説明

発電・空調システム

【課題】停電により商用電源からの電力供給が停止されている状態にあっても、発電機能付きエンジン駆動式ヒートポンプ装置を駆動して空調を行う。
【解決手段】エンジンに交流発電機と圧縮機を連動連結した発電機能付きエンジン駆動式ヒートポンプ装置2を商用電源10からの電力供給により起動し、圧縮機からの冷媒を室外側熱交換器および室内側熱交換器に供給するとともに、発電機能付きエンジン駆動式ヒートポンプ装置2で発電した交流電力および商用電源10からの電力を空調機2や電力負荷に供給して空調を行う。停電時には、系外エンジン30を起動して系外発電機31で発電し、その発電電力の供給により、発電機能付きエンジン駆動式ヒートポンプ装置2を起動し、通常時と同様に空調を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンに発電機および圧縮機を連動連結した発電機能付きエンジン駆動式ヒートポンプ装置と、圧縮機からの冷媒を供給する室外側熱交換器と、室内側熱交換器とを備え、商用電源からの電力によってエンジンを起動するとともに、発電機の発電電力と商用電源からの電力を室外側熱交換器の室外ファン、室内側熱交換器の室内ファンおよびその他の電力負荷に供給可能に構成した発電・空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のシステムでは、従来、エンジンに発電機と圧縮機とが連動連結されて発電機能付きエンジン駆動式ヒートポンプ装置が構成され、圧縮機により、室外側熱交換器と室内側熱交換器とにわたって循環させるように冷媒を供給して空調を行い、その一方で、発電機で発電した電力を、室外側熱交換器の冷却用ファンのファンモータやエンジンの冷却水ポンプに供給し、更に、建物内の照明などのその他の電力負荷に供給するように構成している(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2007−209081号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来例の場合、エンジン始動用セルモータへは商用電源からの電力を供給しており、停電により商用電源からの電力供給が停止されている状態にあっては、エンジン始動用セルモータを作動できず、エンジンを始動できなくて圧縮機を作動できず、空調を行うことができない不都合があった。
【0004】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、請求項1に係る発明は、停電により商用電源からの電力供給が停止されている状態にあっても、発電機能付きエンジン駆動式ヒートポンプ装置を駆動して空調を行うことができるようにすることを目的とし、請求項2に係る発明は、発電機能付きエンジン駆動式ヒートポンプ装置での発電電力を十分に活用して省エネルギー性を向上できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る発明は、上述のような目的を達成するために、
エンジンに発電機および圧縮機を連動連結した発電機能付きエンジン駆動式ヒートポンプ装置と、
室外ファンを備えるとともに前記圧縮機に接続されて前記圧縮機からの冷媒を供給する室外側熱交換器と、
室内ファンを備えるとともに前記圧縮機に接続されて前記圧縮機からの冷媒を供給する室内側熱交換器とを備え、
前記発電機に商用電源からの電力を前記エンジンに供給して起動可能に構成するとともに、前記発電機の発電電力と前記商用電源からの電力を前記室外ファン、前記室内ファンおよびその他の電力負荷に供給可能に構成した発電・空調システムにおいて、
起動用電源と排熱回収装置とを備えた系外エンジンと、
前記系外エンジンに連動連結されて発電する系外発電機と、
前記商用電源の停電を検出して停電信号を出力する停電検出手段とを備え、
前記停電検出手段からの停電信号に応答して前記商用電源との連系を遮断するとともに前記系外発電機の電力を前記発電機能付きエンジン駆動式ヒートポンプ装置に供給可能に構成する。
【0006】
(作用・効果)
