説明

石油燃焼器の燃料供給構造

【課題】 カートリッジタンクを取出すことなく芯の空焼きを行うことができる石油燃焼器の燃料供給構造。
【解決手段】 油タンク2から立設した芯内筒3と油タンク2の上面板2bに取付けた芯外筒4とで構成する芯収容筒5の間隙に芯6を上下動自在に取付け、油タンク2の上面板2bに設けた油受け7にカートリッジタンク8のキャップ9を装着し、油受け7の突起7aがキャップ9の開閉弁9aを押し開いてカートリッジタンク8から油タンク2内へ燃料を供給する。油受け7の外側には油受け7の側面に沿って上下動する有底筒状の可動体10を配置し、可動体10に設けた燃料通過口10aがカートリッジタンク8の開閉弁9aより低く位置するときに通常燃焼位置となり、油タンク2へ燃料が供給され、燃料通過口10aが開閉弁9aより高く位置するときに空焼き燃焼位置となり油タンク2への燃料供給が遮断されて芯6の空焼きが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、芯の空焼きを容易に行うことができる芯上下式石油燃焼器の燃料供給構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
芯上下式石油燃焼器は油タンクの底板から立設した芯内筒と油タンクの上面板に取付けた芯外筒とで芯収容筒を構成し、芯収容筒の間隙には上下動自在に芯を取付け、芯収容筒の上部には燃焼筒を配置している。
【0003】
枠体内に備えた油タンクには着脱自在にカートリッジタンクを装着して油タンクへ燃料を供給するものであり、カートリッジタンクの口金には開閉弁を備えたキャップを取付け、油タンクの上面板には油タンク内へ向けて油受けを取付けており、この油受けに設けた突起によってキャップに備えた開閉弁が押し開かれてカートリッジタンクの燃料が流出し油受けの流出口から油タンク内に供給される。
【0004】
そして、芯上下装置によって芯の上端を芯収容筒の上部に突出させて燃焼筒の下部にのぞませ、点火ヒータなどの点火手段によって着火すると、芯の下端で吸い上げられた油タンクの燃料が芯の上端で気化して燃焼筒で空気の供給を受けて燃焼し、燃料が燃焼に使用されて油タンク内の油面が低下すると開閉弁からカートリッジタンク内に空気が入り、カートリッジタンク内の燃料が流出して油タンク内を定油面に保持している。
【0005】
ところで、石油燃焼器は使用する灯油が変質した灯油であると、灯油に含まれる高分子量成分が芯の上端でタール化して芯に付着して残ることがある。また、正常な灯油を使用している場合でも、使用期間が長くなってくると芯にタールが付着することがある。そして、芯にタールが付着すると燃焼中に臭気が強くなったり、点火不良や消火不良を起こす原因となるものであった。
【0006】
芯に付着したタールは早い段階で芯の空焼きを行うことで除去することができるものであり、芯に多量のタールが付着する前に定期的に空焼きを行うことが望ましいが、最近では空焼きの知識や方法を知らないユーザーが増えてきている。また、ユーザーが空焼きの必要性を理解している場合でも、最近の石油燃焼器はカートリッジタンクを枠体から取り出すと連動して消火装置が作動する安全装置を備えているため、空焼きを行うときはカートリッジタンク内の燃料を別の容器に移しかえてから再度セットするか、カートリッジタンクが空量になるのを待たなければならず、非常に面倒な作業となるため、ユーザーに定期的に空焼きを行ってもらうことは期待できなかった。
【0007】
このための対策として、油受けの燃料流出口を開閉する開閉手段を設け、この開閉手段を枠体外から操作できるようにする操作部を設け、操作部を操作して開閉手段を閉止位置にセットすると、開閉手段が燃料流出口を閉止して油タンクへの燃料供給を停止するものがあり、カートリッジタンク内に燃料が入ったままでも簡単に空焼きを行うことができるようになり、ユーザーによる定期的な空焼き作業を期待できるようになった。(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2008−249295号 公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1では、油受けの燃料流出口に開閉手段を密着させて閉止する構成であり、燃料流出口と開閉手段との密着性を高めるためにパッキンを必要としている。このため、長期間の使用によってパッキンが劣化したり、燃料中のゴミ等が油受けの燃料流出口と開閉手段との間に挟まるなどして、燃料流出口と開閉手段との間に隙間が生じて燃料の供給を止めることができなくなり、空焼きができなくなってしまう。この場合は、開閉手段を空焼き燃焼位置にセットしても燃料が供給されてしまうが、そのことに気づかずにそのまま燃焼を続けてしまう可能性がある。
