説明

真空二重容器を持った電気貯湯容器

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は真空二重容器を持った電気貯湯容器に関するものであり、例えば家庭用の電気ポットなどに適用される。
【0002】
【従来の技術】
いま、省資源、省エネルギーが各分野で要求されてきている。四六時中使用し続けられることが多い家庭用電気機器でも同様である。通電負荷の大きなヒータを用いている電気ポットなどでは急務になってきている。そこで、金属製の真空二重容器を利用した電気ポットも実現している。これによって、ヒータで加熱し貯湯している内容液の熱は外部に逃げにくくなり、省エネルギーが図れる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、真空二重容器を採用しても、これの開口、および真空二重容器を収容した外装ケースとが形成する器体の開口を、それらがなす複雑な形状に対応しながら蒸気漏れなどなく閉じる必要がある上、真空二重容器の内筒内で加熱され湯沸かしや保温される内容液から発生する蒸気を外部に放出して内圧が異常昇温するようなことを防止する必要がある。これらを満足するのに上記の開口を閉じる蓋は、構造の複雑なものにならざるを得ないので、合成樹脂や一部金属よりなる二重ないしはそれを上回る多重構造の蓋を構成されているが、真空二重容器で断熱性が向上するのに対し、蓋部の断熱性は低く上方へ熱を逃がしやすい熱損失部分であり大きな問題になりつつある。
【0004】
本発明の目的は、蓋部での断熱性が高く省エネ性により優れた真空二重容器を持った電気貯湯容器を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明の真空二重容器を持った電気貯湯容器は、内筒と外筒により構成される真空二重容器と、内筒内の内容液を加熱するヒータと、内容液を外部に案内する吐出路と、この吐出路を通じて内容液を吐出させる吐出ポンプと、真空二重容器の開口を閉じる蓋と、この蓋に設けられ蒸気を外部に放出する蒸気通路とを備え、蒸気通路は真空二重容器内に開口する蒸気入口部から蓋の中央部を上方に立ち上がり、この蒸気通路の上部に蓋の周辺側に変位した位置で蓋上面に開口する流出口を有し、蓋内の上段部に前記蒸気通路の前記流出口を除く上部を覆う断熱材を設け、蓋内の中段部と下段部とに前記蒸気通路の外回りに位置する環状の断熱材を設け、下段部の断熱材は真空二重容器の開口内に入り込むようにしたことを特徴としている。
【0006】
このような構成では、真空二重容器の内筒内の内容液をヒータで加熱して湯沸かしや保温をし貯湯するのに、真空二重容器およびそれが形成する器体の開口部を閉じる蓋に設けた蒸気通路によって蒸気を外部に逃がす構造でありながら、真空二重容器まわりではその内筒と外筒との間の真空断熱空間によって熱が外部に逃げるのをよく防止されるのに併せ、そのような断熱効果のない前記開口部では、前記蒸気通路と合わせ、前記蓋内の上段部に前記蒸気通路の前記流出口を除く上部を覆う断熱材、中段部、下段部に前記蒸気通路の外回りに位置する環状の断熱材を設けることで、真空二重容器およびそれが形成する器体の開口部を上回るほぼ全体を覆って断熱効果が格段に高いものとして上部に熱が逃げるのを抑制するので、電気貯湯容器全体の熱効率が向上し従来に増して省エネ化が図れる。しかも、断熱材は外部から視認されないので蓋の通常形態を損なうことはないし、断熱層が設けられることによりその材質などの種々な面で衛生上の問題を生じることはない。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について幾つかの参考例とともに図1〜図23を参照しながら説明し、本発明の理解に供する。
【0008】
図11、図12に示す本発明の実施の形態は、図1、図4の参考例で示すような内筒1と外筒2により構成される真空二重容器3と、内筒1内の内容液を加熱するヒータ4と、内容液を外部に案内する吐出路5と、この吐出路5を通じて内容液を吐出させる吐出ポンプ14と、真空二重容器3の開口7を閉じる二重ないしはそれを上回る多重の蓋8と、この蓋8の二重ないしは多重の内部を通じて内筒1内で発生する蒸気を外部に放出する蒸気通路9とを備えた真空二重容器3を持った電気貯湯容器であり、家庭用の電気ポットに適用した場合の一例である。
【0009】
