説明

着用物品の製造方法

【課題】ウエスト部からフット部の爪先部まであるタイツやパンティストッキング等を着用しながらも、レギンスやスパッツを着用しているように見せられ、又はオーバーニーレングスソックスやハイソックスを着用しているように見せられる着用物品を迅速に製造し得る方法を提供する。
【解決手段】2本の筒状編地を、それらが着用物品に形成された時に後染め部16となる部分を無着色の糸で、また先染め部15となる部分を第1の色に予め着色された先染め糸で製編し、各筒状編地を常法により切込みを入れて展開した状態で縫合することで着用物品の半製品を形成し、次いで第1の色より濃度の淡い第2の色の染料に半製品全体を浸し、無着色糸で製編された部分を第2の色に染色して後染め部として、ウエスト部11からフット部14までが一体に製編されて着用者のウエストから下肢全域を包被する伸縮性の着用物品を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着用物品の製造方法に関し、更に詳細には、編みが細かく薄手のパンティストッキング等を含んだタイツのような伸縮性のある着用物品の製造方法に関する
【背景技術】
【0002】
タイツは、一般的にはニット編地などの伸縮性を持たせた生地で縫製されたフィット性の高いズボン類であり、他方、パンティストッキングは、ナイロン糸とポリウレタン糸を主な材料として使い、タイツより編み目が細かく薄手のものである点で、タイツと区別されているが、両者ともつま先まで覆っている。他方、スパッツは、一般的には、タイツの足先部分即ちフット部がない形状をしたものであり、欧米ではカルソン又はレギンス等とも呼ばれている。
【0003】
この明細書では、このようなタイツ及びパンティストッキングを含む意味として、以下、着用物品と称する。ところで、スパッツやレギンスは、一般的には色や柄が付いているものであり、若い女性を中心に非常に好まれて着用されている。しかし、スパッツやレギンスは、パンティ部からレッグ部(脚部)の脛(スネ)部までで、前述したようにフット部が無い。従って、スパッツやレギンスを着用した場合、レッグ部における脛部の一部からフット部全体までが素肌になる。そのため、直接肌を出すことに抵抗のある人などは、スパッツの下にパンティストッキング或いはストッキングを着用する人もいた。また、このように部分的に素肌になるスパッツやレギンスを冬季に着用すると、素肌の部分が寒く、そのため防寒の点から、スパッツやレギンスの下にパンティストッキング或いはストッキングを着用する人もいた。
【0004】
また、部分的に素肌になる場合として、オーバーニーレングスソックスやハイソックスなどを着用するときである。例えば、オーバーニーレングスソックスは、その丈が膝よりやや上まであるので、太ももは素肌のままとなる。そのため、このようなオーバーニーレングスソックスやハイソックスなどを着用する場合にも、直接肌を出すことに抵抗のある人や冬季の着用時に寒さを避けたい人などはパンティストッキングを着用した上にオーバーニーレングスソックスを着用している。
【0005】
しかしながら、パンティストッキング或いはストッキングを着用した上にスパッツやレギンス、或いはオーバーニーレングスソックスやハイソックスなどを重ね着すると、二重に着用した部分の厚さが厚くなるため軽装感がなくなって身体を動かしづらいという問題があり、また、着用中に気温が比較的に高くなってくると、厚着をしているのと同じであるため汗をかき、不快に感じることさえある、という問題があった。
【0006】
ところで、パンティストッキング、ストッキング、厚手のタイツなどに関する従来の技術として、特許文献1に開示された考案が知られている。この特許文献1に開示された考案は、パンティストッキング、ストッキング、厚手のタイツを含むタイツ類に関するもので、レッグ部の膝上からフット部の爪先までの範囲で、その一部を他の部分と異なる柄や編み地にしたものである。