芯の空焼きはある程度の使用期間が経過したときに必要となることが多いものであるが、使用期間が長期化するとパッキンの劣化やゴミの混入が起こりやすい状態となっており、改善すべき課題が残されており実用化には至っていなかった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は上記の課題を解決するもので、枠体1内には油タンク2と、油タンク2の底板から立設した芯内筒3と、油タンク2の上面板2bに取付けた芯外筒4と、芯内筒3と芯外筒4とで構成する芯収容筒5の間隙内に上下動自在に取付けて下端が油タンク2内の燃料に届く芯6とを設けると共に、前記油タンク2の上面板2bには油タンク2内に向けて油受け7を設け、油タンク2に燃料を供給するカートリッジタンク8の口金には開閉弁9aを備えたキャップ9を取付け、カートリッジタンク8のキャップ9を油受け7に装着し、油受け7の底面から設けた突起7aがキャップ9の開閉弁9aを押し開いてカートリッジタンク8から油タンク2内へ燃料を供給して、油タンク2内を定油面に保持する石油燃焼器において、前記油受け7の突起7aの周囲の底面もしくは側面に燃料流出口7bを設け、前記油受け7の底面と側面を囲むように配置した有底筒状の可動体10を設け、該可動体10は前記油受け7の底面と側面との間に所定の空間を形成し、前記可動体10の側面に燃料通過口10aを設けると共に、前記可動体10は前記油受け7の側面に沿って上下方向に移動可能に取り付けて、前記燃料通過口10aが前記油受け7に装着された前記カートリッジタンク8の前記開閉弁9aより低く位置する通常燃焼位置と、前記燃料通過口10aが前記開閉弁9aより高所に位置する空焼き燃焼位置とを備えており、前記カートリッジタンク8から油受け7の燃料流出口7bを経て前記可動体10に送られる燃料は、前記可動体10が前記通常燃焼位置にあるときは前記可動体10内の燃料通過口10aを通過して油タンク2へ供給され、前記可動体10が前記空焼き燃焼位置にあるときは、前記可動体10内の油面が前記燃料通過口10aより低位置に形成されて油タンク2への燃料供給が遮断されることを特徴とする。
【0010】
また、前記可動体10には一部が枠体1外部に露出して枠体1外から可動体10を前記通常燃焼位置と前記空焼き燃焼位置との間で切り替えることのできる操作部11を設けたから、カートリッジタンク8を枠体1に装着したままでもカートリッジタンク8から油タンク2への燃料供給が遮断できるようになり容易に芯の空焼きが行えるようになった。
【0011】
また、前記可動体10に係止片12を設け、前記油受け7には前記係止片12が係合する係止案内部13を設け、前記係止片12が前記係止案内部13に沿って移動して前記可動体10が上下方向に移動可能に取り付けられ、前記可動体10を通常燃焼位置と空焼き燃焼位置に保持する係止手段14を形成したから、可動体10の上下の移動がスムーズに移動できるようになり、通常燃焼位置と空焼き燃焼位置との切り替えが容易にできるものとなった。
【0012】
また、前記可動体10の上面に突出する複数個の突起12aによって前記係止片12を形成し、前記油受け7の外周面には外径寸法を大きくする鍔部15を形成し、該鍔部15の下面と前記突起12aの上端と対向し、鍔部15の下面には高さを変える複数個の凹部13aを形成し、前記鍔部15と前記凹部13aによって前記係止案内部13を構成し、前記油受け7と前記可動体10の間には前記突起12aを前記鍔部15の下面に押し付けるバネ手段14aを設けて前記係止手段14を形成し、前記可動体10は前記突起12aが前記鍔部15の下面に接触しながら係止案内部13に沿って移動して、前記油受け7の側面に沿って円周方法に回動可能に取り付けられると共に、前記突起12aが前記凹部13aと対向するときに前記可動体10が上方向に移動して前記突起12aが前記凹部13a内に位置し、前記突起12aが前記凹部13aと対向しない位置では前記可動体10の燃料通過口10aが前記カートリッジタンク8の前記開閉弁9aより低く位置し、前記突起12aが前記凹部13a内に位置しているときは前記燃料通過口10aが前記カートリッジタンク8の前記開閉弁9aより高く位置するように設定し、前記可動体10の回動動作によって前記通常燃焼位置と前記空焼き燃焼位置が切り替わる構成としたから通常燃焼位置と空焼き燃焼位置との切り替え操作が容易にできるものとなった。