しかし、本発明は図示するものに限られることはなく、真空二重容器3の真空構造、真空二重容器3の真空断熱空間11の形態とヒータ4による加熱との関係構造、吐出構造、蓋構造など種々な具体的構造を採用することができる。例えば、ヒータ4は真空二重容器3内に挿入して内容液を加熱してもよいし、真空二重容器3の底部などに形成した一重構造部、ないしは真空断熱空間11を形成しない部分を介し外部から加熱してもよいし、真空二重容器3の内筒1に繋いだ外部加熱部にて内容液を加熱するようにもできる。外部加熱部は加熱による自然対流、あるいは膨張や発生蒸気による昇圧、逆止弁などを利用した内容液の押し出しとこれに伴う内容液の吸込み、あるいは電動ポンプによる循環などにて、内筒1内の内容液が外部加熱部を繰り返し通るように循環されればよい。
【0010】
上記のような電気ポットは、真空二重容器3の内筒1内の内容液をヒータ4で加熱して湯沸かしや保温をし貯湯するのに、真空二重容器3まわりではその内筒1と外筒2との間の真空断熱空間11によって熱が外部に逃げるのを良く防止される。これに併せ、そのような断熱効果のない真空二重容器3の開口7の部分では、この開口7を閉じる2重ないしはそれを上回る多重の蓋8内各部の面または/および中空層の適所を利用して前記蒸気通路9を塞がない図1〜図3に示す参考例1、図4、図5に示す参考例2、図9に示す参考例5、図10に示す参考例6に示すような断熱層21を前記参考例2のように二重に、または多重に設ける。これにより、内筒1内の加熱され貯湯される内容液の熱が真空二重容器3の開口7から上部へ逃げようとするのを蒸気放出に支障なく蓋8の前記断熱層21が抑制する。従って、電気ポット器全体の熱効率が向上し従来に増して省エネ化が図れる。しかも、断熱層21は蓋8内にあって外部から視認されないので蓋8の通常形態を損なうことはないし、断熱層21が設けられることによりその材質などの種々な面で衛生上の問題を生じることはない。
【0011】
断熱層21は閉じ空間であると、空気の対流や逃げによる熱の移動を抑制するので断熱性を発揮できる。閉じ空間はステンレス鋼や合成樹脂など熱伝導性の低い材料により形成した真空二重空間であると、特に高い断熱効果を発揮するので、大きなかさを取らずに大きな断熱効果が得られる。もっとも、断熱層21は発泡樹脂、発泡ゴムなどの発泡材、その他の一般の断熱部材よりなるものでよく、特別な材料は特に必要でない。しかし、蓋8内に設けられて上記のような断熱効果を発揮するものであれば、他の知られたもの、あるいはこれから開発され提供されるもの全てを利用することができる。
【0012】
また、断熱層21は上記において特に、蓋8の内部の蒸気通路9以外の部分に設けるようにすることもできる。このように、二重ないしはそれを上回る多重な蓋8の蒸気通路9が設けられる以外の部分を利用して、従って、蒸気通路9を通じた蒸気の放出の邪魔をすることなく断熱構造を付与することができ、真空二重容器3の開口7から蓋8を通じ外部に熱が逃げるのを最小限に抑えて、省エネを図ることができる。蒸気通路9が蓋8の一部のほぼ縦方向領域に設けられ、そのまわりに断熱層21が環状に設けられれば、蒸気通路9は蓋8の一部に集約配置することでそのスペース占有率を小さくし、その分だけ断熱層21を多く設けられるようにすることができ、より省エネ効果の高いものとすることができる。
【0013】
また、蒸気通路9が蓋8内の二重ないしは多重の層にて、他の層に設けられた断熱層21と少なくとも外部への蒸気出口9a部で上下に重なって設けられるようにすることもできる。このようにすると、蒸気通路9の外部に直接通じる蒸気出口9a部に、真空二重容器3の内筒1内の熱が直接熱伝導して到達するのを断熱層21が邪魔をするので、蒸気通路9で熱効率が低下するのを軽減し、省エネ効果を向上することができる。
【0014】
断熱層21が蓋8内の二重ないしは多重の層にて互いに上下に重なった部分を有して設けられていると、蒸気通路9など他の種々な必要構造を避けた配置で自由度高く設けられながら、全体では真空二重容器3内の熱が蓋8を通じて外部に逃げるのを防止しやすくすることができ、省エネ効果を高めることができる。
【0015】
さらに、蓋8の内部の蒸気通路9以外の部分の空間の二重ないしは多重の層を利用して、その一層以上の層に断熱層21を設け、この断熱層21が平面から透視して見たときの真空二重容器3の開口に対する覆い率が80%以上に及んで設けるようにもする。このように、蓋8の二重ないしは多重の層を利用して、その一層以上の層に断熱層21を設けて、真空二重容器3の開口7に対する覆い率が80%以上に及ぶことにより、真空二重容器3内の熱が蓋8を通じて外部に逃げるのをほぼ全域を断熱層21で覆った場合にほぼ近い断熱効果が得られ、高い省エネ効果を発揮することができる。
