説明

真空断熱材の製造方法

【課題】 所望の形状に保持されやすく且つ断熱性に優れた真空断熱材を短時間で製造し得る真空断熱材の製造方法を提供することにある。
【解決手段】 真空断熱材の外装材となるガス非透過性の包装材内に、粉末が封入された通気性の中袋が芯材として収容された状態で、前記包装材内を減圧させ、該減圧を継続したまま前記中袋を該包装材中に密封する真空断熱材の製造方法であって、前記芯材が収容された包装材を両面から一対の押圧部材で挟んで押圧するように構成されている真空断熱材製造装置を用いて、前記減圧時に、前記押圧部材の少なくとも1つを加熱状態にして前記押圧を実施することで、前記粉末を加熱して該粉末に含まれる水分を揮発させることを特徴とする真空断熱材の製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス非透過性の包装材中に減圧状態で粉末が密封されている真空断熱材を製造するための真空断熱材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化防止の観点から省エネルギーが強く望まれており、家庭用電化製品についても省エネルギー化は緊急の課題となっている。
特に、冷蔵庫、冷凍庫、自動販売機等の保温保冷用機器では熱を効率的に利用するという観点や、建築物では内部の温度を所定温度に保つという観点から、優れた断熱性能を有する断熱材が求められており、従来の発泡ポリスチレンボードやガラスファイバーなどの断熱材に代えて、ガス非透過性の包装材を外装材とし、該包装材の内部に芯材を封入してある程度の空間を設けさせ且つ内部を減圧(真空)状態にさせた真空断熱材の利用が検討されている。
【0003】
このような真空断熱材は、その芯材として、繊維系、粉末系、発泡樹脂系などの種々のものが検討されているが、繊維系や発泡樹脂系の芯材を用いると芯材を通じての熱伝導が生じ易いことから芯材としては粉末を利用することが断熱性を向上させる上においては有利である。
一方で、粉末は、繊維や発泡樹脂に比べて飛散しやすいために取り扱い難く、粉末を芯材に用いて真空断熱材を製造するのに際しては、繊維系、発泡樹脂系の芯材を用いる場合に比べて慎重な作業が要求される。
【0004】
このようなことから、粉末の通過を抑制しつつ気体を通過させ得る通気性のシートなどで中袋を形成させ、該中袋に粉末を封入して芯材とし、該粉末が封入された中袋を包装材に収容させた後、真空チャンバー内で該包装材の内部を減圧状態にさせ、芯材を包装材に密封させることが検討されている。
しかし、粉末が封入された中袋を収容した包装材の内部を減圧した状態で中袋を包装材内に密封して真空断熱材を形成した後、真空チャンバー内を減圧状態から大気圧状態にすると、包装材に大気圧が加わって真空断熱材内の粉末が移動してしまい、真空断熱材の形状が歪んでしてしまうという問題がある。
真空断熱材は、例えば、住宅建材として用いられて他の住宅建材と接着剤を介して接着されるが、表面の平坦度が低い真空断熱材を用いた場合には、該真空断熱材と他の住宅建材との接触面積が小さいものとなり、接着剤による接着力が弱いものとなるおそれがある。
このような平坦度が求められる点においても、歪みを抑制する事が要望されており、該歪みを抑制すべく、予め粉末を板状に成形し、この板状物を芯材に用いる方法が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0005】
しかし、粉体は板状物となることで熱伝導性が高まることから、この板状物を芯材に用いると、得られる真空断熱材が低い断熱性を有するものとなるおそれがある。
【0006】
また、真空断熱材の外装材となるガス非透過性の包装材内に、粉末が封入された通気性の中袋が芯材として収容された状態で、前記包装材を両面から一対の押圧部材で挟み押圧しつつ前記包装材内を減圧させる方法も提案されている(例えば、特許文献2)。
【0007】
このように、前記包装材を両面から一対の押圧部材で挟み押圧しつつ前記包装材内を減圧させると、粉末の粒子どうしが密となり、得られた真空断熱材が減圧状態から大気圧状態にされても、粉末の粒子が移動し難くなり、得られた真空断熱材が変形され難いものとなるという利点がある。また、該粉末が封入された中袋を包装材に収容させた後で該包装材の内部を減圧させて中袋内の気体を中袋外に排出する際に、中袋の中側から外側に排出される気体の流れによって粉末が中袋内で流動するのを前記押圧部材で抑制させることができるので、表面の平坦度が高い真空断熱材を得ることができるという利点もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−239430号公報
