説明

皮革を防水する方法及び該方法で得られた皮革

【課題】身体の水分蒸散の防止をせず、また半透過性内部ライニング類の使用を避けて、皮革を防水性とさせる方法の提供。
【解決手段】皮革1の内側表面に少なくとも1つの半透膜2を押圧することを含み、皮革1に接する半透膜の表面に接着剤パターンを設けて皮革1を防水する。半透膜2の接着剤パターンが、好ましくは、熱接着剤であり、従って皮革1への該膜の押圧が好ましくは熱圧である。さらに半透膜2が弾性材で、多孔質でなく、担体シート3と組み合わされている。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、皮革、殊に靴、服及び皮革アクセサリーの製造用の皮革、を防水する方法に関する。また本発明は、その方法で得られる皮革にも関する。
【0002】
皮革類、殊に靴、服及び皮革アクセサリーの製造用の皮革類は、皮革自体の外側に撥水性物質の薄い層を、例えば噴霧装置で、塗布することからなる化学薬剤処理によって防水化されることが知られている。長期のこの方法の低効率の故に、皮革の内側に、靴または衣服物品中へ水がさらに浸入するのを防ぐばかりでなく、身体が外部へ向けての水分蒸散するのを許容する半透過性フィルムと組合わせたファブリック・ライニングを縫い付けることからなる新しい方法が想定されてきた。
【0003】
しかしながら、この方法は、いずれにしてもそれが水を皮革の下へ浸入させ、従って、特に皮革が製靴業者に使用されるときには、望ましくない水のクッションが防水ファブリックと皮革内面との間に形成されることが不利である。さらにこの方法は、ライニングを半透過性フィルムと組合わせて適用することを必然的に必要とし、このことは製造コストを増大させる上に、若干の場合には、例えば夏用靴や夏用服の製造においては、望ましくない。US5598644は、皮革の靴裏を防水する方法であって、半透性膜を靴裏の周囲領域に接着する方法が記載されている。しかし、この方法は、水クッションの形成を防がず、靴裏に半透膜を固着させるために甲周囲部分を必要とし、これによって水分蒸散性が低減される。
【発明の概要】
【0004】
従って、本発明の目的は、それらの欠点を有しない防水方法、すなわち身体の水分蒸散の防止をせず、また上述の半透過性内部ライニング類の使用を避けて、皮革を防水性とさせる方法を提供することである。この目的は、第1の請求項にその主要な特徴が開示された方法によって、達成される。この方法及びこの方法によって得られる製品のその他の特徴は、後続請求項に開示されている。
【0005】
片面に接着剤パターン(接着剤模様)を有する半透膜の使用によって、本発明による方法は、該膜を、防水化されるべき皮革に直接に付着できるようにし、それにより半透過性ライニングの使用、及び皮革とライニングの間の水浸入を回避する。
【0006】
さらには、その不連続構造の故に、接着剤層は皮革の細孔の一部を塞ぐだけであるので、水蒸気を外部へ通過せしめ、その結果着用者の快適性が保たれる。
【0007】
本発明方法による他の利点は、それが複雑高価な機械を用いずに、簡単迅速な方式で実施でき、従ってそれが工業的製造のみでなく、手加工、殊に靴の手加工にも採用され得ることである。
【0008】
本発明方法による他の利点は、それが、全体皮革のみでなく、裁断された皮革あるいは半完成皮革(例えば、他の皮革と縫い合わされた、及び/またはパンチ穴あけされたもの)であっても、防水品位を落とすことなく均一に防水化できることである。
【0009】
研究試験中に、本発明の方法によって防水化されたいずれの皮革も、例えば2メートルよりも高い水柱からもたらされるような可なりの圧力においてさえ、水の通過を防ぐことが証明され、従ってその採用は、高い水蜜性、そして同時に足の水分蒸散の可能性を要求する靴の甲及び底(それらが皮革製の場合)の製造に殊に推奨される。
【0010】
本発明によるさらなる利点及び特徴は、本方法によって防水化された皮革の片を示す単一図である添付図を参照しての以下の本発明の一具体例の詳しい説明から、当業者に明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一具体例である防水化皮革の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
この図面を参照すると、その本発明の具体例は、皮革1へ、その皮革1の内面を完全に覆う少なくとも1つの半透膜2を付着する。この付着は、加熱装置付きの平坦プレスまたはロールプレスによって、皮革及び膜のぜんたいを押圧、好ましくは熱プレスすることにより実施される。実際には、皮革1に接する膜2の表面は、0.1mm及び0.8mmの間に含まれる直径及び50点/cm2及び200点/cm2の間に含まれる密度を有する熱接着剤のパターン(模様)、好ましくはポリウレタン接着剤の複数の点からなるパターンを備えている。押圧中に膜2を加熱することにより、皮革1への完全な接着が達成され、皮革の細孔を接着剤で塞ぐ危険がない。
【0013】
膜2は、適当には、半透性材料のシート、例えばポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエステル、またはその他のポリマー製であり、その厚さは、好ましくは、5μm及び100μmの間に含まれる。特定的には、本発明のこの具体例による膜2は、100%のポリウレタン製である。さらに、それは50%を越える伸び率、殊に100%を越える伸び率を持つ弾性材であり、またそれは水蒸気の通過を浸透により行うので、多孔質でなく、従って多孔質膜と異なり、それが引張られたり、折り曲げられた時でも水の通過は防止される。
【0014】
半透膜2の接着剤を備えていない表面は、一般的には、付着前に起こり得る偶然の破損や折り曲がりを避ける担体シート3に固着されている。そのシート3は、紙製であってよく、膜2が皮革1に接着されてしまった後に脱着しうる。本発明の別の具体例においては、担体シート3種々の材料、例えばファブリック、から作られ、もし皮革1が加工が終了したときに内側にライニング付けをしたいならば、膜2に強固に固着されていてよい。
【0015】
本発明による方法の別の具体例において、膜2に固着された皮革1は、さらに加工することができ、例えば成形され、そして多の防水化皮革へ縫い付けることができる。この場合に、縫い合せ物にシールテープまたは半透膜の第2の片を当てて、皮革防水が妥協されないようにすることが、好ましい。
【実施例】
【0016】
実用試験において、1.2mmの厚さの「フル・グレーン(full grain)」種の多数の皮革試料を、本発明の方法によって、防水化した。これらの試料を、厚さ10μmのポリウレタン材料の非多孔質半透膜と熱プレスした。試料に接する膜面に、直径0.2mm及び150点/cm2の密度の接着剤点からなるポリウレタン熱接着剤のパターンを備えた。皮革試料への半透膜の付着は、平坦プレスを用いて、120℃の温度及び5kg/cm2の圧力で、10秒間、実施された。この試験の結果として、以下の事項が判明した:
−仕様UNI8245によって、3時間後であっても、水の通過がなかった。
−イタリヤ皮革技術者及び化学者協会(Societa dei Tecnolgi e Chimici del Cuoio)の仕様IUP/15による水蒸気透過性は1mg/cm2より大であった。
−仕様UNI4818−13またはBally法による繰返し折り曲げ抵抗は、80,000サイクルを越えた。
−仕様UNI4818−10による試料からの膜の剥離抵抗は、15N/cmであった。
−仕様UNI5218及びISO811による水柱への抵抗は、5メートルより大きかった。
【0017】
後者の水柱への高い抵抗値は、本発明による方法で防水化された皮革の典型的特徴であり、実際にはこの種の試験は、靴の甲革について通常実施される試験には含まれていない。さらには、上記の試験の結果は全ての皮革試料について実質的に同じであり、このことは、2片の皮革を縫い合せた場合でさえも、本発明方法の防水の均一性及び均質性を強調するものである。
【0018】
本発明の範囲内に留まることによって、ここに記載された、説明された具体例に対するさらなる改変及び付加は、当業者によってなされ得る。
【符号の説明】
【0019】
1:皮革
2:半透膜
3:担体シート


