説明

真空断熱材の製造方法

【課題】 表面の平坦度が高く且つ断熱性に優れた真空断熱材を製造し得る真空断熱材の製造方法を提供することにある。
【解決手段】 真空断熱材の外装材となるガス非透過性の包装材に芯材に用いる粉末を収容させるためのチャンバーと、該チャンバーに前記粉末を搬送する搬送機構とを有する真空断熱材製造装置を用い、減圧状態にされた前記チャンバー内に前記搬送中に減圧状態にさせた前記粉末を導入させ該チャンバー内において前記粉末を前記包装材に収容させて密封する真空断熱材の製造方法であって、前記粉末として、フュームドシリカ粉末を用いることを特徴とする真空断熱材の製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス非透過性の包装材中に減圧状態で粉末が密封されている真空断熱材を製造するための真空断熱材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化防止の観点から省エネルギーが強く望まれており、家庭用電化製品についても省エネルギー化は緊急の課題となっている。
特に、冷蔵庫、冷凍庫、自動販売機等の保温保冷用機器では熱を効率的に利用するという観点や、建築物では内部の温度を所定温度に保つという観点から、優れた断熱性能を有する断熱材が求められており、従来の発泡ポリスチレンボードやガラスファイバーなどの断熱材に代えて、ガス非透過性の包装材を外装材とし、該包装材の内部に芯材を封入してある程度の空間を設けさせ且つ内部を減圧(真空)状態にさせた真空断熱材の利用が検討されている。
【0003】
このような真空断熱材は、その芯材として、繊維系、粉末系、発泡樹脂系などの種々のものが検討されているが、繊維系や発泡樹脂系の芯材を用いると芯材を通じての熱伝導が生じ易いことから芯材としては粉末を利用することが断熱性を向上させる上においては有利である。
一方で、粉末は、繊維や発泡樹脂に比べて飛散しやすいために取り扱い難く、粉末を芯材に用いて真空断熱材を製造するのに際しては、繊維系、発泡樹脂系の芯材を用いる場合に比べて慎重な作業が要求されるおそれを有する。
【0004】
このようなことから、粉末の通過を抑制しつつ気体を通過させ得る通気性のシートなどで中袋を形成させ、該中袋に粉末を封入して芯材とし、該粉末が封入された中袋を包装材に収容させた後で該包装材の内部を減圧状態にさせることが検討されている。
しかし、該粉末が封入された中袋を包装材に収容させた後で該包装材の内部を減圧させて中袋内の気体を中袋外に排出する際に、中袋の中側から外側に排出される気体の流れによって粉末が中袋内で流動し偏在してしまい、その結果、得られる真空断熱材は、表面の平坦度が低いものとなるおそれがある。真空断熱材は、例えば、住宅建材として用いられて他の住宅建材と接着剤を介して接着されるが、表面の平坦度が低い真空断熱材を用いた場合には、該真空断熱材と他の住宅建材との接触面積が小さいものとなり、接着剤による接着力が弱いものとなるおそれがある。
【0005】
このようなことから、上記のようにチャンバー内で真空断熱材を作製した後、チャンバー内を大気圧に戻す前に、チャンバー内で該真空断熱材を、表面が平らな2つの押圧部材で挟み押圧して、該真空断熱材の表面の平坦度を高める方法が提案されている(例えば、特許文献1)。
しかし、前記押圧部材による押圧だけでは、中袋内で偏った粉末を中袋内に均等にならすことが難しく、真空断熱材の表面の平坦度を十分に高めることができないという問題がある。
【0006】
また、中袋を用いずに真空断熱材の芯材となる粉末を予め減圧状態にした後で包装材に収容させて密封することも提案されている(例えば、特許文献2)。下記特許文献2に記載の真空断熱材の製造方法は、具体的には、減圧状態に保たれたチャンバー内に包装材を収容させ、該チャンバーに粉末を搬送するための搬送機構として複数段のホッパーを採用し、該ホッパーを通じてチャンバーに粉末を搬送する間に粉末を減圧状態にさせ、該粉末を前記包装材に収容させて密封する方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−68592号公報
【特許文献2】特公平7−98524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、中袋を用いない態様に於いても、表面の平坦度が十分に高い真空断熱材が得られない場合がある。