【特許文献2】特開平8−68592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、斯かる方法では、包装材内の気体の圧力を所望の圧力にするまで包装材内を減圧させるのに時間がかかってしまうという問題がある。
【0010】
本発明は上記のような問題点を解決することを課題としており、所望の形状に保持されやすく且つ断熱性に優れた真空断熱材を短時間で製造し得る真空断熱材の製造方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち、本発明に係る真空断熱材の製造方法は、真空断熱材の外装材となるガス非透過性の包装材内に、粉末が封入された通気性の中袋が芯材として収容された状態で、前記包装材内を減圧させ、該減圧を継続したまま前記中袋を該包装材中に密封する真空断熱材の製造方法であって、前記芯材が収容された包装材を両面から一対の押圧部材で挟んで押圧するように構成されている真空断熱材製造装置を用いて、前記減圧時に、前記押圧部材の少なくとも1つを加熱状態にして前記押圧を実施することで、前記粉末を加熱して該粉末に含まれる水分を揮発させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、芯材に粉末を用いることから、得られる真空断熱材が断熱性に優れたものとなる。また、減圧時に、前記芯材が収容された包装材を両面から一対の押圧部材で挟み押圧するので、粉末の粒子どうしが密となり、得られた真空断熱材が減圧状態から大気圧状態にされても、粉末の粒子が移動し難くなり、得られた真空断熱材が所望の形状に保持されやすいものとなる。さらに、前記押圧の際に前記押圧部材の少なくとも1つを加熱して前記粉末に含まれる水分を揮発させることで、前記包装材内の真空度を比較的短時間で高めることができる。
すなわち、本発明によれば、所望の形状に保持されやすく且つ断熱性に優れた真空断熱材を短時間で製造し得る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】真空断熱材の製造に利用する真空断熱材製造装置の一例を示した装置構成図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の一実施形態について説明する。
本実施形態に係る製造方法によって製造される真空断熱材は、外装材となるガス非透過性の包装材に、粉末が封入された通気性の中袋を芯材として収容させて密封させたもので、内部を減圧(真空)状態にさせたものである。
【0015】
本実施形態における真空断熱材の製造方法において用いられるガス非透過性の前記包装材は、所定量の粉末が封入された中袋を収容可能な内容積を有しており、ガスバリア性に優れ、しかも、ヒートシールによる接着が可能な2枚のラミネートシートによって袋状に形成されたものであり、該袋状の包装材(以下「包装袋」ともいう)は、2枚の矩形状のラミネートシートが3方シールされて前記矩形の1辺に相当する部分を開口させたものである。
【0016】
前記ラミネートシートとしては、前記粉末の密封状態(真空状態)を長期にわたって保持させ得るように、少なくとも表面側から順に、表面保護層、ガスバリア層を有し、最も内側(芯材側)に熱融着層を有するものを採用することが好ましい。
例えば、前記ガスバリア層としては、アルミニウムなどの金属の圧延箔や蒸着膜で形成されたものが挙げられ、通常、ラミネートシートには、1μm〜100μmの厚みで備えさせることができる。
このガスバリア層を蒸着膜で形成させる場合には、表面保護層を形成する部材又は熱融着層を形成する部材のいずれに対して蒸着を行ってもよい。
なお、気体分子は、ポリマー内に拡散することができ、ポリマーのみによって形成されたフィルムでは十分なガスバリア性の確保が困難であるが、この金属によって形成されたガスバリア層を有するラミネートシートを採用することで、シート厚み方向に気体分子が通過することが防止され、包装袋内部の真空度が低下することが抑制される。
【0017】
