発酵装置
【課題】処理物を良好に発酵処理することができる発酵装置を提供する。
【解決手段】発酵装置20は、人間の排泄物、家畜糞尿、家庭用生ゴミ等の有機系の処理物を微生物により発酵処理する。傾斜した回転軸を中心に回転可能に保持された発酵槽21と、この発酵槽21を回転させる回転機構22とを具備している。発酵槽21は、処理物を発酵処理する発酵室Cを内部に設け、回転軸を中心にして軸対称に形成された外殻部23と、この外殻部23の内面から中心に向けて立ち上がり、回転軸方向に延びた帯状の攪拌翼部24と、この外殻部23の内面から中心に向けて立ち上がり、回転軸に直交する面を形成した内枠状の邪魔板部25とを有している。外殻部23は、回転軸方向の上側の端部に設けられ、発酵室C内に処理物を受け入れる受入口25Aと、回転軸方向の下側の端部に設けられ、発酵室C内で発酵処理された処理物を排出する排出口26Aとを有している。
【解決手段】発酵装置20は、人間の排泄物、家畜糞尿、家庭用生ゴミ等の有機系の処理物を微生物により発酵処理する。傾斜した回転軸を中心に回転可能に保持された発酵槽21と、この発酵槽21を回転させる回転機構22とを具備している。発酵槽21は、処理物を発酵処理する発酵室Cを内部に設け、回転軸を中心にして軸対称に形成された外殻部23と、この外殻部23の内面から中心に向けて立ち上がり、回転軸方向に延びた帯状の攪拌翼部24と、この外殻部23の内面から中心に向けて立ち上がり、回転軸に直交する面を形成した内枠状の邪魔板部25とを有している。外殻部23は、回転軸方向の上側の端部に設けられ、発酵室C内に処理物を受け入れる受入口25Aと、回転軸方向の下側の端部に設けられ、発酵室C内で発酵処理された処理物を排出する排出口26Aとを有している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は発酵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には従来の発酵装置が開示されている。この発酵装置は、有機系の処理物である家畜糞尿を微生物により発酵処理するものであり、水平な回転軸を中心に回転可能に保持された発酵槽と、この発酵槽を回転させる回転機構とを具備している。この発酵槽は、家畜糞尿を発酵処理する発酵室を内部に設け、回転軸を中心にして円筒形状に形成された外殻部を有している。外殻部の内面には回転軸に対して回転方向に傾斜した板部材が取り付けられている。外殻部は、回転軸方向の一端に設けられ、発酵室内に家畜糞尿を受け入れる受入口を有している。また、外殻部は回転軸方向の他端に設けられ、発酵室内で発酵処理された家畜糞尿を排出する排出口を有している。
【0003】
この発酵装置では、発酵槽が回転することにより、発酵室内に取り付けられた板部材によって、受入口から発酵室内に受け入れた家畜糞尿が、所定の期間をかけて排出口側へ攪拌されながら搬送される。発酵室内に受け入れられた家畜糞尿は、所定の期間をかけて発酵室内に滞留するため、排出口から排出された際には、微生物により良好に発酵処理されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3013879号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来の発酵装置では、水平な回転軸を中心に発酵槽が回転するため、処理物の受入口から排出口への移動及び攪拌は、外殻部の内面に設けられた板部材によってのみ行われる。このため、発酵室内において、受入口側に処理物が追加されないと、排出口方向に処理物が移動しにくい。このように、発酵室内の処理物の量によって、処理物の発酵室内の滞留時間が大きく変わる虞がある。この場合、処理物の発酵処理の度合いがばらついてしまう。
【0006】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、処理物を良好に発酵処理することができる発酵装置を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の発酵装置は、人間の排泄物、家畜糞尿、家庭用生ゴミ等の有機系の処理物を微生物により発酵処理する発酵装置であって、
傾斜した回転軸を中心に回転可能に保持された発酵槽と、この発酵槽を回転させる回転機構とを具備し、
前記発酵槽は、前記処理物を発酵処理する発酵室を内部に設け、前記回転軸を中心にして軸対称に形成された外殻部と、この外殻部の内面から中心に向けて立ち上がり、前記回転軸方向に延びた帯状の攪拌翼部と、この外殻部の内面から中心に向けて立ち上がり、前記回転軸に直交する面を形成した内枠状の邪魔板部とを有し、
前記外殻部は、前記回転軸方向の上側の端部に設けられ、前記発酵室内に前記処理物を受け入れる受入口と、前記回転軸方向の下側の端部に設けられ、前記発酵室内で発酵処理された処理物を排出する排出口とを有していることを特徴とする。
【0008】
この発酵装置では、発酵槽が傾斜した回転軸を中心に回転可能に保持されているため、発酵室は受入口から排出口に向けて下り傾斜状態にされている。このため、発酵室内に受け入れられた処理物は、重力により排出口側へ移動する。一方、処理物は邪魔板部によって排出口側への移動が阻止される。このため、発酵室内に受入口から受け入れられた処理物は、直ちに排出口から排出されず、発酵室内に滞留し、その間に発酵処理が行なわれる。
【0009】
邪魔板部によって排出口側への移動が阻止された処理物は、発酵槽が回転機構により回転することにより、攪拌翼部により発酵室内の上方に押し上げられる。ある程度の高さに押し上げられた処理物は、攪拌翼部の上面から発酵室内の下方に落下する。この際、発酵室が下り傾斜状態にされているため、邪魔板部に近い位置に堆積していた処理物は、その邪魔板部の排出口側へ落下する。このように、発酵槽を回転させることにより発酵室内の処理物は、徐々に排出口側へ移動し、最終的には、排出口から排出される。このため、この発酵装置では、発酵室内の処理物の量に関わらず、発酵室に受け入れられた処理物を攪拌しながら順次排出口から排出することができ、処理物が発酵室内に滞留する時間のばらつきが少なく、連続的に処理物を発酵処理することができる。
【0010】
また、発酵槽の回転軸の傾斜角度を変更したり、攪拌翼部及び邪魔板部の数や形状等を変更したりすることにより、受入口から発酵室に受け入れられた処理物を排出口から排出するまでの発酵槽の回転数を調整することができる。つまり、処理物が発酵室内に滞留する時間を調整することができる。このため、所定時間の間、発酵室内に処理物を滞留させることができ、処理物を十分に発酵処理することができる。また、発酵槽が回転して、発酵室内で排泄物の落下が繰り返されることにより、処理物が攪拌されるため、処理物に含まれる微生物を好気状態に維持することができる。
【0011】
したがって、本発明の発酵装置は、処理物を良好に発酵処理することができる。
【0012】
前記外殻部には、前記発酵室内の液体が排出される排水孔が設けられ得る。この場合、発酵室内において、処理物に含まれている液体を排水孔から排出することができる。このため、発酵室内の処理物の攪拌を良好に行うことができ、微生物を好気状態に維持して発酵処理を良好に行なうことができる。
【0013】
前記排水孔は、前記邪魔板部より前記受入口側であり、この邪魔板部に沿ってスリット状に貫設され得る。この場合、発酵室が下り傾斜状態にされているため、処理物に含まれている液体は、邪魔板部に沿って、その受入口側に集まってくる。このため、この部分にスリット状に排水孔を貫設することにより、処理物に含まれている液体を良好に排出することができる。
【0014】
前記排水孔に挿入され、この排水孔を閉鎖する前記処理物を除去する挿入具を有し得る。この場合、排水孔が処理物により閉鎖されることを防止することができるため、処理物に含まれている液体を排水孔から良好に排出することができる。
【0015】
前記外殻部は円筒形状であり、前記排水孔はこの外殻部を一周するスリット状に形成されており、前記挿入具は前記排水孔に挿入して吊下げられ得る。この場合、スリット状の排水孔が吊下げられた挿入具を挿入した状態で発酵槽が回転するため、排水孔を閉鎖する処理物は、挿入具により順次、除去される。このため、排水孔から処理物に含まれている液体を良好に排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施例のトイレ設備を示す側面図である。
【図2】実施例の発酵装置を示す断面図である。
【図3】実施例の発酵装置の分解図である。
【図4】実施例の発酵装置の分解図である。
【図5】実施例の発酵装置の要部を示す断面図である。
【図6】実施例の発酵装置を回転機構側から見た側面図である。
【図7】図2の矢視X−X断面図である。
【図8】実施例の固液分離装置を示す側面図である。
【図9】実施例の固液分離装置を示す平面図である。
【図10】実施例の固液分離装置の要部を示す斜視図である。
【図11】実施例の固液分離装置の要部を示す断面図である。
【図12】実施例の固液分離装置を駆動部側から見た側面図である。
