説明

直交変調器及び信号発生装置並びに直交変調方法

【課題】直交変調時に発生するゲインバランス誤差、原点オフセット誤差及び直交度誤差を補正することができる直交変調器及び信号発生装置並びに直交変調方法を提供する。
【解決手段】信号発生装置10は、直交変調器20を備え、直交変調器20は、直交変調する直交変調部22と、直交変調部22が出力する直交変調信号の電力に基づいて直交変調誤差を算出する直交変調誤差算出器40と、直交変調誤差算出器40が算出した直交変調誤差を打ち消すようにベースバンド信号に対して補正をする誤差補正部30とを備え、直交変調誤差算出器40は、直交変調信号の電力を計測する電力計測部41と、ゲインバランス誤差を算出するゲインバランス誤差算出部42と、原点オフセット誤差を算出する原点オフセット誤差算出部43と、直交誤差を算出する直交度誤差算出部44とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直交変調時に発生する直交変調誤差を補正する直交変調器及び信号発生装置並びに直交変調方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、デジタル通信の変調器としては、一般に、図8に示すような直交変調器が用いられている。図8に示した直交変調器1は、乗算器2及び3、90度移相器4、加算器5を備えている。
【0003】
乗算器2及び3は、それぞれ、I相成分(同相成分)及びQ相成分(直交成分)と呼ばれる2つの信号を入力するようになっている。乗算器2は、I相成分と、局部発振器6からの搬送波信号Scとを乗算するようになっている。乗算器3は、Q相成分と、90度移相器4によって90度移相された搬送波信号Scとを乗算するようになっている。加算器5は、乗算器2及び3の出力信号を加算して直交変調信号Sを出力するようになっている。
【0004】
この直交変調器1において、90度移相器4の設定不良や誤差等に起因して、出力する直交変調信号Sに含まれるI相成分とQ相成分とが正確に直交しないことによる変調誤差が発生することが知られている。この変調誤差は直交度誤差と呼ばれる。直交度誤差を検出する装置としては、例えば、特許文献1に記載された直交変調装置が知られている。
【0005】
特許文献1記載のものは、直交変調器に入力するI相成分、Q相成分にそれぞれ加算するための一対の直流電圧を生成する一対の可変電圧源と、一対の可変電圧源によって生成される一対の直流電圧を変化させて、I相成分、Q相成分に加算した状態で、変調信号の信号レベルが基準レベルとなるような複数の一対の直流電圧の組合せを検索する直流電圧組合せ検索手段とを備えている。この構成により、特許文献1記載のものは、検索した複数の一対の直流電圧の組合せの各値に基づいて直交変調信号の直交度誤差を算出し、直交度誤差を補正できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3737819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1記載のものでは、直交度誤差を補正できるものではあったが、直交変調時に発生するその他の誤差であるゲインバランス誤差や原点オフセット誤差については補正できず、その改善が望まれていた。
【0008】
本発明は、前述のような事情に鑑みてなされたものであり、直交変調時に発生するゲインバランス誤差、原点オフセット誤差及び直交度誤差を補正することができる直交変調器及び信号発生装置並びに直交変調方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の請求項1に係る直交変調器は、同相成分及び直交成分を含むベースバンド信号を受けて、当該ベースバンド信号により互いに直交する2つの搬送波信号を変調して得られる直交変調信号を出力する直交変調部(22)を含み、前記直交変調信号に含まれる直交変調誤差を補正する直交変調器(20)において、前記直交変調誤差は、前記同相成分及び前記直交成分の各ゲインが互いに異なることを表すゲインバランス誤差と、前記直交変調信号の同相成分を示す同相成分軸と前記直交変調信号の直交成分を示す直交成分軸との原点のオフセットを表す原点オフセット誤差と、前記同相成分軸と前記直交成分軸との直交度のずれを表す直交度誤差とを含み、前記同相成分及び前記直交成分が所定の直流電圧であるベースバンド信号を受けたときに前記直交変調部が出力する前記直交変調信号の電力に基づいて、前記直交変調誤差である前記ゲインバランス誤差と前記原点オフセット誤差と前記直交度誤差とをそれぞれ算出する直交変調誤差算出器(40)と、前記直交変調誤差算出器が算出した前記直交変調誤差を打ち消すように前記ベースバンド信号に対して補正をする誤差補正部(30)と、を備えた構成を有している。
【0010】
この構成により、本発明の請求項1に係る直交変調器は、直交変調誤差算出器が、直交変調部が出力する直交変調信号の電力に基づいて、ゲインバランス誤差と、原点オフセット誤差と、直交度誤差とをそれぞれ算出するので、直交変調時に発生するゲインバランス誤差、原点オフセット誤差及び直交度誤差を補正することができる。
【0011】