また、表面保護層は、その一つの目的として、前記ガスバリア層を腐食や傷付きなどから保護する機能をラミネートシートに付与すべく設けられたものであり、通常、5μm〜200μmの厚みとなるように形成され、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリプロピレンフィルムの延伸加工品などによって形成され得る。
さらに、表面保護層は、単層に限定されず、上記延伸加工がされたフィルムの外側にポリアミドフィルムなどを設けることでラミネートシートの耐折り曲げ性などの機械的特性の向上を図ることができる。
【0018】
前記熱融着層は、包装袋に減圧状態の粉末を収容させた後に、ヒートシールによるラミネートシートどうしの接着を行って、前記粉末を減圧状態で密封させ得るように設けられたものであり、例えば、低密度ポリエチレンフィルム、高密度ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、無延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムなどによって形成させ得る。
この熱融着層は、その厚みが薄過ぎる場合には、シール不良を発生させるおそれがある一方で、熱融着層の厚みが厚過ぎる場合には、シール部において、ガスバリア層の間に外袋の内外にわたる厚いポリマー層が当該熱融着層によって形成され易くなり、このポリマー層を通じての気体分子の流入が生じやすくなる。
すなわち、熱融着層の厚みが厚過ぎる場合には、真空断熱材製造後に、その内部の真空度の低下を早めてしまうおそれを有する。
このような観点から熱融着層の厚みは、20μm〜100μmとされることが好ましい。
【0019】
なお、真空断熱材の芯材として使用される粉末については、珪酸カルシウム、パーライト、シリカ等の無機材料からなる微細な粒子や、PMMA(ポリメチルメタクリレート)等の有機樹脂からなる粒子といったものが使用されうる。特に、真空断熱材の断熱性を高めるという観点から、シリカの中でも、湿式シリカ、又はフュームドシリカを用いることが好ましい。
この粉末には、上記のような無機物粒子、有機物粒子をそれぞれ単独、あるいは、複数種類混合して用いることができ、より細かな粒子径を有する粒子を含有させることで真空断熱材の芯材内部に形成される粒子−粒子間の空隙の大きさを小さくすることができる。
したがって、例えば、体積平均粒子径が0.02〜40μmとなるような粉末を用いることで、真空断熱材の芯材を形成している粉末中に10Pa程度の分圧となる気体が残留している場合を想定した場合においても、気体分子の平均自由行程よりも小さな空隙を粒子−粒子間に形成させることができ気体分子どうしの衝突確率を低減することができる。
すなわち、粒径40μm以下の粉末を芯材として用いることで、優れた断熱性能を有する真空断熱材を作製させ得る。
前記減圧前の粉末は、水分量が1質量%未満であるであることが好ましい。通常、粉末には水分が含有されているので、粉末を収容した包装袋内を減圧させる際に、粉末に含まれる水分が粉末から揮発する分、所望の圧力までに減圧するのに時間がかかるおそれがあり、また、粉末に含まれていた水分が粉末から水蒸気として揮発して包装袋内から包装袋外に排出されるときに、この水蒸気の流れによって粉末が包装袋内で偏在してしまい、その結果、得られる真空断熱材は、表面の平坦度が低いものとなるおそれもある。しかし、前記減圧前の粉末の水分量が1質量%未満であれば、上記水蒸気による弊害を抑制することができる。即ち、表面の平坦度が高い真空断熱材をより一層短時間で作製することができるという利点がある。
なお、粉末の水分量は、JIS K0068:2001(化学製品の水分測定方法)記載の方法に準じて測定する。具体的には、秤量した粉末試料20〜100mgを水分測定用容器に収容し、(株)三菱化学アナリテック社製のカールフィッシャー水分測定装置CA−200及び水分気化装置VA−236Sに前記容器をセットして水分量を測定する。なお、測定時の陽極液、陰極液にはそれぞれ(株)エーピーアイ コーポレーション製アクアミクロンAX、アクアミクロンCXUを使用し、測定温度は200℃、キャリアガスはN2 を使用し、流量は250ml/minにして水分量の測定を行う。試料の試験回数は3回で、水分測定用容器に含まれる水分も含めた各試料の水分量から、同時に測定したブランク容器としての水分測定用容器の水分量(試験回数2回の算術平均値)を減算し、その値を粉末試料中に含まれる水分量とする。最終結果としては3回の試料中水分量(質量%)を算術平均する。また、乾燥後の粉末試料の水分量の測定は、所定の温度のオーブンで粉末試料を3時間加熱した後、オーブン内の空気をN2で置換し、室温までオーブン内で冷却した後、すばやく粉末試料自体の質量を計量し、上記の方法で水分量を測定する。
