程において過度な破砕圧力をかけることなく、適度な破砕を行うことができる。これによって、続く第2の破砕工程の負荷を軽減することができ、全体として製造工程の負荷を軽減することができる。
【0032】
メッシュフィルターのメッシュサイズは、JISふるい規格で、好ましくは10〜40メッシュ、さらに好ましくは20〜40メッシュである。これらのメッシュサイズの範囲は、それぞれ、1.9〜0.39mm、及び0.87〜0.39mmの目開きに相当する。すなわち、第1の破砕工程では、発酵物中のカードを、好ましくは2.0〜0.3mm程度、さらに好ましくは1.0〜0.3mm程度、より好ましくは1.0〜0.5mm程度の目開きのフィルターを用いて破砕することが好ましいと言える。
このような破砕圧力は、特に蛋白質含量が3〜5質量%で、かつ脂肪含量が1.5質量%以下の調乳液を発酵させて得られた発酵物に対して好適である。
【0033】
また、第1の破砕工程の破砕圧力は、好ましくは0.01〜0.14MPa、さらに好ましくは0.01〜0.05MPa、より好ましくは0.01〜0.04MPaである。
第1の破砕工程の破砕圧力は、第1の破砕工程に供する前の発酵物の供給圧力と第2の破砕工程に供する前の発酵物の供給圧力との差(フィルター部圧)で近似することができ、本発明においてはこの近似値で定義することができる。圧力の測定方法は、後述する試験例に示すように、汎用の圧力計を用いた方法を採用することができる(以下の圧力の測定方法についても同様である)。
【0034】
〔第2の破砕工程〕
第2の破砕工程は、第1の破砕工程の後に行われ、第1の破砕工程とは異なる破砕条件で行われることを特徴とする。
ここで、破砕条件とは、上述した破砕の方式、破砕圧力、破砕時間等、破砕の程度に影響を与え得る条件を含む。
第2の破砕工程に用いられる破砕方式は、通常の調乳液の発酵物中に含まれるカードの破砕に用いられる破砕方式を用いることができる。例えば、上述したフィルター方式、プレッシャーバルブ方式、ミキサー方式等が挙げられる。特に、プレッシャーバルブ方式またはフィルター方式が好ましく挙げられる。プレッシャーバルブ方式またはフィルター方式を用いることで、破砕の均一性を高めることができ、カード残りを低減することが容易になる。
プレッシャーバルブ方式による破砕は、ダイヤフラムバルブ、或いはバックプレッシャーバルブと呼ばれる装置により行うことができる。ダイヤフラムバルブとしては、ゲミュー(GEMU)社製のもの、バックプレッシャーバルブとしては、コフロック株式会社製のもの等が挙げられる。
なお、破砕装置は、破砕の目的物の流路を狭めることで、破砕の目的物に圧力をかけることができる装置であれば特に制限されず、例えば、従来、発酵乳のカードを破砕するのに用いられているものを含め、特に制限なく用いることができる。また、従来発酵乳以外の分野で用いられているサニタリーバルブなども使用することができる。これらの破砕装置の条件設定については、従来1段階の破砕工程で用いていた条件をそのまま用いることができるが、破砕装置に合わせて適宜適当な圧力がかかるように調節することができる。
【0035】
また、第2の破砕工程における破砕粗さは、第1の破砕工程における破砕粗さより小さいことが好ましい。第2の破砕工程における破砕粗さを第1の破砕工程における破砕粗さより小さくすることで、破砕工程全体にかかる負荷を抑制することができる。
破砕粗さの相対的な大小は、例えば未破砕の発酵物(破砕対象物)をそれぞれの破砕工程における方法及び条件で破砕した場合の平均粒子径或いは一定以上の大きさの粒子の質量(カード残り、試験例1を参照)を比較することにより知ることができる。
【0036】
また、第2の破砕工程における破砕圧力は、第1の破砕工程における破砕圧力より大きいことが好ましい。第2の破砕工程における破砕圧力を、第1の破砕工程における破砕圧力より大きくすることで、破砕工程全体の負荷を低減することができる。
第2の破砕工程の破砕圧力は、第2の破砕工程に供する前の発酵物の供給圧力で近似することができ、本発明においてはこの近似値で定義することができる。
【0037】
上記のように、第2の破砕工程の前に、メッシュフィルターを用いた第1の破砕工程を行うことで、発酵物に適度なせん断力を与えることができ、過度な粘度低下を抑制することができる。さらに、全体として、従来の1段階での破砕方法に比して小さい破砕圧力で、カード残りの低減の効果を十分に得ることができる。
また、このような破砕圧力は、特に蛋白質含量が3〜5質量%で、かつ脂肪含量が1.5質量%以下の調乳液を発酵させて得られた発酵物に対して好適である。
【0038】
なお、これまで、第1の破砕工程と第2の破砕工程について説明したが、破砕工程は、必ずしも2段階である必要はなく、第1の破砕工程の前、第1の破砕工程と第2の破砕工程との間、若しくは第2の破砕工程の後に、さらに他の破砕工程を有していてもよい。
【0039】
第1の破砕工程と、第2の破砕工程の方式の組み合わせとしては、図2に示す本発明の破砕装置等を用いることにより、第1の破砕工程をフィルター方式で行い、第2の破砕工程をプレッシャーバルブ方式で行うことが好ましい。
【0040】
ここで、図2を参照しながら、上述した破砕工程を本発明の破砕装置を用いて行う実施形態について説明する。
破砕装置1は、調乳液を発酵することにより得られた発酵物を投入するホッパー2、投入された発酵物を連続的に送り出すポンプ3、発酵物中のカードの破砕を行う破砕部4が、この順で管路6の後段に向けて配置されている。破砕部4は、メッシュフィルター41からなる第1の破砕部と、ダイヤフラムバルブ42からなる第2の破砕部とを有している。
メッシュフィルター41としては、上述したメッシュサイズ、形状のものを好ましく用いることができる。
【0041】
まず、ホッパー2に投入された発酵物は、ポンプ3により、所定の圧力により破砕部4に向かって連続的に押し出される。メッシュフィルター41に供給された発酵物は、メッシュフィルター41を、メッシュフィルターの有効面積1mm2あたり、0.01〜4L/時間、程度の流量で通過する。その結果、カードが所定の粗さまで破砕され、メッシュフィルターを通過した発酵物は、さらにメッシュフィルターでの破砕圧力より大きい圧力により、ダイヤフラムバルブ42に供給される。ダイヤフラムバルブ42に供給された発酵物は、ダイヤフラムバルブ42内の予め設定された狭い空間を通過しながら、更に細かく破砕される。
【0042】
破砕された発酵物は、10℃以下に冷却された後、図示しない充填機により容器に充填され密封される。
【0043】
本発明の方法により製造された発酵乳は、カード残りが低減され、適度な粘度を保持し、食感に極めて優れたものである。
本発明の発酵乳のカード残りは、好ましくは2質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下である。本発明において、カード残りは、後述する試験例1において用いた方法により測定される値として定義することができる。
また、本発明の発酵乳の粘度は、好ましくは2800mPa・s以上、さらに好ましくは3000mPa・s以上、より好ましくは4000mPa・s以上である。本発明において、粘度は後述する試験例1において用いた方法により測定される値として定義することができる。
【0044】
<試験例1>
本発明の発酵乳の製造方法における2段階による破砕の効果を検討するため、各種組成の調乳液から得られた発酵物に対する破砕試験を行った。
