説明

皮膚疾患を患う患者用の織物製品

【課題】 皮膚疾患を患う患者用の織物製品を提供すること。
【課題を解決するための手段】 本発明は、皮膚疾患を患う患者用の衣類、特に下着、またはベッドリネンなどの織物製品で、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)繊維を有する少なくとも1つの織物層を含み、PTFE繊維が主に患者の皮膚と接触することを目的として前記織物層の表面に存在している前記織物製品を提供する。PTFE繊維は、全く粘着性がない非常に滑らかな表面を得ることを可能とし、爽やかさおよび滑りやすさという好ましい感覚を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚疾患を患う患者用の、衣料(特に下着)あるいはベッドリネンなどの織物製品に関する。
【0002】
知られているように、皮膚疾患は概して、様々なアトピー性誘発要因による、組織の炎症作用から生じる。アトピー性誘発要因とは、化学製品(溶剤や洗浄剤など)、放射線、微生物感染、寄生生物、アレルギー反応、自己免疫反応、遺伝的要因などである。
【0003】
最も一般的な疾患は、乾癬である。乾癬とは慢性皮膚炎の1形態で、鮮紅色の斑点と、その上を覆う、非常に多様な大きさ、形、広がりを有する多量の白色鱗屑が特徴である。乾癬は、頭皮、四肢(肘、膝)伸側、腰仙骨部分にしばしば局在化する。乾癬はまた、広がって全身に影響を及ぼすこともある。一般的には生命にかかわる病気ではないが、時として(乾癬性紅皮症および膿疱性乾癬など)重篤な場合もある。男女ともに均一に影響を受けるが、わずかに男性の患者数が多く、年齢を問わず生じる可能性があるが、小児期あるいは若年期に発症する傾向がある。前記症状の5.4%には、重度の機能障害を引き起こすほどの関節炎を伴う兆候が見られる。乾癬は主に多遺伝子性の遺伝的要因(今までに相関性のある遺伝子を少なくとも6つ特定している)による家族性疾患で、その兆候から、ウイルスまたはバクテリア感染、身体外傷、感情的ストレスおよびベータ遮断薬、非ステロイド性抗炎症薬、リチウム塩、インターフェロンなどのいくつかの薬など、種々の誘発要因が生じる。
【0004】
乾癬は世界中に蔓延している病気で、ヨーロッパ出身の人々の約2%が罹患している。ヨーロッパでは約14,500万人がこの病気に感染していると推定される。アメリカ合衆国には700万人、またイタリアには約125万人の乾癬患者が存在する。
【0005】
慢性再発性があり、重篤化および障害を負う可能性の高さ、また、個人に対する強い心理的影響のみでなく、社会経済にも関与するため、乾癬は社会病とみなさなければならない。
【0006】
乾癬の治療法は近年大きく進歩し、現在では多くの薬剤が存在するため、それらを巧みに取り入れることで完全寛解につながる可能性がある。種々の薬剤の使用を要する系統的療法に加えて、局所治療を行うことも可能である。これらの治療は、サリチル酸、尿素またはプロピレングリコールを含む軟膏を用いて鱗片を取り除いた後に、活性成分を塗布することを含む。前記活性成分とは、コルチゾン、タール、ジトラノールなどの伝統的な薬剤、あるいはカルシポトリオール、タカルシトール、タザロテンなどの現代的な薬剤でも良い。
【0007】
乾癬にはいわゆるケブネル現象あるいは同形現象が存在し、それにより新たな乾癬病変が皮膚に生じ、精神的外傷または苛立ちの原因となってきた。したがって乾癬患者が着る衣服は、 皮膚への耐用性が高く、精神的外傷、苛立ち、あるいはアレルギー反応を引き起こさないことが重要である。
【背景技術】
【0008】
類似の兆候や問題が生じる他の皮膚病も存在する。最も蔓延している病気の1つにアトピー性皮膚炎がある。アトピー性皮膚炎は皮膚の炎症反応で、付与されたアレルゲン性物質に対して免疫マスト細胞が過敏に反応することにより、あるいは脂肪酸であるガンマリノレン酸の合成が先天性困難であることによってさえも引き起こされる。刺激性織物繊維(ウールなど)との接触、強力な洗浄剤の使用および様々な気候因子など、あらゆる要因により病気が悪化することが知られている。さらにアトピー性皮膚炎は、特に黄色ブドウ球菌によって引き起こされる皮膚の重複感染を頻繁に伴う。患者をクリームおよび皮膚軟化剤により治療することに加えて、例えば殺菌作用で知られる銀フィラメントを含むことなどにより抗菌性を有する布地(fabrics)を着ることが提案されている(バーゼル、カルガー社「今日の皮膚疾患」2006年、第33巻、144〜151頁、「アトピー性皮膚炎の治療におけるコーティングを施した織物」と題するハウク エス.等による文献などを参照)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本出願人は発案されている織物製品(textile articles)の問題を提起した。