説明

真空吸着装置及びその製造方法

【課題】対象物が載置される多孔質体の平滑度の向上を図りながらも当該多孔質体の強度の向上を図ることができる真空吸着装置及びその製造方法を提供する。
【解決手段】アルミナ粉末と、二酸化珪素の粒子と、1A族、2A族及び3A族の元素のそれぞれの酸化物、水酸化物、硝酸塩及び炭酸塩から選ばれる少なくとも1つ以上の添加物粉末とを含むスラリーが調整される。このスラリーが支持部2の基礎となるセラミックス成形体に形成されている凹部21に充填される。成形体が凹部21に充填されたスラリーの乾燥物とともにシリカ−アルミナ系複合酸化物の軟化点以上の温度で熱処理される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば、ラップ等の湿式加工を行うために半導体ウエハ又はガラス基板などの対象物を真空吸着する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
出願人により、多孔質体からなる載置部と、緻密質体からなる支持部とが、接合界面に隙間が生じないように一体的に焼成されてなる真空吸着装置が提案されている(特許文献1参照)。当該真空吸着装置によれば、その洗浄時に載置部および支持部の隙間を通じた洗浄液の漏れが防止され、載置部の多孔質体内に残留した研削屑等の汚染物質が十分に除去されうる。
【0003】
この真空吸着装置の載置部における骨格粒子径は30〜150[μm]であり、気孔径は10〜150[μm]である。この範囲では、図2(b)に示されているように、載置部を構成する骨格粒子径及び気孔径のそれぞれが比較的大きいために、載置面の平滑度が低い載置部が実現されうる。このため、気孔を通じて薄い平板状の対象物Wに対して気孔を通じて吸引力を作用させると、この対象物Wが変形してしまう可能性がある。
【0004】
また、載置部の構成原料となるガラス粉末は、平均粒子径が載置部のもう一方の構成原料であるセラミックス粉末の平均粒子径より小さくなるように調節されている。具体的には、ガラス粉末は、セラミックス粉末の平均粒子径の1/2以下、更に好ましくは1/3以下に調節される。これは、図3(b)に模式的に示されているように、ガラス粉末(斜線が付されている。)の粒子径が大きいと、骨格粒子(白抜きで示されている。)の充填が阻害され、ガラス溶融時に骨格粒子の収縮が発生し、載置部と支持部との接合界面に隙間が生じるためである。
【0005】
この真空吸着装置の製造に際して、セラミックス粉末及びガラス粉末が、水又はアルコールが加えられた上で混合されることによりスラリーが調整され、このスラリーが支持部に形成されている凹部に充填される。この際、スラリー中の粒子の空間充填率の向上を図るため、支持部を介して凹部に充填されるスラリーに対して振動が加えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4336532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、ガラス粉末は骨格粒子よりも粒子径が小さく調節されているため、振動に応じてガラス粉末がスラリーの上層部に移動し、これにより骨格粒子とガラス粉末とが分離してしまう。そこで、スラリーに対して分散剤を添加することが対応措置として挙げられる。
【0008】
しかるに、分散剤の影響により、スラリー中の粒子の充填が阻害され、得られるセラミックス多孔質体の気孔率が大きくなり、真空吸着装置として使用する観点からその強度が不十分なものとなる可能性がある。さらに、骨格粒子の粒径が小さくなるほど、その充填率の向上を図るために前記のようにガラス粉末の粒径も(例えば2.0[μm]以下に)小さくすることが困難となり、これに要するコストの増大及び粉砕によって生じる不純物がスラリーに混入にする可能性がある。
【0009】
そこで、本発明は、対象物が載置される多孔質体の平滑度の向上を図りながらも当該多孔質体の強度の向上を図ることができる真空吸着装置及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するための本発明の真空吸着装置は、載置面に物体を吸着保持するためのアルミナ多孔質体からなる載置部と、前記載置部の気孔に連通する吸気孔を有する緻密質アルミナセラミックスからなる支持部とを備え、前記アルミナ多孔質体は、骨格粒子となるアルミナ粉末が1A族、2A族及び3A族の元素のうち少なくとも1種を含むシリカ−アルミナ系複合酸化物によって結合されることにより構成され、前記載置部と前記支持部との接合界面が隙間なく構成され、前記アルミナ多孔質体の気孔径が1〜20[μm]以下であり、気孔率が10〜50%であることを特徴とする。