【図13】実施例の固液分離装置の除去部材を示す拡大図である。
【図14】実施例の固液分離装置において、押出板が分離板の一端部に位置した状態を示す側面図である。
【図15】実施例の小便乾燥装置が固液分離装置の下方に配置された状態を示す概略図である。
【図16】実施例の小便乾燥装置の水分保持体を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の発酵装置をトイレ設備に適用した実施例を図面を参照しつつ説明する。
【0018】
<実施例>
実施例のトイレ設備は、図1に示すように、便器1、固液分離装置10、発酵装置20、小便乾燥装置30及び貯留槽40を備えている。便器1は、非水洗式であり、便鉢2及びこの便鉢2に連通し、下方に向けて開口する便器排出口3を有している。また、便鉢2の上端開口部には、便座4及び便蓋5が回動可能に取り付けられている。便器1の便器排出口3は、床部材Gの開口部に連結されている。
【0019】
発酵装置20は、図2〜図7に示すように、発酵槽21と、この発酵槽21を回転させる回転機構22とを具備している。発酵槽21は傾斜した回転軸を中心に回転可能の保持されている。発酵槽21は、外殻部23と、攪拌翼部24と、邪魔板部25とを有している。床部材Gの下面には便器排出口3を挟んで一対のレール部材7が延びて設けられている。発酵装置20はレール部材7に係止してスライド可能に吊下げられ、固定されている。このため、発酵装置20は設置及びメンテナンスのための取外し等を容易に行なうことができる。
【0020】
外殻部23は、内部に発酵室Cを設け、回転軸を中心にして軸対称の円筒形状に形成されている。この外殻部23は、4つの円筒部材23Aを連結して形成されている。邪魔板部25は、各円筒部材23Aの一方の開口端から内側に延びて形成されている。この邪魔板部25は円環状であり、中心部に形成された開口部は、回転軸を中心とした円形状である。
【0021】
攪拌翼部24は、方形状であり、その一辺が円筒部材23Aの内周面に接している。また、この攪拌翼部24は、円筒部材23Aの内周面から中心に向けて立ち上がるように取り付けられている。この攪拌翼部24は、各円筒部材23Aの内周面に4つずつ取り付けられており、円筒部材23の中心軸から見て90度ずつ離れた内周面に配置されている。
【0022】
各円筒部材23Aは攪拌翼部24により連結され、外殻部23を形成している。この際、各攪拌翼部24が外殻部23の内面から中心に向かって立ち上がり、回転軸方向に延びる帯状となるように各円筒部材23Aは連結されている。また、各円筒部材23A同士は、隙間を空けて連結されている。
【0023】
外殻部23の一端側に位置する邪魔板部25の開口部は、外殻部23の受入口25Aを形成している。また、各円筒部材23A間に設けられた隙間は、邪魔板部25より受入口25A側に、邪魔板部25に沿って貫設されたスリット状の排水孔Dを形成している。
【0024】
外殻部23の他端側に位置する円筒部材23Aには、中央開口部を有する円環状の邪魔板部26が連結されている。この邪魔板部26の中央開口部は、外殻部23の排出口26Aを形成している。外殻部23の他端側に位置する円筒部材23Aの開口縁と邪魔板部26との間には隙間が形成されている。この隙間も邪魔板部26より受入口25A側に、邪魔板部26に沿って貫設されたスリット状の排水孔Dを形成している。外殻部23に設けられた排水孔Dは、固液分離装置10で分離しきれず、処理物である大便Fとともに発酵室C内に受け入れられた小便U(液体)を排出することができる。このため、発酵室C内の大便Fの攪拌を良好に行うことができ、発酵室C内の微生物を好気状態に維持して発酵処理を良好に行なうことができる。
【0025】
邪魔板部26には4つの方形状の接続部材27Aが固定されている。この接続部材27Aにより邪魔板部26と円盤状の端面部材27とが連結されている。端面部材27の中央部には、回転軸部22Aの一端部が連結されている。
【0026】
回転機構22は、発酵槽21の傾斜した回転軸を形成する回転軸部22A、ラチェット部22B及びレバーL1を有している。ラチェット部22Bには、第2ワイヤーW2の一端部が連結されている。また、第2ワイヤーW2の他端部は、後述するてこ部材19(図8参照)の他端部に連結されている。てこ部材19の一端部にはレバーL1に他端部が連結された第1ワイヤーW1の一端部が連結されている。このため、レバーL1を起立状態に回動させると、てこ部材19の他端部が下降し、第2ワイヤーW2は牽引される。第2ワイヤーW2が牽引されると、ラチェット部22Bは回転軸部22Aを一方向に設定角度(例えば、5度)だけ回転させる。
【0027】
第2ワイヤーW2の一端部側には、第2ワイヤーW2を挿通する第2コイルバネS2が設けられている。第2コイルバネS2は、第2ワイヤーW2を引き戻す方向に付勢している。このため、レバーL2を倒伏状態に回動させると、てこ部材19の他端部が上昇し、第2ワイヤーの牽引力がなくなるため、第2ワイヤーW2は引き戻される。この際、ラチェット部22Bは回転軸22Aを回転させず、発酵槽21は状態が維持される。
【0028】
回転軸部22Aの他端部はラチェット部22Bに保持されている。ラチェット部22は、回転軸部22Aを傾斜した状態に保持するように、床部材Gの下面に設けられたレール部材7にスライド可能に吊下げられ、固定された第1取付部材22Cに傾斜して取り付けられている。
【0029】
発酵槽21は、傾斜した回転軸部22Aの一端部を端面部材27の中央部に固定している。一方、受入口25Aの内周面には、発酵槽21の回転を案内する2つの案内部材29が当接されている。これら案内部材29は床部材Gの下面に設けられたレール部材7にスライド可能に吊下げられ、固定された第2取付部材29Aに固定されている。
【0030】
このようにして床部材Gの下方に配置された発酵槽21は、外殻部23の回転軸方向の上側の端部に受入口25Aが配置され、回転軸方向の下側の端部に排出口26Aが配置される。つまり、発酵室Cは、受入口25Aから排出口26Aに向けて下り傾斜状態にされる。また、外殻部23の受入口25Aには、後述する分離板11の一端部11Fが挿入されている。
【0031】
外殻部23に設けられた排水孔Dの上端位置には、床部材Gの下面に設けられたレール部材7にスライド可能に係止し、固定された吊下部材8から垂下した挿入具28の下端部が挿入されている。挿入具28は下辺がV字形に形成された薄板状である。発酵槽21が回転すると、排水孔Dも挿入具28に沿って回転するため、排水孔Dを閉鎖する大便Fは、挿入具28により順次、除去される。このため、排水孔Dから大便Fに含まれている小便Uを良好に排出することができる。
【0032】
このように構成された発酵装置20は、発酵室Cが受入口25Aから排出口26Aに向けて下り傾斜状態にされている。このため、発酵室C内に受け入れられた処理物である大便Fは、重力により排出口26A側へ移動する。排出口26A側に移動した大便Fは、邪魔板部25によってそれより下方への移動が阻止される。このため、発酵室C内に受入口25Aから受け入れられた大便Fは、直ちに排出口26Aから排出されず、発酵室C内に滞留し、その間に発酵処理が行なわれる。
【0033】
邪魔板部25によって排出口26A側への移動が阻止された大便Fは、発酵槽21が回転機構22により回転することにより、攪拌翼部24により発酵室C内の上方に押し上げられる。ある程度の高さに押し上げられた大便Fは、図2及び図7に示すように、攪拌翼部24の上面から発酵室C内の下方に落下する。この際、発酵室Cが下り傾斜状態にされているため、邪魔板部25に近い位置に堆積していた大便Fは、その邪魔板部25の排出口26A側へ落下する。このように、発酵槽21を回転させることにより発酵室C内の大便Fは、徐々に排出口26A側へ移動し、最終的には、排出口26Aから排出される。このため、この発酵装置20では、発酵室C内の大便Fの量に関わらず、発酵室Cに受け入れられた大便Fを攪拌しながら順次排出口から排出することができ、大便Fが発酵室C内に滞留する時間のばらつきが少なく、連続的に大便Fを発酵処理することができる。
【0034】
また、発酵槽21の回転軸の傾斜角度を変更したり、攪拌翼部24及び邪魔板部25の数や形状等を変更したりすることにより、受入口25Aから発酵室Cに受け入れられた大便Fを排出口26Aから排出するまでの発酵槽21の回転数を調整することができる。つまり、大便Fが発酵室C内に滞留する時間を調整することができる。このため、所定期間の間(例えば、1ヶ月間)、発酵室C内に大便Fを滞留させることができ、大便Fを十分に発酵処理することができる。また、発酵槽21が回転して、発酵室C内で大便Fの落下が繰り返されることにより、大便Fが攪拌されるため、大便Fに含まれる微生物が好気状態に維持され、大便Fを良好に発酵処理することができる。
【0035】
したがって、実施例の発酵装置は、処理物である大便を良好に発酵処理することができる。
【0036】