【発明の効果】
【0013】
この発明では、油受け7の底面と側面とを囲むように配置して油受け7との間に所定の空間を形成した有底筒状の可動体10を設け、この可動体10は油受け7の側面に沿って上下方向に移動して通常燃焼位置と空焼き燃焼位置との間で切り替え可能となっている。可動体10を通常燃焼位置にセットすると可動体10の側面に設けた燃料通過口10aが油受け7に装着されたカートリッジタンク8の開閉弁9aより低く位置し、一方、可動体10を空焼き燃焼位置にセットすると可動体10の燃料通過口10aがカートリッジタンク8の開閉弁9aより高く位置する。
このため、通常燃焼位置ではカートリッジタンク8から流出して可動体10に送られた燃料が燃料通過口10aを通過して油タンク2へ供給することができ、空焼き燃焼位置ではカートリッジタンク8から流出して可動体10に送られた燃料が燃料通過口10aより低位置で油面を形成してカートリッジタンク8からの燃料の流出が停止するので、油タンク2への燃料の供給を遮断することができる。
【0014】
この構成であれば、燃料が入ったカートリッジタンク8を装着したまま芯6の空焼きを行うことができるものであり、カートリッジタンク8が空量になるのを待ったり、カートリッジタンク8の燃料を他の容器に移し替えたりする必要がなくなり、いつでも簡単に空焼きを行うことができるものとなった。
また、従来のように油受けの燃料流出口7bを直接閉止する構成ではなく、可動体10内に形成される油面と燃料通過口10aの位置関係によって燃料の供給を停止することができる構成であるから、ゴミが挟まったりパッキンの劣化によって燃料供給を遮断できなくなる心配は全くなく、可動体10の位置を空焼き燃焼位置にセットすれば確実に燃料を遮断することができる。
【0015】
また、可動体10には一部を枠体1の外に露出させた操作部11を設け、操作部11を操作することによって枠体1の外から簡単に可動体10を通常燃焼位置と空焼き燃焼位置との間で切り替え可能としたから、簡単な操作で空焼きを行うことができるようになる。
また、ユーザーは操作部11の存在によって空焼きの必要性を理解しやすく、ユーザーによる定期的な芯の空焼き作業が期待できるようになり、芯や製品の寿命を長期化することができるものとなった。
【0016】
また、可動体10に設けた係止片12が油受け7に設けた係止案内部13に係合し、可動体10を上下方向に移動するときは可動体10の係止片が油受け7の係止案内部13に沿って移動することで可動体10のスムーズな移動が可能となり、通常燃焼位置と空焼き燃焼位置の切り替えが容易にできるものとなった。そして、可動体10を通常燃焼位置と空焼き燃焼位置にセットしたときに係止片12を係止する係止手段14を備え、可動体10を通常燃焼位置と空焼き燃焼位置とで保持するから、可動体10を確実に空焼き燃焼位置にセットできるものである。
【0017】
また、可動体10は油受け7の側面に沿って回動可能に取付け、可動体10の係止片12は可動体10の上面から突出する複数の突起12aによって構成し、油受け7の係止案内部13は油受け7の外周面に形成した鍔部15と、鍔部15の下面に設けた凹部13aとで構成し、油受け7と可動体10の間にバネ手段14aを設け、突起12aを鍔部15の下面に押し付けて接触させている。この状態で可動体10が回転すると可動体10の突起12aが鍔部15の下面に沿って移動し、凹部13a内に移動するときに可動体10の上下方向の位置が変更するので、通常燃焼位置と空焼き燃焼位置とを切り替えることができ、簡単な操作で確実に切替え操作ができるものとなった。
