着色木材の製造方法並びに着色木材及び単板及び建材

【課題】着色むらがなく、取り扱いも容易な着色木材の製造方法並びに着色木材及び単板及び建材を提供する。
【解決手段】ラミナを溶解度指数が10のアセトンに浸漬した状態で減圧・加圧含浸を行った後、このラミナをアセトンから引き上げて減圧処理することで、ラミナ中の余剰のアセトンを除去した。このラミナを、半均染型酸性染料1重量%、溶解助剤としての尿素20重量%、染料溶媒としての水79重量%からなる染料水溶液に浸漬した状態で、減圧・加圧含浸を行った後、このラミナを染料水溶液から引き上げて減圧処理することで、ラミナ中の余剰の染料水溶液を除去した。このようにして形成された多数のラミナLを積層接着してフリッチFを作成し、このフリッチFをスライサーにて切削することで、厚さ0.3mmの湿潤単板SPを形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、着色むらのない着色木材の製造方法並びに着色木材及び単板、建材に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、突板等の化粧単板は、着色された多数のラミナを接着することで集成フリッチを形成し、この集成フリッチをスライスすることによって製造される。ラミナを着色するには、ラミナを染料水溶液に長時間浸漬することによって、または、ラミナを染料水溶液に浸漬した状態で減圧・加圧処理を行うことによって、染料水溶液をラミナに含浸させることが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭59−222304号公報
【特許文献2】特開昭62−148207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、夏目部分に比べて抽出成分が多い木材の冬目部分は、水をはじきやすく、上述したような染料水溶液を含浸させることができないので、染料水溶液をラミナに含浸させるという方法では、冬目部分については着色することができない。
【0005】
また、染料は、水に対する親和性に比べて、木材に対する親和性のほうが大きいので、染料水溶液をラミナに含浸させる際、ラミナの木口部分において染料のほとんどが水から分離して吸着され、減圧・加圧処理を行う場合であっても、染料を水と共にラミナの中央部分まで運ぶことができず、ラミナの中央部分については着色することができない。
【0006】
このように、染料水溶液をラミナに含浸させるという方法では、染色むらが発生し、ラミナを綺麗に着色することができないといった問題がある。
【0007】
こういった染色むらの問題を解決するには、染料を有機溶媒に溶解させた染料溶液をラミナに含浸させることが考えられるが、有機溶媒を使用すると、染料溶液を含浸させたラミナが引火しやすくなるので、ラミナの取り扱いが難しくなるといった新たな問題が発生する。
【0008】
そこで、この発明の課題は、着色むらがなく、取り扱いも容易な着色木材の製造方法並びに着色木材及び単板及び建材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、請求項1に係る発明は、水溶性有機溶媒を木材に含浸させる溶媒含浸工程と、前記溶媒含浸工程において水溶性有機溶媒を含浸させた木材に対して、減圧処理を行うことによって余剰の水溶性有機溶媒を除去する余剰溶媒除去工程と、前記余剰溶媒除去工程において余剰の水溶性有機溶媒が除去された木材に染料水溶液を含浸させる染料含浸工程とを備えた着色木材の製造方法を提供するものである。
【0010】
また、請求項2に係る発明は、請求項1に記載の着色木材の製造方法において、前記染料含浸工程において染料水溶液を含浸させた木材に対して、減圧処理を行うことによって余剰の染料水溶液を除去する余剰染料除去工程を備えていることを特徴としている。
【0011】
また、上記の課題を解決するため、請求項3に係る発明は、染料を水溶性有機溶媒に溶解させた染料溶液を木材に含浸させる染料含浸工程と、前記染料含浸工程において染料溶液を含浸させた木材に対して、減圧処理を行うことによって余剰の染料溶液を除去する余剰染料除去工程と、前記余剰染料除去工程において余剰の染料溶液を除去した木材に対して、水を含浸させる水含浸工程とを備えた着色木材の製造方法を提供するものである。
【0012】
また、請求項4に係る発明は、請求項3に記載の着色木材の製造方法において、前記水含浸工程において水を含浸させた木材に対して、減圧処理を行うことによって余剰水を除去する余剰水除去工程を備えていることを特徴としている。
【0013】
