説明

真空ポンプ

【課題】ポンプ内部に流入したプロセスガスが軸受側に漏れることをより確実に防止して、軸受をプロセスガスから保護できるようにする。
【解決手段】吸気口54aと排気口54bとを有し、内部にポンプ室50a〜50fを備えたポンプケーシング56と、両端を軸受84a,84bで回転自在に支承されてポンプケーシング56の長さ方向に沿って配置される回転軸60と、ポンプ室50a〜50f内にそれぞれ収容され、回転軸60に連結されて該回転軸60の回転に伴って回転するロータ62a〜62fとを有し、ポンプケーシング56の排気口54b側には、該排気口54bに連通し大気に開放させた大気開放室52が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体、液晶、太陽電池、LED等の製造工程の一つであるCVDやエッチングといったプロセスで使用される真空ポンプであって、ポンプ内部に昇華性ガスや腐食性ガスが流入するプロセスで使用される真空ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、真空チャンバに接続されて、真空チャンバ内に導入したプロセスガスを排気するのに使用される真空ポンプは、一般に、吸気口と排気口とを有し、内部にポンプ室を備えたポンプケーシングと、このポンプケーシングの内部に収容されたロータとを有し、ポンプ室の内部でロータを回転させることで、プロセスガスを吸気口からポンプケーシング内部に流入させて圧縮し、排気口から外部に排気するように構成されている。ロータは、ポンプケーシングの内部を延びる回転軸に固定され、回転軸の両端は、ポンプケーシングの側方に配置された室の内部に収容された一対の軸受で回転自在に支承されている。
【0003】
このため、真空ポンプの真空チャンバに接続されるポンプケーシングの吸気口付近は、真空チャンバの内部と同じ真空状態となり、ポンプケーシングの排気口付近は、大気に開放されてほぼ大気圧となる。回転軸は、その両端を軸受によって回転自在に支承されているとともに、軸受に入ったプロセスガスによって生成された生成物で軸受が破壊されるのを防止するため、接触シールまたは非接触シールでシールされている。回転軸のシールには、接触による損傷を防止した非接触シールが広く使用されている。
【0004】
例えば、複数段のポンプ室を有する多段真空ポンプを使用して真空チャンバ等の内部を真空排気する場合は、1段目よりも2段目、2段目よりも3段目と、段数が増加するに従ってポンプ室の内部圧力が段階的に増加し、しかも、同じポンプ室であっても、ポンプ室の出口側に位置する気体の方が入口側に位置する気体よりも圧力が高くなる。つまり、最終段ポンプ室の出口側(排気口)がほぼ大気圧となり、最終段ポンプ室の入口側は大気圧よりも低い圧力となる。摩耗を防止するため、回転軸のシールに非接触シールを使用した場合、最終段ポンプ室に隣接して内部に軸受を収納した室の内部圧力は、最終段ポンプ室の内部圧力(平均圧力)に見合った圧力となる。例えば、真空ポンプの最終段ポンプ室の出口側(排気口)がほぼ大気圧の760Torrで、最終段ポンプ室の入口側が大気圧よりも低い200Torrである場合、最終段ポンプ室に隣接して内部に軸受を収納した室の内部圧力は、およそ480Torr(=(760+200)/2)となる。
【0005】
最終段ポンプ室の入口側の圧力は、真空チャンバ側からのプロセスガスの流入等によって変化する。例えば、真空チャンバ側からプロセスガスが流入すると、最終段ポンプ室の入口側の圧力が200Torrから300Torrに上昇する。一方、最終段ポンプ室の出口側圧力は、ポンプ排気管を通し大気に連通しているため、大気圧からほとんど変化しない。そして、最終段ポンプ室の入口側の圧力が200Torrから300Torrに変化すると、最終段ポンプ室内の内部圧力(平均圧力)は、530Torr(=(760+300)/2)となり、最終段ポンプ室に隣接して内部に軸受を収納した室の内部圧力の480Torrよりも高くなる。
【0006】