【0016】
上記の各場合において、断熱層21が真空二重容器3の開口7内に入り込んで位置していると、真空二重容器3の真空断熱空間11での断熱領域と、蓋8の断熱層21による断熱領域とが、真空二重容器3の開口7部に入り込み、互いの断熱領域によって内筒1内の貯湯域をほぼ切れ目なく包み込めるので、全体の断熱効果が各段に向上する。
【0017】
なお、断熱層21は内側へ熱を反射させる熱反射層を含むものでもよい。この断熱層21をなす熱反射層は、シート材や板材のインサート成形、貼着、溶射、メッキ、塗布、鏡面仕上げの少なくともいずれか1つによって形成されればよく、熱反射面を構成する層ないしは面があればよく、スペースを特に取らないので、2重ないしはそれを上回る多重の層を利用して、蓋8内部のどの箇所にも設けられるし、上記各場合の断熱構造と複合して用いやすく、より高い断熱効果を得るのに好適である。
【0018】
また、蒸気通路9に、所定の蒸気圧に負けない間蒸気通路9を常閉する図19の参考例13で示すような蒸気弁68を設けると、蒸気通路9を通じた外部への熱の逃げを蒸気弁68が閉じている間抑えることができ、断熱効果がさらに向上しより省エネを図ることができる。
【0019】
ここで、図に示す各参考例および実施の形態について詳述する。図1〜図4に示す参考例では、真空二重容器3は図1に示すように合成樹脂製の外装ケース12に収容されて電気貯湯容器の器体13を構成している。しかし、真空二重容器3の胴部が外部に露出して器体13を構成してもよい。いずれにしても、真空二重容器3の内筒1内の内容液はヒータ4により外部から加熱されて貯湯され、吐出ポンプ14により吐出路5を通じ外部に吐出されて使用される。吐出路5の真空二重容器3の胴部の外側を立ち上がる立上がり部に透明または半透明の材料で形成されたパイプよりなる液量表示部5aを有し、これが器体13の透明板を嵌め合わせるなどした液量表示窓57を通じて外部から視認されるようにしている。
【0020】
真空二重容器3はその開口7の外縁に、この真空二重容器3を構成する内外筒1、2で外鍔3dを形成し、この外鍔3dを器体13の肩部16の上向きの段部17上に、この段部17に続く立上がり壁18に対向して配置してある。外装ケース12は合成樹脂製で底と胴とが一体に形成されている。しかし、金属製でもよく胴が金属製である場合は、構造や形状が複雑になりがちな底は合成樹脂製にするのが好適である。外装ケース12が底、胴とも合成樹脂製であっても、成形や全体の組み立てなどとの関係から必要に応じて分割されてもよい。真空二重容器3の内外筒1、2はともに熱伝導性の低い金属であるステンレス鋼板製で、断熱性の確保に好適であるが、特にこれに限られることはなく、場合によっては他の金属材料を用いることもできる。真空二重容器3を構成している内外筒1、2は耐圧性の上で金属製であるのが好適である。しかし、内部に支持スペーサを設けるなどすれば合成樹脂など他の材料のものでも使用することができる。これによると断熱性がさらに向上する。
【0021】
内筒1は底を持った容器形状をしているが、外筒2は筒形状であって下端部が内側へ折り曲げて内筒1の底に外側から当てがいろう接などして真空漏れがないように一体化している。これによってできる真空二重容器3の一重の底部3cの外側にヒータ4を当てがって内容液を効率よく加熱し、湯沸しや保温ができるようにしている。真空二重容器3の外鍔3dは、内外筒1、2の各外鍔を重ねた外周部どうしを溶接接合している。これにより、内外筒1、2の前記溶接接合による一体化を、内外筒1、2の外鍔どうしの合わせ目での外まわりからのTIG溶接などで容易に達成することができる。
【0022】
この内外筒1、2の外鍔どうしが重なった状態での溶接接合を行うために、外筒2は外鍔の内周から真っ直ぐ下に延びるストレートな胴部分を持ったものとし、内筒1は外筒2の開口部内周に密に嵌まり合う口部3bを持つとともに、これに続く内側にやや絞って形成した開口7を介して、外筒2の胴部に近い径まで拡張した胴部を持ち、外筒2との間に真空断熱空間11をなす閉空間を形成するようにしている。開口7が小さいほど、真空二重容器3内から蓋8を通じて上方に向かう熱の逃げを防止するのに真空断熱空間11の働きが増大する。
【0023】