また、可動体10はバネ手段14aによって鍔部15へ押し付けられているから、可動体10の回転方向への抵抗となっており、可動体10を確実に通常燃焼位置もしくは空焼き燃焼位置で保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明の実施例において空焼き燃焼時と通常燃焼時の状態を示す油タンク内の要部断面図である。
【図2】この発明の他の実施例を示す空焼き燃焼時と通常燃焼時の状態を示す油タンク内の要部断面図である。
【図3】図2に示す実施例において空焼き燃焼時と通常燃焼時の状態を示す平面図である。
【図4】この発明の石油燃焼器の正面図である。
【図5】この発明の実施例の燃料供給構造を備えた石油燃焼器の要部正面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図に示す実施例によってこの発明を説明すると、1は石油燃焼器の枠体、2は枠体1内に設置した燃料を貯える油タンク、3は油タンク2の底板から立設した芯内筒、2bは油タンク2の上面板、4は油タンク2の上面板2bに取付けた芯外筒、5は芯内筒3と芯外筒4とで構成する芯収容筒、6は芯収容筒5の間隙に上下動自在に装着した芯であり、芯6の下部が油タンク2の燃料に届いており、油タンク2の燃料が芯6の下部で吸い上げられて芯6の上方に供給されている。
【0020】
16は芯収容筒5の上に載置した燃焼筒、17は芯収容筒5の外側に取付けた芯上下装置であり、芯上下装置17によって芯6を上昇して芯6の先端を芯収容筒5から燃焼筒16の下部に突出し、図示しない点火装置によって芯6に着火すると、芯6の下部で吸い上げられた油タンク2の燃料が芯6の上部で燃焼を開始し、発生する燃焼炎と燃焼ガスは燃焼筒16で燃焼を完了する。
【0021】
8は枠体1内に着脱自在に装着して油タンク2へ燃料を供給するカートリッジタンク、9はカートリッジタンク8の口金に着脱自在に設けたキャップ、9aはキャップ9内に組み込んで構成した開閉弁である。7は油タンク2の上面板2bの開口に取付けた有底筒状の油受け、7aは油受け7の底面の中央から上方へ向けて形成した突起、7bは突起7aの周囲の底面に設けた燃料流出口である。
【0022】
カートリッジタンク8のキャップ9を下向きにして油受け7に装着すると、突起7aが開閉弁9aを押し開いて空気がカートリッジタンク8内に流入し、代わってカートリッジタンク8内の燃料が流出して油受け7の燃料流出口7bから油タンク2に供給され、油タンク2内の油面が上昇して開閉弁9aの先端に届くとカートリッジタンク8内に空気が流入できなくなり、燃料の流出が止まる。そして、燃焼によって燃料が使用されて油タンク2内の油面が低下すると開閉弁9aからカートリッジタンク8内に空気が流入して代わりに燃料が流出する。
【0023】
石油燃焼器の燃焼中に芯上下装置17によって芯6を降下させて芯6の先端が芯収容筒5内に収容されると、芯6の先端の炎が芯収容筒5内に引き込まれて芯6から気化する石油ガス量が少なくなり、未燃ガスを燃焼しながら少しずつ温度を下げて芯6の上方に残る炎が少しずつ小さくなって消火する。また、図示しないが地震の発生や石油燃焼器の転倒時に自動で芯6を下げて急速消火する自動消火装置を備えている。
【0024】
また、最近の石油燃焼器は、給油のためにカートリッジタンクを枠体から取り出すと自動消火装置が作動する安全装置を備えており、石油燃焼器の使用中にカートリッジタンクを取り出すと必ず消火するようになっている。給油後のカートリッジタンクのキャップの閉め忘れや閉め付けが不十分であると、カートリッジタンクを枠体に装着するときにキャップが外れて燃料が溢れ出して石油燃焼器にかかる恐れがあるが、石油燃焼器は必ず消火しているから火災事故は防ぐことができる。
【0025】
ところで、芯上下式石油燃焼器は燃料である灯油が変質灯油であると灯油に含まれるタール成分が燃焼できず、タール化して芯6の先端に残ることがある。また、正常な灯油を使用している場合でも、芯6から気化した灯油蒸気が燃焼筒16で燃焼できずに結露して芯6に戻ることがあり、一度気化して結露した灯油は変質してしまうため、燃焼と消火を繰り返すうちにタール化して芯6に付着して残るようになる。
【0026】
