説明

石膏ボード廃材からの異物除去方法

【課題】石膏ボート廃材から石膏を再生するに際し、該石膏ボード廃材に、ビス、釘、針金等の金属片が混在している場合であっても、破砕する前に金属片を効率よく除去する方法を提供すること。
【解決手段】一定間隔(D)で切断された石膏ボード廃材8の切断片9を自動搬送装置12にて搬送し、磁石面5‐1に落下させ、該切断片9に混在する金属片11を除去するに際し、前記自動搬送装置12の搬送面の搬出側端部から前記磁選機5の磁石面5−1までの落下高さ(h)が、Dの0.8倍以上3倍以下になるように、前記D(切断刃9による切断間隔)とh(前記自動搬送装置12の搬送面の搬出側端部から磁選機5の磁石面5−1までの落下高さ)とを相対的に調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石膏ボード廃材の処理方法に関し、さらに詳しくは、ビス、釘、針金等の金属片が混在する石膏ボード廃材から金属片を効率的に除去する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石膏ボード廃材の発生量は、年間約150万tであり、このうち、約50万tは生産時や家屋等の新築内装工事の端材であり、石膏ボードメーカーがリサイクルを行っている。しかし、残りの約100万tは、家屋等の建造物の改装・解体工事で排出されるものであり、該石膏ボード廃材には、ボード原紙や内装のシートが貼られていたり、ビス、釘、針金等の金属片が混在しているため、かかる異物を分離除去する必要がある等、処理の煩雑さから、リサイクルされずに埋立処分されている。
【0003】
ところが、埋立てられた石膏が雨水と接触すると硫化水素を発生するおそれがあるため、石膏の埋立ては、管理型の埋立地に行わなければならず、廃棄コストが問題である。更に、石膏ボード廃材の発生量は年々増加する傾向にあり、埋立地の不足、環境負荷の点から、リサイクルを行うための、廃石膏の有効な処理方法が求められている。
【0004】
前記金属片を分離除去する方法については、いくつか提案がされており、例えば、石膏ボード廃材を破砕し、得られる破砕片を篩にかけ、篩上に金属片を分離除去する方法、該破砕片を磁選機にかけて金属片を分離除去する方法等が挙げられる。しかしながら、これらの方法は、石膏ボード廃材を破砕する際に、かかる金属片によって、破砕機の故障を招く虞があった。
【0005】
そのため、破砕する前の石膏ボード廃材より金属片を除去する方法が提案されている。例えば、石膏ボード廃材を自動運搬装置で破砕機まで搬送する過程に、つり下げ式の磁選機を備えたり、自動運搬装置の搬送面の一部にマグネットプーリを設置したりして、金属片を分離除去する方法が提案されている。しかしながら、上記方法は、石膏ボードの上面、下面、片側の面についてのみ、金属片を分離除去できるものであって、両面の金属異物を除去する場合、上記二つの磁石を組み合わせる必要があり、2個の磁石を設置するという点で、大変不経済である。また、積み重なった石膏ボード廃材を処理する場合、積み重なったボードとボードの間に存在する金属片は磁石を上下に2つ設置する従来の技術では解決できなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、石膏ボート廃材から石膏を再生するに際し、該石膏ボード廃材に、ビス、釘、針金等の金属片が混在している場合であっても、破砕する前に金属片を効率よく除去する方法を提供することある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記課題を達成するため、鋭意研究を重ねた結果、一定間隔(D)で切断された石膏ボード廃材の切断片(以下切断片という)を自動搬送装置にて搬送し、磁選機の磁石面に落下させ、該切断片に混在する金属片を除去する方法を採用すると共に、上記方法において、該自動搬送装置の搬送面から該磁選機の磁石面への落下高さ(h)と切断後の石膏ボード廃材の最大長さとなる間隔(D)とを特定の比となるように調整することによって、石膏ボード廃材に混在する金属片の存在場所に拘わらず、石膏ボード廃材が前記磁石面上に落下した時点で上記金属片を極めて高い確率で該磁石面と接触せしめて回収することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は、一定間隔(D)で切断された石膏ボード廃材の切断片を自動搬送装置にて搬送し、磁石面に落下させ、該切断片に混在する金属片を除去するに際し、前記自動搬送装置の搬送面の搬出側端部から前記磁選機の磁石面までの落下高さ(h)が、Dの0.8倍以上3倍以下になるように、前記D(切断刃による切断間隔)とh(前記自動搬送装置の搬送面の搬出側端部から磁選機の磁石面までの落下高さ)とを相対的に調整することを特徴とする、石膏ボード廃材からの金属片の除去方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の方法によれば、破砕工程前に磁石を一つ設けるだけで、石膏ボード廃材の上下いずれの面に金属片が混在している場合であっても、かかる金属片を精度良く分離除去することが可能となる。とりわけ、従来法で解決できなかった該石膏ボード廃材が複数枚積み重なった状態であり、ボード間に金属異物が混在している場合であっても、かかる金属片を精度良く分離除去することが可能になる。その結果、続いて破砕を行う場合、破砕機に金属片が混在する虞が格段に低減され、金属片の混入による、破砕機の過負荷による緊急停止の回数が格段に低減され、処理能力を著しく向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の方法を実施するための装置の一例を示した概略図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