器体13の肩部16は、形状や構造が複雑なことから合成樹脂製の独立した肩部材としてある。肩部材16は外装ケース12の上端に上方から嵌め合わせ、肩部材6の内周を形成している立上がり壁の下部にある上向き段部17上に真空二重容器3の前記外鍔3dを載置して支持し、真空二重容器3の底部と外装ケース12の底との間を図示しない金具とねじとにより連結して、外装ケース12、肩部材16、および真空二重容器3を一体に結合し器体13を構成している。
【0024】
器体13の肩部材6が形成する開口118には前記の蓋8が設けられ、この開口118を真空二重容器3の開口7とともに開閉するようにしてある。この開閉のために蓋8は肩部材16の後部に設けられた軸受部19に、ヒンジピン22によって着脱できるように枢支されている。蓋8の着脱は、ヒンジピン22を中心にした回動により開閉する動作において、蓋8が器体13の開口7との嵌まり合い位置から外れた開き位置でヒンジピン22を、軸受部19に対し、その内向きのスリットを通じて嵌め入れたり引き出したりして行える。
【0025】
蓋8の内筒1内からの蒸気を外部に逃がす蒸気通路9は、蓋8の上面に前記蒸気出口9aが形成され、下面に内筒1から蓋8への蒸気入口9bが形成されている。蒸気通路9の途中には、器体13が横転して内容液が進入してきた場合にそれを一時溜め込み、あるいは迂回させて、蒸気出口9aに至るのを遅らせる安全経路9cを設けてある。これにより、器体13が横転して内容液が蒸気通路9を通じて外部に流出するまでに器体13を起こすなどの処置ができるようになる。
【0026】
また、蒸気通路9には器体13の横転時に、蒸気通路9に進入しようとし、あるいは進入した内容液が先に進むのを阻止するように自重などで働く転倒時止水弁23が適所に設けられている。図示する参考例1では蒸気入口9bの直ぐ内側の一か所に設けてある。
【0027】
蓋8の前部には閉じ位置で肩部材16側の係止部24に係合して蓋8を閉じ位置にロックするロック部材25が設けられ、蓋8が閉じられたときに係止部24に自動的に係合するようにばね26の付勢によってロック位置に常時突出するようにしている。これに対応して蓋8にはロック部材25を後退操作して前記ロックを解除するロック解除部材27が設けられている。ロック解除部材27は図2に示すように軸29によって蓋8に枢支されたレバータイプのものとされ、前端を親指などで押し下げて反時計回りに回動させることでロック部材25をばね26に抗して後退させてロックを解除し、続いてロック解除操作で起き上がったロック解除部材27の後端を他の指で持ち上げることによりロックを解除された蓋8を持ち上げこれを開くことができる。
【0028】
吐出ポンプ14は電動の遠心ポンプであって真空二重容器3の直ぐ下の位置に設けられ、真空二重容器3内から流れ込む内容液を吐出路5を通じて器体13外に臨む吐出口5dに向け送りだし、吐出口5dから外部に吐出させ使用に供する。吐出ポンプ14は真空二重容器3内に空気を送り込んで内容液を加圧し、吐出路5を通じて押出吐出させるようにも設けられる。また、いずれの吐出方式でも手動ポンプに置き換えることができる。
【0029】
外装ケース12の底と真空二重容器3の底部との間の空間には、前記吐出ポンプ14とともに、ヒータ4や吐出ポンプ14を通電制御する制御基板29を収容する回路ボックス32が設置されている。図示する実施例では回路ボックス32は外装ケース12の底の開口部に一体形成して設けてあるが、底と別体に形成してねじ止めなどして設けてもよい。また、回路ボックス32は下向きに開口しているがこれを閉じる蓋を設けることもできる。真空二重容器3の一重底部3cの中央には温度センサ33が下方から当てがわれ、内容液のその時々の温度を検出して、湯沸しや保温モードで内容液を加熱制御する場合の温度情報を得る。
【0030】
器体13の肩部材16の前部に突出する嘴状突出部34の上面には操作パネル35が設けられ、モード設定などの操作部や、操作に対応する表示、あるいは動作状態を示す表示を行うようにしてある。操作パネル35の下には前記操作および表示に対応する信号の授受および動作を行う操作基板36が設けられている。
【0031】
吐出路5は真空二重容器3と外装ケース12の間を立上がって後、器体13の嘴状突出部34と外装ケース12側のパイプカバー部37との間に入った部分で逆U字状のユニット5cを構成し、このユニット5cの吐出路5の立上がり部と繋がる部分に転倒時止水弁38および傾き止水弁39、および前記吐出口5dを設けている。吐出口5dはパイプカバー部37の底部開口およびこの開口に下方から後付けした吐出口カバー41を通じて外部に下向きに開口している。
【0032】
