説明

眼鏡部品の連結構造

【課題】 レンズ等の部品に少なくとも一つの孔を形成するだけで連結と回り止めを同時に施すことができ、組立も簡単で緩みを生じることのない眼鏡部品の連結構造を提供する。
【解決手段】 眼鏡を構成する部品の連結構造であって、一方の部品6に形成した少なくとも一つの軸部60と、他方の部品2に形成され、軸部60の外径と同一の内径を有し、軸部60が嵌入される孔20と、軸部60の外周面に形成された溝状又は孔状の係合部61と、この係合部61に係合される少なくとも一つ球体62とを有し、係合部61に球体62を保持させた状態で孔20に軸部60を圧入するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばレンズと智又はレンズとブリッジといった眼鏡部品の連結構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ツーポイントタイプの眼鏡において、レンズと智及びレンズとブリッジとを連結する連結構造ではボルトが用いられるのが一般的である。このようなボルトは経時的な緩みが問題となるが、容易に緩みが生じないように高トルクで締め付けると、レンズにゆがみやレンズ割れが生じるおそれがある。
また、一本のボルトと回り止め用のピンとで連結部を構成して、緩みが生じるおそれのあるボルトの本数を減らした連結構造も周知である。
しかし、上記した従来の連結構造では、いずれもボルトを用いているため緩みの問題を完全には解決することができず、かつ、ボルトやピンの挿通する少なくとも二つの孔を正確に位置決めしてレンズに穿設しなければならず、工程数が増加して組立コストが高くなったり、ピンを挿通する孔とボルトを挿通する孔との距離がずれ、部品の組立ができなくなって、製品そのものが不良になるおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−54582号公報
【特許文献2】特開2002−350783号公報
【特許文献3】実用新案登録第3103059号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたもので、レンズ等の部品に少なくとも一つの孔を形成するだけで連結と回り止めを同時に施すことができ、組立も簡単で緩みを生じることのない眼鏡部品の連結構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の眼鏡部品の連結構造は、眼鏡を構成する部品の連結構造であって、一方の部品に形成した少なくとも一つの軸部と、他方の部品に形成され、前記軸部の外径と同一の内径を有し、前記軸部が嵌入される孔と、前記軸部の外周面に形成された溝状又は孔状の係合部と、この係合部に係合される少なくとも一つ球体とを有し、前記係合部に前記球体を保持させた状態で前記孔に前記軸部を圧入する構成としてある。
本発明は、請求項2に記載するように、智又はブリッジとレンズとの連結構造に好適に適用することができる。
上記の構成によれば、係合部に球体を保持させた状態で、智やブリッジ等に形成した軸部を、レンズ等に形成された孔に押し込む。軸体は、球体を孔内周面に食い込ませながら、所定の深さ位置まで孔内に圧入される。従って、球体は他方の部品(例えばレンズ等)よりも硬いものであるのが好ましい。球体は、孔内周面に食い込んだ状態であるので、一度圧入した軸体は容易には緩んだり抜けたりすることがない。また、球体が軸体と孔内周面の双方に食い込んだ状態になるので、球体を介して軸体が孔内周面に対して強固に固定され、智やブリッジ等がレンズに対して回転するということもない。
軸部に形成する溝や孔は、請求項3に記載するように、前記球体を係合させたときに、前記軸体の外周面から突出する前記球体の部分が、前記球体の半径よりも小さいものとなるようにするとよい。
このようにすることで、軸部を孔に押し込む際に球体には溝や孔の底部に押し付けられる力が作用し、押し込み動作の最中における球体の脱落を抑制する。また、請求項4に記載するように、前記係合部に接着剤を介して前記球体を保持させることで、孔への軸体の押し込み作業をより容易にすることができる。
また、請求項5に記載するように、前記孔の内周面に、前記球体と嵌合する溝状又は凹状の嵌合部を形成してもよい。このようにすることで、軸部が孔内の所定深さ位置まで押し込まれたときに、球体が嵌合部と嵌合して、より高精度に位置決めを行うことができる。
また、本発明では、軸部と孔内周面との間に接着剤を充填して補強することが可能である。この場合、請求項6に記載するように、前記軸部の基部に接着剤を塗布するだけで、前記軸部を前記孔部に圧入する際に、圧入動作にともなって前記接着剤が前記軸部と前記孔内周面との間の隙間に充填されるので、作業性が向上する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、レンズと智又はレンズとブリッジといった部品の連結をほとんどワンタッチで簡単に行うことができ、かつ、緩みが生じにくい連結構造を得ることができる。また、一つの軸部と一つの孔であっても、眼鏡部品を強固に連結することができ、かつ、強固に回転も規制されるので、作業性も向上し、眼鏡の組立コストも削減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の好適な実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態にかかる連結構造を適用したツーポイント眼鏡の概略斜視図である。