更に具体的には、特許文献1に開示された考案では、ストッキングやパンティストッキングなどのタイツ類において、レッグ部の膝上からフット部の爪先までの範囲で、少なくともふくらはぎ下部から足首にわたる部分に部分的に柄編み部分並びに生地の厚みに変化を設け、この柄編み部分以外は無地編み部分としたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実用新案登録第3044071号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述した特許文献1に開示された考案のタイツ類を着用すれば、素肌になる部分は無いが、スパッツやレギンスを着用しているようにはとても見えないし、またオーバーニーレングスソックスを着用しているようにも見えない。なぜならば、特許文献1に開示された考案のタイツ類は、従来、ソックスの丈が、足先から膝下まで又は膝上までであるため、足の運動やくつとソックスの摩擦などによりソックスがずり落ちやすい、という問題があり、この問題を解決するためにパンティストッキングやストッキングなどにおける少なくともふくらはぎ下部から足首にわたる部分に部分的に柄編み部分を設け、この柄編み部分以外は無地編みとすることにより一見するとソックスを着用しているかのように見せるために創作されたものであるからである。
【0009】
従って、特許文献1に開示された考案のタイツ類では、ウエスト部からフット部の爪先部まであるタイツやパンティストッキングなどを着用しているにもかかわらず、レギンスやスパッツ、或いはオーバーニーレングスソックスを着用しているように見せることはできない。このようなタイツ類は、柄編み部分を製編し、引き続いて他の部分を製編した2本の筒状編地を定法に従って縫合する、という通常の方法によって製造されているので、柄編み部分の色を変える場合には、その都度、予め着色された糸に交換して柄編み部分を製編する、という作業が必要であった。そのため、生産性が非常に悪く、消費者の好みや流行に迅速に対応することができない、という問題があった。
【0010】
本発明の目的は、かかる従来の問題点を解決するためになされたものであり、ウエスト部からフット部の爪先部まであるタイツやパンティストッキングなどを着用しているにもかかわらず、素足にレギンスやスパッツを着用しているように見せることができ、或いはオーバーニーレングスソックスやハイソックスなどを着用しているように見せることのできる着用物品を迅速に製造し得る方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、ウエスト部からパンティ部とレッグ部とを介してフット部までが一体に製編されて着用者のウエストから下肢全域を包被する伸縮性の着用物品を製造する方法であり、その特徴とするところは、2本の筒状編地を、それらが前記着用物品に形成されたときに後染め部となる部分を無着色の糸で、また先染め部となる部分を第1の色に予め着色された先染め糸とにより製編すること、これら前記各筒状編地を常法に従って前記フット部となる閉鎖端とは反対側の開口端の一箇所に長手方向に沿って所定長さの切り込みを入れ、この切り込みを開いた部分で2本の前記筒状編地同士を縫合することにより前記着用物品の半製品を形成すること、その後、前記第1の色より濃度の淡い第2の色の染料に前記半製品全体を浸し、前記無着色の糸で製編された部分を前記第2の色に染色して後染め部を形成することにある。
【0012】
本発明に係る着用物品の製造方法の一実施形態としては、前記先染め部が、前記ウエスト部から前記レッグ部の所定の第1位置までであり、前記後染め部が、前記レッグ部の前記第1位置から前記フット部までである。
【0013】
本発明に係る着用物品の製造方法の他の一実施態様としては、前記先染め部が、前記レッグ部の所定の第2位置から前記フット部までであり、前記後染め部が、前記ウエスト部から前記レッグ部の前記第2位置までである。
【0014】
本発明に係る着用物品の製造方法の他の一実施態様としては、前記先染め部が、前記レッグ部における前記フット部側の第1位置から前記パンティ部側の第2位置までであり、前記後染め部が、前記ウエスト部から前記レッグ部の前記第2位置までと前記レッグ部の前記第1位置から前記フット部までとである。
【0015】
本発明に係る着用物品の製造方法の他の一実施態様としては、前記先染め部を製編している糸の太さが、70〜90デニール、前記後染め部を製編している糸の太さが20〜40デニールである。