また、請求項5に係る発明は、請求項1、2、3または4に記載の着色木材の製造方法において、前記染料として、半均染型酸性染料を使用し、前記水溶性有機溶媒として、溶解度指数が9.5〜15.0のものを使用したことを特徴としている。溶解度指数が9.5〜15.0の水溶性有機溶媒としては、アセトン、イソプロパノール、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、エタノール、クレゾール、エチレングリコール、フェノール、メタノール等が挙げられる。
【0014】
また、請求項6に係る発明は、請求項1、2、3、4または5に記載の製造方法によって製造された着色木材を提供するものである。
【0015】
また、請求項7に係る発明は、請求項6に記載の着色木材によって形成された集成材をスライスしてなる単板を提供するものである。
【0016】
また、請求項8に係る発明は、請求項7に記載の単板を表面材として使用した建材を提供するものである。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、請求項1に係る発明の着色木材の製造方法では、木材に染料水溶液を含浸させる前に、水溶性有機溶媒を木材に一旦含浸させ、余剰の水溶性有機溶媒を除去した状態で、染料水溶液を含浸させるようにしたので、染料が直接木材に吸着されるのではなく、一旦、水溶性有機溶媒に吸着された後、木材に吸着されることになる。従って、この製造方法では、冬目部分の染色や木材の中央部分の染色が可能になり、この製造方法によって製造された請求項6に係る発明の着色木材には着色むらが生じないという効果が得られる。
【0018】
また、製造された着色木材は、水で濡れた状態となっているので、引火性がなく、取り扱いが容易になると共に、スライスして単板を製造する際の切削特性もよい。
【0019】
特に、請求項2に係る発明の着色木材の製造方法では、染料水溶液を含浸させた木材に対して、減圧処理を行うことによって余剰の染料水溶液を除去するようにしたので、スライスして単板を製造する際、余剰の染料水溶液が周囲に飛び散ることがなく、また、着色木材の含水率が70%程度に低下することになり、スライスした単板を合板等の木質基材にホットプレスして化粧板を製造する際、ホットプレスを容易に行うことができるという効果が得られる。また、着色木材内に残留している水溶性有機溶媒が余剰の染料水溶液と共に排出されるので、着色木材内の水溶性有機溶媒の残留量がさらに小さくなるという利点もある。
【0020】
また、請求項3に係る発明の着色木材の製造方法では、木材の冬目部分に対して親和性のよい水溶性有機溶媒に染料を溶解させた染料溶液を木材に含浸させるようにしたので、木材の冬目部分についても染色することができ、しかも、染料は水に比べて水溶性有機溶媒に対する親和性がよいので、木材の木口部分で染料が水溶性有機溶媒から分離して木材に強く吸着することがなく、染料溶液を木材に含浸させる際、染料が水溶性有機溶媒と共に木材中を移動することができる。従って、この製造方法では、冬目の染色や木材の中央部分の染色が可能になり、この製造方法によって製造された請求項6に係る発明の着色木材には着色むらが生じないという効果が得られる。
【0021】
また、木材に染料溶液を含浸させた後、余剰の染料溶液を除去し、さらに、水を木材に含浸させるようにしたので、製造された着色木材は、水で濡れた状態となっており、引火性がなく、取り扱いが容易になると共に、スライスして単板を製造する際の切削特性もよい。
【0022】
特に、請求項4に係る発明の着色木材の製造方法では、水を含浸させた木材に対して、減圧処理を行うことによって余剰水を除去するようにしたので、着色木材の含水率が70%程度に低下することになり、スライスした単板を合板等の木質基材にホットプレスして化粧板を製造する際、ホットプレスを容易に行うことができるという効果が得られる。また、着色木材内に残留している水溶性有機溶媒が余剰水と共に排出されるので、着色木材内の水溶性有機溶媒の残留量がさらに小さくなるという利点もある。
【0023】
また、請求項5に係る発明の着色木材の製造方法では、染料として、半均染型酸性染料を使用しているので、水に対する溶脱がなく、ウレタン樹脂塗料またはUV系塗料を塗装する際の色抜けもない。また、水溶性有機溶媒として、溶解度指数が9.5〜15.0のものを使用しているので、半均染型酸性染料の溶解性もよい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】この発明の一実施形態である着色木材を用いた単板の製造方法を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の着色木材の製造方法及び着色木材について、表1を参照して説明するが、本発明の着色木材はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0026】
(実施例1)
〔前処理〕