本発明の請求項2に係る直交変調器は、前記誤差補正部は、入力するベースバンド信号の同相成分と、前記同相成分のゲインバランス誤差を打ち消すゲインバランス補正値とを乗算する第1乗算器(31)と、入力するベースバンド信号の直交成分と、前記直交成分のゲインバランス誤差を打ち消すゲインバランス補正値とを乗算する第2乗算器(32)と、前記第2乗算器の乗算結果と、前記直交度誤差を打ち消す直交度補正値とを乗算する第3乗算器(33)と、前記第1乗算器の乗算結果と、前記直交度補正値とを乗算する第4乗算器(34)と、前記第1乗算器の乗算結果と、前記第3乗算器の乗算結果とを加算する第1加算器(35)と、前記第2乗算器の乗算結果と、前記第4乗算器の乗算結果とを加算する第2加算器(36)と、前記第1加算器の加算結果と、前記同相成分の原点オフセット誤差を打ち消す原点オフセット補正値とを加算し、前記直交変調部に出力する第3加算器(37)と、前記第2加算器の加算結果と、前記直交成分の原点オフセット誤差を打ち消す原点オフセット補正値とを加算し、前記直交変調部に出力する第4加算器(38)と、を備えた構成を有している。
【0012】
この構成により、本発明の請求項2に係る直交変調器は、直交変調時に発生するゲインバランス誤差、原点オフセット誤差及び直交度誤差を補正することができる。
【0013】
本発明の請求項3に係る直交変調器は、前記直交変調誤差算出器は、前記直交変調部が出力する前記直交変調信号の電力を計測する電力計測部(41)と、前記電力計測部が計測した電力に基づいて、前記ゲインバランス誤差を算出するゲインバランス誤差算出部(42)と、前記電力計測部が計測した電力に基づいて、前記原点オフセット誤差を算出する原点オフセット誤差算出部(43)と、前記電力計測部が計測した電力に基づいて、前記直交度誤差を算出する直交度誤差算出部(44)と、を備えた構成を有している。
【0014】
この構成により、本発明の請求項3に係る直交変調器は、直交変調時に発生するゲインバランス誤差、原点オフセット誤差及び直交度誤差を算出して補正することができる。
【0015】
本発明の請求項4に係る信号発生装置は、請求項3に記載の電力計測部が、前記ベースバンド信号の前記同相成分をゼロボルトではない3種類の異なる所定の直流電圧とし、かつ、前記ベースバンド信号の前記直交成分をゼロボルトの直流電圧としたときの、それぞれの前記直交変調信号の電力値と、前記ベースバンド信号の前記直交成分をゼロボルトではない3種類の異なる所定の直流電圧とし、かつ、前記ベースバンド信号の前記同相成分をゼロボルトの直流電圧としたときの、それぞれの前記直交変調信号の電力値と、前記ベースバンド信号の前記同相成分及び前記直交成分を互いに異なる所定の直流電圧としたときの前記直交変調信号の電力値と、を計測するものであることが好ましい。
【0016】
本発明の請求項5に係る信号発生装置は、請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の直交変調器と、前記ベースバンド信号を前記誤差補正部に供給するベースバンド信号供給手段(11)と、前記搬送波信号を生成して前記直交変調部に出力する搬送波信号生成手段(13)と、前記直交変調誤差算出器が前記直交変調誤差を算出するモードを示す誤差算出モードと、前記直交変調器が前記直交変調誤差を打ち消した直交変調信号を出力するモードを示す信号出力モードとを切り替えるモード切替部(14)と、を備えた構成を有している。
【0017】
この構成により、本発明の請求項5に係る信号発生装置は、誤差算出モードにおいて算出した直交変調誤差に基づいて、直交変調時に発生するゲインバランス誤差、原点オフセット誤差及び直交度誤差を補正した直交変調信号を信号出力モードにおいて出力することができる。
【0018】
本発明の請求項6に係る直交変調方法は、同相成分及び直交成分を含むベースバンド信号に応じて互いに直交する2つの搬送波信号を変調して得られる直交変調信号に含まれる直交変調誤差を補正して前記直交変調信号を出力する直交変調方法において、前記直交変調誤差は、前記同相成分及び前記直交成分の各ゲインが互いに異なることを表すゲインバランス誤差と、前記直交変調信号の同相成分を示す同相成分軸と前記直交変調信号の直交成分を示す直交成分軸との原点のオフセットを表す原点オフセット誤差と、前記同相成分軸と前記直交成分軸との直交度のずれを表す直交度誤差とを含み、前記同相成分及び前記直交成分が所定の直流電圧であるベースバンド信号を受けたときの前記直交変調信号の電力に基づいて、前記直交変調誤差である前記ゲインバランス誤差と前記原点オフセット誤差と前記直交度誤差とをそれぞれ算出する直交変調誤差算出ステップ(S24)と、前記直交変調誤差算出ステップにおいて算出した前記直交変調誤差を打ち消すように前記ベースバンド信号に対して補正をする誤差補正ステップ(S40)と、前記直交変調誤差を打ち消すように補正されたベースバンド信号を入力して直交変調信号を出力する直交変調信号出力ステップ(S35)と、を含む構成を有している。
【0019】
この構成により、本発明の請求項6に係る直交変調方法は、直交変調誤差算出ステップにおいて直交変調信号の電力に基づいて、ゲインバランス誤差と、原点オフセット誤差と、直交度誤差とをそれぞれ算出するので、直交変調時に発生するゲインバランス誤差、原点オフセット誤差及び直交度誤差を補正することができる。
【0020】
本発明の請求項7に係る直交変調方法は、前記誤差補正ステップは、入力するベースバンド信号の同相成分と、前記同相成分のゲインバランス誤差を打ち消すゲインバランス補正値とを乗算する第1乗算ステップ(S41)と、入力するベースバンド信号の直交成分と、前記直交成分のゲインバランス誤差を打ち消すゲインバランス補正値とを乗算する第2乗算ステップ(S42)と、前記第2乗算ステップの乗算結果と、前記直交度誤差を打ち消す直交度補正値とを乗算する第3乗算ステップ(S43)と、前記第1乗算ステップの乗算結果と、前記直交度補正値とを乗算する第4乗算ステップ(S44)と、前記第1乗算ステップの乗算結果と、前記第3乗算ステップの乗算結果とを加算する第1加算ステップ(S45)と、前記第2乗算ステップの乗算結果と、前記第4乗算ステップの乗算結果とを加算する第2加算ステップ(S46)と、前記第1加算ステップの加算結果と、前記同相成分の原点オフセット誤差を打ち消す原点オフセット補正値とを加算する第3加算ステップ(S47)と、前記第2加算ステップの加算結果と、前記直交成分の原点オフセット誤差を打ち消す原点オフセット補正値とを加算する第4加算ステップ(S48)と、を含む構成を有している。
