説明

皮膚外用剤

【課題】 ハイドロフルオロエーテルを安定に水を含有する皮膚外用剤に配合すること。
【解決手段】 ハイドロフルオロエーテルと、水を含有する皮膚外用剤に、アルキル変性カルボキシビニルポリマーと、セルロール系水溶性高分子とを併用して用いることにより、高圧ホモミキサーなどの特別な機器を使用せずとも簡便に乳化することができ、得られる皮膚外用剤の保存安定性が良好で、ジェル状の良好な粘度を保つことができることを見出した。また両性界面活性剤、アニオン性界面活性剤から選択される1種又は2種以上を配合することにより、洗い流し用皮膚外用剤とすることが可能であり、肌に塗布後静置することにより泡立つという新規な使用感を発揮するとともに洗い流した後のしっとり感が良好である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイドロフルオロエーテルと、アルキル変性カルボキシビニルポリマーと、セルロール系水溶性高分子と水を含有する、保存安定性の良好な皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイドロフルオロエーテルは、環境を破壊せず、皮膚に対して安全性の高い油剤であることが知られている(特許文献1参照)。ここで、ハイドロフルオロエーテルは比重が高いため、外相に水を含有する皮膚外用剤に配合した場合保存安定性がよくないことも知られていた。かかる課題を解決するために外水相の粘度を増加させる試みがなされたが、外水相の粘度を上げるだけでは決定的な安定性の改善にはつながらなかった。また外相の粘度を上昇させることにより、製品の硬度が高くなり使用感上好ましくないことも知られていた。さらにフッ素化界面活性剤を用いて、マイクロエマルション化する技術も知られていた(特許文献2参照)が、製造方法が複雑になり、特殊な機械が必要となる欠点があった。
【0003】
【特許文献1】特開平11−71222号公報
【特許文献2】特公表2002−532222号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ハイドロフルオロエーテルを簡便かつ安定に水を含有する皮膚外用剤に配合することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ハイドロフルオロエーテルを簡便かつ安定に水を含有する皮膚外用剤に配合するために鋭意検討を重ねた結果、ハイドロフルオロエーテルと、水を含有する皮膚外用剤に、アルキル変性カルボキシビニルポリマーと、セルロール系水溶性高分子とを併用して用いることにより、高圧ホモミキサーなどの特別な機器を使用せずとも簡便に乳化することができ、得られる皮膚外用剤の保存安定性が良好で、しかもジェル状の良好な粘度を保つことができるることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
また、本発明の皮膚外用剤にさらに両性界面活性剤、アニオン性界面活性剤から選択される1種又は2種以上を配合することにより、洗い流し用皮膚外用剤とすることが可能となり、かかる洗い流し用皮膚外用剤は、塗布後静置することにより泡立つという新規な使用感を発揮するとともに洗い流した後のしっとり感が良好であることを見出した。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、高圧ホモミキサーなどの特別な機器を使用せずとも簡便にハイドロフルオロカーボンを乳化することができ、しかも得られた皮膚外用剤は保存安定性が良好で、しかもジェル状の良好な粘度を保つことができるる。また本発明の皮膚外用剤を洗い流し用皮膚外用剤とした場合、塗布後静置することにより泡立つという新規な使用感を発揮するとともに高い保湿効果を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の皮膚外用剤は、ハイドロフルオロエーテル、水、アルキル変性カルボキシビニルポリマーと、セルロール系水溶性高分子を必須成分とする。またさらに、両性界面活性剤、アニオン性界面活性剤を配合する。これらの成分について詳細に説明する。
【0009】
本発明で用いるハイドロフルオロエーテルは、下記一般式(1)で表されるハイドロフルオロエーテルであり、先に説明した特許文献1(特開平11−71222号公報)に詳細に記載されている公知化合物である。
−O−C (1)
[式中、nは1〜12の数、mは0〜25の数、lは0〜11の数、m+l=2n+1であり、xは1〜12の数、yは0〜25の数、zは0〜11の数、y+z=2x+1である(ただし、mとnは同時に0とはならない。また、lとzは同時に0とはならない)。]。ここで、nは1〜10が好ましく、さらに好ましくは1〜6である。xは1〜10が好ましく、さらに好ましくは1〜6である。
【0010】
本発明においては、特に、下記一般式(2)で表されるハイドロフルオロエーテルが好ましい。
2n+1−O−C2x+1 (2)
[式中、nは1〜12の数、xは1〜12の数である]。ここでnは1〜10が好ましく、さらに好ましくは1〜6である。xは1〜10が好ましく、さらに好ましくは1〜6である。
【0011】
具体的に好ましいハイドロフルオロエーテルとしては、C−O−CH 、C−O−C 、C11−O−C 、C−O−C 、C−O−C等が挙げられる。これらは、常法により合成することも可能であるし、市販品(Cosmetic Flaid CF−61、CF−76 3M社製)を使用することもできる。
【0012】
ハイドロフルオロエーテルの皮膚外用剤全量に対する配合量は特に限定されないが、通常、0.1〜60質量%、好ましくは、1.0〜30質量%配合される。目的とする皮膚外用剤に応じて配合量は適宜決定される。
【0013】