【0016】
本発明に係る着用物品の製造方法の他の一実施態様としては、前記先染め部が、前記ウエスト部から前記レッグ部の所定の第1位置までであり、前記後染め部が、前記レッグ部の前記第1位置から前記フット部までである場合の前記先染め部において、前記パンティ部が、ほぼ40デニールの太さの糸で製編され、前記パンティ部を除いた前記ウエスト部から前記レッグ部の前記第2位置までが、前記パンティ部を製編している糸の太さより細い糸により製編されている。
【0017】
本発明に係る着用物品の製造方法の他の一実施態様としては、前記先染め部が前記レッグ部の所定の第2位置から前記フット部までであり、前記後染め部が前記ウエスト部から前記レッグ部の前記第2位置までである場合と、前記先染め部が前記レッグ部における前記フット部側の第1位置から前記パンティ部側の第2位置までであり、前記後染め部が前記ウエスト部から前記レッグ部の前記第2位置までと前記レッグ部の前記第1位置から前記フット部までである場合との前記後染め部において、前記パンティ部が、ほぼ40デニールの太さの糸で製編され、前記パンティ部を除いた前記ウエスト部から前記レッグ部の前記第2位置までが、前記パンティ部を製編している糸の太さより細い糸により製編されている。
【0018】
本発明に係る着用物品の製造方法の他の一実施態様としては、前記第2の色がベージュ色であり、前記第1の色が、前記ベージュ色より濃い色で形成されている。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る着用物品の製造方法によれば、半製品全体を第2の色の染料に浸すことにより後染め部を形成するようにしているため、第1の色より淡いかぎり如何なる第2の色の後染め部を容易に形成することができ、しかも、後染め部の色を容易にかつ迅速に変更することができることから、消費者の好み或いは流行に速やかに対応することができると共にこの種の着用物品における生産性の向上を図ることができる。
【0020】
また、本発明に係る着用物品の製造方法によれば、ウエスト部からレッグ部の第1位置までを先染め部としているので、レギンスやスパッツを着用しているように見せることができる着用物品を非常に容易に製造することができ、この種の着用物品の生産性を向上させることができる。
【0021】
また、本発明に係る着用物品の製造方法によれば、先染め部をレッグ部の第2位置からフット部までとし、後染め部をウエスト部からレッグ部の第2位置までとしているので、オーバーニーレングスソックスやハイソックスを素足に着用しているかのような着用物品を容易に製造することができる。
【0022】
また、本発明に係る着用物品の製造方法によれば、先染め部をレッグ部におけるフット部側の第1位置からパンティ部側の第2位置までとし、後染め部をウエスト部からレッグ部の第2位置までとレッグ部の第1位置からフット部までとしているので、レッグウォーマーを素足に着用しているかのような着用物品を容易に製造することができる。
【0023】
更に、本発明に係る着用物品の製造方法によれば、先染め部を製編している糸の太さを、70〜90デニール、後染め部を製編している糸を20〜40デニールとすることにより、後染め部が薄く形成されることから該後染め部が透き通って肌を見ることができ、この後染め部をベージュ色のような淡い色にすることにより、タイツを着用しているにもかかわらずレギンスやスパッツ、オーバーニーレングスソックスやハイソックス、或いはレッグウォーマーを着用しているかのような着用物品を容易に製造することができる。
【0024】
更に、本発明に係る着用物品の製造方法によれば、パンティ部をほぼ40デニールの太さの糸で製編し、パンティ部を除いてウエスト部からレッグ部の第2位置までを、パンティ部を製編している糸の太さより細い糸により製編することにより、着用者の腰部分やヒップ部分を他の部分より強めに締め付けるようにしたので着用感が非常に高くなると同時に腰回りの冷えを防止することが可能な着用物品を容易に製造することができる。
【0025】