また、この発酵装置20では、菌床を収納せず、発酵室Cに大便Fのみを受け入れて発酵処理するため、菌床を収納するための容積を必要としない。また、発酵室C内の大便Fは、発酵処理後に排出口26Aから貯留槽40に自動的に排出されるため、発酵室C内から発酵処理済の大便Fを取り出す手間を必要としない。このため、このトイレ設備は、小型化を図ることができ、メンテナンスを軽減することができる。
【0037】
また、発酵室Cが下り傾斜状態にされているため、発酵室C内に受け入れられた小便Uは、邪魔板部25の受入口25A側に集まってくる。このため、この部分に貫設されたスリット状の排水孔Dにより、小便Uを良好に排出することができる。このようにして、発酵室C内の水分(小便U)をさらに少なくすることができるため、大便Fの攪拌を良好に行え、微生物による処理に適した好気状態に良好に保つことができる。さらに微生物がより繁殖しやすい水分環境に維持することができる。よって、大便Fの発酵処理をさらに良好に行なうことができる。
【0038】
また、レバーL1を人力により操作することにより、無電源で発酵装置20を回転させることができる。また、便器1を使用した後にその使用者がレバーL1の操作をすることにすれば、その度に発酵槽21を設定角度(例えば、5度)だけ回転させることができる。これにより、便器1の使用頻度に応じて発酵槽21を回転させることができる。また、上述したように、発酵槽21が回転することによって発酵室C内の大便Fが受入口25Aから排出口26Aへ移動し、排出口26Aから排出される。また、大便Fを均等に混合・攪拌することができ、適量の大便Fを発酵室C内に滞留させることができるため、発酵処理を良好に行なうことができる。また、発酵室C内の内部空間を有効に活用することができる。
【0039】
固液分離装置10は、図8〜図14に示すように、分離板11、搬送機構13及び除去部材16A、16Bを有している。固液分離装置10はレール部材7に係止してスライド可能に吊下げられ、固定されている。このため、固液分離装置10は設置及びメンテナンスのための取外し等を容易に行なうことができる。
【0040】
分離板11は、平板状であり、便器排出口3の下方に水平状態で配置されている。分離板11には、スリット状に貫設された複数の開口部12が等間隔に並設されている。これら各開口部12は分離板11の一端部11Fから他端部11Bの縦方向に延びている。
【0041】
分離板11が便器排出口3の下方に配置されているため、便器1を利用して人間が排泄し、便器排出口3から排出された排泄物は、分離板11の上面に受けられる。分離板11の上面に受けられた排泄物のうち、小便Uは開口部12を下方へ通過し、大便Fは分離板11上に残存する。このように、固液分離装置10の分離板11によって、排泄物は小便Uと大便Fに分離される。
【0042】
搬送機構13は押出板14及び駆動部15を有している。押出板14は、帯状であり、分離板11の縦方向である一端部11Fと他端部11Bとの間を往復移動可能である。押出板14は、この移動方向に対して垂直方向、つまり分離板11の横方向に延びている。押出板14の両端は、分離板11の横方向の両端部11L、11Rの近傍まで延びている。押出板14の両端部には、一対の第1支持板17Aが分離板11の縦方向に沿って立設されている。この第1支持板17Aは、上端部に軸部14Aが設けられ、押出板14の上部を軸支している。また、第1支持板17Aは、一片が分離板11の一端部11F側に向かって下降して形成された傾斜辺17Sを有している。この傾斜辺17Sに押出板14の裏面が当接している。このため、押出板14は、分離板11の一端部11F側に向かって下降する傾斜状態に配置されている。また、第1支持板17Aに軸支された押出板14は、分離板11の一端部11Fから他端部11Bへ移動する方向に対して、後方へ回動可能である。
【0043】
除去部材16Aは第1支持板17Aの下辺の一部から下方に延びて一体に形成されている。この除去部材16Aは開口部12に挿通されて下方に突出している。また、除去部材16Bは、平板状に形成されており、一対の第1支持板17Aの間に形成された複数の各開口部12の夫々に挿通されて下方に突出している。これら各除去部材16Bの上端には、第2支持板17Bが一体に形成されている。この第2支持部材17Bは、分離板11の一端部11F側に位置する上端角部17Cを押出板14の裏面に当接させている。
【0044】
第1支持板17Aに一体に形成された除去部材16A及び第2支持板17Bに一体に形成されている除去部材16Bは、分離板11より下方で棒状の連結部材15Lに貫通されて連結されている。各除去部材16A、16Bは、スリット状に形成された各開口部12に挿通された状態で、各開口部12に沿って往復移動可能である。また、各除去部材16A、16Bは、連結部材15L及び第1支持部材17Aを介して押出板14に連結されて一体にされている。このため、押出板14及び各除去部材16A、16Bは一緒に分離板11の一端部11Fと他端部11Bとの間を往復移動する。
【0045】
駆動部15は、一対の第1リンク部材15A及び一対の第2リンク部材15Bを有している。各第1リンク部材15Aの一端部はジョイント軸15Jの両端部に連結されている。各第1リンク部材15Aは、ジョイント軸15Jが回転すると共に、ジョイント軸15Jを中心に回動可能である。ジョイント軸15Jの両端部は、床部材Gの下方に設けられた一対の保持板18に保持されている。この一対の保持板18は、分離板11より上方であって、分離板11の横幅と略同じ間隔を有して配置されている。各第1リンク部材15Aの他端部は、ジョイント部材15Kにより各第2リンク部材15Bの一端部に連結されている。各第2リンク部材15Bの他端部は連結部材15Lに連結されている。
【0046】
ジョイント軸15Jの中央部には、てこ部材19の中心部が固定されている。ジョイント軸15Jは、てこ部材19のジョイント軸15Jを中心とした回動に伴って回転する。てこ部材19の一端部には第1ワイヤーW1の一端部が連結されている。第1ワイヤーW1の他端部は床部材Gの上面に固定されたレバーL1に連結されている。レバーL1は、床部材Gに固定された支点部材L2に軸支され、床部材G上で起伏可能である。てこ部材19の他端部には、後述する発酵装置20の回転機構22のラチェット部22Bに一端部が連結された第2ワイヤーW2の他端部が連結されている。
【0047】
このように構成された駆動部15は、レバーL1を起立状態に回動させると、図14に示すように、第1ワイヤーW1が上方に牽引される。すると、てこ部材19の一端部が上方に引き上げられる。これにより、ジョイント軸15Jが一方向に回転する。すると、各第1リンク部材15Aがジョイント軸15Jを中心に一方向に回動し、各ジョイント部材15Kが分離板11方向に移動する。すると、各第2リンク部材15Bが押出板14を分離板11の一端部11F側へ移動させる。また、押出板14と一体にされた各除去部材16A、16Bも開口部12に沿って、分離板11の一端部11F側に移動する。このため、各除去部材16A、16Bが開口部12に付着又は開口部12を閉鎖する大便Fを除去しながら、押出板14が分離板11上に残存した大便Fを分離板11の一端部11Fから押し出し、発酵装置20の受入口25Aに落下させることができる。
【0048】
このように、小便Uと分離されて分離板11上に残存した大便Fを押出板14によって分離板11の一端部11Fから押し出すため、発酵装置20の発酵室C内の水分(小便)を少なくすることができる。このため、発酵室C内において、大便Fの攪拌を良好に行うことができ、微生物を好気状態に維持することができる。よって、大便Fの発酵処理を良好に行なうことができる。また、各除去部材16A、16Bによって、開口部12に付着又は開口部12を閉鎖する大便Fを良好に除去することができる。このため、開口部12は小便Uを良好に通過させることができる。
【0049】
ジョイント軸15Jには第1コイルバネS1が外嵌されている。この第1コイルバネS1は、ジョイント軸15Jを他方向に回転させるように付勢している。このため、レバーL1を倒伏状態に回動させると、第1ワイヤーW1がてこ部材19の一端部を上方に引き上げる力がなくなり、図8に示すように、第1コイルバネS1の付勢力により、ジョイント軸15Jは他方向に回転する。すると、各第1リンク部材15Aがジョイント軸15Jを中心に他方向に回動し、各ジョイント部材15Kが分離板11から離れる方向に移動する。すると、各第2リンク部材15Bが押出板14を分離板11の他端部11B側に移動させる。また、押出板14と一体に形成された各除去部材16A、16Bも開口部12に沿って、分離板11の他端部11B側に移動する。この際、仮に分離板11上に大便Fが残存していたとしても、押出板14は、分離板11の一端部11Fから他端部11Bに移動する際に分離板11上の大便Fに当接すると、移動方向に対して後方に回動するため、大便Fを分離板11の他端部11Bから押し出すことはなく、他端部11Bに戻ることができる。また、各除去部材16A、16Bは、開口部12に沿って分離板11の他端部11B側に移動する際も、開口部12に付着又は開口部12を閉鎖する大便Fを除去することができる。このため、開口部12は小便Uを良好に通過させることができる。
