説明

白煙防止装置

【課題】白煙の発生を有効に抑制できる白煙防止装置を提供する。
【解決手段】ターボチャージャ5とエンジン2の間に設けられ、空気ブレーキ用エアタンク13から高圧空気を吸気マニホールド9に導入する高圧空気導入手段14と、エンジン回転速度、燃料噴射量、外気温を含む複数のエンジンパラメータを引数とし、当該エンジンパラメータの組み合わせで示されるエンジン状態における白煙発生の可能性有無を示す情報を格納した白煙マップ15と、白煙マップ15を複数のエンジンパラメータを引数として参照した情報が白煙発生の可能性有りを示すとき、高圧空気導入手段14を作動させてブースト圧を上昇させるブースト圧上昇制御部16とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、白煙の発生を有効に抑制できる白煙防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来一般に、ディーゼルエンジンは、圧縮比が高い構造となっている。圧縮比が高いのは、圧縮比を低くすると圧縮端における温度や圧力が低下して着火が鈍くなり、白煙が発生するからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−85053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、圧縮比が高いディーゼルエンジンは、最高筒内圧が高いので、構成部品には高い最高筒内圧に十分耐えられるだけの強度が要求される。このため、構成部品の構造や材料が高圧耐久仕様に制約されてしまう。これに対し、圧縮比が低いディーゼルエンジンが実現されれば、構成部品の構造や材料に対する耐圧仕様が緩和できる。従って、ディーゼルエンジンの低圧縮比化は実現が望まれる。
【0005】
また、近年では、ディーゼルエンジンを小型化して効率化を図るダウンサイジングが提唱されており、ダウンサイジングによる低圧縮比化は避けられない。
【0006】
ディーゼルエンジンの低圧縮比化の実現のためには、白煙の発生を有効に抑制できる技術が必要となる。
【0007】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、白煙の発生を有効に抑制できる白煙防止装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明の白煙防止装置は、ターボチャージャとエンジンの間に設けられ、空気ブレーキ用エアタンクから高圧空気を吸気マニホールドに導入する高圧空気導入手段と、エンジン回転速度、燃料噴射量、外気温を含む複数のエンジンパラメータを引数とし、当該エンジンパラメータの組み合わせで示されるエンジン状態における白煙発生の可能性有無を示す情報を格納した白煙マップと、前記白煙マップを前記複数のエンジンパラメータを引数として参照した情報が白煙発生の可能性有りを示すとき、前記高圧空気導入手段を作動させてブースト圧を上昇させるブースト圧上昇制御部とを備えたものである。
【0009】
前記白煙マップに各エンジン状態における白煙防止に必要な目標ブースト圧が格納され、前記ブースト圧上昇制御部は、ブースト圧が目標ブースト圧に達するまで前記高圧空気導入手段を作動させてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明は次の如き優れた効果を発揮する。
【0011】
(1)白煙の発生を有効に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の白煙防止装置を実装したエンジンの主要部構成図である。
【図2】本発明の白煙防止装置における制御手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0014】
図1に示されるように、本発明の白煙防止装置1を適用する車両は、エンジン2の排気マニホールド3に排気管4が接続され、排気管4にターボチャージャ5のタービン6の入口が接続される。タービン6の出口は、図示省略した排気ガス処理装置を介して大気に繋がる。ターボチャージャ5のコンプレッサ7の入口は、図示省略したエアフィルタを介して大気に繋がる。コンプレッサ7の出口に吸気管8が接続され、吸気管8にエンジン2の吸気マニホールド9が接続される。排気管4と吸気管8との間には、EGRバルブ10とEGRクーラ11を有するEGR装置12が設けられる。
【0015】
白煙防止装置1は、ターボチャージャ5とエンジン2の間に設けられ、空気ブレーキ用エアタンク13から高圧空気を吸気マニホールド9に導入する高圧空気導入手段14と、エンジン回転速度、燃料噴射量、外気温を含む複数のエンジンパラメータを引数とし、当該エンジンパラメータの組み合わせで示されるエンジン状態における白煙発生の可能性有無を示す情報を格納した白煙マップ15と、白煙マップ15を複数のエンジンパラメータを引数として参照した情報が白煙発生の可能性有りを示すとき、高圧空気導入手段14を作動させてブースト圧を上昇させるブースト圧上昇制御部16とを備える。
【0016】
空気ブレーキ用エアタンク13は、図示しない空気ブレーキに供給するための圧縮空気を貯えるものである。空気ブレーキは、従来より車両、特に中型や大型車両に採用されている。空気ブレーキ用エアタンク13は、図示しない専用のコンプレッサにより圧縮空気を貯えるが、大きな制動力を得る必要のため、ターボチャージャ5のコンプレッサ7で実現可能な最大のブースト圧よりも高い圧力で圧縮空気を貯えることができる。
【0017】
高圧空気導入手段14は、空気ブレーキ用エアタンク13に接続される高圧配管17と、高圧配管17に接続されて吸気管8に挿入されるアシストバルブ18とからなる。アシストバルブ18は、EGR装置12の接続箇所よりもコンプレッサ7側に設けられる。アシストバルブ18は、開かれると高圧配管17を吸気管8に連通させ、閉じられると高圧配管17を吸気管8から遮断するバルブである。