【0009】
本発明は上記のような問題点を解決することを課題としており、表面の平坦度が高く且つ断熱性に優れた真空断熱材を製造し得る真空断熱材の製造方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らが鋭意研究したところ、芯材にフュームドシリカ粉末を用いることにより、得られる真空断熱材が、表面の平坦度が高いものとなることを見出し、本発明の完成を想到するに至った。
【0011】
すなわち、本発明に係る真空断熱材の製造方法は、真空断熱材の外装材となるガス非透過性の包装材に芯材に用いる粉末を収容させるためのチャンバーと、該チャンバーに前記粉末を搬送する搬送機構とを有する真空断熱材製造装置を用い、減圧状態にされた前記チャンバー内に前記搬送中に減圧状態にさせた前記粉末を導入させ該チャンバー内において前記粉末を前記包装材に収容させて密封する真空断熱材の製造方法であって、前記粉末として、フュームドシリカ粉末を用いることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、芯材に粉末を用いることから、得られる真空断熱材が断熱性に優れたものとなる。また、該粉末としてフュームドシリカ粉末を用いることから、得られる真空断熱材が、表面の平坦度が高いものとなる。この真空断熱材は、例えば、住宅建材として用いられて他の住宅建材と接着剤を介して接着された場合には、表面の平坦度が高いことから、該真空断熱材と他の住宅建材との接触面積が大きいものとなり、表面の平坦度が低い場合に比べて接着剤による接着力が強いものとなる。
すなわち、本発明によれば、表面の平坦度が高く且つ断熱性に優れた真空断熱材を製造し得る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】真空断熱材の製造に利用する真空断熱材製造装置の一例を示した装置構成図((a):概略全体図、(b):チャンバー拡大断面図)。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明する。
本実施形態に係る製造方法によって製造される真空断熱材は、外装材となるガス非透過性の包装材に芯材に用いる粉末を収容させて密封させたもので、内部を減圧(真空)状態にさせたものである。
【0015】
本実施形態における真空断熱材の製造方法において用いられるガス非透過性の前記包装材は、所定量の粉末を収容可能な内容積を有しており、ガスバリア性に優れ、しかも、ヒートシールによる接着が可能な2枚のラミネートシートによって袋状に形成されたものであり、該袋状の包装材(以下「包装袋」ともいう)は、2枚の矩形状のラミネートシートが3方シールされて前記矩形の1辺に相当する部分を開口させたものである。
【0016】
前記ラミネートシートとしては、前記芯材(粉末)の密封状態(真空状態)を長期にわたって保持させ得るように、少なくとも表面側から順に、表面保護層、ガスバリア層を有し、最も内側(芯材側)に熱融着層を有するものを採用することが好ましい。
例えば、前記ガスバリア層としては、アルミニウムなどの金属の圧延箔や蒸着膜で形成されたものが挙げられ、通常、ラミネートシートには、1μm〜100μmの厚みで備えさせることができる。
このガスバリア層を蒸着膜で形成させる場合には、表面保護層を形成する部材又は熱融着層を形成する部材のいずれに対して蒸着を行ってもよい。
なお、気体分子は、ポリマー内に拡散することができ、ポリマーのみによって形成されたフィルムでは十分なガスバリア性の確保が困難であるが、この金属によって形成されたガスバリア層を有するラミネートシートを採用することで、シート厚み方向に気体分子が通過することが防止され、包装袋内部の真空度が低下することが抑制される。
【0017】
また、表面保護層は、その一つの目的として、前記ガスバリア層を腐食や傷付きなどから保護する機能をラミネートシートに付与すべく設けられたものであり、通常、5μm〜200μmの厚みとなるように形成され、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリプロピレンフィルムの延伸加工品などによって形成され得る。
さらに、表面保護層は、単層に限定されず、上記延伸加工がされたフィルムの外側にポリアミドフィルムなどを設けることでラミネートシートの耐折り曲げ性などの機械的特性の向上を図ることができる。