前記織物製品とは衣類、特に下着、またはベッドリネンなどであって、上記皮膚疾患、特に乾癬やアトピー性皮膚炎の患者に非常に適している織物で、前記疾患やそれに関連する症状が皮膚と接触する織物とが継続して摩擦を起こすことによる悪化を防ぐことができ、患者に安堵感をもたらし、それよってこの種の患者を悩ませる、心理的感覚である「不全感」により損なわれる可能性のあるクオリティ オブ ライフおよび社会的関係の向上を促す。さらに、このような織物製品は、皮膚軟化剤、特に、この種の皮膚疾患において一般的に使用される軟膏との接触による弊害を最小限に抑えられなければならない。実際前記織物製品は、前記治療と組み合わせて使用され、何ら損傷を与えることなく、特に製品自体の外面に魅力的ではない筋や歪みを示すことなく、使用可能でなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本出願人は、衣類、特に下着、またはベッドリネンなどで、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)繊維を有する少なくとも1つの織物層を含む織物製品を製造することで、上記のような結果をもたらすことができることを見出した。前記繊維は主に、患者の皮膚と接触することを目的として織物層の表面に存在している。PTFE繊維は、全く粘着性がない非常に滑らかな表面を得ることを可能とし、爽やかさおよび滑りやすさという好ましい感覚を提供する。このような繊維を用いることでさらに、非常に優れた撥水性およびはつ油性、耐火性、優れた通気性、軽さ、洗浄の容易さを得ることができる。
【0011】
第1の側面はしたがって、本発明が皮膚病を患う患者用の衣類、特に下着、またはベッドリネンなどの織物製品に関し、前記製品はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)繊維を含む少なくとも1つの織物層を有し、前記繊維は、患者の皮膚と接触することを目的として織物の少なくとも1表面に存在する。
【0012】
その他の側面において本発明は、皮膚病を患う患者の症状を軽減するおよび/または症状経過を改善するために、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)繊維を含む少なくとも1つの織物層を有する織物製品に関し、前記繊維は、患者の皮膚と接触することを目的として織物層の少なくとも1表面に存在する。
【0013】
好ましくは、本発明の織物製品が、乾癬やアトピー性皮膚炎を患う患者を対象とする。
【0014】
PTFE繊維特有の特徴である、撥水性およびはつ油性は、前記疾患の治療に一般的に使用される軟膏(unguents)や皮膚軟化剤に存在する油性物質の外部への移動に対して、効果的な障壁を提供する。前記油性物質は一般的な軟膏(ointments)と異なり、真皮に吸収されるまで長期間患者の皮膚の上に留まる。前記効果的な障壁は、コットンおよび/またはウールを主成分とした一般的な織物では提供することができない。
【0015】
PTFE繊維は、特殊な工業的または医療用用途として流通している製品である。一つの例としては、レンチング アーゲー(Lenzing AG)により販売されているプロフィレン(登録商標)という製品がある。
【0016】
このような繊維の密度は、製造する具体的な製品により選択され、好ましくは200〜1000デシテックス(dtex)である。
【0017】
好ましくは、PTFE繊維が連続繊維(continuous fibre yarn)の形態である。また、コットンまたはウールなどの他の繊維と密接に混合している不連続繊維(discontinuous fibre yarn)を用いても良い。この場合、PTFE繊維の量が好ましくは、全繊維の20重量%を下回らない。
【0018】
PTFE繊維を含む織物層は、経糸−緯糸構造を有する実際に織られた布地(actual fabric)あるいは編まれた布地(knitted fabric)であっても良い。織り方は製造する具体的な織物製品により大きく異なり、例えば、フラット、ダブルフェイス、サテン(クローフットサテン織物など)、ツイル、派生ツイル(derived twill)などが挙げられる。ニット構造の場合は、ブロックニットが好ましい。
【0019】
織物層は、100%PTFE繊維で形成されている、あるいはPTFE繊維が、異なるタイプの繊維で、例えば、加工していない繊維(好ましくはコットン)、加工した繊維(好ましくはセルロース)、合成繊維(好ましくはポリエステルまたはポリアミド)の何れかと組み合わさっていても良い。
【0020】
患者の状態に望ましい有益な効果をもたらすために、患者の皮膚と接触する織物層の表面は主にPTFE繊維でできている。前記表面に存在するPTFE繊維は約60〜100%で、さらに好ましくは70〜100%である。
