説明

着信呼優先分配方法

【課題】積滞呼による回線占有を、極力抑えることが可能な着信呼優先分配方法を提供する。
【解決手段】積滞情報テーブルに登録する情報として通話継続積滞呼と通話切断積滞呼の2種類の積滞情報を用い、通話切断積滞呼は、一度通話を切断し再度着信したときに、通話を継続して積滞したときと同じ状態で積滞に復帰することを可能とすることで、不必要に回線を占有させない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着信呼優先分配方法に係り、詳しくは構内交換機に接続された複数の内線端末に外線端末の着信呼を自動分配する着信呼優先分配方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、外線端末から構内交換機への着信呼をトラヒックに応じて自動的に内線端末に分配する着信呼自動分配方式が知られている(例えば、特許文献1を参照)。この着信呼自動分配方式は、統計情報により着信先内線端末のトラヒックの多少を判断し、分配先を変更すると共に、着信先の内線端末の追加、変更が自動的に行えるようになっている。
【特許文献1】特願2000−333224号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前述した着信呼自動分配方式にあっては、積滞呼が回線を占有するため、回線占有率が高くなるという問題があった。つまり、構内交換機に接続される複数の回線のすべてが占有状態に陥る頻度が高くなるという問題があった。それ故、従来の着信呼自動分配方式を例えばテレホンサービスシステムに適用した場合、外線端末から該システムに接続することができず、商機会の遺失のみならず、顧客満足度の低下等の問題が生じる。
【0004】
この種の問題の対策としては、収容回線数や内線端末数およびオペレータを増やして対応する等の方法が考えられる。しかしながら、収容回線数の増加に伴う回線使用料が増加すると共に、内線端末数の増大およびオペレータの増員による設備投資や人件費の増大を招くという問題もあった。
本発明はこのような事情を考慮してなされたもので、その目的は、積滞呼による回線占有を極力抑えることが可能な着信呼優先分配方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した目的を達成すべく、本発明に係る着信呼優先分配方法は、外線端末から構内交換機への着信呼をその優先度に応じて複数の内線端末に分配する着信呼優先分配方法であって、構内交換機に積滞した着信呼毎の所定の情報を保持する積滞情報テーブルを設け、 着呼時に、分配可能な内線端末がないときには、その着信呼に対して接続の切断または継続の選択を促す通知を行い、該通知に対して接続を継続する選択がなされたときは、該着信呼を通話継続積滞呼として積滞開始時刻とともに前記積滞情報テーブルへ登録する回線情報積滞登録処理を実行し、該通知に対して接続を切断する選択がなされたときは、該着信呼を通話切断積滞呼として積滞開始時刻および着信呼識別情報とともに前記積滞情報テーブルへ登録する予約情報積滞登録処理を実行する一方、回線を解放し、再着呼時に、前記積滞情報テーブルに前回着呼時の着信呼識別情報に対する通話切断積滞呼が登録されているときには、該着信呼識別情報に対する前記積滞開始時刻を維持する一方、該通話切断積滞呼を通話継続積滞呼へ変更する処理を実行し、前記積滞情報テーブルの積滞開始時刻に基づいて、たとえば、積滞開始時刻の古いものから順に通話継続積滞呼の外線端末を分配可能な内線端末へ接続する分配処理を実行することを特徴とする。
【0006】
本発明では、一旦通話切断積滞呼として回線を切断しても、積滞情報テーブルによって予約登録時の積滞開始時刻からの経過時間を管理し、再接続のときに通話継続積滞呼として切断前の待ち行列に復帰させることができるので、顧客を長時間待たせることを回避することができる。
なお、分配処理における優先度としては、積滞開始時刻等のほか、問合せメニューに応じた緊急度によって重み付けをしたポイントを用いるようにしても良い。
【0007】