外装ケース12の底にある開口には下方から蓋板42を当てがってねじ止めや部分的な係合により取付け、蓋板42の外周部には回転座環43が回転できるように支持して設けられ、器体13がテーブル面などに定置されたときに回転座環43の上で軽く回転して向きを変えられるようにしてある。
【0033】
蓋8は図2に示すように、樹脂製の上板51と下板52とで中空に形成した上蓋53と、この上蓋53の下面に当てがいねじ54でねじ止めなどしたステンレス鋼などの金属製の内蓋55とで基本構造が形成され、内蓋55の外周に嵌め着けて上蓋53との間に挟み込まれたシールパッキング56のシールリップ56aが真空二重容器3の開口7の口縁上面に圧接して開口7を密に閉じるようにしてある。これによって、内筒1による開口7と内蓋55との間を通じて、蒸気や熱が外部に逃げるのを防止することができ、断熱効果を高める。
【0034】
蒸気通路9は、上板51、下板52、および下板52の凹部に下方から嵌め付け、および内蓋55と下板52との間に挟み付けた2枚の補助板58、59によって上下に多重な迷路に構成している。このため、蒸気通路9の蒸気入口9bから蒸気出口9aまでの距離はかなり長く、また、途中を大きな液溜まりにした安全経路9cを形成することができていて、器体13が転倒して内容液が蒸気通路9を通じて外部に流出しようとするときの、内容液が流出に至るまでの時間を十分に長くとれるようになる。
【0035】
また、このような安全経路9cを含め部分的には5重構造をなし、上板51および下板52がなす最上部の中空層内に断熱材61を内蔵することにより前記断熱層21を形成している。この参考例1では蓋8の上記多重構造を利用して断熱層21が蒸気通路9の蒸気出口9aの部分を除く他の部分と異なった層にて互いに上下に重なって設けられことにより、断熱材61は蒸気通路9の蒸気出口9aの部分、ロック部材25およびロック解除部材27の設置領域を避けさえすれば設けられる構造となり、断熱層21は真空二重容器3の開口7のほぼ90%の範囲を蓋8内で覆うことができる。しかし、80%の範囲を覆えれば100%覆った場合にぼほ匹敵する断熱効果が得られる。
【0036】
蒸気通路9を形成するのに蒸気出口9aと重なる層部分がないように配慮すると、蒸気出口9aと重なる他の層に断熱材を設けることにより、蒸気出口9aが位置する部分の縦方向の一部に断熱材が存在して熱が上方へ断熱材なしに逃げるようなことを防止することができる。もっとも、蓋8の合成樹脂による多重構造そのものも、途中の空気層を入れて一種の断熱構造ではある。また、ロック部材25やロック解除部材27の設置領域に重なって在る他の中空層を利用して断熱部材を設ければ、この設置域でも断熱材なしに熱が上方へ逃げるのを防止することができる。
【0037】
図4〜図6に示す参考例2は、真空二重容器3の外鍔3dが、内筒1のストレートな胴の上端に設けた鍔と外筒2のストレートな胴の上端に設けた鍔とを上下に重ねて接続したものとしてあり、真空断熱空間11が外鍔3dの部分にまで及んでいるので、真空二重容器3の開口7まわりでの断熱効果が高まる。しかも、蓋8の多重構造は参考例1の場合とほぼ同様であるが、参考例1と同様に配した断熱材61に加え、下板52の直ぐ上の蒸気通路9を形成しているまわりの環状領域にも断熱材62を設けて、断熱層21を多重に形成している。
【0038】
断熱材62は断熱材61と重なる領域での熱の上方への逃げを2重に防止して第1の実施例の場合よりも断熱効果を高めるし、断熱材61と重ならない領域では参考例1の場合よりも断熱層21による熱の上方への逃げを防止する領域を拡大する。従って、参考例1の場合に比し断熱性が大きく向上する。しかも、環状の断熱材62は、真空二重容器3の真空断熱空間11を形成している領域にまで、内蓋55および下板52とともに若干入り込むように設けられているので、真空二重容器3の真空断熱空間11での断熱領域と、蓋8の断熱層21による断熱領域とによって内筒1内の貯湯域を切れ目なくほぼ包み込めるので、全体の断熱効果が各段に向上する。また、これによって、内筒1はストレートな胴として開口7を第1の実施例のように小さく絞る構成をとらなくても十分な断熱効果を発揮することができ、開口7を大きくしてよい分だけ洗浄などの際の作業や取り扱いが容易になる。
【0039】