図3に示す構成の破砕装置1を用い、表1に示す試料1、試料2及び試料3の発酵物の破砕を行った。すなわち、各試料をホッパー2に投入し、ポンプ3で連続的に破砕部4に供給した。破砕部を構成するメッシュフィルター41(第1の破砕部)には、20メッシュ(目開き0.87mm)のクロスフィルター(rubberfub製)を、ダイヤフラムバルブ42(第2の破砕部)には、ゲミュー(GEMU)社製のものを用いた。ダイヤフラムバルブ42の設定は破砕圧力が0.06〜0.42MPaとなるように適宜調整した。また、図3に示す製造装置において、メッシュフィルター41を外した装置を用いて、同様に試料の破砕を行った。
破砕試験では、ポンプ3による発酵物の供給圧力を変化させることにより、第1の破砕部での破砕圧力を変化させ、各破砕圧力で破砕した際のカード残りと、粘度を測定し、記録した。
【0045】
破砕圧力の測定は、図3に示すように、メッシュフィルター41の上流側及び下流側の管路6の2箇所に圧力計51、圧力計52を設置し、それぞれ、圧力a及び圧力bを測定することにより行った。
カード残りの測定は、破砕した発酵物100gを60メッシュサイズのメッシュフィルター上でろ過し、フィルター上に残った物をカードとし、発酵物中に占めるカードの割合(質量%)を算出することで行った。
粘度の測定は、B型粘度計を用い、以下の条件で測定した。測定は、製造直後(D+0)、製造1日後(D+1)に行った。
No.4ローター、60rpm、10秒間、サンプル温度10℃
【0046】
【表1】
【0047】
試料1についての試験結果を図4に示す。
図4に示すように、フィルターを設置した場合(2段階の粉砕の場合)には、破砕圧力が0.14MPaで、カード残りが0.9質量%程度(1質量%以下)まで低減した。一方、フィルターを設置しない場合(1段階の粉砕の場合)にカード残りを1質量%以下とするには、0.25MPa程度の破砕圧力が必要であった。
また、フィルターを設置した場合には、破砕圧力が0.25MPaで、カード残りが0.2質量%程度(0.5質量%以下)まで低減した。一方、フィルターを設置しない場合にカード残りを0.5質量%以下とするには、0.33MPa程度の破砕圧力が必要であった。
また、カード残りが1質量%以下、または0.5質量%以下となったときの各試料の粘度を比較すると、フィルターを設置した場合の方が、相対的に粘度が高かった。
図4に示される圧力、カード残り、及び粘度の関係から分かるように、フィルターを設置した場合には、フィルターを設置しない場合に比して小さい破砕圧力でカード残りを有効に低減させることができ、その結果、粘度の低下を抑制することができることが分かる。
【0048】
試料2についての試験結果を図5に示す。
図5に示すように、フィルターを設置した場合(2段階の粉砕の場合)には、破砕圧力が0.09MPaで、カード残りが0.4質量%程度(0.5質量%以下)まで低減した。一方、フィルターを設置しない場合(1段階の粉砕の場合)にカード残りを0.5質量%以下とするには、0.33MPa程度の破砕圧力が必要であった。
また、カード残りが0.5質量%以下となったときの各試料の粘度を比較すると、フィルターを設置した場合の方が、相対的に粘度が高かった。
図5に示される圧力、カード残り、及び粘度の関係から分かるように、フィルターを設置した場合には、フィルターを設置しない場合に比して小さい破砕圧力でカード残りを有効に低減させることができ、その結果、粘度の低下を抑制することができることが分かる。
【0049】
試料3についての試験結果を図6に示す。
図6に示すように、フィルターを設置した場合(2段階の粉砕の場合)には、破砕圧力が0.09MPaで、カード残りが0.2質量%程度(0.5質量%以下)まで低減した。一方、フィルターを設置しない場合(1段階の粉砕の場合)にカード残りを0.5質量%以下とするには、0.14MPa程度の破砕圧力が必要であった。
また、カード残りが0.5質量%以下となったときの各試料の粘度を比較すると、フィルターを設置した場合の方が、相対的に粘度が高かった。
図6に示される圧力、カード残り、及び粘度の関係から分かるように、フィルターを設置した場合には、フィルターを設置しない場合に比して小さい破砕圧力でカード残りを有効に低減させることができ、その結果、粘度の低下を抑制することができることが分かる。
【0050】
上記の結果より、本発明の製造方法における破砕工程は、様々な組成の調乳液から得られるカードを含む発酵物に対して好適であることが分かった。中でも、試料1のような低脂肪、及び試料2のような高蛋白質の、比較的硬いカードを形成する調乳液を用いて撹拌型発酵乳を製造する場合に特に好適であることが分かった。
また、上記試験における発酵物の流量を算出すると、メッシュフィルターの有効面積1mm2あたり、0.13〜1.6L/時間の範囲であった。
【0051】
<試験例2>
次に、調乳液の脂肪含量を変化させ、本発明の製造方法における破砕工程が、特に好適な調乳液の組成を検討した。
表2に示す脂肪含量が異なる試料を用い、試験例1と同様に破砕試験を行った。
【0052】
【表2】
【0053】
各試料に対する試験結果を表3、及び図7〜11に示す。
また、カード残りが1質量%となった時点でのフィルター有の場合の粘度、当該時点でのフィルター有の場合とフィルター無の場合の粘度差、及び当該時点でのフィルター有無の場合の破砕圧力差(圧力低減効果)を算出し、これらもまとめて表3に記載した。
【0054】
【表3】
【0055】
表3から分かるように、何れの場合もカード残りが1質量%となった時点での粘度は、フィルターを設置した場合の方が大きかった。これより、フィルターを用いて2段階の破砕工程を行うことにより、カード残りを有効に低減させながら、かつ粘度の低下を有効に抑制することができることが、確認された。
また、同表から分かるように、カード残りが1質量%となった時点でのフィルター有無の場合の圧力差は、脂肪含量が低いほど大きい傾向となった。これについて、図7〜10を見ると分かるように、脂肪含量が0.1〜1.5質量%の試料4〜7については、カード残りを十分に低減させる(例えば1.0質量%以下)のに必要な破砕圧力が、フィルターの有無によって異なる結果となった。
一方、図11を見ると分かるように、脂肪含量が2.0質量%の試料8については、フィルターの有無によって、カード残りを有効に低減させるのに必要な破砕圧力に大きな差はなかった。
これより、本発明の製造方法における破砕工程は、脂肪含量が1.5質量%以下の調乳液を用いる場合に特に有効であることが分かった。
【0056】
<試験例3>
次に、フィルターのフィルターサイズを変化させ、本発明の製造方法における第1の破砕工程の破砕条件の好適な範囲についての検討を行った。試験には、上述した試料1を用いた。試験方法は、試験例2と同様である。
【0057】
試験結果を表4、及び図12〜16に示す。
また、カード残りが1質量%となった時点でのフィルター有の場合の粘度、当該時点でのフィルター有の場合とフィルター無の場合の粘度差、及び当該時点でのフィルター有無の場合の破砕圧力差(圧力低減効果)を算出し、これらもまとめて表4に記載した。
【0058】
【表4】
【0059】
表4、図12〜16から分かるように、20メッシュのフィルターを用いた場合と、40メッシュのフィルターを用いた場合には、カード残りが1質量%となった時点での粘度は、フィルターを設置した場合の方が大きかった。特に、20メッシュのフィルターを用いた場合には、その差は顕著であった。
一方、60メッシュ以上のフィルターを用いた場合には、カード残りが1質量%となった時点での粘度は、フィルターを設置しない場合の方がわずかに大きかった。
本試験例では、60メッシュ以上のフィルターを用いた場合には、フィルターを通過する際にかかる破砕圧力(圧力a−圧力b)が、フィルター通過後の圧力bより大きかった。すなわち、第1の破砕工程での破砕圧力が、第2の破砕工程での破砕圧力より大きい場合には、第1の破砕工程で大きなせん断力がかかることによって、粘度の低下を招きやすいことが分かった。