まず、本発明の方法に供される石膏ボード廃材は特に限定されないが、石膏ボードの生産工程および建築現場の施行工程で発生する端材、残材からなる石膏ボード廃材、家屋等の建造物の改装・解体工事で排出される石膏ボード廃材等である。また、後者の石膏ボード廃材等には、ビス、釘、針金等金属片や木片等が混在している。本発明の方法を実施するに当たり、金属片の中でも、特に大きい金属片は、後述する切断処理に支障を来す場合があるため、必要に応じて、予め除去しておくことが好ましい。
【0012】
一般に、石膏ボードは、石膏硬化体の板の表面にボード原紙が貼られた構造を有し、製造時は、厚み9.5〜25mm、幅は約450〜1250mmの大きさを有しているが、上記廃材として回収される石膏ボード廃材は、上記のままの大きさのものを最大の大きさとして、それより小さい、種々の大きさのものが存在する。本発明においては、これら種々の大きさの石膏ボード廃材が制限なく使用されるが、特に、混在する金属片の除去が行い難い、比較的大きい面積、例えば、500cm以上を有する石膏ボード廃材に対して効果的である。
【0013】
以下、本発明の処理方法を、その代表的な態様を示す図1に基づいて説明するが、本発明は、図1に示す態様に限定されるものではない。
【0014】
本発明において、上記回収石膏ボード廃材7は、後述するように、金属片の除去操作を安定して行うために、一定間隔に切断され、自動搬送装置12により磁選機5へと搬送される。
【0015】
上記切断は、例えば、金属片が混在する回収石膏ボード廃材7をホッパー1に受け入れ、払出用ベルトコンベア2により送り出しながら、一定間隔(D)で切断するように作動する切断刃により切断することによって実施することが好ましい。
【0016】
上記自動搬送装置の搬送部としては、特に限定されないが、搬送用のベルトコンベア3やローラーコンベア等が好適に使用できる。搬送面の幅は、特に限定されないが、最も汎用性の高い石膏ボードの幅が910mmであるため、1000mm以上であることが好ましい。1000mm以上あれば、最も汎用性の高い石膏ボード廃材について、予め幅を調整することなく搬送することが可能となり、効果的である。
【0017】
該石膏ボード廃材は、大きさ、形等ばらばらであるから、搬送に先立ち、搬送面の幅に合わせて幅を整えることが好ましい。該石膏ボード廃材の幅が搬送面の幅よりも大きい場合は、予め搬送面の幅に合わせて切断すればよい。
【0018】
上記石膏ボード廃材の切断及び搬送は、単層でも良いが、積み重なった状態で切断及び搬送することも可能である。むしろ、積み重なった状態で切断及び搬送することは、一度の処理量を大きくする上で大変好ましい。上記石膏ボード廃材を積み重ねる高さは、使用する破砕機の処理能力により適宜決定すればよい。一般には、100〜500mm、好ましくは200〜400mmに調整される。
【0019】
搬送面の幅に整えられた上記石膏ボード廃材8は、自動搬送装置の搬送面の進行方向において、一定間隔(D)で切断されて、上記切断間隔を進行方向における長さとする切断片9となる(以下、上記一定間隔で切断された切断片を単に「切断片」という)。従って、該切断片9の自動搬送装置の進行方向における最大長さが、(D)となる。上記、一定間隔(D)は特に限定されるものではないが、金属片除去精度の向上、また必要に応じて破砕機へ投入する際は投入効率等も考慮して、好ましくは100〜500mm、より好ましくは、200〜400mmであり、後述する、搬送面からの磁石面へ落下する際の落下高さ(h)と共に、後で詳述する関係となるよう相対的に調整すればよい。
【0020】
上記切断に用いられる切断装置は、石膏ボード廃材が切断できればよいのであって、特に限定されるものではないが、ギロチンカッター4、スライド式カッター、回転ノコ等が挙げられる。
【0021】
該切断片9は、自動搬送装置12にて磁選機5へと搬送されるが、該搬送過程に、目視による異物除去工程を設けてもよい。回収される上記石膏ボード廃材には、金属片の他に木片等の異物が混在している可能性がある。これらを予め除去することは、磁選機への負担を軽減するうえで望ましい。
【0022】
本発明において、最大の特徴は、前記自動搬送装置の搬送面の搬出側端部から前記磁選機の磁石面までの落下高さ(h)が、Dの0.8倍以上3倍以下になるように、前記D(切断刃による切断間隔)とh(前記自動搬送装置の搬送面の搬出側端部から磁選機の磁石面までの落下高さ)とを相対的に調整することである。
【0023】