請求項1に係る発電・空調システムの構成によれば、通常時は、商用電源からの電力によって発電機能付きエンジン駆動式ヒートポンプ装置のエンジンを起動し、圧縮機および発電機を駆動するとともに、室外ファン、室内ファンおよびその他の電力負荷に発電機の発電電力と商用電源からの電力を供給して空調を行うことができる。一方、停電により商用電源からの電力供給が停止されたときには、そのことを停電検出手段で検出し、商用電源との連系を遮断するとともに系外発電機の電力を発電機能付きエンジン駆動式ヒートポンプ装置に供給し、そのエンジンを起動し、圧縮機および発電機を駆動するとともに、室外ファン、室内ファンおよびその他の電力負荷に発電機の発電電力と商用電源からの電力を供給して空調を行うことができる。
したがって、停電により商用電源からの電力供給が停止されている状態にあっても、発電機能付きエンジン駆動式ヒートポンプ装置を駆動して空調を行うことができる。
【0007】
請求項2に係る発明は、前述のような目的を達成するために、
請求項1に記載の発電・空調システムにおいて、
発電機から供給される発電電力を交流電力に変換するとともにその交流電力の周波数を調整し、かつ、外部からの供給電力量が一定になるように供給発電電力量を調整するインバータ装置と、
系外発電機から供給される発電電力を交流電力に変換するとともにその交流電力の周波数を調整する系外インバータ装置とを備えて構成する。
【0008】
(作用・効果)
通常時においては、インバータ装置により、発電機から供給される発電電力を交流電力に変換するとともにその交流電力の周波数を調整しながら商用電源からの供給電力量が一定になるように発電機の発電電力の供給量を調整し、一方、停電時においては、系外インバータ装置により、系外発電機から供給される発電電力を交流電力に変換するとともにその交流電力の周波数を調整し、かつ、インバータ装置により、系外発電機からの供給電力量が一定になるように発電機の発電電力の供給量を調整する。
したがって、通常時の商用電源や停電時の系外発電機といった外部からの供給電力量を一定にしながら、発電機能付きエンジン駆動式ヒートポンプ装置の発電機の発電電力量を調整することで電力負荷の負荷変動に対して対応するから、圧縮機とともに発電機を駆動するために発電効率に優れる発電機能付きエンジン駆動式ヒートポンプ装置による発電電力を十分に活用でき、省エネルギー性を向上できる。
また、系外発電機からの電力を、系外インバータ装置により周波数を調整しながら供給するから、電力負荷の負荷変動に伴う周波数変動を抑えることができ、発電機能付きエンジン駆動式ヒートポンプ装置の発電機を安定して運転できる。すなわち、発電機能付きエンジン駆動式ヒートポンプ装置では、通常の商用電源との連系状態で停電が発生したときに、保安員の安全確保のために、停電によって生じる周波数の変動を検知して発電機の駆動を停止するように構成される。系外発電機からの電力を供給している状態で電力負荷の変動によって周波数が変動すると停電時と同様に発電機の駆動が停止されることになるが、上述のように、系外インバータ装置により電力負荷の負荷変動に伴う周波数変動を抑えるから、発電機の駆動停止を招かずに発電機を安定して運転できるのである。
【発明の効果】
【0009】
以上の説明から明らかなように、請求項1に係る発電・空調システムによれば、通常時は、商用電源からの電力によって発電機能付きエンジン駆動式ヒートポンプ装置のエンジンを起動し、圧縮機および発電機を駆動するとともに、室外ファン、室内ファンおよびその他の電力負荷に発電機の発電電力と商用電源からの電力を供給して空調を行うことができる。一方、停電により商用電源からの電力供給が停止されたときには、そのことを停電検出手段で検出し、商用電源との連系を遮断するとともに系外発電機の電力を発電機能付きエンジン駆動式ヒートポンプ装置に供給し、そのエンジンを起動し、圧縮機および発電機を駆動するとともに、室外ファン、室内ファンおよびその他の電力負荷に発電機の発電電力と商用電源からの電力を供給して空調を行うことができる。
したがって、停電により商用電源からの電力供給が停止されている状態にあっても、発電機能付きエンジン駆動式ヒートポンプ装置を駆動して空調を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【0011】
図1は、本発明に係る発電・空調システムの実施例を示す電気系統主体の概略構成図であり、建物の屋上などに3台の発電機能付きエンジン駆動式ヒートポンプ装置1が設置され、発電機能付きエンジン駆動式ヒートポンプ装置1それぞれに、建物内に設けられた5台の室内空調機2が冷媒回路3を介して接続されている。