この眼鏡は、左右の樹脂レンズ(以下、単に「レンズ」と記載する)2と、レンズ2の両端に取り付けられたチタン等の金属製の智3と、この智3にヒンジ4によって折り畳み自在かつ展開自在に取り付けられるテンプル5と、左右のレンズ2を中央で連結する金属製のブリッジ6と、このブリッジ6に取り付けられた鼻パッド7とを有している。
この実施形態において本発明の連結構造は、左右の智3と左右のレンズ2との連結部分(A,D)及びブリッジ6の両端と左右のレンズ2との連結部分(B,C)に適用される。
【0008】
図2は、本発明の連結構造の一実施形態にかかり、(a)は連結構造の分解状態を、(b)は軸部の溝に球体を保持させた状態を、(c)は軸部と球体を孔に圧入してブリッジをレンズに連結したときの状態を、それぞれ部分拡大斜視図で示している。
なお、図2では、ブリッジ6の一端とレンズ2との連結部分(B)についてのみを図示するが、他の部分(A,C,D)でも同様であるので、他の部分の連結構造については説明を省略する。
【0009】
ブリッジ6の一端には、ブリッジ6と同一の金属で形成された軸部60が立設されている。軸部60の先端と基部との間の途中部位には、軸部60の外周面の全周に亘って、溝61が形成されている。溝61は、旋盤を用いた切削加工や転造ダイスによるローリング加工、レーザー加工等の公知の方法で形成することができる。
ウレタン系の樹脂等で形成されたレンズ2には、軸部60の外径と同一内径の孔20が貫通形成される。
球体62は、ベアリング等の機械部品に使用される市販の鋼球を用いることができる。レンズ2より硬度が高ければ、セラミック等で形成された他の球体62を用いてもよい。また、軸部60に保持させる球体62の数は一つであってもよいが、複数にすることで連結強度を増大させることができる。その一方で、球体62の数が多すぎると、圧入の際により大きな力が必要になって組立作業が却って困難になったり、レンズ2に割れや欠けが生じたりするおそれがあるので、二つ又は三つとするとよい。
【0010】
図3は、溝61と球体62との関係を示す断面図である。球体62の直径は、溝61の幅とほぼ同一としてもよいが、図2(b)に示すように、球体62を嵌め込んで溝61に保持させることができるように、溝61の幅より僅かに大きいものとするのが好ましい。
また、溝61の深さDは、図3に示すように、球体62の半径rよりも若干大きくするのが好ましい。このようにすることで、軸部60を孔20に押し込む際に、球体62には溝61の底部に押し付けられる力が作用し、押し込み動作中に球体62が溝61から容易に脱落しないようにする。
【0011】
ブリッジ6をレンズ2に取り付ける際には、図2(b)に示すように、軸部60の溝61に球体62を嵌め込んで保持させる。接着剤を溝61の内部に塗布して、球体62を保持させるようにしてもよい。
この状態で、軸部60及び球体62をレンズ2の孔20に圧入する。この圧入は、ブリッジ6がレンズ2の表面に当接するまで行う。このようにして連結を完了した状態を図2(c)及び図4の断面図に示す。
圧入動作によって、球体62は孔20の内周面を押し広げながら進むが、球体62が通過した孔20の内周面は、その弾性により僅かに縮径し、球体62及び軸部60の戻りを規制する。これにより、球体62及び軸部60の抜けが強固に抑制される。
なお、本発明の連結構造においては、連結強度を高める目的で、軸部60と孔20との間に接着剤を充填してもよい。例えば、図5(a)に示すように、軸部60の基部に接着剤63を塗布しておけば、図5(b)に示すように、軸部60及び球体62をレンズ2の孔20に圧入する圧入動作とともに、軸部60と孔20の内周面との間の球体62の通過跡に接着剤63を充填することができる。
以上により、ブリッジ6とレンズ2との連結が終了する。他の部位(A,C,D)についても同様にして連結し、眼鏡を組み立てる。
【0012】
本発明は種々の変形例を想定することができる。
図6(a)の例では、先の実施形態の溝61に代えて、球体62を嵌め込む孔63を軸部60に形成している。この孔63の径及び深さは、先の実施形態の溝61と同様にする。すなわち、孔63の径は球体62と同じか僅かに小さくし、深さは球体62の半径rよりも若干大きくする。孔63の数は、一つであってもよいが、二つ又は三つ(図示の例は三つ)として、軸部60の外周面に均等間隔で形成するのが好ましい。
また、この例では、レンズ2の孔20の内部に、球体62が嵌合する凹状の嵌合溝21が形成されている。さらに、孔20の開口部分から嵌合溝21まで、球体62を案内する案内溝22が少なくとも一つ形成されている。この案内溝22は、球体62の少なくとも一つを嵌合溝21まで真っ直ぐに案内するものである。案内溝22の深さは、孔63から突出する球体62の部分よりも十分に浅いものとする。