そして、芯6に付着したタールは点火時や消火時に臭気を発生させる原因となり、更にそのまま使用を続けて芯6の先端に付着するタールの量が多くなると、芯6と芯収容筒5との隙間が狭くなって芯上下操作の妨げとなり、消火時に芯6が芯下げ途中で止まって消火できなくなるなどのトラブルの原因となる。
【0027】
上記のように芯6にタールが付着したときに、タールの量が少ない段階で芯の空焼きを行えばタールを除去することができるが、最近の石油燃焼器はカートリッジタンク8を取り出すと自動消火装置が作動してしまうため、空焼きを行うときはカートリッジタンク8の燃料が空になるまで燃焼を続けるか、カートリッジタンク8の燃料をポリタンクなどの別の容器に移したあと、空になったカートリッジタンク8を枠体1へ装着して燃焼させる必要があり、空焼き作業には手間がかかるものであった。
【0028】
このため、従来は油受けの燃料流出口を開閉手段で直接閉止することで、カートリッジタンクから油タンクへの燃料供給を遮断して、燃料の入ったカートリッジタンクを枠体に装着したままでも空焼きができる構造を実現しているが、この従来構造では開閉手段と燃料流出口との密着性を向上させるためにパッキンが必要であり、パッキンの劣化や燃料に混入したゴミが挟まると開閉手段と燃料流出口との間に隙間が生じ、燃料の供給が遮断できなくなるという欠点が見つかり、実用化のためには燃料を確実に遮断できる構造の実現が課題となっていた。
【0029】
この発明は上記の課題を解決するもので、10は油受け7の底面と側面とを囲むように配置した有底筒状の可動体であり、可動体10は油受け7の外周面に沿って上下方向に移動可能に取り付けられている。10aは可動体10の外周面に設けた多数の燃料通過口であり、可動体10が上下動することによって燃料通過口10aの位置が変化するようになっており、可動体10を上方に移動すると燃料通過口10aが油受け7に装着されたカートリッジタンク8の開閉弁9aの先端位置より高い位置に位置し、可動体10を下方に移動すると燃料通過口10aが開閉弁9aの先端位置より低く位置する構成となっている。そして、可動体10が高位置にあるときを空焼き燃焼位置とし、可動体10が低位置にあるときを通常燃焼位置に設定している。
【0030】
上記の構成において、可動体10を通常燃焼位置に設置してあるときは、カートリッジタンク8の開閉弁9aから流出した燃料は油受け7の燃料流出口7bから可動体10へ流れて可動体10の底部に溜まり、油面が上昇して燃料通過口10aに達すると燃料が可動体10から溢れ出して油タンク2内へ供給されるものである。そして、油タンク2の油面は可動体10の燃料通過口10aよりも上昇し、油面がカートリッジタンク8の開閉弁9aの先端に届くとカートリッジカートリッジタンク8内への空気が流入できなくなり、燃料の流出が止まる。そして、燃焼によって油タンク2内の燃料が使用されると油タンク2内の油面が開閉弁9aの先端よりも低くなってカートリッジタンク8へ空気が流入されると入れ替わりにカートリッジタンク8内の燃料が流出するものである。
【0031】
一方、可動体10を通常燃焼位置から空焼き燃焼位置に変更すると、可動体10の燃料通過口10aがカートリッジタンク8の開閉弁9aの先端の油面位置より高所に位置するから、可動体10の底部に溜まった燃料は可動体10の燃料通過口10aの高さまで届かず油タンク2には燃料が供給されなくなる。この状態で燃焼を継続して油タンク2の燃料が使用されても、可動体10に溜まった燃料は油タンク2へは流れず、可動体10内の油面高さは変わらないので、カートリッジタンク8からの燃料の流出が止まったままになり、そのまま燃焼を継続すると油タンク2内の燃料がなくなり芯の空焼きができるものである。
【0032】
本発明は、カートリッジタンク8から油タンク2への燃料の供給を遮断する方法を見直したものであり、従来のように油受けの燃料流出口を直接開閉部材で閉止する構成ではパッキンの劣化やゴミによる流出口の閉止不良の問題があったが、この発明の構成では可動体10が油受け7の燃料流出口7bとは接触することなく、可動体10の燃料通過口10aの位置を変化させる構成であるから、パッキンが不要となると共に、ゴミの挟みこみによる閉止不良の問題は全く起こらなくなり、確実に油タンク2への燃料の供給を遮断できるものとなった。
【0033】