【0021】
PTFE繊維が他の繊維と組み合わさっている場合には、PTFE繊維が主に内面に存在し、一方他の繊維(コットンなど)が主に外面に存在している布地を得るための織り(weaving)を有していることが好ましい。
【0022】
本発明により作られる製品は、好ましくは、シャツ、T−シャツ、ソックスのような下着、あるいは手袋、帽子、シャツ、ズボン、スカートなどの一般的な衣類などである。前記ベッドリネンは枕カバーやシーツなどを含んでいても良い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚疾患を患う患者用の織物製品で、前記製品がポリテトラフルオロエチレン(PTFE)繊維を有する少なくとも1つの織物層を含み、前記繊維が、患者の皮膚と接触することを目的として前記織物層の少なくとも1表面に存在している織物製品。
【請求項2】
前記皮膚疾患が乾癬またはアトピー性皮膚炎であることを特徴とする請求項1に記載の製品。
【請求項3】
前記製品が衣類、特に下着、またはベッドリネンである請求項1または2に記載の製品。
【請求項4】
PTFE繊維が連続繊維の形態であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の製品。
【請求項5】
PTFE繊維が不連続繊維の形態であり、PTFE繊維がコットンまたはウールなどの他の繊維と密接に混合し、PTFE繊維の量が好ましくは全繊維の20重量%を下回らないことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の製品。
【請求項6】
前記少なくとも一つの織物層が、経糸−緯糸構造を有する布地であることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の製品。
【請求項7】
前記少なくとも一つの織物層がニット布地であることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の製品。
【請求項8】
前記少なくとも一つの織物層が100%PTFE繊維で形成されていることを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の製品。
【請求項9】
前記少なくとも一つの織物層においてPTFE繊維が、異なるタイプの繊維で、加工していない繊維(好ましくはコットン)、加工繊維(好ましくはセルロース)、または合成繊維(好ましくはポリエステルまたはポリアミド)の何れかと組み合わされていることを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の製品。
【請求項10】
前記少なくとも一つの織物層が、経糸−緯糸構造を有し、PTFE繊維が主に内面に存在し、一方他の繊維は主に外面に存在しているダブルフェイスの布地を得るための織りを有していることを特徴とする請求項9に記載の製品。
【請求項11】
患者の皮膚と接触する前記織物層の表面において、PTFE繊維の割合が60〜100%、好ましくは70〜100%であることを特徴とする請求項1〜10の何れかに記載の製品。
【請求項12】
皮膚疾患を患う患者の症状を軽減するおよび/または症状経過を改善するために、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)繊維を含む少なくとも一つの織物層を有する織物製品で、前記繊維が、患者の皮膚と接触することを目的として前記織物層の少なくとも1表面に存在している織物製品。
【請求項13】
前記皮膚疾患が乾癬またはアトピー性皮膚炎であることを特徴とする請求項12に記載の製品。
【請求項14】
前記製品が、請求項3〜11の何れかに記載の織物製品であることを特徴とする請求項12に記載の製品。

【公表番号】特表2012−518099(P2012−518099A)
【公表日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−549693(P2011−549693)
【出願日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際出願番号】PCT/IB2010/000267
【国際公開番号】WO2010/092462
【国際公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(511197969)
【氏名又は名称原語表記】LENZI EGISTO S.P.A.
【住所又は居所原語表記】Via G. Di Vittorio 39, Localita Gabolana, I−59021 Vaiano(Prato)(IT)
【Fターム(参考)】