そして、ブリッジ6がレンズ2の表面に当接するまで軸部60及び球体62をレンズ2の孔20に圧入すると、球体62が嵌合溝21に嵌り込んで、連結構造が完成する。
【0013】
図6(b)の例では、図6(a)と同様の軸部60をブリッジ6に左右二つ設けている。
レンズ2には、先の実施形態と同様の孔20を、軸部60の配置に合わせて二つ形成するものとしてもよいが、図6(b)に示す例では、二つの軸部60を圧入できる長孔20′を一つ形成している。
【0014】
また、上記の実施形態では、軸部60及び孔20はともに円形又は長孔として説明しているが、図6(c)に示すように、角形状であってもよいし、楕円状や三角形状、多角形状であってもよい。
軸部60″及び孔20″を角形状とすることで、レンズ2に対するブリッジ6等の回転をより有効に規制することができる。
【0015】
本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。
例えば、図6(a)の例では、孔20の内部に嵌合部として溝(嵌合溝21)を形成するものとしたが、球体61と嵌合する孔であってもよい。
また、本発明において球体は、この球体が嵌め込む孔を有する他方の部品(上記の例ではレンズ)よりも硬いものであることが好ましいが、当該他方の部品が球体より硬い材質であったり、ガラスのように脆性の高い材料であったりしても、当該他方の部品に形成した孔の中に真鍮等の軟質の金属や樹脂で形成した筒状体を嵌め込んで固定し、この筒状体の孔に球体を嵌め込むようにすることで、本発明の適用が可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0016】
本発明は、レンズと智及びレンズとブリッジの連結部分に主として適用が可能であるが、他の部分の部品の連結にも適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態にかかる連結構造を適用したツーポイント眼鏡の概略斜視図である。
【図2】本発明の連結構造の一実施形態にかかり、(a)は連結構造の分解状態を、(b)は軸部の溝に球体を保持させた状態を、(c)は軸部と球体を孔に圧入してブリッジをレンズに連結したときの状態を示す部分拡大斜視図である。
【図3】溝と球体との関係を示す断面図である。
【図4】軸部及び球体をレンズの孔に圧入して連結を完成した状態を示す断面図である。
【図5】接着剤を軸部と孔との内周面との間に充填する様子を説明する断面図である。
【図6】本発明は種々の変形例を説明する斜視図である。
【符号の説明】
【0018】
2 レンズ
20,20″ 孔
20′ 長孔
21 溝
3 智
5 テンプル
6 ブリッジ
60、60″ 軸部
61 溝
62 球体
63 孔


【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼鏡を構成する部品の連結構造であって、
一方の部品に形成した少なくとも一つの軸部と、
他方の部品に形成され、前記軸部の外径と同一の内径を有し、前記軸部が嵌入される孔と、
前記軸部の外周面に形成された溝状又は孔状の係合部と、
この係合部に係合される少なくとも一つ球体とを有し、
前記係合部に前記球体を保持させた状態で前記孔に前記軸部を圧入すること、
を特徴とする眼鏡部品の連結構造。
【請求項2】
前記一方の部品が智又はブリッジで、前記他方の部品がレンズであることを特徴とする請求項1に記載の眼鏡部品の連結構造。
【請求項3】
前記係合部に前記球体を係合させたときに、前記軸体の外周面から突出する前記球体の部分が、前記球体の半径よりも小さいものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の眼鏡部品の連結構造。
【請求項4】
前記係合部に接着剤を介して前記球体を保持させたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の眼鏡部品の連結構造。
【請求項5】
前記孔の内周面に、前記球体と嵌合する溝状又は凹状の嵌合部を形成したことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の眼鏡部品の連結構造。
【請求項6】
前記軸部の基部に接着剤を塗布し、前記軸部を前記孔部に圧入する際に、圧入動作にともなって前記接着剤が前記軸部と前記孔内周面との間の隙間に充填されるようにしたことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の眼鏡部品の連結構造。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−112974(P2011−112974A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−270895(P2009−270895)
【出願日】平成21年11月29日(2009.11.29)
【出願人】(508285802)
【出願人】(505364599)株式会社清水工業所 (8)
【Fターム(参考)】