【0021】
この構成により、本発明の請求項7に係る直交変調方法は、直交変調時に発生するゲインバランス誤差、原点オフセット誤差及び直交度誤差を補正することができる。
【0022】
本発明の請求項8に係る直交変調方法は、前記直交変調誤差算出ステップは、前記直交変調信号の電力を計測する電力計測ステップ(S21、S22、S23)を含み、当該計測した電力に基づいて、前記ゲインバランス誤差と、前記原点オフセット誤差と、前記直交度誤差とを算出する構成を有している。
【0023】
この構成により、本発明の請求項8に係る直交変調方法は、電力計測ステップにおいて計測した電力に基づいて、ゲインバランス誤差と、原点オフセット誤差と、直交度誤差とを算出することができる。
【0024】
本発明の請求項9に係る直交変調方法は、請求項8に記載の電力計測ステップは、前記ベースバンド信号の前記同相成分をゼロボルトではない3種類の異なる所定の直流電圧とし、かつ、前記ベースバンド信号の前記直交成分をゼロボルトの直流電圧としたときの、それぞれの前記直交変調信号の電力値と、前記ベースバンド信号の前記直交成分をゼロボルトではない3種類の異なる所定の直流電圧とし、かつ、前記ベースバンド信号の前記同相成分をゼロボルトの直流電圧としたときの、それぞれの前記直交変調信号の電力値と、前記ベースバンド信号の前記同相成分及び前記直交成分を互いに異なる所定の直流電圧としたときの前記直交変調信号の電力値と、を計測することが好ましい。
【発明の効果】
【0025】
本発明は、直交変調時に発生するゲインバランス誤差、原点オフセット誤差及び直交度誤差を補正することができるという効果を有する直交変調器及び信号発生装置並びに直交変調方法を提供することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る信号発生装置の一実施形態における構成ブロック図である。
【図2】本発明に係る信号発生装置の一実施形態における直交変調誤差についての説明図である。
【図3】本発明に係る信号発生装置の一実施形態における誤差補正部の構成ブロック図である。
【図4】本発明に係る信号発生装置の一実施形態において、全体的な動作を示すフローチャートである。
【図5】本発明に係る信号発生装置の一実施形態において、誤差算出モードでの動作を示すフローチャートである。
【図6】本発明に係る信号発生装置の一実施形態において、信号出力モードでの動作を示すフローチャートである。
【図7】本発明に係る信号発生装置の一実施形態において、直交変調誤差を打ち消す補正の動作を示すフローチャートである。
【図8】従来の直交変調器の構成ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。
【0028】
まず、本発明に係る信号発生装置の一実施形態における構成について説明する。
【0029】
図1に示すように、本実施形態における信号発生装置10は、波形データ記憶部11、直交変調器20、増幅器12、局部発振器13、モード切替部14、制御部15、レベル調整器50を備えている。
【0030】
直交変調器20は、誤差補正部30、デジタルアナログ変換器(以下「DAC」という。)21、直交変調部22、補正値出力部23、直交変調誤差算出器40を備えている。
【0031】
レベル調整器50は、可変アッテネータ51、検波器52、アナログデジタル変換器(以下「ADC」という。)53、基準値出力部54、比較器55を備えている。
【0032】
波形データ記憶部11は、デジタル値の波形データを記憶するものであって、被試験装置(図示せず)を試験するために用意されたI相成分及びQ相成分のベースバンドの波形データ(以下、単に「試験波形データ」という。)を予め記憶するようになっている。この試験波形データは、例えば、図示しないDSP(Digital Signal Processor)によって生成される。なお、波形データ記憶部11は、本発明に係るベースバンド信号供給手段を構成する。
【0033】
誤差補正部30は、補正値出力部23が出力する補正値に基づいて、波形データ記憶部11から入力したI相成分及びQ相成分の試験波形データを補正するようになっている。
【0034】
DAC21は、誤差補正部30が出力するデジタル値の試験波形データをアナログ値の試験波形データに変換し、アナログ値に変換した試験波形データを直交変調部22に出力するようになっている。
【0035】
局部発振器13は、制御部15が出力する局発制御信号に基づいて、所定周波数の搬送波信号を生成し、直交変調部22に出力するようになっている。この局部発振器13は、本発明に係る搬送波信号生成手段を構成する。
【0036】
直交変調部22は、局部発振器13からの搬送波信号を、I相成分及びQ相成分の試験波形データにより直交変調し、直交変調信号を増幅器12に出力するようになっている。この直交変調部22は、図8に示した直交変調器1と同様な構成を有する。
【0037】
増幅器12は、直交変調部22が出力する直交変調信号を増幅し、レベル調整器50の可変アッテネータ51に出力するようになっている。
【0038】