【0018】
前記熱融着層は、包装袋に減圧状態の粉末を収容させた後に、ヒートシールによるラミネートシートどうしの接着を行って、前記粉末を減圧状態で密封させ得るように設けられたものであり、例えば、低密度ポリエチレンフィルム、高密度ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、無延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムなどによって形成させ得る。
この熱融着層は、その厚みが薄過ぎる場合には、シール不良を発生させるおそれがある一方で、熱融着層の厚みが厚過ぎる場合には、シール部において、ガスバリア層の間に外袋の内外にわたる厚いポリマー層が当該熱融着層によって形成され易くなり、このポリマー層を通じての気体分子の流入が生じやすくなる。
すなわち、熱融着層の厚みが厚過ぎる場合には、真空断熱材製造後に、その内部の真空度の低下を早めてしまうおそれを有する。
このような観点から熱融着層の厚みは、20μm〜100μmとされることが好ましい。
【0019】
前記真空断熱材の芯材に用いる粉末としては、フュームドシリカ粉末を用いる。フュームドシリカは、火炎加水分解法により製造される非晶質シリカであり、煙霧シリカともよばれる。フュームドシリカは、例えば、四塩化ケイ素を酸水素炎中で高温加水分解させることで、液相を経ることなく製造することができる。フュームドシリカは、透過型電子顕微鏡で測定した任意の100粒の平均1次粒径が5〜100nm程度である。
前記搬送機構に導入するフュームドシリカ粉末として、水分量が1質量%未満であるフュームドシリカ粉末を用いることが好ましい。通常、粉末には水分が含有されているので、粉末を収容した包装材内を減圧させる際に、粉末に含まれる水分が粉末から揮発する分、所望の圧力までに減圧するのに時間がかかるおそれがあり、また、粉末に含まれていた水分が粉末から水蒸気として揮発して包装材内から包装材外に排出されるときに、この水蒸気の流れによって粉末が包装材内で偏在してしまい、その結果、得られる真空断熱材は、表面の平坦度が低いものとなるおそれもある。しかし、前記搬送機構に導入するフュームドシリカ粉末として、水分量が1質量%未満であるフュームドシリカ粉末を用いれば、フュームドシリカ粉末は減圧下で前記搬送機構で搬送されることで、前記チャンバーに導入されるフュームドシリカ粉末の水分量が減少されることから、前記チャンバーに導入されるフュームドシリカ粉末の水分量は1質量%未満となり、上記水蒸気による弊害を抑制することができる。即ち、前記搬送機構に導入するフュームドシリカ粉末として、水分量が1質量%未満であるフュームドシリカ粉末を用いることにより、表面の平坦度が高い真空断熱材を短時間で作製することができるという利点がある。
なお、粉末の水分量は、JIS K0068:2001(化学製品の水分測定方法)記載の方法に準じて測定する。具体的には、秤量した粉末試料20〜100mgを水分測定用容器に収容し、(株)三菱化学アナリテック社製のカールフィッシャー水分測定装置CA−200及び水分気化装置VA−236Sに前記容器をセットして水分量を測定する。なお、測定時の陽極液、陰極液にはそれぞれ(株)エーピーアイ コーポレーション製アクアミクロンAX、アクアミクロンCXUを使用し、測定温度は200℃、キャリアガスはN2 を使用し、流量は250ml/minにして水分量の測定を行う。試料の試験回数は3回で、水分測定用容器に含まれる水分も含めた各試料の水分量から、同時に測定したブランク容器としての水分測定用容器の水分量(試験回数2回の算術平均値)を減算し、その値を粉末試料中に含まれる水分量とする。最終結果としては3回の試料中水分量(質量%)を算術平均する。また、乾燥後の粉末試料の水分量の測定は、所定の温度のオーブンで粉末試料を3時間加熱した後、オーブン内の空気をN2で置換し、室温までオーブン内で冷却した後、すばやく粉末試料自体の質量を計量し、上記の方法で水分量を測定する。