【0050】
したがって、固液分離装置10は、大便Fと小便Uとの分離及び大便Fの搬送を良好に行なうことができる。
【0051】
小便乾燥装置30は、図1、図15及び図16に示すように、固液分離装置10の分離板11及び発酵装置20の下方に吊下げられた水分保持体31を有している。このように、小便乾燥装置30は便器1(固液分離装置10及び発酵装置20の下方)の下方のスペースを利用して配置されている。
【0052】
水分保持体31は、不織布により形成された円環状である。このため、小便Fを良好に吸収することができ、かつ蒸発させることができる。水分保持体31の中央空間部にロープ31Aが挿通され、複数の水分保持体31が保持されている。ロープ31Aの最下端には、水分保持体31が抜け落ちないため、かつロープ31Aを垂直に吊下げるために錘31Bが連結されている。ロープ31Aは、固液分離装置10及び発酵装置20の側方に張り出した吊下げ部材32の間に張り渡された吊下げロープ31Bに連結されている。
【0053】
固液分離装置10によって大便Fと分離された小便Uは、分離板11の開口部12から直接的に水分保持体31に向けて落下し、水分保持体31に吸収される。水分保持体31は、吊下げられているため、空気との接触が行われ易く、水分保持体31に吸収された小便Uを便器1の下方のスペースで良好に蒸発させることができる。
【0054】
したがって、実施例の小便乾燥装置30は、スペースを有効利用し、無電源で小便を良好に蒸発させることができる。
【0055】
特に、水分保持体31は複数に分割されているため、各水分保持体31の間に空間を形成することができる。これにより、各水分保持体31の間に形成された空間に空気が流れ、各水分保持体31からの小便Uの蒸発が促進される。また、各水分保持体31の中央空間部にも空気が流れるため、さらに小便Uの蒸発が促進される。
【0056】
また、水分保持体31が分割されているため、直ちに小便Uが下方に位置する水分保持体31へ浸透していかない。このため、小便Uが最下端に位置する水分保持体31のみに集まらず、小便Uを各水分保持体31が分散して保持することができる。よって、小便Uの蒸発が各水分保持体31から行われ、蒸発効率を高めることができる。
【0057】
また、下方に吊下げられた水分保持体31は、小便乾燥装置30を収納する収納空間の底面42に接触するように吊下げられている。このため、水分保持体31に保持しきれずに底面42に流出した小便Uを他の水分保持体31が吸収し、蒸発させることができる。
【0058】
貯留槽40は、図1に示すように、発酵装置20の排出口26Aの下方に設けられている。この排出口26Aから排出される発酵室C内で発酵処理された処理済み排泄物である処理済み大便を貯留する。貯留槽40は、仕切り壁41によって、小便乾燥装置30の収納空間と区画されている。つまり、仕切り壁41は排出口26Aの下方に立設されている。これにより、小便乾燥装置30の水分保持体31から蒸発せずに底面42に流出した小便Uが貯留槽40に流れ込むことを防止しいる。このため、貯留槽40に貯留された処理済み大便が湿ってしまわず、その中に含まれる微生物が好気状態に保持することができるため、貯留槽40に貯留された状態でも発酵処理を促進することができる。
【0059】
貯留槽40の上方の床部材Gには、臭気を排出する排気パイプ50が連結されている。排気パイプ50には、図示しないファンが連結され、強制的に排気することができる。このため、固液分離装置10、発酵装置20及び小便乾燥装置30を収納し、貯留槽40を形成する空間の臭気を排出することができるとともに、小便乾燥装置30における小便Uの蒸発を促進させることができる。
【0060】
貯留槽40の上部側壁には、貯留槽40に処理済み大便が溜まった際に処理済み大便を搬出したり、固液分離装置10、発酵装置20及び小便乾燥装置30を点検したりするための点検口42が設けられている。点検口42には蓋部材42Aが取り付けられている。また、蓋部材42Aには、貯留槽40の貯留された処理済み大便に灰を混入させるための投入口43が設けられている。
【0061】
このように構成された実施例のトイレ設備は、以下のように使用され、排泄物が処理される。
【0062】
便器1の使用者が大便Fをした際、その後、使用者がレバーL1を起立状態に回動させる。すると、固液分離装置10により小便Uと分離され分離板11上に残存した大便Fは、押出板14によって分離板11の一端部11Fから押し出され、発酵装置20の受入口25Aから発酵室C内に落下する。レバーL1が起立状態に回動すると、発酵装置20の発酵槽21が設定角度(例えば、5度)だけ回転する。すると、発酵室C内に滞留している大便Fが、攪拌翼部24によって、上方へ移動する。この際、大便Fの一部は攪拌翼部24の上面から発酵室C内の下方に落下する。また、邪魔板部25に近い位置に堆積していた大便Fは、その邪魔板部25の排出口26A側へ落下する。このようにして、大便Fは、徐々に排出口26A側へ移動する。
【0063】
分離板11の一端部11Fから押し出された大便Fが発酵室C内に受け入れられた時点では、発酵槽21の回転は終了している。一方、小便Uは固液分離装置10の分離板11の開口部12から下方に落下し、水分保持体31に吸収される。その後、水分保持体31に吸収された小便Uは蒸発処理される。
【0064】
レバーL1が倒伏状態に回動されると、固液分離装置10の押出板14は、分離板11の他端部11B側に移動する。押出板14が分離板の一端部11Fと他端部11Bとの間を往復移動するともに、各除去部材16A、16Bも開口部12に沿って往復移動するため、開口部12に付着又は開口部12を閉鎖する大便Fは除去される。このため、その後に便器1が使用されて配設された小便Uは分離板Uの開口部12を良好に通過することができ、固液分離装置10は大便Fと小便Uとを良好に分離することができる。このように1つのレバー操作によって、固液分離装置10の押出板14の移動と発酵槽21の回転とを行なうことができる。
【0065】
便器1の使用が繰り返されることにより、発酵装置20の発酵室Cに受入口25Aから大便Fを受け入れ、排出口26Aから処理済み大便を排出することができる。つまり、この発酵装置20は、大便Fの受入、発酵処理及び排出を連続的に行なうことができる。また、発酵室C内に所定期間の間(例えば、1ヶ月間)滞留させることにより、大便Fを十分に発酵処理することができる。このように、このトイレ設備では、その使用者がレバーL1を操作することによって、無電源で排泄物の処理を行なうことができる。
【0066】
本発明は上記記載及び図面によって説明した実施例に限定されるものではく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)実施例では発酵装置をトイレ設備に適用したが、この発酵装置は家畜糞尿、家庭用生ゴミ等の固液混合物を発酵処理するものに適用することができる。その場合、発酵槽の大きさ等は発酵処理する処理物の量等に応じて変更される。
(2)実施例では、レバーを便器の使用者が人力により操作し、ワイヤーを牽引することで発酵装置を駆動させたが、伝達部材はワイヤーでなく、金属棒等でもよい。また、モーター等を利用して発酵装置を駆動させてもよい。
(3)実施例では、固液分離装置により小便と分離された大便(処理物)を発酵室内に受け入れて発酵処理しているが、固液分離装置を備えず、小便と大便とを発酵室内に受け入れて発酵処理をしてもよい。
(4)実施例では、挿入具の下辺をV字形に形成したが、薄板状であればV字形に形成しなくてもよい。
【符号の説明】
【0067】
20…発酵装置
21…発酵槽
22…回転機構
23…外殻部
24…攪拌翼部
25…邪魔板部
25A…受入口
26A…排出口
28…挿入具
C…発酵室
D…排水孔
【技術分野】
【0001】
本発明は発酵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には従来の発酵装置が開示されている。この発酵装置は、有機系の処理物である家畜糞尿を微生物により発酵処理するものであり、水平な回転軸を中心に回転可能に保持された発酵槽と、この発酵槽を回転させる回転機構とを具備している。この発酵槽は、家畜糞尿を発酵処理する発酵室を内部に設け、回転軸を中心にして円筒形状に形成された外殻部を有している。外殻部の内面には回転軸に対して回転方向に傾斜した板部材が取り付けられている。外殻部は、回転軸方向の一端に設けられ、発酵室内に家畜糞尿を受け入れる受入口を有している。また、外殻部は回転軸方向の他端に設けられ、発酵室内で発酵処理された家畜糞尿を排出する排出口を有している。
【0003】