可変アッテネータ51は、比較器55からの減衰量設定信号に従って、増幅器12の出力信号の電力レベルを減衰するための減衰量が設定されるようになっている。所定の電力レベルに減衰された信号は、検波器52及び被試験装置に出力される。
【0039】
検波器52は、可変アッテネータ51の出力信号を検波し、ADC53に出力するようになっている。
【0040】
ADC53は、検波器52が検波したアナログ値の信号をデジタル値の信号に変換し、モード切替部14及び比較器55に出力するようになっている。
【0041】
基準値出力部54は、予め定められた基準レベルの信号を生成し、比較器55に出力するようになっている。
【0042】
比較器55は、ADC53の出力信号レベルと、基準値出力部54の出力信号レベルとを比較して、可変アッテネータ51の出力信号の電力値が例えば−10dBmの電力値となるよう、減衰量設定信号を可変アッテネータ51に出力するようになっている。
【0043】
モード切替部14は、可変アッテネータ51と被試験装置との間に設けられたスイッチ14aと、ADC53と直交変調誤差算出器40との間に設けられたスイッチ14bとを有する。スイッチ14a及び14bは、制御部15からのモード切替信号に基づいて、いずれか一方がオンし、他方がオフするよう設定されるようになっている。ここで、制御部15が指示するモードには、直交変調誤差算出器40によって直交変調誤差を算出するモードを示す誤差算出モードと、直交変調誤差が補正された試験信号を被試験装置に出力するモードを示す信号出力モードとがある。図示したモード切替部14の状態は、スイッチ14aがオフ、スイッチ14bがオンであり、誤差算出モードである。なお、図1では、モード切替部14が物理的なスイッチ14a、14bで構成されるイメージを示しているが、本発明はこれに限定されるものではない。モード切替部14は、上述の誤差算出モードと信号出力モードとを切り替え可能とする構成であればよい。
【0044】
制御部15は、例えば、マイクロコンピュータによって構成されており、装置全体の制御を行うようになっている。例えば、制御部15は、波形データ記憶部11に波形指定信号を出力し、波形データ記憶部11から出力する波形データを決定するようになっている。
【0045】
直交変調誤差算出器40は、電力計測部41、ゲインバランス誤差算出部42、原点オフセット誤差算出部43、直交度誤差算出部44を備えている。
【0046】
電力計測部41は、レベル調整器50が出力する直交変調信号の電力を計測するようになっている。
【0047】
ゲインバランス誤差算出部42は、電力計測部41が計測した直交変調信号の電力に基づいてゲインバランス誤差を算出するようになっている。
【0048】
原点オフセット誤差算出部43は、電力計測部41が計測した直交変調信号の電力に基づいて原点オフセット誤差を算出するようになっている。
【0049】
直交度誤差算出部44は、電力計測部41が計測した変調信号の電力に基づいて直交度誤差を算出するようになっている。
【0050】
補正値出力部23は、直交変調誤差算出器40が算出したゲインバランス誤差、原点オフセット誤差及び直交度誤差のデータを入力し、これらの直交変調誤差を打ち消すための補正値を算出し、誤差補正部に出力するようになっている。
【0051】
前述のように、直交変調誤差は、直交変調時に発生するゲインバランス誤差、原点オフセット誤差及び直交度誤差を含む。以下、図8に示した直交変調器1の構成図と、図2とを参照しながら、直交変調誤差について説明する。
【0052】
ゲインバランス誤差は、図2(a)に示すように、直交変調器1が入力した信号Pが信号Pとして出力される場合の誤差である。具体的には、信号PのI相成分のレベルをV、Q相成分のレベルをVとした場合に、信号PのI相成分のレベルがV・d、Q相成分のレベルがV・d(d≠d)となったとき、d及びdをゲインバランス誤差という。なお、d=dの場合、すなわちI相成分とQ相成分とでレベルのバランスがとれている場合は、後段の回路でレベル調整が可能であるため特に問題とならない。
【0053】
原点オフセット誤差は、図2(b)に示すように、I相軸及びQ相軸の各原点が直流成分によりオフセットすることに起因する誤差であり、I相軸及びQ相軸の原点オフセット誤差をそれぞれδ及びδと表す。
【0054】
直交度誤差は、図2(c)に示すように、I相軸とQ相軸との交差角度がπ/2[rad]からずれていることを示す誤差であり、例えば、I相軸を基準としてQ相軸の傾きが(π/2+φ)[rad]のとき、このφを直交度誤差という。
【0055】
次に、直交変調誤差を算出する手法について説明する。ここで、図8に示した直交変調器1において、乗算器2はベースバンド信号のI相成分V[mV]を入力し、乗算器3はベースバンド信号のQ相成分V[mV]を入力するものとする(具体的には、前述の誤差算出モードのとき、各部は以下のように動作する。波形データ記憶部11は、所定の直流電圧又は0V(ゼロボルト)の直流電圧の波形データを出力する。そして、誤差補正部30は、この波形データを補正せずに出力する。そして、DAC21は、この波形データをアナログ値に変換して出力する。つまり、DAC21は、所定の直流電圧又は0Vの直流電圧であるI相成分V及びQ相成分Vを、直交変調部22に出力する。)。局部発振器6は乗算器2及び90度移相器4に搬送波信号Sを出力し、90度移相器4は、搬送波信号Sを90度移相して乗算器3に出力するものとする。加算器5は、乗算器2及び3の出力信号を加算し、出力信号Sを出力するものとする。
【0056】
直交変調器1が理想的な特性を有する場合、搬送波信号Sの角周波数をωとすると、出力信号Sは[数1]で表される。
【0057】
【数1】