また、得られる真空断熱材に含まれる粉末は、密度が100〜250kg/m3 であることが好ましい。本実施形態の真空断熱材の製造方法は、該粉末の密度が250kg/m3 以下であることにより、単位体積あたりの熱伝導率が小さくなり、得られる真空断熱材の断熱性が優れるという利点があり、また、得られる真空断熱材を住宅建材等として用いる場合には、軽量性に優れるという利点もある。また、本実施形態の真空断熱材の製造方法は、該粉末の密度が100kg/m3 以上であることにより、得られる真空断熱材の放射伝熱が抑制され熱伝導率が小さくなるので、得られる真空断熱材の断熱性が優れるという利点がある。
【0020】
なお、前記粉末には、空隙の形成以外にも、ガス非透過性材料で作られた包装袋などから発生されるアウトガスなどの吸着に有効な成分を含有させることができ、水分吸着剤やガス吸着剤として、合成ゼオライト、活性炭、活性アルミナ、シリカゲル、ドーソナイト、ハイドロタルサイトなどの物理吸着剤粒子、および、アルカリ金属やアルカリ土類金属の酸化物および水酸化物などの化学吸着剤粒子を含有させることができる。
【0021】
次いで、図1を参照しつつ本発明の真空断熱材の製造方法を実施するにあたって用いるのに好適な真空断熱材製造装置の一例を説明する。
図1は真空断熱材製造装置の装置構成を示す図であり、(a)は概略全体図であり、(b)は、チャンバー1の内部構造を示す図である。
図1に示しているように本実施形態において用いられる真空断熱材製造装置は、真空断熱材の外装材となるガス非透過性の包装材に芯材に用いる粉末を収容させるためのチャンバー1と、該チャンバー1に前記粉末を搬送する搬送機構2とを有している。
【0022】
前記チャンバー1は、その内部に袋状の包装材3(包装袋3)を収容しており、しかも、この包装袋3を減圧条件下収容させ得るように構成され、該減圧条件下において予め減圧状態にさせた粉末を前記包装袋3に収容させて密封させるべく形成されている。
【0023】
より具体的には、本実施形態における前記チャンバー1は、該チャンバー1内にガス非透過性材料からなる包装袋3を外部から導入させるための入庫室11と、前記包装袋3に減圧状態で前記粉末を収容させるための充填室12と、該充填室12で粉末が収容された包装袋3’を密封するためのシール室13とが横並びに設けられており、前記入庫室11と前記充填室12との間が開閉可能な仕切材14で仕切られているとともに前記充填室12と前記シール室13との間も開閉可能な仕切材15で仕切られている。
即ち、前記チャンバー1は、前記仕切材14,15を開けることによって前記入庫室11から前記シール室13までの間を包装袋3が往来可能な状態になり、且つ、前記仕切材14,15を閉じることによって各室を個別に減圧可能な状態になるように形成されている。
また、前記チャンバー1は、前記入庫室11に包装袋3を収容させるための扉17と、前記シール室13から真空断熱材を取り出すための扉18とを有している。
【0024】
本実施形態においては、前記の通りヒートシール可能なガス非透過性の矩形状のフィルムが2枚貼り合せられて前記矩形の1辺に相当する部分を開口させた袋体が前記包装袋3として用いられており、前記充填室12には、該包装袋3を上方に向けて大きく開口させた状態で保持するための保持具12aと、前記包装袋3が載置され該包装袋3に粉末を収容させる際にその収容量を計量するための質量計12bと、該質量計12bごと前記包装袋3を充填室内で上下に移動させることができる昇降機構(図示せず)とが備えられている。
【0025】
また、前記シール室13には、所定量の粉末を収容させた包装袋3の開口をヒートシールして当該包装袋3を密封するためのヒートシーラ13aが備えられている。
【0026】
なお、前記チャンバー1は、前記入庫室11から前記シール室13までの間を包装袋3が治具16に固定された状態で当該治具16ごと移動するように構成されており、該治具16には、真空断熱材を全体的に均一な厚みに仕上げるための2枚の成形板16aが備えられている。
該成形板16aは、治具16に包装袋3を固定した際に、該包装袋3を前後から挟む形となるように備えられており、しかも、互いの距離を調整し得るようにして備えられている。
即ち、例えば、包装袋左右両端のそれぞれ一箇所を把持しただけで粉末を収容させたりすると、粉末の重みで包装袋の底部が大きく膨らんでしまい、底部に比べて上部の厚みが薄い真空断熱材が形成されることになる。
一方で、本実施形態のごとくチャンバー1内を前記治具16に固定して包装袋3を移動させるようにした際には、粉末の収容時に成形板16aによって包装袋3の膨らみが規制されることから全体的に均一な厚みを有する真空断熱材を得られ易くなる。