この発酵装置では、発酵槽が回転することにより、発酵室内に取り付けられた板部材によって、受入口から発酵室内に受け入れた家畜糞尿が、所定の期間をかけて排出口側へ攪拌されながら搬送される。発酵室内に受け入れられた家畜糞尿は、所定の期間をかけて発酵室内に滞留するため、排出口から排出された際には、微生物により良好に発酵処理されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3013879号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来の発酵装置では、水平な回転軸を中心に発酵槽が回転するため、処理物の受入口から排出口への移動及び攪拌は、外殻部の内面に設けられた板部材によってのみ行われる。このため、発酵室内において、受入口側に処理物が追加されないと、排出口方向に処理物が移動しにくい。このように、発酵室内の処理物の量によって、処理物の発酵室内の滞留時間が大きく変わる虞がある。この場合、処理物の発酵処理の度合いがばらついてしまう。
【0006】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、処理物を良好に発酵処理することができる発酵装置を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の発酵装置は、人間の排泄物、家畜糞尿、家庭用生ゴミ等の有機系の処理物を微生物により発酵処理する発酵装置であって、
傾斜した回転軸を中心に回転可能に保持された発酵槽と、この発酵槽を回転させる回転機構とを具備し、
前記発酵槽は、前記処理物を発酵処理する発酵室を内部に設け、前記回転軸を中心にして軸対称に形成された外殻部と、この外殻部の内面から中心に向けて立ち上がり、前記回転軸方向に延びた帯状の攪拌翼部と、この外殻部の内面から中心に向けて立ち上がり、前記回転軸に直交する面を形成した内枠状の邪魔板部とを有し、
前記外殻部は、前記回転軸方向の上側の端部に設けられ、前記発酵室内に前記処理物を受け入れる受入口と、前記回転軸方向の下側の端部に設けられ、前記発酵室内で発酵処理された処理物を排出する排出口とを有していることを特徴とする。
【0008】
この発酵装置では、発酵槽が傾斜した回転軸を中心に回転可能に保持されているため、発酵室は受入口から排出口に向けて下り傾斜状態にされている。このため、発酵室内に受け入れられた処理物は、重力により排出口側へ移動する。一方、処理物は邪魔板部によって排出口側への移動が阻止される。このため、発酵室内に受入口から受け入れられた処理物は、直ちに排出口から排出されず、発酵室内に滞留し、その間に発酵処理が行なわれる。
【0009】
邪魔板部によって排出口側への移動が阻止された処理物は、発酵槽が回転機構により回転することにより、攪拌翼部により発酵室内の上方に押し上げられる。ある程度の高さに押し上げられた処理物は、攪拌翼部の上面から発酵室内の下方に落下する。この際、発酵室が下り傾斜状態にされているため、邪魔板部に近い位置に堆積していた処理物は、その邪魔板部の排出口側へ落下する。このように、発酵槽を回転させることにより発酵室内の処理物は、徐々に排出口側へ移動し、最終的には、排出口から排出される。このため、この発酵装置では、発酵室内の処理物の量に関わらず、発酵室に受け入れられた処理物を攪拌しながら順次排出口から排出することができ、処理物が発酵室内に滞留する時間のばらつきが少なく、連続的に処理物を発酵処理することができる。
【0010】
また、発酵槽の回転軸の傾斜角度を変更したり、攪拌翼部及び邪魔板部の数や形状等を変更したりすることにより、受入口から発酵室に受け入れられた処理物を排出口から排出するまでの発酵槽の回転数を調整することができる。つまり、処理物が発酵室内に滞留する時間を調整することができる。このため、所定時間の間、発酵室内に処理物を滞留させることができ、処理物を十分に発酵処理することができる。また、発酵槽が回転して、発酵室内で排泄物の落下が繰り返されることにより、処理物が攪拌されるため、処理物に含まれる微生物を好気状態に維持することができる。
【0011】
したがって、本発明の発酵装置は、処理物を良好に発酵処理することができる。
【0012】
前記外殻部には、前記発酵室内の液体が排出される排水孔が設けられ得る。この場合、発酵室内において、処理物に含まれている液体を排水孔から排出することができる。このため、発酵室内の処理物の攪拌を良好に行うことができ、微生物を好気状態に維持して発酵処理を良好に行なうことができる。
【0013】
前記排水孔は、前記邪魔板部より前記受入口側であり、この邪魔板部に沿ってスリット状に貫設され得る。この場合、発酵室が下り傾斜状態にされているため、処理物に含まれている液体は、邪魔板部に沿って、その受入口側に集まってくる。このため、この部分にスリット状に排水孔を貫設することにより、処理物に含まれている液体を良好に排出することができる。
【0014】
前記排水孔に挿入され、この排水孔を閉鎖する前記処理物を除去する挿入具を有し得る。この場合、排水孔が処理物により閉鎖されることを防止することができるため、処理物に含まれている液体を排水孔から良好に排出することができる。
【0015】
前記外殻部は円筒形状であり、前記排水孔はこの外殻部を一周するスリット状に形成されており、前記挿入具は前記排水孔に挿入して吊下げられ得る。この場合、スリット状の排水孔が吊下げられた挿入具を挿入した状態で発酵槽が回転するため、排水孔を閉鎖する処理物は、挿入具により順次、除去される。このため、排水孔から処理物に含まれている液体を良好に排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施例のトイレ設備を示す側面図である。
【図2】実施例の発酵装置を示す断面図である。
【図3】実施例の発酵装置の分解図である。
【図4】実施例の発酵装置の分解図である。
【図5】実施例の発酵装置の要部を示す断面図である。
【図6】実施例の発酵装置を回転機構側から見た側面図である。
【図7】図2の矢視X−X断面図である。
【図8】実施例の固液分離装置を示す側面図である。
【図9】実施例の固液分離装置を示す平面図である。
【図10】実施例の固液分離装置の要部を示す斜視図である。
【図11】実施例の固液分離装置の要部を示す断面図である。
【図12】実施例の固液分離装置を駆動部側から見た側面図である。
【図13】実施例の固液分離装置の除去部材を示す拡大図である。
【図14】実施例の固液分離装置において、押出板が分離板の一端部に位置した状態を示す側面図である。
【図15】実施例の小便乾燥装置が固液分離装置の下方に配置された状態を示す概略図である。
【図16】実施例の小便乾燥装置の水分保持体を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の発酵装置をトイレ設備に適用した実施例を図面を参照しつつ説明する。
【0018】
<実施例>
実施例のトイレ設備は、図1に示すように、便器1、固液分離装置10、発酵装置20、小便乾燥装置30及び貯留槽40を備えている。便器1は、非水洗式であり、便鉢2及びこの便鉢2に連通し、下方に向けて開口する便器排出口3を有している。また、便鉢2の上端開口部には、便座4及び便蓋5が回動可能に取り付けられている。便器1の便器排出口3は、床部材Gの開口部に連結されている。
【0019】
発酵装置20は、図2〜図7に示すように、発酵槽21と、この発酵槽21を回転させる回転機構22とを具備している。発酵槽21は傾斜した回転軸を中心に回転可能の保持されている。発酵槽21は、外殻部23と、攪拌翼部24と、邪魔板部25とを有している。床部材Gの下面には便器排出口3を挟んで一対のレール部材7が延びて設けられている。発酵装置20はレール部材7に係止してスライド可能に吊下げられ、固定されている。このため、発酵装置20は設置及びメンテナンスのための取外し等を容易に行なうことができる。
【0020】
外殻部23は、内部に発酵室Cを設け、回転軸を中心にして軸対称の円筒形状に形成されている。この外殻部23は、4つの円筒部材23Aを連結して形成されている。邪魔板部25は、各円筒部材23Aの一方の開口端から内側に延びて形成されている。この邪魔板部25は円環状であり、中心部に形成された開口部は、回転軸を中心とした円形状である。
【0021】
攪拌翼部24は、方形状であり、その一辺が円筒部材23Aの内周面に接している。また、この攪拌翼部24は、円筒部材23Aの内周面から中心に向けて立ち上がるように取り付けられている。この攪拌翼部24は、各円筒部材23Aの内周面に4つずつ取り付けられており、円筒部材23の中心軸から見て90度ずつ離れた内周面に配置されている。
【0022】
各円筒部材23Aは攪拌翼部24により連結され、外殻部23を形成している。この際、各攪拌翼部24が外殻部23の内面から中心に向かって立ち上がり、回転軸方向に延びる帯状となるように各円筒部材23Aは連結されている。また、各円筒部材23A同士は、隙間を空けて連結されている。
【0023】
外殻部23の一端側に位置する邪魔板部25の開口部は、外殻部23の受入口25Aを形成している。また、各円筒部材23A間に設けられた隙間は、邪魔板部25より受入口25A側に、邪魔板部25に沿って貫設されたスリット状の排水孔Dを形成している。
【0024】