11は一部が枠体1に設けた開口から枠体1外に露出するように配置した可動体10に接続された操作部、11aは操作部11の枠体1外に露出する操作レバーであり、この操作レバー11aを枠体1の外側から操作することで可動体10が上下動して通常燃焼位置と空焼き燃焼位置を切り替えることができる。このため、燃料の入ったカートリッジタンク8を枠体1から取り出すことなく操作部11の切り替え操作のみで簡単に芯6の空焼きを行うことができ、空焼き燃焼後も操作部11を通常燃焼位置に戻すだけで通常の使用が可能となり、取り扱い性が向上できるものとなった。
【0034】
12は可動体10に形成した係止片、13は油受け7に設けた前記係止片12が係合する係止案内部、14は可動体10を通常燃焼位置と空焼き燃焼位置で保持するように係止片12を係止する係止手段であり、係止片12が係止案内部13に沿って移動することで、可動体10の移動を規制しており、係止手段14によって可動体10が必ず通常燃焼位置もしくは空焼き燃焼位置に保持することができる。
【0035】
具体的な実施例として図1では係止案内部13を油受け7の外周面に形成した上下方向に伸びるレール状突部13bで構成し、係止片12を可動体10の内周面に形成する係止溝12bで構成しており、係止溝12aがレール状突部13bと嵌合し、可動体10はレール状突部13bに沿って上下動する。また、10bは可動体10の外周面に設けた一対の係止ピン、11bは操作部11の回転中心となる支軸、11cは操作部11の枠体1内側の端部に形成した前記係止ピン10bと係合する連結部であり、操作部11が支軸11aを中心に可動すると、連結部11cと係止ピン10bを介して可動体10を上下に移動する。
11dは操作部11の側面に設けた半球状の突部、14bは操作部11の突部11dが嵌合する係止手段14に設けた係止穴である、この係止穴14bは上下に2段に配置され、上段が通常燃焼位置、下段が空焼き燃焼位置となるように設定されている。
【0036】
実施例の係止手段14は合成樹脂もしくは弾性部材によって構成しており、突部11dが係止穴14bに嵌合した状態から操作部11を可動すると、突部11dが係止穴14bから外れるときに係止手段14が変形して押し広げられ、操作部11を可動して再び突部11dが係止穴14bに嵌合すると、押し広げられた係止手段14は元の位置に戻るので、操作部11の位置が保持できる。この構成であれば、可動体10が通常燃焼位置にあるときは、操作部11の突部11dは係止手段14の上段の係止穴14bに嵌合しており、空焼き燃焼を行うために操作部11の枠体1外の操作レバー11aを下方に押し下げると突部11dが上段の係止穴14bから外れて操作部11が支軸11bを中心に回動し、操作部11の連結部11cが上動して係止ピン10bが持ち上げられて可動体10が上動し、可動体10が空焼き燃焼位置まで移動すると、操作部11の突部11dが下段の係止穴14bに嵌合するので、可動体10が空焼き燃焼位置に保持され、芯6の空焼きを行うことができる。
【0037】
また、空焼き燃焼が終了したら操作部11の操作レバー11aを上方に持ち上げると突部11dが係止穴14bから外れて操作部11が支軸11bを中心に回動し、可動体10が下動して通常燃焼位置まで移動すると、操作部11の突部11dが上段の穴14bに係合するので、可動体10を通常燃焼位置に保持することができる。このため、可動体10は油受け7のレール状突起13bに沿ってスムーズに上下動すると共に、可動体10が空焼き燃焼位置もしくは通常燃焼位置のいずれかで確実に保持できるから、通常燃焼と空焼き燃焼の切り替えが簡単で確実に行えるようになった。
【0038】
また、図2に示すこの発明の他の実施例において、12aは可動体10の上面から上方へ向けて一定間隔で複数個配置した突起、15は油受け7の外周面の上部に形成した外径寸法を大きくする鍔部であり、可動体10の突起12aと鍔部15の下面とが対向している。13aは前記鍔部15の下面に一定間隔で複数個配置した凹部であり、この凹部13aと鍔部15によって前記係止案内部13を構成している。
【0039】