【0060】
また、試料1に代表される、脂肪含量が0.5質量%以下、蛋白含量が3〜5質量%程度の調乳液から得られた発酵物の破砕においては、10〜40メッシュのメッシュサイズのフィルターを用いることが好ましく、20〜40メッシュのメッシュサイズのフィルターを用いることが更に好ましく、20メッシュ程度のメッシュサイズのフィルターを用いることがより好ましいことが分かった。
【0061】
<試験例4>
次に、試料7(脂肪含量1.5質量%)を用いて、フィルターサイズが20メッシュのフィルターを用い、フィルターを設置しない場合との比較を行った。
結果を表5及び図17に示す。
【0062】
【表5】
【0063】
表5及び図17から分かるように、カード残りが1質量%となった時点での粘度は、フィルターを設置しない場合に比べ、フィルターを設置した場合の方が大きかった。
これより、脂肪含量が1〜1.5質量%程度、蛋白含量が3〜5質量%程度の調乳液を用いる場合には、フィルターサイズを20メッシュ程度、目開きで0.5〜1.0mm程度とすることが好ましいことが分かった。
【0064】
試験例3の結果もあわせると、脂肪含量が1.5質量%以下、蛋白含量が3〜5質量%程度の調乳液から得られた発酵物の破砕においては、20〜40メッシュのメッシュサイズのフィルターを用いることが好ましいことが分かった。
【実施例】
【0065】
表6に示す配合の調乳液(脂肪含量0.1質量%、蛋白質含量4.2質量%)を用い、以下の方法にて発酵乳を製造した。
【0066】
【表6】
【0067】
前記調乳液を、95℃で6分間殺菌した後、冷却し、乳酸菌スターター(菌名ストレプトコッカス・サーモフィルス、ラクトバチルス・ブルガリカス、クリスチャン・ハンセン社製)及びビフィズス菌(菌名ビフィドバクテリウム・ロンガム、森永乳業社製)を添加し、37℃で7時間(pHが4.6になるまで)発酵した。得られた発酵物を、図2に示す構成の破砕装置1のホッパー2に投入し、管路6内を通して、破砕部4へポンプを用いて連続的に供給した。メッシュフィルター41(第1の破砕部)には、20メッシュ(0.87mm)のクロスフィルター(rubberfub製)を、ダイヤフラムバルブ42には、ゲミュー(GEMU)社製のダイヤフラムバルブを用いた。ダイヤフラムバルブ42は、破砕圧力が0.13MPaとなるように調整した。
流量は、メッシュフィルターの有効面積1mm2あたり、0.6L/時間に設定した。
ダイヤフラムバルブを通過した発酵物を10℃まで冷却した後、80mlのプラスチック製容器に充填し、シールで密閉し、製品とした。
1日後、製品のシールを開封し、発酵乳のカード残り及び粘度を測定した。測定方法は、上述した試験例に記載した方法を用いた。
その結果、カード残りは、0.3質量%と極めて小さく、粘度は4800mPa・sと適度であった。
また、この発酵乳を食したところ、滑らかで、かつ粘度も適度で、良好な食感を有していた。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の製造方法、及び破砕装置は、発酵乳の工業生産に利用される。
【符号の説明】
【0069】
1 破砕装置
2 ホッパー
3 ポンプ
4 破砕部
41 フィルター(第1の破砕部)
42 ダイヤフラムバルブ(第2の破砕部)
51、52 圧力計
6 管路
【技術分野】
【0001】
本発明は、低脂肪タイプの発酵乳の製造方法、及び低脂肪タイプの発酵乳に関する。また、本発明は、発酵乳の製造の際に用いる破砕装置にも関する。
【背景技術】
【0002】
発酵乳は、様々な生理的作用が知られている乳酸菌等のプロバイオティクスを含む食品として、注目されている。
近年の健康志向の高まりにより、脂肪含量が1.5質量%以下の低脂肪或いは無脂肪タイプ(本明細書において、まとめて低脂肪タイプということがある。)の発酵乳が開発されている。
他方で、消費者の嗜好の多様化により、低脂肪タイプの発酵乳にも様々なフレーバーソースやフルーツを添加した製品が登場している。このような製品については、発酵後にフレーバーソースやフルーツ等を添加・混合することで製造される。
【0003】
ところで、発酵乳は、その製法により、静置型発酵乳と撹拌型発酵乳とに分類される。静置型発酵乳は、発酵乳原料を含む調乳液を小売容器に充填して発酵する方法により製造されることから、後発酵型発酵乳とも呼ばれ、プレーンヨーグルト、ハードヨーグルトがこれに分類される。一方、撹拌型発酵乳は、発酵乳原料を含む調乳液をタンク中で予め発酵し、発酵後に形成されるカードを破砕した後、小売容器に充填する方法により製造されることから、前発酵型発酵乳とも呼ばれ、ソフトヨーグルト、ドリンクヨーグルト、フローズンヨーグルトがこれに分類される。
上記のような発酵後にフレーバーソースやフルーツ等を添加・混合する発酵乳は、撹拌型発酵乳に分類されるものがほとんどである。
【0004】
撹拌型発酵乳は、通常、発酵乳原料を用いて調製した調乳液を発酵する発酵工程、及び発酵工程で得られた発酵物に含まれるカードを破砕する破砕工程を経て製造される。
撹拌型発酵乳のうち、ソフトヨーグルトと呼ばれる発酵乳(ドリンクやフローズンヨーグルト以外の発酵乳)には、カードの十分な破砕による滑らかさに加え、食感、濃厚感を与える適度な粘度が要求される。すなわち、カードの不十分な破砕によるカード残りの低減と、過度な粘度低下の抑制とを両立することが課題となる。
しかしながら、カード残りを低減しようとして、十分なせん断力を与えると粘度低下が進み、反対に粘度低下を抑制しようとして、せん断力を抑制するとカード残りが生ずるという問題がある。
従って、従来の一般的な撹拌型発酵乳の製造においては、カード残りの低減と、過度な粘度低下の抑制とのバランスを考慮してカード破砕条件を設定することにより、製品設計をしていたという実情がある。
【0005】
このような背景において、カード残りの低減と、過度な粘度低下の抑制との両立を目的とした、以下の技術が開発されている。
特許文献1には、高純度ホエータンパク質を一定以上含む発酵乳原料を発酵させた後、得られた発酵乳のカードを一定の範囲の均質圧力で破砕することが記載されている。
特許文献2には、ヨーグルトミックスを発酵させて得た発酵乳カードの破砕を、325〜1300メッシュ(JISのフルイ規格)の大きさの複数の開口部を介して当該発酵乳カードを押し出すことにより行うことが記載されている。
特許文献3には、特許文献2に記載の方法において、タンパク質濃度が5〜10%のヨーグルトミックスを使用することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−104号公報
【特許文献2】国際公開第2006/057266号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2006/057265号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載される方法は、発酵乳原料に、高純度ホエータンパク質を一定割合以上含むことを条件とするものであり、処方の自由度が制限されることがある。
特許文献2や特許文献3に記載される方法は、325〜1300メッシュという微細な開口部を介して発酵乳カードを押し出すものであるため、当該押し出しに大きな圧力が必要であり、製造工程の負荷が大きくなるという問題があった。
【0008】
また、発酵乳の中でも、脂肪含量が1.5質量%以下のいわゆる低脂肪タイプの発酵乳は、カード残りの問題が起こりやすい(後述の試験例1を参照)。
このような脂肪含量が低い調乳液を用いて発酵乳を製造する際に、特許文献2や特許文献3に記載された方法で、カードを破砕すると、カード残りの問題は解消できたとしても、過度な粘度低下が起こってしまうという問題がある。