【0058】
実際には、直交変調器1が出力する変調信号には、ゲインバランス誤差、原点オフセット誤差、直交度誤差が含まれるので、出力信号Sは[数2]で表される。ここで、φ[rad]は初期位相である。
【0059】
【数2】

【0060】
[数2]を書き換えると[数3]が得られる。
【0061】
【数3】

【0062】
ただし、[数3]において、ATotal及びΦは、それぞれ、[数4]及び[数5]で与えられる。ここで、ATotalは出力信号Sの振幅成分を示している。
【0063】
【数4】

【0064】
【数5】

【0065】
次に、I相のゲインバランス誤差d及びQ相のゲインバランス誤差dを求める。
【0066】
最初に、I相のゲインバランス誤差dは、振幅成分ATotalを2乗した電力成分ATotalに基づいて以下のように求めることができる。まず、[数4]において、V=0としたときの電力成分ATotalは[数6]で示される。
【0067】
【数6】

【0068】
ただし、[数6]において、D、Δ及びΛは、それぞれ、[数7]〜[数9]で与えられる。
【0069】
【数7】

【0070】
【数8】

【0071】
【数9】

【0072】
、Δ及びΛは、それぞれ、V=0として3種類のVを設定し、各Vに対する電力成分ATotalの実測値から算出することができる。Dの算出結果から、[数10]によりI相のゲインバランス誤差dが求まる。
【0073】
【数10】

【0074】
前述と同様に、Q相のゲインバランス誤差dは以下のように求めることができる。まず、[数4]において、V=0としたときの電力成分ATotalは[数11]で示される。
【0075】
【数11】

【0076】
ただし、[数11]において、D及びΔは、それぞれ、[数12]、[数13]で与えられる。なお、Λは、前述の[数9]で与えられる。
【0077】
【数12】

【0078】
【数13】

【0079】
、Δは、それぞれ、V=0として3種類のVを設定し、各Vに対する電力成分ATotalの実測値から算出することができる。Dの算出結果から、[数14]によりQ相のゲインバランス誤差dが求まる。
【0080】
【数14】

【0081】
次に、直交度誤差φを求める。まず、[数4]において、V=0のときの電力成分ATotalの実測値をAで表すと[数15]が得られる。
【0082】
【数15】

【0083】
また、[数4]において、V=0のときの電力成分ATotalの実測値をAで表すと[数16]が得られる。
【0084】
【数16】

【0085】
また、V≠0、V≠0のときの電力成分ATotalの実測値をAで表すと[数4]から[数17]が得られる。
【0086】
【数17】

【0087】
[数17]から[数15]及び[数16]を減算すると[数18]が得られる。
【0088】
【数18】

【0089】
[数18]に[数9]を代入すると[数19]が得られる。
【0090】
【数19】

【0091】
[数19]より[数20]、[数21]が得られ、直角度誤差φが求まる。
【0092】
【数20】

【0093】
【数21】

【0094】
次に、原点オフセットδ及びδを求める。[数8]及び[数13]より[数22]及び[数23]が得られ、原点オフセットδ及びδが求まる。
【0095】
【数22】