【0011】
前記課題を解決するための本発明の真空吸着装置の製造方法は、純度が95.0%以上、又は、96.5〜99.6%であり、平均粒子径が50[μm]以下であるアルミナ粉末と、平均粒子径が0.5[μm]以下であり、添加量がアルミナに対して5〜30[重量%]である二酸化珪素の粉末と、平均粒子径が1.0[μm]以下であり、添加量がアルミナに対して酸化物換算で3〜20[重量%]である1A族、2A族及び3A族の元素のそれぞれの酸化物、水酸化物、硝酸塩及び炭酸塩から選ばれる少なくとも1つ以上の添加物粉末とを、水又はアルコールを加えて混合することによりスラリーを調整するスラリー調整工程と、前記支持部の基礎となるセラミックス成形体に形成されている凹部に前記スラリーを充填するスラリー充填工程と、前記成形体を前記凹部に充填された前記スラリーとともにシリカ−アルミナ系複合酸化物の軟化点以上の温度で熱処理する焼成工程とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の真空吸着装置及びその製造方法によれば、載置部1を構成する骨格粒子径及び気孔径のそれぞれの低下が図られることにより、図2(a)に示されているように載置面10の平滑度の向上が図られる。このため、薄い平板状の対象物Wであってもこれを変形させることなく(図2(b)参照)、気孔を通じて対象物Wに対して全体的に吸引力を作用させることができる。また、気孔径の低下が図られているので、載置部1の載置面10よりも面積が小さい対象物であっても、圧損の効果により負圧を低下させること無く、当該対象物を載置部に対して吸着させる部分吸着が可能となる。
【0013】
載置部1を構成する骨格粒子間にシリカ−アルミナ系の複合酸化物が、強固な結合力を有する結合材として機能する。このため、載置部1の強度の向上が図られる。この複合酸化物は、骨格粒子となるアルミナ粒子の表面層と、二酸化珪素と、1A族、2A族及び3A族の元素のうち少なくとも1種とが反応することにより形成されたものである。
【0014】
さらに、前記のように、水を分散媒として二酸化珪素(無水珪酸)の超微粒子を水中に分散させたコロイド溶液(コロイダルシリカ)が用いられる。二酸化珪素の微粒子が分散媒中に均一に分散しているので、スラリーを充填する工程の際に骨格粒子との分離が回避されうる。また、骨格粒子の粒径が小さい場合であっても、ガラス粉末のように粉砕の必要が無い。
【0015】
このため、図3(a)に示されているように、二酸化珪素粉末(斜線が付されている。)により、骨格粒子(白抜きで示されている。)の充填が阻害されることはない。その結果、アルミナ多孔質体の機械的強度が、真空吸着装置に採用される載置部1として採用される観点から十分なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態としての真空吸着装置の構成説明図。
【図2】多孔質体の骨格粒子の平均粒子径と吸着性能との関係に関する説明図。
【図3】多孔質体における骨格粒子の充填態様に関する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(真空吸着装置の構成)
図1(a)に示されている本発明の一実施形態としての真空吸着装置は、平板状のセラミックス多孔質体からなる載置部1と、セラミックス緻密質体からなる支持部2とを備えている。支持部2は、凹部21と、溝部22と、貫通孔23とを備えている。
【0018】
凹部21は、支持部2において上端面20よりも下方に窪んでおり、環状の側面によって周囲を囲まれている部分である。凹部21の底面は支持部2の上端面20と略平行に形成されている。
【0019】
溝部22は、凹部21の底面よりも下方に窪んでおり、凹部21の底面に接触するように配置される載置部1の底面の気孔に対して連通するように形成されている。載置部1が存在しない状態で支持部2を上方から臨んだ場合、図1(b)に示されているように、溝部21は、3つの同心円と、当該同心円の中心を通る2つの直交する線分とが組み合わせられたような形状を有している。載置部1の底面の気孔に対して溝部22が連通することを条件として、その形状及び配置態様はさまざまに変更されてもよい。