そして、このように最終段ポンプ室内の平均圧力の方が最終段ポンプ室に隣接して内部に軸受を収納した室の内部圧力よりも高くなると、この室の内部に最終段ポンプ室の内部に流入したプロセスガスが漏れる。このように、軸受を収納した室の内部にプロセスガスが漏れると、プロセスガスに昇華性物質等が含まれている場合、該室の温度は一般に低いため、該室の内部に配置されている軸受や軸受を潤滑するための潤滑油に生成物等の析出物が析出して、軸受損傷の原因となる。
【0007】
なお、凝縮性気体や昇華性気体等の気体の排気に適するようにポンプ室の温度を高めに維持しつつ、潤滑油室の潤滑油の温度を低めに維持するのに有利で、潤滑油の蒸気化を抑えるため、相対的に温度が高めのポンプ室と相対的に温度が低めの潤滑油室との間に中空状をなす断熱用の中間室と、冷媒を通過させる冷却通路とを形成するようにしたドライポンプが提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−105829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載のドライポンプは、凝縮性気体や昇華性気体等の気体の排気に適するようにポンプ室の温度を高めに維持しつつ、潤滑油室の潤滑油の温度を低めに維持するのに有利で、潤滑油の蒸気化を抑えるようにしたものであって、ポンプケーシングの側方に位置する室の内部に収容された軸受をプロセスガスから保護するようにしたものではない。なお、回転軸の非接触シールにNガス等のパージガスを導入することで、プロセスガスの軸受側への漏れを防止することも広く行われているが、回転軸の非接触シールに導入するNガス等のパージガスの量を増やすとポンプ室の圧力も悪くなってしまうため、回転軸の非接触シールに導入するNガス等のパージガスの量には一定の限界がある。
【0010】
本発明は上記事情に鑑みて為されたもので、ポンプ内部に流入したプロセスガスが軸受側に漏れることをより確実に防止して、軸受をプロセスガスから保護できるようにした真空ポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の発明は、吸気口と排気口とを有し、内部にポンプ室を備えたポンプケーシングと、両端を軸受で回転自在に支承されて前記ポンプケーシングの長さ方向に沿って配置される回転軸と、前記ポンプ室内にそれぞれ収容され、前記回転軸に連結されて該回転軸の回転に伴って回転するロータとを有し、前記ポンプケーシングの前記排気口側には、該排気口に連通し大気に開放させた大気開放室が設けられていることを特徴とする真空ポンプである。
【0012】
このように、ポンプケーシングの排気口側に該排気口に連通し大気に開放させた大気開放室を設けることで、たとえポンプ室の内部圧力が変化し、回転軸のシールに非接触シールを使用した場合でも、大気開放室の側方に位置して内部に軸受を収容している室の内部が常にほぼ大気圧となるようにすることができる。これによって、ポンプ室内に流入したプロセスガスが大気開放室の側方に位置して内部に軸受を収容している室の内部に漏れてしまうことをより確実に防止して、軸受をプロセスガスから保護することができる。
【0013】
請求項2に記載の発明は、前記ポンプケーシングには、複数段のポンプ室が互いに連通して備えられ、前記各ポンプ室に前記回転軸の回転に伴って回転するロータがそれぞれ収容されていることを特徴とする請求項1記載の真空ポンプである。
【0014】
多段真空ポンプにあっては、前述のように、最終段ポンプ室の出口側(排気口)がほぼ大気圧となっても、最終段ポンプ室の入口側は大気圧よりも低い圧力となり、真空チャンバ側からプロセスガスが流入すると、最終段ポンプ室の内部圧力(平均圧力)が変化(上昇)するが、最終段ポンプ室の側方に大気開放室を設けることで、最終段ポンプ室の内部圧力(平均圧力)が変化(上昇)しても、この圧力変化が大気開放室の側方に位置して内部に軸受を収容している室内の圧力に影響することを防止することができる。
【0015】
請求項3に記載の発明は、内部に前記回転軸を挿通させるサイドパネルには、該回転軸の挿通部にパージガスを供給するパージガス通路が設けられていることを特徴とする請求項1または2記載の真空ポンプである。
【0016】