18は可動体10の底面と側面を囲むように配置した有底筒状の可動体ホルダー、18aは可動体ホルダー18の底面に設けた開口であり、可動体10は油受け7と可動体ホルダー18との間に円周方向に回動可能に取り付けられ、可動体10の側面下部と可動体ホルダー18の側面下部との間及び可動体10の底面と可動体ホルダー18の底面との間には隙間が形成され、可動体10の燃料通過口10aから流出する燃料はこの隙間を流れて開口18aから油タンク2へ供給される。14aは可動体10の底面と可動体ホルダー18の底面との間に配置して前記可動体10を上方へ向けて付勢するバネ手段であり、バネ手段14aの力によって可動体10の突起12aが前記鍔部15の下面に押し付けられている。また、図2に示すように、突起12aと凹部13aには可動体10の回動方向に向けて形成した傾斜面を形成している。
【0040】
上記の構成では、可動体10を油受け7の円周方向に回動すると、前記突起12aの上面が前記鍔部15の下面に接触した状態で突起12aが鍔部15の下面を滑りながら移動する。そして、前記突起12aの位置が鍔部15の下面に形成した凹部13aの位置にくると突起12aが凹部13aの傾斜面を滑りながら凹部13a内に移動するので、バネ手段14aの力によって可動体10が上方に移動する。
また、突起12aが凹部13a内に嵌った状態から可動体10を逆方向に回転すると、突起12aが凹部13aの傾斜面を滑りながら移動し、バネ手段14aの力に抗して可動体10が下方に移動して突起12aが凹部13aから外れて前記鍔部15の下面に移動するものであり、可動体10が回転することによって可動体10の上下方向の位置が変更できる。
このように、突起12aが鍔部15の下面と接触しているときは燃料通過口10aが開閉弁9aより低くなるようにした通常燃焼位置とし、一方、突起12aが凹部13a内に位置しているときは燃料通過口10aが開閉弁9aより高くなるようにして空焼き燃焼位置としている。
【0041】
この構成であれば、操作部11を横方向にスライドさせるだけで、通常燃焼と空焼き燃焼の切り替えができるので、簡単な操作で確実に切り替えることができるものとなった。
また、バネ手段14aが可動体10を鍔部15に押し付け力が可動体10の回転するときの抵抗となるので、誤って操作部11に触れたりしたときに可動体10が簡単に動いてしまうことはなく、通常燃焼位置と空焼き燃焼位置で確実に可動体10を保持できるようになる。
【0042】
図2は操作部11の具体的な実施例であり、19は可動体10から伸びる作動板であり、作動板19は操作レバー11aの枠体1内側の端部と連結しており、操作レバー11aが前後方向に移動すると可動体10が横方向に回転する。この操作レバー11aはバネによって枠体1の前方側に付勢されており、操作レバー11aを枠体1内側に押し込むとロック機構によりロックがかかり、その位置で保持される。また、押し込まれた位置で枠体1内側に押し込むとロックが解除され、バネの力によって外側に戻り操作レバー11aが前後方向に駆動する。
【0043】
このように、操作レバー11aを前後方向への移動のみに限定したから、必要以上に可動体10を動かしてしまうことがなく、通常燃焼位置と空焼き燃焼位置との切り替えがしやすくなった。また、操作レバー11aが枠体1の前板に露出するスペースを少なくすることができるから製品のデザインを損なわれにくいものとなった。
【符号の説明】
【0044】
1 枠体
2 油タンク
2b 上面板
3 芯内筒
4 芯外筒
5 芯収容筒
6 芯
7 油受け
7a 突起
7b 燃料流出口
8 カートリッジタンク
9 キャップ
9a 開閉弁
10 可動体
10a 燃料通過口
11 操作部
12 係止片
13 係止案内部
13a 凹部
14 係止手段
14a バネ手段
15 鍔部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠体(1)内には油タンク(2)と、油タンク(2)の底板から立設した芯内筒(3)と、油タンク(2)の上面板(2b)に取付けた芯外筒(4)と、芯内筒(3)と芯外筒(4)とで構成する芯収容筒(5)の間隙内に上下動自在に取付けて下端が油タンク(2)内の燃料に届く芯(6)とを設けると共に、