更に、本発明に係る着用物品の製造方法によれば、第2の色がベージュ色であり、第1の色が、ベージュ色より濃い色で形成されているので、タイツを着用しているにもかかわらずスパッツやレギンス、オーバーニーレングスソックスやハイソックス、或いはレッグウォーマーを着用してかのような着用物品を容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の製造方法により作られた着用物品の一例を示す側面図。
【図2】図1に示される着用物品を製造する際に半製品の一部を染めている状態を示す概略構成説明図。
【図3】本発明の製造方法により作られた着用物品の他の例を示す側面図。
【図4】本発明の製造方法により作られた着用物品の更に他の例を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係る着用物品の製造方法を添付の図に示された好適な実施形態について更に詳細に説明する。本発明に係る着用物品の製造方法の一実施形態として、タイツを例にしてその製造方法を説明する。図1には、本発明の製造方法により作られたタイツ10が示されている。このタイツ10は、ウエスト部11からパンティ部12とレッグ部13とを介してフット部14までが一体に製編され、着用者のウエストから下肢全域を包被する。ここで、製編とは、編み立てることを意味する。このタイツ10は、ウエスト部11からレッグ部13における所定の第1位置13aまでの第1染色部分(先染め部)15と、レッグ部13における第1位置13aからフット部14までの第2染色部分(後染め部)16とを有している。このタイツ10では、第1位置13aが、フット部14より僅かに膝側であって、ふくらはぎより下、即ちフット部14寄りに位置している。勿論、本発明では、第1位置13aが、このタイツ10により限定されるものではなく、少なくとも膝からくるぶしまでの間に位置すればよい。
【0028】
先染め部である第1染色部分15は、第1の色に着色され、また後染め部である第2染色部分16は、第1の色と異なる第2の色に着色されている。第1の色と第2の色とは濃度に差があり、第1の色の濃度は、第2の色の濃度より濃い。このタイツ10では、第1染色部分15が黒色であり、第2染色部分16がベージュ色、即ち肌色である。この濃度差は、大きければ大きい程好ましい。このタイツ10では、第1の色を黒色とし、第2の色をベージュ色としたが、第1の色及び第2の色がこれらの色に限定されるものではなく、第1の色を、例えば濃い緑色や濃紺色、或いはこれら以外の色とすることもできる。また、第2の色については、このタイツ10の着用目的からベージュ色とすることが好ましいが、第2の色についてもベージュ色に限定されるものではなく、第1の色より濃度が淡い色とすることができる。
【0029】
このタイツ10では、先染め部である第1染色部分15が、第1の色である黒色に予め染色された先染め糸で製編されている。他方、後染め部の第2染色部分16は、無着色の糸で製編された後に着色された部分である。すなわち、このタイツ10は、概略的には、第2染色部分16となる部分を無着色の白色糸で製編した後に連続して第1染色部分15となる部分を先染め糸で製編してタイツの半製品17を作り、図2に示されるように第2の色であるベージュ色の染料18を入れた容器19の中にこの半製品17全体を浸漬することにより着色される。その際、第1の色即ち黒色で先染めされた糸により製編された第1染色部分即ち先染め部15は、第2の色即ちベージュ色より濃度が濃いことからベージュ色の染料18に浸されてもその色には染まらず、黒色のままである。このように第1の色と第2の色との濃度差が大きいと、第2の色が、先染糸で製編された第1染色部分15を着色してしまうことはない。これにより、無着色の白色糸で製編された部分だけがベージュ色に着色されて第2染色部分即ち後染め部16となる。
【0030】