このように、内部に回転軸を挿通させるサイドパネルに、該回転軸の挿通部にパージガスを供給するパージガス通路を設けることで、サイドパネルと回転軸との間に、接触による摩耗を防止した非接触シールを構成することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、たとえポンプ室の内部圧力が変化しても、大気開放室の側方に位置して内部に軸受を収容している室の内部圧力が常に大気圧となるため、ポンプ室内に流入したプロセスガスが大気開放室の側方に位置して内部に軸受を収容している室内に漏れてしまうことをより確実に防止して、軸受をプロセスガスから保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態の真空ポンプを示す縦断正面図である。
【図2】図1に示す真空ポンプに備えられているメインポンプの第1段ポンプ室の縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の実施形態に係る真空ポンプ10の縦断正面図を示す。図1に示すように、真空ポンプ10は、真空側に配置されるブースタポンプ12と大気側に配置されるメインポンプ14とを有しており、ブースタポンプ12とメインポンプ14は、連絡配管16で互いに接続されている。この例にあっては、メインポンプ14として、6段のルーツ式真空ポンプが使用され、単段のルーツ式真空ポンプからなるブースタポンプ12と組合せて使用するように構成されている。
【0020】
ブースタポンプ12は、内部にポンプ室18を区画形成する略円筒状の外胴20を有するポンプケーシング22と、モータ24の駆動に伴って互いに同期して逆方向に回転する一対の回転軸26とを有している。ポンプ室18内には、互いに隣接する位置に、所定のクリアランスをもって、例えば2葉のロータからなる一対のロータ28がそれぞれ回転自在に収容され、この各ロータ28は、回転軸26にそれぞれ固着されている。ポンプケーシング22の外胴20には、処理対象の真空チャンバ等から延びる吐出管(図示せず)に接続される吸気口20aと、連絡配管16に接続される排気口20bが設けられている。これによって、一対のロータ28の互いに同期した逆方向の回転に伴って、吸気口20aからポンプ室18内にプロセスガスを流入させ、圧縮させて排気口20bから外部に移送するようになっている。なお、図1には、回転軸26及び該回転軸26の駆動機構等の一方のみが図示されているが、紙面と反対側にもほぼ同様な構成が備えられている。
【0021】
この例において、ポンプケーシング22の外胴20の吸気口20a及び排気口20bを除く領域の外周部は、略円筒状のヒータジャケット30で一体的に包囲されている。これによって、ポンプ室18の内部がヒータジャケット30で加熱されるようになっている。
【0022】
ブースタポンプ12は、一般に真空度が高い(圧力が低い)ため、圧縮熱があまり発生せず、ポンプ温度が低くなっている。このため、たとえポンプ室18内の圧力が低くても、ポンプ室18内に流入したプロセスガスに含まれる昇華性物質等がポンプ室18の内周面等に析出する恐れがあるが、前述のように、ヒータジャケット30で、ポンプ室18内の温度を上昇させることで、ポンプ室18内に流入したプロセスガスに含まれる昇華性物質等がポンプ室18の内周面等に析出することを防止することができる。
【0023】
ポンプケーシング22の両側方には、サイドパネル32a,32bがそれぞれ配置され、この各サイドパネル32a,32bにそれぞれ取り付けた軸受ハウジング34a,34b内に収容した軸受36a,36bを介して、回転軸26がその両端において回転自在に支承されている。更に、サイドパネル32a,32bの側方に位置して、内部に潤滑油を溜める潤滑油ハウジング40a,40bが配置され、一方の潤滑油ハウジング40bにモータ24のモータハウジングが連結されている。
【0024】
サイドパネル32a,32bには、サイドパネル32a,32bの回転軸26の挿通部にNガス等のパージガスを供給して、ポンプ室18内に流入したプロセスガスが軸受36a,36bの方向に流出することを防止するためのパージガス通路42a,42bがそれぞれ設けられ、これによって、サイドパネル32a,32bと回転軸26との間に、接触による摩耗を防止した非接触シールが構成されている。
【0025】