【0096】
【数23】

【0097】
以上のように、直交変調器1の出力信号Sの電力成分に基づいて、I相のゲインバランス誤差d及びQ相のゲインバランス誤差d、直交度誤差φ、原点オフセット誤差δ及びδを求めることができる。したがって、本実施形態において、直交変調誤差算出器40は、レベル調整器50が出力する直交変調信号の電力を電力計測部41によって計測することにより、直交変調誤差を算出することができる。そして、補正値出力部23において、直交変調誤差を打ち消す補正値を生成し、この補正値を誤差補正部30に供給すればよい。
【0098】
次に、誤差補正部30の構成について図3に基づき説明する。なお、補正出力部22が生成する、直交変調誤差を打ち消す補正値を次のように表す。すなわち、I相のゲインバランス誤差dの補正値をdI_COR、Q相のゲインバランス誤差dの補正値をdQ_CORと表す。また、直交度誤差φの補正値をφCOR、I相の原点オフセット誤差δの補正値をδI_COR、Q相の原点オフセット誤差δの補正値をδQ_CORと表す。
【0099】
図3に示すように、誤差補正部30は、乗算器31〜34、加算器35〜38を備えている。なお、乗算器31〜34は、それぞれ、本発明に係る第1乗算器〜第4乗算器を構成する。また、加算器35〜38は、それぞれ、本発明に係る第1加算器〜第4加算器を構成する。
【0100】
乗算器31は、波形データ記憶部11が出力するI相成分と、I相のゲインバランス補正値dI_CORとを乗算するようになっている。乗算器32は、波形データ記憶部11が出力するQ相成分と、Q相のゲインバランス補正値dQ_CORとを乗算するようになっている。
【0101】
乗算器33は、乗算器32の乗算結果と、直交度補正値φCORとを乗算するようになっている。乗算器34は、乗算器31の乗算結果と、直交度補正値φCORとを乗算するようになっている。
【0102】
加算器35は、乗算器31の乗算結果と、乗算器33の乗算結果とを加算するようになっている。加算器36は、乗算器32の乗算結果と、乗算器34の乗算結果とを加算するようになっている。
【0103】
加算器37は、加算器35の加算結果と、I相の原点オフセット補正値δI_CORとを加算するようになっている。加算器38は、加算器36の加算結果と、Q相の原点オフセット補正値δQ_CORとを加算するようになっている。
【0104】
前述の構成により、誤差補正部30は、波形データ記憶部11からI相成分及びQ相成分を入力し、直交変調誤差を打ち消したI相成分ICOR及びQ相成分QCORをDAC21に出力することができる。
【0105】
次に、本実施形態における信号発生装置10の動作について、図1に示したブロック構成図を適宜参照しながら説明する。
【0106】
最初に、信号発生装置10の全体的な動作について、図4に示すフローチャートを用いて説明する。
【0107】
制御部15は、補正値出力部23が出力する補正値を初期化して(ステップS11)、誤差補正部30が補正を行わない状態とする。
【0108】
制御部15は、モード切替部14を動作させて誤差算出モードに設定する(ステップS12)。その結果、モード切替部14において、スイッチ14aはオフ、スイッチ14bはオンにされる。
【0109】
次に、制御部15は、誤差算出モードでの動作を行う(ステップS20)。
【0110】
誤差算出モードでの動作が終了すると、制御部15は、モード切替部14を動作させて信号出力モードに設定する(ステップS13)。その結果、モード切替部14において、スイッチ14aはオン、スイッチ14bはオフにされる。
【0111】
そして、制御部15は、信号出力モードでの動作を行う(ステップS30)。
【0112】
次に、図4に示したステップS20における誤差算出モードでの動作について、図5に示すフローチャートを用いて説明する。
【0113】
制御部15は、Q相成分V=0として3種類のI相成分Vにより、電力計測部41に電力成分Aを計測させる(ステップS21)。
【0114】
ここで、3種類のI相成分VをVI1、VI2、VI3とすると、制御部15は、VI1及びV=0、VI2及びV=0、VI3及びV=0の3つの組合せの信号を波形データ記憶部11に順次出力させ、レベル調整器50が出力する変調信号の電力成分Aを電力計測部41に計測させる。ただし、VI1、VI2、VI3は、0V(ゼロボルト)でないとともに互いに異なる直流電圧である。
【0115】
続いて、制御部15は、I相成分V=0として3種類のQ相成分Vにより、電力計測部41に電力成分Aを計測させる(ステップS22)。
【0116】
ここで、3種類のQ相成分VをVQ1、VQ2、VQ3とすると、制御部15は、V=0及びVQ1、V=0及びVQ1、V=0及びVQ1の3つの組合せの信号を波形データ記憶部11に順次出力させ、レベル調整器50が出力する変調信号の電力成分Aを電力計測部41に計測させる。ただし、VQ1、VQ2、VQ3は、0V(ゼロボルト)でないとともに互いに異なる直流電圧である。
【0117】
さらに、制御部15は、例えば、V=VI1及びV=VQ1の組合せの信号を波形データ記憶部11に出力させ、レベル調整器50が出力する変調信号の電力成分Aを電力計測部41に計測させる(ステップS23)。ここで、電力成分Aを計測する場合に、Vは、電力成分Aを計測するときに用いたVI1、VI2、VI3のいずれかが用いられ、Vは、電力成分Aを計測するときに用いたVQ1、VQ2、VQ3のいずれかが用いられる。
【0118】
以上の計測結果より、直交変調誤差算出器40は、直交変調誤差を算出する(ステップS24)。
【0119】
具体的には、ゲインバランス誤差算出部42は、ステップS21の結果に基づき、[数6]〜[数9]によりD、Δ、Λを算出し、[数10]によりI相のゲインバランス誤差dを算出する。また、ゲインバランス誤差算出部42は、ステップS22の結果に基づき、[数11]〜[数13]によりD、Δを算出し、[数14]によりQ相のゲインバランス誤差dを算出する。
【0120】
原点オフセット誤差算出部43は、ステップS21〜S23で求めた電力成分A、A及びAに基づき、[数22]及び[数23]により、I相の原点オフセット誤差δ及びQ相の原点オフセット誤差δを算出する。
【0121】
直交度誤差算出部44は、ステップS21〜S23で求めた電力成分A、A及びAに基づき、[数21]により、直交度誤差φを算出する。
【0122】
そして、制御部15は、直交変調誤差を打ち消す補正値、すなわち、I相のゲインバランス補正値dI_COR、Q相のゲインバランス補正値dQ_COR、直交度補正値φCOR、I相の原点オフセット補正値δI_COR及びQ相の原点オフセット補正値δQ_CORを補正値出力部23に生成させて誤差補正部30に向けて出力させる(ステップS25)。