ここで、着信呼識別情報とは、着信呼あるいは発信主体を識別可能な情報を意味し、外線端末の番号のほか、発信者の入力するIDやパスワード、あるいは構内交換機等が発行する受付番号などを含む趣旨である。
積滞開始時刻とは、着信呼積滞時の一連の処理における任意の時刻を意味する。
内線端末とは、いわゆる内線電話のほか、オペレータの使用する操作端末なども含む。
【0008】
また、本発明の通話切断積滞呼と通話継続積滞呼は、呼が切断中か接続中かの状態を区別できれば足り、各状態に応じてフラグを設けても良いし、たとえば、受付番号など特定の情報が存在する場合は通話切断積滞呼である等というようにしても良い。
また、本発明に係わる着信呼優先分配方法は、さらに、前記予約情報積滞登録処理の後、前記通話切断積滞呼について前記着信呼識別情報を指定して予約解除の申込があったとき、または、前記予測待ち時間から若しくは内線端末へ分配可能になってから所定時間経過しても通話継続積滞呼に変化しなかったときは、前記積滞情報テーブルから該着信呼識別情報に対応する情報を削除することを特徴とする。
【0009】
所定の条件によって積滞情報テーブルから通話切断積滞呼を削除することによって、予約のみを行い再接続のない積滞呼を自動的に整理して、テーブルの肥大化を防止し、処理負荷の軽減を可能にする。
好ましくは、予測待ち時間の経過、または内線端末へ分配可能になったことにより、前記積滞情報テーブルを検索し、着信呼の予約情報積滞登録がなされ、かつ該着信呼の発番号が登録されているとき、該発番号へ発呼を行うようにするのが良い。構内交換機側から外線端末へ発呼して再接続を行うことによって、より効率的な回線運用が可能となる。なお、発呼に替えて、メール等によって予約待ち時間の経過を通知し、顧客からの着呼を待つようにしても良い。
【0010】
また、本発明に係わる着信呼優先分配方法は、外線端末から構内交換機への着信呼をその優先度に応じて複数の内線端末に分配する着信呼優先分配方法であって、特に、前記構内交換機は、積滞した着信呼毎の所定の情報を保持する積滞情報テーブルを備え、着呼時、他の着信呼の通話継続積滞呼の前記情報が上記積滞情報テーブルに保持されているとき、または、分配可能な前記内線端末がないときには、該着信呼を受け付けて積滞処理を実行し、通話継続積滞呼の前記情報が上記積滞情報テーブルに保持されていないとき、かつ、分配可能な前記内線端末があるときには、該着信呼を受け付けて分配処理を実行することを特徴としている。
【0011】
また前記構内交換機は、前記外線端末からの着信呼に対して前回着呼したときに予め通知した所定の受付番号の入力を促すメッセージを送出した後、その予め通知した受付番号を受け取ると共に、前記分配処理は、前記受付番号から前記積滞情報テーブルに保持された前回の着信呼の通話切断積滞呼を検索し、該積滞情報テーブルに前記受付番号と一致する予約情報積滞が保持されているときには、その着信呼に対する予約情報積滞を削除して着信呼を分配する一方、前記受付番号がないときまたは予約情報積滞が保持されていないとき、その着信呼を分配するものとして構成される。
【0012】
また前記構内交換機は、前記外線端末からの着信呼に対して前回着呼したときに予め通知した所定の受付番号の入力を促すメッセージを送出した後、その予め通知した受付番号を受け取ると共に、前記積滞処理は、前記受付番号から前記積滞情報テーブルに保持された前回の着信呼の通話切断積滞呼を検索し、該積滞情報テーブルに前記受付番号と一致する予約情報積滞が保持されているときには、所定の受付受信処理を実行する一方、前記受付番号がないときまたは予約情報積滞が保持されていないときは、所定の積滞状態選択受信処理を実行する。
【0013】
また前記受付受信処理は、前記着信呼を通話復帰するときは、前記積滞情報テーブルの積滞情報を変更して通話継続積滞呼とし、再発信とするときは、その着信呼を解放して通話切断積滞呼とし、通話予約を解除するときは、前記積滞情報テーブルから該着信呼の予約情報積滞を削除して着信呼を解放する。
好ましくは前記構内交換機は、前記着信呼を前記通話継続積滞呼とするとき、該着信呼に予め付与したパスワードの入力を求めることが望ましい。
【0014】