【0020】
なお、前記粉末には、空隙の形成以外にも、ガス非透過性材料で作られた包装袋などから発生されるアウトガスなどの吸着に有効な成分を含有させることができ、水分吸着剤やガス吸着剤として、合成ゼオライト、活性炭、活性アルミナ、シリカゲル、ドーソナイト、ハイドロタルサイトなどの物理吸着剤粒子、および、アルカリ金属やアルカリ土類金属の酸化物および水酸化物などの化学吸着剤粒子を含有させることができる。
【0021】
前記真空断熱材に用いる通気性の中袋としては、粉末の流通を抑制しつつ気体を通過させ得る程度の大きさの通気孔を有する多孔質材が用いられている。
なお、“粉末の通過を抑制しつつ気体を通過させ得る程度”とは、本明細書においては、必ずしも一粒たりとも粉末が中袋外部に漏洩しない場合のみを意図するものではなく、実用上問題が生じない程度に粉末の外部漏洩量を抑制させ得ることを意図するものである。通常、中袋内の粉末を質量で100%とした場合に、減圧による外部漏洩量が0.1%以下であれば、実用上問題が生じないと判定することができる。
前記多孔質材としては、不織布が好適に用いられる。前記多孔質材が不織布であることにより、不織布で構成された中袋に粉末を収容し、該中袋を熱溶着で封止できることから、粉末が封入された中袋を容易に作製することができるという利点がある。
【0022】
次いで、図1を参照しつつ本発明の真空断熱材の製造方法を実施するにあたって用いるのに好適な真空断熱材製造装置の一例を説明する。
図1は真空断熱材製造装置の装置構成を示す図である。
前記真空断熱材製造装置1は、矩形平板状の真空断熱材を製造するための装置である。
図1に示すように、前記真空断熱材製造装置1は、前記粉末2aが封入された前記中袋2bが芯材2として収容された包装袋3を上下方向から挟み押圧するための一対の矩形平板状の押圧部材5a、5bと、前記押圧を減圧状態で実施するための直方体状の内部空間を有するチャンバー4とを備えている。前記押圧部材5a、5bは、板面どうし対向させて上下方向に離間するようにチャンバー4内に収容されており、板面どうしで包装袋3を挟み押圧するように構成されている。
また、前記真空断熱材製造装置1は、チャンバー4内の気体をチャンバー4外に排出してチャンバー4内を減圧するための排気管7と、チャンバー4内の気体を排気管7を介してチャンバー4外に排出するための真空ポンプ(図示せず)とを備えている。前記排気管7は、前記チャンバー4の内部空間に開口するように接続されている。前記真空ポンプ(図示せず)は、該排気管7に設けられている。
【0023】
一対の前記押圧部材5a、5bのうち下側の第1押圧部材5aは、平板状の包装袋3よりも一回り大きく形成されている。
また、該第1押圧部材5aは、上面中央部に前記芯材2よりも一回り大きく彫り込まれた彫り込み部を有する。また、該第1押圧部材5aは、該彫り込み部が包装袋3よりも一回り小さく、且つ、該彫り込み部の深さが芯材2を収容した包装袋3の厚みよりも浅く形成されている。
前記真空断熱材製造装置1は、矩形平板状の第1押圧部材5aの下面の4隅それぞれに、第1押圧部材5aを支持する支持脚9が設けられて構成されている。該支持脚9は、上端が前記第1押圧部材5aに連結され、下端がチャンバー4の下側内周面に連結されており、前記第1押圧部材5aを固定するように構成されている。すなわち、本実施形態に係る真空断熱材製造装置1においては、前記芯材2を収容させた包装袋3を載置するための供試台が、第1押圧部材5a及び支持脚9によって形成されている。
該第1押圧部材5aは、彫り込み部の底面によって前記包装袋3を下方側から押圧するための押圧部材であり、該彫り込み部の外周部を利用して包装袋3の開口部をヒートシールし得るように構成されている。すなわち、彫り込み部の外周部には、包装袋3の開口部が配置される開口配置部5a1が備えられている。
【0024】
前記真空断熱材製造装置1は、一対の前記押圧部材5a、5bのうち上側の第2押圧部材5bを上下方向に移動させることができる昇降機構を備えており、該昇降機構により第2押圧部材5bを上方から下方に向けて移動させることにより、第1押圧部材5a上に載置される包装袋3を第2押圧部材5bの下面で押し付けて、第1押圧部材5aと第2押圧部材5bとで包装袋3を挟んで押圧するように構成されている。