なお、ロック解除部材27の後端部には安全蓋71が設けられている。安全蓋71は軸72で後端部が回動できるように支持され、先端部がばね73の付勢によってロック解除部材27の後端部に下方から当接されている。安全蓋71は、ロック解除部材27が蓋8のロックを解除する操作をされて後端部が上動するのに追随し、安全蓋71を押し下げてしか、ロック解除部材27の上動した後端部に指を掛けられないので、この後端部を指で引き上げるのに安全蓋71を先ず押し下げると云う動作が必ず要るので、これが後端部が不用意に引き上げられる誤操作、あるいはいたずら操作を防止し、使用の安全を図ることができる。
【0040】
他の構成および奏する作用は参考例1の場合と特に変わるところはないので、同じ部材には同じ符号を付して示し重複する図示および説明は省略する。
【0041】
図7に示す参考例3は、参考例2の環状の断熱材62を周方向に3等分した同一形状の分割体62aとし、部品の小型化と共通化による生産性の向上とコストの低減を図っている。分割体62aはロック部材25およびロック解除部材27などとの重なりのために厚みを薄くした薄肉部62a1を、層でない厚肉部62a2の両端部に一体に形成されたものとしている。しかし、形状は蓋8の構造による断熱材を設置できる空間の形状や大きさに合わせて種々に設定すればよい。
【0042】
図8に示す参考例4は、環状の断熱材62を配置するのに、破線で示すようにそのままの形状を断熱シート材62bから裁断して生地取りするのでは、2つしか取れない。それを実線で示すように4等分した分割体62aとして生地取りすることによって、同じ大きさの断熱シート材62bから3つ分の環状の断熱材62を生地取りできるようにしている。この意味では、参考例3の分割体62aの場合もこれに近い利点を発揮する。
【0043】
図9、図10に示す参考例5、6は、ブロー成形した中空断熱材75を蓋8内に内蔵して断熱層21を形成している。このような中空断熱材75は空気を狭い空間に閉じ込めることにより、空気が自由に移動することによる熱の移動を防止して真空二重容器3内の熱が蓋8を通して上方に逃げるのを抑制し断熱を図る。図示例のように中空断熱材75が形成する密閉空間75aが薄いと内部での空気の対流自体もよく防止されて断熱効果はさらに高くなる。中空断熱材75は極く薄いものでも柔軟な樹脂材料で成形して、破損などしないで、しかも他への馴染み度を高めて取り扱えるので、蓋8内の形状が複雑で狭い空間に収容するのに好適であり、図9、図10の参考例5、6のようにロック部材25とロック解除部材27との間の隙間にも配置でき、蒸気通路9の流出口9aを除いた他の部分全域を覆うことができ、高い断熱効果を発揮する。
【0044】
特に、図9の参考例5では2つの中空断熱材75に分割して収容しているが、図10の考例6では前記柔軟性およびフィット性を活かして全体を1つの中空断熱材75にして収容しており、成形および組立の手間が簡略化するのでさらにコストの低減が図れる。
【0045】
図11、図12に示す本発明の実施の形態は、参考例1、2を参照して説明した電気ポットの基本構成を有した上で、蒸気通路9を蓋8のほぼ中央に集中配置して、多重構造により必要長さの迂回経路にして器体転倒時の安全を図りながら、その回りの全域に環状の断熱材62を2段に配して断熱するとともに、蓋8内の最上の部分に今1つの断熱材61を収容して蒸気通路9の流出口9a部を除くほぼ全域の上部を覆って断熱するようにしてある。また、2段の断熱材62はそれぞれ流出口9aと上下に重なって断熱するし、平面より透視して示すと図12のように各断熱材61、62、62は真空二重容器3の開口7および118の全域を越えて器体13の上端のほぼ全域に至る範囲の全体を覆っているので、蒸気通路9やその流出部9aを含むどの部分においても断熱材なしに真空二重容器内の熱が蓋8の上方へ抜けるのを防止することができる。しかも、これら断熱材61、62、62は、真空二重容器3の真空断熱空間11、および内筒1の開口7を小さく絞って形成している内側への拡張真空断熱空間11aを含めて、器体13の上端のほぼ全域に至る範囲のほぼ全体を多重に覆っているのと、最下段の断熱材62は樹脂製や金属製の内蓋55とともに、内筒1の開口7内に深く入り込む構造としてあることにより、真空二重容器3の上端部での断熱効果が格段に高いものになっている。
【0046】
図13に示す参考例7は、蓋8内の蒸気通路9の構造を1枚の補助板59だけを利用した簡単なものにして、蓋8を第1、第2の実施例の5重構造よりも簡略化した4重構造に構成してある。これにより蓋8を特に大きくすることなく蒸気通路9の上の流出口9aまわりの内部空間が最上位置に大きく取れるようになり、ここに厚く広範囲に亘る断熱材61を1つ収容するだけで、十分な断熱効果が得られるようにしてある。