【0020】
貫通孔23は、支持部2を上下方向に貫通して溝部22に対して連通するように形成されている。貫通孔23は、例えば図1(b)に示されているように、3つの同心円のうち内側から2番目の円と、2つの線分のそれぞれとの交点箇所及び当該2つの線分の交点箇所に設けられている。
【0021】
図1(a)に示されているように、支持部2は、凹部21の側面と載置部1の側面とが全周にわたり隙間なく接合し、かつ、凹部21の底面と載置部1の底面とが溝部22を除いて隙間なく接合している状態で当該載置部1を支持する。
【0022】
載置部1における平均気孔径は1〜20[μm]の範囲に含まれ、気孔率が10〜50[%]の範囲に含まれている。載置部1の載置面10に半導体ウエハ等の対象物Wが載置された状態で、貫通孔23を通じて溝部22により画定される空間が真空ポンプ(図示略)によって減圧される。これにより、載置部1に存在する気孔によって形成される経路を通じて作用する真空吸引力によって対象物Wが載置部1に吸着される。
【0023】
(真空吸着装置の製造方法)
まず、アルミナ粉末と、二酸化珪素粉末と、1A族、2A族及び3A族の元素のそれぞれの酸化物、水酸化物、硝酸塩及び炭酸塩から選ばれる少なくとも1種以上の添加物粉末とが、水又はアルコールが加えられた上で混合されることによりスラリーが調整される(スラリー調製工程)。二酸化珪素粉末の供給源としては、例えば水を分散媒として二酸化珪素の粒子を分散させたコロイド溶液が用いられる。原料の混合法としては、ボールミル又はミキサーを用いた混合法等、公知の方法が採用される。水又はアルコールの添加量は特に限定されず、所望の流動性が得られるように適当に調整されればよい。
【0024】
前記気孔径及び気孔率の実現のため、載置部1の原料として平均粒子径が5〜50[μm]のアルミナ粉末が採用されることが好ましい。また、アルミナ粉末の表面層と、二酸化珪素及びその他の添加物との反応により、骨格粒子の結合材として機能するシリカ−アルミナ複合酸化物の形成のため、純度が95%以上、好ましくは96.5〜99.6%のアルミナ粉末が用いられることが好ましい。
【0025】
二酸化珪素の平均粒子径は0.5[μm]以下であることが好ましい。当該粒子径が0.5[μm]を超えると、二酸化珪素の粒子が凝集して、骨格粒子の収縮が発生するためである。現状では二酸化珪素の平均粒子径が0.02[μm]より小さくすることは困難であるものの、骨格粒子の収縮の発生防止という観点から、0.5[μm]以下の任意の平均粒子径の二酸化珪素が採用されればよい。二酸化珪素の添加量は、アルミナ粉末に対し、5〜30重量%であることが好ましい。
【0026】
骨格粒子との結合力を高めるために、1A族、2A族及び3A族の元素のそれぞれの酸化物、水酸化物、硝酸塩及び炭酸塩のうち少なくとも1種の添加物粉末の添加量は、例えばアルミナ粉末に対し、酸化物換算で3〜20重量%の範囲に含まれるように調節されることが好ましい。当該セラミックス粉末は二酸化珪素との反応により、骨格粒子間の強固な結合材としての役割を果たす。1A族、2A族及び3A族の元素のそれぞれの酸化物、水酸化物、硝酸塩及び炭酸塩のそれぞれの平均粒子径は1.0[μm]以下であることが好ましい。当該粒子径が、1.0[μm]を超えると未反応物質として残存するためである。例えば、1A族元素としてNa、2A族元素としてCa、3A族元素としてBが挙げられる。
【0027】
次に、支持部2の基礎となるセラミックス成形体の溝部22及び必要に応じて貫通孔23が蝋又は樹脂等の部材により閉塞される。その上で、凹部21(本発明の凹部に相当する。)にスラリーが充填される(スラリー充填工程)。この際、必要に応じて、スラリーにおける残留気泡を除去するための真空脱泡のほか、スラリー中の添加物粉末の充填率を高めるための振動が加えられる。
【0028】
次に、凹部21にスラリーが充填されたセラミックス成形体が乾燥される。その上で、成形体がスラリーの乾燥物とともにシリカ−アルミナ系複合酸化物の軟化点以上の温度、具体的には1000〜1550[℃]の範囲に含まれる温度で熱処理される(焼成工程)。1000[℃]より低温ではシリカ−アルミナ系複合酸化物が軟化せず、1550[℃]を超えるとアルミナ粉末の焼結が開始してしまうからである。載置面10は、支持部2の上端面20とともに研磨加工されることにより仕上げられる。
【0029】
(実施例)
