説明

石質型生物養生基盤

【課題】現在、ミズゴケあるいはその乾燥物を介して緑化植物体に給水することのできる植物養成基盤が開発されている。この基盤は、特にミズゴケあるいは乾燥ミズゴケを介して水を吸水させることにより、垂直・水平・斜面を含むあらゆる角度の養成面において、植物を養成することを特徴としている。しかしながら、養成の対象が植物のみであること、またミズゴケあるいはその乾燥物を介さなければ養成が極めて困難であるという問題点が認められる。
【解決手段】底部に水あるいは生物を生存あるいは増殖させる水溶液を溜めることの可能な構造体をもち、これら養生液の溜め場から養生液を輸送する構造体を介して石質養生面へ浸潤させ、かつ石質面から養生液が漏水することなく底部の溶液溜め場から供給される養生場を提供することにより、上記の課題を解決し得ることを見出した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物および動物の生物養生基盤、具体的にはコケ植物全般、草本性植物全般、低木性の木本植物全般、および木本性植物の苗、着生植物全般、ならびに淡水性および海水性の水中および岩場に生息する動物全般、岩場に着床する動物全般の養生を行うことを主要な目的とする養成面が石質状の生物基盤、およびその使用方法に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
これまでは、ミズゴケがもつ特性およびこれを用いた植物栽培増殖に関する研究により、ミズゴケあるいは乾燥させたミズゴケを介してコケ植物およびその他植物の栽培・増殖、さらには絶滅危惧植物であるミズゴケ属に属する種を含むその他希少種が安定かつ容易に大量栽培することが可能になった。この発明をもとに、現在、ダムや湖水でのフロー栽培ならびに自然環境に生息する環境修復など屋外条件下を前提としたフィールドだけでなく屋上緑化、さらには壁面緑化におけるミズゴケ、ミズゴケ以外のコケ植物、またはシダ植物を含む維管束植物の生育基盤とし大きく貢献している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
均一に水を湿潤させるための解消方法として、これまでは、緑化資材として植物を養生させる機能をもたせるためには、水溜め場から供給される水を、植生部位である場所にミズゴケあるいはこれを乾燥させた物体を介さなければならないという問題点があった。また、対象となる養生生物が植物に限定されおり、これら問題点を克服することの可能な技術の提供が待たれている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者はこの課題の解決に向けて鋭意検討を重ねた。その結果、溶液を溜めることの可能な構造体から養生面である石質基盤に浸潤させることで、ミズゴケあるいはこれを乾燥させた物体を介することなく、対象となる養生生物が植物に限定されることのない植物および動物を養生させることに成功した。この生物養生基盤を提供することにより、上記の課題を解決できる本発明を完成した。
【0005】
すなわち、本発明は、底部に水を溜めることの可能な構造体をもち、そこから水あるいは生物を養生することが可能な溶液(以下、養生液という)を、養成部位まで移動あるいは循環させ、養生構造体の部位を石質にし、かつその養生部位基部に養生液を漏水することなく常時充填できる領域をもたせ、さらに養生生物接地部位に基部から養生液を浸潤させることで、植物だけでなく動物を含む生物養生を行うことを特徴とする植生基盤の使用方法を提供する発明である。
【0006】
なお、養生液とは、特に断らない限り、任意生物を生存、生長あるいは増殖可能な全ての溶液である。また、蒸留水や培養液を含め、前記の生長可能な養生液に殺菌・消毒処理を施したものも範疇に含み(市販品も可)、さらに、前記の養生液に微生物などの生物が加えられても、自然増殖してもよい。いずれにしても、「養生液」とは、主に、水あるいは生物を生存あるいは成長・増殖させるための培養液であるものを意味するもので、生物の種類のいかんに問わず、水と同様に循環するものであれば問題とならない。
【0007】
「石質」の素材としては、砂岩・泥岩などの砕屑性、凝灰岩などの火砕性、氷河堆積岩などの破砕性といった堆積岩、溶岩・火山噴出物・マグマなどから形成される火成岩、あるいは生物の堆積物でできる石灰岩、人工的につくられるなコンクリート材を含め、石質の種類は特に限定されるものではない。
【0008】
これらの石質の中でも、溶岩性の石質および縞模様のみられる堆積岩および多孔質の構造を有する石質は、本発明を適用するのに好適なミズゴケの一つである。
【0009】
設置する際、設置したユニットの下部が底部の役割となり水あるいは養生液を溜めることが可能である。
【0010】
本ユニット構造は、大別すると4つのパーツからなる。すなわち(1)水あるいは養生液を溜める底部構造体、(2)水あるいは養生液を養生部まで送る液体輸送体、(3)養生基盤である石質構造体、(4)石質基盤の構造体養生面の裏側あるいは反対側(基部ともいう)に配置される水路構造体である。