外殻部23の他端側に位置する円筒部材23Aには、中央開口部を有する円環状の邪魔板部26が連結されている。この邪魔板部26の中央開口部は、外殻部23の排出口26Aを形成している。外殻部23の他端側に位置する円筒部材23Aの開口縁と邪魔板部26との間には隙間が形成されている。この隙間も邪魔板部26より受入口25A側に、邪魔板部26に沿って貫設されたスリット状の排水孔Dを形成している。外殻部23に設けられた排水孔Dは、固液分離装置10で分離しきれず、処理物である大便Fとともに発酵室C内に受け入れられた小便U(液体)を排出することができる。このため、発酵室C内の大便Fの攪拌を良好に行うことができ、発酵室C内の微生物を好気状態に維持して発酵処理を良好に行なうことができる。
【0025】
邪魔板部26には4つの方形状の接続部材27Aが固定されている。この接続部材27Aにより邪魔板部26と円盤状の端面部材27とが連結されている。端面部材27の中央部には、回転軸部22Aの一端部が連結されている。
【0026】
回転機構22は、発酵槽21の傾斜した回転軸を形成する回転軸部22A、ラチェット部22B及びレバーL1を有している。ラチェット部22Bには、第2ワイヤーW2の一端部が連結されている。また、第2ワイヤーW2の他端部は、後述するてこ部材19(図8参照)の他端部に連結されている。てこ部材19の一端部にはレバーL1に他端部が連結された第1ワイヤーW1の一端部が連結されている。このため、レバーL1を起立状態に回動させると、てこ部材19の他端部が下降し、第2ワイヤーW2は牽引される。第2ワイヤーW2が牽引されると、ラチェット部22Bは回転軸部22Aを一方向に設定角度(例えば、5度)だけ回転させる。
【0027】
第2ワイヤーW2の一端部側には、第2ワイヤーW2を挿通する第2コイルバネS2が設けられている。第2コイルバネS2は、第2ワイヤーW2を引き戻す方向に付勢している。このため、レバーL2を倒伏状態に回動させると、てこ部材19の他端部が上昇し、第2ワイヤーの牽引力がなくなるため、第2ワイヤーW2は引き戻される。この際、ラチェット部22Bは回転軸22Aを回転させず、発酵槽21は状態が維持される。
【0028】
回転軸部22Aの他端部はラチェット部22Bに保持されている。ラチェット部22は、回転軸部22Aを傾斜した状態に保持するように、床部材Gの下面に設けられたレール部材7にスライド可能に吊下げられ、固定された第1取付部材22Cに傾斜して取り付けられている。
【0029】
発酵槽21は、傾斜した回転軸部22Aの一端部を端面部材27の中央部に固定している。一方、受入口25Aの内周面には、発酵槽21の回転を案内する2つの案内部材29が当接されている。これら案内部材29は床部材Gの下面に設けられたレール部材7にスライド可能に吊下げられ、固定された第2取付部材29Aに固定されている。
【0030】
このようにして床部材Gの下方に配置された発酵槽21は、外殻部23の回転軸方向の上側の端部に受入口25Aが配置され、回転軸方向の下側の端部に排出口26Aが配置される。つまり、発酵室Cは、受入口25Aから排出口26Aに向けて下り傾斜状態にされる。また、外殻部23の受入口25Aには、後述する分離板11の一端部11Fが挿入されている。
【0031】
外殻部23に設けられた排水孔Dの上端位置には、床部材Gの下面に設けられたレール部材7にスライド可能に係止し、固定された吊下部材8から垂下した挿入具28の下端部が挿入されている。挿入具28は下辺がV字形に形成された薄板状である。発酵槽21が回転すると、排水孔Dも挿入具28に沿って回転するため、排水孔Dを閉鎖する大便Fは、挿入具28により順次、除去される。このため、排水孔Dから大便Fに含まれている小便Uを良好に排出することができる。
【0032】
このように構成された発酵装置20は、発酵室Cが受入口25Aから排出口26Aに向けて下り傾斜状態にされている。このため、発酵室C内に受け入れられた処理物である大便Fは、重力により排出口26A側へ移動する。排出口26A側に移動した大便Fは、邪魔板部25によってそれより下方への移動が阻止される。このため、発酵室C内に受入口25Aから受け入れられた大便Fは、直ちに排出口26Aから排出されず、発酵室C内に滞留し、その間に発酵処理が行なわれる。
【0033】
邪魔板部25によって排出口26A側への移動が阻止された大便Fは、発酵槽21が回転機構22により回転することにより、攪拌翼部24により発酵室C内の上方に押し上げられる。ある程度の高さに押し上げられた大便Fは、図2及び図7に示すように、攪拌翼部24の上面から発酵室C内の下方に落下する。この際、発酵室Cが下り傾斜状態にされているため、邪魔板部25に近い位置に堆積していた大便Fは、その邪魔板部25の排出口26A側へ落下する。このように、発酵槽21を回転させることにより発酵室C内の大便Fは、徐々に排出口26A側へ移動し、最終的には、排出口26Aから排出される。このため、この発酵装置20では、発酵室C内の大便Fの量に関わらず、発酵室Cに受け入れられた大便Fを攪拌しながら順次排出口から排出することができ、大便Fが発酵室C内に滞留する時間のばらつきが少なく、連続的に大便Fを発酵処理することができる。
【0034】
また、発酵槽21の回転軸の傾斜角度を変更したり、攪拌翼部24及び邪魔板部25の数や形状等を変更したりすることにより、受入口25Aから発酵室Cに受け入れられた大便Fを排出口26Aから排出するまでの発酵槽21の回転数を調整することができる。つまり、大便Fが発酵室C内に滞留する時間を調整することができる。このため、所定期間の間(例えば、1ヶ月間)、発酵室C内に大便Fを滞留させることができ、大便Fを十分に発酵処理することができる。また、発酵槽21が回転して、発酵室C内で大便Fの落下が繰り返されることにより、大便Fが攪拌されるため、大便Fに含まれる微生物が好気状態に維持され、大便Fを良好に発酵処理することができる。
【0035】
したがって、実施例の発酵装置は、処理物である大便を良好に発酵処理することができる。
【0036】
また、この発酵装置20では、菌床を収納せず、発酵室Cに大便Fのみを受け入れて発酵処理するため、菌床を収納するための容積を必要としない。また、発酵室C内の大便Fは、発酵処理後に排出口26Aから貯留槽40に自動的に排出されるため、発酵室C内から発酵処理済の大便Fを取り出す手間を必要としない。このため、このトイレ設備は、小型化を図ることができ、メンテナンスを軽減することができる。
【0037】
また、発酵室Cが下り傾斜状態にされているため、発酵室C内に受け入れられた小便Uは、邪魔板部25の受入口25A側に集まってくる。このため、この部分に貫設されたスリット状の排水孔Dにより、小便Uを良好に排出することができる。このようにして、発酵室C内の水分(小便U)をさらに少なくすることができるため、大便Fの攪拌を良好に行え、微生物による処理に適した好気状態に良好に保つことができる。さらに微生物がより繁殖しやすい水分環境に維持することができる。よって、大便Fの発酵処理をさらに良好に行なうことができる。
【0038】
また、レバーL1を人力により操作することにより、無電源で発酵装置20を回転させることができる。また、便器1を使用した後にその使用者がレバーL1の操作をすることにすれば、その度に発酵槽21を設定角度(例えば、5度)だけ回転させることができる。これにより、便器1の使用頻度に応じて発酵槽21を回転させることができる。また、上述したように、発酵槽21が回転することによって発酵室C内の大便Fが受入口25Aから排出口26Aへ移動し、排出口26Aから排出される。また、大便Fを均等に混合・攪拌することができ、適量の大便Fを発酵室C内に滞留させることができるため、発酵処理を良好に行なうことができる。また、発酵室C内の内部空間を有効に活用することができる。
【0039】
固液分離装置10は、図8〜図14に示すように、分離板11、搬送機構13及び除去部材16A、16Bを有している。固液分離装置10はレール部材7に係止してスライド可能に吊下げられ、固定されている。このため、固液分離装置10は設置及びメンテナンスのための取外し等を容易に行なうことができる。
【0040】
分離板11は、平板状であり、便器排出口3の下方に水平状態で配置されている。分離板11には、スリット状に貫設された複数の開口部12が等間隔に並設されている。これら各開口部12は分離板11の一端部11Fから他端部11Bの縦方向に延びている。
【0041】
分離板11が便器排出口3の下方に配置されているため、便器1を利用して人間が排泄し、便器排出口3から排出された排泄物は、分離板11の上面に受けられる。分離板11の上面に受けられた排泄物のうち、小便Uは開口部12を下方へ通過し、大便Fは分離板11上に残存する。このように、固液分離装置10の分離板11によって、排泄物は小便Uと大便Fに分離される。
【0042】