【0047】
図14に示す参考例8は、参考例7とほぼ同様な多重構造の蓋8において、蒸気通路9を一か所に集中形成して多重構造で必要な長さの経路を確保しておいて、蒸気通路9まわりの蓋8内の中空領域をさらに拡大してより広範囲に断熱材61、62を収容できるようにして、断熱効果の向上を図っている。本実施例では特に断熱材61は各部に分割してあり、蓋8の形状やロック部材25の配置などに対応しやすくしている。
【0048】
図15に示す参考例9は、蓋8の内蓋55と内筒1の開口7との間をシールするシールパッキング56に中空のシールリップ56bを設けることにより、内蓋55および内筒1の開口7との間から外部へ熱が逃げるのを防止しやすくし、その分断熱効果が向上するようにしている。従って、他の実施例のものに複合して用いて特に有効である。
【0049】
図16に示す参考例10は、蓋8の上板51の内側にステンレス鋼などの金属製で真空二重構造にした真空断熱材66を嵌め付けて上蓋53を形成し、真空断熱材66と金属製の内蓋55との間に樹脂製の補助板58、59を配して蒸気通路9を形成している。真空断熱材66は金属製で剛性が高いものであることにより、上板51や内蓋55などとの結合力が十分であるので、結合構造が単純化し、蓋8がかさ低くなる。同時に真空断熱材66の蓋8でのスペース占有率を高め高い断熱効果を発揮できる。
【0050】
図17の参考例11は、金属製の真空断熱材66の剛性が高いのを利用して蓋8の枠状に形成した上板51に嵌め合わせて、それ自体の一部が蓋8の外面、一例として上面の大半を形成する簡略構造としてある。これによって外観も他の実施例に比し特異なものとなる。しかし、金属製の真空断熱材66はどのような範囲にどのようにもうけてもよく、各種断熱層と多重に形成することもできる。
【0051】
要するに、金属製の真空断熱部材66は剛性が高く蓋8の外面を形成して、金属外面を一部に持った特異な外観の蓋構造が実現するし、断熱性が高くかつ蓋8内のデッドスペースを埋める広さにもうけることで、これ一重の断熱層でも高い断熱性を発揮でき、電気貯湯容器の保温性が向上する。
【0052】
図18、図19に示す参考例12、13は、蒸気通路9に、所定の蒸気圧に負けない間蒸気通路9を常閉する蒸気弁67、68を設けてある。これにより蒸気通路9を通じた外部への熱の逃げを蒸気弁67、68が閉じている間抑えることができ、断熱効果がさらに向上しより省エネを図ることができる。
【0053】
参考例12の蒸気弁67は自重で閉じる例えばボール弁であるのに対し、参考例13の蒸気弁68は軸74で回動できるように支持さればね69により閉じ側に付勢されたバタフライ弁としてある。
【0054】
図20に示す参考例14は、蓋8の内蓋55の上面に断熱層175を積層して形成している。断熱層175はAl2 3 を溶射したものであるが、ステンレス鋼製の内蓋55の上面をブラスト処理して荒らした後に溶射を行い、さらに封孔処理している。これにより好適な断熱効果が専用スペースがほとんど要らないで得られる。従って、他の断熱構造を複合して用いやすい。
【0055】
図21に示す参考例15は、蓋8の下板52の上面にAl層76を蒸着メッキし、上方へ逃げようとする熱を金属製二重容器3の側に反射させて断熱するようにしてある。これも、スペースを取らないので他の断熱構造と複合して用いやすい。
【0056】
図22に示す参考例16は、器体13の肩部材16を、真空二重容器3の外鍔3dを直接受ける合成樹脂製の肩受け77と、これと器体13とを繋ぐ外側部材78とに分割してねじ79などで連結し、真空二重容器3を伝う熱が肩受け77を介することによって外部に逃げにくくしてある。従って、肩受け77は熱伝導性の低い材料を選択するのが好適である。
【0057】
図23に示す参考例17は、肩部材16の外周部を蓋8の上板51で覆うことによって、真空二重容器3、肩部材16を通じて熱が外部へ逃げようとするのを抑制し断熱効果が得られるようにしている。
【0058】
【発明の効果】
