説明

真空容器

【課題】
真空容器の天井部が大気圧の応力に強く、歪の発生が少ない、しかも、大型の真空容器でも軽くて、メンテナンス性がよく、製作し易い真空容器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
筒状の真空容器1であって、該真空容器1は底壁部2、側壁部3及び天井壁部4から構成され、該天井壁部4がドーム状板から構成されている。なお、天井壁部4のドーム状板の中央部の肉厚が薄く、該天井壁部4と前記側壁部3が真空シールされる部分に至るにしたがって、順次肉厚が厚く構成されていてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は真空中又は低圧力下で、表面処理を行う装置あるいは種々の表面処理を連続的に行うクラスタ装置の搬送系等に用いる真空容器に関する。
【背景技術】
【0002】
PVD法、プラズマCVD法などによる膜形成、イオン注入、エッチング、表面清浄化処理等の処理を行う処理装置、あるいはそれらのクラスタ装置の搬送系室に用いられる真空容器は、例えば、カップ型の容器本体と該容器本体の開口部を気密に塞ぐように円盤状に形成された天板(平板)からなるタイプ(特許文献1参照)や真空容器のドーム形状の天井壁部とこれに連続してつながる垂直な側壁部とを有する上容器と該上容器と密閉する下容器を有するタイプ(特許文献2参照)等がある。
【0003】
前者のタイプでは、図4に示すように真空容器1の天井壁部4の天板8には外部の大気圧により、大気側の上面側では圧縮応力、下面側では引張り応力を受け、天井壁部4の天板8には曲げ応力を受ける。この曲げ応力により天井壁部4の天板8が歪まないようにするには天板7の厚さを厚くしたり、補強板を取り付けたりする必要があり、そのため重量が重くなるという問題がある。
後者のタイプでは天井壁部4の大気による曲げ応力は緩和されるが、天井壁部4と側壁3が一体に構成されているので、真空容器が大型化すると加工が難しくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−129983号公報
【特許文献2】特開2001−196354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記した問題に鑑み、本発明は、真空容器の天井部が大気圧の応力に強く、歪の発生が少ない、しかも、大型の真空容器でも軽くて、製作し易い真空容器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明は、筒状の真空容器であって、該真空容器は底壁部、側壁部及び天井壁部から構成され、該天井壁部がドーム状板からなることを特徴としている。
また、前記天井壁部のドーム状板の中央部の肉厚が薄く、該天井壁部と前記側壁部が真空シールされる部分に至るにしたがって、順次肉厚が厚くなることをも特徴としている。
低壁部及び側壁部は一体型でもよく、分離されて真空シールされてもよい。被処理物品あるいは内部のメンテナンスのため、天井壁部と側壁部は分離されている。
【0007】
以上の構成にすることにより、天井壁部に大気圧による曲げ応力が発生しない真空容器を提供することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、真空容器の天井壁部が大気圧の応力に強く、歪の発生が少ない、しかも、直径2000mm以上の大型の真空容器でも軽くて、製作し易い真空容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る真空容器の一実施形態を示す図である。
【図2】本発明に係る真空容器において、天井壁部のドーム状板に大気圧により生ずる応力状態を表す図である。
【図3】本発明に係る真空容器の他の実施形態を天井壁部のドーム状板だけを示した図である。
【図4】従来の真空容器において、天井部の天板(平板壁)に大気圧により生ずる応力状態を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は本発明に係る真空容器一実施形態を示す。
真空容器1は円筒状であり、底壁部2、側壁部3、天井壁部4から構成され、底壁部2には図示しない真空ポンプによってガスを排気するための排気口7が設けられている。なお、底壁部2と側壁部3及び側壁部3と天井壁部4は図示しないOリングによって真空シールされている。
【0011】
天井壁部4は側壁部3と真空シールされる部分にフランジ部6を持つドーム状板5からなり、その肉厚はフランジ部6以外では略均一としている。
【0012】
このような構成の天井壁部4に負荷される大気圧による応力の状態を模式的に図2に示すが、フランジ部6以外のドーム状板5には圧縮応力が生じ、図1に示したような曲げ応力は極めて小さくなる。
【0013】
したがって、大気圧による応力によって、ドーム状板5が歪むことはない。
また、図1に示した天板(平板)8に較べて、厚さを薄くすることができる。
【0014】
図3は本発明の他の実施形態を示すが、本実施形態では、天井壁部4が天井壁部4をなすドーム状板5の厚さがドーム状板5中央部で薄く、天井壁部4と側壁部3とが真空シールされるフランジ部6に至るにしたがって、順次厚くなる形状としている。
【0015】
以上のようにすると、図1で示した略均一肉厚の場合と同様な効果があるとともに、さらに天井壁部4をさらに軽量化できる。
【0016】
なお、前記ドーム状板の形状は、前記フランジ部6から天井壁部4中央部との高さをLmm、真空容器1の径をDmm とすると、L/Dが1/10程度が好ましい。
また、図1、図3に示した実施形態では天井壁部4中央部が丸みを帯びたドーム状板5であるが、ドーム状板5頂点中央部を円錐形状にしてもよい。
【0017】
さらに、これらの実施形態では、円筒状の場合で、底壁部2、側壁部3、天井壁部4を別体の真空容器としたが、真空容器1は断面多角形の角筒状であってもよく、底壁部2と側壁部3を一体にしたカップ状のものにしてもよい。
【0018】
真空容器の用途により、必要に応じて所定の機器等を取り付けるため、天井壁部、側壁部、底壁部の一部に開口部等を設けてもよいことは勿論のことである。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明の真空容器はPVD法、プラズマCVD法などによる膜形成、イオン注入、エッチング、表面清浄化処理等の処理を行う処理装置、あるいはそれらのクラスタ装置の搬送系室等に利用される。
【符号の説明】
【0020】
1 真空容器
2 底壁部
3 側壁部
4 天井壁部
5 ドーム状板
6 フランジ部
7 排気口
8 天板(平板)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の真空容器であって、該真空容器は底壁部、側壁部及び天井壁部から構成され、該天井壁部がドーム状板からなることを特徴とする真空容器。
【請求項2】
前記天井壁部のドーム状板の中央部の肉厚が薄く、該天井壁部と前記側壁部が真空シールされる部分に至るにしたがって、順次肉厚が厚くなることを特徴とする請求項1に記載の真空容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−170886(P2012−170886A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−35351(P2011−35351)
【出願日】平成23年2月22日(2011.2.22)
【出願人】(000003942)日新電機株式会社 (328)