(実施例1)
平均粒子径50[μm]かつ純度95.0%のアルミナ粉末と、平均粒子径0.48[μm]の二酸化珪素と、平均粒子径0.8[μm]のCaCO3とが混合されることによりスラリーが調製された。二酸化珪素の添加量は、アルミナに対して30[重量%]に調節された。CaCO3の添加量は、アルミナに対して酸化物換算で20[重量%]に調節された。そして、成形体及びスラリーの乾燥物が1350[℃]で3[hr]にわたって熱処理されることにより、実施例1の真空吸着装置が製造された。
【0030】
(実施例2)
平均粒子径40[μm]かつ純度96.5%のアルミナ粉末と、平均粒子径0.48[μm]の二酸化珪素と、平均粒子径0.8[μm]のCaCO3とが混合されることによりスラリーが調製された。二酸化珪素の添加量は、アルミナに対して30[重量%]に調節された。CaCO3の添加量は、アルミナに対して酸化物換算で15[重量%]に調節された。そして、成形体及びスラリーの乾燥物が1250[℃]で3[hr]にわたって熱処理されることにより、実施例2の真空吸着装置が製造された。
【0031】
(実施例3)
平均粒子径14[μm]かつ純度98.0%のアルミナ粉末と、平均粒子径0.10[μm]の二酸化珪素と、平均粒子径0.6[μm]のB23とが混合されることによりスラリーが調製された。二酸化珪素の添加量は、アルミナに対して20[重量%]に調節された。B23の添加量は、アルミナに対して酸化物換算で10[重量%]に調節された。そして、成形体及びスラリーの乾燥物が1000[℃]で3[hr]にわたって熱処理されることにより、実施例3の真空吸着装置が製造された。
【0032】
(実施例4)
平均粒子径5.5[μm]かつ純度99.6%のアルミナ粉末と、平均粒子径0.02[μm]の二酸化珪素と、平均粒子径0.2[μm]のNaOHとが混合されることによりスラリーが調製された。二酸化珪素の添加量は、アルミナに対して5[重量%]に調節された。NaOHの添加量は、アルミナに対して酸化物換算で3[重量%]に調節された。そして、成形体及びスラリーの乾燥物が1550[℃]で3[hr]にわたって熱処理されることにより、実施例4の真空吸着装置が製造された。
【0033】
(実施例5)
平均粒子径40[μm]かつ純度96.5%のアルミナ粉末と、平均粒子径0.48[μm]の二酸化珪素と、平均粒子径1.0[μm]のB23及びCaCO3とが混合されることによりスラリーが調製された。二酸化珪素の添加量は、アルミナに対して20[重量%]に調節された。B23及びCaCO3の合計添加量は、アルミナに対して酸化物換算で10[重量%]に調節された。そして、成形体及びスラリーの乾燥物が1500[℃]で3[hr]にわたって熱処理されることにより、実施例5の真空吸着装置が製造された。
【0034】
(実施例6)
添加物原料としてCaCO3及びNaOHが用いられ、成形体及びスラリーの乾燥物が1550[℃]で3[hr]にわたって熱処理されたほかは、実施例5と同様の条件下で実施例6の真空吸着装置が製造された。
【0035】
(実施例7)
添加物原料としてNaOH及びB23が用いられ、成形体及びスラリーの乾燥物が1400[℃]で3[hr]にわたって熱処理されたほかは、実施例5と同様の条件下で実施例7の真空吸着装置が製造された。
【0036】
(実施例8)
添加物原料としてB23、CaCO3及びNaOHが用いられ、成形体及びスラリーの乾燥物が1450[℃]で3[hr]にわたって熱処理されたほかは、実施例5と同様の条件下で実施例8の真空吸着装置が製造された。
【0037】
表1には、実施例1〜8の真空吸着装置の製造条件に加えて、真空吸着装置を構成する載置部1のシリカ−アルミナ複合酸化物の有無のXRDによる確認結果(有‥○、無‥×)、平均気孔径、気孔率及び機械的強度の測定結果がまとめて示されている。載置部1の平均気孔径は、水銀圧入法によって測定された。載置部1の気孔率は、アルキメデス法によって測定された。載置部1の機械的強度は、3点曲げ強度によって測定された。
【0038】
【表1】

【0039】
表1から、実施例1〜8のそれぞれの真空吸着装置の載置部は、いずれもシリカ−アルミナ複合酸化物の存在が認められ、平均気孔径が1〜13[μm]の範囲にあり、気孔率が35〜50%の範囲にあり、かつ、強度が50〜58[MPa]の範囲にあることがわかる。
【0040】
(比較例)
(比較例1)