本発明で用いるアルキル変性カルボキシビニルポリマーは、アクリル酸及び/又はメタクリル酸とアクリル酸アルキル及び/又はメタクリル酸アルキルを構成モノマーとするポリマーであって、所望により、ジビニルエーテルなどの架橋のためのモノマーを適宜構成モノマーとすることも出来る。前記アルキル基の炭素鎖としては10〜30のものが好ましく、10〜30の炭素鎖が分布したものが特に好ましい。この様なアルキル変性カルボキシビニルポリマーとしては、既に市販されているものが存し、かかる市販品を購入し利用することが出来る。好ましい市販品としては、例えば、グッドリッチ社より販売されている「カーボポール1382」、「ペミュレンTR−1」、「ペミュレンTR−2」等が好ましく例示できる。かかる成分は、一種を単独で使用することも、二種以上を組み合わせて使用することも可能である。本発明の皮膚外用剤において、かかる成分は増粘剤及び乳化補助剤として働く。本発明の皮膚外用剤におけるアルキル変性カルボキシビニルポリマーの好ましい配合量は、フリー体に換算して、0.05〜0.5質量%であり、より好ましくは、0.1〜0.4質量%である。これは少なすぎると系の安定性が損なわれる場合が、多すぎるとゲル強度が強くなりすぎて使用性を損なう場合がある。
【0014】
本発明で用いるセルロース系水溶性高分子としては、通常皮膚外用剤に配合し得るセルロース系水溶性高分子であれば特に限定されない。係るセルロース系水溶性高分子としては、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどが例示される。本発明の効果の点からヒドロキシエチルセルロースを用いることが最も好ましい。本発明の皮膚外用剤におけるセルロース系水溶性高分子の配合量としては、0.05〜0.5質量%であり、より好ましくは、0.1〜0.4質量%である。これは少なすぎると系の安定性が損なわれる場合が、多すぎるとゲル強度が強くなりすぎて使用性を損なう場合がある。
【0015】
本発明の皮膚外用剤は、両性界面活性剤、アニオン性界面活性剤を配合することが可能で、洗い流し用途の皮膚外用剤とすることも可能である。
【0016】
本発明で用いる両性界面活性剤は、1種を単独で、若しくは2種以上を併用して用いる。かかる両性界面活性剤の種類としては、アルキルアミノ脂肪酸塩、アルキルベタイン、アルキルアミンオキシド等があり、例えば、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2−アルキルーN−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ヤシ油アルキルジメチルアミンオキシド液、N−ラウロイル−N’−カルボキシメチル−N’−ヒドロキシエチルエチレンジアミンナトリウム、ラウリン酸アミドプロピルヒドロキシスルホベタイン液等があげられる。両性界面活性剤であればその種類が特に限定されないが、皮膚への刺激の点及び洗い流し時の泡立ちの点からラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインが好ましい。この両性界面活性剤の混合量は、15質量%以下が好適であり、10質量%以下がさらに好適である。
【0017】
本発明で用いるアニオン性界面活性剤は1種を単独で、若しくは2種以上を併用して用いる。かかるアニオン性界面活性剤としては、通常皮膚外用剤に配合し得るアニオン性界面活性剤であれば特に限定されないが、具体的には、炭素数8〜24の炭化水素系エーテルカルボン酸またはその塩、[(ポリ)オキシエチレン(重合度=1〜100)ラウリルエーテル酢酸塩、(ポリ)オキシエチレン(重合度=1〜100)ラウリルスルホコハク酸塩等]、炭素数8〜24の炭化水素系硫酸エステル塩[ラウリル硫酸塩、(ポリ)オキシエチレン(重合度=1〜100)ラウリル硫酸塩、(ポリ)オキシエチレン(重合度=1〜100)ラウリル硫酸塩、(ポリ)オキシエチレン(重合度=1〜100)ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド硫酸塩、]、炭素数8〜24の炭化水素系スルホン酸塩[ドデシルベンゼンスルホン酸塩等]及び炭素数8〜24の炭化水素系リン酸エステル塩[ラウリルリン酸塩、(ポリ)オキシエチレン(重合度=1〜100)ラウリルエーテルリン酸塩等]、脂肪酸塩[ラウリン酸塩、ステアリン酸塩、イソステアリン酸塩等]、アシル化アミノ酸塩[ヤシ油脂肪酸メチルタウリン塩、ヤシ油脂肪酸ザルコシン塩、ヤシ油脂肪酸ザルコシン塩、N−ヤシ油脂肪酸アシル−L−グルタミン酸塩、N−ヤシ油脂肪酸アシル−L−グルタミン酸塩、ラウロイルメチル−β−アラニン塩等]、アルケニルコハク酸糖エステル塩[オクテニルコハク酸トレハロースエステル塩]が挙げられる。前記塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩,アンモニウム塩,アルカノールアミン塩,塩基性アミノ酸塩等を用いることができるが、水溶性高分子との併用の点でナトリウム塩を用いることが好ましい。とりわけ、ラウロイルメチル−β−アラニンナトリウム、オクテニルコハク酸トレハロースエステルナトリウムから選択される1種又は2種を用いることが好ましい。
【0018】
本発明の皮膚外用剤は、水相成分を均質化し、ハイドロフルオロエーテルを含有する油相を添加して、混合乳化することによって得られる。乳化には、撹拌混合機、ホモミキサーなどを用いる。
【0019】
本発明の皮膚外用剤に、両性界面活性剤、アニオン性界面活性剤を添加することにより、洗い流して使用するマッサージ料、クレンジング料、洗浄料(以下まとめて洗い流し料と略す場合がある)の用途に使用することができる。かかる洗い流し料は皮膚に塗布したまま静置すると、ゆっくりと泡が発生する新規な使用感を発揮し、かつ高い保湿効果を得ることができる。
【0020】
本発明の皮膚外用剤には、通常皮膚外用剤に配合される任意の有効成分、基材成分を、本発明の効果を損なわない範囲で配合することができる。
【実施例】
【0021】
【表1】