搬送機構13は押出板14及び駆動部15を有している。押出板14は、帯状であり、分離板11の縦方向である一端部11Fと他端部11Bとの間を往復移動可能である。押出板14は、この移動方向に対して垂直方向、つまり分離板11の横方向に延びている。押出板14の両端は、分離板11の横方向の両端部11L、11Rの近傍まで延びている。押出板14の両端部には、一対の第1支持板17Aが分離板11の縦方向に沿って立設されている。この第1支持板17Aは、上端部に軸部14Aが設けられ、押出板14の上部を軸支している。また、第1支持板17Aは、一片が分離板11の一端部11F側に向かって下降して形成された傾斜辺17Sを有している。この傾斜辺17Sに押出板14の裏面が当接している。このため、押出板14は、分離板11の一端部11F側に向かって下降する傾斜状態に配置されている。また、第1支持板17Aに軸支された押出板14は、分離板11の一端部11Fから他端部11Bへ移動する方向に対して、後方へ回動可能である。
【0043】
除去部材16Aは第1支持板17Aの下辺の一部から下方に延びて一体に形成されている。この除去部材16Aは開口部12に挿通されて下方に突出している。また、除去部材16Bは、平板状に形成されており、一対の第1支持板17Aの間に形成された複数の各開口部12の夫々に挿通されて下方に突出している。これら各除去部材16Bの上端には、第2支持板17Bが一体に形成されている。この第2支持部材17Bは、分離板11の一端部11F側に位置する上端角部17Cを押出板14の裏面に当接させている。
【0044】
第1支持板17Aに一体に形成された除去部材16A及び第2支持板17Bに一体に形成されている除去部材16Bは、分離板11より下方で棒状の連結部材15Lに貫通されて連結されている。各除去部材16A、16Bは、スリット状に形成された各開口部12に挿通された状態で、各開口部12に沿って往復移動可能である。また、各除去部材16A、16Bは、連結部材15L及び第1支持部材17Aを介して押出板14に連結されて一体にされている。このため、押出板14及び各除去部材16A、16Bは一緒に分離板11の一端部11Fと他端部11Bとの間を往復移動する。
【0045】
駆動部15は、一対の第1リンク部材15A及び一対の第2リンク部材15Bを有している。各第1リンク部材15Aの一端部はジョイント軸15Jの両端部に連結されている。各第1リンク部材15Aは、ジョイント軸15Jが回転すると共に、ジョイント軸15Jを中心に回動可能である。ジョイント軸15Jの両端部は、床部材Gの下方に設けられた一対の保持板18に保持されている。この一対の保持板18は、分離板11より上方であって、分離板11の横幅と略同じ間隔を有して配置されている。各第1リンク部材15Aの他端部は、ジョイント部材15Kにより各第2リンク部材15Bの一端部に連結されている。各第2リンク部材15Bの他端部は連結部材15Lに連結されている。
【0046】
ジョイント軸15Jの中央部には、てこ部材19の中心部が固定されている。ジョイント軸15Jは、てこ部材19のジョイント軸15Jを中心とした回動に伴って回転する。てこ部材19の一端部には第1ワイヤーW1の一端部が連結されている。第1ワイヤーW1の他端部は床部材Gの上面に固定されたレバーL1に連結されている。レバーL1は、床部材Gに固定された支点部材L2に軸支され、床部材G上で起伏可能である。てこ部材19の他端部には、後述する発酵装置20の回転機構22のラチェット部22Bに一端部が連結された第2ワイヤーW2の他端部が連結されている。
【0047】
このように構成された駆動部15は、レバーL1を起立状態に回動させると、図14に示すように、第1ワイヤーW1が上方に牽引される。すると、てこ部材19の一端部が上方に引き上げられる。これにより、ジョイント軸15Jが一方向に回転する。すると、各第1リンク部材15Aがジョイント軸15Jを中心に一方向に回動し、各ジョイント部材15Kが分離板11方向に移動する。すると、各第2リンク部材15Bが押出板14を分離板11の一端部11F側へ移動させる。また、押出板14と一体にされた各除去部材16A、16Bも開口部12に沿って、分離板11の一端部11F側に移動する。このため、各除去部材16A、16Bが開口部12に付着又は開口部12を閉鎖する大便Fを除去しながら、押出板14が分離板11上に残存した大便Fを分離板11の一端部11Fから押し出し、発酵装置20の受入口25Aに落下させることができる。
【0048】
このように、小便Uと分離されて分離板11上に残存した大便Fを押出板14によって分離板11の一端部11Fから押し出すため、発酵装置20の発酵室C内の水分(小便)を少なくすることができる。このため、発酵室C内において、大便Fの攪拌を良好に行うことができ、微生物を好気状態に維持することができる。よって、大便Fの発酵処理を良好に行なうことができる。また、各除去部材16A、16Bによって、開口部12に付着又は開口部12を閉鎖する大便Fを良好に除去することができる。このため、開口部12は小便Uを良好に通過させることができる。
【0049】
ジョイント軸15Jには第1コイルバネS1が外嵌されている。この第1コイルバネS1は、ジョイント軸15Jを他方向に回転させるように付勢している。このため、レバーL1を倒伏状態に回動させると、第1ワイヤーW1がてこ部材19の一端部を上方に引き上げる力がなくなり、図8に示すように、第1コイルバネS1の付勢力により、ジョイント軸15Jは他方向に回転する。すると、各第1リンク部材15Aがジョイント軸15Jを中心に他方向に回動し、各ジョイント部材15Kが分離板11から離れる方向に移動する。すると、各第2リンク部材15Bが押出板14を分離板11の他端部11B側に移動させる。また、押出板14と一体に形成された各除去部材16A、16Bも開口部12に沿って、分離板11の他端部11B側に移動する。この際、仮に分離板11上に大便Fが残存していたとしても、押出板14は、分離板11の一端部11Fから他端部11Bに移動する際に分離板11上の大便Fに当接すると、移動方向に対して後方に回動するため、大便Fを分離板11の他端部11Bから押し出すことはなく、他端部11Bに戻ることができる。また、各除去部材16A、16Bは、開口部12に沿って分離板11の他端部11B側に移動する際も、開口部12に付着又は開口部12を閉鎖する大便Fを除去することができる。このため、開口部12は小便Uを良好に通過させることができる。
【0050】
したがって、固液分離装置10は、大便Fと小便Uとの分離及び大便Fの搬送を良好に行なうことができる。
【0051】
小便乾燥装置30は、図1、図15及び図16に示すように、固液分離装置10の分離板11及び発酵装置20の下方に吊下げられた水分保持体31を有している。このように、小便乾燥装置30は便器1(固液分離装置10及び発酵装置20の下方)の下方のスペースを利用して配置されている。
【0052】
水分保持体31は、不織布により形成された円環状である。このため、小便Fを良好に吸収することができ、かつ蒸発させることができる。水分保持体31の中央空間部にロープ31Aが挿通され、複数の水分保持体31が保持されている。ロープ31Aの最下端には、水分保持体31が抜け落ちないため、かつロープ31Aを垂直に吊下げるために錘31Bが連結されている。ロープ31Aは、固液分離装置10及び発酵装置20の側方に張り出した吊下げ部材32の間に張り渡された吊下げロープ31Bに連結されている。
【0053】
固液分離装置10によって大便Fと分離された小便Uは、分離板11の開口部12から直接的に水分保持体31に向けて落下し、水分保持体31に吸収される。水分保持体31は、吊下げられているため、空気との接触が行われ易く、水分保持体31に吸収された小便Uを便器1の下方のスペースで良好に蒸発させることができる。
【0054】
したがって、実施例の小便乾燥装置30は、スペースを有効利用し、無電源で小便を良好に蒸発させることができる。
【0055】
特に、水分保持体31は複数に分割されているため、各水分保持体31の間に空間を形成することができる。これにより、各水分保持体31の間に形成された空間に空気が流れ、各水分保持体31からの小便Uの蒸発が促進される。また、各水分保持体31の中央空間部にも空気が流れるため、さらに小便Uの蒸発が促進される。
【0056】
また、水分保持体31が分割されているため、直ちに小便Uが下方に位置する水分保持体31へ浸透していかない。このため、小便Uが最下端に位置する水分保持体31のみに集まらず、小便Uを各水分保持体31が分散して保持することができる。よって、小便Uの蒸発が各水分保持体31から行われ、蒸発効率を高めることができる。
【0057】
また、下方に吊下げられた水分保持体31は、小便乾燥装置30を収納する収納空間の底面42に接触するように吊下げられている。このため、水分保持体31に保持しきれずに底面42に流出した小便Uを他の水分保持体31が吸収し、蒸発させることができる。
【0058】