また前記積滞状態選択受信処理は、前記着信呼が通話継続するとき、前記積滞情報テーブルに回線情報積滞登録する一方、前記着信呼が通話切断するとき所定の受付番号を発行し、外線端末の操作者に前記受付番号を通知して前記積滞情報テーブルに予約情報積滞登録した後、該着信呼を解放するものとして構成される。
更に上記着信呼優先分配方法は、分配可能な内線端末が生じたとき、前記積滞情報テーブルに保持された最も長い時間積滞されている通話継続積滞呼を検索し、その通話継続積滞呼を前記内線端末に分配するものとして提供される。
【0015】
また上記の着信呼優先分配方法は、前記積滞情報テーブルに着信呼の回線情報積滞登録がなされているとき、その回線情報積滞登録を削除して通話継続積滞呼分配する一方、前記積滞情報テーブルに着信呼の回線情報積滞登録がなされていないとき、発信処理を実行するものとしている。
前記発信処理は、前記積滞情報テーブルを検索し、着信呼の予約情報積滞登録がなされ、かつ前記着信呼の発番号情報があるとき、この発番号情報から発呼を行う。
【0016】
また前記構内交換機は、更に前記外線端末からの着信呼に対する前記受付番号がないとき、その着信呼に対して接続を切断または継続を選択する通知をし、接続を切断する選択がなされたときは、所定の前記受付番号を通知して該着信呼を予約情報積滞登録した後、回線を解放する一方、前記接続を継続する選択がなされたときは、該着信呼を回線情報積滞登録した後、通話継続積滞呼とすることを特徴としている。
【0017】
前記通知した所定の受付番号の入力を促すメッセージは、前記内線端末を操作するオペレータ、所定の音声合成装置または所定のトーン信号により与えられる。
また前記構内交換機は、前記着信呼からの受付番号の通知および接続の選択は、所定の音響信号によってなされるものとして提供される。
好ましくは前記音響信号は、外線端末を操作する操作者の音声、外線端末から与えられる所定のトーン信号により与えられることが望ましい。
【0018】
また本発明の着信呼優先分配方法は、積滞呼数を[S]、一呼あたりの平均通話時間を[T]、オペレータ端末(内線端末)数を[O]としたとき、予測待ち時間[W]を
W=S×T/O
から得て、前記着信呼に通知するものとして構成される。ここで、積滞呼数[S]は、通話切断積滞呼と通話継続積滞呼を合わせた数である。
【0019】
この予測待ち時間は、発信者に対してサービス可能となるまでの予測待ち時間(着信呼が分配可能となる時間)を予め通知するものである。
なお、予測待ち時間の計算において、さらに通話切断積滞呼と通話継続積滞呼別に積滞の解除率を算定し、当該解除率を用いて前記予測待ち時間を算出するようにしても良い。
たとえば、通話切断積滞呼数[S1]、同解除率[d1]、通話継続積滞呼数[S2]、同解除率[d2]一呼あたりの平均通話時間を[T]、オペレータ端末(内線端末)数を[O]としたとき、予測待ち時間[W]を次式によって算出する。
【0020】
W={S1×(1−d1)+S2×(1−d2)}×T/O
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように本発明の着信呼優先分配方法は、積滞情報テーブルを備えているので、外線からの呼び出し(着信呼)と共に、発信者から前回発呼したとき、与えられた受付番号を受け取り、この受付番号と積滞情報テーブルに保持された受信番号とが一致する通話切断積滞呼について、その着信呼を積滞させることができる。また本発明の着信呼優先分配方法は、発信者に対してサービス可能となるまでの予測待ち時間(着信呼が分配可能となる時間)を予め通知し、発信者にサービス可能となるまで待たせるか、あるいは一度、通話を切断して再発信させるかを選択させることができる。このため、着信呼の分配待ちのため、不必要に回線を占有することがない。つまり、積滞呼による回線占有率を減少させることができ、それ故、回線の有効利用ができると共に、通信コストの削減と相俟ってサービスの向上を図ることが可能となる等の実用上多大なる効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る着信優先分配方法が適用される交換機(構内交換機)およびこの交換機によって管理される複数の内線端末を備えた着信呼優先分配システムの概略構成を示すブロック図である。尚、この図は、本発明に係る着信呼優先分配方法の一実施形態を示すものであり、この図によって本発明が限定されるものではない。