前記第2押圧部材5bは、第1押圧部材5aの彫り込み部よりも一回り小さく形成されている。斯かる構成により、真空断熱材製造装置1は、前記第1押圧部材5aの彫り込み部の深さよりも薄い真空断熱材を作製するのに際しても第2押圧部材5bを第1押圧部材5aの彫り込み部と干渉させることなく押圧可能となっている。
前記第2押圧部材5bは、該第2押圧部材5bが下面で押圧する包装袋3内の粉末を加熱できるように、下面側に発熱部材を備えている。
前記真空断熱材製造装置1は、前記第2押圧部材5bの発熱部材の発熱時(包装袋3の加熱時)の温度が、前記中袋2bを構成する材料の融点及び前記包装袋3を構成する材料の融点よりも低い温度となるように前記発熱部材の温度を調整する温度調整機構を備えている。前記真空断熱材製造装置1は、このように構成されていることにより、該加熱時に中袋2b及び包装袋3が熱によって変形するのを抑制することができ、その結果、所望の形状に保持されやすい真空断熱材を得ることができるという利点がある。
なお、前記発熱部材は、前記第2押圧部材5bの代わりに、前記第1押圧部材5aに備えられていてもよく、その場合には、前記第1押圧部材5aは、該第1押圧部材5aが上面で押圧する包装袋3内の粉末を加熱できるように、上面側に発熱部材を備えている。また、前記第1押圧部材5a及び前記第2押圧部材5bの両方が前記発熱部材をそれぞれ備えてもよい。
【0025】
前記真空断熱材製造装置1は、前記包装袋3の開口部を熱溶着するヒートシーラ6を前記第2押圧部材5bの上方に備えている。
該ヒートシーラ6は、平板状の包装袋3よりも一回り大きく形成されている。また、該ヒートシーラ6は、第1押圧部材5aと同様な形状を有しており、中央に彫り込まれた彫り込み部を有する。さらに、該ヒートシーラ6は、該彫り込み部が下側に配されており、該彫り込み部が包装袋3よりも一回り小さく且つ第2押圧部材5bよりも一回り大きく形成されている。
前記真空断熱材製造装置1は、チャンバー4の上方に前記ヒートシーラ6を昇降させるための昇降機構を備えており、該昇降機構には、チャンバー4の天井部を貫通してチャンバー4内に延びるシャフト10が備えられ、ヒートシーラ6の上面中央部にその下端を連結させた前記シャフト10を上下動させて、前記ヒートシーラ6の昇降を行い得るように構成されている。前記真空断熱材製造装置1においては、ヒートシーラ6の下面と第2押圧部材5bの上面とが、鉛直方向に伸縮する弾性体8で連結されて構成されており、第2押圧部材5bが、ヒートシーラ6の彫り込み部内に配されている。前記真空断熱材製造装置1は、前記シャフト10が上下方向に移動されることにより、ヒートシーラ6と、該ヒートシーラ6に弾性体8で連結されている第2押圧部材5bとが該シャフト10に連動して上下方向に移動されるように構成されている。
前記第2押圧部材5bは、ヒートシーラ6の彫り込み深さよりも薄く形成されており、包装袋3を押圧した際に、ヒートシーラ6の彫り込み部の外周部を当該第2押圧部材5bの下面よりも下方に突出させて、前記第1押圧部材5aの彫り込み部の外周部との間に前記包装袋3の開口部を挟んで、前記開口配置部5a1において前記開口部をヒートシールさせ得るように構成されている。
前記ヒートシーラ6は、彫り込み部の外周部の前記包装袋3の開口部を挟む部分に、包装袋3の開口部を加熱して熱溶着させるための加熱部6aを備えており、該ヒートシーラ6の彫り込み部の外周部と、前記第1押圧部材5aの開口配置部5a1とで前記包装袋3の開口部を挟み、前記加熱部6aで包装袋3の開口部を加熱して熱溶着させるように構成されている。
【0026】
また、前記真空断熱材製造装置1は、前記芯材2が収容された包装袋3が前記第1押圧部材5aに設置された状態で、昇降機構によってヒートシーラ6を下方に向けて移動させることにより、まず、前記ヒートシーラ6と、前記ヒートシーラ6に弾性体8を介して連結された前記第2押圧部材5bとが下方に移動され、そして、該第2押圧部材5bが前記包装袋3に当接し該包装袋3を前記第1押圧部材5aに押し付けるように構成されている。