【0022】
表1に示した処方にて、洗い流し用マッサージジェルを調製した。マッサージジェルは、精製水以上の原料を均質化した後。エチルパーフルオロポリエーテルを添加して、高速撹拌機にて撹拌することにより乳化した。得られたマッサージジェルを40℃で30日間保存した後の状態を観察したところ、比較例1〜3においては、ハイドロフルオロエーテルの分離が認められたが、実施例1は、良好な保存安定性を示していた。得られたマッサージジェルは、実施例1ではマッサージ使用に適した良好な粘度であったが、比較例は粘度が低くマッサージに適さない組成物であった。また実施霊を実際に肌に塗布すると、塗布後からゆっくり泡立ちが認められた。この泡の状態を観察したところ、比較例においては塗布後の泡のきめが粗く5分後には半分以上消滅していたが、実施例1は塗布後にできたきめ細かな泡が5分後にも良好な状態で残っていた。なお、表1中、注1としてはペミュレンTR−1を用いた。
【0023】
【表2】

【0024】
表2に示した処方にて、表1と同様にして洗い流し用マッサージジェルを調製した。実施例2及び比較例4に係るマッサージジェルを用いて下記の要領で保湿効果の測定を行った。
【0025】
[保湿効果]
保湿効果の測定は、室温20℃±1℃、相対湿度40〜50%の恒温恒湿室内にて被験者を環境に馴化させた後行った。前腕部内側の3×4cm2の範囲を測定部位とし、試験前の角質水分量をSKICON−200(I.B.S社製)にて測定した。測定部位に実施例2若しくは比較例4を24μLずつ塗布し、2分間静置した後洗い流した。洗い流し5分後に再度角質水分量を測定した。なお、水分量の測定は、測定部位において無作為に抽出した5ポイントを測定し、その平均値を水分量とした。結果は、塗布後の水分量を、塗布前の水分量を1とした場合の相対値にて算出し表2に示した。表2に示した通り、本発明の実施例は、高い保湿効果を示していた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイドロフルオロエーテルと、アルキル変性カルボキシビニルポリマーと、セルロール系水溶性高分子と水を含有する皮膚外用剤。
【請求項2】
さらに両性界面活性剤、アニオン性界面活性剤から選択される1種又は2種以上を含有する請求項1に記載の皮膚外用剤。

【公開番号】特開2009−269833(P2009−269833A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−119489(P2008−119489)
【出願日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【出願人】(000135324)株式会社ノエビア (258)
【Fターム(参考)】