メインポンプ14は、この例では、6段のルーツ式真空ポンプで構成されており、内部に第1〜第6の合計6段のポンプ室50a〜50fと、第6段ポンプ室50fに隣接する大気開放室52を区画形成する略円筒状の外胴54を有するポンプケーシング56と、モータ58の駆動に伴って互いに同期して逆方向に回転する一対の回転軸60を有している。第1段ポンプ室50aの内部には、図2に示すように、例えば3葉ロータからなる一対のロータ62aがそれぞれ回転自在に収容されている。同様に、第2段ポンプ室50bの内部には、例えば3葉ロータからなる一対のロータ62bが、第3段ポンプ室50cの内部には、例えば3葉ロータからなる一対のロータ62cが、第4段ポンプ室50dの内部には、例えば3葉ロータからなる一対のロータ62dが、第5段ポンプ室50eの内部には、例えば3葉ロータからなる一対のロータ62eが、第6段ポンプ室50fの内部には、例えば3葉ロータからなる一対のロータ62fがそれぞれ収容されている。そして、直線状に並ぶ一方のロータ62a〜62fは一方の回転軸60に、他方のロータ62a〜62fは他方の回転軸60にそれぞれ固着されている。
【0026】
ポンプケーシング56は、外胴54の端部を閉塞する一対の端壁64a,64bと、外胴54の内部を仕切る5枚の仕切壁66a〜66eとを有しており、一方の端壁64aと第1仕切壁66aとの間に第1段ポンプ室50aが、第1仕切壁66aと第2仕切壁66bとの間に第2段ポンプ室50bが、第2仕切壁66bと第3仕切壁66cとの間に第3段ポンプ室50cが、第3仕切壁66cと第4仕切壁66dとの間に第4段ポンプ室50dが、第4仕切壁66dと第5仕切壁66eとの間に第5段ポンプ室50eが、第5仕切壁66eと他方の端壁64bとの間に第6段ポンプ室50fがそれぞれ形成されている。そして、他方の端壁64bと該端壁64bに隣接するサイドパネル80bの間に大気開放室52が形成されている。
【0027】
第1段ポンプ室50aは、図2に示すように、一対のロータ62aの互いに同期した逆方向の回転に伴って、この入口側(図示では上側、以下同じ)から第1段ポンプ室50aの内部にプロセスガスを流入させて圧縮し、出口側(図示では下側、以下同じ)から第1段ポンプ室50aの外部にプロセスガスを移送するようになっている。このことは、第2段〜第6段ポンプ室50b〜50fにあってもほぼ同様である。
【0028】
ポンプケーシング56の外胴54には、連絡配管16に接続されて第1段ポンプ室50aの入口側(上側)に連通する吸気口54aと、第6段ポンプ室(最終段ポンプ室)50fの出口側(下側)に連通する排気口54bが設けられている。また排気口54bは、端壁64bを介して大気開放室52に連通している。これにより、大気開放室52は、排気口54bを通して大気に開放される。更に、ポンプケーシング56の外胴54は、内壁68と該内壁68と所定間隔離間して配置される外壁70とを備えた二重壁構造を有しており、内壁68と外壁70との間にガス通路72a〜72eが形成されている。つまり、第1段ポンプ室50aの周囲に第1ガス通路72aが、第2段ポンプ室50bの周囲に第2ガス通路72bが、第3段ポンプ室50cの周囲に第3ガス通路72cが、第4段ポンプ室50dの周囲に第4ガス通路72dが、第5段ポンプ室50eの周囲に第5ガス通路72eがそれぞれ形成されている。第5段ガス通路72eは、さらに、第6段ポンプ室50fの周囲に拡張している。
【0029】
これらの各ガス通路72a〜72eの一方は、各ポンプ室50a〜50eの出口側(下側)で各ポンプ室50a〜50eの内部にそれぞれ連通し、各ガス通路72a〜72eの他方は、各ポンプ室50b〜50fの入口側(上側)で各ポンプ室50b〜50fの内部にそれぞれ連通している。これによって、図2に示すように、吸気口54aを通して入口側から第1段ポンプ室50a内に流入したプロセスガスは、第1段ポンプ室50aの内部を通過した後、第1段ポンプ室50aの出口側(下側)から第1ガス通路72a内に流入し、該第1ガス通路72aに沿って上方に流れた後、第2段ポンプ室50bの入口側(上側)に達する。そして、入口側から第2段ポンプ室50b内に流入したプロセスガスは、第2段ポンプ室50bの内部を通過した後、第2段ポンプ室50bの出口側から第2ガス通路72b内に流入し、該第2ガス通路72bに沿って上方に流れた後、第3段ポンプ室50cの入口側に達する。このようにして、プロセスガスは、更に第3段〜第6段ポンプ室50c〜50f内を順次通過した後、第6段ポンプ室50fの出口側から排気口54bを通して外部に排気される。