【0012】
また、発電機能付きエンジン駆動式ヒートポンプ装置1それぞれにインバータ装置4および遮断器5を介して単相3線の電力線6が接続されている。
電力線6がスコットトランス7を介して三相3線の外部電源側電力線8に接続され、その外部電源側電力線8に商用電源用遮断器9を介して商用電源10が接続されている。
外部電源側電力線8に三相負荷11が接続され、一方、電力線6に他の電力負荷としての単相負荷12や照明負荷13などが接続されるとともに空調機2の付帯電気機器が接続されている。
【0013】
発電機能付きエンジン駆動式ヒートポンプ装置1それぞれは、図2の概略構成図に示すように、都市ガスを燃料とするエンジン14の出力軸の一方に交流発電機15が連動連結されるとともに、出力軸の他方に圧縮機16が連動連結されて構成されている。
また、エンジン14を設置したエンジンハウジング17に2個の冷却用の室外ファン18を備えた室外側熱交換器19が設けられ、更に、室外ファン18を駆動する電動モータ20とエンジン冷却用の冷却水ポンプ21と、交流発電機15で発電した交流電力を直流電力に変換する発電電力用コンバータ22を設けて構成されている。
発電電力用コンバータ22からの発電電力線23がインバータ装置4に接続され、交流電力から変換した直流電力を交流電力に変換するとともに、その交流電力の周波数を調整するように構成されている。
【0014】
空調機2それぞれは、室内側熱交換器24と、電動モータ25によって駆動する室内ファン26とから構成され、電動モータ25などの付帯電気機器に電力線6が接続されている。
圧縮機16に冷媒回路3が接続され、その冷媒回路3に、冷媒流路を切り替える四方弁27、室外側熱交換器19、膨張弁28および室内側熱交換器24が介装され、冷媒流路を切り替えることにより、空調としての冷房または暖房を行うことができるように構成されている。
【0015】
電力線6に、スコットトランス7を介して供給される電力の電流を検出する電流センサ29が付設され、その電流センサ29とインバータ装置4が連系され、発電機能付きエンジン駆動式ヒートポンプ装置1の交流発電機15から供給される発電電力の周波数を調整するとともに外部からの供給電力量が一定になるようにエンジン14への燃料供給量を調整し、交流発電機15の供給発電電力量を調整するように構成されている。
【0016】
上記構成により、通常時には、商用電源10からの電力によってエンジン14を起動し、かつ、インバータ装置4により、交流発電機15から供給される発電電力の周波数を調整しながら商用電源10から一定の電力供給を受け、負荷変動を交流発電機15の発電電力量の制御によって吸収しながら空調を行うとともに、商用電源10および交流発電機15からの電力を付帯機器や外部負荷に供給できるようになっている。
【0017】
系外エンジン30に系外発電機31が連動連結され、系外発電機31と外部電源側電力線8とが系外発電機用遮断器32および系外インバータ装置33を介して接続されている。系外インバータ装置33は、系外発電機31から供給される発電電力を交流に変換するとともにその周波数を調整するようになっている。系外エンジン30のセルモータ34に起動用電源としてのバッテリ35が接続され、独立して系外エンジン30を駆動し、系外発電機31を駆動して発電電力が得られるように構成されている。
【0018】
また、系外エンジン30の冷却水循環流路に第1の熱交換器36が設けられ、一方、系外エンジン30の排ガス流路に第2の熱交換器37が設けられ、それらの第1および第2の熱交換器36,37によって排熱回収手段38が構成され、系外エンジン30の駆動時に排出される高温のエンジン冷却水および排気ガスとの熱交換によりエンジン排熱を回収できるように構成されている。第1の熱交換器36で回収される熱は、吸収冷凍機を介して冷水などを取り出すのに利用され、第2の熱交換器37で回収される熱は、貯湯タンクなどに高温の湯として貯め、給湯などに利用される。
【0019】
外部電源側電力線8において、商用電源10との接続箇所の近くに、電力検出によって停電を検出する停電検出手段としての第1の電力計39が付設され、一方、系外発電機31との接続箇所近くに、電力を検出する第2の電力計40が付設されている。
第1および第2の電力計39,40がコントローラ41に接続され、そのコントローラ41が、セルモータ34と、系外エンジン30への燃料供給量を調整する流量調整弁(スロットル)42に接続されている。