本発明の真空二重容器を持った電気貯湯容器の主たる特徴によれば、真空二重容器の内筒内の内容液をヒータで加熱して湯沸かしや保温をし貯湯するのに、真空二重容器およびそれが形成する器体の開口部を閉じる蓋に設けた蒸気通路によって蒸気を外部に逃がす構造でありながら、真空二重容器まわりではその内筒と外筒との間の真空断熱空間によって熱が外部に逃げるのをよく防止されるのに併せ、そのような断熱効果のない前記開口部では、前記蒸気通路と合わせ、前記蓋内の上段部に前記蒸気通路の前記流出口を除く上部を覆う断熱材、中段部、下段部に前記蒸気通路の外回りに位置する環状の断熱材を設けることで、真空二重容器およびそれが形成する器体の開口部を上回るほぼ全体を覆って断熱効果が格段に高いものとして上部に熱が逃げるのを抑制するので、電気貯湯容器全体の熱効率が向上し従来に増して省エネ化が図れる。しかも、断熱層は外部から視認されないので蓋の通常形態を損なうことはないし、断熱層が設けられることによりその材質などの種々な面で衛生上の問題を生じることはない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の電気ポットの参考例1を示す断面図である。
【図2】図1の電気ポットの蓋部の断面図である。
【図3】図1の電気ポットの正面図である。
【図4】参考例2の電気ポットを示す断面図である。
【図5】図4の電気ポットの蓋の断面図である。
【図6】図4の電気ポットの上面図である。
【図7】参考例3の電気ポットの上面図である。
【図8】参考例4の断熱材の材料取りを示す平面図である。
【図9】参考例5の電気ポットの蓋部の断面図である。
【図10】参考例6の電気ポットの蓋部の断面図である。
【図11】本発明の実施の形態の電気ポットの蓋部を示す断面図である。
【図12】図11の電気ポットの蓋部の平面図である。
【図13】参考例7の電気ポットの蓋部の断面図である。
【図14】参考例8の電気ポットの蓋部の断面図である。
【図15】参考例9の電気ポットの蓋部の一部断面図である。
【図16】参考例10を示す電気ポットの蓋部の断面図である。
【図17】参考例11を示す電気ポットの蓋部の断面図である。
【図18】参考例12を示す電気ポットの蓋部の断面図である。
【図19】参考例13を示す電気ポットの蓋部の断面図である。
【図20】参考例14を示す電気ポットの蓋部の断面図である。
【図21】参考例15を示す電気ポットの蓋部の断面図である。
【図22】参考例16を示す電気ポットの蓋部の断面図である。
【図23】参考例17を示す電気ポットの蓋部の断面図である。
【符号の説明】
1 内筒
2 外筒
3 真空二重容器
4 ヒータ
5 吐出路
118 開口
8 蓋
9 蒸気通路
11 真空断熱空間
13 器体
14 吐出ポンプ
21、175 断熱層
61、62 断熱

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内筒と外筒により構成される真空二重容器と、内筒内の内容液を加熱するヒータと、内容液を外部に案内する吐出路と、この吐出路を通じて内容液を吐出させる吐出ポンプと、真空二重容器の開口を閉じる蓋と、この蓋に設けられ蒸気を外部に放出する蒸気通路とを備え、
蒸気通路は真空二重容器内に開口する蒸気入口部から蓋の中央部を上方に立ち上がり、この蒸気通路の上部に蓋の周辺側に変位した位置で蓋上面に開口する流出口を有し、蓋内の上段部に前記蒸気通路の前記流出口を除く上部を覆う断熱材を設け、蓋内の中段部と下段部とに前記蒸気通路の外回りに位置する環状の断熱材を設け、下段部の断熱材は真空二重容器の開口内に入り込むようにしたことを特徴とする真空二重容器を持った電気貯湯容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【特許番号】特許第3574586号(P3574586)
【登録日】平成16年7月9日(2004.7.9)
【発行日】平成16年10月6日(2004.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−57852
【出願日】平成11年3月5日(1999.3.5)
【公開番号】特開2000−253997(P2000−253997A)
【公開日】平成12年9月19日(2000.9.19)
【審査請求日】平成12年2月24日(2000.2.24)
【審判番号】不服2002−3895(P2002−3895/J1)
【審判請求日】平成14年3月7日(2002.3.7)
【出願人】(000003702)タイガー魔法瓶株式会社 (509)
【合議体】
【参考文献】
【文献】特開平10−127494(JP,A)
【文献】特開平7−16156(JP,A)
【文献】特開平9−238840(JP,A)
【文献】特開平6−284969(JP,A)
【文献】実開昭63−8841(JP,U)
【文献】実開平3−3932(JP,U)
【文献】実開平6−21522(JP,U)