平均粒子径60[μm]かつ純度96.5%のアルミナ粉末と、平均粒子径0.48[μm]の二酸化珪素と、平均粒子径1.0[μm]のCaCO3とが混合されることによりスラリーが調製された。二酸化珪素の添加量は、アルミナに対して20[重量%]に調節された。CaCO3の添加量は、アルミナに対して酸化物換算で10[重量%]に調節された。そして、成形体及びスラリーの乾燥物が1350[℃]で3[hr]にわたって熱処理されることにより、比較例1の真空吸着装置が製造された。
【0041】
(比較例2)
平均粒子径40[μm]かつ純度92.0%のアルミナ粉末と、平均粒子径0.48[μm]の二酸化珪素と、平均粒子径1.0[μm]のCaCO3とが混合されることによりスラリーが調製された。二酸化珪素の添加量は、アルミナに対して20[重量%]に調節された。CaCO3の添加量は、アルミナに対して酸化物換算で10[重量%]に調節された。そして、成形体及びスラリーの乾燥物が1250[℃]で3[hr]にわたって熱処理されることにより、比較例2の真空吸着装置が製造された。
【0042】
(比較例3)
平均粒子径40[μm]かつ純度96.5%のアルミナ粉末と、平均粒子径0.60[μm]の二酸化珪素と、平均粒子径1.0[μm]のB23とが混合されることによりスラリーが調製された。二酸化珪素の添加量は、アルミナに対して20[重量%]に調節された。B23の添加量は、アルミナに対して酸化物換算で10[重量%]に調節された。そして、成形体及びスラリーの乾燥物が1000[℃]で3[hr]にわたって熱処理されることにより、比較例3の真空吸着装置が製造された。
【0043】
(比較例4)
平均粒子径40[μm]かつ純度96.5%のアルミナ粉末と、平均粒子径0.48[μm]の二酸化珪素と、平均粒子径1.0[μm]のNaOHとが混合されることによりスラリーが調製された。二酸化珪素の添加量は、アルミナに対して4[重量%]に調節された。NaOHの添加量は、アルミナに対して酸化物換算で10[重量%]に調節された。そして、成形体及びスラリーの乾燥物が1550[℃]で3[hr]にわたって熱処理されることにより、比較例4の真空吸着装置が製造された。
【0044】
(比較例5)
平均粒子径40[μm]かつ純度96.5%のアルミナ粉末と、平均粒子径0.48[μm]の二酸化珪素と、平均粒子径1.0[μm]のB23及びCaCO3の混合粒子とが混合されることによりスラリーが調製された。二酸化珪素の添加量は、アルミナに対して35[重量%]に調節された。B23及びCaCO3の合計添加量は、アルミナに対して酸化物換算で10[重量%]に調節された。そして、成形体及びスラリーの乾燥物が1500[℃]で3[hr]にわたって熱処理されることにより、比較例5の真空吸着装置が製造された。
【0045】
(比較例6)
平均粒子径40[μm]かつ純度96.5%のアルミナ粉末と、平均粒子径0.48[μm]の二酸化珪素と、平均粒子径1.5[μm]のCaCO3及びNaOHの混合粒子とが混合されることによりスラリーが調製された。二酸化珪素の添加量は、アルミナに対して20[重量%]に調節された。CaCO3及びNaOHの合計添加量は、アルミナに対して酸化物換算で10[重量%]に調節された。そして、成形体及びスラリーの乾燥物が1550[℃]で3[hr]にわたって熱処理されることにより、比較例6の真空吸着装置が製造された。
【0046】
(比較例7)
平均粒子径40[μm]かつ純度96.5%のアルミナ粉末と、平均粒子径0.48[μm]の二酸化珪素と、平均粒子径1.0[μm]のNaOH及びB23の混合粒子とが混合されることによりスラリーが調製された。二酸化珪素の添加量は、アルミナに対して20[重量%]に調節された。NaOH及びB23の合計添加量は、アルミナに対して酸化物換算で2[重量%]に調節された。そして、成形体及びスラリーの乾燥物が1400[℃]で3[hr]にわたって熱処理されることにより、比較例7の真空吸着装置が製造された。
【0047】
(比較例8)
平均粒子径40[μm]かつ純度96.5%のアルミナ粉末と、平均粒子径0.48[μm]の二酸化珪素と、平均粒子径1.0[μm]のB23、CaCO3及びNaOHの混合粒子とが混合されることによりスラリーが調製された。二酸化珪素の添加量は、アルミナに対して20[重量%]に調節された。B23、CaCO3及びNaOHの合計添加量は、アルミナに対して酸化物換算で25[重量%]に調節された。そして、成形体及びスラリーの乾燥物が1450[℃]で3[hr]にわたって熱処理されることにより、比較例8の真空吸着装置が製造された。