【0027】
また、前記治具16は、粉末が収容された包装袋3’を前記充填室12から前記シール室13まで移動する際に、前記包装袋3’を振動させながら移動するように構成されている。粉末は、通常、凝集してかたまりとなり易く、その結果、包装袋3’内で粉末のかたまりどうしの間に隙間が生じて包装袋3’内で粉末の偏りが生じ得るが、前記治具16は、包装袋3’内の粉末を振動させるように構成されていることにより、前記包装袋3’内の粉末をならすことができ、包装袋3’内で粉末の偏りを生じ難くすることができるという利点がある。
【0028】
このチャンバー1に粉末を搬送するための前記搬送機構2は、3台の第1、第2及び第3ホッパー21a、21b、21c、並びに、粉末を圧縮する圧縮機24を備え、3台の該ホッパー21a、21b、21c、及び圧縮機24が上流側から順に直列に接続されている。
前記第2及び第3ホッパー21b、21cには、第2及び第3ホッパー21b、21c内の空間の気体を真空引きして減圧状態にさせる第1及び第2真空ポンプ22a、22bがそれぞれ備えられている。該真空ポンプ22a、22bとしては、メカニカルブースターポンプ、油回転ポンプ、水封ポンプなどを採用することができる。
前記圧縮機24は、粉末を圧縮して前記包装袋3に粉末を供給させやすくするためのもので、具体的には、粉末が流通され且つ内部空間が円柱状となる管体と、該管体内に設けられ、且つ、該内部空間の中心に沿って延びる回転軸周りに回転可能で、且つ、前記回転軸周りに螺旋状に配されたフライトを有するスクリューとで構成させることができる。また、前記圧縮機24は、前記管体と、単に後押しさせて粉末を圧縮させるピストンとで構成させることもできる。
該ホッパー21a、21b、21c、及び圧縮機24には、上部に粉末を取り入れるための粉末供給部がそれぞれ形成され、下部に粉末を排出させるための粉末排出経路がそれぞれ形成されている。
そして、第1ホッパー21aの粉末排出経路が第2ホッパー21bの粉末供給部に接続され、第2ホッパー21bの粉末排出経路が第3ホッパー21cの粉末供給部に接続され、第3ホッパー21cの粉末排出経路が圧縮機24に接続されており、本実施形態においては、粉末を第1ホッパー21a内を通過させた後で、連続して第2ホッパー21b内を通過させ、さらに連続して第3ホッパー21c内を通過させ、そして、圧縮機24で圧縮し得るように前記搬送機構2が構成されている。
前記搬送機構2は、前記第1、第2、及び、第3ホッパー21a、21b、21cの粉末供給部に、第1、第2、及び、第3バルブ23a、23b、23cをそれぞれ備え、該バルブ23a、23b、23cによりそれぞれの粉末排出経路が開閉されるように構成されている。該バルブ23a、23b、23cとしては、例えば、ロータリーバルブなどが挙げられる。
前記圧縮機24は、下部に設けられた粉末排出経路を前記チャンバー1の充填室12に上方から突入させており、該粉末排出経路に取り付けられた供給ノズル24aを通じて前記包装袋3内に粉末を吐出させ得るように配置されている。
【0029】
次いで、このような真空断熱材製造装置を用いた真空断熱材の製造方法について説明する。
まず、前記チャンバー1側では、前記包装袋3を治具16に固定したものを用意し、入庫室11と充填室12との間を仕切材14で閉じるとともに前記充填室12とシール室13との間も仕切材15で閉じた状態にし、充填室12とシール室13との減圧を真空ポンプ19を用いて開始させる。
一方で入庫室11の扉17を開けて、治具16に固定した包装袋3を入庫室11に収容させ、この入庫室11の扉17を閉じて入庫室11の減圧を開始させる。
なお、治具16と包装袋3とは、1組のみならず複数組入庫室11に収容させても良い。
その後、少なくとも、入庫室11と充填室12とが所望の真空度に到達した時点で仕切材14を開けて治具16に固定したままの状態で包装袋3を入庫室11から充填室12に移動させ、質量計12bの上に載せ、前記昇降機構によって治具16を載置した質量計12bを上方に移動させ、圧縮機24の下部に取り付けられた供給ノズル24aの先端が包装袋3の上部開口から侵入した時点で昇降機構による移動を停止させる。
【0030】
これとともに、前記搬送機構2側では、前記バルブ23a、23b、23cにより前記ホッパー21a、21b、21cの粉末排出経路を閉状態とし、そして、前記第1ホッパー21aに芯材として使用する粉末を収容させる。