さらに、前記真空断熱材製造装置1は、該昇降機構によって前記ヒートシーラ6をさらに下方に向けて移動させることにより、第2押圧部材5bが当接する包装袋3から第2押圧部材5bへの反作用により弾性体8が縮み、前記ヒートシーラ6のみが下方に向けて移動され、前記ヒートシーラ6の加熱部6aが包装袋3の開口部に当接するように構成されている。
【0027】
なお、上記においては、前記押圧部材5a、5bは、矩形状に形成されているが、円盤状に形成されてもよい。
また、前記押圧部材5a、5bの板面は、平面状に形成されているが、形成しようとする真空断熱材の形状に合わせて、芯材2が収容された包装袋3を押圧できれば、曲面状に形成されていてもよい。
さらに、前記第1押圧部材5aはチャンバー4内で固定され、前記第2押圧部材5bは上下動するように構成されているが、第2押圧部材5bがチャンバー4内で固定され、第1押圧部材5bが上下動するように構成されてもよく、第1押圧部材5a及び第2押圧部材5bが上下動するように構成されてもよい。
さらに、前記真空断熱材製造装置1は、1辺のみに開口部を有する包装袋3をヒートシールできるように構成されているが、2辺以上に開口部を有する包装袋3をヒートシールできるように構成されてもよい。
【0028】
次いで、このような真空断熱材製造装置を用いた真空断熱材の製造方法について説明する。
まず、第1押圧部材5aと第2押圧部材5bとが離間するように第2押圧部材5bが設置された状態で、芯材2が収容された包装袋3を、前記包装袋3の開口部が前記開口配置部5a1に配置されるように、第1押圧部材5a上に載置する。
次に、前記真空ポンプ(図示せず)を運転させて、チャンバー4内を減圧状態(例えば、100Pa)にさせる。
そして、前記昇降機構によって前記ヒートシーラ6を下方に向けて移動させることで、該ヒートシーラ6に弾性体8で連結された第2押圧部材5bをヒートシーラ6とともに下方に移動させ、そして、第2押圧部材5bの下面を包装袋3に当接させ包装袋3を第1押圧部材5aに押し付ける。
次に、第2押圧部材5bの下面で包装袋3を第1押圧部材5aに押し付けつつ、前記第2押圧部材2bの下面の温度が、包装袋3を構成する材料の融点、及び中袋2bを構成する材料の融点以下になるように温度調整を行いながら、前記第2押圧部材5bの下面側に設けられた発熱部材(図示せず)で包装袋3内の粉末を加熱する。そして、チャンバー4内を減圧状態(例えば、100Pa)にさせることで、粉末に含まれる水分の揮発を促進させる。
なお、包装袋3を構成する材料が複数あり、中袋2bを構成する材料が複数ある場合には、前記温度調整は、これらの材料の融点すべてよりも、前記第2押圧部材2bの下面の温度が低くなるように行う。また、融点は、JIS K7122:1987「プラスチックの転移熱測定方法」記載の方法により測定する。具体的には、示差走査熱量計装置RDC220型(セイコー電子工業社製)を用い、測定容器に融点の測定対象試料を7mg充填して、窒素ガス流量30ml/minのもと、室温から220℃の間で10℃/minの昇・降温スピードにより昇温、降温、昇温を繰り返し、2回目の昇温時のDSC曲線の融解ピーク温度を融点とする。また、融解ピークが2つ以上ある場合は、低い側のピーク温度を融点とする。
次に、減圧状態のまま、前記昇降機構によって前記ヒートシーラ6をさらに下方に向けて移動させることで、ヒートシーラ6に弾性体8で連結された第2押圧部材5bが当接する包装袋3から第2押圧部材5bへの反作用により弾性体8を縮ませ、前記ヒートシーラ6のみを下方に向けて移動させ、前記ヒートシーラ6の加熱部6aを包装袋3の開口部に当接させる。
そして、該加熱部6aを加熱して包装袋3の開口部を熱溶着させて真空断熱材を作製する。
次に、前記真空ポンプ(図示せず)の運転を停止させてチャンバー4内を減圧状態から大気圧下に戻す。
そして、前記ヒートシーラ6を上に向けて移動させることで、まず前記ヒートシーラ6の加熱部6aを包装袋3の開口部から離間させつつ、縮んだ弾性体8を伸ばし、その後、第2押圧部材5bを包装袋3から離間させ、作製した真空断熱材をチャンバー4内から取り出す。
【0029】
本実施形態に係る真空断熱材の製造方法は、前記芯材2が収容された包装袋3内の減圧時に、包装袋3を両面から一対の押圧部材5a、5bで挟み押圧するので、粉末の粒子どうしが密となり、得られた真空断熱材が減圧状態から大気圧状態にされても、粉末の粒子が移動し難くなり、得られた真空断熱材が所望の形状に保持されやすいものとなる。