【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮革(1)の内側表面に少なくとも1つの半透膜(2)を押圧することを含み、その皮革(1)に接する半透膜の表面に接着剤パターンが設けられていることを特徴とする、皮革(1)を防水する方法。
【請求項2】
半透膜(2)の接着剤パターンが熱接着剤であり、皮革(1)への該膜の押圧が熱圧であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
半透膜(2)が多孔質でなく、水蒸気の通過を浸透により行うことを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
半透膜(2)が50%より大きな伸び率を有する弾性材であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
半透膜(2)がポリウレタン製であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
半透膜(2)が5μm及び100μmの間に含まれる厚さを有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
半透膜(2)が担体シート(3)と組合わせられていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
担体シート(3)がファブリック製であり、膜(2)に強固に固定されていることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
接着剤パターンが0.1mm及び0.8mmの間に含まれる直径を有する多数の点から形成されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
接着剤パターンが50点/cm2及び200点/cm2の間に含まれる密度を有する多数の点から形成されていることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一つに記載の方法によって防水化されたことを特徴とする皮革(1)。
【請求項12】
縫い合わされた2またはそれ以上の片から作られていることを特徴とする請求項11に記載の皮革。
【請求項13】
請求項11または12に記載の防水皮革の甲を備えたことを特徴とする靴。
【請求項14】
請求項11に記載の防水皮革の底を備えたことを特徴とする靴。

【図1】
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【公開番号】特開2009−197239(P2009−197239A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−104802(P2009−104802)
【出願日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【分割の表示】特願2000−576733(P2000−576733)の分割
【原出願日】平成11年10月20日(1999.10.20)
【出願人】(000184687)小松精練株式会社 (110)
【Fターム(参考)】