【0011】
このユニット構造がもつ、従来と異なる重要な利点は、養生基盤構造体の養生基部に水あるいは養生液を漏水することなく常時充填できる領域をもたせ、さらに養生する生物が接地される部位に基部から養生液を浸潤させることで、ミズゴケあるいはミズゴケの乾燥物を介することなく生物の養生が行える点である。
【0012】
生物を養成する基盤の厚さは特に限定されないが、養成面が水平式において厚さは1mm〜100mm程度で、好適範囲は7mm〜30mmであり、養成面が水平式以外において厚さは1mm〜10m程度で、好適範囲は30mm〜900mmである。
【0013】
本基盤において、水路体の膜の厚さは特に限定されないが、0.1mm〜100mm程度、通常は2mm〜50mmが好適である。また、その素材は、プラスチック、ゴム、金属等、特に限定されないが、折り曲げが容易で、かつ、経時的な耐久性に優れた素材であることが好適である。このような点から、ビニール、プラスチック(防水ゴム)等の耐錆性に優れたものが、水路体を構成する好適な素材として例示される。
【0014】
本基盤において養生されるコケ植物は特に限定されず、自然界に自生しているコケ植物をそのまま用いることも可能であり、栽培法で得たコケ植物を用いることも可能である。また、いわゆる培養法〔例えば、「植物バイオテクノロジーII」,東京化学同人:現代化学・増刊20の第39頁「蘚苔類の培養」(小野著)等参照のこと〕を用いた「培養ゴケ」を用いることも可能であるが、通常は、栽培法で得たコケ植物を用いることが好ましい。
この栽培されたコケ植物は、通常の栽培法で得たコケ植物を用いることができるが、特に、本発明においては、以下の方法で得られる、コケ植物断片群を用いることが好ましい。
すなわち、生長したコケ植物の群落の頂部近傍を切断し、切断したコケ植物断片を収穫物として用い、切断されたコケ植物の群落の養生を継続して行い、かつ、この養生と収穫のサイクルを繰りかえし行う、コケ植物の栽培方法において得られる、上記コケ植物の断片群を、本発明において用いることができる。
ここで、生長したコケ植物の群落は、天然のコケ植物の群落であっても、通常のパレット栽培で得られるコケ植物の群落であっても、コケ植物を固定した人工基盤を養生して得られるコケ植物の群落であってもよい。コケ植物の群落は、平置きの状態で養生したものであっても、壁面や法面等において養生したものであってもよい。頂部付近の切断を行う時期は、上記の生長したコケ植物におけるコケ植物が、概ね2〜3cm程度に達した時点が好適である。コケ植物の群落の頂部近傍の切断は、コケ植物の群落の上部(緑が多い部分)を、種々の切断器具、たとえば、ハサミ、バリカン、サンダー等を用いて行うことができる。また、ほうきや刷毛等で、コケ植物の群落の上部をなでつけることによっても、コケ植物の頂部近傍は容易に切断され、所望するコケ植物の断片を得ることができる。
【0015】
上述した切断工程の後、切断して得たコケ植物の断片は、「収穫物」として、本栽培基において載置されるコケ植物として用いることができる。また、切断された後のコケ植物の群落は、養生を継続して行いコケ植物を再び生長させることができる。この再生長させたコケ植物の群落に対して、再び切断工程を行うことで、コケ植物の断片群を再度得ることができる。この養生と収穫のサイクルを繰りかえし行うことにより、効率的にコケ植物を「収穫物」として得ることができる。
【0016】
また、本発明が適用され得る生物は、ミズゴケは、コケ植物蘚類 ミズゴケ科 ミズゴケ属(Sphagnum L.)に属する全てを意味し、例えば、日本国原産のものであれば、オオミズゴケ(Sphagnum palustre L.)、イボミズゴケ(Sphagnum papillosum Lindb.)、ムラサキミズゴケ(Sphagnum magellanicum Brid.)、キレハミズゴケ(Sphagnum aongstroemii C.Hartm)、キダチミズゴケ(Sphagnum compactum DC.)、コアナミズゴケ(Sphagnum microporum Warnst.ex Card)、コバノミズゴケ(Sphagnum calymmatophyllum Warnest.& Card.)、ユガミミズゴケ(Sphagnum subsecundum Nees ex Sturm)、ホソバミズゴケ(Sphagnum girgensohnii Russow)、チャミズゴケ(Sphagnum fuscum(Schimp.)H.Klinggr.)、ヒメミズゴケ(Sphagnum fimbriatum Wilson ex Wilson & Hook.f.)、スギハミズゴケ(Sphagnum capillifolium(Ehrh.)Hedw.)、ホソベリミズゴケ(Sphagnum junghuhnianum Dozy & Molk.Subsp.Pseudomolle(Warnest.)H.Suzuki)、ワタミズゴケ(Sphagnum tenellum Hoffm.)、ハリミズゴケ(Sphagnum cuspidatum Hoffm.)、アオモリミズゴケ(Sphagnum recurvum P.Beauv.)、ウロコミズゴケ(Sphagnum squarrosum Crome)等を挙げることができる。また、日本国以外の地域原産のミズゴケを、本発明に適用することも可能であることは勿論である。