また、本実施形態に係る真空断熱材の製造方法は、前記押圧の際に第2押圧部材5bを加熱して前記粉末に含まれる水分を揮発させることで、前記包装袋3内の真空度を比較的短時間で高めることができる。
さらに、本実施形態に係る真空断熱材の製造方法は、ヒートシーラ6と第2押圧部材5bとが弾性体8で連結されているので、ヒートシーラ6を上下に移動させることで第2押圧部材5bも移動させることができ、ヒートシーラ6及び第2押圧部材5bを別々の移動機構で移動させるよりも装置自体を簡略化できる。
【実施例】
【0030】
次に真空断熱材の製造の実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0031】
(実施例1)
まず、ポリエチレンテレフタレート(PET)(融点:258℃)、ポリプロピレン(PP)(融点:162℃)及びポリエチレン(PE)(融点:130℃)で構成された正方形状の不織布(シンワ製)を2枚重ね合わせ、前記正方形の3辺に相当する部分を熱溶着して、残り1辺を開口させた中袋を作製した。
また、表面保護層が40μmのポリアミド樹脂フィルム(融点:220℃)、ガスバリア層が6μmのアルミニウム箔(融点:650℃)、ヒートシール層が50μmのポリエチレン樹脂フィルム(融点:125℃)からなる矩形状のラミネートフィルム(昭和電工パッケージング製)を2枚重ね合わせ、前記矩形の3辺に相当する部分を熱溶着して、残り1辺を開口させた包装袋(外幅300mm、長さ400mm、シール幅8mm)を作製した。
次に、該中袋内に開口部からシリカ粉末(日本アエロジル製、R−972、水分量0.21質量%)を85g入れ、該開口部を熱溶着して真空断熱材用芯材(粉末の収容スペース(内寸):240mm×240mm、芯材の厚み:10mm)を作製し、該真空断熱材用芯材を前記包装袋に収容させた。
そして、図1に例示のものと同様に構成されている真空断熱材製造装置を用い、第1押圧部材と第2押圧部材とが離間するように第2押圧部材が設置された状態で、芯材が収容された包装袋を、前記包装袋の開口部が前記開口配置部に配置されるように、第1押圧部材上に載置した。
次に、前記真空ポンプを運転させて、チャンバー内を減圧状態にさせた。
そして、前記昇降機構によって前記ヒートシーラを下方に向けて移動させることで、該ヒートシーラに弾性体で連結された第2押圧部材をヒートシーラとともに下方に移動させ、そして、第2押圧部材の下面を包装袋に当接させ包装袋を第1押圧部材に押し付けた。
次に、第2押圧部材の下面で包装袋を第1押圧部材に押し付けつつ、前記第2押圧部材の下面側に設けられた発熱部材で包装袋内の粉末を加熱した。この加熱の際、前記第2押圧部材の下面の温度が90℃となるようにした。そして、包装袋内の気体の圧力(包装袋内の気体の圧力は、チャンバー内の気体の圧力と等しい。)を7.5Pa(真空ポンプの起動前の圧力:0.1MPa)に到達させることで、粉末に含まれる水分の揮発を促進させた。
そして、減圧状態のまま、前記昇降機構によって前記ヒートシーラをさらに下方に向けて移動させることで、弾性体を縮ませ、前記ヒートシーラのみを下方に向けて移動させ、前記ヒートシーラの加熱部を包装袋の開口部に当接させた。
次に、該加熱部を加熱して包装袋の開口部を熱溶着させて真空断熱材を作製した。
そして、前記真空ポンプの運転を停止させてチャンバー内を減圧状態から大気圧下に戻した。
次に、前記ヒートシーラを上に向けて移動させることで、まず前記ヒートシーラの加熱部を包装袋の開口部から離間させつつ、縮んだ弾性体を伸ばし、その後、第2押圧部材を包装袋から離間させ、作製した真空断熱材をチャンバー内から取り出した。
大気圧下で真空ポンプを起動させてから7.5Paになるまでの時間は11分であり、短時間で減圧させることができた。
製造された真空断熱材を大気圧下で確認したところ、所望の形状に保持され、また、表面が平坦なものであった。また、該真空断熱材は断熱性能に優れ(熱伝導率:0.006W/m・K)、且つ、時間が経過しても実質的な断熱性能の低下が見られない優れたものであった。
【0032】
(実施例2)
前記粉末として、実施例1とは異なるシリカ粉末(RX−300−5、日本アエロジル製、水分量0.33質量%)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして真空断熱材を作製した。
大気圧下で真空ポンプを起動させてから7.5Paになるまでの時間は11分であり、短時間で減圧することができた。