【0123】
次に、図4に示したステップS30における信号出力モードでの動作を、図6に示すフローチャートを用いて説明する。
【0124】
まず、制御部15は、波形指定信号を波形データ記憶部11に出力し、波形データ記憶部11が記憶している波形データ(デジタル値)のうち所定の試験波形データを出力させる(ステップS31)。
【0125】
次に、誤差補正部30は、試験波形データに対して直交変調誤差を打ち消す補正を行って(ステップS40)DAC21に出力する。具体的には、誤差補正部30(図3参照)は、図7のフローチャートに示すように直交変調誤差を打ち消す補正を行う。
【0126】
乗算器31は、波形データ記憶部11が出力するI相成分と、I相のゲインバランス補正値dI_CORとを乗算する(ステップS41)。
【0127】
乗算器32は、波形データ記憶部11が出力するQ相成分と、Q相のゲインバランス補正値dQ_CORとを乗算する(ステップS42)。
【0128】
乗算器33は、乗算器32の乗算結果と、直交度補正値φCORとを乗算する(ステップS43)。
【0129】
乗算器34は、乗算器31の乗算結果と、直交度補正値φCORとを乗算する(ステップS44)。
【0130】
加算器35は、乗算器31の乗算結果と、乗算器33の乗算結果とを加算する(ステップS45)。
【0131】
加算器36は、乗算器32の乗算結果と、乗算器34の乗算結果とを加算する(ステップS46)。
【0132】
加算器37は、加算器35の加算結果と、I相の原点オフセット補正値δI_CORとを加算する(ステップS47)。
【0133】
加算器38は、加算器36の加算結果と、Q相の原点オフセット補正値δQ_CORとを加算する(ステップS48)。
【0134】
図6に戻り、DAC21は、補正されたデジタル値の試験波形データをアナログ値に変換し(ステップS32)、直交変調部22に出力する。
【0135】
直交変調部22は、局部発振器13が出力する局部発周波数の搬送波信号に基づいて、試験波形データの直交変調を行って(ステップS33)、直交変調信号を増幅器12に出力する。なお、局部発振器13の周波数は、予め制御部15によって設定されている。
【0136】
増幅器12は、直交変調信号を所定の増幅率で増幅し、レベル調整器50に出力する。レベル調整器50は、直交変調信号の電力レベルが例えば−10dBmとなるよう、可変アッテネータ51の減衰量を可変して電力レベルを調整し(ステップS34)、所定の電力レベルに調整した直交変調信号を被試験装置に出力する(ステップS35)。
【0137】
具体的には、レベル調整器50において、可変アッテネータ51は、増幅器12の出力信号のレベルを、比較器55からの減衰量設定信号に基づいて所定値に減衰し、検波器52に出力する。検波器52は、入力信号を検波してADC53に出力する。ADC53は、入力したアナログ値の信号をデジタル値の信号に変換して、比較器55に出力する。比較器55は、入力信号のレベルと、基準値出力部54からの基準信号レベルとを比較して、可変アッテネータ51の出力信号の電力レベルが例えば−10dBmとなるよう減衰量設定信号を可変アッテネータ51に出力する。また、実際には、可変アッテネータ51の出力は、ステップアッテネータ(不図示)によって所望のレベルに減衰され、RF信号として信号発生装置10から出力される。
【0138】
以上のように、本実施形態における信号発生装置10は、直交変調誤差算出器40が、直交変調信号の電力を計測する電力計測部41と、計測した電力に基づいて、ゲインバランス誤差を算出するゲインバランス誤差算出部42と、原点オフセット誤差を算出する原点オフセット誤差算出部43と、直交誤差を算出する直交度誤差算出部44とを備える構成としたので、直交変調時に発生するゲインバランス誤差、原点オフセット誤差及び直交度誤差を補正することができる。
【産業上の利用可能性】
【0139】
以上のように、本発明に係る直交変調器及び信号発生装置並びに直交変調方法は、直交変調時に発生するゲインバランス誤差、原点オフセット誤差及び直交度誤差を補正することができるという効果を有し、直交変調時に発生する直交変調誤差を補正する直交変調器及び信号発生装置並びに直交変調方法として有用である。
【符号の説明】
【0140】
10 信号発生装置
11 波形データ記憶部(ベースバンド信号供給手段)
12 増幅器
13 局部発振器(搬送波信号生成手段)
14 モード切替部
14a、14b スイッチ
15 制御部
20 直交変調器
21 DAC
22 直交変調部
23 補正値出力部
30 誤差補正部
31〜34 乗算器(第1乗算器〜第4乗算器)
35〜38 加算器(第1加算器〜第4加算器)
40 直交変調誤差算出器
41 電力計測部
42 ゲインバランス誤差算出部
43 原点オフセット誤差算出部
44 直交度誤差算出部
50 レベル調整器
51 可変アッテネータ
52 検波器
53 ADC
54 基準値出力部
55 比較器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同相成分及び直交成分を含むベースバンド信号を受けて、当該ベースバンド信号により互いに直交する2つの搬送波信号を変調して得られる直交変調信号を出力する直交変調部(22)を含み、前記直交変調信号に含まれる直交変調誤差を補正する直交変調器(20)において、
前記直交変調誤差は、前記同相成分及び前記直交成分の各ゲインが互いに異なることを表すゲインバランス誤差と、前記直交変調信号の同相成分を示す同相成分軸と前記直交変調信号の直交成分を示す直交成分軸との原点のオフセットを表す原点オフセット誤差と、前記同相成分軸と前記直交成分軸との直交度のずれを表す直交度誤差とを含み、
前記同相成分及び前記直交成分が所定の直流電圧であるベースバンド信号を受けたときに前記直交変調部が出力する前記直交変調信号の電力に基づいて、前記直交変調誤差である前記ゲインバランス誤差と前記原点オフセット誤差と前記直交度誤差とをそれぞれ算出する直交変調誤差算出器(40)と、
前記直交変調誤差算出器が算出した前記直交変調誤差を打ち消すように前記ベースバンド信号に対して補正をする誤差補正部(30)と、
を備えたことを特徴とする直交変調器。
【請求項2】
前記誤差補正部は、
入力するベースバンド信号の同相成分と、前記同相成分のゲインバランス誤差を打ち消すゲインバランス補正値とを乗算する第1乗算器(31)と、
入力するベースバンド信号の直交成分と、前記直交成分のゲインバランス誤差を打ち消すゲインバランス補正値とを乗算する第2乗算器(32)と、
前記第2乗算器の乗算結果と、前記直交度誤差を打ち消す直交度補正値とを乗算する第3乗算器(33)と、
前記第1乗算器の乗算結果と、前記直交度補正値とを乗算する第4乗算器(34)と、