【0048】
表2には、比較例1〜8の真空吸着装置の製造条件に加えて、真空吸着装置を構成する載置部1のシリカ−アルミナ複合酸化物の有無のXRDによる確認結果(有‥○、無‥×)、平均気孔径、気孔率及び機械的強度の測定結果がまとめて示されている。表2において「*」「**」は本発明により定義される数値範囲から外れていることを意味する。
【0049】
【表2】

【0050】
表2から、比較例1、3、5、6及び8の真空吸着装置において、載置部の平均気孔径が1〜20[μm]の範囲から外れ、載置部の気孔率が10〜50[%]の範囲から外れ、かつ、機械的強度が実施例のそれ(50[MPa]以上)と比較して著しく低いことがわかる。
【0051】
これは、比較例1では原料であるアルミナ粉末の平均粒子径が50[μm]を超えていることに由来し、比較例3では原料である二酸化珪素の平均粒子径が0.5[μm]を超えていることに由来し、比較例5では原料である二酸化珪素のアルミナに対する添加量が30重量%を超えていることに由来し、比較例6では原料である1A族、2A族及び3A族のうち少なくとも1種の粉末の平均粒子径が1.0[μm]を超えていることに由来し、比較例8では原料である1A族、2A族及び3A族のうち少なくとも1種のアルミナに対する添加量が酸化物換算で20重量%を超えていることに由来している。
【0052】
表2から、比較例2、4及び7の真空吸着装置における載置部において、シリカ−アルミナ酸化物の存在が確認されず、かつ、機械的強度が実施例のそれ(50[MPa]以上)と比較して著しく低いことがわかる。
【0053】
これは、比較例2では原料であるアルミナの純度が95.0%を下回っていることに由来し、比較例4では原料である二酸化珪素のアルミナに対する添加量が5重量%を下回っていることに由来し、比較例7では原料である1A族、2A族及び3A族のうち少なくとも1種のアルミナに対する添加量が酸化物換算で3重量%を下回っていることに由来している。
【符号の説明】
【0054】
1‥載置部、2‥支持部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
載置面に物体を吸着保持するためのアルミナ多孔質体からなる載置部と、前記載置部の気孔に連通する吸気孔を有する緻密質アルミナセラミックスからなる支持部とを備え、
前記アルミナ多孔質体は、骨格粒子となるアルミナ粉末が1A族、2A族及び3A族の元素のうち少なくとも1種を含むシリカ−アルミナ系複合酸化物によって結合されることにより構成され、前記載置部と前記支持部との接合界面が隙間なく構成され、前記アルミナ多孔質体の骨格粒子径が50[μm]以下であり、気孔径が1〜20[μm]以下であり、かつ、気孔率が10〜50%であることを特徴とする真空吸着装置。
【請求項2】
請求項1記載の真空吸着装置を製造する方法であって、
純度が95.0%以上、又は、96.5〜99.6%であり、平均粒子径が50[μm]以下であるアルミナ粉末と、平均粒子径が0.5[μm]以下であり、添加量がアルミナに対して5〜30[重量%]である二酸化珪素の粉末と、平均粒子径が1.0[μm]以下であり、添加量がアルミナに対して酸化物換算で3〜20[重量%]である1A族、2A族及び3A族の元素のそれぞれの酸化物、水酸化物、硝酸塩及び炭酸塩から選ばれる少なくとも1つ以上の添加物粉末とを、水又はアルコールを加えて混合することによりスラリーを調整するスラリー調整工程と、
前記支持部の基礎となるセラミックス成形体に形成されている凹部に前記スラリーを充填するスラリー充填工程と、
前記成形体を前記凹部に充填された前記スラリーとともにシリカ−アルミナ系複合酸化物の軟化点以上の温度で熱処理する焼成工程とを含むことを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−74206(P2013−74206A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−213460(P2011−213460)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000000240)太平洋セメント株式会社 (1,449)
【出願人】(391005824)株式会社日本セラテック (200)
【Fターム(参考)】