ビーチ乾燥材からなるL800mm×W90mm×H50mmのラミナを、溶解度指数が10の水溶性有機溶媒であるアセトンに浸漬し、大気圧に対して0.06MPaだけ減圧した状態で30分間放置した後、1.06MPaだけ加圧した状態で1時間放置することによって、ラミナにアセトンを含浸させる減圧・加圧含浸を行った後、このラミナをアセトンから引き上げて、大気圧に対して0.06MPaだけ減圧した状態で30分間放置することで、ラミナ中の余剰のアセトンを除去した。
〔染色処理〕
このようにして前処理を施したラミナを、半均染型酸性染料(「カヤノール」(登録商標)日本化薬株式会社製)1重量%、溶解助剤としての尿素20重量%、染料溶媒としての水79重量%からなる染料水溶液に浸漬し、大気圧に対して0.06MPaだけ減圧した状態で30分間放置した後、1.06MPaだけ加圧した状態で1時間放置することによって、ラミナに染料水溶液を含浸させる減圧・加圧含浸を行った後、このラミナを染料水溶液から引き上げて、大気圧に対して0.06MPaだけ減圧した状態で30分間放置することで、ラミナ中の余剰の染料水溶液を除去した。
【0027】
(実施例2)
染色処理における減圧・加圧含浸の際、減圧状態から0.06MPaだけ加圧した点を除いて、実施例1と同様の方法で着色木材を製造した。
【0028】
(実施例3)
前処理において、水溶性有機溶媒として溶解度指数が14.5〜14.8のメタノールを使用した点を除いて、実施例1と同様の方法で着色木材を製造した。
【0029】
(実施例4)
前処理において、水溶性有機溶媒として溶解度指数が14.5〜14.8のメタノールを使用した点を除いて、実施例2と同様の方法で着色木材を製造した。
【0030】
(実施例5)
〔染色処理〕
ビーチ乾燥材からなるL800mm×W90mm×H50mmのラミナを、半均染型酸性染料(「カヤノール」(登録商標)日本化薬株式会社製)1重量%、染料溶媒としてのアセトン99重量%からなる染料溶液に浸漬し、大気圧に対して0.06MPaだけ減圧した状態で30分間放置した後、1.06MPaだけ加圧した状態で1時間放置することによって、ラミナに染料溶液を含浸させる減圧・加圧含浸を行った後、このラミナを染料溶液から引き上げて、大気圧に対して0.06MPaだけ減圧した状態で30分間放置することで、ラミナ中の余剰の染料溶液を除去した。
〔後処理〕
このようにして染色処理を施したラミナを水に浸漬し、大気圧に対して0.1MPaだけ減圧した状態で30分間放置した後、1.1MPaだけ加圧した状態で1時間放置することによって、ラミナに水を含浸させる減圧・加圧含浸を行った後、このラミナを水から引き上げて、大気圧に対して0.1MPaだけ減圧した状態で30分間放置することで、ラミナ中の余剰水を除去した。
【0031】
(実施例6)
前処理において、染料溶媒として溶解度指数が14.5〜14.8のメタノールを使用した点を除いて、実施例5と同様の方法で着色木材を製造した。
【0032】
(比較例1)
前処理を行わない点を除いて、実施例1と同様の方法で着色木材を製造した。
【0033】
(比較例2)
後処理を行わない点を除いて、実施例5と同様の方法で着色木材を製造した。
【0034】
【表1】

【0035】
上述した実施例1〜6及び比較例1、2で得られたそれぞれの着色木材について、着色むら、取扱性及びスライス適性を評価し、それぞれの結果を表2に示した。
【0036】
【表2】

【0037】
表2から分かるように、実施例1〜6の着色木材については、着色むらが発生しておらず、引火性がなく取扱性に優れており、容易にスライスすることができた。
【0038】
これに対して、染料溶媒として水を使用した比較例1の着色木材は、引火性がなく取扱性に優れており、容易にスライスすることができたが、ラミナの木口部分は濃く着色されているのに対して、ラミナの中央部分についてはほとんど着色されておらず、着色むらが発生していた。
【0039】
また、染料溶媒として水溶性有機溶媒であるアセトンを使用した比較例2の着色木材は、着色むらがなく、均一に着色されていたが、アセトン臭が強く、加工時の静電気や火花による引火のおそれがあるので、スライサーにてスライスすることができなかった。仮に、スライスすることができたとしても、アセトンがすぐに蒸発するので、スライスした単板が収縮するため寸法が狂ったり、割れたりするといった問題もある。
【0040】
上述したように、実施例1〜6の着色木材(ラミナ)は、着色むらが発生しておらず、引火性もなく、容易にスライスすることができるので、突板等の製造に使用することができる。具体的には、図1に示すように、多数のラミナLを積層接着してフリッチFを作成し、このフリッチFをスライサーにて切削することで、厚さ0.3mmの湿潤単板SPを形成する。なお、木材は、水により可塑化されるため、良好に切削するには、含水率が高い状態で切削する必要がある。