【0023】
この図において1は、本発明の着信呼優先分配方法が適用される交換機(構内交換機)である。この構内交換機1には、概略的には図1に示すように着信呼の制御を司る主制御部2が設けられている。また図1において3は、主制御部2の制御のもと、着信呼の分配を制御する分配制御部である。構内交換機1は、分配制御部3による着信呼の分配とともに、着信呼の積滞(待ち)を管理する積滞制御部4を備える。また構内交換機1には、詳細は後述するが受付番号発行部6が着信呼毎に発行するユニークな予約番号によって着信呼情報を保持する予約情報(通話切断積滞呼)5aと、構内交換機1が収容する複数の端末装置(図示せず)がそれぞれ接続される回線(図示せず)における通話継続積滞時間を保持する回線情報(通話継続積滞呼)5bとをそれぞれ保持する積滞情報テーブル5が設けられている。
【0024】
この積滞情報テーブル5には、構内交換機1に収納される複数の外線毎に予め割り付けられた回線番号と前述した受付番号、着信呼の着信時刻およびこの着信呼が積滞された積滞開始時刻、発信者の発番号および着信時の着番号、発信者または企業名等が保持されるようになっている。ちなみに回線番号にデータがあり、受付番号がブランクの場合は、通話継続積滞呼であることを意味し、回線番号がブランクで、受付番号にデータがある場合は、通話切断積滞呼であることを意味する。
【0025】
尚、図2では、説明の都合上、連番(No.)を付してあるが、No.1,3が通話継続積滞呼であり、No.2が通話切断積滞呼である。
また構内交換機1には、図示しない外線からの着信呼に対してユニークな番号を発行する受付番号発行部6、オペレータによるサービスを受けるまでの時間を予測する待ち受け時間予測部7、発信者に対して所定のメッセージを送出するメッセージ送出部8および発信者から送出された音声、音響(プッシュボタントーン)等を認識する入力認識部9を備えている。
【0026】
ちなみにメッセージ送出部8には、所定のメッセージを保持する音声データ保持部8aと、この音声データ保持部8aに保持されたデータを合成して発信者に送出する音声合成処理部8bが設けられている。
尚、前述した受付番号発行部6は、構内交換機1以外の例えば図示しないコンピュータが重複しないユニークな番号を発行し、その番号をオペレータが通知するように構成してもかまわない。またメッセージ送出部8に代えてオペレータがその役割を担うようにしても勿論かまわない。
【0027】
概略的には上述したように構成された構内交換機1に適用される本発明の着信呼優先分配方法が特徴とするところは、外線端末から構内交換機への着信呼をその優先度に応じて複数の内線端末10に分配するに際し、通話継続積滞呼を検索し、通話継続積滞呼の情報が該積滞情報テーブルに保持されているときには、その着信呼を受け付けて積滞処理を実行する一方、積滞情報テーブルに通話継続積滞呼の情報が保持されていないときには、いずれかの分配可能な内線端末を検索し、分配可能な前記内線端末があるときには、該着信呼を分配処理し、分配可能な前記内線端末がないときには、前記積滞処理を実行する点にある。
【0028】
このような特徴ある本発明の一実施形態に係る着信呼優先分配方法について、より詳細にその作動を示すフローチャートに基づいて説明する。図3は、上述した主制御部2の着呼時における着信処理の作動手順を示すフローチャートである。
まず主制御部2は、外線からの着信呼を受けると、この着信呼の発信者に対して受付番号の入力を促すメッセージを送出する(ステップS1)。具体的に主制御部2が発信者に送出するメッセージは、音声データ保持部8aに予め保持された、例えば「受付番号を入力してください」という音声情報を発信者に送出する。このとき主制御部2は、発信者から入力される受付番号の有無を判定する(ステップS2)。尚、このステップS2で発信者に送出するメッセージは、内線端末10を操作するオペレータが行ってもかまわない。
【0029】