次いで、第2及び第3ホッパー21b、21cそれぞれに備えられた第1及び第2真空ポンプ22a、22bを運転させ、第2及び第3ホッパー21b、21cの内部を減圧状態にさせる。
そして、前記第1バルブ23aにより前記第1ホッパー21aの粉末排出経路を開状態にすることで、第1ホッパー21a内の粉末が自然落下によって第2ホッパー21bに供給される。
次いで、所望の量の粉末が第2ホッパー21bに供給された時点で、第1バルブ23aにより前記第1ホッパー21aの粉末排出経路を閉状態にし、前記第1真空ポンプ22aを継続して駆動させることによって、第1ホッパー21aから第2ホッパー21bに供給された粉末中の気体を第2ホッパー21bの外部空間に排出させ粉末を減圧状態にさせる。
そして、前記第2バルブ23bにより前記第2ホッパー21bの粉末排出経路を開状態にすることで、第2ホッパー21b内の粉末を自然落下によって第3ホッパー21cに供給させる。
次いで、所望の量の粉末が第3ホッパー21cに供給された時点で、第2バルブ23bにより前記第2ホッパー21bの粉末排出経路を閉状態にし、前記第2真空ポンプ22bを継続して駆動させることによって、第2ホッパー21bから第3ホッパー21cに供給された粉末中の気体を第3ホッパー21cの外部空間に排出させることで、粉末をさらに減圧させる。
そして、前記第3バルブ23cにより前記第3ホッパー21cの粉末排出経路を開状態にすることで、第3ホッパー21c内の減圧状態(例えば、10Pa以下)となった粉末を自然落下によって圧縮機24に供給させる。
次いで、所望の量の粉末が圧縮機24に供給された時点で、第3バルブ23cにより前記第3ホッパー21cの粉末排出経路を閉状態にし、粉末を圧縮機24で圧縮する。
その後、供給ノズル24aを通じて圧縮機24から圧縮された粉末を包装袋3に収容させることになるが、前記質量計12bによって観測される包装袋3の質量増加、即ち、粉末の収容量が所望の値に到達した時点で供給ノズル24aから包装袋3への粉末の供給を停止させ、それ以上粉末が包装袋3内に収容させないようにする。
そして、昇降機構によって包装袋3を降下させ、シール室13との間の仕切材15を開けて粉末を収容した包装袋3’を充填室12からシール室13に移動させる。
【0031】
なお、この時点で、入庫室11に新たな包装袋3が減圧状態で待機されているようであれば、粉末を収容した包装袋3’のシール室13への移動に併せて、入庫室11との間の仕切材14を開けて入庫室11から充填室12に新たな包装袋3を導入させるようにしてもよい。
この新たな包装袋3を昇降機構によって上昇させ、供給ノズル24aを上部開口から侵入させて粉末を所定量収容させる工程については、先の説明と同様に実施することができる。
【0032】
一方で、粉末を収容した包装袋3’を充填室12からシール室13まで移動させる際に、前記治具16により前記包装袋3’を振動させながら移動させる。これにより、圧縮によって粉末が凝集されて形成された凝集塊を振動により解砕して、前記包装袋3’内の粉末をならすことができ、包装袋3’内で粉末の偏りを生じ難くすることができる。
【0033】
シール室13に移動させた包装袋3’は、上部開口をヒートシーラ13aでヒートシールして収容させた粉末を密封させ真空断熱材とすることができる。
なお、要すれば、充填室12との間の仕切材15を閉じてシール室13の減圧状態を解除し、隣の充填室12で包装袋3への粉末の収容を実施しつつ出来上がった真空断熱材をチャンバー1から取り出すこともできる。
【0034】
ところで、真空断熱材は、大気圧下におかれた時点で包装袋3が大気圧に相当する圧力で内部に収容された粉末に押し付けられる事になる。
従って、粉末の収容状態に偏りがあると包装袋3表面に前記偏りによる凹凸が形成されやすい事になるが、本実施形態においては、粉末にフュームドシリカ粉末が用いられているために、得られる真空断熱材の包装袋3内部における流動性に優れた状態にすることが出来、凹凸が形成され難いものとすることが出来る。これは、フュームドシリカ自体の圧縮復元力により、フュームドシリカが、一度真空中で圧縮されたとしても、圧縮前の流動性が良い状態に保たれやすいからである。
すなわち、大気圧におかれる前に粉末の収容状態に偏りが生じていたとしても、大気圧下におかれて包装袋3による圧力が加えられた時点で粉末が平坦にならされて、真空断熱材表面に凹凸が形成される事を抑制させ得る。