すなわち、脂肪含量が1.5質量%以下のいわゆる低脂肪タイプの発酵乳については、これまで、カード残りを低減しながら、過度な粘度低下を抑制する有効な方法がなかったのが実情である。
【0009】
そこで、本発明は、脂肪含量が1.5質量%以下の発酵乳の製造において、カード残りを低減しながら、過度な粘度低下を抑制することを課題とする。また、従来の方法に比して、製造工程の負荷を軽減することを可能とする技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、低脂肪タイプの発酵乳等を製造する工程において、得られた発酵物中のカードを破砕する際に、従来の破砕を行う前に、メッシュフィルターを用いた破砕を行うことにより、特許文献2や特許文献3に記載されるような従来の方法においてカードを十分に破砕するのに必要な圧力より小さな圧力で、発酵物中のカードを十分に破砕できることを見出した。また、その結果、製造される発酵乳の過度な粘度の低下を抑制することが可能となることも見出した。
本発明者は、上記の方法は、特に、脂肪含量が1.5質量%以下のいわゆる低脂肪タイプ或いは無脂肪タイプの発酵乳の製造において、顕著な効果を発揮することを見出した。
本発明者は、これらの知見に基づいて、以下の本発明を完成させた。
【0011】
上記課題を解決する本発明は、脂肪含量が1.5質量%以下である、発酵乳原料を含む調乳液を発酵して得られる発酵物中のカードの破砕工程を含む、発酵乳の製造方法であって、前記破砕工程は、第1の破砕工程と、第1の破砕工程の後に行われる第2の破砕工程と、を有し、前記第1の破砕工程は、前記発酵物を、メッシュフィルターを通過させることによって行われ、前記第2の破砕工程は、前記第1の破砕工程と異なる破砕条件で行われることを特徴とする。
このような製造方法によれば、低脂肪或いは無脂肪タイプの発酵乳の製造に際し、従来の方法に比して小さな圧力でカード残りを低減しながら、粘度の低下を抑制でき、製造工程の負荷を軽減することができる。脂肪含量が低い調乳液を用いて得られた発酵物を、従来の特許文献2や3に記載されるような方法で破砕すると、過度な粘度低下が起こることから、本発明の製造方法が極めて有用である。
【0012】
本発明の好ましい形態では、第1の破砕工程における破砕圧力は、第2の破砕工程における破砕圧力より小さい。
第1の破砕工程における破砕圧力を、第2の破砕工程における破砕圧力より小さく設定することで、カード残りを低減しながら、粘度の低下を十分に抑制することができる。
【0013】
本発明の好ましい形態では、前記第1の破砕工程における破砕圧力は、0.01〜0.14MPaである。
第1の破砕工程の破砕圧力を0.01〜0.14MPaとすることにより、第2の破砕工程での破砕を効率よく行うことができるので、カード残りを低減させながら、過度な粘度低下を抑制することができる。
【0014】
本発明の好ましい形態では、前記発酵物がメッシュフィルターを通過する際の、メッシュフィルターの有効面積1mm2あたりの発酵物の流量は、0.01〜4L/時間である。
発酵物の流量を上記の範囲とすることにより、粘度低下を抑制しながら、カード残りを低減する効果を十分に得ることができる。
【0015】
本発明の好ましい形態では、前記メッシュフィルターのメッシュサイズは、10〜40メッシュ(JISふるい規格)である。
このようなメッシュサイズの範囲とすることにより、第1の破砕工程で適度な粗さでの破砕を行うことができる。その結果、続く第2の破砕工程を効率よく行うことができ、従来に比して小さい破砕圧力で、カード残りを極めて小さくすることができる。また、粘度低下を十分に抑制することができる。
【0016】
本発明の好ましい形態では、前記調乳液の蛋白質含量が3質量%以上である。本発明の製造方法は、蛋白質含量が高い調乳液を用いる場合に顕著な効果を発揮する。このような調乳液を用いる場合に、硬いカードが形成されるためである。
【0017】
また、本発明は、上記の製造方法により得られた、発酵乳に関する。
このような発酵乳は、カード残りが低減され、かつ適度な粘度を維持している。
【0018】
また、本発明は、発酵乳原料を含む調乳液を発酵して得られる発酵物中のカードを破砕するための破砕部を備えた破砕装置であって、前記破砕部は、メッシュフィルターを備える第1の破砕部と、第1の破砕部の後段に配置される第2の破砕部と、を有し、前記第1の破砕部によるカードの破砕粗さと、前記第2の破砕部によるカードの破砕粗さとが異なることを特徴とする。
このような破砕装置を用いて、カードを破砕することにより、粘度の低下を抑制しながらカード残りを低減することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の発酵乳の製造方法によれば、従来の1段階の破砕工程でカードを破砕する発酵乳の製造方法に比して、カード残りの低減と、過度な粘度低下の抑制を容易に行うことができ、滑らかな食感で適度な粘度を有する低脂肪タイプの発酵乳を製造することができる。さらに、この効果を、従来の方法に比して小さな圧力で得ることができる。そのため、本発明の発酵乳の製造方法を用いることにより、従来の方法に比して、発酵乳の製造方法における製造工程の負荷を軽減することができる。
また、本発明の製造方法により製造された低脂肪タイプの発酵乳は、カード残りが低減され、過度な粘度低下が抑制されているため、滑らかながら、良好な食感や濃厚感を有する優れたものとなる。
また、本発明の破砕装置を用いることにより、上記のような優れた発酵乳を容易に生産することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の発酵乳の製造方法を示す概略図である。
【図2】本発明の破砕装置を示す概略図である。
【図3】本発明の試験例に用いた破砕装置を示す概略図である。
【図4】試験例1で測定した破砕圧力、カード残り、粘度の関係を示す図である。
【図5】試験例1で測定した破砕圧力、カード残り、粘度の関係を示す図である。
【図6】試験例1で測定した破砕圧力、カード残り、粘度の関係を示す図である。
【図7】試験例2で測定した破砕圧力、カード残り、粘度の関係を示す図である。
【図8】試験例2で測定した破砕圧力、カード残り、粘度の関係を示す図である。
【図9】試験例2で測定した破砕圧力、カード残り、粘度の関係を示す図である。
【図10】試験例2で測定した破砕圧力、カード残り、粘度の関係を示す図である。
【図11】試験例2で測定した破砕圧力、カード残り、粘度の関係を示す図である。
【図12】試験例3で測定した破砕圧力、カード残り、粘度の関係を示す図である。
【図13】試験例3で測定した破砕圧力、カード残り、粘度の関係を示す図である。
【図14】試験例3で測定した破砕圧力、カード残り、粘度の関係を示す図である。
【図15】試験例3で測定した破砕圧力、カード残り、粘度の関係を示す図である。
【図16】試験例3で測定した破砕圧力、カード残り、粘度の関係を示す図である。
【図17】試験例4で測定した破砕圧力、カード残り、粘度の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、本発明の発酵乳の製造方法を示す概略図である。以下、本発明に用いられる原料や本発明における工程について詳しく説明する。
本明細書において、乳、乳製品に関する分類は、特に断らない限り、『乳及び乳製品の成分規格等に関する省令』(以下、「乳等省令」という。)に基づくものである。
本明細書において、「%」パーセントについての表示は、特に断らない限り、質量による表示である。
【0022】
<調乳液>
本発明において、「調乳液」とは、乳、乳製品などの発酵乳原料を含む種々の原料を調製して得られる液である。