そしてステップS2で主制御部2は、発信者から受付番号の入力があったとき、その受付番号を一時的に保持して(ステップS3)次ステップを実行する一方、発信者から受付番号の入力がなかった場合は、そのまま次ステップを実行する。
次いで主制御部2は、積滞情報テーブル5から通話継続積滞呼があるかどうかを検索する(ステップS4)。このとき主制御部2は、ステップS4での検索の結果、通話継続積滞呼がなかった場合、この着信呼を受付可能な端末装置(オペレータ操作端末)があるかどうか、つまり着信呼を分配可能なエージェント(AGT)があるかどうかを検索する(ステップS6)。そして主制御部2は、割り当て可能なエージェントがあると判定したとき(ステップS7)、後述する分配処理A(ステップS8)を実行する。一方、主制御部2は、割り当て可能なエージェントないと判定したとき(ステップS7)、後述する積滞処理(ステップS9)を実行する。また主制御部2は、ステップS5で通話継続積滞呼があると判定したときもステップS9の積滞処理を実行する。
【0030】
さて、このようにして分配処理に振り分けられた着信呼について、分配制御部3が実行する分配処理Aについてその手順を示す図4のフローチャートを用いて説明する。
分配制御部3は、ステップS2で要求した受付番号の有無を確認する(ステップS11)。分配制御部3は、ステップS11で受付番号の入力があったと判定したとき、積滞情報テーブル5に該当する予約情報(受付番号)があるかを検索する(ステップS12)。そして分配制御部3は、ステップS12で検索した結果、積滞情報テーブル5に該当する予約情報(受付番号)があったと判定したとき(ステップS13)は、積滞情報テーブル5からこの予約情報積滞(予約情報)を削除(ステップS14)して、分配可能なエージェントに着信呼を分配する(ステップS15)。
【0031】
ちなみに分配制御部3はステップS11で受付番号の入力がないと判定したとき、またはステップS13で積滞情報テーブル5に該当する受付番号がなかったと判定したとき、ステップS15にて着信呼の分配を実行する。
次に主制御部2は、前述したステップS5で通話継続積滞呼があると判定したとき、およびステップS7割り当て可能なエージェントないと判定したときに実行する積滞処理について図5に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0032】
積滞制御部4は、上述した着信呼の受付番号が入力されたかどうかを判定する(ステップS20)。積滞制御部4は、受付番号の入力がないと判定したとき、発信者に対して通話を継続(通話継続積滞)するか、通話を切断(通話切断積滞)にするかをメッセージ送出部8またはオペレータにより通知する。そして発信者からの選択情報を入力認識部9が認識する(ステップS21)。
【0033】
そして積滞制御部4は、入力認識部9に入力された発信者の選択情報の判定、すなわち通話継続積滞か、通話切断積滞かどうかを判定する(ステップS22)。着信呼が通話継続積滞であると判定した場合、該積滞制御部4は、その着信呼を通話継続積滞として、該着信呼に関する各種の情報(着信時刻、積滞開始時刻、発番号、着番号および発信者(企業)名など)を積滞情報テーブル5の回線情報5bに登録する(ステップS23)。そして通話継続積滞呼として主制御部2に通知する。
【0034】
一方、ステップS22で発信者が通話切断積滞を選択した場合、積滞制御部4は、この着信呼に対して、着信呼の識別が可能となるユニークな受信番号を発行し(ステップS24)、その受信番号を発信者に通知(ステップS25)する。そして積滞制御部4は、この着信呼に割り当てた受付番号とともに、該着信呼に関する各種の情報(着信時刻、積滞開始時刻、発番号、着番号および発信者(企業)名など)を積滞情報テーブル5の予約情報5aに保持する。次いで積滞制御部4は、通話切断積滞呼として主制御部2に通知し、主制御部2はこの着信呼との接続を解放する(ステップS27)。
【0035】