前記油タンク(2)の上面板(2b)には油タンク(2)内に向けて油受け(7)を設け、油タンク(2)に燃料を供給するカートリッジタンク(8)の口金には開閉弁(9a)を備えたキャップ(9)を取付け、カートリッジタンク(8)のキャップ(9)を油受け(7)に装着し、油受け(7)の底面から設けた突起(7a)がキャップ(9)の開閉弁(9a)を押し開いてカートリッジタンク(8)から油タンク(2)内へ燃料を供給して、油タンク(2)内を定油面に保持する石油燃焼器において、
前記油受け(7)の突起(7a)の周囲の底面もしくは側面に燃料流出口(7b)を設け、
前記油受け(7)の底面と側面を囲むように配置した有底筒状の可動体(10)を設け、該可動体(10)は前記油受け(7)の底面と側面との間に所定の空間を形成し、前記可動体(10)の側面に燃料通過口(10a)を設けると共に、
前記可動体(10)は前記油受け(7)の側面に沿って上下方向に移動可能に取り付けて、前記燃料通過口(10a)が前記油受け(7)に装着された前記カートリッジタンク(8)の前記開閉弁(9a)より低く位置する通常燃焼位置と、前記燃料通過口(10a)が前記開閉弁(9a)より高所に位置する空焼き燃焼位置とを備えており、
前記カートリッジタンク(8)から油受け(7)の燃料流出口(7b)を経て前記可動体(10)に送られる燃料は、前記可動体(10)が前記通常燃焼位置にあるときは前記可動体(10)内の燃料通過口(10a)を通過して油タンク(2)へ供給され、
前記可動体(10)が前記空焼き燃焼位置にあるときは、前記可動体(10)内の油面が前記燃料通過口(10a)より低位置に形成されて油タンク(2)への燃料供給が遮断されることを特徴とする石油燃焼器の燃料供給構造。
【請求項2】
前記可動体(10)には一部が枠体(1)外部に露出して枠体(1)外から可動体(10)を前記通常燃焼位置と前記空焼き燃焼位置との間で切り替えることのできる操作部(11)を設けたことを特徴とする請求項1に記載した石油燃焼器の燃料供給構造。
【請求項3】
前記可動体(10)に係止片(12)を設け、前記油受け(7)には前記係止片(12)が係合する係止案内部(13)を設け、前記係止片(12)が前記係止案内部(13)に沿って移動して前記可動体(10)が上下方向に移動可能に取り付けられ、
前記可動体(10)を通常燃焼位置と空焼き燃焼位置で保持する係止手段(14)を形成したことを特徴とする請求項1または2に記載した石油燃焼器の燃料供給構造。
【請求項4】
前記可動体(10)の上面に突出する複数個の突起(12a)によって前記係止片(12)を形成し、
前記油受け(7)の外周面には外径寸法を大きくする鍔部(15)を形成し、該鍔部(15)の下面と前記突起(12a)の上端と対向し、鍔部(15)の下面には高さを変える複数個の凹部(13a)を形成し、前記鍔部(15)と前記凹部(13a)によって前記係止案内部(13)を構成し、
前記油受け(7)と前記可動体(10)の間には前記突起(12a)を前記鍔部(15)の下面に押し付けるバネ手段(14a)を設けて前記係止手段(14)を形成し、
前記可動体(10)は前記突起(12a)が前記鍔部(15)の下面に接触しながら係止案内部(13)に沿って移動して、前記油受け(7)の側面に沿って円周方法に回動可能に取り付けられると共に、前記突起(12a)が前記凹部(13a)と対向するときに前記可動体(10)が上方向に移動して前記突起(12a)が前記凹部(13a)内に位置し、
前記突起(12a)が前記凹部13aと対向しない位置では前記可動体(10)の燃料通過口(10a)が前記カートリッジタンク(8)の前記開閉弁(9a)より低く位置し、前記突起(12b)が前記凹部13a内に位置しているときは前記燃料通過口(10a)が前記カートリッジタンク(8)の前記開閉弁(9a)より高く位置するように設定し、
前記可動体(10)の回動動作によって前記通常燃焼位置と前記空焼き燃焼位置が切り替わることを特徴とする請求項3に記載した石油燃焼器の燃料供給構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−96630(P2013−96630A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−239369(P2011−239369)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000003229)株式会社トヨトミ (124)
【Fターム(参考)】