前記第1乗算器の乗算結果と、前記第3乗算器の乗算結果とを加算する第1加算器(35)と、
前記第2乗算器の乗算結果と、前記第4乗算器の乗算結果とを加算する第2加算器(36)と、
前記第1加算器の加算結果と、前記同相成分の原点オフセット誤差を打ち消す原点オフセット補正値とを加算し、前記直交変調部に出力する第3加算器(37)と、
前記第2加算器の加算結果と、前記直交成分の原点オフセット誤差を打ち消す原点オフセット補正値とを加算し、前記直交変調部に出力する第4加算器(38)と、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の直交変調器。
【請求項3】
前記直交変調誤差算出器は、
前記直交変調部が出力する前記直交変調信号の電力を計測する電力計測部(41)と、
前記電力計測部が計測した電力に基づいて、前記ゲインバランス誤差を算出するゲインバランス誤差算出部(42)と、
前記電力計測部が計測した電力に基づいて、前記原点オフセット誤差を算出する原点オフセット誤差算出部(43)と、
前記電力計測部が計測した電力に基づいて、前記直交度誤差を算出する直交度誤差算出部(44)と、
を備えたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の直交変調器。
【請求項4】
前記電力計測部は、
前記ベースバンド信号の前記同相成分をゼロボルトではない3種類の異なる所定の直流電圧とし、かつ、前記ベースバンド信号の前記直交成分をゼロボルトの直流電圧としたときの、それぞれの前記直交変調信号の電力値と、
前記ベースバンド信号の前記直交成分をゼロボルトではない3種類の異なる所定の直流電圧とし、かつ、前記ベースバンド信号の前記同相成分をゼロボルトの直流電圧としたときの、それぞれの前記直交変調信号の電力値と、
前記ベースバンド信号の前記同相成分及び前記直交成分を互いに異なる所定の直流電圧としたときの前記直交変調信号の電力値と、
を計測するものであることを特徴とする請求項3に記載の直交変調器。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の直交変調器と、
前記ベースバンド信号を前記誤差補正部に供給するベースバンド信号供給手段(11)と、
前記搬送波信号を生成して前記直交変調部に出力する搬送波信号生成手段(13)と、
前記直交変調誤差算出器が前記直交変調誤差を算出するモードを示す誤差算出モードと、前記直交変調器が前記直交変調誤差を打ち消した直交変調信号を出力するモードを示す信号出力モードとを切り替えるモード切替部(14)と、
を備えたことを特徴とする信号発生装置。
【請求項6】
同相成分及び直交成分を含むベースバンド信号に応じて互いに直交する2つの搬送波信号を変調して得られる直交変調信号に含まれる直交変調誤差を補正して前記直交変調信号を出力する直交変調方法において、
前記直交変調誤差は、前記同相成分及び前記直交成分の各ゲインが互いに異なることを表すゲインバランス誤差と、前記直交変調信号の同相成分を示す同相成分軸と前記直交変調信号の直交成分を示す直交成分軸との原点のオフセットを表す原点オフセット誤差と、前記同相成分軸と前記直交成分軸との直交度のずれを表す直交度誤差とを含み、
前記同相成分及び前記直交成分が所定の直流電圧であるベースバンド信号を受けたときの前記直交変調信号の電力に基づいて、前記直交変調誤差である前記ゲインバランス誤差と前記原点オフセット誤差と前記直交度誤差とをそれぞれ算出する直交変調誤差算出ステップ(S24)と、
前記直交変調誤差算出ステップにおいて算出した前記直交変調誤差を打ち消すように前記ベースバンド信号に対して補正をする誤差補正ステップ(S40)と、
前記直交変調誤差を打ち消すように補正されたベースバンド信号を入力して直交変調信号を出力する直交変調信号出力ステップ(S35)と、
を含むことを特徴とする直交変調方法。
【請求項7】
前記誤差補正ステップは、
入力するベースバンド信号の同相成分と、前記同相成分のゲインバランス誤差を打ち消すゲインバランス補正値とを乗算する第1乗算ステップ(S41)と、
入力するベースバンド信号の直交成分と、前記直交成分のゲインバランス誤差を打ち消すゲインバランス補正値とを乗算する第2乗算ステップ(S42)と、
前記第2乗算ステップの乗算結果と、前記直交度誤差を打ち消す直交度補正値とを乗算する第3乗算ステップ(S43)と、
前記第1乗算ステップの乗算結果と、前記直交度補正値とを乗算する第4乗算ステップ(S44)と、
前記第1乗算ステップの乗算結果と、前記第3乗算ステップの乗算結果とを加算する第1加算ステップ(S45)と、
前記第2乗算ステップの乗算結果と、前記第4乗算ステップの乗算結果とを加算する第2加算ステップ(S46)と、
前記第1加算ステップの加算結果と、前記同相成分の原点オフセット誤差を打ち消す原点オフセット補正値とを加算する第3加算ステップ(S47)と、
前記第2加算ステップの加算結果と、前記直交成分の原点オフセット誤差を打ち消す原点オフセット補正値とを加算する第4加算ステップ(S48)と、
を含むことを特徴とする請求項6に記載の直交変調方法。
【請求項8】
前記直交変調誤差算出ステップは、
前記直交変調信号の電力を計測する電力計測ステップ(S21、S22、S23)を含み、
当該計測した電力に基づいて、前記ゲインバランス誤差と、前記原点オフセット誤差と、前記直交度誤差とを算出することを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の直交変調方法。
【請求項9】
前記電力計測ステップは、
前記ベースバンド信号の前記同相成分をゼロボルトではない3種類の異なる所定の直流電圧とし、かつ、前記ベースバンド信号の前記直交成分をゼロボルトの直流電圧としたときの、それぞれの前記直交変調信号の電力値と、
前記ベースバンド信号の前記直交成分をゼロボルトではない3種類の異なる所定の直流電圧とし、かつ、前記ベースバンド信号の前記同相成分をゼロボルトの直流電圧としたときの、それぞれの前記直交変調信号の電力値と、
前記ベースバンド信号の前記同相成分及び前記直交成分を互いに異なる所定の直流電圧としたときの前記直交変調信号の電力値と、
を計測することを特徴とする請求項8に記載の直交変調方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−9307(P2013−9307A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−99759(P2012−99759)
【出願日】平成24年4月25日(2012.4.25)
【出願人】(000000572)アンリツ株式会社 (838)
【Fターム(参考)】