ただし、第2染色部分16となる部分を無着色の白色糸で製編した後に連続して第1染色部分15となる部分を先染め糸で製編して半製品17を作る、と説明したが、これは、このタイツ10の作り方を要約したもので、実際には、半製品17は、以下のような従来方法により作られる。すなわち、この半製品17を製造する方法は、従来のパンティストッキングやタイツを製造する方法とほぼ同じであるので簡単に説明すると、第2染色部分16に相当する部分を無着色の白色糸で製編し、連続して第1染色部分15に相当する部分を黒色(第1の色)に先染めされた糸により製編して筒状編地を作り、この筒状編地を2本準備し、これら筒状編地のそれぞれについて、フット部14となる閉鎖端とは反対側の開口端の一箇所に長手方向に沿って所定長さの切り込みを入れ、次いで、この切り込みを開いた部分を縫合により接続することによりタイツ10の半製品17が形成される。
【0031】
第1染色部分15を製編する先染め糸には、70〜90デニールの太さの糸が用いられ、また第2染色部分16を製編する無着色の糸には、20〜40デニールの太さの糸が用いられる。第1染色部分15を製編する先染め糸や第2染色部分16を製編する無着色糸としては、ポリウレタンを芯にナイロンを巻き付けたり、ナイロンの上にさらに別の糸を巻き付けた二重構造糸(コアヤーン)などを使用することができる。このタイツ10において、第2染色部分16を製編する糸の太さを20〜40デニールとする理由は、第2染色部分16が第1染色部分15に比べて非常に薄く、使用者が着用すると第2染色部分16では透き通って着用者の肌が見えることから、第2染色部分16がベージュ色であることと相まって一層素肌であるように見せることができるからである。また、第1染色部分15を製編する糸の太さを70〜80デニールとする理由は、第1染色部分15が第2染色部分16に比べて厚く、使用者が着用すると、より一層素足にレギンスやスパッツを着用しているように見えるからである。
【0032】
次に、本発明に係る着用物品の製造方法を図3に示される別のタイツ20を例にして説明する。図3には、本発明に係る着用物品の製造方法により作られたタイツ20が示されている。図3に示されるタイツ20において、図1に示されるタイツ10を構成する部分と同一若しくは相当する部分には同一の参照符号を付けてその説明を省略する。図3に示されるタイツ20も、前述したタイツ10と同様にウエスト部11からパンティ部12とレッグ部13とを介してフット部14までが一体に製編され、着用者のウエストから下肢全域を包被する。このタイツ20は、レッグ部13の所定の第2位置13bよりフット部14までの第3染色部分21と、第2位置13bよりウエスト部11までの第4染色部分22とを有している。このタイツ20では、第3染色部分21が先染め部となり、第4染色部分22が後染め部となる。また、このタイツ20では、第2位置13bが、パンティ部12より膝側であって、この膝より10〜15cm上、即ちパンティ部12寄りに位置している。勿論、本発明では、第2位置13bが、このタイツ20により限定されるものではなく、少なくともレッグ部13における膝から上の部分に位置していればよい。
【0033】
先染め部である第3染色部分21は、第1の色に着色され、また後染め部である第4染色部分22は、第1の色と異なる第2の色に着色されている。第1の色の濃度は、第2の色の濃度より濃い。このタイツ20では、第3染色部分21が黒色に着色され、第4染色部分22がベージュ色即ち肌色に着色されている。この濃度差は、大きければ大きい程好ましい。このタイツ20についても、図1に示されるタイツ10と同様に第1の色を黒色とし、第2の色をベージュ色としているが、本発明では、第1の色及び第2の色がこれらの色に限定されるものではなく、第1の色を、例えば濃い緑色や濃紺色、或いはそれ以外の色とすることもできる。第2の色については、このタイツ20の目的からベージュ色とすることが好ましいが、この第2の色についてもベージュ色に限定されるものではなく、第1の色より濃度が淡い色とすることができる。
【0034】