本発明において用いられる調乳液に含まれる発酵乳原料は、従来発酵乳の製造において用いられているものを特に制限なく用いることができる。
調乳液における脂肪含量は、1.5質量%以下である。これは、脂肪含量が低い調乳液を発酵させて得られる発酵物は、脂肪含量が高いものに比して、カード残りを生じやすい硬いカードを含むためである。一方、このような脂肪含量の調乳液を用いた場合に、従来の特許文献2や3に記載される方法で破砕を行うと、過度な粘度低下を招くという問題があった。以下に説明する破砕工程は、脂肪含量が1.5質量%以下の発酵乳の製造に適用した場合に、過度な粘度低下を招くことなく、カード残りを十分に低減することを可能にする。
また、調乳液における蛋白質含量は、好ましくは3質量%以上である。このような蛋白質含量の調乳液を発酵させて得られる発酵物は、蛋白質含量が低いものに比して、硬いカードを含むためである。本発明の製造方法は、蛋白質含量が3質量%以上の発酵乳の製造に極めて好適である。
【0023】
また、本発明の調乳液は、蛋白質含量が3〜5質量%で、かつ脂肪含量が1.5質量%以下であることが特に好ましい。このような調乳液を発酵させて得られる発酵物に対し、以下に説明する破砕工程を行うことで、カード残りが殆どなく、かつ適度な粘度を有する、低脂肪タイプの発酵乳を容易に製造することができる。また、このような調乳液から得られる発酵物に対し以下に説明する破砕工程を行った場合には、従来の例えば1段階で破砕を行う方法に比して小さい破砕圧力で、カード残りを殆ど生じさせないことが可能となる。その結果、発酵物に過剰なせん断力が加わらないので、適度な粘度を有する発酵乳となる。すなわち、本発明は、特に蛋白質含量が3〜5質量%で、かつ脂肪含量が1.5質量%以下の発酵乳の製造方法として好適である。
なお、本発明の発酵乳の製造方法は、脂肪含量が1.5質量%以下でない発酵乳の製造方法にも適用することは可能である。特に、蛋白質含量が高く、比較的硬いカードを形成する発酵乳に好適である。
【0024】
<発酵工程>
本発明では、まず上記調乳液を発酵する。調乳液に添加する乳酸菌等の菌、発酵温度や時間などは、通常用いられているものを用いることができる。
本発明で用いられる乳酸菌としては、通常の発酵乳の製造に用いられるものを特段の制限なく用いることができる。例えば、ラクトコッカス(Lactococcus)属菌として、ラクトコッカス・ラクティス(L. lactis)、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティス(L. lactis subsp. lactis)、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティス・バイオバラエティ・ジアセチラクティス(L. lactis subsp. lactis biovar. diacetylactis)、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・クレモリス(L. lactis subsp. cremoris)などの菌株が、ラクトバチルス(Lactobacillus)属菌として、ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ラクティス(L. delbrueckii subsp. lactis)、ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリカス(L. delbrueckii subsp. bulgaricus)(ラクトバチルス・ブルガリカス)、ラクトバチルス・ロイテリ(L. reuteri)、ラクトバチルス・ヘルベティカス(L. helveticus)などの菌株が、ストレプトコッカス(Streptococcus)属菌として、ストレプトコッカス・サリバリウス・サブスピーシーズ・サーモフィルス(S. salivarius subsp. thermophilus)(ストレプトコッカス・サーモフィラス)などの菌株が用いられる。
【0025】
乳酸菌の添加量は、通常の範囲で適宜調節することができる。例えば、調乳液における菌濃度が、少なくとも1×105CFU/g程度、好ましくは少なくとも1×107CFU/g程度となるような量を添加することが好ましい。
【0026】
また、乳酸菌に加えて、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属菌(ビフィズス菌)を用いることもできる。例えば、ビフィドバクテリウム・ロンガム(B. longum)、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(B. breve)、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(B. bifidum)、ビフィドバクテリウム・インファンティス(B. infantis)などの菌株を用いることができる。
ビフィズス菌を用いた場合には、得られる発酵物のカードが硬くなるので、本発明の製造方法の適用の効果が顕著に得られる。
【0027】
調乳液への菌の添加方法は特に制限されず、菌末の状態で添加することも、カルチャー(培養物)の状態で添加することもできる。
【0028】
培養温度(発酵温度)は、乳酸菌等の菌が効率よく増殖する範囲であればよく、通常30〜50℃程度、好ましくは35〜43℃程度である。発酵は、乳酸菌が十分に増殖するまで行えばよく、通常、調乳液のpHが5.0以下になるまで、好ましくは、調乳液のpHが4.8以下になるまで、さらに好ましくは、調乳液のpHが4.2〜4.8程度になるまで行えばよい。発酵時間としては、35〜43℃程度の培養温度の場合、3〜10時間程度、好ましくは3〜6時間程度が目安となる。
【0029】
<破砕工程>
発酵工程の終了後、上記の発酵により得られた発酵物中に含まれるカードを破砕する破砕工程を行う。本発明においては、この破砕工程が、第1の破砕工程と第2の破砕工程を含む点に特徴がある。第2の破砕工程は、第1の破砕工程の後に行われる。
以下、各破砕工程について説明する。
【0030】
〔第1の破砕工程〕
第1の破砕工程は、複数の開き目を有するメッシュフィルターを通過させることにより行う。メッシュフィルターを用いると、比較的小さな圧力で、発酵物中のカードを粗く均一に破砕できるためである。
メッシュフィルターを用いた破砕は、例えば、調乳液を発酵して得られる発酵物を供給する管路内にメッシュフィルターを設置し、発酵物を管路内のメッシュフィルター設置部分に向けて連続的に送り出すことにより行うことができる。メッシュフィルターの形状としては、平板状のものや筒状のものなど、特に制限なく用いることができる。このようなメッシュフィルターとしては、例えば、クロスフィルター(rubberfub製)、ノッチワイヤー(フジトク社製)等が挙げられる。
【0031】
発酵物がメッシュフィルターを通過する際の流量としては、メッシュフィルターの有効面積1mm2あたり、好ましくは0.01〜4L/時間、さらに好ましくは0.1〜2L/時間とすることができる。
本発明において、メッシュフィルターの有効面積とは、発酵物がメッシュフィルターを通過する際の、発酵物が通過可能な空隙部分(開き目の部分)の面積をいう。
このような流量とすることにより、効率よく破砕を行うことができる。また、上記範囲のメッシュサイズのフィルターに対し、上記範囲の流量でフィルターを通過させることにより、第1の破砕工程において過度な破砕圧力をかけることなく、適度な破砕を行うことができる。これによって、続く第2の破砕工程の負荷を軽減することができ、全体として製造工程の負荷を軽減することができる。