ところで積滞制御部4は、ステップS20で着信呼に予約番号の入力があると判定したとき、積滞情報テーブル5内に、この予約番号と一致する予約情報があるかどうかを検索する(ステップS28)。このとき積滞制御部4は、予約情報がないと判定したときは、上述したステップS21以降の処理を実行する(ステップS29)。一方、積滞制御部4は、ステップS29で予約情報があると判定したとき、メッセージ送出部8またはオペレータにより処理の種類(「復帰」、「再発信」、「解除」)を選択するよう発信者に対してメッセージを送出する。そして発信者からの選択情報を入力認識部9が認識する(ステップS30,S31)。
【0036】
次いで積滞制御部4は、ステップS30で発信者から通知された選択情報を入力認識部9から受け取り、「復帰」である場合、この着信呼の受付番号に該当する予約情報5aの情報を回線情報5bに変更して、通話継続積滞呼として主制御部2に通知する(ステップS32)。また積滞制御部4は、ステップS31で発信者から通知された選択情報が「再発信」である場合、通話切断積滞呼として主制御部2に通知し、主制御部2はこの着信呼を切断して回線を解放する(ステップS33)。
【0037】
あるいは積滞制御部4はステップS31で発信者から通知された選択情報が「解除」である場合、この着信呼を識別するべく入力された受付番号に該当する予約情報を積滞情報テーブル5から削除する(ステップS34)。そして積滞制御部4は、積滞離脱呼として主制御部2に通知し、主制御部2はこの着信呼を切断して回線を解放する(ステップS35)。
【0038】
尚、図5には特に図示しないが、ステップS20の実行に先立って待ち時間予測部7は、積滞情報テーブル5に保持されている積滞個数を[S]、一呼あたりの平均通話時間を[T]、オペレータ端末数を[O]とし、計算式、W=S×T/Oから予測待ち時間を求め、主制御部2は発信者に対してこの予測待ち時間を通知することが望ましい。通知された予測待ち時間を受けた発信者は、ステップS22において通話切断または通話継続を判定する目安として、あるいはステップS31で復帰、再発信または解除を判定する目安として利用することができる。
【0039】
また分配制御部3は、分配可能状態のオペレータ端末(内線端末10)が発生したとき、図6に示すフローチャートに従って分配処理Bを実行する。
この分配処理Bにおいて分配制御部3は、積滞情報テーブル5から最古の通話継続積滞呼を検索する(ステップS41)。ステップS41において分配制御部3は、通話継続積滞呼があると判定したとき、積滞情報テーブル5からその回線情報積滞を削除し(ステップS43)、その通話継続積滞呼を分配する(ステップS44)。
【0040】
尚、分配処理部3は、ステップS41において通話継続積滞呼がないと判定したとき、分配可能な積滞呼がないことを主制御部2に通知し、主制御部2は、発信処理を実行する(ステップS45)。
この発信処理は、詳しくは図7に示すフローチャートの手順に従って主制御部2が順次処理を実行する。まず主制御部2は、積滞情報テーブル5から通話の予約情報が保持されているかどうかを検索する(ステップS51)。主制御部2は、積滞情報テーブル5に予約情報があることを検出すると(ステップS52)、更に積滞情報テーブル5の当該予約情報に発番号情報があるかどうかを検索する(ステップS53)。主制御部2は、発番号情報があるとき、この番号情報を得て発信を行う。尚、この発信は、主制御部2により自動発信のほか、内線端末10を操作するオペレータによる手動発信であってもよい。
【0041】
このようにして発信した後、内線端末10を操作するオペレータは、要件が完了したときに要件完了操作を行う(ステップS55)。このステップS55で、要件完了操作が行われたとき、積滞制御部4は、この発信に係る予約情報を削除する(ステップS56)。
尚、ステップS52で主制御部2によって予約情報がないと判定されたとき、ステップS54で通話相手先からの応答がないとき、およびステップS55で要件完了操作がされていないとき、一連の発信処理を終了する。
【0042】
かくしてこのように作動する本発明に係る着信呼優先分配方法は、積滞情報テーブルに登録する情報として通話継続積滞呼と通話切断積滞呼の2種類の積滞情報を用い、通話切断積滞呼は、一度通話を切断し再度着信したときに、通話を継続して積滞したときと同じ状態で積滞に復帰することができるため、不必要に回線を占有することがない。つまり、積滞呼による占有回線を減少させ、回線の有効利用ができ、通信コストの削減と相俟ってサービスの向上を図ることができる。