【0017】
ミズゴケ以外のコケ植物では、蘚苔類に属する全てを意味し、例えば、ハリガネゴケ(Bryum capillare Hedw.)、ヤノネゴケ(Bryhnia novae−angliae(Sull.& Lesq.)Grout)、

キミズゼニゴケ)(Pellia endiviaefolia Mitt.)、カマサワゴケ(Philonotis falcata(Hook.)Mitt.)、オオシッポゴケ(Dicranum nipponense Besch.)、アオシノブゴケ(Thuidium

Molk.)Dozy & Molk.)、オオハリガネゴケ(Bryum pseudotriquetrum(Hedw.)Gaertn.)、ヒロハツヤゴケ(Entodon challengeri(Paris)Card.)、カガミゴケ(Brotherella henonii(Duby)M.Fleisch.)、クサゴケ(Callicladium haldanianum(Grev.)H.A.Crum)、コツボゴケ(Plagiomnium acutum(Lidb.)T.J.Kop.)、コバノチョウチンゴケ(Trachycystis microphylla(Dozy & Molk.)Lindb.)、トヤマシノブゴケ(Thuidium kanedae Sakurai)、キブリツボミゴケ(Jungermannia virgata(Mitt.)Steph.)、オオミズゴケ(Sphagnum palustre L.)、ジャゴケ(Conocephalum conicum(L.))、コウヤノマンネングサ(Climacium

アカゴケ(Ceratodon purpureus(Hedw.)Brid.)、ギンゴケ(Bryum argenteum Hedw.)、ミヤマサナダゴケ(Plagiothecium nemorale(Mitt.)A.Jaeger)、ケゼニゴケ(Dumortiera hirsuta(Sw.)Nees)、ハイゴケ(Hypnum plumaefome Wilson)、ウマスギゴケ(Polytrichum commune Hedw.)、オオスギゴケ(Polytrichum formosum Hedw.)、フロウソウ(Climacium dendroides(Hedw.)F.Weber & Mohr)、オオシラガゴケ(Leucobryum scabrum Sande Lac.)、

polymorpha L.)、ネズミノオゴケ(Myuroclada maximowiczii(Borcz.)Steere & W.B.Schofield)、フデゴケ(Campylopus unbellatus(Arn.)Paris)、エダツヤゴケ(Entodon flavescens(Hook.)A.Jaeger)、オオウロコゴケ(Heteroscyphus coalitus(Hook.)Schiffn.)、ヒノキゴケ(Pyrrhobryum dozyanum(Sande Lac.)Manuel)およびこれら近縁種を特に挙げることができる。
【0018】
さらに、Atrichum undulatum(Hedw.)、P.Beauv(Namigata−Tachigoke)等のAtrichum P.Beauv.(Tachigoke−zoku);Pogonatum inflexum(Lindb.)Lac.(Ko−sugigoke)等のPogonatum P.Beauv(Niwa−sugigoke−zoku);Polytrichastrum formosum(Hedw.)G.L.Smith等のPolytrichastrum G.L.Smith(Miyama−sugigoke−zoku);Polytrichum commune Hedw.(Uma−sugigoke)等のPolytrichum Hedw.(Sugigoke−zoku);Ceratodon purpureus(Hedw.)Bird.(Yanoueno−akagoke)等のCeratodon Bird.(Yanouenoaka−goke−zoku);Dicranum japonicum Mitt.(Shippogoke)、Dicranum nipponense Besch(O−shippogoke)、Dicranum scoparium Hedw.(Kamojigoke)、Dicranum polysetum Sw.(Nami−shippogke)等のDicranum Hedw.(Shippogoke−zoku);Leucobryum scabrum Lac.