【0020】
これにより、第1の電力計39によって、商用電源用遮断器9の遮断に伴う商用電源10からの電力供給の停止、すなわち、停電を検出して停電信号を出力するに伴い、その停電信号に応答して系外発電機用遮断器32を閉じるとともに流量調整弁42を開いて燃料を供給し、セルモータ34を作動して系外エンジン30を起動し、系外発電機31による発電を行うようになっている。また、第2の電力計40での電力量に基づいて、系外発電機31による発電電力の供給電力量が安定するように流量調整弁42の開度を調整できるようになっている。
【0021】
系外発電機31から供給される発電電力は、系外インバータ装置33で交流に変換されるとともにその交流電力の周波数が調整され、発電機能付きエンジン駆動式ヒートポンプ装置1のエンジン14に発電電力を供給して起動し、かつ、インバータ装置4により、交流発電機15から供給される発電電力の周波数を調整しながら系外発電機31から一定の電力供給を受け、負荷変動を交流発電機15の発電電力量の制御によって吸収しながら空調を行うとともに、系外発電機31および交流発電機15からの電力を付帯機器や外部負荷に供給し、停電時でも空調を行うことができるようになっている。
停電から復旧した場合には、そのことを第1の電力計39で検知するとともに流量調整弁42を閉じて系外エンジン30の駆動を停止するとともに、系外発電機用遮断器32を遮断する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る発電・空調システムの実施例を示す電気系統主体の概略構成図である。
【図2】空調系統主体の概略構成図である。
【符号の説明】
【0023】
1…発電機能付きエンジン駆動式ヒートポンプ装置
4…インバータ装置
10…商用電源
14…エンジン
15…交流発電機(発電機)
16…圧縮機
18…室外ファン
19…室外側熱交換器
24…室内側熱交換器
26…室内ファン
30…系外エンジン
31…系外発電機
33…系外インバータ装置
35…バッテリ(起動用電源)
38…排熱回収手段
39…第1の電力計(停電検出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンに発電機および圧縮機を連動連結した発電機能付きエンジン駆動式ヒートポンプ装置と、
室外ファンを備えるとともに前記圧縮機に接続されて前記圧縮機からの冷媒を供給する室外側熱交換器と、
室内ファンを備えるとともに前記圧縮機に接続されて前記圧縮機からの冷媒を供給する室内側熱交換器とを備え、
前記発電機に商用電源からの電力を前記エンジンに供給して起動可能に構成するとともに、前記発電機の発電電力と前記商用電源からの電力を前記室外ファン、前記室内ファンおよびその他の電力負荷に供給可能に構成した発電・空調システムにおいて、
起動用電源と排熱回収装置とを備えた系外エンジンと、
前記系外エンジンに連動連結されて発電する系外発電機と、
前記商用電源の停電を検出して停電信号を出力する停電検出手段とを備え、
前記停電検出手段からの停電信号に応答して前記商用電源との連系を遮断するとともに前記系外発電機の電力を前記発電機能付きエンジン駆動式ヒートポンプ装置に供給可能に構成したことを特徴とする発電・空調システム。
【請求項2】
請求項1に記載の発電・空調システムにおいて、
発電機から供給される発電電力を交流電力に変換するとともにその交流電力の周波数を調整し、かつ、外部からの供給電力量が一定になるように供給発電電力量を調整するインバータ装置と、
系外発電機から供給される発電電力を交流電力に変換するとともにその交流電力の周波数を調整する系外インバータ装置とを備えている発電・空調システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2010−7879(P2010−7879A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−164452(P2008−164452)
【出願日】平成20年6月24日(2008.6.24)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【出願人】(501246488)株式会社コージェネテクノサービス (10)
【Fターム(参考)】