【0032】
メッシュフィルターのメッシュサイズは、JISふるい規格で、好ましくは10〜40メッシュ、さらに好ましくは20〜40メッシュである。これらのメッシュサイズの範囲は、それぞれ、1.9〜0.39mm、及び0.87〜0.39mmの目開きに相当する。すなわち、第1の破砕工程では、発酵物中のカードを、好ましくは2.0〜0.3mm程度、さらに好ましくは1.0〜0.3mm程度、より好ましくは1.0〜0.5mm程度の目開きのフィルターを用いて破砕することが好ましいと言える。
このような破砕圧力は、特に蛋白質含量が3〜5質量%で、かつ脂肪含量が1.5質量%以下の調乳液を発酵させて得られた発酵物に対して好適である。
【0033】
また、第1の破砕工程の破砕圧力は、好ましくは0.01〜0.14MPa、さらに好ましくは0.01〜0.05MPa、より好ましくは0.01〜0.04MPaである。
第1の破砕工程の破砕圧力は、第1の破砕工程に供する前の発酵物の供給圧力と第2の破砕工程に供する前の発酵物の供給圧力との差(フィルター部圧)で近似することができ、本発明においてはこの近似値で定義することができる。圧力の測定方法は、後述する試験例に示すように、汎用の圧力計を用いた方法を採用することができる(以下の圧力の測定方法についても同様である)。
【0034】
〔第2の破砕工程〕
第2の破砕工程は、第1の破砕工程の後に行われ、第1の破砕工程とは異なる破砕条件で行われることを特徴とする。
ここで、破砕条件とは、上述した破砕の方式、破砕圧力、破砕時間等、破砕の程度に影響を与え得る条件を含む。
第2の破砕工程に用いられる破砕方式は、通常の調乳液の発酵物中に含まれるカードの破砕に用いられる破砕方式を用いることができる。例えば、上述したフィルター方式、プレッシャーバルブ方式、ミキサー方式等が挙げられる。特に、プレッシャーバルブ方式またはフィルター方式が好ましく挙げられる。プレッシャーバルブ方式またはフィルター方式を用いることで、破砕の均一性を高めることができ、カード残りを低減することが容易になる。
プレッシャーバルブ方式による破砕は、ダイヤフラムバルブ、或いはバックプレッシャーバルブと呼ばれる装置により行うことができる。ダイヤフラムバルブとしては、ゲミュー(GEMU)社製のもの、バックプレッシャーバルブとしては、コフロック株式会社製のもの等が挙げられる。
なお、破砕装置は、破砕の目的物の流路を狭めることで、破砕の目的物に圧力をかけることができる装置であれば特に制限されず、例えば、従来、発酵乳のカードを破砕するのに用いられているものを含め、特に制限なく用いることができる。また、従来発酵乳以外の分野で用いられているサニタリーバルブなども使用することができる。これらの破砕装置の条件設定については、従来1段階の破砕工程で用いていた条件をそのまま用いることができるが、破砕装置に合わせて適宜適当な圧力がかかるように調節することができる。
【0035】
また、第2の破砕工程における破砕粗さは、第1の破砕工程における破砕粗さより小さいことが好ましい。第2の破砕工程における破砕粗さを第1の破砕工程における破砕粗さより小さくすることで、破砕工程全体にかかる負荷を抑制することができる。
破砕粗さの相対的な大小は、例えば未破砕の発酵物(破砕対象物)をそれぞれの破砕工程における方法及び条件で破砕した場合の平均粒子径或いは一定以上の大きさの粒子の質量(カード残り、試験例1を参照)を比較することにより知ることができる。
【0036】
また、第2の破砕工程における破砕圧力は、第1の破砕工程における破砕圧力より大きいことが好ましい。第2の破砕工程における破砕圧力を、第1の破砕工程における破砕圧力より大きくすることで、破砕工程全体の負荷を低減することができる。
第2の破砕工程の破砕圧力は、第2の破砕工程に供する前の発酵物の供給圧力で近似することができ、本発明においてはこの近似値で定義することができる。
【0037】
上記のように、第2の破砕工程の前に、メッシュフィルターを用いた第1の破砕工程を行うことで、発酵物に適度なせん断力を与えることができ、過度な粘度低下を抑制することができる。さらに、全体として、従来の1段階での破砕方法に比して小さい破砕圧力で、カード残りの低減の効果を十分に得ることができる。
また、このような破砕圧力は、特に蛋白質含量が3〜5質量%で、かつ脂肪含量が1.5質量%以下の調乳液を発酵させて得られた発酵物に対して好適である。
【0038】
なお、これまで、第1の破砕工程と第2の破砕工程について説明したが、破砕工程は、必ずしも2段階である必要はなく、第1の破砕工程の前、第1の破砕工程と第2の破砕工程との間、若しくは第2の破砕工程の後に、さらに他の破砕工程を有していてもよい。
【0039】
第1の破砕工程と、第2の破砕工程の方式の組み合わせとしては、図2に示す本発明の破砕装置等を用いることにより、第1の破砕工程をフィルター方式で行い、第2の破砕工程をプレッシャーバルブ方式で行うことが好ましい。
【0040】
ここで、図2を参照しながら、上述した破砕工程を本発明の破砕装置を用いて行う実施形態について説明する。
破砕装置1は、調乳液を発酵することにより得られた発酵物を投入するホッパー2、投入された発酵物を連続的に送り出すポンプ3、発酵物中のカードの破砕を行う破砕部4が、この順で管路6の後段に向けて配置されている。破砕部4は、メッシュフィルター41からなる第1の破砕部と、ダイヤフラムバルブ42からなる第2の破砕部とを有している。
メッシュフィルター41としては、上述したメッシュサイズ、形状のものを好ましく用いることができる。
【0041】
まず、ホッパー2に投入された発酵物は、ポンプ3により、所定の圧力により破砕部4に向かって連続的に押し出される。メッシュフィルター41に供給された発酵物は、メッシュフィルター41を、メッシュフィルターの有効面積1mm2あたり、0.01〜4L/時間、程度の流量で通過する。その結果、カードが所定の粗さまで破砕され、メッシュフィルターを通過した発酵物は、さらにメッシュフィルターでの破砕圧力より大きい圧力により、ダイヤフラムバルブ42に供給される。ダイヤフラムバルブ42に供給された発酵物は、ダイヤフラムバルブ42内の予め設定された狭い空間を通過しながら、更に細かく破砕される。
【0042】
破砕された発酵物は、10℃以下に冷却された後、図示しない充填機により容器に充填され密封される。
【0043】
本発明の方法により製造された発酵乳は、カード残りが低減され、適度な粘度を保持し、食感に極めて優れたものである。
本発明の発酵乳のカード残りは、好ましくは2質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下である。本発明において、カード残りは、後述する試験例1において用いた方法により測定される値として定義することができる。
また、本発明の発酵乳の粘度は、好ましくは2800mPa・s以上、さらに好ましくは3000mPa・s以上、より好ましくは4000mPa・s以上である。本発明において、粘度は後述する試験例1において用いた方法により測定される値として定義することができる。
【0044】
<試験例1>
本発明の発酵乳の製造方法における2段階による破砕の効果を検討するため、各種組成の調乳液から得られた発酵物に対する破砕試験を行った。
図3に示す構成の破砕装置1を用い、表1に示す試料1、試料2及び試料3の発酵物の破砕を行った。すなわち、各試料をホッパー2に投入し、ポンプ3で連続的に破砕部4に供給した。破砕部を構成するメッシュフィルター41(第1の破砕部)には、20メッシュ(目開き0.87mm)のクロスフィルター(rubberfub製)を、ダイヤフラムバルブ42(第2の破砕部)には、ゲミュー(GEMU)社製のものを用いた。ダイヤフラムバルブ42の設定は破砕圧力が0.06〜0.42MPaとなるように適宜調整した。また、図3に示す製造装置において、メッシュフィルター41を外した装置を用いて、同様に試料の破砕を行った。