製造された真空断熱材を大気圧下で確認したところ、所望の形状に保持され、また、表面が平坦なものであった。また、該真空断熱材は断熱性能に優れ(熱伝導率:0.006W/m・K)、且つ、時間が経過しても実質的な断熱性能の低下が見られない優れたものであった。
【0033】
(実施例3)
前記粉末として、実施例1とは異なるシリカ粉末(サンスフェアH−53、AGCエスアイテック製、水分量11.4質量%)を用い、該シリカ粉末をオーブンにより105℃で24時間加熱し乾燥させ、この乾燥したシリカ粉末(水分量0.22質量%)をオーブンから取り出した後すぐに中袋に入れ包装袋に封入したこと以外は、実施例1と同様にして真空断熱材を作製した。
大気圧下で真空ポンプを起動させてから7.5Paになるまでの時間は4分であり、短時間で減圧することができた。
製造された真空断熱材を大気圧下で確認したところ、所望の形状に保持され、また、表面が平坦なものであった。また、該真空断熱材は断熱性能に優れ(熱伝導率:0.006W/m・K)、且つ、時間が経過しても実質的な断熱性能の低下が見られない優れたものであった。
【0034】
なお、前記粉末として、実施例3の乾燥前のシリカ粉末(サンスフェアH−53、AGCエスアイテック社製、水分量11.4質量%)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして真空断熱材を作製したところ、大気圧から目標とする圧力(7.5Pa)にまで減圧するのに150分かかり、実施例1〜3に比して時間を要してしまった。また、得られた真空断熱材は、実施例1〜3の真空断熱材に比して、形状が歪んでいた。このことから、減圧前の粉末の水分量が1質量%未満であることが好ましいことがわかる。
また、前記加熱時の発熱部材の温度を、前記中袋を構成する不織布の材料のうち最も融点が低いポリエチレンの融点(130℃)、及び、前記包装袋を構成するラミネートフィルムの材料のうち最も融点が低いポリエチレン樹脂フィルムの融点(125℃)よりも高い温度(150℃)にしたこと以外は、実施例1と同様にして真空断熱材を作製したところ、得られた真空断熱材は、実施例1〜3の真空断熱材に比して、形状が歪んでいた。このことから、前記加熱時の押圧部材の温度を、前記中袋を構成する材料の融点及び前記包装袋を構成する材料の融点よりも低い温度にすることが好ましいことがわかる。
【符号の説明】
【0035】
1:真空断熱材製造装置、2:芯材、2a:粉末、2b:中袋、3:包装袋、4:チャンバー、5a:第1押圧部材、5a1:開口配置部、5b:第2押圧部材、6:ヒートシーラ、6a:加熱部、7:排気管、8:弾性体、9:支持脚、10:シャフト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空断熱材の外装材となるガス非透過性の包装材内に、粉末が封入された通気性の中袋が芯材として収容された状態で、前記包装材内を減圧させ、該減圧を継続したまま前記中袋を該包装材中に密封する真空断熱材の製造方法であって、
前記芯材が収容された包装材を両面から一対の押圧部材で挟んで押圧するように構成されている真空断熱材製造装置を用いて、前記減圧時に、前記押圧部材の少なくとも1つを加熱状態にして前記押圧を実施することで、前記粉末を加熱して該粉末に含まれる水分を揮発させることを特徴とする真空断熱材の製造方法。
【請求項2】
前記減圧前の粉末の水分量が1質量%未満である請求項1記載の真空断熱材の製造方法。
【請求項3】
前記加熱時の押圧部材の温度を、前記中袋を構成する材料の融点及び前記包装材を構成する材料の融点よりも低い温度にする請求項1又は2に記載の真空断熱材の製造方法。
【請求項4】
前記中袋として、不織布で形成された袋を用いる請求項1〜3の何れか1項に記載の真空断熱材の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2013−104490(P2013−104490A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−248850(P2011−248850)
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「マルチセラミックス膜新断熱材料」に関する委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】