即ち、上記自動搬送装置の搬送面の搬出側端部から上記磁選機の磁石面までの落下高さ(h)を、上記切断片の切断間隔(D)の0.8倍以上とすることにより、搬送方向における長さが(D)の切断片であっても、該切断片は磁石面に到達するまでに、切断片の上面に存在する金属片が磁石面に落下可能な角度以上に回転し、該金属片を確実に磁石面に落下させることができる。また、切断片が積み重ねてある場合においても、同様に切断片間に存在する金属片も確実に磁石面に落下させることができる。更に、上記自動搬送装置の搬送面の搬出側端部から上記磁選機の磁石面までの落下高さ(h)を、上記切断片の切断間隔(D)の1倍以上とすることは、該切断片が落下する際の角度を増すことができ、該金属片を磁石面へより確実に落下させる上でより好ましく、特に切断片が積み重ねてある場合において効果的である。
【0024】
また、切断片が該磁石面に落下する際の衝撃による磁石面のダメージを考慮すれば、落下高さ(h)は切断間隔(D)の3倍以下とすることが好ましく、2倍以下とすることがより好ましい。上記切断間隔(D)と落下高さ(h)は上記関係を満たすよう、相対的に調整すればよい。
【0025】
本発明で使用する磁選機の種類は特に限定されるものではないが、連続プロセスとして効率良く金属片を除去することを考慮すれば、ドラム式磁選機であることが好ましい。また、上記磁選機の大きさは、切断片が落下したときに受けるに十分な磁石面を有していればよい。
【0026】
本発明において、上記切断片を上記磁石面に落下させるにあたり、例えば、図1に示すように、切断片の落下を補助するカバー6を設けることは、金属片を精度良く除去する上で好ましい。そして、磁石面に付着した上記金属片は、例えば、ドラム式磁選機を使用した場合、ドラムの外側が回転して、磁石面5−1から非磁石面5−2に移動した際に、磁選機のドラムから離脱し回収される。
【0027】
上記磁選機によって処理した切断片は金属片が精度よく除去されているため、例えば、必要に応じて破砕し、石膏破砕物を得る場合、破砕機への負担は著しく低減される。
【0028】
また、上記破砕後に更に磁選機を設置し、破砕片に混在した金属片を分離除去する工程を設けることもできる。そうすることにより、更に精度良く金属片を分離除去することが可能となり、より純度の高い再生石膏を得ることが可能となる。また、上記石膏破砕物を粉砕する場合には、粉砕機への負担も低減される。
【0029】
尚、石膏ボード廃材に含まれるボード原紙由来の紙片は、既知の方法により除去することができる。例えば、石膏硬化体を破砕した後、篩上に分離除去する方法が一般的である。
【0030】
以下、本発明の代表的な処理方法を図1に従って具体的に説明する。
【0031】
先ず、回収された石膏ボード廃材7は、ホッパー1に重ねてストックされ、石膏ボード廃材の幅が整えられると共に、排出用のベルトコンベア2により断続的に排出口へ送られ、排出口では、払出用ベルトコンベア2が停止する度に、ギロチンカッター4により、一定間隔(D)で切断され、切断間隔(D)の切断片9が搬送用のベルトコンベア3へと排出される。上記一定間隔(D)は、ギロチンカッターの稼動頻度と排出用ベルトコンベアのスピードによって調整される。また、該ホッパーの排出口には間口高さが設けられることにより、一度に排出される石膏ボード廃材の高さが自動的に制限される。
【0032】
上記切断片9は、必要に応じて、目視で除去可能な大型異物をベルトコンベア3の搬送面上で除去した後、ドラム式磁選機5の磁石面5−1に落下高さhで落下させる。これにより、切断片に含まれる金属片はドラム式磁選機の磁石面5−1に付着し、金属片が除去される。ここで、落下高さ(h)が切断間隔(D)の0.8倍以上3倍以下とすることにより、石膏ボード廃材が単層であっても積み重なっていても、混在する金属片を確実に磁石面に落下させることができる。
【0033】
上記金属片が除去された切断片は、必要に応じて、破砕機10へ投入される。ドラム式磁選機の磁石面5−1に付着した金属片11は、外側のドラムが回転し、磁石面から非磁石面5−2に移動した際にドラムから離脱し、回収される。
【符号の説明】
【0034】
1:ホッパー
2:払出用ベルトコンベア
3:搬送用ベルトコンベア
4:ギロチンカッター
5:磁選機
5−1:磁石面
5−2:非磁石面
6:カバー
7:回収石膏ボード廃材
8:石膏ボード廃材
9:切断片
10:破砕機
11:金属片
12:自動搬送装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定間隔(D)で切断された石膏ボード廃材の切断片を自動搬送装置にて搬送し、磁石面に落下させ、該切断片に混在する金属片を除去するに際し、前記自動搬送装置の搬送面の搬出側端部から前記磁選機の磁石面までの落下高さ(h)が、Dの0.8倍以上3倍以下になるように、前記D(切断刃による切断間隔)とh(前記自動搬送装置の搬送面の搬出側端部から磁選機の磁石面までの落下高さ)とを相対的に調整することを特徴とする、石膏ボード廃材からの金属片の除去方法。
【請求項2】
上記切断片が積み重なった状態である、請求項1記載の除去方法

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2013−17955(P2013−17955A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−153726(P2011−153726)
【出願日】平成23年7月12日(2011.7.12)
【出願人】(000003182)株式会社トクヤマ (839)