破砕試験では、ポンプ3による発酵物の供給圧力を変化させることにより、第1の破砕部での破砕圧力を変化させ、各破砕圧力で破砕した際のカード残りと、粘度を測定し、記録した。
【0045】
破砕圧力の測定は、図3に示すように、メッシュフィルター41の上流側及び下流側の管路6の2箇所に圧力計51、圧力計52を設置し、それぞれ、圧力a及び圧力bを測定することにより行った。
カード残りの測定は、破砕した発酵物100gを60メッシュサイズのメッシュフィルター上でろ過し、フィルター上に残った物をカードとし、発酵物中に占めるカードの割合(質量%)を算出することで行った。
粘度の測定は、B型粘度計を用い、以下の条件で測定した。測定は、製造直後(D+0)、製造1日後(D+1)に行った。
No.4ローター、60rpm、10秒間、サンプル温度10℃
【0046】
【表1】
【0047】
試料1についての試験結果を図4に示す。
図4に示すように、フィルターを設置した場合(2段階の粉砕の場合)には、破砕圧力が0.14MPaで、カード残りが0.9質量%程度(1質量%以下)まで低減した。一方、フィルターを設置しない場合(1段階の粉砕の場合)にカード残りを1質量%以下とするには、0.25MPa程度の破砕圧力が必要であった。
また、フィルターを設置した場合には、破砕圧力が0.25MPaで、カード残りが0.2質量%程度(0.5質量%以下)まで低減した。一方、フィルターを設置しない場合にカード残りを0.5質量%以下とするには、0.33MPa程度の破砕圧力が必要であった。
また、カード残りが1質量%以下、または0.5質量%以下となったときの各試料の粘度を比較すると、フィルターを設置した場合の方が、相対的に粘度が高かった。
図4に示される圧力、カード残り、及び粘度の関係から分かるように、フィルターを設置した場合には、フィルターを設置しない場合に比して小さい破砕圧力でカード残りを有効に低減させることができ、その結果、粘度の低下を抑制することができることが分かる。
【0048】
試料2についての試験結果を図5に示す。
図5に示すように、フィルターを設置した場合(2段階の粉砕の場合)には、破砕圧力が0.09MPaで、カード残りが0.4質量%程度(0.5質量%以下)まで低減した。一方、フィルターを設置しない場合(1段階の粉砕の場合)にカード残りを0.5質量%以下とするには、0.33MPa程度の破砕圧力が必要であった。
また、カード残りが0.5質量%以下となったときの各試料の粘度を比較すると、フィルターを設置した場合の方が、相対的に粘度が高かった。
図5に示される圧力、カード残り、及び粘度の関係から分かるように、フィルターを設置した場合には、フィルターを設置しない場合に比して小さい破砕圧力でカード残りを有効に低減させることができ、その結果、粘度の低下を抑制することができることが分かる。
【0049】
試料3についての試験結果を図6に示す。
図6に示すように、フィルターを設置した場合(2段階の粉砕の場合)には、破砕圧力が0.09MPaで、カード残りが0.2質量%程度(0.5質量%以下)まで低減した。一方、フィルターを設置しない場合(1段階の粉砕の場合)にカード残りを0.5質量%以下とするには、0.14MPa程度の破砕圧力が必要であった。
また、カード残りが0.5質量%以下となったときの各試料の粘度を比較すると、フィルターを設置した場合の方が、相対的に粘度が高かった。
図6に示される圧力、カード残り、及び粘度の関係から分かるように、フィルターを設置した場合には、フィルターを設置しない場合に比して小さい破砕圧力でカード残りを有効に低減させることができ、その結果、粘度の低下を抑制することができることが分かる。
【0050】
上記の結果より、本発明の製造方法における破砕工程は、様々な組成の調乳液から得られるカードを含む発酵物に対して好適であることが分かった。中でも、試料1のような低脂肪、及び試料2のような高蛋白質の、比較的硬いカードを形成する調乳液を用いて撹拌型発酵乳を製造する場合に特に好適であることが分かった。
また、上記試験における発酵物の流量を算出すると、メッシュフィルターの有効面積1mm2あたり、0.13〜1.6L/時間の範囲であった。
【0051】
<試験例2>
次に、調乳液の脂肪含量を変化させ、本発明の製造方法における破砕工程が、特に好適な調乳液の組成を検討した。
表2に示す脂肪含量が異なる試料を用い、試験例1と同様に破砕試験を行った。
【0052】
【表2】
【0053】
各試料に対する試験結果を表3、及び図7〜11に示す。
また、カード残りが1質量%となった時点でのフィルター有の場合の粘度、当該時点でのフィルター有の場合とフィルター無の場合の粘度差、及び当該時点でのフィルター有無の場合の破砕圧力差(圧力低減効果)を算出し、これらもまとめて表3に記載した。
【0054】
【表3】
【0055】
表3から分かるように、何れの場合もカード残りが1質量%となった時点での粘度は、フィルターを設置した場合の方が大きかった。これより、フィルターを用いて2段階の破砕工程を行うことにより、カード残りを有効に低減させながら、かつ粘度の低下を有効に抑制することができることが、確認された。
また、同表から分かるように、カード残りが1質量%となった時点でのフィルター有無の場合の圧力差は、脂肪含量が低いほど大きい傾向となった。これについて、図7〜10を見ると分かるように、脂肪含量が0.1〜1.5質量%の試料4〜7については、カード残りを十分に低減させる(例えば1.0質量%以下)のに必要な破砕圧力が、フィルターの有無によって異なる結果となった。
一方、図11を見ると分かるように、脂肪含量が2.0質量%の試料8については、フィルターの有無によって、カード残りを有効に低減させるのに必要な破砕圧力に大きな差はなかった。
これより、本発明の製造方法における破砕工程は、脂肪含量が1.5質量%以下の調乳液を用いる場合に特に有効であることが分かった。
【0056】
<試験例3>
次に、フィルターのフィルターサイズを変化させ、本発明の製造方法における第1の破砕工程の破砕条件の好適な範囲についての検討を行った。試験には、上述した試料1を用いた。試験方法は、試験例2と同様である。
【0057】
試験結果を表4、及び図12〜16に示す。
また、カード残りが1質量%となった時点でのフィルター有の場合の粘度、当該時点でのフィルター有の場合とフィルター無の場合の粘度差、及び当該時点でのフィルター有無の場合の破砕圧力差(圧力低減効果)を算出し、これらもまとめて表4に記載した。
【0058】
【表4】
【0059】
表4、図12〜16から分かるように、20メッシュのフィルターを用いた場合と、40メッシュのフィルターを用いた場合には、カード残りが1質量%となった時点での粘度は、フィルターを設置した場合の方が大きかった。特に、20メッシュのフィルターを用いた場合には、その差は顕著であった。
一方、60メッシュ以上のフィルターを用いた場合には、カード残りが1質量%となった時点での粘度は、フィルターを設置しない場合の方がわずかに大きかった。
本試験例では、60メッシュ以上のフィルターを用いた場合には、フィルターを通過する際にかかる破砕圧力(圧力a−圧力b)が、フィルター通過後の圧力bより大きかった。すなわち、第1の破砕工程での破砕圧力が、第2の破砕工程での破砕圧力より大きい場合には、第1の破砕工程で大きなせん断力がかかることによって、粘度の低下を招きやすいことが分かった。
【0060】