【0018】
白煙マップ15及びブースト圧上昇制御部16は、従来より燃料噴射制御を行っている電子制御装置(Electronical Control Unit;ECU)にソフトウェアとして組み込まれる。ECUには、図2の制御手順に使用する全てのエンジンパラメータ(センサ検出値や計算値)の現在値が把握されている。
【0019】
白煙マップ15の引数となるエンジンパラメータは、いずれも白煙の発生に関連のあるエンジンパラメータであり、エンジン回転速度、燃料噴射量、外気温、ブースト圧、吸入空気量、水温、油温、燃料噴射時期が該当する。白煙マップ15は、これらのエンジンパラメータの組み合わせで示されるエンジン状態ごとに、白煙発生の可能性が有るか無いかを示したものである。ただし、これらのエンジンパラメータ全てを同時に引数とする多次元マップを構成しても、一般的なECUの処理能力では扱うことが困難であるから、1ないし2種類のエンジンパラメータによる1次元マップ、2次元マップを組み合わせて白煙マップ15を構成するとよい。
【0020】
本実施形態では、白煙マップ15には、各エンジン状態における白煙発生の可能性有無を示す情報に加えて、各エンジン状態における白煙防止に必要な目標ブースト圧が格納される。白煙発生の可能性有無を示す情報や白煙防止に必要な目標ブースト圧は、エンジンパラメータを変化させて行う実験により得られる。
【0021】
以下、本発明の白煙防止装置1の動作を説明する。
【0022】
今、高圧空気導入手段14は非作動であるものとする。アシストバルブ18が閉じられているため、高圧配管17が吸気管8から遮断されている。したがって、空気ブレーキ用エアタンク13の高圧空気は吸気管8に流れることはない。エンジン2の排気マニホールド3から排出された排気ガスが排気管4からターボチャージャ5のタービン6に導入される。これによりターボチャージャ5のコンプレッサ7では空気が圧縮される。コンプレッサ7にて圧縮された空気は、吸気管8からエンジン2の吸気マニホールド9に送り込まれる。EGR装置12では、排気管4の排気ガスがEGRバルブ10の開度に応じて取り込まれ、EGRクーラ11で冷却されて吸気管8に循環される。
【0023】
白煙防止装置1は、図2の制御手順を常時実行する。
【0024】
図2に示されるように、ステップS1にて、ブースト圧上昇制御部16は、エンジン回転速度、燃料噴射量、外気温、ブースト圧、吸入空気量、水温、油温、燃料噴射時期を引数として白煙マップ15を参照する。ブースト圧上昇制御部16は、白煙マップ15から読み取った情報から現在のエンジン状態は白煙発生の可能性有りかどうかを判定する。判定がNO、すなわち白煙発生の可能性が無いときは、何もせずステップS1に戻る。判定がYES、すなわち白煙発生の可能性が有るときは、ステップS2に進む。
【0025】
ステップS2にて、ブースト圧上昇制御部16は、白煙マップ15を参照し現在のエンジン状態で白煙防止に必要な目標ブースト圧を読み取り、この目標ブースト圧をブースト圧の制御目標に設定する。
【0026】
ステップS3にて、ブースト圧上昇制御部16は、高圧空気導入手段14を作動させる。これにより、アシストバルブ18が開かれると、高圧配管17が吸気管8に連通するので、空気ブレーキ用エアタンク13の高圧空気が高圧配管17から吸気管8を経て吸気マニホールド9に送り込まれる。この結果、ブースト圧が上昇する。
【0027】
ステップS4にて、ブースト圧上昇制御部16は、ブースト圧が目標ブースト圧に達したかどうかを判定する。判定がNOであれば、ステップS4に戻る。判定がYESであれば、高圧空気導入手段14を非作動にしてステップS1に戻る。
【0028】
以上説明したように、白煙防止装置1によれば、白煙発生の可能性があるエンジン状態になると、空気ブレーキ用エアタンク13の高圧空気が吸気マニホールド9に導入され、ブースト圧が白煙防止に必要な目標ブースト圧まで上昇するので、白煙の発生を有効に抑制できる。
【0029】
白煙防止装置1は、従来からある空気ブレーキ用の高圧空気を利用するので、新規な蓄圧タンクを追加する必要がなく、構成が簡素であると共に、ターボチャージャ5のコンプレッサ7のブースト圧よりも十分に高いブースト圧が得られる。
【符号の説明】
【0030】
1 白煙防止装置
2 エンジン
5 ターボチャージャ
9 吸気マニホールド
13 空気ブレーキ用エアタンク
14 高圧空気導入手段
15 白煙マップ
16 ブースト圧上昇制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターボチャージャとエンジンの間に設けられ、空気ブレーキ用エアタンクから高圧空気を吸気マニホールドに導入する高圧空気導入手段と、
エンジン回転速度、燃料噴射量、外気温を含む複数のエンジンパラメータを引数とし、当該エンジンパラメータの組み合わせで示されるエンジン状態における白煙発生の可能性有無を示す情報を格納した白煙マップと、
前記白煙マップを前記複数のエンジンパラメータを引数として参照した情報が白煙発生の可能性有りを示すとき、前記高圧空気導入手段を作動させてブースト圧を上昇させるブースト圧上昇制御部とを備えたことを特徴とする白煙防止装置。
【請求項2】
前記白煙マップに各エンジン状態における白煙防止に必要な目標ブースト圧が格納され、
前記ブースト圧上昇制御部は、ブースト圧が目標ブースト圧に達するまで前記高圧空気導入手段を作動させることを特徴とする請求項1記載の白煙防止装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−96399(P2013−96399A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−243352(P2011−243352)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)