【0035】
なお、シール室13におけるヒートシールにおいて、例えば、シール箇所に粉末が付着していたりするとシール性が損なわれ、良好にヒートシールされたものに比べて真空断熱材中に空気を侵入させやすくなる。
この点において、本実施形態に示した真空断熱材製造装置では、上部開口させた包装袋に上方から粉末を収容させるため、包装袋を横向きに寝かせ、側方から供給ノズル24aを差し入れるような態様で粉末を収容させる場合に比べて包装袋の開口付近に粉末が付着し難く良好なるシール性を得られ易い。
【0036】
また、上部開口させた包装袋に上方から粉末を収容させる場合であっても収容時に粉末を舞い上がらせてしまうと包装袋の開口付近に粉末を付着させるおそれを有するが、本実施形態に係る真空断熱材の製造方法は、例示したように圧縮機24で粉末を圧縮させ、この圧縮された粉末を前記供給ノズル24aから圧縮させた状態で排出させることから、粉末の舞い上がりが抑制されるという利点がある。
このような点において、本実施形態に示した真空断熱材の製造方法は、短時間に断熱性能が低下してしまうような不良品の発生を抑制することができ、真空断熱材の歩留り向上に有効な方法であるといえる。
【0037】
なお、本実施形態においては、包装袋3に導入された粉末の量を前記質量計12bで測定しているが、本実施形態に例示の方法に代えて、圧縮機24で圧縮された粉末を一旦計量用容器で計量し(マス計量)、この計量された粉末を包装袋3に導入してもよい。計量されて包装袋3に導入される粉末は減圧されたものであるので、包装袋3に導入される際に飛散し難く、ほぼ計量どおりの量の粉末を導入することができる。
また、一の包装袋3に導入するのに必要な量に小分けした粉末を前記ホッパー21a、21b、21cを通じて減圧しつつチャンバー1まで搬送して(パケット式供給)、包装袋3に供給してもよい。
さらに、本実施形態においては、真空断熱材製造装置が、包装袋3に導入する圧縮機24を備えているが、本発明においては、真空断熱材製造装置が、該圧縮機24を備えない態様であってもよく、この場合には、前記第3バルブ23cがロータリーバルブであり、該ロータリーバルブがローターと該ローターを収容するケースとを備え、該ケース内が減圧されるように構成され、真空断熱材製造装置が、ケース内を減圧しつつ、ローターを回転することで減圧された粉末を充填室に供給しうるように構成されていることが好ましい。
なお、前記ホッパー21a、21b、21cの代わりに、小分けした粉末をスクリューやピストンを用いて搬送してもよい。スクリューやピストンを用いるほうが、ホッパーを用いる場合に比べて、搬送機構2自体を小型化しやすいという利点がある。
【0038】
さらには、本実施形態においては、真空断熱材を効率よく製造し得る点において、個別に減圧することができる3室(入庫室、充填室、及び、シール室)に内部が区分けされたチャンバーを利用する態様を例示しているが、本発明の真空断熱材の製造方法は、このような態様に限定されるものでもない。
【実施例】
【0039】
次に真空断熱材の製造の実施例および比較例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0040】
(実施例1)
まず、図1に例示のものと同様に構成されている真空断熱材製造装置を用い、粉末としての疎水性フュームドシリカ粒子(商品名「Aerosil R972」、日本アエロジル社製、平均粒径16nm、水分量0.21質量%)をすばやく第1ホッパーへ投入し、第1ホッパーの上部を蓋で塞いだ後で、搬送機構の真空ポンプを作動させ、次いで、チャンバーの真空ポンプを作動させた。
チャンバーの充填室が100Paの減圧状態に到達したとき、圧縮機内部の圧力は20Paとなった。
ガス非透過性材料で作られた包装袋(外幅250mm、長さ370mm、シール幅10mm)を治具に固定して入庫室へ入れ、該入庫室を真空引きして圧力が100Paとなるまで減圧した。
なお、このときのガス非透過性材料としては、表面保護層が40μmのポリアミド樹脂フィルム、ガスバリア層が6μmのアルミニウム箔、ヒートシール層が50μmのポリエチレン樹脂フィルムからなるラミネートフィルム(昭和電工パッケージング製)を使用した。