このタイツ20では、第3染色部分即ち先染め部21が、第1の色である黒色に予め染色された先染め糸で製編されている。他方、第4染色部分即ち後染め部22は、無着色の糸で製編された後に着色された部分である。この第4染色部分22は、概略的には、先染め糸で第3染色部分21を製編した後に連続して無着色の白色糸で製編することにより形成される。実際には、図1のタイツ10と同様に第3染色部分21に相当する部分を先染め糸で製編した後に第4染色部分22を無着色の糸で製編して筒状編地を形成し、かかる筒状編地を2本準備してタイツの半製品を作る。次いで、タイツ10の製造方法と同じ方法により、第2の色であるベージュ色の染料18を入れた容器19の中にこの半製品全体を浸漬することにより無着色の糸で製編した部分を着色して第4染色部分22とする。より具体的には、第1の色即ち黒色で先染めされた糸により製編された第3染色部分21は、第2の色即ちベージュ色より濃度が濃いことからベージュ色の染料18に浸されてもその色には染まらず、黒色のままである。このように第1の色と第2の色との濃度差が大きいと、第2の色が、先染糸で製編された第3染色部分21を着色してしまうことはない。これにより、無着色の白色糸で製編された部分だけがベージュ色に着色されて第4染色部分22となる。
【0035】
第3染色部分21を製編する先染め糸には、70〜90デニールの太さの糸が用いられ、また、第4染色部分22を製編する無着色の糸には、20〜40デニールの太さの糸が用いられる。第3染色部分21を製編する先染め糸や第4染色部分22を製編する無着色糸としては、ポリウレタンを芯にナイロンを巻き付けたり、ナイロンの上にさらに別の糸を巻き付けた二重構造糸(コアヤーン)などを使用することができる。
【0036】
このタイツ20では、第3染色部分21を製編している糸が、70〜90デニール、第4染色部22分を製編している糸が20〜40デニールであるので、第4染色部分22が薄く形成されることから透き通って肌が見え、第4染色部分22をベージュ色のような淡い色にすることにより、タイツを着用しているにもかかわらず素足にオーバーニーレングスソックスやハイソックスを着用しているように見せることができる。また、第3染色部分21を製編する先染め糸の太さを70〜90デニールとする理由は、第4染色部分22に比べて第3染色部分21が厚くなるため、より一層素足にオーバーニーレングスソックスやハイソックスを着用しているように見せることができるからである。
【0037】
さらに、このタイツ20では、第4染色部分22におけるパンティ部12をほぼ40デニールの太さ糸で製編し、パンティ部12を除く第2位置13bまでを、パンティ部12を製編している太さの糸より細い糸、例えば20デニールの太さの糸で製編することも好ましい。このように、第4染色部分22について、パンティ部12をほぼ40デニールの太さの糸で製編し、パンティ部12を除く第2位置13bまでを、パンティ部12を製編している太さの糸より細い糸で製編することにより、着用者の腰部分やヒップ部分が他の部分より強めに締め付けられることから着用感が非常に高いと同時に腰回りの冷えを防止することもできる。
【0038】
更に、本発明に係る着用物品の製造方法を図4に示される別のタイツ30を例にして説明する。図4には、本発明に係る着用物品の製造方法により作られたタイツ30が示されている。図4に示されるタイツ30において、図1及び図3に示される各タイツ10,20を構成する部分と同一若しくは相当する部分には同一の参照符号を付けてその説明を省略する。このタイツ30も、前述したタイツ10,20と同様にウエスト部11からパンティ部12とレッグ部13とを介してフット部14までが一体に製編され、着用者のウエストから下肢全域を包被する。
【0039】
このタイツ30は、フット部14からレッグ部13の所定の第1位置13aまでの第2染色部分16と、ウエスト部11からレッグ部13の所定の第2位置13bまでの第4染色部分22と、レッグ部13の第1位置13aから第2位置13bまでの第5染色部分31とを有している。先染め部は、第5染色部分31であり、後染め部は、第2染色部分16と第4染色部分22となる。このタイツ30では、第1位置13aが、図1に示されるタイツ10と同様にフット部14より僅かに膝側であって、ふくらはぎより下、即ちフット部14寄りに位置している。また、第2位置13bは、パンティ部12より膝側であって、この膝より10〜15cm上、即ちパンティ部12寄りに位置している。勿論、本発明では、第1位置13a及び第2位置13bが、このタイツ30により限定されるものではない。
【0040】