(O−shiragagoke)、Leucobryum juniperoideum(Brid.)C.Mull.(Hosoba−okinagoke)等のLeucobryum Hampe(Shiragagoke−zoku);Bryum argenteum Hedw.(Gingoke)等のBryum Hedw.(Hariganegoke−zoku);Rhodobryum giganteum(schwaegr.)Par.(O−kasagoke)等のRhodobryum(Schimp.)Hampe(Kasagoke−zoku);Plagiomniumacutum(Lindb.)T.Kop.(Kotsubogoke)等のPlagiomnium T.Kop.(Tsuru−chochingoke−zoku);Trachycystis microphylla(Dozyet Molk.)Lindb.(Kobano−chochingoke)等のTrachycystis Lindb.(Kobano−chochingoke−zoku);Pyrrhobryum dozyanum(Lac.)Manuel(Hinokigoke)等のPyrrhobryum Mitt.(Hinokigoke−zoku);Bartramia pomiformis Hedw.(O−tamagoke)等のBartramia Hedw.(tamagoke−zoku);Climacium dendroides(Hedw.)Web.et Mohr(Furoso)、Climacium japonicium Lindb.(Koyano−mannengusa)等のClimacium Web.et Mohr(Koyano−mannengusa−zoku);Racomitrium ericoides(Web.et Brid)Brid(Hai−sunagoke)、Racomitrium japonicium Dozy et Molk.(Ezo−sunagoke)、Racomltrium canescens(Hedw.)Brid.ssp.latifolium(Sunagoke)、Racomitrium barbuloides Card.(Kobanosunagoke)等のRacomitrium Brid.(Shimofurigoke−zoku);Hypnum plumaeforme Wils.(Haigoke)等のHypnum Hedw.,nom.cons.(Haigoke−zoku);Thuidium Kanedae Sak.(Toyama−shinobugoke)等のThuidium Bruch et Schimp.in B.S.G.(Shinobugoke−zoku)、Sphagnum L.等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0019】
これらのコケ植物は、単独種類のコケ植物を用いることは勿論のこと、2種以上を組み合わせて用いることも可能である。特に、強い日照を好むコケ植物(例えば、スナゴケ、ツノゴケ等)と、日陰を好むコケ植物(例えば、ハイゴケ、シッポゴケ、ヒノキゴケ、カサゴケ、トヤマシノブゴケ、チョウチンゴケ類等)を組み合わせて用いることにより、本栽培体が用いられる日照環境に依存せずに、コケ植物の生育を維持することが可能となる。
【0020】
コケ以外の「他の植物」としては、いわゆる水生植物(水中〜水周辺を中心に生活する植物の総称)一般を挙げることができる。具体的には、シュロガヤツリ、地性ラン(アツモリソウ、クマガイソウ、ミズトンボ、シュンラン、トキソウ、カキラン、サギソウ、パフィオペディルム属、フラグミペディウム属、コチョウラン等)、ユキノシタ科に属する植物、アヤメ科に属する植物、モウセンゴケ科に属する植物(モウセンゴケ、コモウセンゴケ、ドロセラファルコネリー、ドロセラペティオラリス、ドロセラアデラエ、アフリカナガバノモウセンゴケ、ドロセラピグミー、イトバモウセンゴケ、ナガバノモウセンゴケ、イシモチソウ、ハエトリソウ、ドロソフィラムルシタニカム、ムジナモ等)、ムシトリスミレ属に属する植物、ビブリス属に属する植物、ウツボカズラ属に属する植物、セファロータス属に属する植物、サラセニア属に属する植物、ダーリングトニア属に属する植物、ホソバノセイタカギク等を例示できる。
【0021】
植物以外の「動物」としては、サンゴ、イソギンチャクなどの刺胞動物、ウニ、ヒトデ、ナマコなどの棘皮動物、カイメンなどの海綿動物、ホヤなどの原索動物、アワビ、サザエ、ヒザラガイなどの軟体動物、ヌマエビ、テナガエビ、サクラエビ、クルマエビなどの節足動物、トビハゼなどの魚類をふくめた岩礁に生息する生物を例示できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明により、(1)ミズゴケあるいはこれを乾燥させた物体を介することなく植物を養生できる点、(2)植物だけに限定されることなく、動物を含めた生物を基盤上で養生できる。
【0023】