また、試料1に代表される、脂肪含量が0.5質量%以下、蛋白含量が3〜5質量%程度の調乳液から得られた発酵物の破砕においては、10〜40メッシュのメッシュサイズのフィルターを用いることが好ましく、20〜40メッシュのメッシュサイズのフィルターを用いることが更に好ましく、20メッシュ程度のメッシュサイズのフィルターを用いることがより好ましいことが分かった。
【0061】
<試験例4>
次に、試料7(脂肪含量1.5質量%)を用いて、フィルターサイズが20メッシュのフィルターを用い、フィルターを設置しない場合との比較を行った。
結果を表5及び図17に示す。
【0062】
【表5】
【0063】
表5及び図17から分かるように、カード残りが1質量%となった時点での粘度は、フィルターを設置しない場合に比べ、フィルターを設置した場合の方が大きかった。
これより、脂肪含量が1〜1.5質量%程度、蛋白含量が3〜5質量%程度の調乳液を用いる場合には、フィルターサイズを20メッシュ程度、目開きで0.5〜1.0mm程度とすることが好ましいことが分かった。
【0064】
試験例3の結果もあわせると、脂肪含量が1.5質量%以下、蛋白含量が3〜5質量%程度の調乳液から得られた発酵物の破砕においては、20〜40メッシュのメッシュサイズのフィルターを用いることが好ましいことが分かった。
【実施例】
【0065】
表6に示す配合の調乳液(脂肪含量0.1質量%、蛋白質含量4.2質量%)を用い、以下の方法にて発酵乳を製造した。
【0066】
【表6】
【0067】
前記調乳液を、95℃で6分間殺菌した後、冷却し、乳酸菌スターター(菌名ストレプトコッカス・サーモフィルス、ラクトバチルス・ブルガリカス、クリスチャン・ハンセン社製)及びビフィズス菌(菌名ビフィドバクテリウム・ロンガム、森永乳業社製)を添加し、37℃で7時間(pHが4.6になるまで)発酵した。得られた発酵物を、図2に示す構成の破砕装置1のホッパー2に投入し、管路6内を通して、破砕部4へポンプを用いて連続的に供給した。メッシュフィルター41(第1の破砕部)には、20メッシュ(0.87mm)のクロスフィルター(rubberfub製)を、ダイヤフラムバルブ42には、ゲミュー(GEMU)社製のダイヤフラムバルブを用いた。ダイヤフラムバルブ42は、破砕圧力が0.13MPaとなるように調整した。
流量は、メッシュフィルターの有効面積1mm2あたり、0.6L/時間に設定した。
ダイヤフラムバルブを通過した発酵物を10℃まで冷却した後、80mlのプラスチック製容器に充填し、シールで密閉し、製品とした。
1日後、製品のシールを開封し、発酵乳のカード残り及び粘度を測定した。測定方法は、上述した試験例に記載した方法を用いた。
その結果、カード残りは、0.3質量%と極めて小さく、粘度は4800mPa・sと適度であった。
また、この発酵乳を食したところ、滑らかで、かつ粘度も適度で、良好な食感を有していた。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の製造方法、及び破砕装置は、発酵乳の工業生産に利用される。
【符号の説明】
【0069】
1 破砕装置
2 ホッパー
3 ポンプ
4 破砕部
41 フィルター(第1の破砕部)
42 ダイヤフラムバルブ(第2の破砕部)
51、52 圧力計
6 管路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪含量が1.5質量%以下である、発酵乳原料を含む調乳液を発酵して得られる発酵物中のカードの破砕工程を含む、発酵乳の製造方法であって、
前記破砕工程は、第1の破砕工程と、第1の破砕工程の後に行われる第2の破砕工程と、を有し、
第1の破砕工程は、前記発酵物を、メッシュフィルターを通過させることによって行われ、
前記第2の破砕工程は、前記第1の破砕工程と異なる破砕条件で行われる、
発酵乳の製造方法。
【請求項2】
第2の破砕工程における破砕圧力が、第1の破砕工程における破砕圧力より大きい、請求項1に記載の発酵乳の製造方法。
【請求項3】
前記第1の破砕工程における破砕圧力が、0.01〜0.14MPaである、請求項1又は2に記載の発酵乳の製造方法。
【請求項4】
前記発酵物がメッシュフィルターを通過する際の、メッシュフィルターの有効面積1mm2あたりの発酵物の流量が、0.01〜4L/時間である、請求項1〜3の何れかに記載の発酵乳の製造方法。
【請求項5】
前記メッシュフィルターのメッシュサイズが、10〜40メッシュである、請求項1〜4の何れかに記載の発酵乳の製造方法。
【請求項6】
前記調乳液の蛋白質含量が3質量%以上である、請求項1〜5の何れかに記載の発酵乳の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6の何れかに記載の製造方法により得られた、発酵乳。
【請求項8】
発酵乳原料を含む調乳液を発酵して得られる発酵物中のカードを破砕するための破砕部を備えた破砕装置であって、
前記破砕部は、メッシュフィルターを有する第1の破砕部と、第1の破砕部の後段に配置される第2の破砕部と、を有し、
前記第1の破砕部によるカードの破砕粗さと、前記第2の破砕部によるカードの破砕粗さとが異なることを特徴とする破砕装置。
【請求項1】
脂肪含量が1.5質量%以下である、発酵乳原料を含む調乳液を発酵して得られる発酵物中のカードの破砕工程を含む、発酵乳の製造方法であって、
前記破砕工程は、第1の破砕工程と、第1の破砕工程の後に行われる第2の破砕工程と、を有し、
第1の破砕工程は、前記発酵物を、メッシュフィルターを通過させることによって行われ、
前記第2の破砕工程は、前記第1の破砕工程と異なる破砕条件で行われる、
発酵乳の製造方法。
【請求項2】
第2の破砕工程における破砕圧力が、第1の破砕工程における破砕圧力より大きい、請求項1に記載の発酵乳の製造方法。
【請求項3】
前記第1の破砕工程における破砕圧力が、0.01〜0.14MPaである、請求項1又は2に記載の発酵乳の製造方法。
【請求項4】
前記発酵物がメッシュフィルターを通過する際の、メッシュフィルターの有効面積1mm2あたりの発酵物の流量が、0.01〜4L/時間である、請求項1〜3の何れかに記載の発酵乳の製造方法。
【請求項5】
前記メッシュフィルターのメッシュサイズが、10〜40メッシュである、請求項1〜4の何れかに記載の発酵乳の製造方法。
【請求項6】
前記調乳液の蛋白質含量が3質量%以上である、請求項1〜5の何れかに記載の発酵乳の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6の何れかに記載の製造方法により得られた、発酵乳。
【請求項8】
発酵乳原料を含む調乳液を発酵して得られる発酵物中のカードを破砕するための破砕部を備えた破砕装置であって、
前記破砕部は、メッシュフィルターを有する第1の破砕部と、第1の破砕部の後段に配置される第2の破砕部と、を有し、
前記第1の破砕部によるカードの破砕粗さと、前記第2の破砕部によるカードの破砕粗さとが異なることを特徴とする破砕装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2013−94076(P2013−94076A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−237480(P2011−237480)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000006127)森永乳業株式会社 (269)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000006127)森永乳業株式会社 (269)
【Fターム(参考)】
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