先染め部である第5染色部分31は、第1の色に着色され、また後染め部である第2染色部分16及び第4染色部分22のそれぞれは、第1の色と異なり、かつ濃度差のある第2の色に着色されている。第1の色の濃度は、第2の色の濃度より濃い。このタイツ30でも、第5染色部分31は黒色であり、第2染色部分16及び第4染色部分22はベージュ色、即ち肌色である。この濃度差が、大きければ大きい程好ましいことは前述したとおりである。また、このタイツ30でも、第1の色を黒色とし、第2の色をベージュ色としたが、第1の色及び第2の色がこれらの色に限定されるものではなく、第1の色を、例えば濃い緑色や濃紺色、或いはこれら以外の色とすることもできる。第2の色については、このタイツの目的からベージュ色とすることが好ましいが、第2の色についてもベージュ色に限定されるものではなく、第1の色より濃度が淡い色とすることができる。
【0041】
また、このタイツ30でも、第5染色部分31が、第1の色である黒色に予め染色された先染め糸で製編されている。他方、第2染色部分16及び第4染色部分22は、無着色の糸で製編された後に着色された部分である。具体的には、第2染色部分16に相当する部分を無着色の白色糸で製編した後に連続して第5染色部分31に相当する部分を先染め糸で製編し、更に続いて第4染色部分22に相当する部分を無着色の白色糸で製編して筒状編地を形成し、かかる筒状編地を2本前述した方法により繋げてタイツの半製品を作り、図2に示されるように第2の色であるベージュ色の染料18を入れた容器19の中にこの半製品全体を浸漬することにより着色される。その際、第1の色即ち黒色で先染めされた糸により製編された第5染色部分31は、第2の色即ちベージュ色より濃度が濃いことからベージュ色の染料18に浸されてもその色には染まらず、黒色のままである。このように第1の色と第2の色との濃度差が大きいと、第2の色が、先染糸で製編された第5染色部分31を着色してしまうことはない。これにより、無着色の白色糸で製編された部分だけがベージュ色に着色されて後染め部である第2染色部分16及び第4染色部分22となる。
【0042】
第5染色部分31を製編する先染め糸には、70〜90デニールの太さの糸が用いられ、また、第2染色部分16及び第4染色部分22を製編する無着色の糸には、20〜40デニールの太さの糸が用いられる。第5染色部分31を製編する先染め糸や第2染色部分16及び第4染色部分22を製編する無着色糸としては、ポリウレタンを芯にナイロンを巻き付けたり、ナイロンの上にさらに別の糸を巻き付けた二重構造糸(コアヤーン)などを使用することができる。
【0043】
このタイツ30では、第5染色部分31を製編している糸が、70〜90デニール、第2染色部分16及び第4染色部22分を製編している糸が20〜40デニールであるので、第2染色部分16及び第4染色部分22が薄く形成されることから透き通って肌が見え、第2染色部分16及び第4染色部分22をベージュ色のような淡い色にすることにより、タイツを着用しているにもかかわらず素足にレッグウォーマーを着用しているように見せることができる。また、第5染色部分31が、70〜90デニールの太さの先染め糸で製編されているので、第5染色部分31が第2染色部分16及び第4染色部分22に比べて厚くなり、その結果、より一層素足にレッグウォーマーを着用しているように見せることができる。
【0044】
さらに、このタイツ30では、第4染色部分22において、パンティ部12をほぼ40デニールの太さ糸で製編し、パンティ部12を除くレッグ部13の第2位置13bまでを、パンティ部12を製編している太さの糸より細い糸、例えば20デニールの太さの糸で製編することも好ましい。このように、第4染色部分22について、パンティ部12をほぼ40デニールの太さの糸で製編し、パンティ部12を除く第2位置13bまでを、パンティ部12を製編している太さの糸より細い糸で製編することにより、着用者の腰部分やヒップ部分が他の部分より強めに締め付けられることから着用感が非常に高いと同時に腰回りの冷えを防止することもできる。
【0045】