【0030】
この例によれば、ポンプケーシング56の外胴54を、内部にガス通路72a〜72eを有する二重壁構造とすることで、このガス通路72a〜72eに沿って流れる高温のプロセスガスを通して、ポンプ室50a〜50fの内部と外部とをより確実に遮断し、これによって、ポンプ内部が低温となって、プロセスガスに含まれる昇華性物質等が気体から固体となってポンプ内部(ポンプケーシング内周面)に付着してしまうことを防止することができる。特に、高温のプロセスガスがガス通路72a〜72eに沿って各ポンプ室50a〜50eの出口側(下側)から次の段の入口側(上側)に向かって流れるようにすることで、この高温のプロセスガスでポンプ室50a〜50fを有効に加熱することができる。
【0031】
この例では、ポンプケーシング56の外胴54の吸気口54a及び排気口54bを除く領域の外周部を略円筒状の保温ジャケット74で一体的に包囲している。これによって、ポンプ室50a〜50fの内部と外部とを保温ジャケット74によっても遮断して、ポンプ室50a〜50fの保温効果を高めることができる。
【0032】
ポンプケーシング56の端壁64a,64bの側方には、サイドパネル80a,80bがそれぞれ配置され、このサイドパネル80a,80bにそれぞれ取り付けた軸受ハウジング82a,82b内に収容した軸受84a,84bを介して、回転軸60がその両端において回転自在に支承されている。更に、サイドパネル80a,80bの側方に位置して、内部に潤滑油を溜める潤滑油ハウジング88a,88bが配置され、一方の潤滑油ハウジング88bの側方にモータ58のモータハウジングが連結されている。サイドパネル80a,80bには、サイドパネル80a,80bの回転軸60の挿通部にNガス等のパージガスを供給して、ポンプ室50a〜50f内に流入したプロセスガスが軸受84a,84bの方向に流出することを防止するためのパージガス通路90a,90bが設けられ、これによって、サイドパネル80a,80bと回転軸60との間に、接触による摩耗を防止した非接触シールが構成されている。なお、パージガス通路90bを流れたパージガスは、大気開放室52内にも流入する。
【0033】
この例では、最も高圧となる第6段ポンプ室(最終段ポンプ室)50f側の端壁64bと該端壁64bに隣接して配置されるサイドパネル80bとの間に、排気口54bに連通して大気に開放される大気開放室52を設け、軸受84bを収納した軸受ハウジング82bを内部に収納した潤滑油ハウジング88bを該サイドパネル80bに取り付けている。これにより、たとえ第6段ポンプ室(最終段ポンプ室)50fの内部圧力が変化しても、大気開放室52の側方に位置して内部に軸受84bを収容している室、つまりサイドパネル80bと潤滑油ハウジング88bで周囲を包囲された室Rの内部が常にほぼ大気圧となるようにすることができる。これによって、ポンプ室50a〜50f内に流入したプロセスガスが、大気開放室52の側方に位置して内部に軸受84bを収容している室Rの内部に漏れてしまうことをより確実に防止して、軸受84bをプロセスガスから保護することができる。
【0034】
これは、以下の理由による。回転軸60とサイドパネル80bとの間を非接触シールでシールし、第6段ポンプ室(最終段ポンプ室)50fとサイドパネル80bとが互いに隣接して配置されている場合、すなわち、大気開放室52がない場合、サイドパネル80bの側方に位置して内部に軸受84bを収容している室、つまりサイドパネル80bと潤滑油ハウジング88bで周囲を包囲された室Rの内部圧力は、第6段ポンプ室(最終段ポンプ室)50fのほぼ平均圧力となる。例えば、第6段ポンプ室50fの出口側圧力はほぼ大気圧(760Torr)であるが、入口側圧力が大気圧より低い圧力、仮に200Torrである場合、サイドパネル80bと潤滑油ハウジング88bで周囲を包囲された室Rの内部圧力は、ほぼ480Torr(=(760+200)/2)となる。そして、真空チャンバ側からのプロセスガスの流入により第6段ポンプ室50fの入口側圧力が200Torrから300Torrに変化(上昇)すると、第6段ポンプ室50fの平均圧力も530Torr(=(760+300)/2)となり、サイドパネル80bと潤滑油ハウジング88bで周囲を包囲された室Rの内部圧力が530Torrに上昇するまで、プロセスガスを含んだガスが、第6段ポンプ室50fからサイドパネル80bと回転軸60の隙間を通って室Rに流入する。