以下、本発明について、図面を用いつつ説明する。
図1は、底部を除く水平式石質型生物養生基盤の姿図である。石質板1の支持体2は筒状が一般的である。ただし形状は四角柱、円柱、円錐、楕円体、棒状体といった球状以外の形でもよく、特に形状を定めるものではない。尚、水平式における石質板1の形状は板状のものが一般的で、厚さは1mm〜100mm程度で、好適範囲は7mm〜30mmである。
【0024】
図2は、水平式石質型生物養生基盤の断面図である。石質板1は石質板固定3を支持体上部4でおこない、支持体2には給水パイプ5と排水パイプ6が配置される。水あるいは養生液の循環はポンプ7によって引き上げられ循環する。パイプの素材は、プラスチック、ゴム、金属等、特に限定されないが、折り曲げが容易で、かつ、経時的な耐久性に優れた素材であることが好適である。このような点から、ビニール、プラスチック(防水ゴム)等の耐錆性に優れたものが、水路体を構成する好適な素材として例示される。
【0025】
図3は、水平式石質型生物養生基盤の生物養成場である基盤の断面図である。石質板側部8の支持体上部4のつなぎめ側にある給水パイプに給水口9があり、水あるいは養生液が基盤底部に均一に充填される構造となっている水路10がある。充填された溶液は排水口11を通じて底部にもどる仕組みとなっている。また、石質板防水部12によって、基盤底部の水あるいは養生液は基盤上部に浸透し、漏水することなく養生面全体に液が浸潤する。防水のための素材は、プラスチック、ゴム、金属等、特に限定されないが、折り曲げが容易で、かつ、経時的な耐久性に優れた素材であることが好適である。このような点から、ビニール、プラスチック(防水ゴム)等の耐錆性に優れたもの、あるいはシリコンコーティング素材が、本素材として例示される。
【0026】
図4は、水平式以外の石質型生物養生基盤の完成断面図である。底部構造体13は水あるいは養生液14を溜めることができればよく、内部にポンプ15を設置する。石質基盤支持体16によって固定された石質基盤17の基部にあるポンプに給水取り付け口18を連結し、給水パイプ19を通じて水あるいは養生液は輸送される。水あるいは養生液14はポンプにより循環できるための水位20を保っていればよい。また、底部構造体13の内部には、石質基盤支持体16によって固定された石質基盤17を安定化させるための受け台21が接地されている。ポンプを通じて移動した水あるいは養生液14は給水水路上部より流出し、流出した液は再び底部構造体13に入ることによって循環する。
【図面の簡単な説明】
【図1】底部を除く水平式石質型生物養生基盤の姿図である。
【図2】下部の給水装置を設置した基盤側面の断面図である。
【図3】水平式石質型生物養生基盤の生物養成場である基盤の断面図である。
【図4】下部の給水装置を設置した基盤背面からの断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部に水あるいは生物を生存あるいは増殖させる水溶液(以下、養生液という)を溜めることの可能な構造体をもち、これら養生液の溜め場から水路状、パイプ状、袋状等の養生液を輸送する構造体を介して生物養生部にミズゴケ、その乾燥物あるいはこれに類似する吸水体を介することなく液体を送ることの可能な生物(以下、植物および動物を含む)の養生基盤。
【請求項2】
前記養生基盤において、生物を養生する石質面もつことを特徴とする、請求項1記載の養生基盤。
【請求項3】
前記養生基盤において、石質上に液体を維持することを特徴とする、請求項2記載の養生基盤。
【請求項4】
前記養生基盤の石質基部に、底部から給水した液体を溜めることの可能な水路状の構造体をもつことを特徴とする、請求項3記載の養生基盤。
【請求項5】
前記養生基盤の内部あるいは表層に、乾燥ミズゴケを充填させることなく、石質基部水溜部より上方に開放された領域に直接、対象とする養生生物を接地させ、これら生物を生存あるいは増殖させることが可能なことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の養生基盤。
【請求項6】
前記養生基盤の石質基部にある水路状構造内から養生液を石質養生面へ浸潤させ、かつ石質面から養生液が漏水することなく底部の溶液溜め場から供給される養生液を供給できることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の養生基盤。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の養生基盤において、底部の水溜め領域にある養生液を、乾燥ミズゴケなどの吸水体を用いることなく、養生部位に浸潤させ、コケ植物または他の植物および動物の養生を行うことを特徴とする、養生基盤の使用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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