【0041】
このようにして形成された湿潤単板SPは、ナイロンでくるみ数日間冷凍保管後、室温にて解凍し、合板からなる基板の表面に熱圧接着することで、床板等の建材を製造することができる。なお、木材は乾燥することによって収縮するので、その含水率が繊維飽和点以下になるまでの間に接着する必要がある。
【0042】
なお、上述した実施例1〜4では、ラミナに染料水溶液を含浸させる減圧・加圧含浸を行った後、このラミナを染料水溶液から引き上げて減圧処理することで、ラミナ中の余剰の染料水溶液を除去したり、実施例5、6では、ラミナに水を含浸させる減圧・加圧含浸を行った後、このラミナを水から引き上げて減圧処理することで、ラミナ中の余剰水を除去したりしているが、最後の余剰染料水溶液の除去工程や余剰水の除去工程は必ずしも設ける必要はない。ただし、最後の除去工程を設けておくと、スライスして単板を製造する際、余剰の染料水溶液が周囲に飛び散ることがなく、また、着色木材の含水率が70%程度に低下することになり、スライスした単板を合板等の木質基材にホットプレスして化粧板を製造する際、ホットプレスを容易に行うことができるという効果が得られると共に、着色木材内に残留している水溶性有機溶媒が余剰の染料水溶液や水と共に排出されるので、着色木材内の水溶性有機溶媒の残留量がさらに小さくなるという利点もある。
【0043】
また、上述した各実施例では、前処理、染色処理、後処理の各工程において、減圧処理時間を30分、加圧処理時間を1時間に設定しているが、これに限定されるものではなく、各処理時間は、着色状態を考慮して適宜設定すればよい。
【0044】
また、上述した各実施例では、水溶性有機溶媒として、アセトンやメタノールを使用しているが、これに限定されるものではなく、溶解度指数が9.5〜15.0のものを適宜選択して使用すればよい。具体的には、イソプロパノール、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、エタノール、クレゾール、エチレングリコール、フェノール等が挙げられる。
【0045】
また、上述した実施例1〜4では、染料水溶液に溶解助剤として尿素20重量%を添加しているが、これに限定されるものではなく、尿素の添加量は、10〜40重量%の範囲で、適宜設定すればよい。
【0046】
また、上述した各実施例では、前処理、染色処理、後処理の各工程において、減圧・加圧含浸法を採用しているが、十分な浸漬時間を確保することができるのであれば、必ずしも、減圧・加圧含浸法を採用する必要はない。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、木材を着色して使用する場合に利用することができる。
【符号の説明】
【0048】
L ラミナ(着色木材)
F フリッチ(集成材)
SP 湿潤単板(単板)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性有機溶媒を木材に含浸させる溶媒含浸工程と、
前記溶媒含浸工程において水溶性有機溶媒を含浸させた木材に対して、減圧処理を行うことによって余剰の水溶性有機溶媒を除去する余剰溶媒除去工程と、
前記余剰溶媒除去工程において余剰の水溶性有機溶媒が除去された木材に染料水溶液を含浸させる染料含浸工程と
を備えた着色木材の製造方法。
【請求項2】
前記染料含浸工程において染料水溶液を含浸させた木材に対して、減圧処理を行うことによって余剰の染料水溶液を除去する余剰染料除去工程を備えている請求項1に記載の着色木材の製造方法。
【請求項3】
染料を水溶性有機溶媒に溶解させた染料溶液を木材に含浸させる染料含浸工程と、
前記染料含浸工程において染料溶液を含浸させた木材に対して、減圧処理を行うことによって余剰の染料溶液を除去する余剰染料除去工程と、
前記余剰染料除去工程において余剰の染料溶液を除去した木材に対して、水を含浸させる水含浸工程と
を備えた着色木材の製造方法。
【請求項4】
前記水含浸工程において水を含浸させた木材に対して、減圧処理を行うことによって余剰水を除去する余剰水除去工程を備えている請求項3に記載の着色木材の製造方法。
【請求項5】
前記染料として、半均染型酸性染料を使用し、
前記水溶性有機溶媒として、溶解度指数が9.5〜15.0のものを使用した請求項1、2、3または4に記載の着色木材の製造方法。
【請求項6】
請求項1、2、3、4または5に記載の製造方法によって製造された着色木材。
【請求項7】
請求項6に記載の着色木材によって形成された集成材をスライスしてなる単板。
【請求項8】
請求項7に記載の単板を表面材として使用した建材。

【図1】
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