【0043】
具体的に本発明に係る着信呼優先分配方法は、積滞情報テーブルを備え、この積滞情報テーブルに保持された受信番号と一致する積滞呼をこの積滞情報テーブルから検索する。そして着信呼が復帰のとき、この積滞情報テーブルに保持された受信番号と一致する積滞呼を復帰に変更するとともに、この着信呼を積滞させる(通話継続積滞呼)。また、着信呼が再発信であるとき、構内交換機はこの着信呼を切断して回線を解放する(通話切断積滞呼)。あるいは、着信呼が解除であるときは、積滞情報テーブルに保持された受信番号と一致する予約情報積滞を削除する。そして構内交換機は、この着信呼を切断して回線を解放している(積滞離脱呼)。
【0044】
また、積滞情報テーブルに受信番号と一致する積滞呼がないとき、または前記受付番号の入力がないときは、通話の継続または通話の切断を選択させ、通話の継続が選択されたときは、回線情報積滞登録する一方、通話の切断が選択されたときは、前記着信呼を識別する受付番号を発行すると共に、前記積滞情報テーブルに該着信呼の予約情報を登録して回線を解放している。
【0045】
このため回線情報(通話継続積滞呼)または予約情報(通話切断積滞呼)を積滞の対象としているので、積滞呼による占有回線を減少させることができるとともに、通信コストの低減を図ることが可能となる。
また前記分配処理は、着信呼が発生した際、この着信呼に前記受付番号があるとき前記積滞情報テーブルから該受付番号に一致する前記予約情報を検索して、前記該受付番号に一致する前記予約情報があるときには前記積滞情報テーブルから前記着信呼に関する予約情報を削除する共に、前記内線端末に該着信呼を分配し、上記着信呼に前記受付番号がないときおよび前記積滞情報テーブルに該受付番号に一致する前記予約情報がないときには、前記内線端末に該着信呼を分配する。一方、分配可能な端末が発生したときには、前記積滞情報テーブルに保持された通話積滞呼のうち、最も長い時間積滞している前記着信呼を検索して、前記積滞情報テーブルに保持された該着信から該着信呼の情報を削除すると共に、前記内線端末に通話継続積滞呼を分配している。
【0046】
また、前記予測待ち時間[W]は、積滞個数を[S]、一呼あたりの平均通話時間を[T]、オペレータ端末数を[O]としたとき、計算式、W=S×T/Oから得るものとしている。このため、発信者は、サービスを受けるまでの待ち時間を予め知ることができ、例えばサービスが長い場合は、回線をいったん切断して再発信あるいは別の機会に発信する目安が得られる。このため、不必要に長い時間サービスを受けるまで待機する必要もない。つまり、積滞呼による回線占有率を極めて低減させることができ、回線占有による発着信の機会損失がない。また、発信者が発信呼に対してサービスを受けるまでそのまま通話を継続するのか、あるいは通話を切断するのかを選択することが可能であり、また、再発信したときの受け付け内容を発信者に選択させることができる。このため、顧客に応じた分配サービスを実行することが可能となる等、実用上多大なる効果を奏する。
【0047】
尚、本発明の着信呼優先分配方法は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることができる。
例えば、発信者に受け付け番号を付与する際、この受付番号とともにパスワードを発信者に送出する。そして、再接続のとき発信者は、受付番号と共に与えられたパスワードを入力する。このようにすることによって、不正な発信者からの再接続を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の一実施形態に係る着信呼優先分配方法が適用される電話交換機の概要を示すブロック図。
【図2】図1に示す着信呼優先分配方法における積滞情報テーブルのデータ構造を示す図。
【図3】図1に示す着信呼優先分配方法における主制御部の作動を示すフローチャート。
【図4】図1に示す分配制御部の作動を示すフローチャート。
【図5】図1に示す積滞制御部の作動を示すフローチャート。
【図6】分配制御部の別の作動を示すフローチャート。