入庫室と充填室との圧力を略同じにさせた後、仕切材を開けて、包装袋を固定させた治具を入庫室から充填室に移動させ、当該充填室において下向きに開口している供給ノズルの真下で停止させ、昇降機構によって包装袋を治具ごと上昇させた。
次に、第2、第3ホッパー内で粉末を減圧状態にし、圧縮機で圧縮させた後、圧縮された粉末を包装袋内へ充填し、所定量の粉末を包装袋に収容させた後、粉末を収容させた包装袋を昇降機構によって下降させた。
予め充填室と同じ圧力に調整させたシール室へ粉末を収容させた包装袋を移動させるべく充填室とシール室との間の仕切材を開け、前記包装袋を治具ごとシール室へ移動させヒートシーラによって前記包装袋の開口部をヒートシールし、且つ、充填室との間の仕切材を閉じた後、該シール室を大気開放し、中袋等を用いていない真空断熱体を製造した。得られた真空断熱材を確認すると、表面が平坦なものであった。
また、同様の操作を繰り返し、真空断熱体を連続的に製造することができた。
この間の作業は簡便であり、また、製造された真空断熱材は断熱性能に優れ、且つ、時間が経過しても実質的な断熱性能の低下が見られない優れたものであった。
【0041】
(実施例2)
粉末として、フュームドシリカ(商品名「Aerosil RX−300−5」、日本アエロジル社製、平均粒径7nm、水分量0.33質量%)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして真空断熱材を作製した。得られた真空断熱材を確認すると、表面が平坦なものであった。
また、同様の操作を繰り返し、真空断熱体を連続的に製造することができた。
この間の作業は簡便であり、また、製造された真空断熱材は断熱性能に優れ、且つ、時間が経過しても実質的な断熱性能の低下が見られない優れたものであった。
【0042】
(比較例1)
粉末として、多孔質球状シリカ(商品名「ゴッドボール B−25C」、鈴木油脂社製、平均粒子径5μm、水分量4.78質量%)を150℃に加熱したもの(水分量0.23質量%)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして真空断熱材を作製した。
得られた真空断熱材は、表面が凸凹し平坦度が十分高いものではなかった。
【符号の説明】
【0043】
1:チャンバー、2:搬送機構、3:包装材(包装袋)3’:包装材(包装袋)、11:入庫室、12:充填室、12a:保持具、12b:質量計、13:シール室、13a:ヒートシーラ、14:仕切材、15:仕切材、16:治具、16a:成形板、17:扉、18:扉、19:真空ポンプ、21a:第1ホッパー、21b:第2ホッパー、21c:第3ホッパー、22a:第1真空ポンプ、22b:第2真空ポンプ、23a:第1バルブ、23b:第2バルブ、23c:第3バルブ、24:圧縮機、24a:供給ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空断熱材の外装材となるガス非透過性の包装材に芯材に用いる粉末を収容させるためのチャンバーと、該チャンバーに前記粉末を搬送する搬送機構とを有する真空断熱材製造装置を用い、減圧状態にされた前記チャンバー内に前記搬送中に減圧状態にさせた前記粉末を導入させ該チャンバー内において前記粉末を前記包装材に収容させて密封する真空断熱材の製造方法であって、
前記粉末として、フュームドシリカ粉末を用いることを特徴とする真空断熱材の製造方法。
【請求項2】
前記チャンバー内における前記包装材への粉末の前記収容後に、粉末を収容させた前記包装材を振動させ、該振動後に前記密封を実施する請求項1記載の真空断熱材の製造方法。
【請求項3】
前記搬送機構に導入するフュームドシリカ粉末として、水分量が1質量%未満であるフュームドシリカ粉末を用いる請求項1又は2記載の真空断熱材の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2013−104491(P2013−104491A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−248852(P2011−248852)
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「マルチセラミックス膜新断熱材料」に関する委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】