【0035】
これに対して、この例のように、第6段ポンプ室(最終段ポンプ室)50f側の端壁64bと該端壁64bに隣接して配置されるサイドパネル80bとの間に、排気口54bに連通して大気に開放される大気開放室52を設けると、前述のように、第6段ポンプ室(最終段ポンプ室)50fの内部圧力(平均圧力)が変化(上昇)しても、大気開放室52の圧力は大気圧から殆ど変化せず、また、サイドパネル80bの側方に位置して内部に軸受84bを収容している室、つまりサイドパネル80bと潤滑油ハウジング88bで周囲を包囲された室Rの内部圧力も、殆ど影響を受けることなく、ほぼ大気圧のままに維持される。
【0036】
上述のように構成された真空ポンプ10にあっては、ブースタポンプ12のモータ24及びメインポンプ14のモータ58を駆動して、真空チャンバの内部に導入されたプロセスガスをブースタポンプ12及びメインポンプ14で真空排気する。この時、大気開放室52の側方に位置して内部に軸受84bを収容している室、つまりサイドパネル80bと潤滑油ハウジング88bで周囲を包囲された室Rの内部が常にほぼ大気圧となるようにすることで、ポンプ内部に流入したプロセスガスが軸受側に漏れることをより確実に防止して、軸受をプロセスガスから保護できる。
【0037】
これまで本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。例えば、上記実施形態では、多段ルーツ式真空ポンプに適用した例を示しているが、単段ルーツ式真空ポンプに適用してもよく、またクロー式真空ポンプの他に、例えばルーツ式、クロー式、スクリュー式の内、2方式もしくは3方式全てを同一回転軸上で組合せた真空ポンプに適用することもできる。
【符号の説明】
【0038】
10 真空ポンプ
12 ブースタポンプ
14 メインポンプ
16 連絡配管
18 ポンプ室
20 外胴
20a 吸気口
20b 排気口
22 ポンプケーシング
24 モータ
26 回転軸
28 ロータ
30 ヒータジャケット
32a,32b サイドパネル
36a,36b 軸受
40a,40b 潤滑油ハウジング
42a,42b パージガス通路
50a〜50f ポンプ室
52 大気開放室
54 外胴
54a 吸気口
54b 排気口
56 ポンプケーシング
58 モータ
60 回転軸
62a〜62f ロータ
64a,64b 端壁
66a〜66e 仕切壁
68 内壁
70 外壁
72a〜72e ガス通路
74 保温ジャケット
80a,80b サイドパネル
84a,84b 軸受
88a,88b 潤滑油ハウジング
90a,90b パージガス通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気口と排気口とを有し、内部にポンプ室を備えたポンプケーシングと、
両端を軸受で回転自在に支承されて前記ポンプケーシングの長さ方向に沿って配置される回転軸と、
前記ポンプ室内にそれぞれ収容され、前記回転軸に連結されて該回転軸の回転に伴って回転するロータとを有し、
前記ポンプケーシングの前記排気口側には、該排気口に連通し大気に開放させた大気開放室が設けられていることを特徴とする真空ポンプ。
【請求項2】
前記ポンプケーシングには、複数段のポンプ室が互いに連通して備えられ、前記各ポンプ室に前記回転軸の回転に伴って回転するロータがそれぞれ収容されていることを特徴とする請求項1記載の真空ポンプ。
【請求項3】
内部に前記回転軸を挿通させるサイドパネルには、該回転軸の挿通部にパージガスを供給するパージガス通路が設けられていることを特徴とする請求項1または2記載の真空ポンプ。

【図1】
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【図2】
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