【図7】図6に示す発信処理の作動を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0049】
2 主制御部
3 分配制御部
4 積滞制御部
5 積滞情報テーブル
6 受付番号発行部
7 時間予測部
8 メッセージ送出部
9 入力認識部
10 内線端末

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外線端末から構内交換機への着信呼をその優先度に応じて複数の内線端末に分配する着信呼優先分配方法であって、
構内交換機に積滞した着信呼毎の所定の情報を保持する積滞情報テーブルを設け、
着呼時に、分配可能な内線端末がないときには、その着信呼に対して接続の切断または継続の選択を促す通知を行い、
該通知に対して接続を継続する選択がなされたときは、該着信呼を通話継続積滞呼として積滞開始時刻とともに前記積滞情報テーブルへ登録する回線情報積滞登録処理を実行し、
該通知に対して接続を切断する選択がなされたときは、該着信呼を通話切断積滞呼として積滞開始時刻および着信呼識別情報とともに前記積滞情報テーブルへ登録する予約情報積滞登録処理を実行する一方、回線を解放し、
再着呼時に、前記積滞情報テーブルに前回着呼時の着信呼識別情報に対する通話切断積滞呼が登録されているときには、該着信呼識別情報に対する前記積滞開始時刻を維持する一方、該通話切断積滞呼を通話継続積滞呼へ変更する処理を実行し、
分配可能な内線端末が発生した際に、前記積滞情報テーブルの積滞開始時刻に基づいて通話継続積滞呼の外線端末を順次分配可能な内線端末へ接続する分配処理を実行することを特徴とする着信呼優先分配方法。
【請求項2】
前記予約情報積滞登録処理において、積滞呼数、一呼あたりの平均通話時間、内線端末数をもとに予測待ち時間を演算し、当該演算結果を前記着信呼に通知する請求項1記載の着信呼優先分配方法。
【請求項3】
請求項2記載の着信呼優先分配方法において、さらに通話切断積滞呼と通話継続積滞呼別に積滞の解除率を算定し、当該解除率を用いて前記予測待ち時間を演算することを特徴とする着信呼優先分配方法。
【請求項4】
前記予約情報積滞登録処理の後、前記通話切断積滞呼について前記着信呼識別情報を指定して予約解除の申込があったとき、または、前記予測待ち時間から若しくは内線端末へ分配可能になってから所定時間経過しても通話継続積滞呼に変化しなかったとき、前記積滞情報テーブルから該着信呼識別情報に対応する情報を削除することを特徴とする請求項2または3記載の着信呼優先分配方法。
【請求項5】
前記予測待ち時間の経過、または内線端末へ分配可能になったことにより、前記積滞情報テーブルを検索し、着信呼の予約情報積滞登録がなされ、かつ該着信呼の発番号が登録されているときは、該発番号へ発呼を行うことを特徴とする請求項2乃至4のいずれかに記載の着信呼優先分配方法。
【請求項6】
着信呼に対する着信呼識別情報の通知、または、前記通知した着信呼識別情報の入力を促すメッセージの出力は、前記内線端末を操作するオペレータ、所定の音声合成装置または所定のトーン信号によって行われることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の着信呼優先分配方法。
【請求項7】
前記接続の切断または継続の選択は、所定の音響信号によって行われることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の着信呼優先分配方法。
【請求項8】
前記音響信号は、外線端末を操作する操作者の音声、外線端末から与えられる所定のトーン信号により与えられるものである請求項7に記載の着信呼優先分配方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−81799(P2009−81799A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−251098(P2007−251098)
【出願日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(000000181)岩崎通信機株式会社 (133)
【Fターム(参考)】