以上説明したように、本発明に係る着用物品の製造方法によれば、ウエスト部からフット部の爪先部まであるタイツやパンティストッキングなどを着用しているにもかかわらず、レギンスやスパッツを着用しているように見せることができ、或いはオーバーニーレングスソックスやハイソックス、或いはレッグウォーマーを着用しているように見せることができる着用物品を容易に製造することができると共に、後染め部の色を容易にかつ迅速に変更することができることから、消費者の好み或いは流行に速やかに対応することができ、従ってこの種の着用物品における生産性の向上を図ることができる。
【符号の説明】
【0046】
10,20,30 タイツ(着用物品)
11 ウエスト部
12 パンティ部
13 レッグ部
13a 第1位置
13b 第2位置
14 フット部
15 第1染色部分(先染め部)
16 第2染色部分(後染め部)
17 タイツの半製品
18 ベージュ色(第2の色)の染料
21 第3染色部分(先染め部)
22 第4染色部分(後染め部)
31 第5染色部分(先染め部)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエスト部からパンティ部とレッグ部とを介してフット部までが一体に製編されて着用者のウエストから下肢全域を包被する伸縮性の着用物品を製造する方法において、
2本の筒状編地を、それらが前記着用物品に形成されたときに後染め部となる部分を無着色の糸で、また先染め部となる部分を第1の色に予め着色された先染め糸とにより製編すること、
これら前記各筒状編地を常法に従って前記フット部となる閉鎖端とは反対側の開口端の一箇所に長手方向に沿って所定長さの切り込みを入れ、この切り込みを開いた部分で2本の前記筒状編地同士を縫合することにより前記着用物品の半製品を形成すること、
その後、前記第1の色より濃度の淡い第2の色の染料に前記半製品全体を浸し、前記無着色の糸で製編された部分を前記第2の色に染色して後染め部を形成することを特徴とする着用物品の製造方法。
【請求項2】
前記先染め部が、前記ウエスト部から前記レッグ部の所定の第1位置までであり、前記後染め部が、前記レッグ部の前記第1位置から前記フット部までである請求項1に記載の着用物品の製造方法。
【請求項3】
前記先染め部が、前記レッグ部の所定の第2位置から前記フット部までであり、前記後染め部が、前記ウエスト部から前記レッグ部の前記第2位置までである請求項1に記載の着用物品の製造方法。
【請求項4】
前記先染め部が、前記レッグ部における前記フット部側の第1位置から前記パンティ部側の第2位置までであり、前記後染め部が、前記ウエスト部から前記レッグ部の前記第2位置までと前記レッグ部の前記第1位置から前記フット部までとである請求項1に記載の着用物品の製造方法。
【請求項5】
前記先染め部を製編している糸の太さが、70〜90デニール、前記後染め部を製編している糸の太さが20〜40デニールである請求項2〜4のいずれかに記載の着用物品の製造方法。
【請求項6】
前記先染め部において、前記パンティ部が、ほぼ40デニールの太さの糸で製編され、前記パンティ部を除いた前記ウエスト部から前記レッグ部の前記第2位置までが、前記パンティ部を製編している糸の太さより細い糸により製編されている請求項2に記載の着用物品の製造方法。
【請求項7】
前記後染め部において、前記パンティ部が、ほぼ40デニールの太さの糸で製編され、前記パンティ部を除いた前記ウエスト部から前記レッグ部の前記第2位置までが、前記パンティ部を製編している糸の太さより細い糸により製編されている請求項3又は4に記載の着用物品の製造方法。
【請求項8】
前記第2の色がベージュ色であり、前記第1の色が、前記ベージュ色より濃い色で形成されている請求項1〜7のいずれかに記載の着用物品の製造方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−157635(P2011−157635A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−17902(P2010−17902)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(399110155)株式会社ゴートレイド (2)
【Fターム(参考)】