貯留槽40は、図1に示すように、発酵装置20の排出口26Aの下方に設けられている。この排出口26Aから排出される発酵室C内で発酵処理された処理済み排泄物である処理済み大便を貯留する。貯留槽40は、仕切り壁41によって、小便乾燥装置30の収納空間と区画されている。つまり、仕切り壁41は排出口26Aの下方に立設されている。これにより、小便乾燥装置30の水分保持体31から蒸発せずに底面42に流出した小便Uが貯留槽40に流れ込むことを防止しいる。このため、貯留槽40に貯留された処理済み大便が湿ってしまわず、その中に含まれる微生物が好気状態に保持することができるため、貯留槽40に貯留された状態でも発酵処理を促進することができる。
【0059】
貯留槽40の上方の床部材Gには、臭気を排出する排気パイプ50が連結されている。排気パイプ50には、図示しないファンが連結され、強制的に排気することができる。このため、固液分離装置10、発酵装置20及び小便乾燥装置30を収納し、貯留槽40を形成する空間の臭気を排出することができるとともに、小便乾燥装置30における小便Uの蒸発を促進させることができる。
【0060】
貯留槽40の上部側壁には、貯留槽40に処理済み大便が溜まった際に処理済み大便を搬出したり、固液分離装置10、発酵装置20及び小便乾燥装置30を点検したりするための点検口42が設けられている。点検口42には蓋部材42Aが取り付けられている。また、蓋部材42Aには、貯留槽40の貯留された処理済み大便に灰を混入させるための投入口43が設けられている。
【0061】
このように構成された実施例のトイレ設備は、以下のように使用され、排泄物が処理される。
【0062】
便器1の使用者が大便Fをした際、その後、使用者がレバーL1を起立状態に回動させる。すると、固液分離装置10により小便Uと分離され分離板11上に残存した大便Fは、押出板14によって分離板11の一端部11Fから押し出され、発酵装置20の受入口25Aから発酵室C内に落下する。レバーL1が起立状態に回動すると、発酵装置20の発酵槽21が設定角度(例えば、5度)だけ回転する。すると、発酵室C内に滞留している大便Fが、攪拌翼部24によって、上方へ移動する。この際、大便Fの一部は攪拌翼部24の上面から発酵室C内の下方に落下する。また、邪魔板部25に近い位置に堆積していた大便Fは、その邪魔板部25の排出口26A側へ落下する。このようにして、大便Fは、徐々に排出口26A側へ移動する。
【0063】
分離板11の一端部11Fから押し出された大便Fが発酵室C内に受け入れられた時点では、発酵槽21の回転は終了している。一方、小便Uは固液分離装置10の分離板11の開口部12から下方に落下し、水分保持体31に吸収される。その後、水分保持体31に吸収された小便Uは蒸発処理される。
【0064】
レバーL1が倒伏状態に回動されると、固液分離装置10の押出板14は、分離板11の他端部11B側に移動する。押出板14が分離板の一端部11Fと他端部11Bとの間を往復移動するともに、各除去部材16A、16Bも開口部12に沿って往復移動するため、開口部12に付着又は開口部12を閉鎖する大便Fは除去される。このため、その後に便器1が使用されて配設された小便Uは分離板Uの開口部12を良好に通過することができ、固液分離装置10は大便Fと小便Uとを良好に分離することができる。このように1つのレバー操作によって、固液分離装置10の押出板14の移動と発酵槽21の回転とを行なうことができる。
【0065】
便器1の使用が繰り返されることにより、発酵装置20の発酵室Cに受入口25Aから大便Fを受け入れ、排出口26Aから処理済み大便を排出することができる。つまり、この発酵装置20は、大便Fの受入、発酵処理及び排出を連続的に行なうことができる。また、発酵室C内に所定期間の間(例えば、1ヶ月間)滞留させることにより、大便Fを十分に発酵処理することができる。このように、このトイレ設備では、その使用者がレバーL1を操作することによって、無電源で排泄物の処理を行なうことができる。
【0066】
本発明は上記記載及び図面によって説明した実施例に限定されるものではく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)実施例では発酵装置をトイレ設備に適用したが、この発酵装置は家畜糞尿、家庭用生ゴミ等の固液混合物を発酵処理するものに適用することができる。その場合、発酵槽の大きさ等は発酵処理する処理物の量等に応じて変更される。
(2)実施例では、レバーを便器の使用者が人力により操作し、ワイヤーを牽引することで発酵装置を駆動させたが、伝達部材はワイヤーでなく、金属棒等でもよい。また、モーター等を利用して発酵装置を駆動させてもよい。
(3)実施例では、固液分離装置により小便と分離された大便(処理物)を発酵室内に受け入れて発酵処理しているが、固液分離装置を備えず、小便と大便とを発酵室内に受け入れて発酵処理をしてもよい。
(4)実施例では、挿入具の下辺をV字形に形成したが、薄板状であればV字形に形成しなくてもよい。
【符号の説明】
【0067】
20…発酵装置
21…発酵槽
22…回転機構
23…外殻部
24…攪拌翼部
25…邪魔板部
25A…受入口
26A…排出口
28…挿入具
C…発酵室
D…排水孔
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人間の排泄物、家畜糞尿、家庭用生ゴミ等の有機系の処理物を微生物により発酵処理する発酵装置であって、
傾斜した回転軸を中心に回転可能に保持された発酵槽と、この発酵槽を回転させる回転機構とを具備し、
前記発酵槽は、前記処理物を発酵処理する発酵室を内部に設け、前記回転軸を中心にして軸対称に形成された外殻部と、この外殻部の内面から中心に向けて立ち上がり、前記回転軸方向に延びた帯状の攪拌翼部と、この外殻部の内面から中心に向けて立ち上がり、前記回転軸に直交する面を形成した内枠状の邪魔板部とを有し、
前記外殻部は、前記回転軸方向の上側の端部に設けられ、前記発酵室内に前記処理物を受け入れる受入口と、前記回転軸方向の下側の端部に設けられ、前記発酵室内で発酵処理された処理物を排出する排出口とを有していることを特徴とする発酵装置。
【請求項2】
前記外殻部には、前記発酵室内の液体が排出される排水孔が設けられていることを特徴とする請求項1記載の発酵装置。
【請求項3】
前記排水孔は、前記邪魔板部より前記受入口側であり、この邪魔板部に沿ってスリット状に貫設されていることを特徴とする請求項1記載の発酵装置。
【請求項4】
前記排水孔に挿入され、この排水孔を閉鎖する前記処理物を除去する挿入具を有していることを特徴とする請求項2又は3記載の発酵装置。
【請求項5】
前記外殻部は円筒形状であり、前記排水孔はこの外殻部を一周するスリット状に形成されており、前記挿入具は前記排水孔に挿入して吊下げられていることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項記載の発酵装置。
【請求項1】
人間の排泄物、家畜糞尿、家庭用生ゴミ等の有機系の処理物を微生物により発酵処理する発酵装置であって、
傾斜した回転軸を中心に回転可能に保持された発酵槽と、この発酵槽を回転させる回転機構とを具備し、
前記発酵槽は、前記処理物を発酵処理する発酵室を内部に設け、前記回転軸を中心にして軸対称に形成された外殻部と、この外殻部の内面から中心に向けて立ち上がり、前記回転軸方向に延びた帯状の攪拌翼部と、この外殻部の内面から中心に向けて立ち上がり、前記回転軸に直交する面を形成した内枠状の邪魔板部とを有し、
前記外殻部は、前記回転軸方向の上側の端部に設けられ、前記発酵室内に前記処理物を受け入れる受入口と、前記回転軸方向の下側の端部に設けられ、前記発酵室内で発酵処理された処理物を排出する排出口とを有していることを特徴とする発酵装置。
【請求項2】
前記外殻部には、前記発酵室内の液体が排出される排水孔が設けられていることを特徴とする請求項1記載の発酵装置。
【請求項3】
前記排水孔は、前記邪魔板部より前記受入口側であり、この邪魔板部に沿ってスリット状に貫設されていることを特徴とする請求項1記載の発酵装置。
【請求項4】
前記排水孔に挿入され、この排水孔を閉鎖する前記処理物を除去する挿入具を有していることを特徴とする請求項2又は3記載の発酵装置。
【請求項5】
前記外殻部は円筒形状であり、前記排水孔はこの外殻部を一周するスリット状に形成されており、前記挿入具は前記排水孔に挿入して吊下げられていることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項記載の発酵装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2011−147871(P2011−147871A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−10463(P2010−10463)
【出願日】平成22年1月20日(2010.1.20)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月20日(2010.1.20)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】
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